ところで、上述の特許文献1に開示されたインクジェット塗布液制御装置の構成は、インクジェットヘッドの内部における十分な脱気を可能とするものであるため、インクジェットヘッドのノズルにおけるメニスカスの圧力を微調整することについては、問題とされていない。そのため、インクジェットヘッドのノズルからのインクの滴下防止及び吐出を最良の状態にすることは、行い得ないことになる。
これに対して、本発明者は、インクジェットのノズルにおけるメニスカスの圧力を微調整することを目的として、以下に示すようなインクジェット塗布液制御装置の使用を試みることにした。
図5は、その装置の一例を示すものであって、インクジェットヘッドIJに対する塗布液の循環経路を構成するものである。同図に示すように、このインクジェット塗布液制御装置1Xは、制御タンクが、供給タンク2Xと帰還タンク3Xとから構成され、この両タンク2X、3Xは、連通流路4Xを介して連通されている。供給タンク2Xは、インクジェットヘッドIJに供給流路5Xを通じて塗布液を供給するものであると共に、帰還タンク3Xは、インクジェットヘッドIJから帰還流路6Xを通じて塗布液が帰還するものである。そして、供給タンク2Xは、補充流路7Xを介して補充タンク8Xに連通されている。
次に、上記のインクジェット塗布液制御装置1Xの動作を簡潔に説明する。補充タンク8Xは、供給ポンプ9X及び供給弁10Xが途中に設けられた補充流路7Xを通じて供給タンク2Xに塗布液を補充するが、供給タンク2X内における塗布液の液面は、上限位置2L1と下限位置2L2との間に常時位置するように液面制御が行われる。このような液面制御が行われている状態で、大気開放弁11Xを開くと共に、ヘッド供給弁12X及びヘッド循環弁13Xを開くことで、供給タンク2X内の塗布液が、インクジェットヘッドIJ内を通過して、揚程によって帰還タンク3Xに自然落下する。この場合における塗布液の自然落下速度は、帰還タンク3Xの上下方向位置によって決まる。
そして、図7に、符号Aを付した一部縦断拡大図で示すように、ノズルNZでのメニスカスMKの形状は、インクジェットヘッドIJ内を塗布液が通過する際の背圧の大きさによって決まる。この場合、図7に表わされたメニスカスMKの形状であると、ノズルNZから塗布液が滴下することを適切に回避することができる。そして、メニスカスMKの形状を最適形状とするためには、帰還タンク3Xを上下動させて位置調整する。しかも、この位置調整によって、インクジェットヘッドIJから塗布液を吐出する際の吐出量や吐出周波数についても最適にする。ここで、図5に符号P2を付した寸法がメニスカス圧に対応し、符号P1を付した寸法が揚程に相当する圧力に対応している。
また、帰還タンク3X内における塗布液の液面が上昇した場合には、その液面が上限位置3L1に達したことを液面センサ(図示略)が検出した時点で、連通流路4Xに設置されている循環ポンプ14Xが駆動すると共に循環弁15Xが開かれて、塗布液が帰還タンク3Xから供給タンク2Xに戻される。また、帰還タンク3X内における塗布液の液面が下限位置3L2に達した場合は、循環弁15Xが閉じられ且つ循環ポンプ14Xの駆動が停止して、帰還タンク3X内の塗布液が増加していく。そのため、この循環ポンプ14Xの駆動とその停止が繰り返されることによって、帰還タンク3X内における塗布液の液面は、上限位置3L1と下限位置3L2との間に常時位置するように液面制御が行われる。
図6は、本発明者が使用を試みたインクジェット塗布液制御装置の他の例を示すものであって、インクジェットヘッドに対する塗布液の非循環経路を構成するものである。同図に示すように、このインクジェット塗布液制御装置1Yは、単一の制御タンク2Yを備え、この制御タンク2Yは、インクジェットヘッドIJに供給流路3Yを通じて塗布液を供給するものである。この供給流路3Yは、インクジェットヘッドIJの長手方向両端部に通じるように2本の分岐通路4Yに分岐している。そして、制御タンク2Yは、補充流路5Yを介して補充タンク6Yに連通されている。
次に、上記のインクジェット塗布液制御装置1Yの動作を簡潔に説明する。補充タンク6Yは、供給ポンプ7Y及び供給弁8Yが途中に設けられた補充流路5Yを通じて制御タンク2Yに塗布液を補充するが、制御タンク2Y内における塗布液の液面は、上限位置2L1と下限位置2L2との間に常時位置するように液面制御が行われる。このような液面制御が行われている状態で、2つのヘッド供給弁9Yを開くと共に、ヘッド加圧弁10Yを開いて制御タンク2Y内を加圧することで、制御タンク2Y内の塗布液をインクジェットヘッドIJの内部に充填する。
その後、ヘッド加圧弁10Yを閉じると共に、大気開放弁11Yを開くことで、インクジェットヘッドIJではピエゾ素子の動作によってノズルNZから塗布液が吐出されていくことになり、制御タンク2YからインクジェットヘッドIJに塗布液の供給が可能となる。この状態の下では、インクジェットヘッドIJの下面におけるノズルNZの先端部よりも、制御タンク2Y内における塗布液の液面の方が、低い位置となるため、図6に符号P2で示す寸法に対応するメニスカス圧が生じると共に、図7に示すノズルNZでのメニスカスMKの形状が決まる。
以上のように本発明者が使用を試みた2種のインクジェット塗布液制御装置1X、1Yによるにしても、未だ解決すべき問題を有している。
すなわち、上記2種の装置1X、1Yは何れも、制御タンク3X、2Yが、インクジェットヘッドIJ及び被塗布物16X、12Yよりも下方位置に設置されるため、インクジェットヘッドIJまたは被塗布物16X、12Yが水平方向に移動した場合には、それらと制御タンク3X、2Yとが干渉することが有り得る。そのため、装置1X、1Yの各部のレイアウトが制約を受けることになり、設計の自由度が小さくなるという問題がある。
しかも、メニスカスの形状を可変制御して最適形状にしようとした場合には、制御タンクの上下方向位置を微妙に調整せねばならなくなり、制御タンクに位置調整機構を付随して設ける必要性が生じる。そのため、メニスカスの形状を容易に可変制御することが困難になるという重大な問題をも招く。
本発明は、上記事情に鑑み、設計の自由度を大きくした上で、容易に且つ適正にメニスカスの形状を可変とすることが可能なインクジェット塗布液制御装置を提供することを技術的課題とする。
上記課題を解決するために創案された第1の本発明は、インクジェットヘッドに通じる塗布液の供給流路及び帰還流路と、これらの流路が連結されて塗布液を貯留する制御タンクとから、インクジェットヘッドに対する塗布液の循環経路が構成されたインクジェット塗布液制御装置であって、前記制御タンクは、インクジェットヘッドに供給流路を介して塗布液を供給する供給タンクと、前記供給タンクに循環ポンプ及び循環弁が設置された連通流路を介して連通され且つインクジェットヘッドから帰還流路を介して塗布液を帰還させる帰還タンクとを有すると共に、前記インクジェットヘッドのノズルでのメニスカス圧力と、前記帰還タンクの揚程に相当する圧力との総和に対応する負圧を発生させる負圧発生手段を備え、前記負圧発生手段は、前記連通流路が前記循環弁により閉じられた状態で前記帰還タンクに負圧を作用させるように構成されていることに特徴づけられる。
このような構成によれば、制御タンクが、供給タンクと帰還タンクとを有し、この両タンクを連通している連通流路が循環弁によって閉じられた状態で負圧発生手段から帰還タンクに負圧が作用することで、供給タンクから供給流路を通じてインクジェットヘッドに至った塗布液は、インクジェットヘッド内を通過した後、帰還流路を通じて帰還タンクに帰還する。そして、帰還タンクに帰還した塗布液を、連通流路が循環弁によって開かれた状態で循環ポンプが供給タンクに送ることによって、インクジェットヘッドに対する塗布液の循環経路が構成される。この場合、ノズルでのメニスカスの形状は、インクジェットヘッド内を塗布液が通過する際の背圧の大きさによって決まる。そこで、この第1の本発明では、メニスカス圧力と帰還タンクの揚程に相当する圧力との総和(加算した圧力)に対応する負圧を発生させる負圧発生手段を備え、且つ、その発生した負圧を帰還タンクに作用させている。これにより、塗布液がインクジェットヘッド内を通過する際の背圧の大きさを、最適な大きさにすることが可能となり、メニスカスの形状も最適なものとなり得る。そして、メニスカスの形状を可変制御するには、負圧発生手段で発生する負圧の大きさを可変制御すればよいことになるため、メニスカスの形状を容易に微調整することが可能となる。しかも、このような構成の循環経路であれば、インクジェットヘッドの内部の気泡は帰還流路を通じて帰還タンクに帰還するため、ノズルから気泡が吐出されることがなくなる。そして、以上のような構成であれば、供給タンクや帰還タンクの上下方向位置に制約がなくなるため、これらの設置位置を決めるための設計の自由度が大きくなる。
この構成において、前記負圧発生手段は、負圧に生じる脈動を抑制する構造とされていることが好ましい。
このようにすれば、帰還タンク内における塗布液に作用する負圧の脈動をなくすことができるため、インクジェットヘッド内を通過する塗布液にも脈動が生じることを回避することができる。これにより、メニスカスの形状にも脈動が生じることを阻止することができるため、常に安定した最適形状のメニスカスを生成することが可能となる。
この場合、負圧に生じる脈動を抑制できる構造の負圧発生手段としては、レギュレーター付きで且つエジェクター式の負圧発生装置を挙げることができる。なお、これ以外の負圧発生手段であっても、負圧に生じる脈動を抑制できる構造を有する周知の負圧発生手段を使用すれば、既述の場合と同様の利点が得られる。
上記課題を解決するために創案された第2の本発明は、インクジェットヘッドに通じる塗布液の供給流路及び帰還流路と、これらの流路が連結されて塗布液を貯留する制御タンクとから、インクジェットヘッドに対する塗布液の循環経路が構成されたインクジェット塗布液制御装置であって、前記制御タンクは、インクジェットヘッドに供給流路を介して塗布液を供給する供給タンクと、インクジェットヘッドから帰還流路を介して塗布液を帰還させる帰還タンクとを兼ねる単一のタンクであると共に、前記インクジェットヘッドのノズルでのメニスカス圧力と、前記制御タンクの揚程に相当する圧力との総和に対応する負圧を発生させる負圧発生手段を備え、前記負圧発生手段は、前記インクジェットヘッドから前記制御タンクに通じる帰還流路の途中に配設されていることに特徴づけられる。
このような構成によれば、制御タンクが、供給タンクと帰還タンクとを兼ねる単一のタンクであるため、単一の制御タンクから供給流路を通じてインクジェットヘッドに至った塗布液は、インクジェットヘッド内を通過した後、帰還流路を通じて当該単一のタンクに帰還する。これにより、インクジェットヘッドに対する塗布液の循環経路が構成される。この場合、ノズルでのメニスカスの形状は、インクジェットヘッド内を塗布液が通過する際の背圧の大きさによって決まる。そこで、この第2の本発明では、メニスカス圧力と制御タンクの揚程に相当する圧力との総和(加算した圧力)に対応する負圧を発生させる負圧発生手段を備え、且つ、その発生した負圧を帰還流路の途中に作用させている。これにより、塗布液がインクジェットヘッド内を通過する際の背圧の大きさを、最適な大きさにすることが可能となり、メニスカスの形状も最適なものとなり得る。そして、メニスカスの形状を可変制御するには、負圧発生手段で発生する負圧の大きさを可変制御すればよいことになるため、メニスカスの形状を容易に微調整することが可能となる。しかも、このような構成の循環経路であれば、インクジェットヘッドの内部の気泡は帰還流路を通じて制御タンクに帰還するため、ノズルから気泡が吐出されることがなくなる。そして、以上のような構成であれば、供給タンクや帰還タンクの上下方向位置に制約がなくなるため、これらの設置位置を決めるための設計の自由度が大きくなる。
この構成においても、前記負圧発生手段は、負圧に生じる脈動を抑制する構造とされていることが好ましい。
このようにすれば、帰還流路を流れる塗布液に作用する負圧の脈動をなくすことができるため、結果的には、既述の場合と同様に、常に安定した最適形状のメニスカスを生成することが可能となる。
この場合における負圧に生じる脈動を抑制できる構造の負圧発生手段としては、インペラー式の負圧ポンプを挙げることができると共に、負圧に生じる脈動を抑制できる構造を有する周知の負圧発生手段であれば、他の形式のものを使用しても差し支えない。
上記課題を解決するために創案された第3の本発明は、インクジェットヘッドに通じる塗布液の供給流路と、前記供給流路が連結されて塗布液を貯留する制御タンクとから、インクジェットヘッドに対する塗布液の非循環経路が構成されたインクジェット塗布液制御装置であって、前記制御タンクは、単一のタンクであると共に、前記インクジェットヘッドのノズルでのメニスカス圧力と、前記制御タンクの揚程に相当する圧力との総和に対応する負圧を発生させる負圧発生手段を備え、前記負圧発生手段は、前記制御タンクに負圧を作用させるように構成され、前記負圧発生手段により負圧を作用させる動作と、前記負圧の作用を解除させる動作とを、選択的に切り換えるように構成されていることに特徴づけられる。
このような構成によれば、制御タンクが単一のタンクであると共に、制御タンクには、インクジェットヘッドに通じる供給流路が連結されているに過ぎないため、塗布液の流れは、制御タンクから供給流路を通じてインジェットヘッドに向かう一方向となる。これにより、インクジェットヘッドに対する塗布液の非循環経路が構成される。この場合、ノズルでのメニスカスの形状は、インクジェットヘッド内を塗布液が通過する際の背圧の大きさによって決まる。そこで、この第3の本発明では、メニスカス圧力と制御タンクの揚程に相当する圧力との総和(加算した圧力)に対応する負圧を発生させる負圧発生手段を備え、且つ、その発生した負圧を制御タンクに作用させている。これにより、塗布液がインクジェットヘッド内を通過する際の背圧の大きさを、最適な大きさにすることが可能となり、メニスカスの形状も最適なものとなり得る。そして、メニスカスの形状を可変制御するには、負圧発生手段で発生する負圧の大きさを可変制御すればよいことになるため、メニスカスの形状を容易に微調整することが可能となる。そして、このように負圧発生手段により負圧を作用させている状態にある時には、上述のようにメニスカスが生成されており、この状態から負圧の作用を解除する状態に切り換えた場合には、インクジェットヘッドのノズルから塗布液を強制的に吐出して、インクジェットヘッドの内部の気泡を排出することになる。従って、インクジェットヘッドの内部に気泡が残存することがなくなる。そして、以上のような構成であれば、制御タンクの上下方向位置に制約がなくなるため、その設置位置を決めるための設計の自由度が大きくなる。
この構成においても、前記負圧発生手段は、負圧に生じる脈動を抑制する構造とされていることが好ましい。
このようにすれば、制御タンク内における塗布液に作用する負圧の脈動をなくすことができるため、結果的には、既述の場合と同様に、常に安定した最適形状のメニスカスを生成することが可能となる。
この場合、負圧に生じる脈動を抑制できる構造の負圧発生手段としては、レギュレーター付きで且つエジェクター式の負圧発生装置を挙げることができると共に、負圧に生じる脈動を抑制できる構造を有する周知の負圧発生手段であれば、他の形式のものを使用してもよい。
上記課題を解決するために創案された第4の本発明は、インクジェットヘッドに通じる塗布液の供給流路と、前記供給流路が連結されて塗布液を貯留する制御タンクとから、インクジェットヘッドに対する塗布液の非循環経路が構成されたインクジェット塗布液制御装置であって、前記制御タンクは、単一のタンクであると共に、前記インクジェットヘッドのノズルでのメニスカス圧力と、前記タンクの揚程に相当する圧力との総和に対応する負圧を発生させる負圧発生手段を備え、前記負圧発生手段は、前記制御タンクから前記インクジェットヘッドに通じる供給流路の途中に負圧を作用させるように構成され、前記負圧発生手段により負圧を作用させる動作と、前記負圧の作用を解除させる動作とを、選択的に切り換えるように構成されていることに特徴づけられる。
このような構成によれば、制御タンクが単一のタンクであると共に、制御タンクには、インクジェットヘッドに通じる供給流路が連結されているに過ぎないため、塗布液の流れは、制御タンクから供給流路を通じてインジェットヘッドに向かう一方向となる。これにより、インクジェットヘッドに対する塗布液の非循環経路が構成される。この場合、ノズルでのメニスカスの形状は、インクジェットヘッド内を塗布液が通過する際の背圧の大きさによって決まる。そこで、この第3の本発明では、メニスカス圧力と制御タンクの揚程に相当する圧力との総和(加算した圧力)に対応する負圧を発生させる負圧発生手段を備え、且つ、その発生した負圧を供給流路の途中に作用させている。これにより、塗布液がインクジェットヘッド内を通過する際の背圧の大きさを、最適な大きさにすることが可能となり、メニスカスの形状も最適なものとなり得る。そして、メニスカスの形状を可変制御するには、負圧発生手段で発生する負圧の大きさを可変制御すればよいことになるため、メニスカスの形状を容易に微調整することが可能となる。そして、このように負圧発生手段により負圧を作用させている状態にある時には、上述のようにメニスカスが生成されており、この状態から負圧の作用を解除する状態に切り換えた場合には、インクジェットヘッドのノズルから塗布液を強制的に吐出して、インクジェットヘッドの内部の気泡を排出することになる。従って、インクジェットヘッドの内部に気泡が残存することがなくなる。そして、以上のような構成であれば、制御タンクの上下方向位置に制約がなくなるため、その設置位置を決めるための設計の自由度が大きくなる。
この構成においても、前記負圧発生手段は、負圧に生じる脈動を抑制する構造とされていることが好ましい。
このようにすれば、供給流路を流れる塗布液に作用する負圧の脈動をなくすことができるため、結果的には、既述の場合と同様に、常に安定した最適形状のメニスカスを生成することが可能となる。
この場合における負圧に生じる脈動を抑制できる構造の負圧発生手段としては、インペラー式の負圧ポンプを挙げることができると共に、負圧に生じる脈動を抑制できる構造を有する周知の負圧発生手段であれば、他の形式のものを使用しても差し支えない。
以上の構成において、前記制御タンクは、インクジェットヘッドよりも上部に配設されていることが好ましい。
このようにすれば、インクジェットヘッドまたは被塗布物が横方向に移動した場合であっても、横方向移動の指向性を問わず、それらと制御タンクとが干渉するという事態を回避することが可能となる。
以上のように第1、第2、第3、第4の本発明によれば、設計の自由度を大きくした上で、容易にメニスカスの形状を可変とすることが可能なインクジェット塗布液制御装置が実現する。
以下、本発明の実施形態に係るインクジェット塗布液制御装置について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット塗布液制御装置1Aの概略構成を例示している。同図に示すように、インクジェット塗布液制御装置1Aは、制御タンクが、供給タンク2Aと帰還タンク3Aとの2つのタンクから構成され、供給タンク2AとインクジェットヘッドIJの内部とが供給流路5Aを介して接続されると共に、供給流路5Aには、開閉弁であるヘッド供給弁6Aが設置されている。また、帰還タンク3AとインクジェットヘッドIJの内部とが帰還流路7Aを介して接続されると共に、帰還流路7Aには、開閉弁であるヘッド循環弁8Aが設置されている。さらに、供給タンク2Aと帰還タンク3Aとは、連通流路9Aを介して接続されると共に、連通流路9Aには、開閉弁である循環弁10Aと、循環ポンプ11Aとが設置されている。そして、本実施形態では、供給タンク2Aと帰還タンク3Aとが、インクジェットヘッドIJの上方で同一高さ位置に設置されている。なお、インクジェットヘッドIJの下端部には、横方向(同図における左右方向)に一定のピッチで複数のノズルNZが配列されている。
従って、供給タンク2Aから供給流路5Aを通じてインクジェットヘッドIJに供給された塗布液は、インクジェットヘッドIJの内部を通過した後、帰還流路7Aを通じて帰還タンク3Aに帰還され、さらに帰還タンク3Aから連通流路9Aを通じて供給タンク2Aに戻されることによって、インクジェットヘッドIJに対する塗布液の循環経路が構成される。この場合、塗布液がインクジェットヘッドIJの内部を通過する際には、図7に示すようにノズルNZの背面側に背圧が生じることによって、ノズルNZの先端部にメニスカスMKが生成されると共に、このような状態でピエゾ素子の動作によってノズルNZから一部の塗布液が吐出され、その吐出後に再びメニスカスMKが生成されるようになっている。
さらに、供給タンク2Aの上流側には、補充タンク12Aが備えられ、補充タンク12Aと供給タンク2Aとが補充流路13Aを介して接続される共に、補充流路13Aには、開閉弁である供給弁14Aと、供給ポンプ15Aとが設置されている。また、供給タンク2Aにおける塗布液の液面の上部空間2Aaは、途中に大気開放弁16Aが設置された大気流通流路17Aの一端部(下端部)に通じていると共に、この大気流通流路17Aの他端部(上端部)は大気に通じている。
然して、帰還タンク3Aにおける塗布液の液面の上部空間3Aaは、途中に負圧弁18Aが設置された負圧流通流路19Aの一端部(下端部)に通じていると共に、この負圧流通流路19Aの他端部(上端部)は、負圧発生装置20Aに接続されている。この負圧発生装置20Aとしては、本実施形態では、負圧に生じる脈動を抑制する構造とされたレギュレーター付きで且つエジェクター式のものが使用されている。さらに、負圧流通流路19Aにおける負圧弁18Aよりも下方には、負圧の大きさを制御する制御流路21Aが接続されており、この制御流路21Aには、開閉弁である補助負圧弁22Aと、圧力計23Aとが設置され、制御流路21Aの先端(上端)は閉鎖されている。そして、圧力計23Aからの電気信号23Sは、負圧発生装置20Aに送られる。従って、負圧発生装置20Aによって発生した負圧の大きさが圧力計23Aによって測定され、その測定値に基づいて負圧を目標値にするための制御が行われるようになっている。なお、このような負圧の制御を行うためには、圧力計23Aを負圧発生装置20Aに内蔵してもよい。
そして、負圧発生装置20Aから負圧流通流路19Aを通じて帰還タンク3Aの上部空間3Aaに導入される負圧の圧力値は、インクジェットヘッドIJのノズルNZでメニスカスMKを生成するために必要な圧力(メニスカス圧力)と、帰還タンク3Aの揚程に相当する圧力(揚程圧力)との総和(両者を加算した圧力)に対応する負圧の圧力値とされている。つまり、前者の圧力値の絶対値と後者の圧力値の絶対値とは同一とされている。なお、帰還タンク3Aの揚程は、同図に符号P1で示す寸法、つまり帰還タンク3Aの液面からインクジェットヘッドIJのノズルNZの先端部までの高さ寸法に対応しており、メニスカス圧力は、同図に符号P2で示す高さ寸法に対応している。なお、揚程は300〜500mmであることが好ましく、メニスカス圧力は、大気圧を基準として−50Paを負圧側に超えることが好ましい。
また、インクジェットヘッドIJの直下方には、半導体基板、ガラス基板、樹脂基板、金属基板などの被塗布物24Aが配列されているが、この場合、インクジェットヘッドIJが横方向に移動するものであってもよく、或いは、被塗布物24Aが横方向に移動するものであってもよい。
次に、上記第1実施形態に係るインクジェット塗布液制御装置1Aの作用を説明する。
補充タンク12Aは塗布液を供給タンク2Aに補充するための大容量のタンクであって、供給弁14Aが開かれた時に供給ポンプ15Aが駆動することによって補充タンク12Aから供給タンク2Aに補充流路13Aを通じて塗布液が補充されていく。そして、供給タンク2A内における塗布液の液面が上限位置2L1に達した時点においては、供給弁14Aが閉じられ且つ供給ポンプ15Aの駆動が停止して、補充タンク12Aから供給タンク2Aへの塗布液の補充が停止する。この状態で、供給タンク2A内の塗布液がインクジェットヘッドIJで使用されることによって、供給タンク2A内における塗布液の液面が下限位置2L2に達した時点で、再び、供給弁14Aが開かれ且つ供給ポンプ15Aが駆動して、補充タンク12Aから供給タンク2Aに塗布液が補充される。このような動作が繰り返し行われることで、供給タンク2A内における塗布液の液面は、上限位置2L1と下限位置2L2との間に常に維持される。
また、負圧発生装置20Aは、メニスカス圧力と揚程圧力との総和に対応する負圧を発生するように設定されている。そして、供給弁14A及び圧力弁22Aを除く全ての弁が閉じられた状態から、負圧弁18A、ヘッド循環弁8A、ヘッド供給弁6A、及び大気開放弁16Aを開くことによって、以下の動作が実行される。
供給タンク2A内の塗布液は、自重によって供給流路5Aを通じてインクジェットヘッドIJに供給され、インクジェットヘッドIJの内部を通過した後、帰還流路7Aを通じて帰還タンク3A内に流入する。この動作が行われる理由は、帰還タンク3A内における塗布液の液面の上部空間3Aaが、負圧発生装置20Aに負圧流路19Aを介して連通した状態にあり、且つ、当該上部空間3Aaの圧力が、メニスカス圧力と揚程圧力との総和に対応する負圧になっているからである。そして、負圧発生装置20Aは、発生する負圧に生じる脈動を抑制(あるいは皆無に)できる構造とされているため、インクジェットヘッドIJ内を通過する塗布液には、脈動が生じない。この動作が行われている間においては、インクジェットヘッドIJのノズルNZの先端部には、図7に示すような形状のメニスカスMKが形成される。これにより、ノズルNZの先端部から塗布液が滴下するという不具合が回避される。そして、ピエゾ素子の動作によって、ノズルNZの先端部から被塗布物24Aに適宜塗布液が吐出されるが、この塗布液の吐出前及び吐出後においては、ノズルNZの先端部には図7に示す形状のメニスカスMKが生成された状態に維持される。
このようにノズルNZから適量の塗布液が吐出されつつ供給タンク2Aから塗布液が次々と帰還タンク3Aに帰還されることによって、帰還タンク3A内における塗布液の液面が上限位置3L1に達した時点においては、循環弁10Aが開かれ且つ循環ポンプ11Aが駆動することで、塗布液が供給タンク2Aに送られると共に、帰還タンク3A内における塗布液の液面が低下していく。そして、帰還タンク3A内における塗布液の液面が下限位置3L2に達した時点においては、循環弁10Aが閉じられ且つ循環ポンプ11Aの駆動が停止する。このような動作が繰り返し行われることで、帰還タンク3A内における塗布液の液面は、上限位置3L1と下限位置3L2との間に維持される。
以上のような動作が行われることにより、塗布液がインクジェットヘッドIJの内部を通過する際には、ノズルNZの先端部にメニスカスMKが生成される。この場合、負圧発生装置20Aは、帰還タンク3Aにおける塗布液の液面の上部空間3Aaに、メニスカス圧力と揚程圧力との総和に対応する負圧を生じさせているため、メニスカスMKの形状は、ノズルNZの先端からの塗布液の滴下を阻止するための条件を満たす最適形状となる。すなわち、メニスカスMKの形状は、塗布液の粘度やノズルNZの流路面積さらには帰還タンク3Aの高さ位置などに応じて、最適形状が決まるが、負圧発生装置20Aによって生じる負圧は、圧力計23Aにより測定された負圧の大きさに応じて可変制御することができる。そのため、塗布液の粘度が変更されたりまたはノズルNZの流路面積が変更されたりもしくは帰還タンク3Aの高さ位置が変更されたりした場合であっても、常に最適形状のメニスカスMKを生成することが可能となる。
また、供給タンク2Aから帰還タンク3Aに塗布液が送られる過程においては、インクジェットヘッドIJ内を塗布液が循環されるようにして通過することになるため、インクジェットヘッドIJ内の気体は、通過する塗布液と共に外部に排出される。これにより、塗布液中に気体が混入した状態でノズルNZから吐出されるという不具合が回避される。しかも、インクジェットヘッドIJ内においては、ノズルNZの近傍を塗布液が循環されるように通過するため、泡がノズルNZの近傍に付着するという事態が回避され、これによってもノズルNZの吐出不良が生じなくなる。なお、塗布液としては、6〜50mPa・s、好ましくは、20〜50mPa・sの高粘度のものを使用することができる。
なお、上記第1実施形態では、供給タンク2Aと帰還タンク3Aとを同一高さ位置に配置したが、この両タンク2A、3Aは、高さ位置が異なっていてもよい。また、上記第1実施形態では、帰還タンク3AをインクジェットヘッドIJの上方に配置したが、帰還タンク3AをインクジェットヘッドIJよりも下方に配置してもよい。
さらに、上記第1実施形態では、負圧発生装置20Aとして、レギュレーター付きで且つエジェクター式のものを使用したが、負圧に生じる脈動を抑制する構造とされた負圧発生装置であれば、他のものであってもよい。
また、上記第1実施形態は、一個のインクジェットヘッドIJを備える場合に本発明を適用したが、複数個のインクジェットヘッドIJを備える場合についても本発明を適用することが可能である。
図2は、本発明の第2実施形態に係るインクジェット塗布液制御装置1Bの概略構成を例示している。同図に示すように、インクジェット塗布液制御装置1Bは、単一の制御タンク2Bを有し、制御タンク2BとインクジェットヘッドIJの内部とが供給流路3Bを介して接続されると共に、供給流路3Bには、開閉弁であるヘッド供給弁4Bが設置されている。また、制御タンク2BとインクジェットヘッドIJの内部とが帰還流路5Bを介して接続されると共に、帰還流路5Bには、開閉弁であるヘッド循環弁6Bが設置されている。なお、インクジェットヘッドIJの下端部には、横方向(同図における左右方向)に一定のピッチで複数のノズルNZが配列されている。
従って、制御タンク2Bから供給流路3Bを通じてインクジェットヘッドIJに供給された塗布液は、インクジェットヘッドIJの内部を通過した後、帰還流路5Bを通じて制御タンク2Bに戻されることによって、インクジェットヘッドIJに対する塗布液の循環経路が構成される。
さらに、制御タンク2Bの上流側には、補充タンク7Bが備えられ、補充タンク7Bと制御タンク2Bとが補充流路8Bを介して接続される共に、補充流路8Bには、開閉弁である供給弁10Bと、供給ポンプ9Bとが設置されている。また、制御タンク2Bにおける塗布液の液面の上部空間2Baは、途中に第1大気開放弁11Bが設置された大気流通流路12Bの一端部(下端部)に通じていると共に、この大気流通流路12Bの他端部(上端部)は大気に通じている。
この場合、塗布液がインクジェットヘッドIJの内部を通過する際には、図7に示すようにノズルNZの背面側に背圧が生じることによって、ノズルNZの先端部にメニスカスMKが生成されると共に、このような状態でピエゾ素子の動作によってノズルNZから一部の塗布液が吐出され、その吐出後に再びメニスカスMKが生成されるようになっている。
然して、帰還流路5Bのヘッド供給弁6Bよりも下流側には、負圧手段としての負圧ポンプユニット13Bが設置されている。負圧ポンプユニット13Bは、ユニットケーシング14Bと、ユニットケーシング14Bの下流側端部に固定されたモータ15Bと、ユニットケーシング14B内に挿入され且つモータ15Bの回転駆動力によって回転するシャフト16Bと、ユニットケーシング14Bの上流側端部に配設され且つシャフト16Bの上流側端部に固定されたインペラー17Bを有する負圧ポンプ18Bとを備えている。そして、ユニットケーシング14B内には、帰還流路5Bの一部を構成する内部流路19Bが設けられ、内部流路19Bの上流端が、帰還流路5Bの上流側部分5Baに連通すると共に、内部流路19Bの下流端が、帰還流路5Bの下流側部分5Bbに連通している。なお、以上の説明で、「上流側」とは、図例では下側を意味し、「下流側」とは、図例では上側を意味している。
帰還流路5Bの上流側部分5Baと、供給流路3Bとは、バイパス流路20Bを介して連通されており、バイパス流路20Bには、開閉弁であるバイパス弁21Bが設置されている。また、帰還流路5Bの上流側部分5Baとバイパス流路20Bとの連通部には、大気流通流路22Bが接続されており、大気流通流路22Bの一端部(大気開放側の端部)は、開閉弁である第2大気開放弁23Bを介して大気に通じている。さらに、大気流通流路22Bにおける第2大気開放弁23Bよりも下方側には、制御流路24Bの一端が接続され、制御流路24Bには、開閉弁である圧力弁25Bと、圧力計26Bとが設置されると共に、制御流路24Bの他端(上端)は閉鎖されている。そして、圧力計26Bからの電気信号26Sは、負圧ポンプ制御部27Bに送られる。従って、負圧ポンプ18Bが帰還流路5Bの上流側部分5Baから塗布液を吸い上げるための負圧の大きさを圧力計26Bが測定し、その測定値に基づいて負圧ポンプ制御部27Bが負圧を目標値にするための制御を行うようになっている。
そして、負圧ポンプ18Bが帰還流路5Bの上流側部分5Baから塗布液を吸い上げるための負圧の圧力値は、インクジェットヘッドIJのノズルNZでメニスカスMKを生成するために必要な圧力(メニスカス圧力)と、制御タンク2Bの揚程に相当する圧力(揚程圧力)との総和に対応する圧力値とされている。つまり、前者の圧力値の絶対値と後者の圧力値の絶対値とは同一とされている。なお、制御タンク2Bの揚程は、同図に符号P1で示す寸法、つまり制御タンク2Bの液面からインクジェットヘッドIJのノズルの先端部までの高さ寸法に対応しており、メニスカス圧力は、同図に符号P2で示す高さ寸法に対応している。なお、揚程は300〜500mmであることが好ましく、メニスカス圧力は、大気圧を基準として−50Paを負圧側に超えることが好ましい。
また、インクジェットヘッドIJの直下方には、半導体基板、ガラス基板、樹脂基板、金属基板などの被塗布物28Bが配列されているが、この場合、インクジェットヘッドIJが横方向に移動するものであってもよく、或いは、被塗布物28Bが横方向に移動するものであってもよい。
次に、上記第2実施形態に係るインクジェット塗布液制御装置1Bの作用を説明する。
補充タンク7Bは塗布液を制御タンク2Bに補充するための大容量のタンクであって、供給弁10Bが開かれた時に供給ポンプ9Bが駆動することによって補充タンク7Bから制御タンク2Bに補充流路8Bを通じて塗布液が補充されていく。そして、制御タンク2B内における塗布液の液面が上限位置2L1に達した時点においては、供給弁10Bが閉じられ且つ供給ポンプ9Bの駆動が停止して、補充タンク7Bから制御タンク2Bへの塗布液の補充が停止する。この状態で、制御タンク2B内の塗布液がインクジェットヘッドIJで使用されることによって、制御タンク2B内における塗布液の液面が下限位置2L2に達した時点で、再び、供給弁10Bが開かれ且つ供給ポンプ9Bが駆動して、補充タンク7Bから制御タンク2Bに塗布液が補充される。このような動作が繰り返し行われることで、制御タンク2B内における塗布液の液面は、上限位置2L1と下限位置2L2との間に常に維持される。
そして、先ず始めに、供給弁10B及び圧力弁25Bを除く全ての弁を閉じた状態から、第1大気開放弁11B、バイパス弁21B、圧力弁25B、及び第2大気開放弁23Bを開くことで、制御タンク2B内の塗布液が、自重によって供給流路3Bの途中からバイパス流路20Bを通過して大気流通流路22Bの途中まで上昇する。この時に、大気流通流路22Bを上昇した塗布液の高さ位置は、制御タンク2B内における塗布液の液面と同一の高さ位置となると共に、ユニットケーシング14B内における塗布液の高さ位置も同一になる。
この状態で、第2大気開放弁23Bを閉じ且つ負圧ポンプ制御部27Bがモータ15Bに電気信号27Sを送って負圧ポンプ18Bを駆動させれば、制御タンク2B内の塗布液は、自重によって供給流路3Bの途中からバイパス流路20Bを通過して帰還流路5Bの上流側部分5Baから負圧ポンプ18Bに吸い込まれる。そして、この負圧ポンプ18Bに吸い込まれた塗布液は、ユニットケーシング14Bの内部流路19Bを通過して帰還流路5Bの下流側部分5Bbに吐出され、制御タンク2Bに帰還する。これにより、制御タンク2Bから、供給流路3Bと、バイパス流路20Bと、帰還流路5Bの上流側部分5Baと、ユニットケーシング14Bの内部流路19Bと、帰還流路5Bの下流側部分5Bbとを経由して、制御タンク2Bに戻る塗布液の循環が始まる。このようにして塗布液の循環が始まれば、圧力計26Bによって徐々に負圧が大きくなっていくことが測定される。そして、その測定される負圧の値が、メニスカス圧力と揚程圧力との総和に対応する値となった時点においては、圧力計26Bからの電気信号26Sに基づいて負圧ポンプ制御部27Bがモータ15Bに電気信号27Sを送ることによって、負圧ポンプ18Bのインペラー17Bの回転数が最適値となる。これにより、帰還流路5Bの上流側部分5Baから負圧ポンプ18Bが塗布液を吸い上げるための負圧の値が設定された値となる。
この時点で、バイパス弁21Bを閉じ且つヘッド供給弁4Bとヘッド循環弁6Bとを開くことによって、以下に示すような動作が行われる。すなわち、制御タンク2B内の塗布液は、自重によって供給流路3Bを通じてインクジェットヘッドIJに供給され、インクジェットヘッドIJの内部を通過した後、帰還流路5Bを通じて制御タンク2B内に戻る。この場合、負圧ポンプ18Bは、帰還流路5Bの上流側部分5Baから塗布液を吸い上げるための負圧に生じる脈動を抑制(あるいは皆無に)できる構造とされているため、インクジェットヘッドIJ内を通過する塗布液には、脈動が生じない。この動作が行われている間においては、インクジェットヘッドIJのノズルNZの先端部には、図7に示すような形状のメニスカスMKが形成される。これにより、ノズルNZの先端部から塗布液が滴下するという不具合が回避される。そして、ピエゾ素子の動作によって、ノズルNZの先端部から被塗布物28Bに適宜塗布液が吐出されるが、この塗布液の吐出前及び吐出後においては、ノズルNZの先端部には図7に示す形状のメニスカスMKが生成された状態に維持される。
以上のような動作が行われている間は、負圧ポンプ18Bが、帰還流路5Bの上流側部分5Baから吸い上げている塗布液に対して、メニスカス圧力と揚程圧力との総和に対応する負圧を作用させているため、メニスカスMKの形状は、ノズルNZの先端からの塗布液の滴下を阻止するための条件を満たす最適形状となる。すなわち、メニスカスMKの形状は、塗布液の粘度やノズルNZの流路面積さらには制御タンク2Bの高さ位置などに応じて、最適形状が決まるが、負圧ポンプ18Bにより発生する負圧は、圧力計26Bにより測定された負圧の大きさに応じて可変制御することができる。そのため、塗布液の粘度が変更されたりまたはノズルNZの流路面積が変更されたりもしくは制御タンク2Bの高さ位置が変更されたりした場合であっても、常に最適形状のメニスカスMKを生成することが可能となる。
また、塗布液が制御タンク2Bから供給流路3B及び帰還流路5Bを通じて循環している過程においては、インクジェットヘッドIJ内を塗布液が循環されるようにして通過することになるため、インクジェットヘッドIJ内の気体は、通過する塗布液と共に外部に排出される。これにより、塗布液中に気体が混入した状態でノズルNZから吐出されるという不具合が回避される。しかも、インクジェットヘッドIJ内においては、ノズルNZの近傍を塗布液が循環されるように通過するため、泡がノズルNZの近傍に付着するという事態が回避され、これによってもノズルNZの吐出不良が生じなくなる。なお、塗布液としては、6〜50mPa・s、好ましくは、20〜50mPa・sの高粘度のものを使用することができる。
なお、上記第2実施形態では、制御タンク2BをインクジェットヘッドIJの上方に配置したが、制御タンク2BをインクジェットヘッドIJよりも下方に配置してもよい。
さらに、上記第2実施形態では、負圧ポンプ18Bとして、インペラー式のものを使用したが、負圧に生じる脈動を抑制する構造とされた負圧ポンプであれば、他のものであってもよい。
また、上記第2実施形態は、一個のインクジェットヘッドIJを備える場合に本発明を適用したが、複数個のインクジェットヘッドIJを備える場合についても本発明を適用することが可能である。
図3は、本発明の第3実施形態に係るインクジェット塗布液制御装置1Cの概略構成を例示している。同図に示すように、インクジェット塗布液制御装置1Cは、単一の制御タンク2Cを有すると共に、制御タンク2CからインクジェットヘッドIJの内部に一方的に塗布液を供給する供給流路3Cを有している。なお、インクジェットヘッドIJの下端部には、横方向(同図における左右方向)に一定のピッチで複数のノズルNZが配列されている。供給流路3Cは、制御タンク2Cに上流端が連結された1本の基幹供給流路3Caと、基幹供給流路3Caから分岐してインクジェットヘッドIJのノズル配列方向(左右方向)の両端部にそれぞれ通じる2本の分岐供給流路3Cbとから構成されている。そして、2本の分岐供給流路3Cbにはそれぞれ、開閉弁であるヘッド供給弁4Cが設置されている。
従って、制御タンク2Cから基幹供給流路3Ca及び分岐供給流路3Cbを通じてインクジェットヘッドIJに供給された塗布液は、インクジェットヘッドIJの内部の複数のノズルNZに一方的に供給されることから、インクジェットヘッドIJに対する塗布液の非循環経路が構成される。
さらに、制御タンク2Cの上流側には、補充タンク5Cが備えられ、補充タンク5Cと制御タンク2Cとが補充流路6Cを介して接続される共に、補充流路6Cには、開閉弁である供給弁7Cと、供給ポンプ8Cとが設置されている。また、制御タンク2Cにおける塗布液の液面の上部空間2Caは、途中に大気開放弁9Cが設置された大気流通流路10Cの一端部(下端部)に通じていると共に、この大気流通流路10Cの他端部(上端部)は大気に通じている。
然して、制御タンク2Cにおける塗布液の液面の上部空間2Caは、途中に負圧弁11Cが設置された負圧流通流路12Cの一端部(下端部)に通じていると共に、この負圧流通流路12Cの他端部(上端部)は、負圧発生装置13Cに接続されている。この負圧発生装置13Cとしては、本実施形態では、負圧に生じる脈動を抑制する構造とされたレギュレーター付きで且つエジェクター式のものが使用されている。さらに、負圧流通流路12Cにおける負圧弁11Cよりも下方には、負圧の大きさを制御する制御流路14Cが接続されており、この制御流路14Cには、開閉弁である補助負圧弁15Cと、圧力計16Cとが設置され、制御流路14Cの先端(上端)は閉鎖されている。そして、圧力計16Cからの電気信号16Sは、負圧発生装置13Cに送られる。従って、負圧発生装置13Cによって発生した負圧の大きさが圧力計16Cによって測定され、その測定値に基づいて負圧を目標値にするための制御が行われるようになっている。なお、このような負圧の制御を行うためには、圧力計16Cを負圧発生装置13Cに内蔵してもよい。
そして、負圧発生装置13Cから負圧流通流路12Cを通じて制御タンク2Cの上部空間2Caに導入される負圧の圧力値は、インクジェットヘッドIJのノズルNZでメニスカスMKを生成するために必要な圧力(メニスカス圧力)と、制御タンク2Cの揚程に相当する圧力(揚程圧力)との総和つまり加算値に対応する圧力値とされている。つまり、前者の圧力値の絶対値と後者の圧力値の絶対値とは同一とされている。なお、制御タンク2Cの揚程は、同図に符号P1で示す寸法、つまり制御タンク2Cの液面からインクジェットヘッドIJのノズルNZの先端部までの高さ寸法に対応しており、メニスカス圧力は、同図に符号P2で示す高さ寸法に対応している。なお、揚程は300〜500mmであることが好ましく、メニスカス圧力は、大気圧を基準として−50Paを負圧側に超えることが好ましい。
従って、上述の負圧発生装置13Cの動作によって、インクジェットヘッドIJのノズルNZの先端部にメニスカスMKを生成し、このような状態でピエゾ素子の動作によってノズルNZから塗布液を吐出し、その吐出後に再びメニスカスMKを生成するようになっている。
さらに、制御タンク2Cにおける塗布液の液面の上部空間2Caは、この上部空間2Caに加圧力を作用させる加圧流路17Cの一端部(下端部)に通じていると共に、加圧流路17Cの他端部(上端部)は、図外の加圧装置に接続されている。そして、加圧流路17Cには、ヘッド加圧弁18Cが設置されている。
従って、上述の負圧発生装置13Cの動作によってインクジェットヘッドIJのノズルNZの先端部にメニスカスを生成しつつノズルNZから塗布液を吐出しているとき以外のときに、加圧流路17Cを通じて制御タンク2Cにおける塗布液の液面の上部空間2Caに加圧力を作用させることで、インクジェットヘッドIJのノズルNZから吐出液を強制的に吐出させ、インクジェットヘッドIJの内部の泡をノズルNZを通じて排出させるようになっている。
また、インクジェットヘッドIJの直下方には、半導体基板、ガラス基板、樹脂基板、金属基板などの被塗布物19Cが配列されているが、この場合、インクジェットヘッドIJが横方向に移動するものであってもよく、或いは、被塗布物19Cが横方向に移動するものであってもよい。
次に、上記第3実施形態に係るインクジェット塗布液制御装置1Cの作用を説明する。
補充タンク5Cは塗布液を制御タンク2Cに補充するための大容量のタンクであって、供給弁7Cが開かれた時に供給ポンプ8Cが駆動することによって補充タンク5Cから制御タンク2Cに補充流路6Cを通じて塗布液が補充されていく。そして、制御タンク2C内における塗布液の液面が上限位置2L1に達した時点においては、供給弁7Cが閉じられ且つ供給ポンプ8Cの駆動が停止して、補充タンク5Cから制御タンク2Cへの塗布液の補充が停止する。この状態で、制御タンク2C内の塗布液がインクジェットヘッドIJで使用されることによって、制御タンク2C内における塗布液の液面が下限位置2L2に達した時点で、再び、供給弁7Cが開かれ且つ供給ポンプ8Cが駆動して、補充タンク5Cから制御タンク2Cに塗布液が補充される。このような動作が繰り返し行われることで、制御タンク2C内における塗布液の液面は、上限位置2L1と下限位置2L2との間に常に維持される。
そして、先ず始めに、供給弁7C及び圧力弁15Cを除く全ての弁が閉じられている状態から、供給流路3Cの2本の分岐流路3Cbにそれぞれ設置されているヘッド供給弁4Cを開き且つ加圧流路17Cに設置されているヘッド加圧弁18Cを一定時間開くことで、インクジェットヘッドIJのノズルNZから塗布液を強制的に吐出させて、インクジェットヘッドIJの内部の泡を、ノズルNZを通じて排出させる。
次に、この状態で、ヘッド加圧弁18Cを閉じ且つ負圧弁11Cを開くことで、以下に示す動作が実行される。すなわち、制御タンク2C内の塗布液は、自重によって供給流路3Cを通じてインクジェットヘッドIJに供給されるが、制御タンク2C内における塗布液の液面の上部空間2Caは、負圧発生装置13Cに負圧流路12Cを介して連通した状態にあるため、当該上部空間2Caの圧力は、メニスカス圧力と揚程圧力との総和に対応する負圧になっている。そして、負圧発生装置13Cは、発生する負圧に生じる脈動を抑制(あるいは皆無に)できる構造とされているため、インクジェットヘッドIJ内に供給される塗布液には、脈動が生じない。この動作が行われている間においては、インクジェットヘッドIJのノズルNZの先端部には、図7に示すような形状のメニスカスMKが形成されるため、ノズルNZの先端部から塗布液が滴下するという不具合が回避される。そして、ピエゾ素子の動作によって、ノズルNZの先端部から被塗布物19Cに適宜塗布液が吐出されるが、この塗布液の吐出前及び吐出後においては、ノズルNZの先端部には図7に示す形状のメニスカスMKが生成された状態に維持される。
以上のような動作が行われることにより、塗布液がインクジェットヘッドIJの内部を通過する際には、ノズルNZの先端部にメニスカスMKが生成されるが、このメニスカスMKの形状は、ノズルNZの先端からの塗布液の滴下を阻止するための条件を満たす最適形状となる。すなわち、メニスカスMKの形状は、塗布液の粘度やノズルNZの流路面積さらには制御タンク2Cの高さ位置などに応じて、最適形状が決まるが、負圧発生装置13Cによって生じる負圧は、圧力計16Cにより測定された負圧の大きさに応じて可変制御することができる。そのため、塗布液の粘度が変更されたりまたはノズルNZの流路面積が変更されたりもしくは制御タンク2Cの高さ位置が変更されたりした場合であっても、常に最適形状のメニスカスMKを生成することが可能となる。
また、このような動作が行われていないときの一定時間においては、加圧流路17Cからの加圧流体の作用によって、インクジェットヘッドIJの内部の泡が、ノズルNZを通じて塗布液と共に外部に排出される。これにより、塗布液中に泡が混入した状態でノズルNZから吐出されるという不具合が回避される。なお、塗布液としては、6〜50mPa・s、好ましくは、20〜50mPa・sの高粘度のものを使用することができる。
なお、上記第3実施形態では、制御タンク2CをインクジェットヘッドIJの上方に配置したが、制御タンク2CをインクジェットヘッドIJよりも下方に配置してもよい。
さらに、上記第3実施形態では、負圧発生装置13Cとして、レギュレーター付きで且つエジェクター式のものを使用したが、負圧に生じる脈動を抑制する構造とされた負圧発生装置であれば、他のものであってもよい。
また、上記第3実施形態は、一個のインクジェットヘッドIJを備える場合に本発明を適用したが、複数個のインクジェットヘッドIJを備える場合についても本発明を適用することが可能である。
図4は、本発明の第4実施形態に係るインクジェット塗布液制御装置1Dの概略構成を例示している。同図に示すように、インクジェット塗布液制御装置1Dは、単一の制御タンク2Dを有すると共に、制御タンク2DからインクジェットヘッドIJの内部に一方的に塗布液を供給する供給流路3Dを有している。なお、インクジェットヘッドIJの下端部には、横方向(同図における左右方向)に一定のピッチで複数のノズルNZが配列されている。供給流路3Dの上流側部分3Daは、上流端が制御タンク2Dに連結された1本の流路である。これに対して、供給流路3Dの下流側部分3Dbは、後述する負圧ポンプ16Dに上流端が連結された1本の基幹下流側供給流路3Dcと、基幹下流側供給流路3Dcから分岐してインクジェットヘッドIJのノズル配列方向(左右方向)の両端部にそれぞれ通じる2本の分岐下流側供給流路3Ddとから構成されている。そして、2本の分岐下流側供給流路3Ddにはそれぞれ、開閉弁であるヘッド供給弁4Dが設置されている。
従って、制御タンク2Dから供給流路3Dの上流側部分3Da及び下流側部分3Dbを通過してインクジェットヘッドIJに供給された塗布液は、インクジェットヘッドIJの内部に一方的に供給されることから、インクジェットヘッドIJに対する塗布液の非循環経路が構成される。
さらに、制御タンク2Dの上流側には、補充タンク5Dが備えられ、補充タンク5Dと制御タンク2Dとが補充流路6Dを介して接続される共に、補充流路6Dには、開閉弁である供給弁7Dと、供給ポンプ8Dとが設置されている。また、制御タンク2Dにおける塗布液の液面の上部空間2Daは、途中に第1大気開放弁9Dが設置された大気流通流路10Dの一端部(下端部)に通じていると共に、この大気流通流路10Dの他端部(上端部)は大気に通じている。
然して、供給流路3Dにおける上流側部分3Daと下流側部分3Dbとの間には、負圧手段としての負圧ポンプユニット11Dが設置されている。負圧ポンプユニット11Dは、ユニットケーシング12Dと、ユニットケーシング12Dの上流側端部に固定されたモータ13Dと、ユニットケーシング12D内に挿入され且つモータ13Dの回転駆動力によって回転するシャフト14Dと、ユニットケーシング12Dの下流側端部に配設され且つシャフト14Dの下流側端部に固定されたインペラー15Dを有する負圧ポンプ16Dとを備えている。そして、ユニットケーシング12D内には、供給流路3Dの一部を構成する内部流路17Dが設けられ、内部流路17Dの上流端が、供給流路3Dの上流側部分3Daに連通すると共に、内部流路17Dの下流端が、供給流路3Dの下流側部分3Dbにおける基幹下流側供給流路3Dcに連通している。なお、以上の説明で、「上流側」とは、図例では上側を意味し、「下流側」とは、図例では下側を意味している。
供給流路3Dの下流側部分3Dbにおける基幹下流側供給流路3Dcの下端部には、大気流通流路18Dが接続されており、大気流通流路18Dの一端部(大気開放側の端部)は、開閉弁である第2大気開放弁19Dを介して大気に通じている。さらに、大気流通流路18Dにおける第2大気開放弁19Dよりも下方側には、制御流路20Dの一端が接続され、制御流路20Dには、開閉弁である圧力弁21Dと、圧力計22Dとが設置されると共に、制御流路20Dの他端(上端)は閉鎖されている。そして、圧力計22Dからの電気信号22Sは、負圧ポンプ制御部23Dに送られる。従って、負圧ポンプ16Dが供給流路3Dの下流側部分3Dbから塗布液を吸い上げるための負圧の大きさを圧力計22Dが測定し、その測定値に基づいて負圧ポンプ制御部23Dが負圧を目標値にするための制御を行うようになっている。
そして、負圧ポンプ16Dが供給流路3Dの下流側部分3Dbから塗布液を吸い上げるための負圧の圧力値は、インクジェットヘッドIJのノズルNZでメニスカスMKを生成するために必要な圧力(メニスカス圧力)と、制御タンク2Dの揚程に相当する圧力(揚程圧力)との総和に対応する圧力値とされている。つまり、前者の圧力値の絶対値と後者の圧力値の絶対値とは同一とされている。なお、制御タンク2Dの揚程は、同図に符号P1で示す寸法、つまり制御タンク2Dの液面からインクジェットヘッドIJのノズルNZの先端部までの高さ寸法に対応しており、メニスカス圧力は、同図に符号P2で示す高さ寸法に対応している。なお、揚程は300〜500mmであることが好ましく、メニスカス圧力は、大気圧を基準として−50Paを負圧側に超えることが好ましい。
従って、上述の負圧ポンプ16Dの動作によって、インクジェットヘッドIJのノズルNZの先端部にメニスカスMKを生成し、このような状態でピエゾ素子の動作によってノズルNZから塗布液を吐出し、その吐出後に再びメニスカスMKを生成するようになっている。
さらに、制御タンク2Dにおける塗布液の液面の上部空間2Daは、この上部空間2Daに加圧力を作用させる加圧流路24Dの一端部(下端部)に通じていると共に、加圧流路24Dの他端部(上端部)は、図外の加圧装置に接続されている。そして、加圧流路24Dには、ヘッド加圧弁25Dが設置されている。
従って、上述の負圧ポンプ16Dの動作によってインクジェットヘッドIJのノズルNZの先端部にメニスカスを生成しつつノズルNZから塗布液を吐出しているとき以外のときに、加圧流路24Dを通じて制御タンク2Dにおける塗布液の液面の上部空間2Daに加圧力を作用させることで、インクジェットヘッドIJのノズルNZから吐出液を強制的に吐出させ、インクジェットヘッドIJの内部の泡をノズルNZを通じて排出させるようになっている。
また、インクジェットヘッドIJの直下方には、半導体基板、ガラス基板、樹脂基板、金属基板などの被塗布物26Dが配列されているが、この場合、インクジェットヘッドIJが横方向に移動するものであってもよく、或いは、被塗布物IJが横方向に移動するものであってもよい。
次に、上記第4実施形態に係るインクジェット塗布液制御装置1Dの作用を説明する。
補充タンク5Dは塗布液を制御タンク2Dに補充するための大容量のタンクであって、供給弁7Dが開かれた時に供給ポンプ8Dが駆動することによって補充タンク5Dから制御タンク2Dに補充流路6Dを通じて塗布液が補充されていく。そして、制御タンク2D内における塗布液の液面が上限位置2L1に達した時点においては、供給弁7Dが閉じられ且つ供給ポンプ8Dの駆動が停止して、補充タンク5Dから制御タンク2Dへの塗布液の補充が停止する。この状態で、制御タンク2D内の塗布液がインクジェットヘッドIJで使用されることによって、制御タンク2D内における塗布液の液面が下限位置2L2に達した時点で、再び、供給弁7Dが開かれ且つ供給ポンプ8Dが駆動して、補充タンク5Dから制御タンク2Dに塗布液が補充される。このような動作が繰り返し行われることで、制御タンク2D内における塗布液の液面は、上限位置2L1と下限位置2L2との間に常に維持される。
そして、先ず始めに、供給弁7D及び圧力弁21Dを除く全ての弁を閉じた状態から、第2大気開放弁19Dを開くことで、塗布液は、制御タンク2Dから負圧ポンプ16Dを通過して大気流通流路18Dにおける第2大気開放弁19Dの下方位置まで上昇し、その上昇端位置が制御タンク2D内の液面と同一高さ位置(揚程の上端位置)となると共に、ユニットケーシング12D内における塗布液の高さ位置も同一になる。
この状態で、第2大気開放弁19Dを閉じ且つ2つのヘッド供給弁4Dを開くと共にヘッド加圧弁25Dを一定時間開くことで、インクジェットヘッドIJのノズルNZから塗布液を強制的に吐出させて、インクジェットヘッドIJの内部の泡を、ノズルNZを通じて排出させる。
次に、この状態から、ヘッド加圧弁25Dを閉じ且つ負圧ポンプ制御部23Dがモータ13Dに電気信号23Sを送って負圧ポンプ16Dを駆動させれば、以下に示すような動作が行われる。すなわち、制御タンク2D内の塗布液は、供給流路3Dの上流側部分3Daからユニットケーシング12Dの内部流路17Dを通過して負圧ポンプ16Dに至り、さらに負圧ポンプ16Dから供給流路3Dの下流側部分3Db(基幹下流側供給流路3Dc及び分岐下流側供給流路2Dd)を通じてインクジェットヘッドIJに供給され、ノズルNZの先端部から吐出される。この場合、負圧ポンプ16Dは、供給流路3Dの下流側部分3Dbから塗布液を吸い上げるための負圧に生じる脈動を抑制(あるいは皆無に)できる構造とされているため、インクジェットヘッドIJに供給される塗布液には、脈動が生じない。この動作が行われている間においては、ピエゾ素子の動作によって、ノズルNZの先端部から被塗布物26Dに適宜塗布液が吐出されるが、この塗布液の吐出前及び吐出後においては、ノズルNZの先端部には図7に示す形状のメニスカスMKが生成された状態に維持される。これにより、ノズルNZの先端部から塗布液が滴下するという不具合が回避される。
以上のような動作が行われている間は、負圧ポンプ16Dが、供給流路3Dの下流側部分3Dbから吸い上げている塗布液に対して、メニスカス圧力と揚程圧力との総和に対応する負圧を作用させているため、メニスカスMKの形状は、ノズルNZの先端からの塗布液の滴下を阻止するための条件を満たす最適形状となる。すなわち、メニスカスMKの形状は、塗布液の粘度やノズルNZの流路面積さらには制御タンク2Dの高さ位置などに応じて、最適形状が決まるが、負圧ポンプ16Dにより発生する負圧は、圧力計22Dにより測定された負圧の大きさに応じて可変制御することができる。そのため、塗布液の粘度が変更されたりまたはノズルNZの流路面積が変更されたりもしくは制御タンク2Dの高さ位置が変更されたりした場合であっても、常に最適形状のメニスカスMKを生成することが可能となる。
また、このような動作が行われていないときの一定時間においては、加圧流路24Dからの加圧流体の作用によって、インクジェットヘッドIJの内部の泡が、ノズルNZを通じて塗布液と共に外部に排出される。これにより、塗布液中に泡が混入した状態でノズルNZから吐出されるという不具合が回避される。なお、塗布液としては、6〜50mPa・s、好ましくは、20〜50mPa・sの高粘度のものを使用することができる。
なお、上記第4実施形態では、制御タンク2DをインクジェットヘッドIJの上方に配置したが、制御タンク2DをインクジェットヘッドIJよりも下方に配置してもよい。
さらに、上記第4実施形態では、負圧ポンプ16Dとして、インペラー式のものを使用したが、負圧に生じる脈動を抑制する構造とされた負圧ポンプであれば、他のものであってもよい。
また、上記第4実施形態は、一個のインクジェットヘッドIJを備える場合に本発明を適用したが、複数個のインクジェットヘッドIJを備える場合についても本発明を適用することが可能である。
以上のように、上記第1〜第4実施形態に係るインクジェット塗布液制御装置によれば、メニスカスの形状を可変制御するには、負圧発生手段で発生する負圧の大きさを可変制御すればよいことになるため、メニスカスの形状を容易に微調整することが可能となると共に、常に最適な形状のメニスカスを生成することが可能となる。
しかも、負圧発生手段の構造の特異性によって、塗布液に作用する負圧の脈動をなくすことができるため、常に安定した状態で最適形状のメニスカスを生成することが可能となる。