JP5825614B2 - 切花の保存方法 - Google Patents

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この発明は、収穫後のボタン、シャクヤク等の切花を観賞可能な状態で消費者に届けるための切花の保存方法に関する。
高温時の切花ボタン(Paeonia suffruticosa)類等は、開花初めから落花までの期間が短く、また水揚げが悪いために、生産者は日持ち性向上のため、鮮度保持剤で前処理後、湿式縦箱方式により出荷している。
特に、保存期間をより長くするために、破蕾期を迎え、満開前の切花を水揚げ処理し、フレキシブルに変形可能な袋体に収容する収容工程と、切花を収容した袋体内を減圧して真空状態に近づけた状態で密閉する密閉工程と、切花が収容されて密閉された袋体を低温下の遮光された室内で保管する保管工程とからなる切花の保存方法により、開花前の状態で長期間保存して消費者の下に届けることのできる特許文献1に記載の切花の保存方法が従来公知である。
特許第4565094号公報
上記方法によれば、密封包装によって切花の乾燥と病気の発生を抑制して切花の保存期間を延ばすとともに、保管中又は輸送中の切花ボタンの体積を減少させ、輸送効率・輸送コストを下げることができるが、その一方で一定期間(例えば4週間程度)保存した後に消費者の下で開花した切花の葉茎が変色する場合があるとともに、開花時季や期間又は産地が限られた切花の需要に応じるためには、保存可能な期間も依然として十分なものではなかった。
本発明では、切花の保存方法において、消費者の下に届けるまでの保存期間をより長期間確保できるとともに、密封した袋体から開封後に開花する切花の葉茎の腐敗・変色を抑制できる切花の保存方法を提供することを課題としている。
上記課題を解決するための本発明は第1に、出蕾期で満開前の切花を、フレキシブルで透光性を有する変形可能な袋体内に収容する収容工程と、収容した切花の表面と袋体とが密着状態となるよう且つ切花の姿勢を押圧固定する程度に袋体内部を脱気して密封する密閉工程と、切花が収容されて密封された袋体を低温下の室内で保管する保管工程とを有し、前記保管工程時に袋体に光を照射することにより、切花の乾燥と腐敗を抑制することを特徴としている。
第2に、前記保管工程時に連続的に袋体に光を照射することを特徴としている。
第3に、前記保管工程時に間欠的に袋体に光を照射することにより、1日あたり24時間よりも短い時間光を照射することを特徴としている。
第4に、袋体に照射する光として、蛍光灯又は赤光を用いたことを特徴としている。
第5に、前記保管工程時に−1〜3℃の室内で、切花が収容された袋体を保管することを特徴としている。
第6に、前記保管工程時に0〜2℃の室内で、切花が収容された袋体を保管することを特徴としている。
第7に、前記収容工程の前に切花を鮮度保持剤で処理する前処理工程を含むことを特徴としている。
第8に、前記切花が、ボタン、シャクヤク又はキクであることを特徴としている。
第9に、前記切花が、カーネーション又はアジサイであることを特徴としている。
以上のように構成される本発明の方法は、透光性を有する袋体を用いて減圧密閉包装した切花を低温下で保存するにあたり、該袋体の切花に光を照射することにより、切花を開花直前の状態で茎葉の腐敗・変色を抑制しながら長期間の保存が可能であって、消費者に出荷時の状態のまま届けることができるとともに、開封後の開花状態も良好に保つことができる。
本発明の切花の収穫・貯蔵(保存)・流通を示すフロー図である。 ボタン切花「連鶴」を3週間・6週間・9週間保存した際における評価を示した表図である。 (A)は、6週間冷蔵保存したボタン切花の開封2日目を示した写真であり、(B)は、同ボタン切花の開封5日目を示した写真である。 (A)は、9週間冷蔵保存したボタン切花の開封1日目を示した写真であり、(B)は、同ボタン切花の開封6日目を示した写真である。 シャクヤク切花「春の粧」,「ラテンドール」,「滝の粧」を4週間・8週間・12週間保存した際における葉腐敗度を保存方法毎に比較して示した表図である。 シャクヤク切花「春の粧」の開花率、花径、日持ち日数を保存方法で比較した図である。 (A)は、8週間保存したシャクヤク「春の粧」の切花の開封10日目を示した写真であり、(B)は、4週間保存したシャクヤク「ラテンドール」の切花の開封1日目を示した写真であり、(C)は、12週間保存したシャクヤク「滝の粧」の開封9日目を示した写真である。 連続又は間欠的に光を照射して9週間保存したキク切花の開封1日目の状態を示した写真である。 ボタン切花「連鶴」を3週間・6週間・9週間保存した際における評価を示した表図である。 (A)は、3週間冷蔵保存したボタン切花の開封2日目を示した写真であり、(B)は、同ボタン切花の開封5日目を示した写真である。 (A)は、6週間冷蔵保存したボタン切花の開封1日目を示した写真であり、(B)は、同ボタン切花の開封5日目を示した写真である。 (A)は、9週間冷蔵保存したボタン切花の開封2日目を示した写真であり、(B)は、同ボタン切花の開封6日目を示した写真である。 シャクヤク切花「春の粧」,「ラテンドール」,「滝の粧」を4週間・8週間・12週間保存した際における葉腐敗度を保存方法毎に比較して示した表図である。 シャクヤク切花「春の粧」,「ラテンドール」の開花率、花径、日持ち日数を保存方法で比較した表図である。 (A)は、8週間保存した切り前の遅いシャクヤク「ラテンドール」の切花の開封10日目を示した写真であり、(B)は、12週間保存した切り前の遅いシャクヤク「ラテンドール」の切花の開封1日目を示した写真である。 4週間保存した切り前の遅いシャクヤク「春の粧」の切花の開封9日目を示した写真である。 キクの長期保存における評価を示した表図である。 (A)は、9週間冷蔵保存したキクの開封4日目を示した写真であり、(B)は、同キクの開封14日目を示した写真である。 秋色アジサイ(切花)を4週間・8週間保存した際における評価を示した表図である。 (A)は、4週間冷蔵保存したアジサイの開封1日目を示した写真であり、(B)は、同アジサイの開封5日目を示した写真である。 (A)は、8週間冷蔵保存したアジサイの開封1日目を示した写真であり、(B)は、同アジサイの開封3日目を示した写真である。 カーネーション切花「ミューズ」を4週間・8週間・12週間保存した際における評価を示した表図である。 (A)は、4週間冷蔵保存したカーネーションの開封1日目を示した写真であり、(B)は、同カーネーションの開封8日目を示した写真である。 (A)は、8週間冷蔵保存したカーネーションの開封1日目を示した写真であり、(B)は、同カーネーションの開封5日目を示した写真である。 (A)は、12週間冷蔵保存したカーネーションの開封1日目を示した写真であり、(B)は、同カーネーションの開封2日目を示した写真である。
以下図面に基づき本発明の実施形態につき説明する。図1は本発明の切花の収穫・貯蔵(保存)・流通を示すフロー図である。図より、収穫されたボタン、シャクヤク、キク又はカーネーション等の切花は、STS剤溶液(チオ硫酸銀溶液)等による前処理が行われ、乾式状態でポリフィルム等の樹脂フィルム製の袋(袋体)に入れて脱気され、密封包装される。その後、所定条件下で光を照射しつつ、低温状態で冷蔵保存(貯蔵)しながら輸送して消費者の下に届ける。これらの方法によって保存された切花は、袋より取り出した後、未開花の状態から満開状態となって鑑賞できるようになる。
各種実験の結果、本発明者は、上記の切花の保存方法において、切花を透光性のある袋体に収容して、該袋体を介して冷蔵保存中の切花に蛍光灯又は赤光を連続又は間断して照射することによって、低温遮光下で減圧密封保存する場合に比して冷蔵保存可能な期間が延びるとともに、開花時の葉茎の状態が良好になることを見出した。以下、各工程を説明する。
1)収穫
切花は、蕾が形成された出蕾期であって、特にその破蕾期(花弁の一部が見える時期)の午前中の気温が低い涼しい頃に収穫する。破蕾期で収穫する理由としては、その後の開花が容易且つ確実となる段階であり、また花の老化を促進するエチレンガスを発生させないためである。さらに蕾の状態は耐圧性に富み、後述する脱気による密封包装に耐えることができるからである。
2)STS処理(前処理)
ボタンは、切り取った後すぐに低温遮光下で、切花の鮮度保持剤である市販のSTS剤溶液(チオ硫酸銀溶液)に所定の時間浸す。これによりエチレンの発生を抑制することができる。また、本処理は、少なくとも花弁が展開開始するまでに終える必要がある。
3)密封
密封に用いる袋(袋体)は、透光性を有し、ガス交換可能で真空度を保てる袋であるポリエチレン等のプラスチックフィルム製のものを使用し、該袋は切花より長さ10cm、幅10cm以上大きく、厚さ0.05mm以上のものが望ましい。前処理が終了した切花は、切口方向から上記袋に入れられる(収容工程)。
その後、花、葉と葉柄、茎の位置等のバランスを整えた後、上記袋の開口部を脱気装置に設置し、脱気減圧する。脱気操作を停止するタイミングは、植物体とフィルムが密着状態で密封維持できる状態とし、開口部をヒートシール等により密閉固定する(密閉工程)。
このとき、脱気時の真空圧力を、−65kpaG程度に設定して脱気、密封包装することにより、保存中の切花の乾燥を効率的に防止し、花蕾とフィルムを密着させることにより物理的にも開花を抑えることができる。また、上記密封方法によれば、袋内での花の移動を抑え、蕾の損傷を効率的に防止するとともに葉折れを軽減し、開花時の花の品質がフレッシュで且つ良好なものとなる。
4)貯蔵
フィルムが密着状態になった袋入りの切花を冷蔵庫内に保存する(保管工程)。このときの保存温度は切花が凍らない範囲で低くするため、−1℃〜3℃(特に1℃)程度が好ましいが、−1℃〜5℃程度であっても略同様な傾向の結果を得ることができる。
また、該冷蔵保存状態において、切花に蛍光灯または赤光等による弱光を連続照射(24時間)又は光を間欠的に照射する間断照射をすることにより、葉茎の腐敗を抑制するとともに、保存可能な期間を延ばすことができる。該間断照射時に照射される弱光は、一日当たり6時間程度が好ましい。ちなみに照射される蛍光灯や赤光等の人工光は、照射する光の光合成有効光量子束密度(PPFD)が、70μmolm−2s−1以下であって、特に、8.5μmolm−2s−1程度とし、照度は、580lux程度とした。
該構成の保存方法によれば、鑑賞価値が維持できる切花の保存期間は、品種により違いがあるものの、6〜9週間は茎葉の腐敗を抑制しつつ保存できるとともに、その後に開花した花もしおれることなく正常に開花させることができる。
5)輸送
脱気、密封包装された切花の厚みは花蕾の幅であるため、一般的な冷蔵輸送可能な包装により全国各地あるいは世界各国に輸送される。脱気、密封包装により従来の縦箱出荷に比して、容積が減少するため航空便等によっても効率的に発送可能であるほか、ボタンやシャクヤク等の切花の持つ柔軟性を利用して花を内向き或いは外向きに収束させたまま筒状容器等に入れて輸送することもできる。また従来の縦箱湿式方式に比して、本発明の方式は乾式状態で減圧密封されており、開花が進むことなく、市場出荷時の状態を維持することができる。
6)開花
問屋、小売店等を介して消費者(購入者)の手元に届けられた減圧密封包装された切花は、切花の切口の方から開封し、ゆっくりと切花を取出す。その後、取出した切花を水切りし、例えば「美咲」(大塚アグリテクノ株式会社製)の50倍溶液等の切花栄養剤を活水として花を活ける。また開封後(出庫後)にSTS剤入りの鮮度保持剤で処理することによって、花弁の成長を促進させ、開花後の花弁落下を遅延させることができる。
(ボタン)
図2乃至4に示すように、ボタン切花「連鶴」について本発明による冷蔵保存の実験を行った。図2は、ボタン切花「連鶴」を3週間・6週間・9週間保存した際における評価を示した表図であり、図3(A)は、6週間冷蔵保存したボタン切花の開封2日目を示した写真であり、図3(B)は、同ボタン切花の開封5日目を示した写真であり、図4(A)は、9週間冷蔵保存したボタン切花の開封1日目を示した写真であり、図4(B)は、同ボタン切花の開封6日目を示した写真である。
開花ステージ(収穫時期)は破蕾期とし、切花長は30〜35cm、最上位の4〜5枚葉より下の葉は除去した。収穫後すぐに、STS溶液で処理した後、切花を3本一束で透明なポリフィルム袋(横300mm,縦460mm,厚さ0.05mm)へ入れ、フィルムと切花が十分密着した状態となる−65kpaGで袋内の空気を抜き、密封した。保存条件は1℃に設定し、3週間、6週間、9週間それぞれ冷蔵保存した。
このとき、冷蔵保存時に、蛍光灯又は赤光によって、光合成有効光量子束密度が8.5μmolm−2s−1程度の弱光(照度580lux程度)を24時間照射したケース(24h)と、上記弱光を一日当り6時間照射したケース(6h)と、遮光された空間で光を当てないケース(暗黒)とでそれぞれ実験した。冷蔵保存終了後は、すぐに開封し、切花3本を50倍に希釈した美咲に活け、観賞の価値が無くなるまでの期間を観察した。
各ケースのボタン切花の開封時の状況について、蕾損傷度と、葉腐敗度と、臭気の度合いを評価した。蕾の損傷程度は、正常(1)・ややつぶれ、しわ(2)・つぶれ(3)の三段階で評価した。葉腐敗度は、切花の腐敗葉数/全葉数×100で算出した。臭気の程度は、無臭(1)・やや臭気有り(2)・臭気有り(3)の三段階で評価した。
また、ボタン切花の開花時の状況について、開花の正常度と、日持ち日数とを評価した。開花の正常度は、正常(1)・やや異常(2)・異常(3)・開花せず(4)の四段階で評価した。日持ち日数は、開封後、鑑賞価値の無くなるまでの日数とした。図2にその結果を示す。
図2に示すように、保存時の光の照射状態の異なる3つのケースに分けて3週間、6週間、9週間それぞれ冷蔵保存した「連鶴」は、保存期間中に切花ボタンに弱光を24時間照射したものが、開封前の状態、開花後の状態の何れも葉・茎・花弁の品質が良好であった。従来技術と同様に、保存時に遮光したケースでは、3週間保存時の開封前までは外観が良好に保たれ、開花の状態も花が若干変色する程度で保存できているが、6週間以上保存した場合、切花ボタンの開封時において、葉の腐敗度合が進行することがわかった(図2乃至図4参照)。
以上の結果、減圧密封包装したボタン切花に弱光を24時間照射して保存することにより、6週間程度保存した場合であっても、開封前の切花の状態と、その切花の開花の状態を良好に保つことができることが明らかになった。また、9週間の保存では、遮光状態(暗黒)の場合には、葉茎が変色・腐敗し、開花した花がしおれたものもあったが、弱光を24時間照射したものによれば、比較的腐敗葉は少なく、開花及び保存状態が良好である。
(シャクヤク)
図5乃至7に示すように、シャクヤクの切花について本発明による冷蔵保存の実験を行った。図5は、シャクヤク切花「春の粧」,「ラテンドール」,「滝の粧」を4週間・8週間・12週間保存した際における葉腐敗度を保存方法毎に比較して示した表である。図6は、シャクヤク切花の開花率、花径、日持ち日数を保存方法で比較した表である。図7(A)は、8週間保存したシャクヤク「春の粧」の切花の開封10日目を示した写真、図7(B)は、4週間保存したシャクヤク「ラテンドール」の切花の開封1日目を示した写真、図7(C)は、12週間保存したシャクヤク「滝の粧」の開封9日目を示した写真をそれぞれ示す。
保存後のシャクヤク切花について、葉腐敗度と、開花率と、花径と、日持ち日数とを評価した。開花率は、開花株数/全株数×100で算出し、花径は、開花度が70以上の花の直径(mm)を測定した。図5及び図6にその結果を示す。
図5に示すように、上述の場合と同様に、保存時の光の照射状態の異なる3ケースに分けて4週間、8週間、12週間それぞれ冷蔵保存したシャクヤク「春の粧(第1表)」、「ラテンドール(第2表)」、「滝の粧(第3表)」を実験したところ、連続的に(24時間)弱光を照射することにより、12週間保存した後であっても、開花の状態・葉茎の状態が比較的に良好なものとなり、遮光して保存した場合と比較して葉の腐敗度合が抑制された良好な状態で保存できることがわかった。また、一日当たり6時間の間断照射をしたケースも、遮光状態で保存したケースと比較して長期間良好な状態を保てる傾向であることが確認できる。
また、図6に示す結果から、減圧密封包装されたシャクヤク切花に連続又は間欠的に弱光を照射しながら4週間、8週間冷蔵保存した場合、遮光状態で保存した場合と比較して、切花の開花率、開花した花の花径、日持ち日数の何れも良好になる。特に、連続的に弱光を照射したものでは、8週間保存後であっても花径が大きい状態で開花した。
以上の結果、減圧密封包装した複数種類のシャクヤク切花に弱光を連続(24時間)又は間欠的(6時間)に毎日照射して4週間以上保存すると、遮光状態で保存した場合と比較して、葉の腐敗が抑制されて見た目が良好に保たれるとともに、花径が大きくなり、日持ち日数も向上する(図7参照)。
このとき、弱光を間欠的に照射したものによれば、連続的に照射する場合と比較して花径等が若干小さくなったものの、蛍光灯や赤光を照射する時間が大きく削減されるため、保存コストを削減することができる。
(キク)
図8に示すように、キクの切花について本発明による冷蔵保存実験を行った。図8は、連続又は間欠的に光を照射して9週間保存したキク切花の開封1日目の状態を示した写真である。
図8に示す結果によれば、保存期間中に弱光を一日当たり6時間の間断照射をしたケースと、24時間連続で毎日照射したケースの何れも、葉・茎の状態が良好な状態で開花していることが確認できる。特に、間断照射したケースでは、葉の黄色化が効率的に防止できるとともに、上記と同様にコストも低減できる。
以上に示した切花の例は限られた種類であるが、開花前の出蕾期(特に破蕾期)を迎えた切花の多くは、環境温度や水分状態等の生態条件が共通しているため、ポリエチレン等のプラスチックフィルム製の袋に減圧密封包装して姿勢や形状の保持ができる花である限り、他の切花にも応用が可能である。特に、ボタンやシャクヤク等のように自然状態でも開花時季や期間が限られる花や、産地が限られた花の切花の長期保存には有効である。
次に、図9乃至図25に基づき、他の実験例について上述と異なる点について説明する。
(ボタン)
図9乃至図12に示すように、ボタン切花「連鶴」について本発明による冷蔵保存の実験を行った。実験の各種条件は上記ボタンの冷蔵保存の実験と同様であり、上記実験と異なる点について、以下説明する。
図9は、ボタン切花「連鶴」を3週間・6週間・9週間保存した際における評価を示した表図であり、図10(A)は、3週間冷蔵保存したボタン切花の開封2日目を示した写真であり、図10(B)は、同ボタン切花の開封5日目を示した写真であり、図11(A)は、6週間冷蔵保存したボタン切花の開封1日目を示した写真であり、図11(B)は、同ボタン切花の開封5日目を示した写真であり、図12(A)は、9週間冷蔵保存したボタン切花の開封2日目を示した写真であり、図12(B)は、同ボタン切花の開封6日目を示した写真である。
図9に示すように、保存時の光の照射状態の異なる5つのケースに分けてボタン切花「連鶴」を、3週間、6週間、9週間それぞれ冷蔵保存した結果、保存期間中に切花ボタンに赤光を24時間照射したものにおいても、赤外光を照射した場合や、遮光状態の場合よりも、開封時の状態、開花後の状態の何れも葉・茎・花弁の品質が良好であった。
赤外光を照射したケースでは、3〜6週間保存時の開封の前後で葉先や花弁先端の一部変色しているところはあるものの、開花の状態も花が若干変色する程度で保存できている。しかし、同条件で9週間以上保存した場合、切花ボタンの開封時においては、茎葉、茎、花器が全て腐敗したことがわかった(図9乃至図12参照)。
以上の結果、減圧密封包装したボタン切花に赤光を24時間照射して保存することにより、6週間程度保存した場合であっても、開封時の切花の状態と、その切花の開花の状態を良好に保つことができることが明らかになった。また、9週間の保存では、遮光状態(暗黒)若しくは、赤外光を照射した場合には、葉茎が全て腐敗し、開花しなかったが、赤光を24時間照射したものによれば、腐敗葉はなかった。
(シャクヤク)
図13乃至16に示すように、シャクヤクについて本発明による冷蔵保存の実験を行った。実験の各種条件は上記シャクヤクの冷蔵保存実験と同様であり、上記実験と異なる点について、以下説明する。
図13の第1,3,5表は上記実験と同様に、シャクヤク切花「春の粧」,「ラテンドール」,「滝の粧」を4週間・8週間・12週間保存した際における葉腐敗度を保存方法毎に比較して示した表であり、特に、第2,4表は、シャクヤク切花「ラテンドール」,「滝の粧」の切り前を遅くした場合を示した表であって、赤光を照射したケースを追加した表である。図14の表6,8,11は上記実験と同様に、シャクヤク切花の開花率、花径、日持ち日数を保存方法で比較した表であり、特に、表7,9,10,12は、シャクヤク切花「ラテンドール」「春の粧」切り前を遅くした場合を示した表であって、赤光を照射したケースを追加した表である。ちなみに、表1,3,5,6,8,11の切り前早いとする結果は、上記の実験例と同条件である。
なお、切り前早いとは、従来の乾式での輸送で対応されている切り前で、比較的蕾が固い状態で収穫された状態を指しており、切り前遅いとは、上記切り前早いと比較して、蕾が多少緩んだ状態で収穫された状態を指している。
また、図15(A)は、8週間保存した切り前の遅いシャクヤク「ラテンドール」の切花の開封10日目を示した写真であり、図15(B)は、12週間保存した切り前の遅いシャクヤク「ラテンドール」の切花の開封1日目を示した写真であり、図16は、4週間保存した切り前の遅いシャクヤク「春の粧」の切花の開封9日目を示した写真である。
図13の表2,4に示すように、シャクヤク「春の粧」、「ラテンドール」において、切り前を遅くした場合においても、連続的に(24時間)弱光を照射することにより、遮光したものと比較して、葉の腐敗が比較的少なくなることがわかった。また、赤光を照射して冷蔵保存した場合においても、遮光状態と比較して葉腐敗度を抑制できる傾向にあることがわかった。
また、図14の表7,9,10,12に示す結果から、シャクヤク「春の粧」,「ラテンドール」の切り前を遅くし、減圧密封包装されたシャクヤク切花に連続又は間欠的に弱光又は赤光を照射しながら4週間、8週間冷蔵保存した場合、遮光状態で保存した場合と比較して、切花の開花率、開花した花の花径、日持ち日数の大部分が良好になった。特に、「ラテンドール」の場合には、弱光又は赤光を照射した本保存方法を適用することにより、8週間保存後であっても花径は同等以上に大きく、開花率も高い状態が保たれている。
また、従来の乾式保存では、4週間の保存で茎葉が乾燥し、ドライフラワー状となって商品価値が低下しているが、本願の保存方法によれば、減圧密封包装して遮光状態としたものと比較して、8週間以上保存してもフレッシュな状態を保つことができる。
(キク)
図17及び図18に示すように、キクについて本発明による冷蔵保存の実験を行った。以下、上記のキクの実験結果と異なる点について説明する。図17は、キクの長期保存における評価を示した表図であり、図18(A)は、9週間冷蔵保存したキクの開封4日目を示した写真であり、図18(B)は、同キクの開封14日目を示した写真である。
図17に示すように、本発明による保存時の光の照射状態を24時間、6時間としたものと、遮光状態との3ケースに分けて、9週間(遮光状態のみ10週間)それぞれ冷蔵保存したキク「精興光玉」を比較実験したところ、遮光状態では、開花せず腐敗して開花しなかった一方で、弱光を24時間又は6時間の間断照射したものによれば、9週間保存した後、開封後14日経っても長時間良好な状態を保てる傾向であることが確認できる(図18参照)。
(アジサイ)
図19乃至図21に示すように、秋色アジサイの切花について本発明による冷蔵保存の実験を行った。図19は、秋色アジサイ(切花)を4週間・8週間保存した際における評価を示した表図であり、図20(A)は、4週間冷蔵保存したアジサイの開封1日目を示した写真であり、図20(B)は、同アジサイの開封5日目を示した写真であり、図21(A)は、8週間冷蔵保存したアジサイの開封1日目を示した写真であり、図21(B)は、同アジサイの開封3日目を示した写真である。
上述の減圧密封包装した後に冷蔵する保存方法において、弱光を24時間照射したケース(24h)と、遮光状態にしたケース(暗黒)と、通常の乾式保存をしたケースと、通常の湿式保存をしたケースとで実験を行い、それぞれの保存方法で、4週間、8週間保存してその後の状態を比較した。
図19の表1,2に示すように、従来の乾式保存や、水に活けて保存する湿式保存では、4週間で花房・葉とも乾燥してドライフラワー状となり、商品価値が低下した一方で、減圧密封包装で保存し、24時間光を照射して保存したものによれば、保存状態は良好に保たれ、日持ち日数も長く保つことができた。
また、8週間保存すると、減圧密封包装後に遮光状態で保存したものでは、葉が変色、落葉し、花房も変色しているが、減圧密封包装後に光を照射して保存したものでは、これらと比較しても良好な状態が保たれている(図19及び図21参照)。
(カーネーション)
図22乃至図25に示すように、カーネーション切花「ミューズ」について本発明による冷蔵保存の実験を行った。図22は、カーネーション切花「ミューズ」を4週間・8週間・12週間保存した際における評価を示した表図であり、図23(A)は、4週間冷蔵保存したカーネーションの開封1日目を示した写真であり、図23(B)は、同カーネーションの開封8日目を示した写真であり、図24(A)は、8週間冷蔵保存したカーネーションの開封1日目を示した写真であり、図24(B)は、同カーネーションの開封5日目を示した写真であり、図25(A)は、12週間冷蔵保存したカーネーションの開封1日目を示した写真であり、図25(B)は、同カーネーションの開封2日目を示した写真である。
上述の減圧密封包装した後に冷蔵する保存方法において、上記弱光を24時間照射したケース(24h)と、弱光を一日あたり6時間照射したケース(6h)と、赤光を照射したケースと、遮光状態で保存したケース(暗黒)と、いわゆる乾式保存法で保存するケース(NP)とで、4週間、8週間、12週間保存した後開封した。また、保存せず、比較前日に収穫し、STS処理した新鮮な切花のケースを加えて、保存方法の有効性を比較、調査した。
図22の表1〜3に示すように、カーネーションの特性として日持ちが良いことから、弱光を照射したケース(24h,6h)と遮光状態にしたケースとでは、12週間経過後においても、それぞれが新鮮な切花と同等の良好な開花品質を保つことができた。また、赤光を照射した場合においても、8週間までは開花品質を良好に保つことができた。その一方で、乾式保存による保存では4週間後にはしおれはじめ、8週間後には鑑賞価値なしとなることがわかった(図22乃至図25参照)。
以上より、適切な切り前で収穫した切花を、収穫、調整、袋体に収容するとともに、脱気、密封(減圧密封包装)した後、冷蔵保存する期間に光を照射する保存方法によれば、従来の遮光状態で保存する減圧密封包装(暗黒保存)と比較して、茎葉の腐敗、乾燥を防ぎつつ適切な蕾状態で長期間貯蔵することができる。また、開封後の花き品質と鑑賞期間についても同等以上にすることができる。
ちなみに、対象物を袋体内に脱気して密閉収容し、該袋体に光を照射しつつ冷蔵保存する上述の保存方法によれば、光合成が行われる葉緑素をもち、袋体内に密封できるものであれば同様に適用して長期貯蔵することができるため、花き類やコケ等も長期貯蔵することができる。
なお、冷蔵保存時の照明を間断照射としたり、赤色光とすることにより、切花の保存状態を維持しつつ、消費電力を削減し、設備を長寿命化させることができるとともに、冷蔵庫内の温度の安定化にも寄与することができる。

Claims (9)

  1. 出蕾期で満開前の切花を、フレキシブルで透光性を有する変形可能な袋体内に収容する収容工程と、収容した切花の表面と袋体とが密着状態となるよう且つ切花の姿勢を押圧固定する程度に袋体内部を脱気して密封する密閉工程と、切花が収容されて密閉された袋体を低温下の室内で保管する保管工程とを有し、前記保管工程時に袋体に光を照射することにより、切花の乾燥と腐敗を抑制する切花の保存方法。
  2. 前記保管工程時に連続的に袋体に光を照射する請求項1に記載の切花の保存方法。
  3. 前記保管工程時に間欠的に袋体に光を照射することにより、1日あたり24時間よりも短い時間光を照射する請求項1に記載の切花の保存方法。
  4. 袋体に照射する光として、蛍光灯又は赤光を用いた請求項1乃至3の何れかに記載の切花の保存方法。
  5. 前記保管工程時に−1〜3℃の室内で、切花が収容された袋体を保管する請求項1乃至4の何れかに記載の切花の保存方法。
  6. 前記保管工程時に0〜2℃の室内で、切花が収容された袋体を保管する請求項1乃至5の何れかに記載の切花の保存方法。
  7. 前記収容工程の前に切花を鮮度保持剤で処理する前処理工程を含む請求項1乃至6の何れかに記載の切花の保存方法。
  8. 前記切花が、ボタン、シャクヤク又はキクである請求項1乃至7の何れかに記載の切花の保存方法。
  9. 前記切花が、カーネーション又はアジサイである請求項1乃至7の何れかに記載の切花の保存方法。
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