以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態におけるカード型ユニットを示す斜視図、図2は本発明の実施の形態におけるカード用トレイの四面図、図3は本発明の実施の形態におけるカード用トレイの上面図、図4は本発明の実施の形態におけるカード用トレイの斜視図である。なお、図2において、(a)は後面図、(b)は下面図、(c)は前面図、(d)は側面図であり、図4において、(a)は前方から観た斜視図、(b)は後方から観た斜視図である。
図において、101は本実施の形態におけるカード型ユニットであり、図示されない電子機器に取付けられた後述されるコネクタとしてのカード用コネクタ1に挿入される。つまり、カード型ユニット101は、カード用コネクタ1を介して、電子機器に装着される。なお、該電子機器は、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、PDA、デジタルカメラ、ビデオカメラ、音楽プレーヤ、ゲーム機、車両用ナビゲーション装置等であるが、いかなる種類の機器であってもよい。
本実施の形態において、カード型ユニット101は、例えば、SIMカード、MMC(R)、SD(R)カード、miniSD(R)カード、xDピクチャーカード(R)、メモリスティック(R)、メモリスティックDuo(R)、スマートメディア(R)、Trans−Flash(R)メモリカード、マイクロSIM(microSIM)カード等のメモリカード自体であってもよい。また、例えば、miniSD(R)カードを内部に収容したSD(R)カード型アダプタのように、カード用コネクタ1に挿入するのに適した形状及び寸法を備え、内部にメモリカードを収容したカード用アダプタであってもよい。さらに、カード用コネクタ1に挿入するのに適した形状及び寸法を備え、内部にメモリカードを収容したカード用トレイであってもよい。要するに、前記カード型ユニット101は、カード用コネクタ1に挿入可能であって、該カード用コネクタ1を介して、電子機器と導通可能なものであれば、いかなる種類のユニットであってもよい。
本実施の形態においては、説明の都合上、カード型ユニット101が、図1に示されるようなカード102を収容したカード用トレイ161である場合について説明する。また、前記カード102は、マイクロSIMカードであるものとして説明する。
前記カード102は、図1に示されるように、全体的に略矩(く)形の板状の形状を有し、その下面111aに、端子部材である電極パッドとしてのコンタクトパッド151が、複数、前端111f及び後端111rに沿って並ぶように配設されている。図に示される例では、3つずつ、2列に並ぶように配設されている。すなわち、コンタクトパッド151は、カード102の幅方向に延在する2本の列を成すように配列されている。なお、下面111aの反対側の面、すなわち、上面には、コンタクトパッド151が配設されていない。さらに、後端111rの左右両端と側縁112とを結合する角部の一方、具体的には、下面111aにおける後方右角部には、斜めに切欠かれた傾斜部としての切欠き部111cが形成されている。
なお、本実施の形態において、カード用トレイ161、カード用コネクタ1及びカード102の各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、カード用トレイ161、カード用コネクタ1、カード102又はそれらの部品が図に示される姿勢である場合に適切であるが、カード用トレイ161、カード用コネクタ1、カード102又はそれらの部品の姿勢が変化した場合には、姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
ここで、前記カード用トレイ161は、金属から成る板材に打抜き、折曲げ等の加工を施して一体的に形成された部材であって、概略矩形状の天板部162と、該天板部162の側縁に沿って前後方向に延在し、天板部162の側縁から下向きに立設する一対の側板部164と、前記天板部162の前縁に沿って幅方向に延在し、天板部162の前縁から下向きに立設する前板部165と、前記天板部162の後縁に沿って幅方向に延在し、天板部162の後縁から下向きに立設する後板部163とを有する。そして、図1に示されるように、カード102をその内部に収容した状態で、天板部162はカード102の図示されない上面(コンタクトパッド151の反対側面)と対向してカード102の厚さ方向の位置を規制し、側板部164はカード102の側縁112と対向してカード102の幅方向(短手方向)の位置を規制し、前板部165及び後板部163はカード102の前端111f及び後端111rと対向してカード102の前後方向(長手方向)の位置を規制する。しかし、前記カード用トレイ161は、底板部を備えていない。すなわち、天板部162に対向する部材を備えておらず、収容されたカード102の下面111a側は、開放されている。
なお、本実施の形態においては、カード用コネクタ1に挿入する際の進行方向前方(図3における下方)の端部を前端161Fと称し、進行方向後方(図3における上方)の端部を後端161Rと称する。
そして、カード用トレイ161の前端161Fに位置する前板部165には、所定幅の切欠き部165aが形成され、該切欠き部165aにおいて、カード102の前端111fの少なくとも一部が前記前端161Fから露出するようになっている。なお、図に示される例では、前板部165の幅方向中心を含む半分以上の部分が切欠き部165aとなり、前板部165における切欠き部165a以外の部分は、天板部162の幅方向両端、すなわち、左右両側の側板部164に近接した箇所にのみ残存しているが、前記切欠き部165aの位置及び大きさは任意に変更することができる。しかし、カード用コネクタ1が備える後述される端子51が配設されている範囲に対応する部分には、前板部165が残存しないように切欠き部165aを形成することが望ましい。これにより、カード用コネクタ1に挿入する際に、前板部165が端子51と干渉して該端子51に損傷を与えることを確実に防止することができる。さらに、前記切欠き部165aは、図2(b)に示されるように、天板部162の前縁近傍部分も含んでいること、つまり、天板部162の前縁近傍部分も切欠かれていること、が望ましい。
また、カード用トレイ161の後端161Rに位置する後板部163に近接した位置には、カード保持ばね部としての弾性腕部166が配設されている。該弾性腕部166は、後板部163と一体的に形成された部材であって、後板部163に取付けられた取付部166a、基端が前記取付部166aに接続され、横方向に向けて延出するカンチレバー状の本体部166b、該本体部166bの自由端に接続された当接部166c、及び、該当接部166cの下端に接続された誘込み部166dを有する。そして、前記本体部166bの発揮するばね力によって前記当接部166cがカード用トレイ161内に収容されたカード102の後端111rを前方に付勢することにより、前記カード102の前端111fが前板部165の内側面である当接部165cに押圧されるので、前記カード102は、前後から、前記弾性腕部166の当接部166cと前板部165の当接部165cとによって挟持された状態となる。つまり、弾性腕部166の発揮するばね力によって、前記カード102は、前後から弾性的に把持される。したがって、カード用トレイ161の下方が開放されていても、該カード用トレイ161内に収容されたカード102は、カード用トレイ161から脱落することがない。
なお、弾性腕部166の当接部166c、及び、前板部165の当接部165cには、凹溝等の凹凸部を形成してもよい。この場合、弾性腕部166の当接部166cとカード102の後端111rとの摩擦、及び、前板部165の当接部165cとカード102の前端111fとの摩擦が大きく、カード用トレイ161内に収容されたカード102が下方に変位してカード用トレイ161から脱落することが確実に防止される。
また、前記誘込み部166dは、カード102をカード用トレイ161内に収容する際に、カード102の後端111rをガイドして当接部166cに導くための部材であって、カード102の後端111rがスムーズにスライドすることができるように、平滑な円弧曲面を備える。すなわち、前記誘込み部166dにはアールが付けられている。
通常、カード用トレイ161にカード102をセットする場合、ユーザは、まず、カード102をその後端111rからカード用トレイ161内に挿入する。すなわち、カード102をカード用トレイ161の天板部162に対して傾斜させて、その後端111rをカード用トレイ161内に挿入して、天板部162に当接させるとともに、弾性腕部166の当接部166cに当接させる。続いて、カード用トレイ161の後端161Rに向けた押圧力をカード102に付与すると、弾性腕部166が弾性的に変形し、該弾性腕部166の当接部166cが弾性的に変位して後板部163に接近する。それに伴い、カード102全体もカード用トレイ161の後端161Rに向けて変位し、その前端111fがカード用トレイ161の前板部165よりも後方に位置する。そして、カード102の前端111fもカード用トレイ161内に挿入して天板部162に当接させるとともに、カード用トレイ161の後端161Rに向けた押圧力を解除する。すると、弾性腕部166が発揮するばね力によって、当接部166cが弾性的に変位して後板部163から離間するとともに、カード102全体がカード用トレイ161の前端161Fに向けて変位し、その前端111fがカード用トレイ161の前板部165に当接する。
これにより、カード用トレイ161へのカード102のセットが完了し、該カード102は、図1に示されるように、カード用トレイ161内に収容された状態となる。
しかし、前記誘込み部166dにはアールが付けられているので、後端111rからカード102をカード用トレイ161内に挿入するのではなく、前端111fからカード102をカード用トレイ161内に挿入することもできる。
具体的には、ユーザは、まず、カード102をカード用トレイ161の天板部162に対して傾斜させて、その前端111fをカード用トレイ161内に挿入して、天板部162に当接させるとともに前板部165に当接させる。続いて、後端111rを天板部162に向けて変位させる。すると、後端111rは、弾性腕部166の誘込み部166dに当接する。ここで、天板部162に向けた押圧力をカード102の後端111rに付与すると、該後端111rは、誘込み部166dに沿って天板部162に向けて変位するとともに、誘込み部166d及び該誘込み部166dが接続されている当接部166cを、弾性腕部166のばね力に抗して、後板部163に接近するように変位させる。この際、誘込み部166dの表面は、平滑な円弧曲面なので、カード102の後端111rは、誘込み部166dの表面に沿ってスムーズに天板部162に向けて変位することができる。
最後に、カード102の後端111rが天板部162に当接すると、カード用トレイ161へのカード102のセットが完了する。
一方、カード用トレイ161からカード102を取出す場合、まず、ユーザは、カード102の前端111fに、手指等を掛けて、カード用トレイ161の天板部162から離間する方向の力を前記前端111fに付与する。なお、カード用トレイ161の後端161Rに向けた押圧力も併せて付与することが望ましい。この場合、カード用トレイ161の前板部165には切欠き部165aが形成されているので、ユーザは、カード102の前端111fに容易に手指等を掛けて力を付与することができる。
また、前記天板部162における後縁の左右両端と側縁とを結合する角部の一方、具体的には、後方右角部には、下向きに立設する位置決め爪部167が形成されている。該位置決め爪部167は、カード姿勢規制部として機能する部材であって、図1に示されるように、カード102が正規の姿勢である場合には、カード用トレイ161内へのカード102の収容を許容するが、カード102が非正規の姿勢である場合には、カード用トレイ161内へのカード102の収容を許容しない、すなわち、カード用トレイ161内へカード102を収容することができないようにする部材である。具体的には、前記位置決め爪部167は、正規の姿勢でカード用トレイ161内に収容されたカード102の切欠き部111cに近接して対向するように形成される。したがって、非正規の姿勢、例えば、前後逆様、表裏逆様等の姿勢のカード102をカード用トレイ161内へ入れようとすると、カード102の下面111a又は上面が位置決め爪部167に当接するので、前記カード102をカード用トレイ161内へ入れて収容することができない。
このように、本実施の形態におけるカード用トレイ161は、カード102のコンタクトパッド151が配設されている面である下面111aを天板部162と反対を向くような姿勢で収容して保持するので、天板部162に大きな開口を形成する必要がない。したがって、天板部162の強度、剛性等が低下せず、その結果、カード用トレイ161全体の強度、剛性等を高く保つことができる。
前記側板部164及び前板部165の高さ寸法、すなわち、上下方向(図2(d)における左右方向)の寸法は、カード102の厚さ寸法よりも小さい。これにより、カード用コネクタ1に挿入する際に、側板部164及び前板部165の下端がカード102の下面111aよりも上方に位置することとなるので、カード用コネクタ1が備える後述されるハウジング11の底壁部11bに、側板部164及び前板部165の下端が当接することがない。したがって、前記ハウジング11の底壁部11bに配設された端子51等の部材を損傷してしまうことがない。
一方、後板部163の高さ寸法は、カード102の厚さ寸法よりも大きく、望ましくは、カード用コネクタ1が備える後述される挿入口18の厚さ寸法よりも大きく設定される。また、前記後板部163の左右両側の板端部163aは、誤挿入防止部として機能する部分である。したがって、少なくとも板端部163aの高さ寸法は、前記挿入口18の厚さ寸法よりも大きく設定される。これにより、カード用トレイ161が前後逆様の非正規の姿勢で前記挿入口18からカード用コネクタ1に挿入されてしまうことを、確実に防止することができる。
また、前記カード用トレイ161は、誤挿入防止部として機能する突出片173を備える。該突出片173は、天板部162の一方の側縁(例えば、図3における右側縁)における前端161Fに近接する部位から外方に向けて突出する部材であり、天板部162と面一となるように形成されている。なお、カード用コネクタ1の挿入口18の一端には、カード用トレイ161が正規の姿勢である場合に前記突出片173の進入を許可する、後述される進入許可スリット18aが形成されている。これにより、カード用トレイ161が表裏逆様の非正規の姿勢で前記挿入口18からカード用コネクタ1に挿入されてしまうことを、確実に防止することができる。
前記カード用トレイ161は、天板部162の一方の側縁(例えば、図3における左側縁)に、側板部164から独立して形成された係合部172を備える。該係合部172は、カード用コネクタ1に挿入する際に、後述されるトレイ案内機構のスライド部材21と係合するための部材であり、係合凸部172aを含んでいる。具体的には、前記係合部172は、天板部162の側縁に沿って前後方向に延在し、天板部162から下向きに立設する部材であって、前記側板部164とほぼ面一であるが、分離スリット172cによって、側板部164から切離されている。また、天板部162と係合部172との境界部分には、スリット状の分離開口172bが形成されている。これにより、係合部172は、弾性的に変形可能となり、前記スライド部材21との係合及び係合解除をスムーズに行うことができる。
次に、本実施の形態において、カード型ユニット101が挿入されるカード用コネクタ1について説明する。
図5は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタの斜視図、図6は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタの四面図、図7は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタのシェルを取除いた状態を示す平面図、図8は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタの要部拡大図であって図7におけるA部拡大図である。なお、図6において、(a)は後面図、(b)は上面図、(c)は前面図、(d)は側面図である。
本実施の形態において、コネクタとしてのカード用コネクタ1は、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に成形されたハウジング11と、金属から成る板材に打抜き、折曲げ等の加工を施すことによって一体的に成形され、ハウジング11の上側に取付けられたカバー部材としてのシェル61とを有する。該シェル61は、ハウジング11及び該ハウジング11に挿入されたカード用トレイ161の少なくとも一部の上方を覆うようになっている。そして、前記カード用コネクタ1は、概略、扁(へん)平な直方体形状を備え、前記電子機器に取付けられ、後方(図6(b)における上方)の挿入口18から、ハウジング11にカード用トレイ161が挿入される。具体的には、ハウジング11とシェル61との間に形成される空間内にカード用トレイ161が挿入される。
なお、本実施の形態においては、カード用コネクタ1に挿入するカード用トレイ161の進行方向前方(図6(b)における下方)の端部を前端1Fと称し、進行方向後方(図6(b)における上方)の端部を後端1Rと称する。
図に示されるように、ハウジング11は、略矩形の平板状部材である底壁部11b、及び、ハウジング11におけるカード用トレイ161の挿入方向前方の端部、すなわち、前端部11fに沿って延在し、底壁部11bから立設する奥壁部11aを有する。なお、ハウジング11におけるカード用トレイ161の挿入方向後方の端部は、後端部11rと称する。
ここで、底壁部11bは、接続端子としての端子51を保持する端子保持凹部11cを備える。該端子保持凹部11cは、底壁部11bを板厚方向に貫通する開口であり、ハウジング11の幅方向に延在する列を成すように、並んで配設されている。図に示される例では、3つずつ、2列に並ぶように配設されている。すなわち、端子保持凹部11c、及び、各端子保持凹部11c内に1つずつ保持される端子51は、ハウジング11の幅方向に延在する2本の列を成すように配列されている。
端子51は、その基部51aの少なくとも一部が底壁部11bに埋込まれ、また、その他の部分が端子保持凹部11c内に露出している。具体的には、端子51は、いわゆるオーバーモールド成形によって、すなわち、ハウジング11は、端子51をあらかじめ内部にセットした金型のキャビティ内に絶縁性材料を充填(てん)することによって成形され、基部51aの少なくとも一部が、底壁部11bを構成する絶縁性材料によって覆われることにより、底壁部11bに埋込まれて保持されている。
そして、端子51は、基部51aに基端が連結されたカンチレバー状の接触腕部51bと、該接触腕部51bの自由端、すなわち、先端に接続された接触部51cとを備える。前記接触腕部51bは、その基端が後端部11r側に位置し、その先端が前端部11fに向けて斜め上方に延在し、少なくとも接触部51cの上面は、カード挿入空間内にカード用トレイ161に収容されたカード102が挿入されていない状態では、底壁部11bの上面より上方に位置している。なお、接触部51cは、上方に向けて突出するように湾曲された側面形状を備え、その先端は斜め下方を向いている。図7に示されるように、接触腕部51b及び接触部51cは、上方から観て、端子保持凹部11c内に位置する。
前記端子51は、接触部51cが、カード用コネクタ1内に保持されたカード用トレイ161内のカード102のコンタクトパッド151の各々に接触するように、配設されている。したがって、端子51の数及び配置の形態は、カード102のコンタクトパッド151の数及び配置の形態に適合するように、適宜変更される。
また、端子51の基部51aには、図示されない細長い帯状の連結部の一端が連結されている。前記連結部は、ハウジング11の前後方向に延在し、底壁部11bに埋込まれている。そして、前記連結部の他端からはソルダーテール部51dが前方に向けて延出し、前端部11fから前方に突出するように露出している。そして、ソルダーテール部51dは、前記電子機器における配線基板等に形成された信号線、コンタクトパッド、端子等、すなわち、相手側端子部材に、はんだ付等によって電気的に接続される。
そして、ハウジング11は、側縁に沿って前後方向に延在する一対の側壁部11dを有し、一方の側壁部11dの内側には、トレイ案内機構収容部11gが形成されている。該トレイ案内機構収容部11gには、カード用コネクタ1内に挿入されたカード用トレイ161を案内するためのトレイ案内機構のスライド部材21が前後方向にスライド可能に取付けられている。
具体的には、図8に示されるように、トレイ案内機構収容部11gにおける底壁部11bの上面に前後方向に延在する細長い凸条としてのガイドレール15が形成されている。また、前記スライド部材21の本体部21cから前端部11fに向けて延出する延長部21dの下面には、前後方向に延在する細長い凹溝としてのガイド溝25が形成され、該ガイド溝25が前記ガイドレール15にスライド可能に係合している。なお、25aは前記ガイド溝25の入口開口である。これにより、前記スライド部材21は、ガイドレール15に沿って前後方向にスライドすることができる。
該ガイドレール15は、前端部11f寄りの幅広部15aと、該幅広部15aの後端から後端部11rに向けて延出するとともに、前記幅広部15aよりも幅寸法の小さな幅狭部としての先鋭部15bとを備える。該先鋭部15bは、具体的には、後端部11rに近付くにつれて幅が狭くなる形状を備える。より詳細には、前記先鋭部15bにおけるハウジング11の幅方向中央側の側面は、上から観て、後端部11rに近付くにつれてハウジング11の幅方向外側に近付くように傾斜した傾斜面15cであるが、反対側の側面は、すなわち、ハウジング11の幅方向外側の側面は、幅広部15aの側面と面一であって前後方向に延在する。そして、前記幅広部15aの幅寸法は、前記ガイド溝25の幅寸法とほぼ同等であるが、先鋭部15bの幅寸法は、後端部11rに近付くにつれて小さくなる。
したがって、図7及び8に示されるように、スライド部材21が後端部11r寄りに位置するときは、スライド部材21は、ハウジング11の幅方向中央から離れる方向(図7及び8における右方向)に、つまり、ハウジング11の幅方向外側に向けて変位可能となっている。そのため、側壁部11dにおける後端部11r寄りの部分は、他の部分より幅寸法の小さな肉薄部11kとなっていて、スライド部材21がハウジング11の幅方向外側に向けて変位しても、スライド部材21の本体部21cと干渉しないようになっている。
また、スライド部材21の本体部21cの上面にはハート状カムとしてのカム溝22が形成され、該カム溝22には固定カム部材としての細長いピン部材81の自由端が係合している。また、該ピン部材81の他端は、固定端として、ハウジング11の後端部11rの上面に掛止され、ピボット結合されている。そして、前記ピン部材81とカム溝22とが協働することによって、カード用トレイ161とともに移動するスライド部材21にプッシュ/プッシュの動作を行わせるようになっている。
さらに、前記トレイ案内機構収容部11g内には、圧縮された状態で付勢力を発揮するコイルスプリングとしての付勢部材82が収容され、スライド部材21を後端部11rに向けて、すなわち、カード用トレイ161の挿入方向と反対の排出方向に付勢する。
前記スライド部材21は、カード用トレイ161と係合して保持するためのトレイ保持部としての係合凹部21a及び係合鉤(かぎ)部21bとを備える。前記係合凹部21aは、スライド部材21の側面、具体的には、本体部21cと延長部21dとの接続部の側面に凹入するように形成され、カード用トレイ161の側面から突出する係合凸部172aと係合し、また、前記延長部21dの先端に形成された係合鉤部21bはカード用トレイ161の前板部165と側板部164とを結合する角部と係合する。そして、スライド部材21は、係合凹部21a及び係合鉤部21bによってカード用トレイ161を保持し、該カード用トレイ161とともに前後方向に移動する。
このようなトレイ案内機構を備えるカード用コネクタ1は、該カード用コネクタ1内にカード用トレイ161を挿入する際にも、カード用コネクタ1内からカード用トレイ161を取出す際にも、該カード用トレイ161を押込む動作を必要とする、いわゆる、プッシュインプッシュアウトタイプ、又は、プッシュ/プッシュタイプと通称されるものである。このような動作は、押ボタンスイッチの分野におけるオルタネイト動作(位置保持型、プッシュオン・プッシュオフ型)と同様のものである。前記ピン部材81とカム溝22とが協働することによって、カード用トレイ161とともに移動するスライド部材21にプッシュ/プッシュの動作を行わせるようになっている。これにより、前記トレイ案内機構は、カード用トレイ161を挿入方向に押込むプッシュ動作によってカード用トレイ161が挿入方向に移動して終端点まで到達すると、前記付勢部材82の付勢力によって、前記カード用トレイ161を終端点から挿入方向と反対の方向に移動させて排出することができる。また、ロック位置においては、スライド部材21が停止し、これにより、カード用トレイ161がカード用コネクタ1の内部に保持される。
前記ピン部材81は、シェル61のピン押え部材65によって上から下方向に付勢されることにより保持されている。該ピン押え部材65は、シェル61の一部をハウジング11の底壁部11bの方向に押圧可能に折曲げ加工することによって形成されたばね性を備える板状の部材であり、ピン部材81は、前記ピン押え部材65とスライド部材21又はハウジング11との間に位置し、スライド部材21又はハウジング11から離脱しないように保持されている。
また、前記シェル61は、概略矩形の天板部62と、該天板部62の側縁から立設する側板部64とを有する。該側板部64には、複数の掛止開口63が形成され、シェル61をハウジング11の上側に取付けると、該ハウジング11の側壁部11dの外側面に形成された掛止突起13に前記掛止開口63が掛止され、これにより、シェル61がハウジング11に固定される。なお、天板部62におけるカード用トレイ161の挿入方向前方及び後方の端部は、シェル前端部62f及びシェル後端部62rと称する。
該ハウジング11の前端縁11fの近傍には、カード102のコンタクトパッド151と端子51とが接触していることを検出して、カード102がカード用コネクタ1に装填されていることを検出するカード検出スイッチが配設されている。該カード検出スイッチは、前端部11f及びその近傍に取付けられたカンチレバー状の第1接点部材57と、大部分が底壁部11bに埋込まれた第2接点部材58とによって形成される。
前記第1接点部材57は、前端部11fに取付けられた取付部57a、基端が前記取付部57aに接続され、横方向に向けて延出するカンチレバー状の本体部57b、及び、該本体部57bの自由端に接続された当接部57cを有する。そして、前記取付部57aは奥壁部11aの側面とほぼ平行となり、本体部57bは、カード102がカード用コネクタ1に挿入されていない状態においては、奥壁部11aの側面に対して傾斜し、当接部57cは、後端部11rに向けて、すなわち、後方に向けて突出するように配設されている。そのため、カード102が挿入されると、該カード102の前端111fが当接部57cに当接する。
一方、前記第2接点部材58は、底壁部11bに埋込まれた平板状の取付部58aと、基端が前記取付部58aに接続され、先端が底壁部11bから露出する接触部58bとを有する。
そして、カード102が挿入されていない状態においては、図7に示されるように、第1接点部材57の本体部57bが第2接点部材58の接触部58bと接触しているので、第1接点部材57と第2接点部材58とは接触しており、カード検出スイッチは導通状態、すなわち、オン(ON)になっている。
しかし、カード102が挿入され、そのコンタクトパッド151と端子51とが接触する位置に到達すると、カード102の前端111fによって第1接点部材57の当接部57cが前端部11fの方向に向けて押されて変位し、第1接点部材57の本体部57bが第2接点部材58の接触部58bから離間する。これにより、第1接点部材57と第2接点部材58とが非接触となり、カード検出スイッチは非導通状態、すなわち、オフ(OFF)になるので、カード102がコンタクトパッド151と端子51とが接触する位置に到達したことが検出される。
なお、本実施の形態において、カード102はカード用トレイ161に収容された状態でカード用コネクタ1の内部に挿入されるところ、カード用トレイ161の前板部165に切欠き部165aが形成され、カード102の前端111fの少なくとも一部がカード用トレイ161の前端161Fから露出するようになっている。そして、前記切欠き部165aは、少なくとも第1接点部材57の当接部57cに対応する部分を含むように形成されている。これにより、カード102がカード用トレイ161に収容された状態で挿入されても、前記当接部57cには、カード102の前端111fが直接当接し、カード用トレイ161の前板部165は当接することがない。したがって、カード検出スイッチは、カード102が所定の位置、すなわち、コンタクトパッド151と端子51とが接触する位置に到達したことを正確に検出することができる。
また、カード102を収容していないカード用トレイ161が挿入された場合には、カード用トレイ161の前板部165における第1接点部材57の当接部57cに対応する部分には切欠き部165aが形成され、前板部165が存在しないのであるから、前記当接部57cは、カード用トレイ161のどの部分にも当接しない。したがって、カード検出スイッチは、カード102が所定の位置に到達した、と検出することがない。つまり、カード102を収容していないカード用トレイ161が挿入された場合には、カード102が挿入された、と誤検出されてしまうことがない。
このように、カード102を収容していないカード用トレイ161が挿入された場合には、カード検出スイッチによってカード102の存在が検出されてしまうことがないので、例えば、カード用トレイ161及びカード用コネクタ1を使用しないときには、空のカード用トレイ161をカード用コネクタ1に挿入した状態で保管しておくことができる。したがって、使用していない空のカード用トレイ161を紛失することがない。
図5及び6(a)に示されるように、挿入口18の一端には、誤挿入防止部としての進入許可スリット18aが形成されている。該進入許可スリット18aは、具体的には、ハウジング11におけるトレイ案内機構収容部11gが形成された側と反対側の後端部11rの上面とシェル後端部62rとの間に形成されたカード用コネクタ1の幅方向に延在するスリット状の隙間であって、カード用トレイ161が正規の姿勢で挿入口18から挿入される場合には、カード用トレイ161の突出片173が進入することができる位置に形成されたスリット状開口である。つまり、カード用トレイ161が正規の姿勢である場合に、前記突出片173の進入を許可するようになっている。
したがって、カード用トレイ161が表裏逆様の非正規の姿勢である場合には、前記突出片173が進入許可スリット18aが形成されている側と反対側の後端部11rに当接するので、カード用トレイ161を挿入口18から挿入することができない。
また、カード用トレイ161が前後逆様の非正規の姿勢である場合には、後板部163の左右両側の板端部163aの高さ寸法が挿入口18の厚さ寸法よりも大きく設定されているので、カード用トレイ161を挿入口18から挿入することができない。この場合、シェル後端部62r及びハウジング11の後端部11r全体がカード用コネクタ1における誤挿入防止部として機能する。
次に、前記構成のカード用コネクタ1の動作について説明する。
図9は本発明の実施の形態におけるカード型ユニットをカード用コネクタに挿入する動作を示す斜視図、図10は本発明の実施の形態におけるカード型ユニットをカード用コネクタに挿入する動作を示すシェルの一部を取除いた状態の第1の斜視図、図11は本発明の実施の形態におけるカード型ユニットをカード用コネクタに挿入する動作を示すシェルの一部を取除いた状態の第2の斜視図、図12は本発明の実施の形態におけるカード型ユニットをカード用コネクタに挿入する動作を示す第1の要部拡大図であって図10におけるB部拡大図、図13は本発明の実施の形態におけるカード型ユニットをカード用コネクタに挿入する動作を示す第1の要部拡大図であって図11におけるC部拡大図、図14は本発明の実施の形態におけるカード用トレイをカード用コネクタに挿入する動作を示すシェルの一部を取除いた状態の平面図である。なお、図9において、(a)は挿入前を示す図、(b)は挿入後を示す図である。
まず、ユーザは、手指等によって、図9(a)に示されるように、カード型ユニット101としてのカード102が収容されたカード用トレイ161をカード用コネクタ1の後方の挿入口18からハウジング11とシェル61との間に形成されるカード挿入空間内に挿入する。
なお、カード用トレイ161は、天板部162が上を向き、すなわち、シェル61の天板部62と向合い、前端161Fがカード用コネクタ1の前端1Fの方を向くような姿勢、すなわち、正規姿勢で挿入される。また、カード用トレイ161の突出片173は、カード用コネクタ1の挿入口18の一端に形成された進入許可スリット18aに向合っている。この場合、カード用トレイ161内に収容されたカード102は、コンタクトパッド151が配設されている下面111aが開放された状態で下を向き、端子51が配設されているハウジング11の底壁部11bと向合い、前端111fがカード用コネクタ1の前端1Fの方を向くような姿勢となっている。
そして、カード用トレイ161が挿入口18からハウジング11とシェル61との間に形成されるカード挿入空間内に挿入されると、突出片173が進入許可スリット18a内に進入し、係合部172の形成されていない方の側板部164が、ハウジング11におけるトレイ案内機構収容部11gが形成されていない方の側壁部11dに沿って、カード挿入空間内を進行する。
続いて、ユーザがカード用トレイ161をプッシュして更に押込むと、図10、12及び14に示されるように、スライド部材21の係合凹部21a及び係合鉤部21bが、カード用トレイ161の係合部172に形成された係合凸部172a及びカード用トレイ161の前板部165と側板部164とを結合する角部と係合する。
この状態では、スライド部材21は、付勢部材82の付勢力により、ハウジング11の後端部11rに当接している。すなわち、スライド部材21は、最も後退した位置である排出位置にある。
また、スライド部材21におけるガイド溝25の入口開口25aは、ガイドレール15の先鋭部15bの位置にある。つまり、図12に明示されるように、ガイド溝25よりも幅狭の先鋭部15bにガイド溝25が係合しているので、スライド部材21は、ハウジング11の幅方向外側に向けて、すなわち、側壁部11dに接近する方向(図14における右方向)に変位可能となっている。なお、図14に示されるように、スライド部材21が排出位置にあるときは、本体部21cの位置に対応する側壁部11dが肉薄部11kとなっているので、スライド部材21が側壁部11dに接近する方向に変位しても、側壁部11dはスライド部材21と干渉しない。
したがって、該スライド部材21の係合凹部21aがカード用トレイ161の係合部172に形成された係合凸部172aと係合する際には、スライド部材21がカード用トレイ161の係合部172から離れる方向に変位可能であるので、係合凹部21aと係合凸部172aとがスムーズに係合することができる。また、係合部172は、弾性的に変形可能な部材であるから、スライド部材21から離れる方向に変位可能であり、これによっても、係合凹部21aと係合凸部172aとがスムーズに係合することができる。
このように、スライド部材21の係合凹部21a及び係合鉤部21bが、カード用トレイ161の係合部172に形成された係合凸部172a及びカード用トレイ161の前板部165と側板部164とを結合する角部と係合することによって、カード用トレイ161を保持するので、カード102を収容するカード用トレイ161は、スライド部材21とともに、カード用コネクタ1の前端1Fに向けて移動する。
この際、ユーザの手指等が発揮する押圧力は、カード用トレイ161からスライド部材21に伝達される。そして、該スライド部材21がコイルスプリングから成る付勢部材82を圧縮するので、スライド部材21及びカード用トレイ161は、付勢部材82の反発力を受けるが、該反発力がユーザの手指等が発揮する押圧力よりも小さいので、前記反発力に抗して移動する。この場合、スライド部材21は、ガイド溝25がガイドレール15に対してスライド可能に係合しているので、該ガイドレール15に沿ってスライドし、カード用トレイ161は、スライド部材21とともに進行する。そして、該スライド部材21及びカード用トレイ161は、最も前進した位置である終端点としてのオーバーストローク位置に到達してオーバーストローク状態となる。
また、カード用トレイ161の側板部164及び前板部165の高さ寸法は、カード102の厚さ寸法よりも小さい。これにより、カード用トレイ161がカード挿入空間内を進行する際に、側板部164及び前板部165の下端がカード102の下面111aよりも上方、すなわち、シェル61の天板部62寄りに位置することとなるので、ハウジング11の底壁部11bに、側板部164及び前板部165の下端が当接することがない。したがって、前記底壁部11bに配設された端子51等の部材に損傷を与えることがない。
続いて、ユーザがカード用トレイ161をプッシュする動作を止め、該カード用トレイ161に対する押圧力を解除すると、付勢部材82の反発力によって、スライド部材21及びカード用トレイ161はカード用コネクタ1の前端1Fから離脱する向きに、すなわち、後方に向けて移動させられる。そして、スライド部材21及びカード用トレイ161は、図9(b)、11及び13に示されるように、カード用コネクタ1内でカード用トレイ161をロックした状態で保持するロック位置で停止する。これは、スライド部材21の上面に形成されたカム溝22と係合しているピン部材81の自由端が、カム溝22の一部に掛止されてスライド部材23の動きを停止させることによって、該スライド部材21を前記ロック位置で停止させているからである。
また、スライド部材21におけるガイド溝25の入口開口25aは、ガイドレール15の幅広部15aの位置にある。つまり、図13に明示されるように、ガイド溝25の幅寸法とほぼ同等の幅寸法の幅広部15aにガイド溝25が係合しているので、スライド部材21は、ハウジング11の幅方向外側に向けて、すなわち、側壁部11dに接近する方向に変位不能となっている。つまり、スライド部材21が幅方向にがたつくことがない。また、図8及び14に示されるように本実施の形態における幅広部15aの前後方向の長さは、ガイドレール15全体の前後方向の長さの半分以上に設定されている。そのため、スライド部材21がロック位置にあるとき、ガイド溝25は、前後方向の広い範囲に亘(わた)って幅広部15aに係合することとなるので、スライド部材21が幅方向にがたつくことがより効果的に防止される。このように、ロック位置では、スライド部材21の位置及び姿勢が安定してがたつくことがないので、係合凹部21aと係合凸部172aとの係合が解除されることがない。したがって、カード用トレイ161がスライド部材21から離間して、脱落してしまうことがない。
そして、カード用トレイ161内に収容されたカード102は、カード用トレイ161とともに、ロック位置に保持されることによって、カード用コネクタ1が実装された電子機器の演算手段等との間でデータの送受信を行うことができる状態となる。なお、カード102がロック位置に保持されている場合、カード用コネクタ1の端子51は、その接触部51cが、カード102のコンタクトパッド151の各々に接触して導通している。また、カード検出スイッチの第1接点部材57の当接部57cは、カード102の前端111fによって前方に押出されて変位し、本体部57bが第2接点部材58の接触部58bから離間している。これにより、第1接点部材57と第2接点部材58とが非接触となり、カード検出スイッチはオフとなり、カード102がカード用コネクタ1内における所定の位置、すなわち、コンタクトパッド151と端子51とが接触する位置にあることが検出される。
なお、カード用トレイ161に収容されたカード102は、弾性腕部166のばね力によって付勢されているので、その前端111fが前板部165に押圧されている。したがって、カード用トレイ161の前板部165の位置を基準位置として、カード102の前端111fの位置決めが正確に行われる。そして、このように正確に位置決めされたカード102の前端111fに第1接点部材57の当接部57cが直接当接することによってカード検出スイッチの検出動作が行われるのであるから、カード検出スイッチの検出動作は正確なものとなり、コンタクトパッド151と端子51とが接触する位置にカード102があることが、正確に検出される。
ところで、電子機器にカード用コネクタ1以外のカード用コネクタが実装されているような場合には、ユーザがカード用コネクタ1を使用しないこともあり得る。そして、このようなときに、ユーザは、カード102を収容していないカード用トレイ161、すなわち、空のカード用トレイ161をカード用コネクタ1に挿入した状態で保管することが考えられる。このように、カード102を収容していないカード用トレイ161が挿入された場合には、該カード用トレイ161の前板部165における第1接点部材57の当接部57cに対応する部分には切欠き部165aが形成され、前板部165が存在しないのであるから、前記当接部57cは、カード用トレイ161のどの部分にも当接しない。したがって、カード検出スイッチは、カード102が所定の位置に到達した、と検出することがない。つまり、カード102を収容していないカード用トレイ161が挿入された場合には、カード102が挿入された、と誤検出されてしまうことがない。
また、前記切欠き部165aは、望ましくは、端子51が配設されている範囲に対応する部分には、前板部165が残存しないように形成されているので、カード102を収容していないカード用トレイ161がカード用コネクタ1に挿入されても、前板部165が端子51に当接して該端子51に損傷を与えることがない。
次に、カード型ユニット101をカード用コネクタ1から排出させる動作について説明する。
まず、ユーザが手指等によってカード用トレイ161をプッシュして押込むと、スライド部材21及びカード用トレイ161は、ロック位置から前端1Fに向けて移動させられる。そして、ユーザがカード用トレイ161をプッシュして更に押込むと、スライド部材21及びカード用トレイ161は、最も前進した位置であるオーバーストローク位置に到達してオーバーストローク状態となる。
続いて、ユーザがカード用トレイ161をプッシュする動作を止め、前記カード102に対する押込力を解除すると、付勢部材82の付勢力によって、オーバーストローク位置に位置しているスライド部材21及びカード用トレイ161は、前端1Fから離脱する向きに移動させられ、挿入方向と反対の方向に移動させられる。そして、スライド部材21及びカード用トレイ161は、ロック位置を通過して後方に向けて更に移動し、図10、12及び14に示されるような排出位置に到達して停止する。
図10、12及び14に示されるように、排出位置では、依然として、スライド部材21がカード用トレイ161と係合した状態にある。したがって、スライド部材21が、排出位置に到達し、ハウジング11の後端部11rに当接して停止するときに、衝撃が発生しても、カード用トレイ161がスライド部材21から離脱して飛出してしまうことがない。これにより、カード用トレイ161及びそこに収容されたカード102がカード用コネクタ1から飛出して、不明になることが確実に防止される。
一方、前述のように、排出位置では、スライド部材21がカード用トレイ161の係合部172から離れる方向に変位可能であるので、ユーザが手指等によってカード用トレイ161を引出す場合には、係合凹部21aと係合凸部172aとの係合がスムーズに解消される。また、係合部172は、弾性的に変形可能な部材であるから、スライド部材21から離れる方向に変位可能であり、これによっても、係合凹部21aと係合凸部172aとの係合がスムーズに解消される。したがって、ユーザは、排出位置にあるカード用トレイ161をカード用コネクタ1から容易に取出すことができる。
なお、ユーザがプッシュ/プッシュの動作を理解していないような場合には、ロック位置にあるカード用トレイ161をプッシュして押込むことなく、手指等によって強引に引出そうとすることが起こり得る。つまり、いわゆる無理抜きの動作が行われてしまうことがある。このような無理抜きの動作が行われた場合、本実施の形態においては、係合部172が弾性的に変形可能な部材であってスライド部材21から離れる方向に変位可能であるので、これによって、係合凹部21aと係合凸部172aとの係合が解除され、カード用トレイ161がスライド部材21から離脱して引出される。したがって、ユーザの手指等から強い力が付与されて無理抜きの動作が行われた場合であっても、カード用トレイ161、スライド部材21等が損傷を受けることがない。
このように、本実施の形態において、コネクタとしてのカード用コネクタ1は、一面にコンタクトパッド151を備えるカード型ユニット101を収容するハウジング11と、ハウジング11に取付けられ、カード型ユニット101のコンタクトパッド151と接触する端子51と、ハウジング11の後端部11rから前端部11fに向けて挿入されたカード型ユニット101を保持してスライドするスライド部材21、及び、スライド部材21を後端部11rに向けて付勢する付勢部材82を備え、ロック位置でカード型ユニット101を保持してカード型ユニット101のコンタクトパッド151が端子51と接触する状態を維持し、ロック位置で保持されているカード型ユニット101を前端部11fに向けて押込むプッシュ動作によってカード型ユニット101が前端部11fに向けて移動して終端点まで到達すると、付勢部材82の付勢力によって、スライド部材21を終端点から後端部11rに向けて移動させてカード型ユニット101を排出位置に到達させるカード案内機構と、ハウジング11に取付けられ、スライド部材21及びハウジング11に挿入されたカード型ユニット101の少なくとも一部を覆うシェル61とを有する。そして、ハウジング11は、その底壁部11bの上面から突出し、後端部11rに向けて延在するガイドレール15であって、前端部11f寄りの幅広部15aと、幅広部15aよりも幅の狭い後端部11r寄りの先鋭部15bとを含むガイドレール15を備え、スライド部材21は、ガイドレール15とスライド可能に係合する凹溝状のガイド溝25を備え、カード型ユニット101がロック位置にあるとき、ガイド溝25は幅広部15aと係合し、カード型ユニット101が排出位置にあるとき、ガイド溝25は、幅広部15aと係合することなく、先鋭部15bと係合する。
これにより、簡素な構成でありながら、ロック位置では、スライド部材21の位置及び姿勢が安定してがたつくことがなく、カード型ユニット101を確実に保持することができ、カード型ユニット101がスライド部材21から離間して脱落することがない。また、排出位置では、スライド部材21がカード型ユニット101を保持しているので、カード型ユニット101の飛出しが防止されるとともに、ユーザが手指等によってカード型ユニット101を引出す場合には、容易に引出すことができる。さらに、カード用コネクタ1の幅寸法を小さくすることができる。
また、カード型ユニット101は側面から突出する係合凸部172aを備え、スライド部材21は、側面に凹入する係合凹部21aを備え、係合凹部21aが係合凸部172aと係合することによって、カード型ユニット101を保持する。これにより、カード型ユニット101を挿入する際には、容易に、かつ、確実にスライド部材21にカード型ユニット101を保持させることができ、ロック位置ではスライド部材21によるカード型ユニット101の保持が確実となり、カード型ユニット101を排出する際には、カード型ユニット101を容易に取出すことができる。
さらに、スライド部材21は、カード型ユニット101がロック位置にあるとき、ハウジング11の幅方向外側に向けて変位不能であり、カード型ユニット101が排出位置にあるとき、ハウジング11の幅方向外側に向けて変位可能である。したがって、ロック位置ではスライド部材21によるカード型ユニット101の保持が確実となるとともに、排出位置では、スライド部材21にカード型ユニット101を保持させることも、カード型ユニット101を取出すことも、容易に行うことができる。
さらに、ガイドレール15の先鋭部15bは、ハウジング11の幅方向中央側の側面が、後端部11rに近付くにつれてハウジング11の幅方向外側に近付くように傾斜した傾斜面15cである。したがって、スライド部材21がガイドレール15に沿ってスライドする際に、ガイド溝25は、スムーズに幅広部15aと先鋭部15bとの間を移行することができる。
さらに、カード型ユニット101は、一面にコンタクトパッド151を備えるカード102と、コンタクトパッド151が露出するようにカード102を収容するカード用トレイ161とを含む。したがって、カード102をカード用トレイ161に収容して、カード用コネクタ1に挿入することができる。
さらに、カード用トレイ161は、カード102のコンタクトパッド151と反対側の面と対向する天板部162と、天板部162の前縁から立設し、カード102の前端111fと対向する前板部165と、天板部162の後縁から立設し、カード102の後端111rと対向する後板部163と、カード102の前端111fの少なくとも一部が露出するように前板部165に形成された切欠き部165aと、後板部163に近接して配設され、カード102を前方に付勢し、前板部165における切欠き部165a以外の部分にカード102の前端111fを押圧させる弾性腕部166とを備え、カード102を前後から把持し、カード102のコンタクトパッド151側の面全体を露出させる。これにより、カード用トレイ161は、カード用コネクタ1内部の部材に損傷を与えることがなく、かつ、カード102を確実に保持することができる。また、カード用トレイ161を小型低背化することができ、その結果、カード用コネクタ1も小型低背化することができる。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。