JP5824719B2 - 固化剤の製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1では、ローラーミルにおいて粗粒又は塊状の製鋼スラグを粉砕して微粉状にした製鋼スラグを捕集機で収集し、収集した微粉状の製鋼スラグと半水石膏を含む固化促進剤とを混合機で混合して、固化剤を製造している。
また、製鋼スラグ及び石膏の混合及び粉砕後の混合物を、加熱後の上記混合物に含まれる石膏における半水石膏の含有率が50質量%以上となるように、加熱してもよい。
さらに、80:20〜50:50の混合比率で製鋼スラグと石膏とを混合させてもよい。
一方、製鋼スラグと混合される石膏は、フッ素の水に対する溶出量が水1リットル当たり8mg以下であり、廃石膏、脱硫石膏及び化学合成石膏のうちから選択された少なくとも1つであってよい。
また、製鋼スラグ及び石膏に高分子凝集剤を添加してもよい。
また、製鋼スラグ及び石膏の混合及び粉砕を、竪型ローラーミルを使用して実施し、混合及び粉砕した製鋼スラグ及び石膏の混合物の加熱を、キルン型加熱炉を使用して実施してもよい。
図1を参照すると、固化剤10を製造する工程は、大別すると、原料となる製鋼スラグを生成する製鋼工程1、製鋼スラグから地金を回収するスラグ選鉱処理工程3、並びに、製鋼スラグ及び石膏の原料から固化剤10を生成する固化剤製造工程8の3つの工程によって構成されている。
収集された製鋼スラグは、冷却工程2に移されて冷却固化される。そして、製鋼スラグには、有用な金属成分が比較的多く含有されているため、次のスラグ選鉱処理工程3で含有する金属成分である地金を回収する。
粉砕処理を受けた製鋼スラグは、篩い分級工程32に移され、篩いによって所定の大きさ以下のものが選り分けられる、つまり分級される。なお、篩いを通過しなかった製鋼スラグは、再び破砕工程31に戻され、破砕・粉砕処理を受ける。
地金4が回収された製鋼スラグは、エーキンス分級工程35に移され、エーキンス分級機によって分級を受けて、特定の粒度(おおよそ、5mm程度)以上の塊状及び粗粒状の製鋼スラグ6が選別される。
製鋼スラグ6が分級された製鋼スラグは、シックナー・脱水工程36に移され、シックナーによって微粉状の製鋼スラグが分離され、分離された微粉状の製鋼スラグが脱水処理を受けてパウダー状の製鋼スラグ5として回収される。
ローラーミル粉砕・混合工程81では、竪型ローラーミルが使用され、製鋼スラグ6と、二水和の石膏(二水石膏:CaSO4・2H2O)からなる石膏原料7とが、竪型ローラーミルに投入される。つまり、製鋼スラグ6と石膏原料7とが、竪型ローラーミルに同時に投入される。
竪型ローラーミルの内部では、混合及び粉砕された製鋼スラグ及び石膏の混合物は、竪型ローラーミルの導入口からその内部に導入される気流によって巻き上げられてさらに混合され、さらに、内部に設けられたセパレータによって所定の粒度範囲のものが選別・収集され、竪型ローラーミルの排出口から空気と共に排出される。
加熱後の製鋼スラグ及び石膏の混合物は、固化剤10としてサイロに貯蔵される。そして、サイロに貯蔵された固化剤10は、土壌の改良剤として市場に出荷される。
なお、半水石膏は、土壌中の水分を利用して水和反応すると、比較的短時間の間に土壌に強度を発現するため、土壌の固化に速攻性があり、土壌の初期強度を発現する。製鋼スラグは、水和反応して硬化し土壌を固化する反応が遅延性であるため、土壌に十分な強度を発現させるには長時間を要し、土壌の長期的な強度を発現する。そして、エトリンガイトは、それ自体で強度を発現し、反応性が高い半水石膏と迅速に反応して生成され土壌の初期強度を発現する。
製鋼スラグの組成において酸化カルシウム(CaO)を35〜65質量%とする理由は、効果的なステンレス溶鋼の脱硫を実施するためである。酸化カルシウムは、脱硫反応に必須の成分であり、ステンレス溶鋼を十分に脱硫するには製鋼スラグに35質量%以上含有されている必要がある。一方、製鋼スラグ内の二酸化ケイ素(SiO2)の含有量に対して酸化カルシウムの含有量が過剰になると、塩基度が高くなり過ぎてスラグの流動性が悪化し、製鋼スラグによる脱硫反応が促進されなくなるため、酸化カルシウムは、65質量%以下の含有量とする必要がある。
また、フッ素(F)の水に対する溶出量を0.8mg/L未満とし、六価クロム(Cr6+)の水に対する溶出量を0.05mg未満とする理由は、土壌環境基準を満たすためである。
そして、製鋼スラグ6は、原料の配合比と、スラグ及びステンレス溶鋼の間の元素分配比とについての経験則に基づき、溶製する鋼種ごとにスラグ原料の種類と配合比とを調節することによって、塩基度及び組成を上述のように調節することができる。
そして、竪型ローラーミルから排出される混合物の粉末度は、竪型ローラーミルの内部のローラの押圧力を調節することによって、制御することができる。例えば、ローラの押圧力を増大させることで、混合物の粉末度を高めることができる。
そして、混合物の石膏に占める半水石膏の割合は、キルン型加熱炉内の加熱ガスの温度を調節することによって、制御することができる。
製鋼スラグは、土壌の長期的な強度の発現に影響を与え、半水石膏は、土壌の初期強度の発現に影響を与える。このため、50質量%以上という石膏に占める半水石膏の割合は、土壌の初期強度を発現させる半水石膏の生成量を確保して、土壌に対する固化反応を促進するために設定したものである。また、上記半水石膏の割合は、使用した石膏原料7を土壌の固化改良に効率的に利用するように設定したものでもある。
第三の条件で説明したように、固化改良した土壌に十分な初期強度を発現させるためには、固化剤10中における半水石膏の含有率を高くすることが必要である。しかしながら、固化剤10中の半水石膏の含有率が50質量%を超えると、土壌の固化処理中に固化が急速に進むため、土壌に対して固化剤10を均一に混合させることができず、均一な土壌の固化改良をできなくなる。一方、固化剤10中の半水石膏の含有率が低すぎると、土壌の固化処理時の初期強度が十分に発現せず、土の取り扱いの作業性を向上させることができない。
さらに、第三の条件に示すように、加熱処理工程83ではキルン型加熱炉から排出される混合物の石膏のうちの50質量%以上が半水石膏となるようにキルン型加熱炉が制御される。
高分子凝集剤としては、アクリル塩化ポリマー、天然系水溶性高分子カルシウム塩等を用いることができる。これらの高分子凝集剤は、ほぼ中性であり、製鋼スラグ及び石膏の混合物に含有させても高アルカリ化することがなく、土壌中の水分と反応して比較的短時間で硬化し、軟弱な土壌に初期強度を発現させる。
以下、本実施の形態の製造方法を用いて製造した固化剤10の実施例を説明する。なお、本実施例では、軟弱な土壌を各実施例の固化剤で固化処理し、処理後の土壌について特性を評価した。
実施例の固化剤の原料として使用した製鋼スラグの塩基度、組成及び溶出量を表1に示す。
固化処理の対象である土壌1m3に対して使用した実施例1〜7の固化剤の配合量を表2に示す。
実施例2の固化剤は、製鋼スラグ/石膏の混合比率(質量)が70/30である。
実施例3の固化剤は、製鋼スラグ/石膏の混合比率(質量)が60/40である。
実施例4〜7の固化剤はいずれも、製鋼スラグ/石膏の混合比率(質量)が50/50であるが、石膏における半水石膏の割合、及び土壌への添加量が異なっている。
実施例1〜7についての各測定項目の測定結果を表3に示す。
実施例1〜7のいずれの固化剤においても、固化処理1日後のコーン指数が470kN/m2以上であり、十分な初期強度を発現している。さらに、固化処理7日後では、実施例1〜7のいずれの固化剤においても、コーン指数が1800kN/m2以上であり、十分な長期強度を発現している。
固化処理1日後のPHは、実施例5〜7の固化剤において9.0未満となっており、中性と評価することができ、実施例1〜4の固化剤において9.0を超えているが、9.0の近傍の9.1〜9.4を示しており、ほぼ中性と評価することができる。
また、固化処理7日後のPHは、実施例1〜7すべての固化剤において、8.0〜8.5の範囲内の値を示し、中性と評価することができることに加え、水質汚濁防止法の排水基準も満たす。よって、長期的に、改良した土壌から酸性又はアルカリ性の水が周辺に流出するようなことが抑えられるといえる。
固化処理の対象である土壌1m3に対して使用した実施例8〜11及び比較例1〜3の固化剤の配合量を表4に示す。
また、実施例8の固化剤は、製鋼スラグ/石膏の混合比率(質量)が80/20であり、実施例1と同じ混合比率である。
実施例9の固化剤は、製鋼スラグ/石膏の混合比率(質量)が70/30であり、実施例2と同じ混合比率である。
実施例10の固化剤は、製鋼スラグ/石膏の混合比率(質量)が60/40であり、実施例3と同じ混合比率である。
実施例11の固化剤は、製鋼スラグ/石膏の混合比率(質量)が50/50であり、実施例4と同じ混合比率である。
実施例8〜11及び比較例1〜3についての各測定項目の測定結果を表5に示す。
実施例8〜11の固化剤において、固化処理1日後のコーン指数が400kN/m2以上である。比較例1〜3の固化剤において、固化処理1日後のコーン指数が300kN/m2以下となっている。実施例8〜11では、十分な初期強度が発現されているが、実施例1〜4に比べて全体的に若干低くなっている。また、比較例1〜3では、初期強度の発現に与える影響が大きい半水石膏を含まないため、土壌の初期強度は低くなっており十分なものではない。
また、実施例8〜11では、十分な長期強度が発現されているが、全体的に実施例1〜4に比べて5〜6割程度の発現強度であり大幅に低くなっている。比較例1〜3では、十分な長期強度が発現されておらず、全体的に実施例5〜7に比べて4割程度の発現強度でありさらに低くなっている。実施例8〜11では、固化剤に含有する石膏における半水石膏の割合が低いことから固化改良した土壌に含まれる半水石膏自体の量が少なく、また、比較例1〜3では、固化改良した土壌に半水石膏が含まれないため、実施例8〜11及び比較例1〜3において半水石膏に起因する土壌の強度増加が少ないこと又はほとんどないことが、改良した土壌の発現強度を低くしている。
固化処理1日後のPHは、実施例8〜11において、9.1〜9.5の範囲にあり、実施例1〜4に近い測定結果を示し、ほぼ中性と評価することができる。比較例1〜3では、PHは、9.3〜9.6の範囲にあり、実施例5〜7より若干アルカリ性を示している。
比較例1〜3では、固化剤に半水石膏が含まれないため、土壌の改良時にエトリンガイトが生成されず、各元素の溶出量が多くなっている。
よって、比較例に比べて実施例1〜7では、すべての元素の溶出量が低く抑えられている。
さらに、固化剤10の製造方法では、80:20〜50:50の混合比率で製鋼スラグ6と石膏原料7とを混合させる。これによって、固化剤10における半水石膏の含有率が高くなり過ぎ、固化改良の際の急速に固化してしまうことを抑えることが可能になる。
また、固化剤10の製造方法では、製鋼スラグ6及び石膏原料7の混合及び粉砕を、竪型ローラーミルを使用して実施し、混合及び粉砕した製鋼スラグ及び石膏の混合物の加熱を、キルン型加熱炉を使用して実施する。よって、2つの機械によって、固化剤の製造が可能であり、コストを低減することができる。
Claims (8)
- 土壌を固化改良する固化剤の製造方法において、
製鋼スラグ及び二水和以上に水和した石膏を混合させて一緒に粉砕した後、混合及び粉砕した前記製鋼スラグ及び前記石膏の混合物を加熱することによって前記固化剤を製造し、
前記製鋼スラグは、
塩基度(酸化カルシウム含有量/二酸化ケイ素含有量)が、0.8〜1.6であり、
組成が質量%で、フッ素が0.4%未満、酸化カルシウムが35〜65%、二酸化ケイ素が20〜55%、アルミナが1〜15%であり、
フッ素の水に対する溶出量が水1リットル当たり0.8mg未満であり、六価クロムの水に対する溶出量が水1リットル当たり0.05mg未満である、固化剤の製造方法。 - 前記製鋼スラグ及び前記石膏を、前記製鋼スラグ及び前記石膏の混合物の粉砕後の粉末度が2300〜4500ブレーンとなるように、粉砕する請求項1に記載の固化剤の製造方法。
- 前記製鋼スラグ及び前記石膏の混合及び粉砕後の混合物を、加熱後の前記混合物に含まれる前記石膏における半水石膏の含有率が50質量%以上となるように、加熱する請求項1または2に記載の固化剤の製造方法。
- 80:20〜50:50の混合比率で前記製鋼スラグと前記石膏とを混合させる請求項3に記載の固化剤の製造方法。
- 前記石膏と混合される前記製鋼スラグは、ステンレス鋼スラグから選鉱処理をして地金を回収した後の塊状の製鋼スラグ及び粒状の製鋼スラグの少なくとも一方である請求項1〜4のいずれか一項に記載の固化剤の製造方法。
- 前記製鋼スラグと混合される前記石膏は、フッ素の水に対する溶出量が水1リットル当たり8mg以下であり、廃石膏、脱硫石膏及び化学合成石膏のうちから選択された少なくとも1つである請求項1〜5のいずれか一項に記載の固化剤の製造方法。
- 前記製鋼スラグ及び前記石膏に高分子凝集剤を添加する請求項1〜6のいずれか一項に記載の固化剤の製造方法。
- 前記製鋼スラグ及び前記石膏の混合及び粉砕を、竪型ローラーミルを使用して実施し、
混合及び粉砕した前記製鋼スラグ及び前記石膏の混合物の加熱を、キルン型加熱炉を使用して実施する請求項1〜7のいずれか一項に記載の固化剤の製造方法。
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