JP5822895B2 - 銅合金板および、それを備える放熱用電子部品 - Google Patents
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Description
近年、スマートフォン、タブレットPCおよびパソコンの小型化に伴い、電気・電子機器内の液晶部品またはICチップ等に通電した際の蓄熱が大きくなる傾向がある。蓄熱が大きい状態はICチップや基盤への熱的損傷が大きいため、放熱部品の放熱性が問題になっている。
オーステナイト系ステンレス鋼は曲げ性および絞り加工性は良好であるが、熱伝導性が低く、それを補うため高価な熱伝導シート等を併用している。そのため放熱部品の単価が高くなる。一方、純アルミニウムおよびアルミニウム合金では曲げ性および絞り加工性は良好であるが熱伝導性および構造体としての強度が足りていない。
以上の知見を背景に、以下の発明を完成させた。
本発明の銅合金板は、0.01〜0.3質量%のSnを含有し、残部が銅およびその不可避的不純物から成り、75%IACS以上の導電率、および300MPa以上の0.2%耐力を有し、かつ、圧延方向に対し、平行な方向、直角な方向および、45°をなす方向のそれぞれのランクフォード値をそれぞれr0、r90、r45としたときに、(r0+r90+2×r45)/4で定義される板厚異方性rが1.0以上としたものである。
本発明の一実施形態に係る銅合金板は、0.01〜0.3質量%のSn、残部が銅および不可避的不純物からなる組成を有するものであり、この銅合金板で、導電率を75%IACS以上とし、0.2%耐力を300MPa以上とし、ランクフォード値から求めた板厚異方性を1.0以上に調整する。このような特性を兼ね備える本発明の銅合金板は、放熱用電子部品の用途に好適である。
Sn濃度は0.01〜0.3質量%とする。Snが0.3質量%を超えると、75%IACS以上の導電率を得ることが難しくなる。Snが0.01質量%未満になると、300MPa以上の0.2%耐力を得ることが難しくなる。同様の観点から、Sn濃度は、0.03〜0.25質量%とすることが好ましく、なかでも、0.08〜0.25質量%とすることが特に好適である。
本発明では、JIS H0505に準拠して測定した導電率を75%IACS以上とする。導電率が75%IACS以上であれば、熱伝導率が良好であり、良好な放熱性を確保できる。導電率は、好ましくは80%IACS以上とする。
本発明では、銅合金板の0.2%耐力を300MPa以上とすることとし、この場合は、銅合金板が、構造材の素材として必要な強度を有しているといえる。0.2%耐力は、350MPa以上とすることが好ましく、特に、400MPa以上とすることがより好ましい。
試験片の圧延平行、直角、45°方向に、それぞれ2.5%の伸び歪を加え、試験片の長さおよび幅方向の寸法変化から、各方向のランクフォード値であるr0、r90、r45を求め、r=(r0+r90+2×r45)/4で定義される板厚異方性rを算出する。この板厚異方性rは、一般に値が大きいほど絞り加工性が良好であることが知られている。また、一般伸銅品の板厚異方性rは0.5〜0.9程度であり、本発明では、この値が1.0以上となるように調整することで、優れた絞り加工性が得られる。
ここでいうランクフォード値は、JIS Z2254に規定されるものであり、上記の各ランクフォード値r0、r90、r45を測定するに当っては、JIS Z2254に準拠して行うものとする。ただし、本発明品は構造材として必要な強度を維持するため伸びが低く、負荷ひずみを2.5%としている。
より優れた絞り加工性を得るため、板厚異方性rは、1.5以上とすることが好ましい。
製品の厚み、つまり板厚(t)は0.05〜2.0mmであることが好ましい。厚みが小さすぎると、十分な放熱性が得られなくなるため、放熱用電子部品の素材として不適である。一方で、厚みが大きすぎると、絞り加工および曲げ加工が困難になる。このような観点から、より好ましい厚みは0.08〜1.5mmである。厚みが上記範囲となることにより、放熱性に優れ、かつ、曲げ加工性を良好なものとすることができる。
銅合金板の最小曲げ半径(MBR)を、JIS H3130に準拠して測定するものとし、上記の板厚(t)に対する、この最小曲げ半径(MBR)の割合(MBR/t)は、2.0以下、特に1.5以下とすることが、良好な曲げ性を確保するとの観点から好ましい。より好ましくは、MBR/tを0.5以下とする。
以下、本発明に係る銅合金板の好適な製造方法の一例について説明する。
純銅原料として電気銅等を溶解し、Snおよび必要に応じ他の合金元素を添加し、厚み30〜300mm程度のインゴットに鋳造する。このインゴットを例えば800〜1000℃の熱間圧延により厚み3〜30mm程度の板とした後、冷間圧延と再結晶焼鈍とを繰り返し、最終の冷間圧延で所定の製品厚みに仕上げ、最後に歪取焼鈍を施す。最終冷間圧延後の伸びは、2%に満たないほど低いが、その後の歪取焼鈍により上昇する。
最終冷間圧延前の再結晶焼鈍では、銅合金板の平均結晶粒径を80μm以下に調整する。平均結晶粒径が大きすぎると、0.2%耐力を300MPa以上に調整することが難しくなる。0.2%耐力を高めるため、最終冷間圧延前の再結晶焼鈍によって、平均結晶粒径を、60μm以下に調整することが好ましく、さらに、50μm以下とすることがより好ましい。
総加工度R(%)は、R=(t0−t)/t0×100(t0:最終冷間圧延前の板厚、t:最終冷間圧延後の板厚)で与えられる。
総加工度Rは20〜99%、好ましくは40〜98.5%、より好ましくは60〜98%とする。Rが小さすぎると、0.2%耐力を300MPa以上に調整することが難しく、Rが大きすぎると、圧延材のエッジが割れることがある。
a.歪取焼鈍において、(σ0−σ)=10〜50MPaに調整する。
b.歪取焼鈍における炉内張力を5MPa以下に調整する。
c.仕上圧延の総加工度を99%以下にする。
溶銅に合金元素を添加した後、厚みが200mmのインゴットに鋳造した。インゴットを950℃で3時間加熱し、950℃で熱間圧延により厚み20mmの板にした。熱間圧延板表面の酸化スケールをグラインダーで研削、除去した後、焼鈍と冷間圧延を繰り返し、最終の冷間圧延で所定の製品厚みに仕上げた。最後に連続焼鈍炉を用い歪取焼鈍を行った。
連続焼鈍炉を用いた歪取焼鈍では、炉内温度を500℃とし加熱時間を1秒から15分の間で調整し、焼鈍後の0.2%耐力を種々変化させた。また、炉内において材料に付加する張力を種々変化させた。
製造途中の材料および歪取焼鈍後の材料につき、次の測定を行った。
歪取焼鈍後の材料の合金元素濃度をICP−質量分析法で分析した。
最終冷間圧延後および歪取焼鈍後の材料につき、JIS Z2241に規定する13B号試験片を引張方向が圧延方向と平行になるように採取し、JIS Z2241に準拠して圧延方向と平行に引張試験を行い、0.2%耐力を求めた。
歪取焼鈍後の材料から、試験片の長手方向が圧延方向と平行になるように試験片を採取し、JIS H0505に準拠し四端子法により20℃での導電率を測定した。
試験片の圧延平行、直角、45°方向に、JIS Z2241に規定するJIS13B号試験片を採取した。この試験片に対し、引張試験器を用いてそれぞれ2.5%の伸び歪を加え、板厚異方性を算出した。
幅10mm×長さ30mmの短冊状の試験片を作製し、W曲げ試験(JIS H3130)によって行った。試験片採取方向は、圧延平行方向(GW)および圧延直角方向(BW)とし、割れの発生しない最小曲げ半径MBR(Minimum Bend Radius)と板厚tの比MBR/tにて評価した。
表1及び2に評価結果を示す。なお、表1に示すところにおいて、最終再結晶焼鈍後の結晶粒径における「≦10」の表記は、圧延組織の全てが再結晶化しその平均結晶粒径が10μm以下であった場合、および圧延組織の一部のみが再結晶化した場合の双方を含んでいる。
Claims (4)
- 0.01〜0.3質量%のSnを含有し、残部が銅およびその不可避的不純物から成り、75%IACS以上の導電率、および300MPa以上の0.2%耐力を有し、かつ、圧延方向に対し、平行な方向、直角な方向および、45°をなす方向のそれぞれのランクフォード値をそれぞれr0、r90、r45としたときに、(r0+r90+2×r45)/4で定義される板厚異方性rが1.0以上である銅合金板。
- W曲げ試験における圧延平行方向(GW方向)および圧延直角方向(BW方向)の最小曲げ半径(MBR)の、板厚(t)に対する割合が、MBR/t≦1.5で与えられる請求項1に記載の銅合金板。
- Ag、P、Co、Ni、Cr、Mn、Zn、Mg、Siからなる群から選ばれる少なくとも1種を合計0.15質量%以下でさらに含有する、請求項1または2に記載の銅合金板。
- 請求項1〜3の何れか1項に記載の銅合金板を備える放熱用電子部品。
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