JP5855529B2 - リング材の熱間圧延方法 - Google Patents
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Description
このように、大型のリング材を製造する際に用いられるリング圧延機は、円筒状の圧延材を回転させるキングロールと、このキングロールと対面し、且つ圧延材を圧下するマンドレルロールと、圧延材の真円度を維持し、且つ圧延材が水平方向に移動しないように保持するセンタリングロールと、圧延材が圧延されることによって軸心方向(垂直方向)に移動しないように保持するアキシャルロールとで構成されている。製造するリング材がその外周面に凸部や凹部を備える「異形リング材」の場合、キングロール及び/又はマンドレルロールは、その表面に突起を有したプロファイルで構成されている。
ところが、異形リング材を製造すべく、突起形状を有したプロファイルを備えたキングロール及び/又はマンドレルロールで構成されたリング圧延機を用い、上記の制御方法でリング圧延を行った場合、目標の形状や外径寸法を得ることが困難なことがあった。
って斜め方向に繰り返し挿入されることになり、この圧延材が上下方向に移動してしまう問題も生じる虞がある。さらに、圧延材が上下方向に大きく移動することにより、圧延材の外周面に形成された突起形状が潰れてしまう問題も生じるようになる。その結果、良好な寸法精度を有した異形リング材の製造が困難となる。
本発明に係るリング材の熱間圧延方法は、リング状の圧延材を周方向に回転させるキングロールと、当該キングロールと対面し且つ前記圧延材を半径方向に圧下するマンドレルロールとを有し、前記キングロール及び/又はマンドレルロールがロール軸心方向に沿って非対称のプロファイル形状を備えているリング圧延機を用いて、軸心方向に1つ以上の突起が外周面に形成されている異形リング材を熱間で圧延するリング材の熱間圧延方法であって、圧延初期における前記キングロールと圧延材との排除面積を、圧延材の軸心方向に沿った中央より上部の排除面積A1と下部の排除面積A2とに分けて算出し、算出された上部の排除面積A1と、下部の排除面積A2との値を用いて、前記キングロールと圧延材との排除面積の比(A1/A2)を算出し、前記排除面積の比(A1/A2)が、式(1)を満たし、前記圧延初期とは、前記キングロールと圧延材の接触長さが、前記圧延材の軸心方向に沿って0%より大きく10%以下となっている圧延状態であることを特徴とする。
図1に示すように、本実施形態のリング材の熱間圧延方法に用いられるリング圧延機1は、リング状の圧延材W(元材)を所定の形状及び外径寸法のリング材Z(圧延製品)に圧延するものである。
るようになっており、周方向に伸びた圧延材Wに曲げを与えることで、リング材Zの真円度の調整を行っている。また、センタリングロール4の径内方向への圧下により、リング材Zが水平方向へ移動しないように抑制されている。
まず、チタン合金などの鋳片を加熱炉で所定の温度(600℃〜1100℃)まで加熱する。加熱された鋳片は、上下一対に配置された金型を備えたプレス機に導入される。加熱された鋳片は、上側にある金型の圧下によって、予め決定された板厚及び外径のディスク状の圧延材Wに形成される。さらに、ディスク状に形成された圧延材Wの中央部を穿孔し、予め決定された内径に拡張することで、圧延材Wがディスク形状からリング形状に加工される。
このリング圧延機1では、この圧延材Wの外周面にキングロール2を接触させ、圧延材Wの内周面にマンドレルロール3を接触させる。リング圧延機1に設置されたリング状の圧延材Wは、キングロール2の回転駆動により回転し、キングロール2の対面に備えられたマンドレルロール3をキングロール2に近づけることで、圧延材Wは圧下され圧延が進む。目標の圧延精度になるまで、圧延材Wを回転させながら圧延を行うリング圧延を繰り返す。圧延されたリングは、熱処理後、製品検査を経て、最終の圧延製品となる。
ところで、リングの圧延が進むにつれて、圧延材Wの外周面には、上下非対称のプロファイルを有したキングロール2により、突起が形成される。この上下非対称のプロファイルによる圧延は、圧延中においてのキングロール2の圧下率が上下で異なり、それに伴って材料流れの状況が異なるものとなり、リング材Zが上方あるいは下方に向かって開くようなテーパ形状(ラッパ形状)に形成されることがある。このようなテーパ形状が形成されることによって、所望される円筒度(軸心方向に真直な円筒)が得られず、最終製品である異形リング材Zの圧延精度に大きく影響を与える。また、テーパ形状のまま圧延されると、この圧延材Wが上下に移動してしまい、リングの製造が困難になってしまう虞もある。
以下、本発明のリング材の熱間圧延方法について詳しく説明する。
本発明のリング材の熱間圧延方法は、圧延初期において、圧延材Wとキングロール2との排除面積を、圧延材Wの軸心方向に沿った中央より上部の排除面積A1と下部の排除面積A2とに分けて算出し、算出された上部の排除面積A1と、下部の排除面積A2との値を用いて、キングロール2と圧延材Wとの排除面積の比(A1/A2)を算出し、その算出した排除面積の比(A1/A2)に基づいて、キングロール2と圧延材Wとの圧下状態を設定する。
の接触長さ(b,c)とが示されており、これらを合計した接触長さ(a+b+c)が圧延材Wの高さhに対して、0%より大きく10%以下(0.1h以下)の範囲でキングロール2と圧延材Wが接触した状態が示されている。
次に、圧延初期での接触長さが10%以下の範囲内におけるキングロール2と圧延材Wとの接触面積を算出する。このとき、圧延材Wの軸心方向に対して中央より上部側と下部側に分けて排除面積を算出する。算出された排除面積の内、上部側の排除面積をA1(接触長さaの範囲)とし、下部側の排除面積をA2(接触長さb,cの範囲)とする。算出した上部側の排除面積A1と、下部側の排除面積A2との比(A1/A2)を算出する。算出された排除面積の比が式(1)の範囲を満たすように設定する。排除面積の比が、式(1)の範囲を満たすことで、圧延中に発生する圧延材Wのテーパ形状を抑制することができる。
また、圧延材Wの軸心方向に沿った高さhと、この圧延材Wの半径方向の厚みdとの比が、式(3)の範囲を満たすように、圧延を行うようにする。
[実験例]
以下、本発明のリング材の熱間圧延方法に基づき、異形リング材Zを圧延した実験例について、述べる。
表1に示すように、リング状の圧延材Wの上方への移動量を目視にて観察して記録し、5.0mmより大きく移動した場合を不可「×」とし、3.0mmより大きく5.0mmより小さく移動した場合を可「△」とし、0mmより大きく3.0mmより小さく移動した場合を良好「○」とし、0mm(ほとんど移動せず)の場合を最良「◎」として、リング状の圧延材Wの移動量の評価、即ち、圧延材Wの圧延安定性(テーパ形状の有無)の評価を行った。
明らかなテーパ形状が発生していることを確認している。
排除面積の比(A1/A2)が0.7及び1.3の場合、リング状の圧延材Wが上方へ3.0mmより大きく5.0mmより小さい範囲で浮き上がることが確認され、リング材Zの製造がやや困難な状況であったことを示している。
表1の排除面積の比(A1/A2)が0.9〜1.1の場合には、リング圧延において、圧延中のリング状の圧延材Wが上方への移動がほとんど見られなかった(0mm)。そのため、異形リング材Zの製造が良好な状況で行われ、且つ製造されたリング材Zにはテーパ形状が全く発生していなかった。
2 キングロール
3 マンドレルロール
4 センタリングロール
5 アキシャルロール
W 圧延材
Z リング材(異形リング)
Claims (3)
- リング状の圧延材を周方向に回転させるキングロールと、当該キングロールと対面し且つ前記圧延材を半径方向に圧下するマンドレルロールとを有し、前記キングロール及び/又はマンドレルロールがロール軸心方向に沿って非対称のプロファイル形状を備えているリング圧延機を用いて、軸心方向に1つ以上の突起が外周面に形成されている異形リング材を熱間で圧延するリング材の熱間圧延方法であって、
圧延初期における前記キングロールと圧延材との排除面積を、圧延材の軸心方向に沿った中央より上部の排除面積A1と下部の排除面積A2とに分けて算出し、
算出された上部の排除面積A1と、下部の排除面積A2との値を用いて、前記キングロールと圧延材との排除面積の比(A1/A2)を算出し、
前記排除面積の比(A1/A2)が、式(1)を満たし、
前記圧延初期とは、前記キングロールと圧延材の接触長さが、前記圧延材の軸心方向に沿って0%より大きく10%以下となっている圧延状態である
ことを特徴とするリング材の熱間圧延方法。
- 前記接触面積の比が、式(1)に代えて、式(2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のリング材の熱間圧延方法。
- 前記圧延材の軸心方向に沿った高さhと、当該圧延材の半径方向の厚みdとの比が、式(3)を満たすように、圧延を行うことを特徴とする請求項1に記載のリング材の熱間圧延方法。
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