本発明のトナーの製造方法は、少なくとも結着樹脂と着色剤を溶融混練し、得られた溶融混練物を粉砕、分級するトナーの製造方法であって、結着樹脂が炭素数2〜6の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分とロジン化合物及び炭素数6〜10の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステルA及び後述の式(Ia)で表されるビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステルBを含有し、ポリエステルBの含有量が、結着樹脂中、4〜20重量%であり、式(Ia)で表されるビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物の含有量が、ポリエステルBのアルコール成分中、45モル%以上であることに特徴を有し、粉砕する際の粉砕圧力が低く、微粉量の発生を抑制して、且つ粉砕分級収率に優れるという効果を奏する。
このような効果を奏する理由は定かではないが、以下のように考えられる。ポリエステルのアルコール成分に炭素数2〜6の脂肪族ジオールを含有し、カルボン酸成分に炭素数6〜10の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するポリエステルAは、該ポリエステル中にソフトセグメントである脂肪族骨格を多く含むことにより、結着樹脂に靭性を付与する。また、アルコール成分に特定量の式(Ia)で表されるビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を含有するポリエステルBも、ソフトセグメントであるエチレンオキサイド付加ユニットを含むことにより、結着樹脂に靭性を付与する。その結果、粉砕工程での偏砕が抑制される。一方、ポリエステルA中のカルボン酸成分にロジン化合物を含有することにより、分岐構造を多く含むロジン化合物のモノマー骨格が粉砕界面となる。また、アルコール成分が異なるポリエステルBを特定量含有することにより、ポリエステルBはポリエステルA中でミクロ相分離構造をとり、粉砕界面となる。その結果、粉砕性が向上し、粉砕時の粉砕圧を低減できる。このように偏砕が抑制されること、粉砕圧が低下させることの相乗効果により、微粉の発生量を抑制でき、粉砕・分級収率が向上するものと考えられる。
本発明の方法により得られるトナーは、少なくとも結着樹脂及び着色剤を含有する。
<結着樹脂>
本発明における結着樹脂はポリエステルAとポリエステルBを含有する。
本発明に用いるポリエステルAは、炭素数2〜6の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と、ロジン化合物及び炭素数6〜10の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステルである。
脂肪族ジオールの炭素数は2〜6であり、粉砕時に粉砕圧を低減し、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点及びトナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、2〜4が好ましく、2〜3がより好ましい。
炭素数2〜6の脂肪族ジオールとしては、具体的には、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール等が挙げられ、粉砕時に粉砕圧を低減し、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点及びトナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール及び1,3-プロパンジオールが好ましく、エチレングリコール及び1,2-プロパンジオールがより好ましく、1,2-プロパンジオールがさらに好ましい。
炭素数2〜6の脂肪族ジオールの含有量は、粉砕時に粉砕圧を低減し、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点及びトナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、ポリエステルAのアルコール成分中、85モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、実質100モル%が好ましい。
1,2-プロパンジオールの含有量は、粉砕時に粉砕圧を低減し、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点及びトナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、ポリエステルAのアルコール成分中、85モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、実質100モル%が好ましい。
なお、結着樹脂が複数のポリエステルAを含有する場合、上記の炭素数2〜6の脂肪族ジオール及び1,2-プロパンジオールの含有量は、各ポリエステルAにおけるそれぞれの化合物の含有量と各ポリエステルAの重量分率の積の和によって求める。
結着樹脂が複数のポリエステルを含有する場合、すべてのポリエステルのアルコール成分中の炭素数2〜6の脂肪族ジオールの含有量は、粉砕時の粉砕圧を低減する観点及びトナーの低温定着性を向上させる観点から、80モル%以上が好ましく、85モル%以上がより好ましく、87モル%以上がさらに好ましい。また、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点及びトナーの耐熱保存性を向上させる観点から、96モル%以下が好ましく、95モル%以下がより好ましく、93モル%以下がより好ましい。これらの観点を総合すると、炭素数2〜6の脂肪族ジオールの含有量は、すべてのポリエステルのアルコール成分中、80〜96モル%が好ましく、85〜95モル%がより好ましく、87〜93モル%がさらに好ましい。
また、結着樹脂が複数のポリエステルを含有する場合、すべてのポリエステルのアルコール成分中の1,2-プロパンジオールの含有量は、粉砕時の粉砕圧を低減する観点及びトナーの低温定着性を向上させる観点から、80モル%以上が好ましく、85モル%以上がより好ましく、87モル%以上がさらに好ましい。また、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点及びトナーの耐熱保存性を向上させる観点から、96モル%以下が好ましく、95モル%以下がより好ましく、93モル%以下がより好ましい。これらの観点を総合すると、1,2-プロパンジオールの含有量は、すべてのポリエステルのアルコール成分中、80〜96モル%が好ましく、85〜95モル%がより好ましく、87〜93モル%がさらに好ましい。
なお、すべてのポリエステルのアルコール成分中の炭素数2〜6の脂肪族ジオール又は1,2-プロパンジオールの含有量は、各ポリエステルのアルコール成分中のそれぞれの含有量と各ポリエステルの重量分率の積の和で求めることができる。
炭素数2〜6の脂肪族ジオール以外のアルコール成分としては、式(II):
(式中、R3O及びOR3はオキシアルキレン基であり、R3はエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物や水素添加ビスフェノールA等の2価アルコールやソルビトール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等の炭素数3〜10の3価以上の多価アルコールが挙げられる。
ポリエステルAのカルボン酸成分は、ロジン化合物及び炭素数6〜10の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有する。
ロジン化合物とは、松類から得られる天然樹脂類であり、その主成分は、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、デヒドロアビエチン酸等の樹脂酸及びこれらの混合物である。
ロジン化合物の種類は、パルプを製造する工程で副産物として得られるトール油から得られるトールロジン、生松ヤニから得られるガムロジン、松の切株から得られるウッドロジン等に大別される。本発明に用いるロジン化合物は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、トールロジンが好ましい
ロジン化合物は、さらに未精製ロジン化合物と精製ロジン化合物がある。未精製ロジン化合物とは、精製前の不純物を多量に含むロジン化合物であり、精製ロジン化合物とは、精製工程により不純物が低減されたロジンである。主な不純物としては、2-メチルプロパン、アセトアルデヒド、3-メチル-2-ブタノン、2-メチルプロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、n-ヘキサナール、オクタン、ヘキサン酸、ベンズアルデヒド、2-ペンチルフラン、2,6-ジメチルシクロヘキサノン、1-メチル-2-(1-メチルエチル)ベンゼン、3,5-ジメチル-2-シクロヘキセン、4-(1-メチルエチル)ベンズアルデヒド等が挙げられる。本発明においては、これらのうち、ヘキサン酸、ペンタン酸及びベンズアルデヒドの3種類の不純物の、ヘッドスペースGC-MS法により揮発成分として検出されるピーク強度を精製ロジンの指標として用いることができる。
即ち、本発明における精製ロジンとは、後述のヘッドスペースGC−MS法の測定条件において、ヘキサン酸のピーク強度が0.7×107以下であり、ペンタン酸のピーク強度が0.5×107以下であり、ベンズアルデヒドのピーク強度が0.4×107以下であるロジンをいう。さらに、トナーの耐熱保存性を向上させる観点及び臭気を低減させる観点から、ヘキサン酸のピーク強度は、0.6×107以下が好ましく、0.5×107以下がより好ましい。ペンタン酸のピーク強度は、0.4×107以下が好ましく、0.3×107以下がより好ましい。ベンズアルデヒドのピーク強度は、0.3×107以下が好ましく、0.2×107以下がより好ましい。
さらに、トナーの耐熱保存性を向上させる観点及び臭気を低減させる観点から、上記3種の物質に加え、n-ヘキサナールと2-ペンチルフランが低減されていることが好ましい。n-ヘキサナールのピーク強度は、1.7×107以下が好ましく、1.6×107以下がより好ましく、1.5×107以下がさらに好ましい。また、2-ペンチルフランのピーク強度は1.0×107以下が好ましく、0.9×107以下がより好ましく、0.8×107以下がさらに好ましい。
ロジンの精製方法としては、公知の方法が利用可能であり、蒸留、再結晶、抽出等による方法が挙げられ、蒸留によって、精製するのが好ましい。蒸留の方法としては、例えば特開平7−286139号公報に記載されている方法が利用でき、減圧蒸留、分子蒸留、水蒸気蒸留等が挙げられるが、減圧蒸留によって精製するのが好ましい。例えば、蒸留は通常6.67kPa以下の圧力で200〜300℃のスチル温度で実施され、通常の単蒸留をはじめ、薄膜蒸留、精留等の方法が適用され、通常の蒸留条件下では仕込みロジンに対し2〜10重量%の高分子量物をピッチ分として除去すると同時に2〜10重量%の初留分を同時に除去
する。
さらに、ロジン化合物として、変性ロジン化合物を用いることもできる。変性ロジン化合物とは、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、デヒドロアビエチン酸及びレポピマール酸を主成分とするロジンに、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等を付加反応させて得られるものであり、具体的には、ロジンの主成分の中で共役二重結合を有するレポピマール酸、アビエチン酸、ネオアビエチン酸及びパラストリン酸と、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等の不飽和結合を有する化合物とを加熱下でディールス-アルダー(Diels-Alder)反応させることにより得られる。
本発明に用いるロジン化合物は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、未変性のロジン化合物を用いることが好ましい。また、粉砕時に粉砕圧を低減し、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点及びトナーの耐熱保存性を向上させる観点から、未精製ロジンを用いても、精製ロジンを用いてもよい。
ロジン化合物の軟化点は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点及び低温定着性を向上させる観点から、50〜100℃が好ましく、60〜90℃がより好ましく、65〜85℃がさらに好ましい。ロジンの軟化点は、後述する実施例に記載の方法により、測定される。
ロジン化合物の酸価は、トナーの耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、100〜200mgKOH/gが好ましく、130〜180mgKOH/gがより好ましく、150〜170mgKOH/gがさらに好ましい。ロジンの酸価は、後述する実施例に記載の方法により、測定される。
ロジン化合物の引火点は、トナーの低温定着性を向上させる観点及び臭気を低減させる観点から、180〜240℃が好ましく、185〜230℃がより好ましく、190〜220℃がさらに好ましい。
ロジン化合物の含有量は、粉砕時に粉砕圧を低減し、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点及びトナーの耐熱保存性を向上させる観点から、ポリエステルAのカルボン酸成分中、2.0モル%以上が好ましく、2.5モル%以上がより好ましく、3.0モル%以上がさらに好ましい。また、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点及びトナーの耐熱保存性を向上させる観点から、ポリエステルAのカルボン酸成分中、30モル%以下が好ましく、25モル%以下がより好ましく、15モル%以下がさらに好ましく、10モル%以下がよりさらに好ましい。これらの観点を総合すると、ロジン化合物の含有量は、ポリエステルAのカルボン酸成分中、2.0〜30モル%であり、2.5〜25モル%が好ましく、3.0〜15モル%がさらに好ましく、3.0〜10モル%がよりさらに好ましい。
なお、結着樹脂が複数のポリエステルAを含有する場合、ロジン化合物の含有量は、各ポリエステルAにおけるロジン化合物の含有量と各ポリエステルAの重量分率の積の和によって求める。
また、結着樹脂が複数のポリエステルを含有する場合、すべてのポリエステルのカルボン酸成分中のロジン化合物の含有量は、粉砕時に粉砕圧を低減し、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点及びトナーの耐熱保存性を向上させる観点から、2.0モル%以上が好ましく、2.5モル%以上がより好ましく、3.0モル%以上がさらに好ましい。また、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点及びトナーの耐熱保存性を向上させる観点から、すべてのポリエステルのカルボン酸成分中、25モル%以下が好ましく、18モル%以下がより好ましく、12モル%以下がさらに好ましく、6モル%以下がよりさらに好ましい。これらの観点を総合すると、ロジン化合物の含有量は、すべてのポリエステルのカルボン酸成分中、2.0〜25モル%が好ましく、2.5〜18モル%がより好ましく、3.0〜12モル%がさらに好ましく、3.0〜6モル%がよりさらに好ましい。
なお、すべてのポリエステルのカルボン酸成分中のロジン化合物の含有量は、各ポリエステルのカルボン酸成分中のロジン化合物の含有量と各ポリエステルの重量分率の積の和で求めることができる。
炭素数6〜10の脂肪族ジカルボン酸化合物としては、アジピン酸、セバシン酸が挙げられ、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点から、セバシン酸が好ましい。ここで、カルボン酸化合物とは、カルボン酸及びそれらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜4)エステル等の誘導体をさす。好ましい炭素数とは、カルボン酸化合物のカルボン酸部分の炭素数を意味する。
炭素数6〜10の脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点及びトナーの低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、ポリエステルAのカルボン酸成分中、1.0モル%以上が好ましく、2.0モル%以上がより好ましく、2.5モル%がさらに好ましく、3.0モル%がよりさらに好ましい。また、粉砕時の粉砕圧を低減する観点及びトナーの耐熱保存性を向上させる観点から、ポリエステルAのカルボン酸成分中、8.0モル%以下が好ましく、6.0モル%以下がより好ましく、5.0モル%以下がさらに好ましく、4.0モル%以下がよりさらに好ましい。これらの観点を総合すると、炭素数6〜10の脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、ポリエステルAのカルボン酸成分中、1.0〜8.0モル%が好ましく、2.0〜6.0モル%がより好ましく、2.5〜5.0モル%がさらに好ましく、3.0〜4.0モル%がよりさらに好ましい。
なお、結着樹脂が複数のポリエステルAを含有する場合、炭素数6〜10の脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、各ポリエステルAにおける炭素数6〜10の脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量と各ポリエステルAの重量分率の積の和によって求める。
また、結着樹脂が複数のポリエステルを含有する場合、すべてのポリエステルのカルボン酸成分中の炭素数6〜10の脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点及びトナーの低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、0.5モル%以上が好ましく、1.0モル%以上がより好ましく、1.5モル%以上がさらに好ましく、2.0モル%以上がよりさらに好ましい。また、粉砕時の粉砕圧を低減する観点及びトナーの耐熱保存性を向上させる観点から、すべてのポリエステルのカルボン酸成分中、7.5モル%以下が好ましく、5.5モル%以下がより好ましく、4.0モル%以下がさらに好ましく、3.0モル%以下がよりさらに好ましい。これらの観点を総合すると、炭素数6〜10の脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、すべてのポリエステルのカルボン酸成分中、0.5〜7.5モル%が好ましく、1.0〜5.5モル%がより好ましく、1.5〜4.0モル%がさらに好ましく、2.0〜3.0モル%がよりさらに好ましい。
なお、すべてのポリエステルのカルボン酸成分中の炭素数6〜10の脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、各ポリエステルのカルボン酸成分中の炭素数6〜10の脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量と各ポリエステルの重量分率の積の和で求めることができる。
ロジン化合物及び炭素数6〜10の脂肪族ジカルボン酸化合物以外のカルボン酸成分として、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸等の炭素数3〜5の脂肪族ジカルボン酸化合物や炭素数7〜24のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸化合物等の炭素数11〜24の脂肪族ジカルボン酸化合物、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸化合物、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)等の炭素数4〜10の3価以上の多価カルボン酸化合物が挙げられる。これらの中で、トナーの帯電安定性及び耐熱保存性を向上させる観点から、芳香族ジカルボン酸化合物及び芳香族トリカルボン酸化合物が好ましく、テレフタル酸及びトリメリット酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、トナーの帯電安定性、耐熱保存性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、ポリエステルAのカルボン酸成分中、55〜94モル%が好ましく、60〜90モル%がより好ましく、70〜85モル%がさらに好ましい。
芳香族トリカルボン酸化合物の含有量は、トナーの低温定着性、耐高温オフセット性を向上させる観点及び転移温度を向上させる観点から、ポリエステルAのカルボン酸成分中、3〜20モル%が好ましく、5〜17モル%がより好ましく、10〜14モル%がさらに好ましい。
なお、結着樹脂が複数のポリエステルAを含有する場合、上記の芳香族ジカルボン酸化合物及び芳香族トリカルボン酸化合物の含有量は、各ポリエステルAにおけるそれぞれの化合物の含有量と各ポリエステルAの重量分率の積の和によって求める。
アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、ポリエステルAの軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
ポリエステルAにおけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステルAの酸価を低減する観点から、0.70〜1.10が好ましく、0.75〜1.00がさらに好ましい。
アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合反応は、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、180〜250℃程度の温度で縮重合させて製造することができる。エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.01〜1.5重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましい。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.001〜0.5重量部が好ましく、0.01〜0.1重量部がより好ましい。
ポリエステルAの軟化点は、トナーの低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、90〜155℃が好ましい。
結着樹脂が複数のポリエステルAを含有する場合は、各ポリエステルAの軟化点と各ポリエステルAの重量分率の積の和が上記範囲となることが好ましい。
ポリエステルAの軟化点は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比、触媒量等の調整、反応温度や反応時間、反応圧力等の反応条件の選択によって制御することができる。
ポリエステルAのガラス転移温度は、トナーの低温定着性及び保存安定性を向上させる観点から、50〜80℃が好ましく、55〜70℃が好ましい。
結着樹脂が複数のポリエステルAを含有する場合は、各ポリエステルAのガラス転移温度と各ポリエステルAの重量分率の積の和が上記範囲内となることが好ましい。
ポリエステルAのガラス転移温度は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比等によって制御することができる。
ポリエステルAの酸価は、トナーの帯電安定性、耐熱保存性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、30mgKOH/g以下が好ましく、25mgKOH/g以下がより好ましい。
ポリエステルの酸価は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比、触媒量等の調整、反応温度や反応時間、反応圧力等の反応条件の選択によって制御することができる。
本発明に用いるポリエステルBは、式(Ia):
(式中、R1O及びOR1はオキシエチレン基であり、m及びnはエチレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、mとnの和の平均値は1〜8である)
で表されるビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(BPA-EO)を含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステルである。
式(Ia)において、mとnの和の平均値は1〜8であり、好ましくは1〜5であり、より好ましくは1.5〜3である。
式(Ia)で表されるBPA-EOの含有量は、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点から、ポリエステルBのアルコール成分中、45モル%以上であり、50モル%以上がより好ましく、55モル%以上がさらに好ましい。また、粉砕時の粉砕圧を低減する観点及びトナーの耐熱保存性を向上させる観点から、ポリエステルBのアルコール成分中、95モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましく、85モル%以下がさらに好ましく、80モル%以下がよりさらに好ましい。これらの観点を総合すると、式(Ia)で表されるBPA-EOの含有量は、ポリエステルBのアルコール成分中、45〜100モル%が好ましく、45〜95モル%がより好ましく、45〜90モル%がさらに好ましく、50〜85モル%がよりさらに好ましく、55〜80モル%がよりさらに好ましい。
なお、結着樹脂が複数のポリエステルBを含有する場合、式(Ia)で表されるBPA-EOの含有量は、各ポリエステルBにおける式(Ia)で表されるBPA-EOの含有量と各ポリエステルBの重量分率の積の和によって求める。
式(Ia)で表されるBPA-EO以外のアルコール成分としては、粉砕時の粉砕圧を低減し、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点及びトナーの耐熱保存性を向上させる観点から、式(Ib):
(式中、R2O及びOR2はオキシプロピレン基であり、s及びtはプロピレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、sとtの和の平均値は1〜8である)
で表されるビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(BPA-PO)が好ましい。
式(Ib)において、sとtの和の平均値は1〜8であり、好ましくは1〜5であり、より好ましくは1.5〜3である。
式(Ib)で表されるBPA-POの含有量は、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点から、ポリエステルBのアルコール成分中、55モル%以下が好ましく、50モル%以下がより好ましく、45モル%以下がさらに好ましい。また、粉砕時の粉砕圧を低減する観点及びトナーの耐熱保存性を向上させる観点から、ポリエステルBのアルコール成分中、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、15モル%以上がさらに好ましく、20モル%以上がよりさらに好ましい。これらの観点を総合すると、式(Ib)で表されるBPA-POの含有量は、ポリエステルBのアルコール成分中、5〜55モル%が好ましく、10〜55モル%がより好ましく、15〜50モル%がさらに好ましく、20〜45モル%がよりさらに好ましい。
なお、結着樹脂が複数のポリエステルBを含有する場合、式(Ib)で表されるBPA-POの含有量は、各ポリエステルBにおける式(Ib)で表されるBPA-POの含有量と各ポリエステルBの重量分率の積の和によって求める。
式(Ia)で表されるBPA-EOと式(Ib)で表されるBPA-POの総含有量は、粉砕時の粉砕圧を低減し、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点及びトナーの耐熱保存性を向上させる観点から、ポリエステルBのアルコール成分中、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、実質的に100モル%がよりさらに好ましい。
式(Ia)で表されるBPA-EO及び式(Ib)で表されるBPA-PO以外のアルコール成分として、炭素数2〜10の脂肪族ジオール、水素添加ビスフェノールA等の2価アルコールやソルビトール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等の炭素数3〜10の3価以上の多価アルコールが挙げられる。
ポリエステルBのカルボン酸成分として、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸や炭素数1〜20のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸化合物等の炭素数3〜30、好ましくは炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸化合物、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸化合物、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)等の炭素数4〜10の3価以上の多価カルボン酸化合物が挙げられる。これらの中で、トナーの帯電安定性、耐熱保存性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、芳香族ジカルボン酸化合物が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、ポリエステルBの軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
ポリエステルBにおけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステルBの酸価を低減する観点から、0.70〜1.10が好ましく、0.75〜1.00がさらに好ましい。
ポリエステルBは、ポリエステルAに記載した方法と同様に製造することができる。
ポリエステルBの軟化点は、トナーの低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、90〜155℃が好ましい。
結着樹脂が複数のポリエステルBを含有する場合は、各ポリエステルBの軟化点と各ポリエステルBの重量分率の積の和が上記範囲となることが好ましい。
ポリエステルBの軟化点は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比、触媒量等の調整、反応温度や反応時間、反応圧力等の反応条件の選択によって制御することができる。
ポリエステルBのガラス転移温度は、トナーの低温定着性及び保存安定性を向上させる観点から、50〜80℃が好ましく、55〜70℃が好ましい。
結着樹脂が複数のポリエステルBを含有する場合は、各ポリエステルBのガラス転移温度と各ポリエステルBの重量分率の積の和が上記範囲内となることが好ましい。
ポリエステルBのガラス転移温度は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比等によって制御することができる。
ポリエステルBの酸価は、トナーの帯電安定性、耐熱保存性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、20mgKOH/g以下が好ましく、10mgKOH/g以下がより好ましい。
ポリエステルの酸価は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比、触媒量等の調整、反応温度や反応時間、反応圧力等の反応条件の選択によって制御することができる。
本発明に用いる結着樹脂は、トナーの低温定着性と耐高温オフセット性を向上させる観点から、軟化点の異なる2種以上のポリエステルを含有することが好ましい。
軟化点が高い方のポリエステルHと軟化点が低い方のポリエステルLの軟化点の差は、トナーの低温定着性と耐高温オフセット性を向上させる観点から、10℃以上が好ましく、20〜60℃がより好ましく、30〜50℃がさらに好ましい。
ポリエステルHの軟化点は、粉砕時に粉砕圧を低減し、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点及びトナーの低温定着性、耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、125〜155℃が好ましく、130〜150℃がより好ましい。
結着樹脂が複数のポリエステルHを含有する場合は、各ポリエステルHの軟化点と各ポリエステルHの重量分率の積の和が上記範囲となることが好ましく、各ポリエステルが上記範囲となることがより好ましい。
ポリエステルLの軟化点は、粉砕時に粉砕圧を低減し、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点及びトナーの低温定着性、耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、90〜125℃が好ましく、90〜110℃がより好ましい。
結着樹脂が複数のポリエステルLを含有する場合は、各ポリエステルLの軟化点と各ポリエステルLの重量分率の積の和が上記範囲となることが好ましく、各ポリエステルが上記範囲となることがより好ましい。
ポリエステルの軟化点は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比、触媒量等の調整、反応温度や反応時間、反応圧力等の反応条件の選択によって制御することができる。
本発明に用いる結着樹脂において、粉砕時に粉砕圧を低減する観点から、ポリエステルH及びポリエステルLの少なくともいずれか一方がポリエステルAであるのが好ましく、ポリエステルHがポリエステルAであり、ポリエステルLがポリエステルBであることがより好ましい。
さらに、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、ポリエステルLは、炭素数2〜6の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と、ロジン化合物を含有し、炭素数6〜10の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有しないカルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステルCを含有していることが好ましい。
ポリエステルCのアルコール成分の好ましい態様は、ポリエステルAのアルコール成分と同様である。
ポリエステルCのカルボン酸成分において、ロジン化合物の種類、物性等、及びポリエステルCのカルボン酸成分中の含有量の好ましい態様は、ポリエステルAのカルボン酸成分と同様である。
ポリエステルCのカルボン酸成分は、炭素数6〜10の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有していないことが好ましく、含有していても、その含有量は、1モル%以下が好ましく、0.1モル%以下がより好ましく、0.01モル%以下がさらに好ましい。
ロジン化合物以外のカルボン酸成分は、炭素数6〜10の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有しないこと以外は、ポリエステルAのカルボン酸成分と同様であり、トナーの帯電安定性及び耐熱保存性を向上させる観点から、芳香族ジカルボン酸化合物及び芳香族トリカルボン酸化合物が好ましく、テレフタル酸及びトリメリット酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、トナーの帯電安定性、耐熱保存性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、ポリエステルCのカルボン酸成分中、50〜95モル%が好ましく、80〜95モル%がより好ましく、85〜95モル%がさらに好ましい。
芳香族トリカルボン酸化合物の含有量は、トナーの低温定着性、耐高温オフセット性を向上させる観点及び転移温度を向上させる観点から、ポリエステルCのカルボン酸成分中、3〜20モル%が好ましく、3〜15モル%がより好ましく、3〜6モル%がさらに好ましい。
なお、結着樹脂が複数のポリエステルCを含有する場合、上記の芳香族ジカルボン酸化合物及び芳香族トリカルボン酸化合物の含有量は、各ポリエステルCにおけるそれぞれの化合物の含有量と各ポリエステルCの重量分率の積の和によって求める。
ポリエステルCにおけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比、製造方法の好ましい態様は、ポリエステルAと同様である。
ポリエステルCのガラス転移温度は、トナーの低温定着性及び保存安定性を向上させる観点から、50〜80℃が好ましく、55〜65℃が好ましい。
結着樹脂が複数のポリエステルCを含有する場合は、各ポリエステルCのガラス転移温度と各ポリエステルCの重量分率の積の和が上記範囲内となることが好ましい。
ポリエステルCのガラス転移温度は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比等によって制御することができる。
ポリエステルCの酸価は、トナーの帯電安定性、耐熱保存性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、30mgKOH/g以下が好ましく、25mgKOH/g以下がより好ましい。
ポリエステルの酸価は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比、触媒量等の調整、反応温度や反応時間、反応圧力等の反応条件の選択によって制御することができる。
ポリエステルAの含有量は、粉砕時の粉砕圧を低減し、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点及びトナーの低温定着性、耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、結着樹脂中、51〜92重量%が好ましく、58〜80重量%がより好ましく、65〜73重量%がさらに好ましく、67〜71重量%がよりさらに好ましい。
ポリエステルBの含有量は、粉砕時の粉砕圧を低減し、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点及びトナーの低温定着性、耐熱保存性を向上させる観点から、結着樹脂中、4重量%以上であり、5重量%以上が好ましく、7重量%以上がより好ましい。また、粉砕時の粉砕圧を低減する観点及びトナーの低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂中、20重量%以下であり、15重量%以下が好ましく、13重量%以下がより好ましく、11重量%以下がさらに好ましい。これらの観点を総合すると、ポリエステルBの含有量は、結着樹脂中、4〜20重量%であり、5〜15重量%が好ましく、5〜13重量%がより好ましく、7〜11重量%がさらに好ましい。
ポリエステルAとポリエステルBの合計の含有量は、粉砕時の粉砕圧を低減し、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点及びトナーの低温定着性、耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、結着樹脂中、60重量%以上であることが好ましく、65〜95重量%がより好ましく、70〜90重量%がさらに好ましく、75〜85重量%がよりさらに好ましい。
ポリエステルCの含有量は、粉砕時の粉砕圧を低減し、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点及びトナーの低温定着性、耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、結着樹脂中、4〜29重量%であり、15〜27重量%が好ましく、18〜26重量%がより好ましく、20〜24重量%がさらに好ましい。
ポリエステルAとポリエステルCの合計の含有量は、粉砕時の粉砕圧を低減し、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点及びトナーの低温定着性、耐熱保存性を向上させる観点から、結着樹脂中、96重量%以下が好ましく、95重量%以下がより好ましく、93重量%以下がさらに好ましい。また、粉砕時の粉砕圧を低減する観点及びトナーの低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂中、80重量%以上が好ましく、85重量%以上がより好ましく、87重量%以上がさらに好ましく、89重量%以上がよりさらに好ましい。これらの観点を総合すると、ポリエステルAとポリエステルCの合計の含有量は、結着樹脂中、80〜96重量%が好ましく、85〜95重量%がより好ましく、87〜95重量%がさらに好ましく、89〜93重量%がよりさらに好ましい。
ポリエステルAとポリエステルCの重量比(ポリエステルA/ポリエステルC)は、粉砕時に粉砕圧を低減し、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点及びトナーの低温定着性、耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、30/70〜95/5が好ましく、50/50〜90/10がより好ましく、60/40〜85/15がさらに好ましく、70/30〜80/20がよりさらに好ましい。
結着樹脂は、本発明の効果が損なわれない範囲において、ポリエステルA、ポリエステルB及びポリエステルC以外の他の樹脂が含有されていてもよいが、ポリエステルA、ポリエステルB及びポリエステルCの合計の含有量は、粉砕時に粉砕圧を低減し、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点及びトナーの低温定着性、耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、結着樹脂中、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、95重量%以上がさらに好ましく、実質的に100重量%であることがよりさらに好ましい。他の結着樹脂としては、ポリエステルA、ポリエステルB及びポリエステルC以外のポリエステル、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等が挙げられる。
なお、本発明において、ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルをいう。
<着色剤>
本発明において、着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等を用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。粉砕時に粉砕圧を低減し、微粉量の発生を抑制し、粉砕分級収率を向上させる観点から、カーボンブラックが好ましい。
トナー中の着色剤の含有量は、トナーの印字濃度を向上させる観点及び定着性を向上させる観点から、結着樹脂100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましく、3〜8重量部がさらに好ましい。
本発明の方法により得られるトナーは、結着樹脂及び着色剤以外に、荷電制御剤、離型剤等を含有していてもよい。
<荷電制御剤>
荷電制御剤として、正電性荷電制御剤、負電性荷電制御剤のいずれも用いることができるが、カラートナーには色相を損なわない荷電制御剤を用いることが好ましい。一方、黒トナーに関しては有色の荷電制御剤も用いることができる。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」(以上、オリエント化学工業社製)、「CHUO CCA-3」(中央合成社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料;4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリエント化学工業社製)、「TP-415」(保土谷化学工業社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PXVP435」(クラリアント社製)等が挙げられる。
前記正帯電性荷電制御剤のなかでは、カラートナーには、色相を損なわない観点及びトナーの帯電量を適正にする観点から、4級アンモニウム塩化合物が好ましく、式(III):
で表される4級アンモニウム塩化合物がより好ましい。なお、式(III)で表される4級アンモニウム塩化合物の市販品としては、例えば、前記「ボントロンP-51」がある。
一方、黒トナーには、トナーの帯電量を適正にする観点からは、ニグロシン染料が好ましい。
ニグロシン染料は、一般に金属触媒存在下でのニトロベンゼンとアニリンとの縮重合により得られる多数の成分からなる黒色の混合物であり、その構造は十分に明らかにされていないが、樹脂酸等による変成品も含めて、市販のニグロシン染料としては、前記の「ボントロン N-01」、「ボントロン N-04」及び「ボントロン N-07」以外に、「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロン N-09」、「ボントロン N-11」、「ボントロン N-21」(以上、オリエント化学工業社製)、「ニグロシン」(池田化学社製)、「スピリットブラック No.850」、「スピリットブラック No.900」(以上、住友化学社製)等が挙げられる。
負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「ボントロンS-28」(オリエント化学工業社製)、「T-77」(保土谷化学工業社製)、「ボントロンS-34」(オリエント化学工業社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」(保土谷化学工業社製)等;銅フタロシアニン染料;サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、例えば「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-304」(以上、オリエント化学工業社製)等;ニトロイミダゾール誘導体;ベンジル酸ホウ素錯体、例えば、「LR-147」(日本カーリット社製)等;無金属系荷電調整剤、例えば「ボントロンF-21」、「ボントロンE-89」(以上、オリエント化学工業社製)、「T-8」(保土ヶ谷化学工業社製)等が挙げられる。
トナー中の荷電制御剤の含有量は、トナーの低温定着性を向上させる観点及び帯電量を適正にする観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.5〜8重量部が好ましく、1〜5重量部がより好ましい。
<離型剤>
離型剤としては、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、カルナウバワックス、モンタンワックス、サゾールワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いられていてもよい。
離型剤の融点は、トナーの低温定着性と耐高温オフセット性を向上させる観点から、60〜160℃が好ましく、60〜150℃がより好ましい。
離型剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、トナーの保存安定性を向上させる観点から、10重量部以下が好ましく、8重量部以下がより好ましく、7重量部以下がさらに好ましい。また、トナーの低温定着性と耐高温オフセット性を向上させる観点から、0.5重量部以上が好ましく、1.0重量部以上がより好ましく、1.5重量部以上がさらに好ましい。したがって、これらの観点を総合すると、離型剤の含有量は、0.5〜10重量部が好ましく、1.0〜8重量部より好ましく、1.5〜7重量部がさらに好ましい。また、トナーをオイルレス定着させる観点から、2.0重量部以上が好ましく、2.5重量部以上がより好ましく、3.0重量部以上がさらに好ましい。したがって、これらの観点を総合すると、離型剤の含有量は、2.0〜10重量部が好ましく、2.5〜8重量部より好ましく、3.0〜7重量部がさらに好ましい。
<他の成分>
本発明の製造方法により得られるトナーは、さらに、トナー粒子中に磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を適宜含有していてもよい。
<トナー製造方法>
本発明のトナーの製造方法は、本発明の効果を十分に発揮させる観点から、
工程1:少なくとも結着樹脂と着色剤とを含む成分を溶融混練して溶融混練物を得る工程、及び
工程2:得られた溶融混練物を粉砕し、分級する工程
を含む。具体的には、結着樹脂、着色剤、荷電制御剤、離型剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、溶融混練し、冷却後、粉砕、分級を行ってトナー粒子を製造することができる。
工程1における、少なくとも結着樹脂と着色剤を含む原料の溶融混練は、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、連続式オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができるが、混練の繰り返しや分散助剤の使用をしなくても、結着樹脂に荷電制御剤等のトナー原料を効率よく高分散させることができる観点から、ロールの軸方向に沿って設けられた供給口と混練物排出口を備えた連続式オープンロール型混練機を用いることが好ましい。
トナー原料は、予めヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等を用いて均一に混合した後、オープンロール型混練機に供することが好ましく、1箇所の供給口から混練機に供給してもよく、複数の供給口から分割して混練機に供給してもよい。操作の簡便性及び装置の簡略化の観点からは、1箇所の供給口から混練機に供給することが好ましい。
連続式オープンロール型混練機とは、混練部が密閉されておらず開放されているものをいい、混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができる。また、連続式オープンロール型混練機は、少なくとも2本のロールを備えた混練機であることが望ましく、本発明に用いられる連続式オープンロール型混練機は、周速度の異なる2本のロール、即ち、周速度の高い高回転側ロールと周速度の低い低回転側ロールとの2本のロールを備えた混練機である。本発明においては、荷電制御剤等のトナー原料の結着樹脂への分散性を向上させる観点から、高回転側ロールは加熱ロール、低回転側ロールは冷却ロールであることが望ましい。
ロールの温度は、例えば、ロール内部に通す熱媒体の温度により調整することができ、各ロールには、ロール内部を2以上に分割して温度の異なる熱媒体を通じてもよい。
高回転側ロールの原料投入側端部温度は100〜160℃が好ましく、低回転側ロールの原料投入側端部温度は35〜100℃が好ましい。
高回転側ロールは、原料投入側端部と混練物排出側端部の設定温度の差が、混練物のロールからの脱離防止の観点から、20〜60℃であることが好ましく、20〜50℃であることがより好ましく、30〜50℃であることがさらに好ましい。低回転側ロールは、原料投入側端部と混練物排出側端部の設定温度の差が、荷電制御剤等のトナー原料の結着樹脂への分散性を向上させる観点から、0〜50℃であることが好ましく、0〜40℃であることがより好ましく、0〜20℃であることがさらに好ましい。
高回転側ロールの周速度は、2〜100m/minであることが好ましく、10〜75m/minがより好ましく、25〜50m/minであることがさらに好ましい。低回転側ロールの周速度は1〜90m/minが好ましく、5〜60m/minがより好ましく、15〜30m/minがさらに好ましい。また、2本のロールの周速度の比(低回転側ロール/高回転側ロール)は、1/10〜9/10が好ましく、3/10〜8/10がより好ましい。
ロールの構造、大きさ、材料等は特に限定されず、ロール表面も、平滑、波型、凸凹型等のいずれであってもよいが、混練シェアを高めるために、各ロールの表面には複数の螺旋状の溝が刻んであることが好ましい。
工程2における溶融混練物の粉砕は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、溶融混練物を、1〜5mm程度に粗粉砕した後、さらに所望の粒径に微粉砕してもよい。
粉砕に用いられる粉砕機は特に限定されないが、例えば、粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、ハンマーミル、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられる。また、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、衝突板式ジェットミル、流動層式ジェットミル、回転型機械ミル等が挙げられる。溶融混練物の過粉砕を抑制する観点から衝突板式ジェットミルを用いることが望ましい。
分級に用いられる分級機としては、風力分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。分級工程の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよい。
<外添処理工程>
本発明のトナーの製造方法は、粉砕、分級工程後、得られたトナー粒子(トナー母粒子)をさらに外添剤と混合する工程を含むことが好ましい。
外添剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の有機微粒子が挙げられる。なかでも、シリカを併用することが好ましく、平均粒子径が20nm未満のシリカと20nm以上のシリカを、90/10〜10/90の重量比で併用することがさらに好ましい。
トナー母粒子と外添剤との混合には、回転羽根等の攪拌具を備えた混合機を用いることが好ましく、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速混合機が好ましく、ヘンシェルミキサーがより好ましい。
<トナーの体積中位粒径>
トナーの体積中位粒径(D50)は、トナーの画像品質を向上させる観点から、3〜15μmが好ましく、4〜12μmがより好ましく、6〜9μmがさらに好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナーが外添剤で処理されている場合には、トナー母粒子の体積中位粒径とする。
本発明の方法により得られるトナーは、そのまま一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して用いられる二成分現像用トナーとして、それぞれ一成分現像方式又は二成分現像方式の画像形成装置に用いることができる。
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、Q-100)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した。次に試料を昇温速度10℃/分で昇温し測定した。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
〔樹脂及びロジン化合物の酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
〔ロジン化合物の軟化点〕
(1) 試料の調製
ロジン10gを、170℃で2時間ホットプレートで溶融する。その後、開封状態で温度25℃、相対湿度50%の環境下で1時間自然冷却させ、コーヒーミル(National MK-61M)で10秒間粉砕する。
(2) 測定
フローテスター(島津製作所、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔ロジン化合物の引火点〕
JIS K2265の方法であるクリーブランド開放式引火点試験により求める。
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、DSC Q20)を用いて昇温速度10℃/分で200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/分で-10℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で180℃まで昇温し、そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度を離型剤の融点とした。
〔外添剤の平均粒子径〕
走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの平均値を平均粒子径とする。
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)を5重量%の濃度となるよう前記電解液に溶解させる。
分散条件:前記分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mlに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
[ロジン製造例1](ロジン化合物2)
ロジン化合物1(未精製トール油ロジン、ハリマ化成社製 HARTALL R-WW、軟化点73℃、酸価169mgKOH/g、引火点198℃)を精製し、ロジン化合物2を得た。
分留管、還流冷却器及び受器を装備した2000ml容の蒸留フラスコに1000gのロジン化合物1を加え、13.3kPaの減圧下で蒸留を行い、195〜250℃での留出分を主留分として採取し、ロジン化合物2を得た。ロジン化合物2の軟化点は75℃、酸価は166mgKOH/g、引火点は199℃である。
ロジン化合物2 20gをコーヒーミル(National MK-61M)で5秒間粉砕し、目開き1mmの篩いを通したものをヘッドスペース用バイアル(20ml)に0.5g測りとった。ヘッドスペースガスをサンプリングして、ロジン化合物2中の不純物を、ヘッドスペースGC−MS法により分析した結果を表1に示す。
〔ヘッドスペースGC−MS法の測定条件〕
A.ヘッドスペースサンプラー(Agilent社製、HP7694)
サンプル温度 : 200℃
ループ温度 : 200℃
トランスファーライン温度 : 200℃
サンプル加熱平衡時間 : 30min
バイアル加圧ガス : ヘリウム(He)
バイアル加圧時間 : 0.3min
ループ充填時間 : 0.03min
ループ平衡時間 : 0.3min
注入時間 : 1min
B.GC(ガスクロマトグラフィー)(Agilent社製、HP6890)
分析カラム : DB-1(60m-320μm-5μm)
キャリアー : ヘリウム(He)
流量条件 : 1ml/min
注入口温度 : 210℃
カラムヘッド圧 : 34.2kPa
注入モード : split
スプリット比 : 10:1
オーブン温度条件 : 45℃(3min)-10℃/min-280℃(15min)
C.MS(質量分析法)(Agilent社製、HP5973)
イオン化法 : EI(電子衝撃)法
インターフェイス温度 : 280℃
イオン源温度 : 230℃
四重極温度 : 150℃
検出モード : Scan 29-350m/s
[樹脂製造例1](樹脂A〜K)
表2に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、98℃の熱水を通した分留管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、室温から180℃まで約2時間掛けて昇温し、その後180℃から210℃まで10℃/hrで昇温し、さらに、210℃で反応率が90%に到達するまで反応させた。その後、無水トリメリット酸を添加して、210℃で1時間常圧にて反応させた後、20kPaにて所定の軟化点に達するまで反応を行い、樹脂A〜Kを得た。樹脂A〜Kの物性を表2に示す。なお、反応率とは、生成反応水量/理論生成水量×100の値をいう。
[樹脂製造例2](樹脂a〜e)
表3に示す原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、235℃で反応率が90%に到達するまで反応させた。その後、210℃に冷却して20kPaの減圧状態にて、所定の軟化点に達するまで反応を行い、樹脂a〜eを得た。樹脂a〜eの物性を表3に示す。
[トナー製造例]
実施例1〜14及び比較例1〜4(実施例11、12は参考例である)
表4に示す結着樹脂100重量部、着色剤「ECB-301」(大日精化社製、フタロシアニンブルー(P.B.15:3))4.0重量部 、正帯電性荷電制御剤「ボントロン P-51」(オリエント化学工業社製)2.0重量部、離型剤「三井ハイワックス NP055」(三井化学社製、融点:140℃)2.0重量部及び離型剤「サゾールワックス SP105」(加藤洋行社製、融点:117℃)1.0重量部をヘンシェルミキサーを用いて1分間混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
連続式二本オープンロール型混練機「ニーデックス」(三井鉱山社製、ロール外径:14cm、有効ロール長:80cm)を使用した。連続式二本オープンロール型混練機の運転条件は、高回転側ロール(フロントロール)周速度32.4m/min、低回転側ロール(バックロール)周速度21.7m/min、ロール間隙0.1mmであった。ロール内の加熱媒体温度及び冷却媒体温度は、高回転側ロールの原料投入側が135℃及び混練物排出側が90℃であり、低回転側ロールの原料投入側が35℃及び混練物排出側が35℃であった。また、原料混合物の供給速度は4kg/時間、平均滞留時間は約6分間であった。
混練物を冷却後、ハンマーミル(ホソカワミクロン社製)を用いて1mm程度に粗粉砕した。得られた粗粉砕物を衝突板式ジェットミル粉砕機IDS-2型(日本ニューマチック社製)にて、供給量を4.0kg/hrで、微粉砕後の体積中位粒径(D50)が6.5μmになる様に粉砕圧を調整して微粉砕を行った。また、微粉砕後のサンプル1gを採取し、後述する試験法により3μm個数%以下の微粉量を測定した。
その後、分級機DSX-2型(日本ニューマチック社製)にて分級し、体積中位粒径(D50)が7.0μmのトナー母粒子を得た。投入した粗砕粉物と粉砕・分級後に得たトナー量から粉砕分級収率を算出した。粉砕圧、3μm個数%以下の微粉量、粉砕分級収率の結果を表4に示す。
得られたトナー母粒子100重量部と、疎水性シリカ「TG-820F」(キャボット・スペシャリティー・ケミカルズ・インク社製、平均粒子径:8nm)0.5重量部、疎水性シリカ「NA50H」(日本アエロジル社製、平均粒子径:40nm)1.0重量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて2100r/min(周速度29m/sec)で3分間混合して、トナーを得た。
〔試験例1:3μm以下の粒子径を有する粒子の含有量の測定〕
下記の方法により、分級前の微粉砕物の3μm以下の粒子径を有する粒子の含有量(個数%)を測定した。
測定機:コールターマルチサイザーIII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液: エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)を5重量%の濃度となるよう前記電解液に溶解させて分散液を得る。
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から、3μm以下の粒子径を有する粒子の含有量(個数%)を求める。数値の小さい方がよい。
〔試験例2:低温定着性〕
未定着画像を取れる様に改造した、ブラザー工業製のプリンター「HL-2040」にトナーを充填し、2cm角のベタ画像の未定着画像を印刷した。オイルレス定着方式の「DL-2300」(コニカミノルタ社製)を改造した外部定着装置(定着ロールの回転速度を265mm/secに設定し、定着装置中の定着ロール温度を可変にした装置)にて、定着ロールの温度を100℃から230℃まで5℃ずつ上昇させながら、各温度でこの未定着画像の定着処理を行い、定着画像を得た。各定着温度で得られた画像を、500gの荷重をかけた砂消しゴムで5往復擦り、擦り前後の画像濃度比率(擦り後/擦り前×100)が最初に90%を超える温度を最低定着温度とし、低温定着性の指標とした。最低定着温度が低いほど、低温定着性に優れる。結果を表4に示す。
〔試験例3:耐熱保存性〕
20ml容のポリビンに、4gのトナーを入れた。トナーの入ったポリビンを、55℃、相対湿度80%の恒温恒湿槽に入れ、ポリビンの蓋をあけた状態で、48時間保存した。放置後のトナーの凝集度を測定し、耐熱保存性の指標とした。この数値が小さいほど、耐熱保存性に優れる。結果を表4に示す。
〔凝集度〕
凝集度は、パウダーテスタ(ホソカワミクロン社製)を用いて測定する。
150μm、75μm、45μmの目開きの篩を重ね、一番上にトナーを4g載せ、1mmの振動幅で60秒間振動させる。振動後、篩い上に残ったトナー量を測定し、下記の計算式を用いて凝集度の計算を行う。
以上の結果より、実施例1〜14のトナーは、比較例1〜4のトナーと比べて、粉砕時の粉砕圧が低く、微粉量の発生が抑制され、粉砕分級収率が高く、また、トナーの低温定着性及び耐熱保存性に優れている。