JP5822654B2 - 廃塩酸の処理方法および処理装置 - Google Patents
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上記目的を達成するための本発明の廃塩酸の処理方法の特徴構成は、鉄成分を含有してなる廃塩酸をチタンパラジウム合金製の蒸発缶内に供給し、加熱して塩酸蒸気を回収する廃塩酸の処理方法であって、前記蒸発缶に供給される廃塩酸にFe 3+ を添加して、前記蒸発缶内における廃塩酸に含まれるFe3+濃度を5g/L以上に維持する点にある。
本発明者らによると、チタンパラジウム合金製の蒸発缶の腐食減肉が観測される場合、前記蒸発缶の内壁面には、十分な不動態膜が形成されていないと予測されることが明らかになった。この新知見に基づき鋭意研究した結果、前記蒸発缶内に存在するFe3+濃度が十分高い場合には前記不動態膜が形成されており、高い耐久性を発揮しているものの、ある程度低い場合には前記不動態膜が不十分であって、十分な耐久性が発揮されていないことを実験的に明らかにした。本発明はこのような実験的事実の蓄積によってなされたものであり、前記蒸発缶に供給される廃塩酸に含まれるFe3+濃度が5g/L未満になった場合、蒸発缶内の減肉が急激に進みやすくなるのに対し、前記蒸発缶内における廃塩酸に含まれるFe3+濃度を5g/L以上に維持することにより、Fe3+がチタンパラジウム合金の蒸発缶内壁に不動態膜を形成する酸化剤として働き、蒸発缶内の不動態膜が安定して得られ、その蒸発缶の耐久性を高くするのに寄与することが明らかになった。
また、上記目的を達成するための本発明の廃塩酸の処理装置の特徴構成は、
鉄成分を含有してなる廃塩酸をチタンパラジウム合金製の蒸発缶内に供給し、加熱して塩酸蒸気を回収する廃塩酸の処理装置であって、前記蒸発缶に供給される廃塩酸を貯留する廃塩酸貯留タンクを備え、前記蒸発缶内における廃塩酸に含まれるFe 3+ 濃度を5g/L以上に維持するFe 3+ 濃度調整部として前記廃塩酸貯留タンクに酸素含有ガスを吹き込むバブリング部を設けた点にある。
上記Fe 3+ 濃度調整部によると、前記蒸発缶内における廃塩酸に含まれるFe 3+ 濃度を5g/L以上に維持するものであるから、上記廃塩酸の処理方法を行うことができる。これにより、Fe 3+ がチタンパラジウム合金の蒸発缶内壁に不動態膜を形成する酸化剤として働き、蒸発缶内の不動態膜が安定して得られ、その蒸発缶の耐久性を高くするのに寄与する。
また、鉄成分を含有してなる廃塩酸をチタンパラジウム合金製の蒸発缶内に供給し、加熱して塩酸蒸気を回収する廃塩酸の処理装置であって、前記蒸発缶に供給される廃塩酸にFe 3+ を添加して、前記蒸発缶内における廃塩酸に含まれるFe3+濃度を5g/L以上に維持するFe3+濃度調整部を備えてもよい。
上記Fe 3+ 濃度調整部によると、前記蒸発缶内における廃塩酸に含まれるFe 3+ 濃度を5g/L以上に維持するものであるから、上記廃塩酸の処理方法を行うことができる。これにより、Fe 3+ がチタンパラジウム合金の蒸発缶内壁に不動態膜を形成する酸化剤として働き、蒸発缶内の不動態膜が安定して得られ、その蒸発缶の耐久性を高くするのに寄与する。
先述の構成によると、経験的には前記蒸発缶内における廃塩酸に含まれるFe 3+ 濃度を効率よく5g/L以上に高めることができるのであるが、鉄成分を含む廃塩酸であっても十分量の鉄成分を安定的に含んでいるものとは限らないし、応答性良く前記廃塩酸中のFe 2+ をFe 3+ に酸化処理することができるとも限らない。そこで、直接的に廃塩酸中にFe 3+ を添加すれば、前記蒸発缶内における廃塩酸に含まれるFe 3+ 濃度を5g/L以上に維持することが可能になり、前記蒸発缶内で不動態膜を形成するための酸化剤として働かせることができる。
前記バブリング部は、前記廃塩酸貯留タンクに収容される廃塩酸を抜き出し前記廃塩酸貯留タンクに再供給する廃塩酸循環路を設け、前記再供給される廃塩酸が、酸素含有ガスとしての空気を吸い込みつつ前記廃塩酸貯留タンクに供給されるエジェクタ部を備える構成であってもよい。
すなわちエジェクタ部をもってバブリングを行う構成であれば、前記廃塩酸貯留タンクに収容される廃塩酸を抜き出し前記廃塩酸貯留タンクに再供給する廃塩酸循環路を設ける単純な配管で、再供給される廃塩酸が酸素含有ガスを吸い込みつつ微細気泡を生成して前記廃塩酸貯留タンクに供給することができ、かつ、少ない動力でバブリングを継続することができるので、効率のよい酸化処理が行いやすい。
また、前記蒸発缶に廃塩酸を供給する管路に前記Fe3+濃度調整部としてのFeCl3添加部を設けてあってもよい。
直接的に廃塩酸中にFe3+を添加するFeCl3添加部を設けてあれば、前記廃塩酸中のFe3+濃度を高め、前記蒸発缶内における廃塩酸に含まれるFe3+濃度を5g/L以上に維持することが可能になり、前記蒸発缶内で不動態膜を形成するための酸化剤として働かせることができる。
さらに、前記蒸発缶に腐食電位を測定する腐食電位監視部を設けるとともに、前記腐食電位監視部における腐食電位測定値に基き、前記蒸発缶内における廃塩酸に含まれるFe3+濃度を5g/L以上に維持するためのFeCl3添加量を決定するFeCl3添加量制御装置を付加することもできる。
特に、処理される廃塩酸が含有するFe3+濃度が安定していないような場合には上記Fe3+濃度調整部でのFe3+濃度調整が必要になる。この際、充分量のFe3+を添加すれば、前記蒸発缶内不動態被膜を形成するのに問題はなく、Fe3+濃度調整の結果、Fe3+濃度が高くなりすぎてもかまわないが、あまりに必要以上のFe3+を添加しても経済的には不利であるので、前記蒸発缶内における廃塩酸に含まれるFe3+濃度を5g/L以上にするために必要最小量のFe3+添加量を目標値としてFe3+濃度調整を行うことが好ましい。Fe3+濃度が増えると、前記蒸発缶の壁面の腐食電位は高くなる傾向を示すので、Fe3+濃度を直接監視するのに代えて、前記蒸発缶の腐食電位を測定して監視することができる。そのため、前記蒸発缶の腐食電位を測定する腐食電位監視部を設けるとともに、前記腐食電位監視部における腐食電位測定値に基き、前記蒸発缶内における廃塩酸に含まれるFe3+濃度を5g/L以上に維持するためのFeCl3添加量を決定することができる。
FeCl3添加量を決定するFeCl3添加量制御装置により、前記蒸発缶内における廃塩酸に含まれるFe3+濃度を5g/L以上に維持すると、必要最小限のFeCl3添加量を
維持しつつ、過剰のFeCl3添加を抑制し、経済的に効率のよいFeCl3添加でFe2+をFe3+に酸化処理することができる。
また、前記廃塩酸貯留タンクもしくは前記廃塩酸貯留タンクから前記蒸発缶にいたる管路に、腐食電位監視部を設けるとともに、前記腐食電位監視部における腐食電位測定値に基き、前記蒸発缶内における廃塩酸に含まれるFe3+濃度を5g/L以上に維持するためのFeCl3添加量を決定するFeCl3添加量制御装置を備えてもよい。
前記蒸発缶に腐食電位監視部を設ける場合、直接的に蒸発缶内における廃塩酸に含まれるFe3+濃度を反映した腐食電位を求めることができるが、前記腐食電位を求めるための電極等を前記蒸発缶に設けることは、前記蒸発缶の設計変更を伴う場合があって、好ましく無い場合もある。そのような場合、前記廃塩酸貯留タンクもしくは前記廃塩酸貯留タンクから前記蒸発缶にいたる管路に、前記腐食電位監視部を設けると、その蒸発缶に供給される廃塩酸に含まれるFe3+濃度を監視することができる。ここで求められたFe3+濃度は、前記蒸発缶内におけるFe3+濃度と相関を有するものであるから、前記腐食電位監視部における腐食電位測定値に基き、前記蒸発缶内における廃塩酸に含まれるFe3+濃度を5g/L以上に維持するためのFeCl3添加量を決定することができる。すなわち、前記蒸発缶に腐食電位監視部を設ける場合と同様に、FeCl3添加量を決定するFeCl3添加量制御装置により、前記蒸発缶内における廃塩酸に含まれるFe3+濃度を5g/L以上に維持することができる。
尚、上記腐食電位監視部が貴金属電極を備えることが好ましい。
上記前記腐食電位監視部において、前記蒸発缶壁部の腐食電位を直接求めることもできる。すなわち、この場合、前記チタンパラジウム合金の表面電位を直接参照すると、不動態被膜の生成状況に応じて、Fe3+濃度と腐食電位との関係が理想的な比例関係を示さないために、あらかじめFe3+濃度と腐食電位との関係式を求め、この関係式に従って、Fe3+濃度を求めることになる。しかし、前記腐食電位監視部が貴金属電極を備えると、前記貴金属電極において測定される電位は、蒸発缶内部の不動態の生成状況とは関係なく、比例に近い関係となるために、簡単に測定される電位から精度良くFe3+濃度を求めることができるようになる。
また、前記廃塩酸貯留タンクもしくは前記廃塩酸貯留タンクから前記蒸発缶にいたる管路に、前記腐食電位監視部を設ける場合においても同様に、前記腐食電位監視部が貴金属電極であれば、比例に近い関係から、より精度良くFe3+濃度を求めることができるようになる。
本発明の廃塩酸の処理装置は、図1に示すように、複数の伝熱管11を内装したチタンパラジウム合金製の蒸発缶(カランドリア型蒸発缶)1を備えるとともに、前記蒸発缶1に廃塩酸を供給する廃塩酸貯留タンク2を備え、濃縮すべき廃塩酸は、廃塩酸貯留タンク2から、ライン21を経て、ポンプ22において所定圧力まで昇圧された後、ライン23から蒸発缶1へ導入される。図示はしないが、必要ならば、ポンプ22の前流側にストレーナーを設け、後流側に流量計を設けることができる。廃塩酸は、蒸発缶内の液面から伝熱管上部までの液深さの15〜50%の位置(液面から下方に向けての位置)で蒸発缶1に導入される。
前記廃塩酸貯留タンク2に収容される廃塩酸を抜き出し前記廃塩酸貯留タンクに再供給する廃塩酸循環路24を設けて、前記再供給される廃塩酸が、酸素含有ガスとしての空気を吸い込みつつ前記廃塩酸貯留タンク2に供給されるエジェクタを備えたバブリング部25を備える。このバブリング部25により、前記廃塩酸循環路から再供給される廃塩酸が酸素含有ガスを吸い込みつつ微細気泡を生成して前記廃塩酸貯留タンクに供給し、前記廃塩酸貯留タンク内のFe2+をFe3+に酸化処理し、前記蒸発缶内における廃塩酸に含まれるFe3+濃度を5g/L以上に維持することができ、Fe3+濃度調整部Cとして機能する。
前記廃塩酸中のFe3+濃度と、チタンパラジウム合金製の蒸発缶1の壁面の減肉速度との関係を調べたところ図2のようになった。図2においては、チタンパラジウム合金製の試験片をHCl濃度114〜119g/Lの試験廃塩酸に浸漬し、110℃において、2週間〜4週間放置した場合の試験片の重量減少を求め、この重量減少から試験片の1年あたりの減肉速度を求めた。
前記Fe3+濃度調整部Cとしてのバブリング部25において廃塩酸中に空気を吹きこんだ場合の酸化処理性能を調べたところ、図3のようになった。図3においては、タンク容量20m3の廃塩酸貯留タンク2に廃塩酸としてHCl濃度114g/L、Fe2+濃度85g/L、Fe3+濃度1g/Lの試験廃塩酸を6m3収容し、循環ポンプ圧0.16MPa、6m3/hで循環させつつ、吸引する空気が235L/分の割合で廃塩酸中に空気をバブリングする構成で試験を行っている。
種々のFe3+濃度の廃塩酸中におかれたチタンパラジウム合金の腐食電位を求めたところ図4のようになった。電位は、Ag/AgCl電極を基準極とした電位として求めている。図4より腐食電位はFe3+濃度の増加に伴って単調増加しており、腐食電位測定値に基きFe3+濃度を求めることができる。このFe3+濃度を基に前記蒸発缶内における廃塩酸に含まれるFe3+濃度が5g/L以上になるように維持するためのFeCl3添加量を、FeCl3添加量制御装置29において決定することができる。求められたFeCl3添加量に基き、前記FeCl3添加部28からFeCl3の濃溶液を前記ライン23に添加することによって、蒸発缶の内面を、常時不動態被膜で被覆した状況を維持することができるようになり、蒸発缶の腐食減肉を効率よく抑制することができる。
11 :伝熱管
12 :ライン
13 :スチームトラップ
14 :ライン
15 :デミスター
2 :廃塩酸貯留タンク
21 :ライン
22 :ポンプ
23 :ライン
24 :廃塩酸循環路
25 :バブリング部
26 :サブタンク
27 :腐食電位監視部
28 :FeCl3添加部
29 :FeCl3添加量制御装置
3 :蒸気発生装置
31 :ライン
32 :圧縮機
33 :ライン
34 :ライン
35 :ライン
4 :濃縮液タンク
41 :ライン
42 :蒸気ライン
43 :電磁弁
5 :蒸留液タンク
51 :ライン
52 :冷却水ライン
53 :冷却器
54 :ライン
C :濃度調整部
Claims (8)
- 鉄成分を含有してなる廃塩酸をチタンパラジウム合金製の蒸発缶内に供給し、加熱して塩酸蒸気を回収する廃塩酸の処理方法であって、前記蒸発缶に供給される廃塩酸にFe3+を添加して、前記蒸発缶内における廃塩酸に含まれるFe3+濃度を5g/L以上に維持する廃塩酸の処理方法。
- 鉄成分を含有してなる廃塩酸をチタンパラジウム合金製の蒸発缶内に供給し、加熱して塩酸蒸気を回収する廃塩酸の処理装置であって、前記蒸発缶に供給される廃塩酸を貯留する廃塩酸貯留タンクを備え、前記蒸発缶内における廃塩酸に含まれるFe3+濃度を5g/L以上に維持するFe3+濃度調整部として前記廃塩酸貯留タンクに酸素含有ガスを吹き込むバブリング部を設けた廃塩酸の処理装置。
- 鉄成分を含有してなる廃塩酸をチタンパラジウム合金製の蒸発缶内に供給し、加熱して塩酸蒸気を回収する廃塩酸の処理装置であって、前記蒸発缶に供給される廃塩酸にFe3+を添加して、前記蒸発缶内における廃塩酸に含まれるFe3+濃度を5g/L以上に維持するFe3+濃度調整部を備えた廃塩酸の処理装置。
- 前記バブリング部は、前記廃塩酸貯留タンクに収容される廃塩酸を抜き出し前記廃塩酸貯留タンクに再供給する廃塩酸循環路を設け、前記再供給される廃塩酸が、酸素含有ガスとしての空気を吸い込みつつ前記廃塩酸貯留タンクに供給されるエジェクタ部を備える請求項2に記載の廃塩酸の処理装置。
- 前記蒸発缶に廃塩酸を供給する管路に前記Fe3+濃度調整部としてのFeCl3添加部を設けてある請求項2〜4のいずれか一項に記載の廃塩酸の処理装置。
- 前記蒸発缶に腐食電位を測定する腐食電位監視部を設けるとともに、前記腐食電位監視部における腐食電位測定値に基き、前記蒸発缶内における廃塩酸に含まれるFe3+濃度を5g/L以上に維持するためのFeCl3添加量を決定するFeCl3添加量制御装置を備えた請求項5に記載の廃塩酸の処理装置。
- 前記蒸発缶に供給される廃塩酸を貯留する廃塩酸貯留タンクもしくは前記蒸発缶に供給される廃塩酸を貯留する廃塩酸貯留タンクから前記蒸発缶にいたる管路に、腐食電位監視部を設けるとともに、前記腐食電位監視部における腐食電位測定値に基き、前記蒸発缶内における廃塩酸に含まれるFe3+濃度を5g/L以上に維持するためのFeCl3添加量を決定するFeCl3添加量制御装置を備えた請求項6に記載の廃塩酸の処理装置。
- 前記腐食電位監視部が貴金属電極を備える請求項6または7に記載の廃塩酸の処理装置。
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