以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は理解を容易にするため一部を誇張して描いており、寸法比率は説明のものとは必ずしも一致しなくてもよい。
本実施形態の製造方法は、一方面上に回路を有する半導体ウェハの他方面上に溶媒を含む接着剤組成物を塗布する塗布工程と、接着剤組成物の前記溶媒を除去して接着剤層を形成する接着剤層形成工程と、接着剤層を形成した前記半導体ウェハを切断して接着剤層付半導体チップを得る切断工程と、を有する。以下、各工程の詳細を説明する。
塗布工程において、半導体ウェハの回路裏面に接着剤組成物を塗布する。本明細書において、半導体ウェハの回路が形成された面を回路面(一方面)といい、その裏面を回路裏面(他方面)という。
半導体ウェハとしては、周知の製造方法で表面に種々の半導体素子を集積して回路が形成されたものが好適に用いられる。半導体ウェハは、回路裏面を機械的に研削して厚さを薄く(薄厚化)したものでもよい。この切削は、例えば、図1に示すように、半導体ウェハの回路面12上にはく離可能な粘着テープ(バックグラインドテープ20)を積層した後、回路裏面14を裏面研削装置(バックグラインダ30)で所定の厚さに研削することにより行われる。
塗布工程は、ワニス状の接着剤組成物を、半導体ウェハ10の回路裏面14にスピンコート、印刷法又はインクジェット法などで塗布することにより行う。
続いて、図2に示すように、接着剤層形成工程において、半導体ウェハ10の回路裏面14に塗布した接着剤組成物の溶媒を除去して接着剤層40を形成する。溶媒の除去は、特に制限されないが、例えば加熱により行うことができる。以上の工程により、接着剤層付半導体ウェハ50が得られる。
続いて、切断工程において、接着剤層付半導体ウェハ50をダイシングにより切断し、個々の接着剤層付半導体チップ70に個片化する。切断工程は周知の方法で行われてよいが、例えば次のようにして行うことができる。
図3(a)に示すように、はく離可能な粘着剤テープ(ダイシングテープ60)を、接着剤層付半導体ウェハ50の接着剤層40の上に積層し、図3(b)に示すように、バックグラインドテープ20をはく離する。このとき、まず、接着剤層40にダイシングテープ60を積層し、その後、バックグラインドテープ20をはく離することが好ましい。これによって、薄膜化したウェハのクラックを防ぐことが可能となり、また、薄膜化したウェハが反ることを防ぐことができる。
続いて、図4(a)に示すように、周知の方法により、接着剤層付半導体ウェハ50をダイシングラインに沿って切断し、個々の接着剤層付半導体チップ70に個片化する。接着剤層付半導体チップ70は、半導体チップ16と接着剤層40とからなる。
接着剤層付半導体チップ70への個片化は、図4(b)に示すように、ダイシングテープ60を積層せずに、接着剤層付半導体ウェハ50をダイシングラインに沿って切断することによって行ってもよい。以上のようにして、接着剤層付半導体チップ70を得ることができる。
その後、個々の接着剤層付半導体チップ70をダイシングテープ60又はバックグラインドテープ20からはく離することにより、接着剤層付半導体チップ70を得ることができる。例えば、ピックアップ装置を用いることで、接着剤層付半導体チップ70をピックアップし、被着体に接着することができる。
図5は、本実施形態の半導体装置を示す断面図である。図5に示す半導体装置200は、接着剤層付半導体チップ70が、接着剤層40を介して支持部材100に接着され、接着剤層付半導体チップ70の接続端子(図示せず)がワイヤ80を介して外部接続端子(図示せず)と電気的に接続され、更に、封止材110によって封止された構成を有している。
図6は、別の実施形態の半導体装置を示す断面図である。図6に示す半導体装置210は、一段目の接着剤層付半導体チップ70aが接着剤層40aを介して端子90が形成された支持部材100に接着され、接着剤層付半導体チップ70aの上に接着剤層付半導体チップ70bが接着剤層40bを介して接着され、全体が封止材110によって封止された構成を有している。接着剤層付半導体チップ70a及び接着剤層付半導体チップ70bの接続端子(図示せず)は、それぞれワイヤ80を介して外部接続端子(図示せず)と電気的に接続されている。
図5に示す半導体装置は、接着剤層付半導体チップ70を支持部材100に載せ、加熱圧着して両者を接着させ(加熱圧着工程)、その後ワイヤボンディング工程、及び必要に応じて封止材による封止工程などの工程を経ることにより製造することができる。
図6に示す半導体装置は、接着剤層付半導体チップ70a及び70bを支持部材100に載せ、加熱圧着して接着させ、その後ワイヤボンディング工程、必要に応じて封止材による封止工程などの工程を経ることにより製造することができる。
続いて、本実施形態の接着剤層付半導体チップの製造方法において好適に用いられる接着剤組成物を説明する。
接着剤組成物は、(A)熱可塑性樹脂(B)熱硬化性樹脂(C)加熱により除去することが可能な溶剤を含むことが好ましい。
(A)熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、ポリウレタンアミドイミド樹脂、シロキサンポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、又はそれらの共重合体の他、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエ−テルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエ−テルケトン樹脂、重量平均分子量が10万〜100万の(メタ)アクリル共重合体などからなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の樹脂であり、中でも分子中にイミド骨格を持つ熱可塑性樹脂が密着性が高くなる点で他の樹脂よりも好ましく、その中でもポリイミド樹脂が更に好ましく用いられる。
上記のポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを公知の方法で縮合反応させて得ることができる。すなわち、有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを等モル又は、必要に応じて、前記の組成比を、テトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対して、ジアミンの合計0.5〜2.0mol、好ましくは、0.8〜1.0molの範囲で調整(各成分の添加順序は任意)し、反応温度80℃以下、好ましくは0〜60℃で付加反応させる。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が生成する。なお、接着剤組成物の諸特性の低下を抑えるため、上記の酸二無水物は無水酢酸で再結晶精製処理されることが好ましい。
なお、前記のテトラカルボン酸二無水物とジアミンの組成比については、テトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対して、ジアミンの合計が2.0molを超えると、得られるポリイミド樹脂中に、アミン末端のポリイミドオリゴマーの量が多くなる一方で、前記ジアミンの合計が0.5molを下回ると、酸末端のポリイミドオリゴマーの量が多くなり、ポリイミド樹脂の重量平均分子量が過度に低くなり、接着剤層の耐熱性などの特性が低下傾向にあるため、好ましくない。テトラカルボン酸二無水物とジアミンの組成比を上記の範囲内で調整することによって、ポリイミド樹脂の分子量を調整することができる。
使用する酸二無水物は、使用前に、モノマーの融点よりも10〜20℃低い温度で12時間以上、加熱乾燥する、又は無水酢酸で再結晶精製処理することが好ましく、原料の純度の指標として、示差走査熱量測計(DSC)による吸熱開始温度と吸熱ピーク温度の差が10℃以内であることが好ましい。なお、上記の吸熱開始温度及び吸熱ピーク温度とは、例えば、DSC(パーキンエルマー社製DSC−7型)を用いて、サンプル量5mg、昇温速度5℃/min、測定雰囲気:窒素、の条件で測定したときの値を用いることができる。
なお、上記ポリアミド酸は、50〜80℃の温度で加熱して解重合させることによって、その分子量を調整することもできる。
ポリイミド樹脂は、上記反応物(ポリアミド酸)を脱水閉環させて得ることができる。脱水閉環は、加熱処理する熱閉環法と、脱水剤を使用する化学閉環法で行うことができる。
ポリイミド樹脂の原料として用いられるテトラカルボン酸二無水物としては特に制限は無く、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’、3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ−〔2,2,2〕−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2、−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2、−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、4,4’,−オキシジフタル酸二無水物、下記一般式(I)で表されるテトラカルボン酸二無水物、下記構造式(II)で表されるテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
下記一般式(I)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、例えば、無水トリメリット酸モノクロライド及び対応するジオールから合成することができ、具体的には1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)などが挙げられる。これらの中でも、優れた耐湿信頼性を付与できる点で、4,4’,−オキシジフタル酸二無水物、又は下記構造式(II)で示されるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。上述のテトラカルボン酸二無水物は1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
上記のポリイミド樹脂の原料として用いられるジアミンとしては特に制限はなく、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,5−ジアミノ安息香酸などの芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、下記一般式(III)で表される脂肪族エーテルジアミンを含むことが好ましい。
[式中、Q
1、Q
2、及びQ
3は、各々独立に炭素数1〜10のアルキレン基を示し、mは2〜80の整数を示す。]
また、上記一般式(III)で表されるジアミンとしては、具体的には下記構造式の脂肪族ジアミンが挙げられる。
上記一般式(III)で表されるジアミンは、下記一般式(IV)の脂肪族エーテルジアミンであってもよい。
上記一般式(III)で表されるジアミンは、下記一般式(V)の脂肪族ジアミンであってもよく、具体的には1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサンなどであってもよい。
上記一般式(III)で表されるジアミンは、下記一般式(VI)で表されるシロキサンジアミンであってもよく、下記一般式(VI)中、pが1のとき、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサンなどが挙げられ、pが2のとき、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサンなどのシロキサンジアミンが挙げられる。これらのジアミンは1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
[式中、Q
4及びQ
9は各々独立に炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、Q
5、Q
6、Q
7、及びQ
8は各々独立に炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、pは1〜5の整数を示す。]
また、上記のポリイミド樹脂は単独又は必要に応じて2種以上を混合(ブレンド)してもよい。
本実施形態の製造方法によって得られる接着剤層付半導体チップの接着剤層の被着体への圧着可能温度は、回路表面にダメージを与えない点から、20〜100℃が好ましく、20〜80℃がより好ましく、20〜60℃が更に好ましい。この温度での圧着を可能にするためには、接着剤層のガラス転移温度(Tg)が10〜100℃であることが好ましく、そのためには、ポリイミド樹脂のTgを10〜100℃に調整することが好ましく、10〜60℃がより好ましく、20〜60℃が更に好ましい。前記ポリイミド樹脂のTgが100℃を超えると、圧着可能温度が100℃を超える可能性が高くなる場合があり、Tgが10℃を下回ると、接着剤層表面の粘着力が強くなり、取り扱い性が悪くなる場合がある。
また、ポリイミド樹脂の組成を決定する際には、そのTgが10〜100℃となるように設計することが好ましく、ポリイミド樹脂の原料であるジアミンとして、下記一般式(VII)で表される脂肪族エーテルジアミンを用いることが好ましい。具体的には、ポリエーテルアミンD−230、D−400、D−2000(いずれも商品名、BASF製)などのポリオキシアルキレンジアミンなどの脂肪族ジアミンが挙げられる。これらのジアミンは、全ジアミンの1〜80モル%であることが好ましく、5〜60モル%であることがより好ましい。1モル%を下回ると、低温接着性、熱時流動性を付与することが困難になる場合があり、80モル%を超えると、ポリイミド樹脂のTgが低くなり過ぎて、接着剤層の取り扱い性が損なわれる場合がある。
上記のポリイミド樹脂の重量平均分子量は20000〜100000の範囲内であることが好ましく、30000〜80000であることがより好ましく、30000〜60000であることが更に好ましい。重量平均分子量がこの範囲にあると、接着剤層を形成したときに良好な成膜性、可とう性、及び破断性を得ることができ、また、良好な熱時流動性を得ることができるため、ダイシング性と被着体に存在する段差への良好な埋込性を両立できる。上記の重量平均分子量が20000より小さいと、膜形成性が悪くなる場合があり、また、靭性が小さくなる場合があり、100000を超えると、破断性と熱時流動性が低下する場合があり、ダイシング性、すなわちダイシング時の延性による切れ残りが増大したり、被着体の凹凸に対する埋め込み性が低下する場合がある。
上記ポリイミド樹脂のTg、及び重量平均分子量を上記の範囲内とすることにより、被着体への圧着温度を低く抑え、回路面のダメージを抑制することができるだけでなく、半導体素子の反りの増大を抑制できる。また、ダイシング時の良好な切断性を確保できる。また、上記被着体が有機基板である場合、ダイボンディング時の加熱温度による有機基板の吸湿水分の気化を抑制でき、気化によるダイボンディング材層の発泡を抑制できる。
本明細書において、ガラス転移温度(Tg)とは、接着剤組成物をフィルム化した場合の主分散ピーク温度である。この主分散ピーク温度は、レオメトリックス製粘弾性アナライザーRSA−2を用いて、フィルムサイズ長さ35mm×幅10mm×厚さ40μm、昇温速度5℃/分、周波数1Hz、測定温度−150〜300℃の条件で測定し、Tg付近におけるtanδピーク温度である。また、重量平均分子量とは、高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製C−R4A)を用いて、ポリスチレン換算で測定したときの重量平均分子量である。
上記の(B)熱硬化性樹脂は、熱により架橋反応を起こす反応性化合物からなる成分であれば特に限定されることはなく、例えば、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、マレイミド樹脂、アリルナジイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、レゾルシノールホルムアルデヒド樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、ポリイソシアネート樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含有する樹脂、トリアリルトリメリタートを含有する樹脂、シクロペンタジエンから合成された熱硬化性樹脂、芳香族ジシアナミドの三量化による熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリイミド樹脂との組み合せにおいて、高温での優れた接着力を持たせることができる点で、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、及びアリルナジイミド樹脂が好ましい。なお、これら熱硬化性樹脂は1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
上記の熱硬化性樹脂を使用する場合、その含有量は、低アウトガス性、フィルム形成性(靭性)、熱時流動性、さらには熱硬化による高温時の高い接着力を有効に付与できる点で、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対して、1〜200重量部が好ましく、10〜100重量部がより好ましい。
上記の熱硬化性樹脂の硬化のために、硬化剤や触媒を使用することができ、必要に応じて硬化剤と硬化促進剤、又は触媒と助触媒を併用することができる。上記硬化剤及び硬化促進剤の添加量、及び添加の有無については、後述する望ましい熱時流動性、及び硬化後の耐熱性を確保できる範囲で調整する。
好ましい熱硬化性樹脂の一つであるエポキシ樹脂としては、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を含むものがより好ましく、硬化性や硬化物特性の点からフェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂が極めて好ましい。このような樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミンなどが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、これらのエポキシ樹脂には不純物イオンである、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン、特に塩素イオンや加水分解性塩素などを300ppm以下に低減した高純度品を用いることがエレクトロマイグレーション防止や金属導体回路の腐食防止のために好ましい。
(B)熱硬化性樹脂として上記のエポキシ樹脂を使用する場合には、必要に応じて硬化剤を使用することもできる。硬化剤としては、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、第3級アミンなどが挙げられ、これらの中でもフェノール系化合物が好ましく、分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物がより好ましい。このような化合物としては、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、t−ブチルフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジェンクレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジェンフェノールノボラック樹脂、キシリレン変性フェノールノボラック樹脂、ナフトール系化合物、トリスフェノール系化合物、テトラキスフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ポリ−p−ビニルフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂などが挙げられる。これらの中で、数平均分子量が400〜1500の範囲内のものが好ましい。これにより、半導体装置組立の際の加熱時に、半導体素子又は装置などの汚染の原因となるアウトガスを有効に低減できる。なお、硬化物の耐熱性を確保するためにも、これらのフェノール系化合物の配合量を、エポキシ樹脂のエポキシ当量と、フェノール系化合物のOH当量の当量比が、0.95〜1.05:0.95〜1.05となるように調整する。
また、必要に応じて、硬化促進剤を使用することもできる。硬化促進剤としては、熱硬化性樹脂を硬化させるものであれば特に制限はなく、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレートなどが挙げられる。
好ましい(B)熱硬化性樹脂の一つであるマレイミド樹脂としては、分子内にマレイミド基を2個以上含む化合物が好ましく、下記一般式(VIII)で表されるビスマレイミド樹脂、又は、下記一般式(IX)で表されるノボラック型マレイミド樹脂などが挙げられる。
[式中、R
5は芳香族環及び/又は直鎖、分岐若しくは環状脂肪族炭化水素を含む2価の有機基を示す。]
上記一般式(VIII)中のR5は、芳香族環及び/又は直鎖、分岐若しくは環状脂肪族炭化水素を含む2価の有機基であれば特に限定されることはないが、好ましくは、ベンゼン残基、トルエン残基、キシレン残基、ナフタレン残基、直鎖、分岐、若しくは環状アルキル基、又はこれらの混合基が挙げられ、更に好ましくは下記構造の2価の有機基が挙げられる。
上記一般式(VIII)中のR5としては、上記の有機基の中でも、接着剤層の硬化後の耐熱性及び高温接着力を付与できる点で、下記構造式(X)のビスマレイミド樹脂、及び/又は下記一般式(XI)のノボラック型マレイミド樹脂が好ましく用いられる。
上記マレイミド樹脂の硬化のために、アリル化ビスフェノールA、シアネートエステル化合物などを併用することができ、また、過酸化物などの触媒を使用してもよい。上記化合物及び触媒の添加量、及び添加の有無については、目的とする特性を確保できる範囲で適宜調整する。
好ましい(B)熱硬化性樹脂の一つであるアリルナジイミド樹脂とは、分子内にアリルナジミド基を2個以上含む化合物のことであり、下記一般式(XII)で示されるビスアリルナジイミド樹脂が挙げられる。
[式中、R
1は芳香族環及び/又は直鎖、分岐若しくは環状脂肪族炭化水素を含む2価の有機基を示す。]
上記の一般式(XII)中のR1は、芳香族環及び/又は直鎖、分岐若しくは環状脂肪族炭化水素を含む2価の有機基であり、好ましくは、ベンゼン残基、トルエン残基、キシレン残基、ナフタレン残基、直鎖、分岐、若しくは環状アルキル基、又はこれらの混合基が挙げられ、更に好ましくは下記構造の2価の有機基が挙げられる。
上記の一般式(XII)中のR1としては、上記の有機基の中でも、下記構造式(XIII)で示される液状のヘキサメチレン型ビスアリルナジイミド、下記構造式(XIV)で示される低融点(融点:40℃)固体状のキシリレン型ビスアリルナジイミドが、接着剤組成物を構成する異種成分間の相溶化剤としても作用し、接着剤層のBステージでの良好な熱時流動性を付与できる点で、また、固体状のキシリレン型ビスアリルナジイミドは、良好な熱時流動性に加えて、室温における接着剤層表面の粘着性の上昇を抑制でき、取り扱い性、及びピックアップ時のダイシングテープとの易はく離性、ダイシング後の切断面の再融着の抑制の点で、より好ましい。なお、これらのビスアリルナジイミドは1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
なお、上記のアリルナジイミド樹脂は、無触媒下での単独硬化では、250℃以上の硬化温度が必要で、実用化に際しては大きな障害となっており、また、触媒を用いる系においても、強酸やオニウム塩など、電子材料においては重大な欠点となる金属腐食性の触媒しか使用できず、かつ最終硬化には250℃前後の温度が必要である。しかし、上記のアリルナジイミド樹脂と2官能以上のアクリレート化合物、又はメタクリレート化合物、又はマレイミド樹脂のいずれかを併用することによって、200℃以下の低温で硬化が可能である(文献:A.Renner,A.Kramer,“Allylnadic−Imides:A New Class of Heat−Resistant Thermosets”,J.Polym.Sci.,Part A Polym.Chem.,27,1301(1989))。
なお、上記のアクリレート化合物としては、1分子中に有するアクリル官能基の数が2個以上の化合物であれば、特に制限は無く、例えば、ペンテニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレンオキシド変性ネオペンチルグリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレートなどが挙げられる。
2官能以上のメタクリレート化合物としては、1分子中に有するメタクリル官能基の数が2個以上の化合物であれば、特に制限は無く、例えば、ペンテニルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エチレンオキシド変性ネオペンチルグリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、トリシクロデカンジメチロールジメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリメタクリレートなどが挙げられる。これらのアクリレート化合物又はメタクリレート化合物は1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
(C)加熱により除去することが可能な溶剤としては、材料を均一に溶解又は分散できるものであれば特に制限はなく、例えば、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、及びN−メチル−ピロリジノンが挙げられる。
(C)加熱により除去することが可能な溶剤の含有量は熱可塑性樹脂の100質量部に対して10〜1000質量部であることが好ましい。10質量部以下であると、接着剤層の膜の均一性が得られなくなる場合があり、1000質量部以上であると、厚膜の形成が困難となる場合がある。
接着剤組成物の粘度はE型粘度計を用いて27℃で測定した場合に10〜10000mPa・sであることが好ましく、100〜1000mPa・sであることがより好ましい。これにより接着剤層の膜厚を均一かつ所定の厚さにすることが可能となる。
接着剤層の膜厚は1〜5μmであることが好ましい。1μm以下であると、被着体への接着性が低下し、5μm以上であると、接着剤層付半導体チップの厚さが大きくなり、パッケージの小型化が困難となる。
接着剤層の30℃におけるタック強度は、0.98N以下であることが好ましく、0.49N以下であることがより好ましく、0.20N以下であることが特に好ましい。タック強度とは、接着剤層の表面において、レスカ社製のプローブタッキング試験機を用いて、JIS Z0237−1991に記載の方法(プローブ直径:5.1mm、引き剥がし速度:10mm/秒、接触荷重:9.8Pa、接触時間:1秒)により、30℃におけるタック強度(粘着力)を測定したときの値である。
タック強度が0.98Nを超えると、得られる接着剤層の室温における表面の粘着性が高くなり、取扱い性が悪くなる場合があり、ダイシング時の延性による破断性の低下によってバリが残存し易くなったり、ダイシング後のダイシングシートとのはく離性が低下したり、ダイシング後の接着剤層の切断面の再融着などによるピックアップ性の低下を招くなどの問題が生じる場合がある。なお、本明細書において、室温とは、5〜30℃である。
接着剤組成物は、更に(D)着色剤を含有することが好ましい。着色剤は顔料でも染料でもよく、これらを混合したものでもよい。着色剤を含有することにより、厚さの薄い接着剤層を容易に見分けることが可能となり、また、ボイドなどの不良部分の確認が容易となり、作業性が向上する。
着色剤は耐熱性があるものが好ましく、キナクリドン系、ペリレン系、アンスラキノン系、ジケトピロロピロール系などの顔料が好ましい。また、フタロシアニン系やアゾ系などの染料も好ましい。
着色剤の含有量は(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.001〜100質量部であることが好ましく、0.01から10質量部が更に好ましく、0.05から5質量部が最も好ましい。0.001質量部以下であると、着色が不十分となり、見分けが難しくなる。また、100質量部以上であると、接着剤層の接着性が低下する場合がある。
接着剤組成物は、無機フィラーを含有してもよい。無機フィラーとしては、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミックなどのフィラーが使用できる。これらの無機フィラーは1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でもシリカは、高い接着力が得られ、かつ金属腐食を起こす原因となる不純物を少なくできるため、半導体装置の信頼性を向上できるので好ましい。また使用する無機フィラーの形状は球状であることが、後述するように接着剤層の厚さ方向の熱流動性と高い接着力の点で好ましい。球状とは、真球状、円粒状、楕円状などの形状も含む。
無機フィラーの含有量は、付与する特性や機能に応じて決められるが、(A)熱可塑性樹脂を100質量部とした場合、無機フィラーの質量部が1〜1000質量部であることが好ましく、5〜100質量部であることがより好ましく、5〜50質量部であることが更に好ましい。無機フィラーを適度に増量することにより、接着剤層の表面低粘着化、及び高弾性率化が図れ、ダイシング性(ダイサー刃による切断性)、ピックアップ性(ダイシングテープとの易はく離性)、ワイヤボンディング性(超音波効率)、熱時の接着強度を有効に向上できる。無機フィラーを必要以上に増量すると、被着体との界面接着性、及び熱時流動性が損なわれ、耐リフロー性を含む信頼性の低下を招くため、無機フィラーの使用量は上記の範囲内に収めることが好ましい。求められる特性のバランスをとるべく、最適な無機フィラーの含有量を決定する。無機フィラーを用いた場合の混合・混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミルなどの分散機を、適宜組み合わせて行うことができる。
上記の無機フィラーは、最大粒径が5.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがより好ましい。最小粒径の下限値は特に設けないが、0.001μm以上であることが好ましい。粒径が0.001μm未満であると、樹脂との界面積が増大し、樹脂ワニスへの分散性が低下する他、熱時溶融粘度の上昇による熱時流動性の低下を招く場合があり、粒径が5.0μmを超えると、高い接着力が得られなくなったり、接着剤層の表面が粗くなり、成膜性が損なわれる場合がある。
上記の無機フィラーは、最大粒径が5.0μm以下の範囲で少なくとも2つの粒度分布を有し、各粒度分布の頻度がピークとなる粒径の差が1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましい。このように、粒度分布の異なる大小無機フィラーを併用することによって、接着層中の無機フィラーの充填密度が高まり、加熱後の表面タックの低減、ダイシング時の切断性向上、ダイシング後の切断面再融着抑制などの効果が得られる。また、粒径の異なるフィラーを併用することによって、フィラー充填量の増大による加熱後での熱時溶融粘度の上昇を有効に抑制できる。すなわち、熱圧着によって樹脂が流動状態にあるときに、接着剤層の厚さ方向への応力伝達効果が大きくなると考えられる。
以上の設計によって、フィラー配合系では通常相反関係にある低粘着性と熱時流動性を有効に両立できる。この設計は、フィラーの充填密度を高める効果もあり、ダイシング後の接着剤層の切断面において、見かけの樹脂の占有面積を低減できるため、ダイシング後の切断面再融着の抑制効果が得られる。また、異なる粒径を有するフィラーを併用することによってフィラーの充填密度が高まることと、異粒径フィラー混在による形状因子の相乗効果によって、ダイシング時のダイシングブレードに対して、フィラーが研磨剤的に作用し、ダイシング時の接着剤層の切断面に対する研磨効率が向上すると考えられる。上述した各粒度分布の頻度がピークとなる粒径同士の差が1μm未満であると、これらの効果を得にくくなる場合がある。
無機フィラーに2つの粒度分布を持たせる方法として、2つの粒度分布を有するように設計された単一の無機フィラーを用いる他、平均粒径の異なる2種の無機フィラーを併用する方法がある。この場合、各フィラーの平均粒径の差が1μm以上であることが好ましい。また、2種の無機フィラーを併用する際には、一方のフィラーの平均粒径が0.01〜2.0μm、もう一方のフィラーの平均粒径が2.0〜10.0μmであることが好ましく、双方の平均粒径の差が1μm以上となるようにフィラーを選択し、組み合わせる。フィラーの平均粒径が0.01μm未満、又は10.0μmを超えると、それぞれ上述と同様の理由で好ましくない場合がある。
平均粒径の異なる2種のフィラーを併用する場合は、平均粒径の小さいフィラーの比率がフィラー全体に対して10〜70重量%、平均粒径の大きいフィラーの比率がフィラー全体に対して30〜90重量%の範囲で調整することによって、上述の効果を有効に確保できる。なお、上記フィラーの粒径又は平均粒径とは、粒度分布測定時に得られる値である。接着剤層に充填された無機フィラーの粒度分布、粒径、及び平均粒径は、接着剤組成物を600℃のオーブンで2時間加熱し、樹脂成分を分解、揮発させ、残った無機フィラーをSEMで観察、又はその粒度分布測定から算出するなどの方法で見積もることができる。
接着剤組成物には、異種材料間の界面結合を良くするために、各種カップリング剤を添加することもできる。カップリング剤としては、例えば、シラン系、チタン系、アルミニウム系などが挙げられ、これらの中でも効果が高い点で、シラン系カップリング剤が好ましい。カップリング剤の含有量は、その効果や耐熱性及びコストの面から、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.01〜20重量部とすることが好ましい。
接着剤組成物には、イオン性不純物を吸着して、吸湿時の絶縁信頼性を良くするために、イオン捕捉剤を更に添加することもできる。イオン捕捉剤としては、特に制限はなく、例えば、トリアジンチオール化合物、ビスフェノール系還元剤などの、銅がイオン化して溶け出すのを防止するため銅害防止剤として知られる化合物、ジルコニウム系、アンチモンビスマス系マグネシウムアルミニウム化合物などの無機イオン吸着剤などが挙げられる。上記イオン捕捉剤の含有量は、添加による効果や耐熱性、コストなどの点から、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部とすることが好ましい。
接着剤組成物には、適宜、軟化剤、老化防止剤、着色剤、難燃剤、テルペン系樹脂などの粘着付与剤、熱可塑系高分子成分を添加してもよい。これにより接着性向上や、硬化時の応力緩和性を付与することができる。熱可塑系高分子成分としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、アクリルゴムなどが挙げられる。これら高分子成分は、分子量が5000〜500000のものが好ましい。