以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態におけるカード用トレイのカードを収容した状態を示す斜視図、図2は本発明の実施の形態におけるカード用トレイの五面図である。なお、図1において、(a)は後方斜め上から観た斜視図、(b)は前方斜め下から観た斜視図であり、図2において、(a)は後面図、(b)は上面図、(c)は前面図、(d)は側面図、(e)は下面図である。
図において、161は本実施の形態におけるカード保持部材としてのカード用トレイであり、図1に示されるように、カード101を収容して保持した状態で、図示されない電子機器に取付けられた後述されるカード用コネクタ1に挿入される。つまり、カード101は、カード用トレイ161に収容され、カード用コネクタ1を介して、電子機器に装着される。なお、該電子機器は、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、通信モデム、PDA、デジタルカメラ、ビデオカメラ、音楽プレーヤ、ゲーム機、車両用ナビゲーション装置等であるが、いかなる種類の機器であってもよい。
前記カード101は、例えば、SIMカード、マイクロSIM(microSIM)カード、MMC(R)、SD(R)カード、miniSD(R)カード、xDピクチャーカード(R)、メモリスティック(R)、メモリスティックDuo(R)、スマートメディア(R)、Trans−Flash(R)メモリカード等のメモリカードであり、いかなる種類のカードであってもよいが、本実施の形態においては、4FF(4th Form Factor)カード、いわゆる、ナノSIM(nanoSIM)カードであるものとして説明する。
本実施の形態において、前記カード101は、図1に示されるように、全体的に略矩(く)形の板状の形状を有し、その一面(図に示される例においては下面111a)に、端子部材である電極パッドとしてのコンタクトパッド151が、複数、前端111f及び後端111rに沿って並ぶように配設されている。図に示される例では、3つずつ、2列に並ぶように配設されている。すなわち、コンタクトパッド151は、カード101の幅方向に延在する2本の列を成すように配列されている。なお、他面、すなわち、下面111aの反対側の面である上面111bには、コンタクトパッド151が配設されていない。さらに、後端111rの左右両端と側端111sとを結合する角部の一方、具体的には、下面111aにおける後方右角部には、斜めに切欠かれた傾斜部としての切欠部111cが形成されている。
なお、本実施の形態において、カード用コネクタ1、カード用トレイ161及びカード101の各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、カード用コネクタ1、カード用トレイ161、カード101又はそれらの部品が図に示される姿勢である場合に適切であるが、カード用コネクタ1、カード用トレイ161、カード101又はそれらの部品の姿勢が変化した場合には、姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
ここで、前記カード用トレイ161は、導電性の金属から成る板材等の素材に打抜き、折曲げ等の加工を施して一体的に形成された部材であって、カード101を収容するカード収容空間としての空間部166の四辺を囲繞する略矩形の枠部材167を備える。そして、該枠部材167は、幅方向に延在する互いに平行な後枠部162及び前枠部165と、前後方向に延在し、後枠部162の両端と前枠部165の両端とを連結する左右一対の側枠部164とを含んでいる。なお、前記後枠部162の後面には、後板部163が一体的に形成されている。
前記空間部166は、カード用トレイ161をその上面161bから下面161aまで貫通する略矩形の空間であり、その四辺を後枠部162、前枠部165及び側枠部164によって画定される。そして、前記空間部166内に収容されたカード101の側面112(下面111a及び上面111bと直交する方向に延在し、下面111a及び上面111bを連結する面)は、後枠部162、前枠部165及び側枠部164の内側面と対向した状態で、前記枠部材167によって囲繞される。なお、一対の側枠部164の内側面におけるカード用トレイ161の下面161a側端からは、互いに対向する庇(ひさし)部164bが延出する。左右一対の庇部164bは、前後方向に延在し、空間部166内に収容されたカード101の下面111aの左右両側端近傍を支持するカード支持部として機能する。前記庇部164bの側枠部164の内側面からの突出量は、わずかであって、カード101の下面111aに配設されたコンタクトパッド151と干渉しないようになっている。つまり、前記空間部166は、カード用トレイ161の下面161aにおいて、少なくともコンタクトパッド151と干渉しない程度の大きさに設定されている。
また、前記後板部163は、カード用トレイ161の厚さ方向(図2(b)における紙面に垂直な方向)の寸法が、後枠部162、前枠部165及び側枠部164よりも大きく形成されている。さらに、前記後板部163の両端の少なくとも一方には、カード用トレイ161の幅方向に突出する凸部163aが形成されている。これにより、前記後板部163は、カード用トレイ161が前後逆さまの姿勢でカード用コネクタ1に挿入されること、すなわち、誤挿入を防止する機能を発揮するとともに、カード用コネクタ1のユーザがカード用トレイ161を手指等によって操作する際に、把持や操作を容易にする機能を発揮する。
前記枠部材167は、カード用トレイ161の厚さ方向の寸法が、前枠部165、後枠部162、側枠部164の順に大きくなるように形成されているが、カード用トレイ161の上面161bにおいては面一となるように形成されている。なお、前記カード用トレイ161の上面161bは、空間部166内に収容されたカード101の上面111bとほぼ面一となることが望ましい。また、後枠部162の下面161a側の面は、空間部166内に収容されたカード101の下面111aとほぼ面一となることが望ましい。
さらに、前記後枠部162における側枠部164と連結される角部の一方、具体的には、後方右角部には、傾斜部162cが形成されている。該傾斜部162cは、カード姿勢規制部として機能し、図1に示されるように、カード101が正規の姿勢である場合には、カード用トレイ161内へのカード101の収容を許容するが、カード101が非正規の姿勢である場合には、カード用トレイ161内へのカード101の収容を許容しない、すなわち、空間部166内へカード101を収容することができないようにする。具体的には、前記傾斜部162cは、正規の姿勢で空間部166内に収容されたカード101の切欠部111cに近接して対向するように形成される。したがって、非正規の姿勢、例えば、前後逆様、表裏逆様等の姿勢のカード101をカード用トレイ161の空間部166内へ入れて収容することができない。
また、図1(b)及び図2(c)から明らかなように、前面視において、側枠部164の前端面164cは、前枠部165の両端において下面161a側へ突出する突出部を構成する。つまり、カード用トレイ161は、前面視において、略ワ冠状の形状を備える。そして、前記突出部は、カード用トレイ161が上下逆さまの姿勢でカード用コネクタ1に挿入されること、すなわち、誤挿入を防止する機能を発揮する。また、前枠部165の下面161a側の面は、空間部166内に収容されて保持されたカード101の下面111aよりも低い、すなわち、上面161b寄りに位置することが望ましい。これにより、カード用トレイ161がカード用コネクタ1に挿入される際に、前枠部165が後述される端子51に接触することが防止される。さらに、前枠部165には、前面視において、カード101のコンタクトパッド151の各々に対応する位置、より詳細には、後述される端子51の接触部51cの各々に対応する位置に凹入部165aが形成されていることが望ましい。該凹入部165aの下面161a側の面は、空間部166内に収容されて保持されたカード101の下面111aよりも十分に低く形成されているので、カード用トレイ161がカード用コネクタ1に挿入される際に、前枠部165が端子51に接触することが確実に防止される。
さらに、一対の側枠部164の外側面における前端寄り、すなわち、前端面164c寄りの部分には、カード用トレイ161がカード用コネクタ1内で保持されるための保持用凹部168が形成されている。該保持用凹部168は、側枠部164の外側面に対する傾斜角度が急な前方傾斜面168a及び傾斜角度が緩やかな後方傾斜面168bを含んでいる。また、側枠部164の外側面における前方傾斜面168aよりも前端面164c寄りの前側面164aは、カード用トレイ161がカード用コネクタ1に挿入される際に、後述される第1保持部材65に最初に接触する部分である。
このように、本実施の形態におけるカード用トレイ161は、その上面161bから下面161aまで貫通する空間部166内にカード101を収容し、該カード101の側面112を囲繞し、下面111a及び上面111bのいずれをも覆わない構造を備えているので、厚さ方向の寸法を小さくすることができる。したがって、カード用コネクタ1を低背化することができる。また、樹脂よりも強度の高い金属から成るので、前後方向及び幅方向の寸法を小さくしても、十分な強度を維持することができる。したがって、カード用コネクタ1を小型化することができる。
次に、本実施の形態において、前記カード用トレイ161を使用するカード用コネクタ1について説明する。
図3は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタの分解斜視図、図4は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタの四面図である。なお、図4において、(a)は前面図、(b)は上面図、(c)は後面図、(d)は側面図である。
本実施の形態において、カード用コネクタ1は、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に成形されたハウジング11と、導電性の金属から成る板材に打抜き、折曲げ等の加工を施すことによって一体的に成形され、ハウジング11の上側に取付けられたカバー部材としてのシェル61とを有する。該シェル61は、ハウジング11及びカード用コネクタ1に挿入されたカード用トレイ161の少なくとも一部の上方を覆うようになっている。そして、前記カード用コネクタ1は、概略、扁(へん)平な直方体形状を備え、前記電子機器に取付けられ、後方(図4(b)における下方)の挿入口18から、ハウジング11にカード用トレイ161が挿入される。具体的には、ハウジング11とシェル61との間に形成される空間内にカード用トレイ161が挿入される。
なお、本実施の形態においては、カード用コネクタ1に挿入するカード用トレイ161の進行方向前方(図4(b)における上方)の端部を前端部1Fと称し、進行方向後方(図4(b)における下方)の端部を後端部1Rと称する。
図に示されるように、ハウジング11は、略矩形の平板状部材である底壁部11b、及び、ハウジング11におけるカード用トレイ161の挿入方向前方の端部、すなわち、前端部11fに沿って延在し、底壁部11bから立設する奥壁部11aを有する。なお、ハウジング11におけるカード用トレイ161の挿入方向後方の端部は、後端部11rと称する。
ここで、底壁部11bは、接続端子としての端子51を保持する端子保持凹部11cを備える。該端子保持凹部11cは、底壁部11bを板厚方向に貫通する開口であり、ハウジング11の幅方向に延在する列を成すように、並んで配設されている。図に示される例では、3つずつ、2列に並ぶように配設されている。すなわち、端子保持凹部11c、及び、各端子保持凹部11c内に1つずつ保持される端子51は、ハウジング11の幅方向に延在する2本の列を成すように配列されている。
端子51は、その基部51aの少なくとも一部が底壁部11bに埋込まれ、また、その他の部分が端子保持凹部11c内に露出している。具体的には、端子51は、いわゆるオーバーモールド成形によって、すなわち、ハウジング11は、端子51をあらかじめ内部にセットした金型のキャビティ内に絶縁性材料を充填することによって成形され、基部51aの少なくとも一部が、底壁部11bを構成する絶縁性材料によって覆われることにより、底壁部11bに埋込まれて保持されている。
そして、端子51は、基部51aに基端が連結されたカンチレバー状の接触腕部51bと、該接触腕部51bの自由端、すなわち、先端に接続された接触部51cとを備える。前記接触腕部51bは、平面視において、略M字乃至山字状の形状を備え、その基端が基部51aに接続されている。さらに詳細には、前記接触腕部51bは、各々が平面視において略U字乃至J字状の形状を備える左右一対の腕部51b1と、左右の腕部51b1を合流させて結合する合流部51b2とを備え、該合流部51b2の自由端、すなわち、先端に接触部51cが接続されている。そして、少なくとも接触部51cの上面は、カード挿入空間内にカード用トレイ161に収容されたカード101が挿入されていない状態では、底壁部11bの上面より上方に位置している。
なお、前記端子51において、左右一対の腕部51b1における前端部11fに向けて延在する部分と、合流部51b2と、接触部51cとから成る部分は、前端部11fに近づくにつれて上昇するような、すなわち、前方に向けて斜め上方に延在するような側面形状を備える。また、接触腕部51b及び接触部51cは、平面視において、端子保持凹部11c内に位置する。
前記端子51は、接触部51cが、カード用コネクタ1内に保持されたカード用トレイ161内のカード101のコンタクトパッド151の各々に接触するように、配設されている。したがって、端子51の数及び配置の形態は、カード101のコンタクトパッド151の数及び配置の形態に適合するように、適宜変更される。
また、底壁部11bには、該底壁部11bを板厚方向に貫通するソルダーテール用開口11dが形成されている。そして、該ソルダーテール用開口11dには、各端子51の基板接続部としてのソルダーテール部51dが露出している。該ソルダーテール部51dの各々は、底壁部11bに埋込まれた図示されない連結部を介して、各端子51の基部51aに連結されている。そして、ソルダーテール部51dは、前記電子機器における配線基板等に形成された信号線、コンタクトパッド、端子等、すなわち、相手側端子部材に、はんだ付等によって電気的に接続される。
そして、ハウジング11は、側縁に沿って前後方向に延在する一対の側壁部11eを有し、一方の側壁部11eの内側には、トレイ排出ロッド収容部11gが形成されている。該トレイ排出ロッド収容部11gには、カード用コネクタ1内に挿入されたカード用トレイ161を排出するためのトレイ排出機構におけるトレイ排出操作部材としてのプッシュロッド22が前後方向にスライド可能に取付けられている。これにより、前記プッシュロッド22は、一方の側壁部11eに沿って前後方向にスライドすることができる。
前記プッシュロッド22は、概略直線的な棒状又は帯板状の部材であるが、ハウジング11から突出した後端部には、屈曲した操作部22aが一体的に接続されている。該操作部22aは、カード用コネクタ1のユーザが手指等によって、又は、ピン、ロッド等の補助部材を介して操作する際に、操作が容易となるような形状を備える。
また、前記プッシュロッド22の前端部には、イジェクトレバー21の力点部21bと係合する係合部22bが形成されている。前記イジェクトレバー21は、奥壁部11aの近傍に配設されたレバー状の部材であってトレイ排出機構におけるトレイ排出梃子(てこ)部材として機能する。そのため、イジェクトレバー21は、支点部21cにおいて枢動可能に底壁部11bに取付けられている。そして、イジェクトレバー21における前記支点部21cを挟んで力点部21bと反対側の端部は、カード用コネクタ1内に挿入されたカード用トレイ161に当接して、該カード用トレイ161に排出方向の力を付与する作用点部21aとして機能する。
さらに、前記トレイ排出ロッド収容部11g内には、カード用コネクタ1内に挿入されたカード用トレイ161を保持する保持ばね部としての第2保持部材85が収容されている。該第2保持部材85は、金属板等から成るばね性を備える帯板状の部材であり、その基端がハウジング11の備える固定部材11kによって固定され、その先端、すなわち、自由端がハウジング11の幅方向に弾性的に変位可能なカンチレバー状の部材である。そして、前記第2保持部材85は、その自由端が前端部11fを向き、かつ、前記自由端が基端よりもハウジング11の幅方向内側に位置するような姿勢で配設されるとともに、前記自由端の近傍に、ハウジング11の幅方向内側を向いて膨出する保持用凸部85aが形成されている。なお、前記第2保持部材85は、適宜省略することができる。
前記シェル61は、概略矩形の天板部62と、該天板部62の側縁から立設する側板部63とを有する。該側板部63には、複数の掛止開口63aが形成され、シェル61をハウジング11の上側に取付けると、該ハウジング11の側壁部11eの外側面に形成された掛止突起13に前記掛止開口63aが掛止され、これにより、シェル61がハウジング11に固定される。また、前記側板部63の下端の任意の箇所には、側板部63から立設しシェル61の幅方向外側に向けて延出する基板接続部としてのソルダーテール部64が形成されている。該ソルダーテール部64は、前記電子機器における配線基板等の表面に形成された固定用パッド等に、はんだ付等によって固定される。そして、前記固定用パッド等の少なくとも一つが、配線基板等が備える接地ラインに接続されているので、前記シェル61は接地される。なお、該シェル61におけるカード用トレイ161の挿入方向前方及び後方の端部は、前端部61f及び後端部61rと称する。
また、左右いずれか一方の側板部63、具体的には、第2保持部材85が収容されているトレイ排出ロッド収容部11gと反対側の側板部63には、カード用コネクタ1内に挿入されたカード用トレイ161を保持する保持ばね部としての第1保持部材65が形成されている。該第1保持部材65は、側板部63の一部をシェル61の幅方向内側に向けて押圧可能に折曲げ加工することによって形成されたばね性を備える板状の部材であり、その先端、すなわち、自由端がシェル61の幅方向、すなわち、ハウジング11の幅方向に弾性的に変位可能なカンチレバー状の部材である。そして、前記第1保持部材65は、その基端が側板部63に連結され、その自由端が前端部61fを向き、かつ、前記自由端が基端よりもハウジング11の幅方向内側に位置するような姿勢で配設されるとともに、前記自由端の近傍に、ハウジング11の幅方向内側を向いて膨出する保持用凸部65aが形成されている。
さらに、カード用コネクタ1は、該カード用コネクタ1に挿入されたカード用トレイ161を検出する検出スイッチの接点部材を有する。具体的には、前記ハウジング11の前端部11fの近傍には、カード用トレイ161がカード用コネクタ1の所定位置(カード用トレイ161が第1保持部材65及び第2保持部材85によって保持されるとともに、カード用トレイ161にカード101が収容されている場合に各コンタクトパッド151が対応する端子51の接触部51cと確実に接触する位置)にまで挿入されたことを検出する検出スイッチとしてのトレイ検出スイッチの端子が配設されている。前記トレイ検出スイッチは、前端部11f及びその近傍に取付けられたカンチレバー状の接点部材としての第1接点部材57と、底壁部11bに形成されたスイッチ保持凹部11iに保持された接点部材としての第2接点部材58とによって形成される。前記スイッチ保持凹部11iは、底壁部11bを板厚方向に貫通する開口である。
前記第1接点部材57は、前端部11fに取付けられ、一部が前端部11fから前方に突出する取付部57a、基端が前記取付部57aに接続され、横方向に向けて延出するカンチレバー状の本体部57b、及び、該本体部57bの先端、すなわち、自由端に接続された接触部57cを有する。そして、前記取付部57aは奥壁部11aの側面とほぼ平行となり、本体部57bは、カード用トレイ161がカード用コネクタ1に挿入されていない状態においては、奥壁部11aの側面に対して傾斜し、接触部57cは、前端部11fに向けて、すなわち、前方に向けて突出する。そして、カード用トレイ161が挿入されると、該カード用トレイ161の前枠部165が本体部57bの自由端に当接する。一方、前記第2接点部材58は、大部分が底壁部11bに埋込まれ、一部が前端部11fから前方に突出する取付部58aと、基端が前記取付部58aに接続され、少なくとも先端、すなわち、自由端がスイッチ保持凹部11i内に露出する接触部58bとを有する。
そして、カード用トレイ161が挿入されていない状態においては、図3に示されるように、第1接点部材57の接触部57cが第2接点部材58の接触部58bと接触していないので、第1接点部材57と第2接点部材58とは接触しておらず、つまり、端子同士が接触しておらず、カード検出スイッチは非導通状態、すなわち、オフ(OFF)になっている。
しかし、カード用トレイ161がカード用コネクタ1に挿入されて所定位置に到達すると、カード用トレイ161の前枠部165によって第1接点部材57の本体部57bの自由端が前端部11fの方向に向けて押されて変位し、第1接点部材57の接触部57cが第2接点部材58の接触部58bに接触する。これにより、第1接点部材57と第2接点部材58とが接触し、つまり、端子同士が接触し、カード検出スイッチは導通状態、すなわち、オン(ON)になるので、カード用トレイ161がカード用コネクタ1の所定位置に到達したことが検出される。
なお、前記第1接点部材57の取付部57a及び第2接点部材58の取付部58aは、前記電子機器における配線基板等に形成された信号線、コンタクトパッド、端子等、すなわち、相手側端子部材に、はんだ付等によって電気的に接続される。したがって、前記電子機器のプロセッサ等は、カード検出スイッチのオン及びオフを検出することができる。
また、ハウジング11は、底壁部11bの左右両側から幅方向外側に向けて延出するフランジ部11hを備える。該フランジ部11hは、底壁部11bよりも薄肉の板部材であって、図4(c)に示されるように、その下面が底壁部11bの下面と面一となるように形成されている。したがって、フランジ部11hの上面は、底壁部11bの上面よりも下方に位置し、その結果、ハウジング11の後端部11rとシェル61の後端部61rとの間に形成される挿入口18の形状は、図4(c)に示されるように、幅方向全体に厚さが一定な細長い直方体状でなく、両端において下側へ突出する突出部18aを備える略ワ冠状となっている。
前述のように、カード用トレイ161の前枠部165が、前面視において、略ワ冠状の形状を備え、両端において突出部を備えているのであるから、前記挿入口18は、前記前枠部165と協働して、カード用トレイ161が上下逆さまの姿勢でカード用コネクタ1に挿入されること、すなわち、誤挿入を防止する機能を発揮する。
また、前記挿入口18の突出部18a以外の部分の厚さ方向の寸法は、カード用トレイ161における後板部163の厚さ方向の寸法よりも小さく形成されている。さらに、前記挿入口18の幅方向の寸法は、カード用トレイ161における後板部163の幅方向の寸法よりも小さく形成されている。したがって、前記挿入口18は、前記後板部163と協働して、カード用トレイ161が前後逆さまの姿勢でカード用コネクタ1に挿入されること、すなわち、誤挿入を防止する機能を発揮する。
次に、前記構成のカード用コネクタ1の動作について説明する。まず、カード用トレイ161を挿入する場合の動作について説明する。
図5は本発明の実施の形態におけるカード用トレイの挿入前後のカード用コネクタを示す斜視図、図6は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタにカード用トレイを挿入する動作を説明する上面図である。なお、図5において、(a)はカード用トレイの挿入前を示す図、(b)はカード用トレイの挿入後を示す図であり、図6において、(a)〜(c)は各工程を示す図である。
まず、ユーザは、手指等によって、カード101が収容されたカード用トレイ161をカード用コネクタ1の後方の挿入口18からハウジング11とシェル61との間に形成されるカード挿入空間内に挿入する。
なお、図5及び6では、図示の都合上、カード101の描画が省略されている。つまり、カード用トレイ161は、カード101が収容されていない状態になっている。また、図6では、シェル61の天板部62の描画が省略されている。
ここで、カード用トレイ161は、その上面161bが上を向き、すなわち、シェル61の天板部62と向合い、前枠部165がカード用コネクタ1の前端部1Fの方を向くような姿勢、すなわち、正規姿勢で挿入される。そのため、カード101がカード用トレイ161内に収容されている場合には、コンタクトパッド151が配設されている下面111aが開放された状態で下を向き、端子51が配設されているハウジング11の底壁部11bと向合い、前端111fがカード用コネクタ1の前端部1Fの方を向くような姿勢となっている。
そして、カード用トレイ161が挿入口18からハウジング11とシェル61との間に形成されるカード挿入空間内に挿入されると、前枠部165及び後枠部162の下面並びに空間部166内に収容されたカード101の下面111aよりも下方に突出している側枠部164が、ハウジング11における底壁部11bの左右両側に形成された凹部にガイドされてカード挿入空間内を進行する。つまり、下方に突出している側枠部164の下面が、底壁部11bの上面よりも下方に位置する左右両側のフランジ部11hの上面に対向した状態で、カード用トレイ161はカード挿入空間内を進行する。
また、前枠部165の下面は、望ましくは、空間部166内に収容されたカード101の下面111aよりも上面161b寄りに位置するので、カード用トレイ161がカード挿入空間内に挿入される際に、端子51の接触部51cは、前枠部165に接触することなく、カード101の下面111aに接触する。さらに、前枠部165には、望ましくは、端子51の接触部51cの各々に対応する位置に凹入部165aが形成され、該凹入部165aの下面161a側の面は、空間部166内に収容されたカード101の下面111aよりも十分に低く形成されているので、カード用トレイ161がカード用コネクタ1に挿入される際に、前枠部165が端子51に接触することが確実に防止される。
続いて、ユーザがカード用トレイ161をプッシュして更に押込むと、図6(a)に示されるように、第1保持部材65の保持用凸部65a及び第2保持部材85の保持用凸部85aが、カード用トレイ161に接触する。具体的には、側枠部164の前側面164a乃至前端面164c又は前枠部165が、第1保持部材65の保持用凸部65a及び第2保持部材85の保持用凸部85aに接触する。前記第1保持部材65は、導電性の金属から成るシェル61に一体的に形成された部材であり、前記シェル61は接地されているのであるから、カード用トレイ161も、第1保持部材65の保持用凸部65aに接触すると接地された状態となる。したがって、前記ユーザが静電気を帯びていても、該静電気は、カード用トレイ161を介して、確実に除去される。
なお、図4(c)に示されるように、初期状態、すなわち、カード用トレイ161が挿入される前の状態において、第1保持部材65の保持用凸部65a及び第2保持部材85の保持用凸部85aは、幅方向内側に向ってカード挿入空間内に大きく突出した状態になっている。したがって、第1保持部材65の保持用凸部65a及び第2保持部材85の保持用凸部85aは、カード挿入空間内に挿入されたカード用トレイ161に確実に接触する。また、前後方向に関し、第1保持部材65の保持用凸部65a及び第2保持部材85の保持用凸部85aは、ほぼ同一位置にある。したがって、第1保持部材65の保持用凸部65a及び第2保持部材85の保持用凸部85aは、カード挿入空間内に挿入されたカード用トレイ161に、ほぼ同時に接触する。
続いて、ユーザがカード用トレイ161をプッシュして更に押込むと、図6(b)に示されるように、第1保持部材65の保持用凸部65aと第2保持部材85の保持用凸部85aとの間隔が押広げられ、第1保持部材65の保持用凸部65a及び第2保持部材85の保持用凸部85aは、側枠部164の前側面164aに沿って相対的にカード用トレイ161の後方に移動する。この際、ユーザの手指等が発揮する押圧力は、カード用トレイ161から第1保持部材65及び第2保持部材85に伝達され、該第1保持部材65及び第2保持部材85を弾性的に変形させる。そのため、カード用トレイ161は、第1保持部材65及び第2保持部材85のばね力による摩擦抵抗を受けるが、該摩擦抵抗がユーザの手指等が発揮する押圧力よりも小さいので、前記摩擦抵抗に抗して移動する。
また、図6(b)に示されるように、カード検出スイッチの端子の一つである第1接点部材57がカード用トレイ161に接触する。さらに、イジェクトレバー21もカード用トレイ161に接触する。具体的には、前枠部165が、第1接点部材57の本体部57bの自由端及びイジェクトレバー21の作用点部21aに接触する。このとき、カード用トレイ161が既に第1保持部材65の保持用凸部65aに接触済みなので、静電気は、除去されている。したがって、第1接点部材57に静電気が流れてカード検出スイッチを介して配線基板の信号線等に流れることがなく、電子機器等が静電気の影響を受けることがない。
続いて、ユーザがカード用トレイ161をプッシュして更に押込むと、図6(c)に示されるように、カード用トレイ161がカード用コネクタ1の所定位置に到達する。このとき、前枠部165に押され、第1接点部材57の本体部57bの自由端が前端部11fの方向に向けて変位し、第1接点部材57の接触部57cが第2接点部材58の接触部58bに接触する。これにより、第1接点部材57と第2接点部材58とが接触し、カード検出スイッチがオンになるので、カード用トレイ161がカード用コネクタ1の所定位置に到達したことが検出される。
また、図6(c)に示されるように、カード用トレイ161がカード用コネクタ1の所定位置にまで前進することにより、イジェクトレバー21の作用点部21aが、前枠部165に押されて前端部11fの方向に向けて変位するので、イジェクトレバー21の力点部21bは、後端部11rの方向に向けて変位する。そのため、前記力点部21bと係合する係合部22bを備えるプッシュロッド22は、後端部11rの方向にスライドし、図5(b)に示されるように、操作部22aのハウジング11からの突出量が、図5(a)に示されるような初期状態よりも大きくなる。
さらに、カード用トレイ161がカード用コネクタ1の所定位置に到達すると、第1保持部材65の保持用凸部65a及び第2保持部材85の保持用凸部85aが、左右の側枠部164の保持用凹部168内に進入して係合する。これにより、カード用トレイ161は、カード用コネクタ1内における所定位置にロックされた状態で保持される。具体的には、カード用トレイ161の前後方向の変位が第1保持部材65及び第2保持部材85によって規制され、カード用トレイ161がカード用コネクタ1から抜出ることが防止される。また、第1保持部材65及び第2保持部材85によって左右から弾性的に挟持されるので、カード用トレイ161の幅方向の変位が規制される。なお、前述のように、第2保持部材85は、省略することもできるが、カード用トレイ161内におけるカード用トレイ161を安定的に保持するという観点からは、省略しない方が望ましい。
そして、カード101がカード用トレイ161内に収容されている場合には、カード101は、カード用トレイ161とともに、所定位置に保持されることによって、カード用コネクタ1が実装された電子機器のプロセッサ等との間でデータの送受信を行うことができる状態となる。なお、カード101が所定位置に保持されているとき、カード用コネクタ1の端子51は、その接触部51cが、カード101のコンタクトパッド151の各々に接触して導通している。また、前述のように、カード用トレイ161が既に第1保持部材65の保持用凸部65aに接触済みなので、静電気は、除去されている。したがって、静電気が端子51を介して配線基板の信号線等に流れることがなく、電子機器等が静電気の影響を受けることがない。
ところで、電子機器にカード用コネクタ1以外のカード用コネクタが実装されているような場合には、ユーザがカード用コネクタ1を使用しないこともあり得る。そして、このようなときに、ユーザは、カード101を収容していないカード用トレイ161、すなわち、空のカード用トレイ161をカード用コネクタ1に挿入した状態で保管することが考えられる。このように、カード101を収容していないカード用トレイ161が挿入された場合にも、カード用トレイ161は、第1保持部材65の保持用凸部65aに接触した後に第1接点部材57に接触するのであるから、カード検出スイッチを介して配線基板の信号線等に流れて、電子機器等が静電気の影響を受けることがない。
また、カード用トレイ161の前枠部165には凹入部165aが形成されているので、カード101を収容していないカード用トレイ161がカード用コネクタ1に挿入されても、前枠部165が端子51に当接して該端子51に損傷を与えることがない。
次に、カード用トレイ161をカード用コネクタ1から排出させる動作について説明する。
まず、ユーザが手指等によって、又は、ピン、ロッド等の補助部材を介してプッシュロッド22の操作部22aをプッシュして押込むと、プッシュロッド22の係合部22bと係合するイジェクトレバー21の力点部21bは、前端部11fの方向に向けて変位する。そのため、イジェクトレバー21の作用点部21aに前枠部165が押されて、カード用トレイ161は、所定位置から後端部11rの方向に向けて変位する。なお、第1保持部材65の保持用凸部65a及び第2保持部材85の保持用凸部85aが左右の側枠部164の保持用凹部168内に進入して係合することによって、カード用トレイ161が所定位置にロックされた状態で保持されているので、イジェクトレバー21の作用点部21aからは、ロックを解除するために十分な力が前枠部165に付与されることが必要となる。また、支点部21cから作用点部21aまでの距離が支点部21cから力点部21bまでの距離より長い、というイジェクトレバー21のレバー比を考慮すると、プッシュロッド22から力点部21bに付与される力は、作用点部21aから前枠部165に付与される力よりも大きい必要がある。しかし、ユーザの手指等が発揮する力は、十分に大きいと考えられるので、ユーザがプッシュロッド22の操作部22aをプッシュして押込むと、容易にロックが解除され、カード用トレイ161は、所定位置から後端部11rの方向に向けて変位する。
そして、ユーザがプッシュロッド22をその最も前進可能な位置にまで押込むと、イジェクトレバー21の作用点部21aは、図6(a)に示されるような位置にまで変位する。つまり、初期状態における第1接点部材57の本体部57bの自由端よりも、後端部11r寄りの位置にまで変位する。この場合、カード用トレイ161の後板部163は、カード用コネクタ1の挿入口18から十分に大きく突出している。したがって、ユーザは、手指等によって後板部163を把持することにより、カード用トレイ161をカード用コネクタ1から引出して排出させることができる。また、カード用トレイ161は、第1保持部材65の保持用凸部65aに接触しているものの、第1接点部材57からは離間しているので、前記ユーザが静電気を帯びていても、該静電気は除去されるので、第1接点部材57に静電気が流れてカード検出スイッチが静電気の影響を受けることがない。
このように、本実施の形態において、カード用コネクタ1は、下面111aにコンタクトパッド151を備えるカード101を保持するカード用トレイ161が挿入される。そして、カード用コネクタ1は、カード101のコンタクトパッド151と接触する端子51が配設されたハウジング11と、ハウジング11に取付けられ、少なくともハウジング11及びカード用コネクタ1に挿入されたカード用トレイ161の一部を覆うシェル61と、カード用コネクタ1に挿入されたカード用トレイ161を検出する検出スイッチの第1接点部材57とを備え、シェル61は、カード用コネクタ1に挿入されたカード用トレイ161を保持する第1保持部材65を含み、カード用トレイ161は、カード用コネクタ1に挿入されるとき、第1保持部材65に接触した後に第1接点部材57に接触する。
これにより、カード用トレイ161を操作するユーザが静電気を帯びている場合であっても、該静電気は、カード用トレイ161及びシェル61の第1保持部材65を介して、確実に除去される。そして、カード用トレイ161が第1接点部材57に接触するときには、カード用トレイ161が既に第1保持部材65に接触済みなので、静電気は除去されている。したがって、第1接点部材57及び該第1接点部材57に電気的に接続された機器等が静電気の影響を受けることがなく、信頼性が向上する。
また、カード用トレイ161は、カード101の側面112を囲繞する導電性の枠部材167を含む。したがって、枠部材167がコンタクトパッド151から離間しているので、カード用トレイ161を操作するユーザが静電気を帯びている場合であっても、該静電気によってカード101が影響を受けることがない。
さらに、第1保持部材65は、ハウジング11の幅方向内側を向いて膨出する保持用凸部65aを含み、カード用トレイ161は、外側面に保持用凹部168が形成された側枠部164を含み、第1保持部材65は、保持用凸部65aが保持用凹部168と係合してカード用トレイ161を保持する。したがって、カード用トレイ161は、カード用コネクタ1内においてロックされた状態で保持される。
さらに、カード用トレイ161は、カード用コネクタ1への挿入方向前方に位置する前枠部165を含み、前枠部165が第1接点部材57に接触する。したがって、カード用トレイ161を操作するユーザが静電気を帯びている場合であっても、カード用トレイ161が第1接点部材57に接触するときには、静電気が除去済みなので、第1接点部材57に静電気が流れてカード検出スイッチが静電気の影響を受けることがない。
さらに、枠部材167は、前面視において、両端に突出部を備える略ワ冠状の形状を備え、ハウジング11とシェル61との間に形成されたカード用トレイ161が挿入される挿入口18は、両端に突出部18aを備える略ワ冠状の形状を備える。したがって、カード用トレイ161が上下逆さまの姿勢でカード用コネクタ1に挿入されることが確実に防止される。
さらに、枠部材167は後端に形成された後板部163を含み、後板部163の幅方向の寸法は、挿入口18の幅方向の寸法よりも大きい。したがって、カード用トレイ161が前後逆さまの姿勢でカード用コネクタ1に挿入されることが確実に防止される。
さらに、前枠部165は、前面視において、カード用トレイ161に保持されたカード101のコンタクトパッド151に対応する位置に形成された凹入部165aを備え、凹入部165aは、カード用トレイ161に保持されたカード101の下面111aよりも低い。したがって、カード用トレイ161がカード用コネクタ1に挿入される際に、前枠部165が端子51に接触することが確実に防止されるので、端子51が損傷を受けることがない。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。