JP5822074B2 - 揺動鍛造装置 - Google Patents
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一方、円盤状の部品100を成形するための手法として、揺動鍛造方法が採用される場合もある。この揺動鍛造方法は冷間成形の一種であり、以下に説明するように、揺動部と昇降部とを備える揺動鍛造装置によって実現されるものである。ここで、揺動鍛造装置の揺動部は、例えば円錐状に角度を持った上型を有し、この上型を所定の中心点を基準に揺動回転駆動(いわゆる「すりこぎ運動」)させるものである。又、昇降部は上型と対向する下型を有し、この下型を上型に対し昇降させるものである。
図8(a)には、従来の揺動鍛造装置の上型12及び下型14と共に、仮想線で筒状部Waを有するワークWが示されている。図中の符号CVで示される軸線は、鉛直軸(下型14の鉛直方向中心軸)を表し、同図に符号C12で示される軸線は、上型12の揺動回転軸を示している。ところで、図示のような、筒状部Waを有する円盤状のワークWを対象として、揺動鍛造を行うために、ワークWの筒状部Waの内周面Wbに、図8(a)に示されるような、上型12の円錐台状の突起部12pを当接させると、突起部12pによる内周面Wbの拘束が不十分となる。その結果、突起部12pに拘束されない部分が、本来必要な形状の内周面Wcを損なうように、余肉部Wdが発生してしまうこととなる。よって、余肉部Wdを除去する後工程が必要不可欠となる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、筒状部を有するワークを対象として揺動鍛造を行うにあたり、金型の破損を招くことなく、所望の形状へと成形することを可能とすることにある。
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
筒状部を有するワークをセットした状態で前記第1型に対し離間接近し、前記ワークを前記第1型及び前記マンドレルに当接させる第2型とを含み、
前記マンドレルは、前記第1型と別体をなし、かつ、前記第1型の揺動運動時に前記ワークからの負荷によって生じる曲げモーメントを打ち消す方向へと、前記第1型の中心軸に対する相対角度を所定範囲内で変更可能に、前記第1型に支持されている揺動鍛造装置。
又、本項の発明においては、第1型の揺動運動と同期するように第1型の中心軸上に設けられたマンドレルを含んでおり、このマンドレルによりワークの筒状部の内周面を成形するものである。しかも、このマンドレルが第1型とは別体をなし、その中心軸が、第1型の揺動運動時にワークからの負荷、より具体的には、第1型の揺動運動に伴いワークに生じる素材流動に起因する曲げモーメントを打ち消す方向へと、第1型の中心軸に対する相対角度を所定範囲内で変更可能に、第1型に支持されている。すなわち、マンドレルは第1型に強固に拘束されることなく、第1型の揺動回転運動に伴いワークに生じる素材流動を受けて、マンドレルは適宜第1型に対する相対的な位置を変えて行くものである。このように、マンドレルが、第1型との相対角度を変えることから、ワークに生じる素材流動を受けても、マンドレルに大きな曲げモーメントが生じることもない。
しかも、成形中、ワークに生じる素材流動は、第1型の継続的な揺動運動により、ワークの円周方向に逐次移動していくものである。このため、マンドレルに生じる曲げモーメントを減少させるための、マンドレルの角度変化は、製品の精度に影響を及ぼさない限定的な範囲にのみ生じるものであっても十分となる。かかるマンドレルによりワークの筒状部の内周面を成形することで、マンドレルによるワークの筒状部の内周面の拘束は十分となり、かつ、マンドレルが第1型との相対角度を変えることによる精度悪化を来たすこともなく、必要な製品形状が得られることとなる。
前記第1型の前記貫通穴及び前記マンドレルの前記保持部に、前記第1型に対する前記マンドレルの、前記成形部方向への抜け止めとなる相補的な段差形状部と、前記第1型に対する前記マンドレルの相対的な角度変更の基点となる環状拘束部と、が形成されている揺動鍛造装置。
しかも、第1型の貫通穴及びマンドレルの保持部に形成された環状拘束部が、第1型に対するマンドレルの相対的な角度変更の基点になることで、マンドレルは、第1型の揺動運動に伴いワークに生じる素材流動を受けて、第1型の中心軸に対する相対角度を所定範囲内で変更可能となる。
前記第1型の貫通穴は、前記第2型に対向する端面とは反対側の端面から、前記マンドレルの前記保持部に対して、前記マンドレルの相対的な角度変更を許容する寸法を有する、大径部、直径徐変部及び小径部の順でつながり、該小径部が前記第2型と対向する端面へと至る揺動鍛造装置(請求項1)。
本項に記載の揺動鍛造装置は、マンドレルの保持部が、その基端側から大径部、直径徐変部及び小径部の順でつながる形状を有している。又、第1型の貫通穴は、第2型に対向する端面とは反対側の端面から第2型と対向する端面へと至るものであり、マンドレルの相対的な角度変更を許容する寸法を有している。
本項に記載の揺動鍛造装置は、マンドレルの保持部と第1型の貫通穴との、各小径部の軸方向の所定範囲のはめあいが、しまりばめとなるように設定され、このしまりばめによって環状拘束部が構成されることで、マンドレルは、環状拘束部を基点として、第1型の中心軸に対する相対角度を所定範囲内で変更可能となる。そして、マンドレルの保持部の、小径部の先端側の成形部により、ワークの筒状部の内周面の拘束は十分となり、かつ、マンドレルが第1型との相対角度を変えることによる精度悪化を来たすこともなく、必要な製品形状が得られることとなる。
なお、環状拘束部を構成する、マンドレルの保持部と第1型の貫通穴との、各小径部の軸方向の所定範囲に設定される、しまりばめとなる寸法公差については、両者の相対的な寸法関係によるものであることから、第1型の貫通穴側を、小径寄りの寸法公差に設定しても、マンドレルの保持部側を大径寄りの寸法公差に設定してもよいものである。又、環状拘束部の所定幅についても、第1型に対するマンドレルの相対的な角度変更が、必要な角度範囲に収まる幅に設定されるものである。又、環状拘束部を構成する軸方向の所定範囲については、例えば、第1型に対するマンドレルの相対的な角度変更の基点をどの位置にするかにより、適切に設定されるものである。
本項に記載の揺動鍛造装置は、環状拘束部が、第1型の貫通穴の、第2型と対向する端面から所定幅の範囲に形成されていることで、ワークの素材流動が第1型の貫通穴及びマンドレルの保持部の間の隙間へと侵入して、バリを生じることを阻止するものとなる。
このマンドレル20は、後述の如く上型12とは別体をなすものであり、上型12に形成された貫通穴12aに対して上方から挿入されている。そして、貫通穴12aの上端側開口が板状のスペーサ19によって閉じられることで、マンドレル20の基端20aが、貫通穴12aの上方へと脱落することを防いでいる。又、マンドレル20の基端20aとスペーサ19との間には、必要に応じ、後述する上型12の中心軸に対する相対角度を所定範囲内で変更可能とするために必要なだけの、隙間が設けられている。そして、図示の例では、マンドレル20の先端20bに、揺動回転の中心点Pが位置している。
図3に示される、マンドレル20は上型12と別体をなし、その中心軸C20が、上型12の揺動運動時にワークWからの負荷F(図5参照)によって生じる曲げモーメントM(図8(b)参照)を打ち消す方向へと、上型12の中心軸C12に対する相対角度を所定範囲内で変更可能に、上型12に支持されている。ここで、マンドレル20は、上型12に形成された貫通穴12aから突出してワークWの筒状部Waの内周面に当接する成形部20fと、上型12の貫通穴12a内に留まる保持部20mとを含むものである。より具体的には、保持部20mは、マンドレル20の基端20a側から大径部20mL、直径徐変部20mM及び小径部20mSの順でつながり、更に、これら各部がアール形状Rによってなだらかにつながっている。そして、小径部20mMの先端20b側によって、成形部20fが構成されている。図示の例では、直径徐変部20mMは円錐台状をなしているが、例えば、球面状に直径が徐変する形状を採用することも可能である。
このような各部直径寸法により、上型12の貫通穴12a及びマンドレル20の保持部20mには、上型12に対するマンドレル20の、成形部20f方向への抜け止めとなる相補的な段差形状部が形成されているものである。なお、大径部12aL、直径徐変部12aM及び小径部12aSは、マンドレル20の相対的な角度変更を許容するための、隙間が生じる寸法を有するものである。
又、環状拘束部22を構成する軸方向の所定範囲については、上型12に対するマンドレル20の相対的な角度変更の基点をどの位置にするかにより定まるものである。図示の例では、上型12の貫通穴12aの、下型14と対向する端面12bから所定幅の範囲に、帯状小径部12gが設定されている。又、環状拘束部22の所定幅についても、上型12に対するマンドレル20の相対的な角度変更が、必要な角度範囲となるように設定されるものである。
まず、本発明の実施の形態によれば、ワークWを揺動鍛造装置10の下型14にセットした状態で、下型14を上昇させて、揺動回転運動する上型12に対しワークWを当接させることで、上型12の揺動回転運動に伴い、下型14にセットされたワークWの成形が円周方向に逐次進行していくものである。
すなわち、マンドレル20は上型12に強固に拘束されることなく、上型12の揺動回転運動に伴いワークWに生じる素材流動を受けて、図5に点線で示されるように、マンドレル20は適宜上型12に対する相対的な位置を変えて行くものである。そして、マンドレル20が、上型12との相対角度を変えることから、ワークWに生じる素材流動を受けても、マンドレル20に大きな曲げモーメントMが生じることもなく、上型12又はマンドレル20の破損を防ぐことができる。なお、図5には、参考として、従来の上型12に固定されたマンドレル12p’が実線で示されている。又、便宜上、図5では、マンドレル20の上型12との相対角度の変化を、誇張して示している。
しかも、上型12の貫通穴12a及びマンドレル20の保持部20mに形成された環状拘束部22(図2(b)、図4参照)が、上型12に対するマンドレル20の相対的な角度変更の基点になることで、マンドレル20は、上型12の揺動運動に伴いワークWに生じる素材流動を受けて、上型12の中心軸に対する相対角度を所定範囲内で変更することを可能とするものである。
そして、マンドレル20の保持部20mと上型12の貫通穴12aとの、各小径部20mS、12mSの軸方向の所定範囲のはめあいが、しまりばめとなるように設定され、このしまりばめによって環状拘束部22が構成されることで、マンドレル20は、上型12の揺動運動に伴いワークWに生じる素材流動を受けて、上型12の中心軸に対する相対角度を所定範囲内で変更することが可能となるものである。
Claims (3)
- 所定の中心点を基準に揺動回転する第1型と、該第1型の揺動運動と同期するように前記第1型の中心軸上に設けられたマンドレルと、
筒状部を有するワークをセットした状態で前記第1型に対し離間接近し、前記ワークを前記第1型及び前記マンドレルに当接させる第2型とを含み、
前記マンドレルは、前記第1型と別体をなし、かつ、
前記第1型に形成された貫通穴から突出して前記ワークの筒状部の内周面に当接する成形部と、前記第1型の貫通穴内に留まる保持部とを含み、
前記第1型の前記貫通穴及び前記マンドレルの前記保持部に、前記第1型に対する前記マンドレルの、前記成形部方向への抜け止めとなる相補的な段差形状部と、前記第1型に対する前記マンドレルの相対的な角度変更の基点となる環状拘束部と、が形成されており、
前記マンドレルの前記保持部は、その基端側から大径部、直径徐変部及び小径部の順でつながり、該小径部の先端側に前記成形部が構成されており、
前記第1型の貫通穴は、前記第2型に対向する端面とは反対側の端面から、前記マンドレルの前記保持部に対して、前記マンドレルの相対的な角度変更を許容する寸法を有する、大径部、直径徐変部及び小径部の順でつながり、該小径部が前記第2型と対向する端面へと至り、
前記第1型の揺動運動時に前記ワークからの負荷によって生じる曲げモーメントを打ち消す方向へと、前記第1型の中心軸に対する相対角度を所定範囲内で変更可能に、前記第1型に支持されていることを特徴とする揺動鍛造装置。 - 前記マンドレルの前記保持部と前記第1型の前記貫通穴との、前記各小径部の軸方向の所定範囲のはめあいが、しまりばめとなるように設定されて、前記環状拘束部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の揺動鍛造装置。
- 前記環状拘束部が、前記第1型の貫通穴の、前記第2型と対向する端面から所定幅の範囲に形成されていることを特徴とする請求項2記載の揺動鍛造装置。
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