JP5824719B2 - 固化剤の製造方法 - Google Patents

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Description

この発明は、土壌を固化改良する固化剤の製造方法に係り、特に、製鋼スラグを使用した固化剤の製造方法に関する。
軟弱な土壌を固化改良する固化剤として、セメント系の固化材が広く使用されているが、高アルカリ性であるセメント系固化材は、雨水と共に流出すると改良された土壌の生態系に悪影響を与え、また、セメント材料に由来するフッ素や重金属が溶出すると周辺環境に悪影響を与えるという問題がある。このため、様々な非セメント系の固化剤が提案されている。
例えば、特許文献1には、ステンレス鋼の製鋼工程で発生する製鋼スラグを使用した固化剤が記載され、この固化剤は、製鋼スラグに石膏や高分子凝集剤が混合されて製造されている。
特許文献1では、ローラーミルにおいて粗粒又は塊状の製鋼スラグを粉砕して微粉状にした製鋼スラグを捕集機で収集し、収集した微粉状の製鋼スラグと半水石膏を含む固化促進剤とを混合機で混合して、固化剤を製造している。
特開2010−120987号公報
しかしながら、特許文献1に記載されるようにして製造された固化剤は、互いに粒度が異なる石膏と微粉状の製鋼スラグとを混合したものであるため、混合の際の均一性が高くなく、それにより、土壌を均一な固化強度で改良できないという問題がある、すなわち、固化剤の固化性能にばらつきがあるという問題がある。さらに、特許文献1に記載されるようにして固化剤を製造する場合、製鋼スラグを微粉状に粉砕処理した後に固化促進剤と混合する処理を実施するため、固化剤の一連の製造工程において材料の運搬工程及び処理工程の数が多くなり、製造コストが高くなるという問題もある。
この発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、安定した固化性能の確保及びコストの低減を図る土壌の固化剤の製造方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、この発明に係る固化剤の製造方法は、土壌を固化改良する固化剤の製造方法において、製鋼スラグ及び二水和以上に水和した石膏を混合させて一緒に粉砕した後、混合及び粉砕した製鋼スラグ及び石膏の混合物を加熱することによって固化剤を製造し、製鋼スラグは、塩基度(酸化カルシウム含有量/二酸化ケイ素含有量)が、0.8〜1.6であり、組成が質量%で、フッ素が0.4%未満、酸化カルシウムが35〜65%、二酸化ケイ素が20〜55%、アルミナが1〜15%であり、フッ素の水に対する溶出量が水1リットル当たり0.8mg未満であり、六価クロムの水に対する溶出量が水1リットル当たり0.05mg未満である。
また、製鋼スラグ及び石膏を、製鋼スラグ及び石膏の混合物の粉砕後の粉末度が2300〜4500ブレーンとなるように、粉砕してもよい。
また、製鋼スラグ及び石膏の混合及び粉砕後の混合物を、加熱後の上記混合物に含まれる石膏における半水石膏の含有率が50質量%以上となるように、加熱してもよい。
さらに、80:20〜50:50の混合比率で製鋼スラグと石膏とを混合させてもよい。
また、石膏と混合される製鋼スラグは、ステンレス鋼スラグから選鉱処理をして地金を回収した後の塊状の製鋼スラグ及び粒状の製鋼スラグの少なくとも一方であってよい。
一方、製鋼スラグと混合される石膏は、フッ素の水に対する溶出量が水1リットル当たり8mg以下であり、廃石膏、脱硫石膏及び化学合成石膏のうちから選択された少なくとも1つであってよい。
また、製鋼スラグ及び石膏に高分子凝集剤を添加してもよい。
また、製鋼スラグ及び石膏の混合及び粉砕を、竪型ローラーミルを使用して実施し、混合及び粉砕した製鋼スラグ及び石膏の混合物の加熱を、キルン型加熱炉を使用して実施してもよい。
この発明に係る固化剤の製造方法によれば、安定した固化性能の確保及びコストの低減を図ることが可能になる。
固化剤を製造する各工程を分類して示す図である。
以下、この発明の実施の形態における土壌を改良するための固化剤10の製造方法について添付図面に基づいて説明する。
図1を参照すると、固化剤10を製造する工程は、大別すると、原料となる製鋼スラグを生成する製鋼工程1、製鋼スラグから地金を回収するスラグ選鉱処理工程3、並びに、製鋼スラグ及び石膏の原料から固化剤10を生成する固化剤製造工程8の3つの工程によって構成されている。
製鋼工程1では、ステンレス鋼を溶製する際に製鋼スラグが発生し、この発生した製鋼スラグが収集される。なお、製鋼スラグには、電気炉で溶解されるステンレス溶鋼を脱硫処理する工程で生成されるもの、脱硫処理後のステンレス溶鋼を転炉や真空脱ガス処理などの二次精錬する工程で生成されるものがある。
収集された製鋼スラグは、冷却工程2に移されて冷却固化される。そして、製鋼スラグには、有用な金属成分が比較的多く含有されているため、次のスラグ選鉱処理工程3で含有する金属成分である地金を回収する。
冷却固化された製鋼スラグは、スラグ選鉱処理工程3の破砕工程31に移され、異なる粒度に破砕する二種類のロッドミルによって、破砕処理を受けた後、粉砕処理を受けておおまかな大きさにされる。
粉砕処理を受けた製鋼スラグは、篩い分級工程32に移され、篩いによって所定の大きさ以下のものが選り分けられる、つまり分級される。なお、篩いを通過しなかった製鋼スラグは、再び破砕工程31に戻され、破砕・粉砕処理を受ける。
分級された製鋼スラグは、磁力選鉱工程33に移され、磁選機によって製鋼スラグに含有する地金4が回収される。さらに、製鋼スラグは、鉱物の比重の差異を利用して選鉱する比重選鉱工程34に移され、比重選鉱機によって含有する地金4が回収される。
地金4が回収された製鋼スラグは、エーキンス分級工程35に移され、エーキンス分級機によって分級を受けて、特定の粒度(おおよそ、5mm程度)以上の塊状及び粗粒状の製鋼スラグ6が選別される。
製鋼スラグ6が分級された製鋼スラグは、シックナー・脱水工程36に移され、シックナーによって微粉状の製鋼スラグが分離され、分離された微粉状の製鋼スラグが脱水処理を受けてパウダー状の製鋼スラグ5として回収される。
上述のように、破砕工程31からシックナー・脱水工程36を経てスラグ選鉱処理工程3が終了し、得られた塊状及び粗粒状の製鋼スラグ6が、固化剤10の原料として固化剤製造工程8に使用される。なお、パウダー状の製鋼スラグ5は、製鋼スラグの中でも軟質であることが多く、また、シックナーでの湿式処理により、塊状及び粗粒状の製鋼スラグ6に比べて水分による反応がある程度既に進んでいる。このため、パウダー状の製鋼スラグ5は、固化改良後の土壌に十分な長期的強度を発現させるのに適さないので、固化剤10の原料に使用されず、塊状及び粗粒状の製鋼スラグ6が固化剤10の原料に使用される。
固化剤製造工程8では、まず、ローラーミル粉砕・混合工程81が実施される。
ローラーミル粉砕・混合工程81では、竪型ローラーミルが使用され、製鋼スラグ6と、二水和の石膏(二水石膏:CaSO・2HO)からなる石膏原料7とが、竪型ローラーミルに投入される。つまり、製鋼スラグ6と石膏原料7とが、竪型ローラーミルに同時に投入される。
なお、石膏原料7としては、石膏ボードなどの廃建材から再生される廃石膏、発電ボイラーからの排ガスを脱硫処理する際に発生する脱硫石膏、化学工場での化学合成における副産物である化学合成石膏、天然石膏等のいずれの石膏を含む原料も使用することができる。しかしながら、原料として使用する石膏は、固化改良する土壌への溶出量を抑えるために、フッ素(F)の水に対する溶出量が水1リットル当たり8mg(8mg/L)未満であり、重金属類の溶出量が極力低いものを使用する。さらに、上記に示すような石膏原料は、通常水和しており、二水和以上の水を含有する(CaSO・2HOの結晶構造を持ち、さらに水分を付着する)。そして、水和反応を起こしやすい性質を有する半水石膏(CaSO・1/2HO)が、製鋼スラグ6と混合されると製鋼スラグ6に含まれる水分と接触して水和反応を起こし硬化してしまうのに対し、二水和以上の石膏からなる石膏原料は、混合されることで製鋼スラグ6に含まれる水分と接触しても水和反応を起こさず硬化することがない。ちなみに、本実施の形態では、二水和の石膏からなる石膏原料7を使用しているが、三水和以上の石膏又は二水和以上の様々な石膏が混在した石膏原料を使用してもよい。
投入された製鋼スラグ6及び石膏原料7は、竪型ローラーミル内で混合されつつ、竪型ローラーミル内のローラによって一緒に粉砕されて微粉とされる。そして、混合及び粉砕の際、二水石膏の石膏原料7は水和反応を起こして硬化することがないため、製鋼スラグ及び石膏は、竪型ローラーミル内で均一に混合される。
竪型ローラーミルの内部では、混合及び粉砕された製鋼スラグ及び石膏の混合物は、竪型ローラーミルの導入口からその内部に導入される気流によって巻き上げられてさらに混合され、さらに、内部に設けられたセパレータによって所定の粒度範囲のものが選別・収集され、竪型ローラーミルの排出口から空気と共に排出される。
排出された製鋼スラグ及び石膏の混合物の微粉体は、捕集工程82に移って、パウダー捕集機によって空気中から捕集され、捕集された製鋼スラグ及び石膏の混合物は、加熱処理工程83のキルン型加熱炉に移されて加熱される。キルン型加熱炉では、混合物は120℃〜160℃程度で加熱される。120℃〜160℃程度で加熱することによって、混合物中の製鋼スラグに含有される水分が除去されると共に、二水石膏に水和している水分が除去され、二水石膏の少なくとも一部が半水石膏に変化する。そして、生成された半水石膏は、水和反応を起こして硬化しやすい性質を有しているが、周囲の製鋼スラグ6では水分が除去されているため、水和反応を起こして硬化することなく、その性質を維持することができる。
加熱後の製鋼スラグ及び石膏の混合物は、固化剤10としてサイロに貯蔵される。そして、サイロに貯蔵された固化剤10は、土壌の改良剤として市場に出荷される。
固化剤10は、水分を多く含む軟弱な土壌と混合されると、土壌の水分を利用して、半水石膏自体が水和反応して二水石膏の針状結晶を析出して凝結する。また、製鋼スラグ自体も、土壌の水分を利用して水和反応し、硬化する。さらに、土壌の水分を利用して、製鋼スラグに含有される酸化カルシウム(CaO)及びアルミナ(Al)と、半水石膏とが水和反応し、エトリンガイト(3CaO・AlO・3CaSO・32HO)の針状結晶を析出して凝結する。そして、水和反応した半水石膏、水和反応した製鋼スラグ及びエトリンガイトによって、土壌は、水分が除去されると共に強度が増大される、つまり固化される。
なお、半水石膏は、土壌中の水分を利用して水和反応すると、比較的短時間の間に土壌に強度を発現するため、土壌の固化に速攻性があり、土壌の初期強度を発現する。製鋼スラグは、水和反応して硬化し土壌を固化する反応が遅延性であるため、土壌に十分な強度を発現させるには長時間を要し、土壌の長期的な強度を発現する。そして、エトリンガイトは、それ自体で強度を発現し、反応性が高い半水石膏と迅速に反応して生成され土壌の初期強度を発現する。
また、固化剤10を製造する際、下記に示す各条件を満たすように製造することによって、固化剤10による土壌の改良強度等の固化性能の向上及び重金属等の溶出の抑制が、効果的に達成できることが確認されている。
まず、第一の条件として、固化剤10の原料として使用する製鋼スラグ6には、塩基度(CaO/SiO:SiO[二酸化ケイ素]含有量に対するCaO[酸化カルシウム]含有量の質量比)が0.8〜1.6であり、組成が質量%で、フッ素(F)が0.4%未満、酸化カルシウムが35〜65%、二酸化ケイ素が20〜55%、アルミナ(Al)が1〜15%であり、フッ素の水に対する溶出量が水1リットル当たり0.8mg(0.8mg/L)未満であり、六価クロム(Cr6+)の水に対する溶出量が、水1リットル当たり0.05mg(0.05mg/L)未満のものが使用される。そして、上記範囲限定の理由を以下に説明する。
塩基度(CaO/SiO)を0.8〜1.6とする理由は、ステンレス溶鋼の脱硫に与える悪影響を抑えるためである。塩基度は、ステンレス溶鋼の脱硫に大きな影響を及ぼし、0.8未満の場合では、十分な製鋼スラグによる脱硫反応が得られず、1.6を超える場合では、製鋼スラグの流動性が低下し、ステンレス溶鋼と製鋼スラグとの接触界面が減少して製鋼スラグによる脱硫反応が促進されない。また、後述するフッ素(F)を0.4質量%未満として製鋼スラグが組成されるためには、スラグの流動性を向上させるために用いられてきた蛍石(CaF)の使用が制限されるため、塩基度を調節して製鋼スラグの流動性を確保する必要がある。
製鋼スラグの組成においてフッ素(F)を0.4質量%未満とする理由は、土壌環境基準に規定される0.4質量%未満の含有量を満足するためである。
製鋼スラグの組成において酸化カルシウム(CaO)を35〜65質量%とする理由は、効果的なステンレス溶鋼の脱硫を実施するためである。酸化カルシウムは、脱硫反応に必須の成分であり、ステンレス溶鋼を十分に脱硫するには製鋼スラグに35質量%以上含有されている必要がある。一方、製鋼スラグ内の二酸化ケイ素(SiO)の含有量に対して酸化カルシウムの含有量が過剰になると、塩基度が高くなり過ぎてスラグの流動性が悪化し、製鋼スラグによる脱硫反応が促進されなくなるため、酸化カルシウムは、65質量%以下の含有量とする必要がある。
製鋼スラグの組成において二酸化ケイ素(SiO)を20〜55質量%とする理由は、効果的なステンレス溶鋼の脱硫を実施するためである。二酸化ケイ素は、原料から発生し、また還元剤による脱酸反応生成物として発生する。製鋼スラグにおける二酸化ケイ素の含有量は、20質量%未満であると塩基度が高くなり過ぎて製鋼スラグによる脱硫反応が促進されなくなり、55質量%を超えると塩基度が低くなり過ぎて十分な脱硫反応が得られない。このため、二酸化ケイ素を20〜55質量%とする
製鋼スラグの組成においてアルミナ(Al)を1〜15質量%とする理由は、製鋼スラグの流動性を確保するためである。アルミナは、耐火煉瓦や原料から混入し、製鋼スラグにおけるアルミナの含有量が低過ぎても高過ぎても、スラグの融点が上昇し、スラグの流動性を低下させる。
また、フッ素(F)の水に対する溶出量を0.8mg/L未満とし、六価クロム(Cr6+)の水に対する溶出量を0.05mg未満とする理由は、土壌環境基準を満たすためである。
そして、製鋼スラグ6は、原料の配合比と、スラグ及びステンレス溶鋼の間の元素分配比とについての経験則に基づき、溶製する鋼種ごとにスラグ原料の種類と配合比とを調節することによって、塩基度及び組成を上述のように調節することができる。
また、第二の条件として、ローラーミル粉砕・混合工程81における竪型ローラーミルから排出される製鋼スラグ及び石膏の混合物について、混合物の粉末度が2300〜4500ブレーンであることである。なお、ブレーン値は、ブレーン比表面積とも呼ばれ、比表面積試験により求められる粉末度のことであり、その単位は、cm/gである。
そして、竪型ローラーミルから排出される混合物の粉末度は、竪型ローラーミルの内部のローラの押圧力を調節することによって、制御することができる。例えば、ローラの押圧力を増大させることで、混合物の粉末度を高めることができる。
また、2300〜4500ブレーンという混合物の粉末度は、以下に説明する理由によるためである。粉末度の下限値2300ブレーンは、土粒子と製鋼スラグ粒子及び石膏粒子との間の接触表面積を確保して、互いの間での水和反応を十分に実施させるための値である。また、2300ブレーン以上の粉末度に粉砕することによって、製鋼スラグ及び石膏の混合物を加熱した際に、二水石膏からの水分の除去効率が向上する。一方、粉末度の上限値4500ブレーンは、過度に微細に混合物を粉砕することでの長時間の竪型ローラーミルの稼動を抑制し、固化剤10の生産性を確保するための値である。
また、第三の条件として、加熱処理工程83におけるキルン型加熱炉から排出される製鋼スラグ及び石膏の混合物において、混合物に含有する石膏のうちの50質量%以上が半水石膏であることである。
そして、混合物の石膏に占める半水石膏の割合は、キルン型加熱炉内の加熱ガスの温度を調節することによって、制御することができる。
また、50質量%以上という石膏に占める半水石膏の割合は、以下に説明する理由によるためである。
製鋼スラグは、土壌の長期的な強度の発現に影響を与え、半水石膏は、土壌の初期強度の発現に影響を与える。このため、50質量%以上という石膏に占める半水石膏の割合は、土壌の初期強度を発現させる半水石膏の生成量を確保して、土壌に対する固化反応を促進するために設定したものである。また、上記半水石膏の割合は、使用した石膏原料7を土壌の固化改良に効率的に利用するように設定したものでもある。
また、第四の条件として、ローラーミル粉砕・混合工程81における竪型ローラーミルに投入する製鋼スラグ6と石膏原料7との混合比率(製鋼スラグ6/石膏原料7)を、質量比で、80:20〜50:50(80/20〜50/50)とする。
第三の条件で説明したように、固化改良した土壌に十分な初期強度を発現させるためには、固化剤10中における半水石膏の含有率を高くすることが必要である。しかしながら、固化剤10中の半水石膏の含有率が50質量%を超えると、土壌の固化処理中に固化が急速に進むため、土壌に対して固化剤10を均一に混合させることができず、均一な土壌の固化改良をできなくなる。一方、固化剤10中の半水石膏の含有率が低すぎると、土壌の固化処理時の初期強度が十分に発現せず、土の取り扱いの作業性を向上させることができない。
さらに、第三の条件に示すように、加熱処理工程83ではキルン型加熱炉から排出される混合物の石膏のうちの50質量%以上が半水石膏となるようにキルン型加熱炉が制御される。
このため、固化剤10中における半水石膏の含有率を50質量%以下に抑えながらも固化改良時の土壌の初期強度を十分に得るために、竪型ローラーミルに投入される製鋼スラグ6と半水石膏を生成する石膏原料7との混合比率を80:20〜50:50の範囲から選択する。
また、混合物中における製鋼スラグの含有率が50質量%未満となると、固化改良した土壌に発現する長期強度が低くなることに加え、石膏の含有率が多くなることにより、石膏に含有されるフッ素(F)の溶出量が増大するという問題もある。この点からも、製鋼スラグ6と石膏原料7との混合比率は、50:50より石膏原料7の割合が大きくならないようにする必要がある。
上述の第一の条件〜第四の条件に従って製造された固化剤10は、土壌を改良した際に、製鋼スラグと半水石膏とが土壌に含有される水分を利用して水和反応し、エトリンガイト(3CaO・AlO・3CaSO・32HO)等を生成する。さらに、生成されたエトリンガイトは、製鋼スラグのクロム酸イオン(CrO 2−)及び石膏から溶出するフッ素イオン(F)を、エトリンガイトの硫酸イオン(SO 2−)と置換させて固定し、土中へのフッ素(F)及びクロム(Cr)の溶出を抑制する。また、土壌を改良した際に、製鋼スラグが土壌の水分を利用して水和反応をすることによってケイ酸カルシウム水和物集合体が生成され、生成されたケイ酸カルシウム水和物集合体による重金属の吸着作用によって、クロム等の重金属の溶出が抑制される。そして、上述の2つの抑制作用によって、重金属等の溶出抑制効果が著しく向上する。
また、固化剤製造工程8において、竪型ローラーミルに投入される製鋼スラグ6及び石膏原料7に、又は、竪型ローラーミルから排出されてパウダー捕集機によって捕集された製鋼スラグ及び石膏の混合物に、又は、キルン型加熱炉から排出された製鋼スラグ及び石膏の混合物に、高分子凝集剤を添加する工程を追加することができる。
高分子凝集剤としては、アクリル塩化ポリマー、天然系水溶性高分子カルシウム塩等を用いることができる。これらの高分子凝集剤は、ほぼ中性であり、製鋼スラグ及び石膏の混合物に含有させても高アルカリ化することがなく、土壌中の水分と反応して比較的短時間で硬化し、軟弱な土壌に初期強度を発現させる。
(実施例)
以下、本実施の形態の製造方法を用いて製造した固化剤10の実施例を説明する。なお、本実施例では、軟弱な土壌を各実施例の固化剤で固化処理し、処理後の土壌について特性を評価した。
実施例の固化剤の原料として使用した製鋼スラグの塩基度、組成及び溶出量を表1に示す。
Figure 0005824719
表1に示す製鋼スラグと二水和の石膏とを竪型ローラーミルにおいて混合・粉砕した後、キルン型加熱炉において加熱し、この際に上述のつの条件を満足するようにして7種類の固化剤を製造した。これらの固化剤をそれぞれ、実施例1〜7と呼ぶ。
固化処理の対象である土壌1mに対して使用した実施例1〜7の固化剤の配合量を表2に示す。
Figure 0005824719
実施例1の固化剤は、製鋼スラグ/石膏の混合比率(質量)が80/20である。
実施例2の固化剤は、製鋼スラグ/石膏の混合比率(質量)が70/30である。
実施例3の固化剤は、製鋼スラグ/石膏の混合比率(質量)が60/40である。
実施例4〜7の固化剤はいずれも、製鋼スラグ/石膏の混合比率(質量)が50/50であるが、石膏における半水石膏の割合、及び土壌への添加量が異なっている。
さらに、実施例1〜7の固化剤を用いて汚泥の固化処理を行った。そして、固化処理後の汚泥について、強度、PH及び各種元素の溶出量を測定した。なお、強度については、JIS A 1228規格に従った締固めた土のコーン指数試験方法によりコーン指数を測定した。コーン指数は、その値が大きいほど土壌の強度が高いことを表す。例えば、固化改良前の汚泥の場合、コーン指数は200kN/m以下となる。
実施例1〜7についての各測定項目の測定結果を表3に示す。
Figure 0005824719
コーン指数は、初期強度を確認するために固化処理した1日後と、長期強度を確認するために固化処理した7日後とに測定した。コーン指数400kN/m以上ある土壌については、建設工事において盛土、堤防構築、宅地造成に適用することができ、土壌を取り扱い易く作業性が良好である。つまり、コーン指数400kN/m以上ある土壌は、十分な初期強度を有していると評価できる。さらに、コーン指数800kN/m以上ある土壌については、建設工事において道路の路床等のあらゆる工種に適用することができ、十分な恒久的強度(長期強度)を有していると評価できる。
実施例1〜7のいずれの固化剤においても、固化処理1日後のコーン指数が470kN/m以上であり、十分な初期強度を発現している。さらに、固化処理7日後では、実施例1〜7のいずれの固化剤においても、コーン指数が1800kN/m以上であり、十分な長期強度を発現している。
PHは、固化処理直後の影響を確認するために固化処理した1日後と、長期にわたる影響を確認するために固化処理した7日後とに測定した。PHは、5.0〜9.0の範囲にある場合、中性と評価することができる。また、水質汚濁防止法の排水基準では、排水におけるPHは、5.8〜8.6の範囲になければならないことが規定されている。
固化処理1日後のPHは、実施例5〜7の固化剤において9.0未満となっており、中性と評価することができ、実施例1〜4の固化剤において9.0を超えているが、9.0の近傍の9.1〜9.4を示しており、ほぼ中性と評価することができる。
また、固化処理7日後のPHは、実施例1〜7すべての固化剤において、8.0〜8.5の範囲内の値を示し、中性と評価することができることに加え、水質汚濁防止法の排水基準も満たす。よって、長期的に、改良した土壌から酸性又はアルカリ性の水が周辺に流出するようなことが抑えられるといえる。
溶出量は、フッ素(F)、六価クロム(Cr6+)、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)及びヒ素(As)について測定した。表3中で、NDで示す欄は、各元素についての溶出量が検出限界値以下であったことを示す。実施例1〜7のいずれの固化剤においても、すべての元素の溶出量がNDであり、問題がなかった。
また、実施例1〜7の固化剤と比較するために、7種類の固化剤を用意した。これらの7種類の固化剤をそれぞれ、実施例8〜11及び比較例1〜と呼ぶ。
固化処理の対象である土壌1mに対して使用した実施例8〜11及び比較例1〜3の固化剤の配合量を表4に示す。
Figure 0005824719
実施例8〜11は、表1に示す製鋼スラグと二水和の石膏とを竪型ローラーミル及びキルン型加熱炉において混合・粉砕・加熱したが、上述の第一の条件、第二の条件及び第四の条件のみを満足するようにして製造した固化剤である。このため、実施例8〜11の固化剤では、含有する石膏における半水石膏の割合が50質量%未満となっている。
また、実施例8の固化剤は、製鋼スラグ/石膏の混合比率(質量)が80/20であり、実施例1と同じ混合比率である。
実施例9の固化剤は、製鋼スラグ/石膏の混合比率(質量)が70/30であり、実施例2と同じ混合比率である。
実施例10の固化剤は、製鋼スラグ/石膏の混合比率(質量)が60/40であり、実施例3と同じ混合比率である。
実施例11の固化剤は、製鋼スラグ/石膏の混合比率(質量)が50/50であり、実施例4と同じ混合比率である。
比較例1〜3は、表1に示す製鋼スラグと二水和の石膏とを竪型ローラーミルで混合及び粉砕して製造した固化剤であり、キルン型加熱炉による加熱処理を行っていない。このため、比較例1〜3の固化剤はいずれも、含有する石膏における半水石膏の割合が0質量%となっている。また、比較例1〜3の固化剤はいずれも、製鋼スラグ/石膏の混合比率(質量)が50/50であり、実施例5〜7と同じ混合比率である。また、比較例1〜3の間では、竪型ローラーミルで混合及び粉砕された後における製鋼スラグ及び石膏の混合物のブレーン値がそれぞれ異なっている。
次に、実施例8〜11及び比較例1〜の固化剤を用いて汚泥の固化処理を行った。固化処理後の汚泥について、コーン指数による強度、PH及び各種元素の溶出量を測定した。
実施例8〜11及び比較例1〜3についての各測定項目の測定結果を表5に示す。
Figure 0005824719
コーン指数は、実施例1〜7と同様に、固化処理した1日後と7日後とに測定した。
実施例8〜11の固化剤において、固化処理1日後のコーン指数が400kN/m以上である。比較例1〜3の固化剤において、固化処理1日後のコーン指数が300kN/m以下となっている。実施例8〜11では、十分な初期強度が発現されているが、実施例1〜4に比べて全体的に若干低くなっている。また、比較例1〜3では、初期強度の発現に与える影響が大きい半水石膏を含まないため、土壌の初期強度は低くなっており十分なものではない。
さらに、固化処理7日後では、実施例8〜11では800kN/m以上のコーン指数を示している。比較例1〜3では730kN/m以下のコーン指数を示している。
また、実施例8〜11では、十分な長期強度が発現されているが、全体的に実施例1〜4に比べて5〜6割程度の発現強度であり大幅に低くなっている。比較例1〜3では、十分な長期強度が発現されておらず、全体的に実施例5〜7に比べて4割程度の発現強度でありさらに低くなっている。実施例8〜11では、固化剤に含有する石膏における半水石膏の割合が低いことから固化改良した土壌に含まれる半水石膏自体の量が少なく、また、比較例1〜3では、固化改良した土壌に半水石膏が含まれないため、実施例8〜11及び比較例1〜3において半水石膏に起因する土壌の強度増加が少ないこと又はほとんどないことが、改良した土壌の発現強度を低くしている。
よって、製鋼スラグ及び石膏を用いた固化剤の製造では、固化剤の石膏における半水石膏の割合が、固化改良した土壌の初期強度及び長期強度の両方に影響を与え、実施例での固化剤の製造方法が発現強度の面で優れていることがわかる。
PHは、実施例1〜7と同様に、固化処理した1日後と7日後とに測定した。
固化処理1日後のPHは、実施例8〜11において、9.1〜9.5の範囲にあり、実施例1〜4に近い測定結果を示し、ほぼ中性と評価することができる。比較例1〜3では、PHは、9.3〜9.6の範囲にあり、実施例5〜7より若干アルカリ性を示している。
固化処理7日後のPHは、実施例8〜11及び比較例1〜3のいずれにおいても、8.2〜8.8の範囲内にあり、中性と評価することができる。さらに、実施例8〜11におけるPHは、水質汚濁防止法の排水基準も満足している。また、実施例8〜11におけるPHは、実施例1〜4における測定結果に近いものとなっている。固化処理7日後でのPHの減少は、遅延性の製鋼スラグの反応が進行したことによるものである。
溶出量については、実施例8〜11では、フッ素(F)、六価クロム(Cr6+)、鉛(Pb)及びヒ素(As)が検出されたが、いずれも基準値以下であった。一方、比較例1〜3については、比較例において、基準値を超えるフッ素、六価クロム及び鉛と基準値上限のヒ素とが検出され、比較例において基準値を超える六価クロムが検出され、比較例において、基準値を超える六価クロムと基準値上限の鉛及びヒ素とが検出された。また、実施例8〜11及び比較例1〜3において、その他の元素については溶出量が基準値以下であった。
比較例1〜3では、固化剤に半水石膏が含まれないため、土壌の改良時にエトリンガイトが生成されず、各元素の溶出量が多くなっている。
よって、比較例に比べて実施例1〜7では、すべての元素の溶出量が低く抑えられている。
上述において説明したように、この発明に係る固化剤10の製造方法は、土壌を固化改良する固化剤の製造方法であり、製鋼スラグ6及び二水和以上に水和した石膏の石膏原料7を混合させて一緒に粉砕した後、混合及び粉砕した製鋼スラグ及び石膏の混合物を加熱することによって固化剤を製造する方法である。この製造方法に使用される製鋼スラグ6は、塩基度(酸化カルシウム含有量/二酸化ケイ素含有量)が、0.8〜1.6であり、組成が質量%で、フッ素が0.4%未満、酸化カルシウムが35〜65%、二酸化ケイ素が20〜55%、アルミナが1〜15%であり、フッ素の水に対する溶出量が水1リットル当たり0.8mg未満であり、六価クロムの水に対する溶出量が水1リットル当たり0.05mg未満である。
このとき、製鋼スラグ6及び石膏原料7を混合させることによって、これらを同時に粉砕することができ、さらに同時に加熱することができるため、固化剤10の製造工程が短縮され、コストを低減することが可能になる。また、製鋼スラグ6及び二水和以上に水和した石膏の石膏原料7を混合させて一緒に粉砕するため、粉砕時に石膏が製鋼スラグに含有する水分によって水和反応を起こすことなく両者を均一に混合することができる。さらに、製鋼スラグ及び石膏を均一に混合及び粉砕した後に加熱するため、二水和以上に水和した石膏から水分が除去されて生成した半水石膏は、周囲の製鋼スラグでは水分が除去されているため、硬化してしまう水和反応の発生が抑えられることができる。よって、安定した固化性能を有する固化剤10の製造が可能になる。
また、固化剤10の製造方法では、製鋼スラグ6及び石膏原料7を、製鋼スラグ及び石膏の混合物の粉砕後の粉末度が2300〜4500ブレーンとなるように、粉砕する。粉末度を2300〜4500ブレーンとすることによって、加熱時において水和した石膏からの半水石膏の生成効率を向上させると共に、土粒子と固化剤10の粒子との接触面積を確保して互いの反応性を向上させることが可能になる。
また、固化剤10の製造方法では、製鋼スラグ6及び石膏原料7の混合及び粉砕後の混合物を、加熱後の上記混合物に含まれる石膏における半水石膏の含有率が50質量%以上となるように、加熱する。固化剤10の石膏における半水石膏の含有率を50質量%以上とすることによって、改良した土壌における固化強度の発現を促進することが可能になる。
さらに、固化剤10の製造方法では、80:20〜50:50の混合比率で製鋼スラグ6と石膏原料7とを混合させる。これによって、固化剤10における半水石膏の含有率が高くなり過ぎ、固化改良の際の急速に固化してしまうことを抑えることが可能になる。
また、固化剤10の製造方法において、石膏原料7と混合される製鋼スラグ6は、ステンレス鋼スラグから選鉱処理をして地金を回収した後の塊状の製鋼スラグ及び粒状の製鋼スラグの少なくとも一方である。ステンレス製鋼の副産物である製鋼スラグは、近年の環境規制によってフッ素を含むせいで用途が縮小しているが、廃棄することなく資源として有効に再利用することが可能になる。
また、固化剤10の製造方法において、製鋼スラグ6と混合される石膏原料7は、フッ素の水に対する溶出量が水1リットル当たり8mg以下であり、廃石膏、脱硫石膏及び化学合成石膏のうちから選択された少なくとも1つとすることができる。石膏原料7のフッ素溶出量を低く抑えることによって、固化剤10で固化改良した土壌におけるフッ素の溶出量を低く抑えることが可能になる。また、廃棄物や副産物としての石膏を資源として有効に再利用することが可能になる。
また、固化剤10の製造方法において、製鋼スラグ6及び石膏原料7に高分子凝集剤を添加する。これによって、固化改良した土壌に対して、より早く十分な初期強度を発現させることが可能になる。
また、固化剤10の製造方法では、製鋼スラグ6及び石膏原料7の混合及び粉砕を、竪型ローラーミルを使用して実施し、混合及び粉砕した製鋼スラグ及び石膏の混合物の加熱を、キルン型加熱炉を使用して実施する。よって、2つの機械によって、固化剤の製造が可能であり、コストを低減することができる。
また、本実施の形態では、製鋼スラグ6及び石膏原料7の混合及び粉砕に竪型ローラーミルを使用し、混合及び粉砕した製鋼スラグ及び石膏の混合物の加熱にキルン型加熱炉を使用していたが、これに限定されるものでない。
6 製鋼スラグ、7 石膏原料、8 固化剤製造工程、10 固化剤、81 ローラーミル粉砕・混合工程、82 捕集工程、83 加熱処理工程。

Claims (8)

  1. 土壌を固化改良する固化剤の製造方法において、
    製鋼スラグ及び二水和以上に水和した石膏を混合させて一緒に粉砕した後、混合及び粉砕した前記製鋼スラグ及び前記石膏の混合物を加熱することによって前記固化剤を製造し、
    前記製鋼スラグは、
    塩基度(酸化カルシウム含有量/二酸化ケイ素含有量)が、0.8〜1.6であり、
    組成が質量%で、フッ素が0.4%未満、酸化カルシウムが35〜65%、二酸化ケイ素が20〜55%、アルミナが1〜15%であり、
    フッ素の水に対する溶出量が水1リットル当たり0.8mg未満であり、六価クロムの水に対する溶出量が水1リットル当たり0.05mg未満である、固化剤の製造方法。
  2. 前記製鋼スラグ及び前記石膏を、前記製鋼スラグ及び前記石膏の混合物の粉砕後の粉末度が2300〜4500ブレーンとなるように、粉砕する請求項1に記載の固化剤の製造方法。
  3. 前記製鋼スラグ及び前記石膏の混合及び粉砕後の混合物を、加熱後の前記混合物に含まれる前記石膏における半水石膏の含有率が50質量%以上となるように、加熱する請求項1または2に記載の固化剤の製造方法。
  4. 80:20〜50:50の混合比率で前記製鋼スラグと前記石膏とを混合させる請求項3に記載の固化剤の製造方法。
  5. 前記石膏と混合される前記製鋼スラグは、ステンレス鋼スラグから選鉱処理をして地金を回収した後の塊状の製鋼スラグ及び粒状の製鋼スラグの少なくとも一方である請求項1〜4のいずれか一項に記載の固化剤の製造方法。
  6. 前記製鋼スラグと混合される前記石膏は、フッ素の水に対する溶出量が水1リットル当たり8mg以下であり、廃石膏、脱硫石膏及び化学合成石膏のうちから選択された少なくとも1つである請求項1〜5のいずれか一項に記載の固化剤の製造方法。
  7. 前記製鋼スラグ及び前記石膏に高分子凝集剤を添加する請求項1〜6のいずれか一項に記載の固化剤の製造方法。
  8. 前記製鋼スラグ及び前記石膏の混合及び粉砕を、竪型ローラーミルを使用して実施し、
    混合及び粉砕した前記製鋼スラグ及び前記石膏の混合物の加熱を、キルン型加熱炉を使用して実施する請求項1〜7のいずれか一項に記載の固化剤の製造方法。
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