JP5817415B2 - 非接触icラベル付き物品 - Google Patents
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たとえば、13.56MHz帯の電波を用いる電磁誘導方式のRFIDタグでは、アンテナと金属部材との間に高透磁率の磁性体(磁性シート)を設け、アンテナと金属部材との間にロスの少ない磁束のルートを確保することで、金属部材に取り付けても用いることができるRFIDタグを実現している。なお、通信性能は低下するが磁性体の厚さを例えば100μmまたは100μm以下と薄くすることもできるので、金属部材に対応した薄手の金属対応RFIDタグも作ることができる。
しかしながら、この方法では、アンテナと金属部材との間に、100μmの厚さの誘電体を用いたり、100μmの厚さの空気層を設けるなどとした場合、金属部材の影響を強く受けてしまい通信不能となってしまう。よって、現状では、13.56MHz帯で用いられるような薄手(厚さが数百μm以下)のRFIDタグを作ることは難しいとされている。
本発明の非接触ICラベル付き物品は、金属部材を有する物品と、前記金属部材に設けられた細長状の外面に貼り付けられた非接触ICラベルと、を有する非接触ICラベル付き物品であって、前記非接触ICラベルは、磁性シートと、前記磁性シートの一方の面に設けられ、ICチップを有するダイポールアンテナと、前記磁性シートの他方の面に設けられ前記外面に貼り付けられた接着層と、を備え、前記磁性シートの厚さが100μm以上であり、前記外面の幅が10mm以下であることを特徴としている。
また、上記の非接触ICラベル付き物品において、データ読み取り装置との間の通信方式に電波方式を用いたことがより好ましい。
なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の厚さや寸法の比率は適宜異ならせてある。
ここで言う金属部材とは、部材における重量比50%を超える部分が固体の金属で形成されているもののことを意味する。ただし、物品における金属部材以外の部分については、樹脂、セラミックス、および金属など、どのような材料で形成されていてもよい。
非接触ICラベル20は、磁性シート21と、磁性シート21の一方の面21aに設けられた通信部22と、磁性シート21の他方の面21bに設けられた接着層23とを有している。
磁性シート21としては、磁性粒子、または磁性フレークとプラスチックまたはゴムとの複合材からなる、ラベル用途として柔軟性に富んだ公知の材料を用いることができる。図2に示すように、磁性シート21の厚さ方向に見た平面視において、磁性シート21は矩形状に形成されている。
通信部22は、ICチップ24と、ICチップ24に接続されたインピーダンス整合回路部25と、インピーダンス整合回路部25に接続されるとともにインピーダンス整合回路部25を挟むように配置された第1のアンテナエレメント26、第2のアンテナエレメント27と、を有している。
ICチップ24は公知の構成のものが用いられ、ICチップ24内には所定の情報が記憶されている。そして、ICチップ24に設けられた不図示の電気接点から電波方式により電波のエネルギーを供給することで、記憶された情報をこの電気接点から外部に電波として伝達させることができる。
インピーダンス整合回路部25は、所定の形状に蛇行させた配線により形成されている。インピーダンス整合回路部25は、ICチップ24の不図示の電気接点に電気的に接続されている。インピーダンス整合回路部25は、ICチップ24と第1のアンテナエレメント26との間、およびICチップ24と第2のアンテナエレメント27との間に、互いに等しい所定のインピーダンスおよび抵抗値が生じるように構成されている。
アンテナエレメント26、27は、挟み方向Dが磁性シート21の長辺21cに平行となるように配置されている。
このように構成された通信部22は、磁性シート21の一方の面21aに2つのアンテナエレメント26、27を有する、いわゆるダイポールアンテナとなっている。
接着層23としては、合成ゴム系やアクリル系といった公知の接着剤などを適宜選択して用いることができる。接着層23の厚さは、10〜30μmに設定されることが好ましい。
非接触ICラベル20は、細長状の外面11の長さ方向(外面11の平面視において寸法が大きくなる方向)が挟み方向Dに対して平行となるように、接着層23により外面11に貼り付けられている。
この目的を達成する磁性シート21の厚さの範囲、外面11の幅の範囲を検討するために、以下に説明する実験を行った。
実験には、下記に示す機材および材料を使用し、図4に示すように構成した。
・磁性シート21:大同特殊鋼(株)製 NRC010(厚さ100μm)
・ICチップ24:NXP社製 UCODE G2iL
・インピーダンス整合回路部25、およびアンテナエレメント26、27
:アンテナエレメント26、27の寸法 23mm×5mm
PETフィルム(厚さ50μm)上に銀ペーストインキでパターン印刷(厚さ
8μm)、ICチップ24以外は自社製
・リーダライタR1:950MHz帯RFID用リーダライタ 三菱電機社製
RF−RW002(最大出力1W 30dBm)
・読み取りアンテナR2:950MHz帯RFID用アンテナ 三菱電機社製
RF−ATCP001(左旋円偏波 最大利得6dBi)
・固定減衰器R3:ヒロセ電機製 AT−107(減衰量 7dB)
なお、リーダライタR1、読み取りアンテナR2、および固定減衰器R3で、データ読み取り装置R10を構成する。
・金属板30a:ステンレス製
250mm(長さ)×250mm(幅)×0.5mm(厚さ)
・金属板(金属部材)30b:アルミニウム製
100mm(長さ)×5mm(幅)×3mm(厚さ)
100mm×10mm×3mm
100mm×25mm×3mm
100mm×50mm×3mm
200mm×5mm×3mm
200mm×10mm×3mm
200mm×25mm×3mm
200mm×50mm×3mm
図4に示すように、金属板(物品)30の外面31の中央に非接触ICラベル20を取り付けて非接触ICラベル付き物品2を構成した。データ読み取り装置R10の読み取りアンテナR2によって、非接触ICラベル付き物品2の通信距離(データ読み取り装置R10が非接触で通信部22から情報を読み取ることができる距離の最大値)の測定を行った。本実験に用いた非接触ICラベル20は、接着層23を有していない。通信部22とデータ読み取り装置R10との間の通信方式は、電波方式となる。
なお、非接触ICラベル20を貼り付ける対象は小型の物品であるため、外面31の幅が50mmを越えるもの、および、外面31の長さが300mmを越えるものは、実験の対象外とした。非接触ICラベル20を薄型にするために、磁性シート21の厚さとしては、500μm以下であることが好ましい。
当然のことではあるが、外面31の幅、および外面31の長さは0mmより大きいことになる。
リーダライタR1の最高出力は1W(30dBm)であるが、実験環境の都合上リーダライタR1と読み取りアンテナR2を結ぶ同軸ケーブル上に−7dBの固定減衰器R3を接続し、リーダライタR1の出力を0.2W(23dBm)に減衰させて実験をおこなった。
実験に使用した磁性シート21は、100μm厚の磁性シートを重ね合わせて、200μm、300μm厚の磁性シートとした。
第1の実験として、比較例となる実験を行った。
前述の250mm×250mmの金属板30aの中心に非接触ICラベル20を置き、磁性シート21の厚さを変えて読み取りの実験を行った。実験結果を以下に示す。
・磁性シート21の厚さが100μmのとき、通信距離は120mm。
・磁性シート21の厚さが200μmのとき、通信距離は150mm。
・磁性シート21の厚さが300μmのとき、通信距離は150mm。
この実験は、非接触ICラベル20の外形寸法に対して金属板30aのサイズが十分に大きく、さらに金属板30aの中心に非接触ICラベル20を配した場合の比較例となる実験であり、後述する第2の実験と比較するために行った。なお、上記の実験結果(通信距離)は、金属部材に直接貼り付けても通信可能な薄型でかつ小型の非接触ICラベルとしては、不十分な通信距離となっている。
第2の実験として、本発明の非接触ICラベル付き物品2の通信距離を確認する実験を行った。
前述の金属板30bを複数組み合わせて、幅を5mm、10mm、25mm、50mmの4種類として、長さを100mm、200mm、300mm、400mmの4種類とした計16種類のサイズの金属板30を作り、その金属板30の中心に非接触ICラベル20を置き、磁性シート21の厚さを変えて読み取りの実験を行った。
磁性シート21の厚さが100μm、200μm、および300μmの場合の実験結果(グラフ)を、図5、図6、および図7にそれぞれ示す。
図5に示す磁性シート21の厚さが100μmの場合では、以下のような結果となった。すなわち、金属板30の外面31の長さが300mm以下で、外面31の幅が10mm以下の5mmおよび10mmの場合において、通信距離が250mm以上と、第1の実験結果の120mmに対して2倍以上の通信距離が得られている。一方で、外面31の幅が25mmおよび50mmの場合においては、第1の実験結果と変わらない結果となった。
外面31の長さが300mm以下で、外面31の幅が25mm以下の5mm、10mm、および25mmの場合において通信距離が250mm以上と、第1の実験結果の150mmに対して100mm以上通信距離が長くなっている。一方で、外面31の幅が50mmの場合においては、外面31の長さが200mm以下でのみ、第1の実験結果に対して通信距離が長くなっている。
外面31の幅が5mmのものは、外面31の長さが100mmの場合に通信距離が800mm近くまで達し、幅が10mmの場合にも、通信距離が長くなる傾向がうかがえる。
外面31の長さが300mm以下で、外面31の幅が50mm以下の5mm、10mm、25mm、および50mmの場合において通信距離が200mm以上と、第1の実験結果の150mmに対して通信距離が長くなっている。
外面31の幅が5mmおよび10mmのものは、外面31の長さが100mmの場合では通信距離が800mm近くまで達している。
また、磁性シート21の電気的な物性値(透磁率、磁性損失、誘電率、誘電損失など)を好適なものにすることと、インピーダンス整合回路部25のインピーダンス整合、アンテナエレメント26、27の形状を最適化することで、通信距離のさらなる向上、または磁性シート21をさらに薄くすることができると考えられる。
この効果は、磁性シート21の厚さが200μm以上であり、かつ、金属板30の外面31の幅が25mm以下である場合、さらに、磁性シート21の厚さが300μm以上であり、かつ、金属板30の外面31の幅が50mm以下である場合においても、同様に奏することができる。
金属板30の外面31の幅と長さを規定することで、非接触ICラベル20の層構成の中で、一般的に最も厚くなる磁性シート21の厚さを薄くしても、約200mm以上という通信距離が得られることが明らかになった。このことにより、薄型でかつ小型であっても良好な通信距離が得られる非接触ICラベル付き物品2となる。
例えば、前述の実験では金属板30の外面31の中央に非接触ICラベル20を配したが、この非接触ICラベル20を配する位置はこれに限定されずどの位置であってもよい。ただし、発明者が行った追加実験では、非接触ICラベル20を貼り付ける位置は、外面31の中央が最も良いという結果がでている。
金属板の外面を非接触ICラベルの形状で彫り込んで、外面に非接触ICラベルを貼り付けたときに、非接触ICラベルが外面から外部に突出しないようにしてもよい。
その他、金属部材を有する物品としては、前述の人が手で持って使う機械工具、医療器具、調理器具などの小型の物品に限らず、機械部品、自動車部品、電気部品、建築部品、配管部品など様々な物品も含まれる。
10 スパナ(物品)
11 外面
20 非接触ICラベル
21 磁性シート
21a 一方の面
21b 他方の面
23 接着層
24 ICチップ
30、30b 金属板(物品)
R10 データ読み取り装置
Claims (5)
- 金属部材を有する物品と、前記金属部材に設けられた細長状の外面に貼り付けられた非接触ICラベルと、を有する非接触ICラベル付き物品であって、
前記非接触ICラベルは、
磁性シートと、
前記磁性シートの一方の面に設けられ、ICチップを有するダイポールアンテナと、
前記磁性シートの他方の面に設けられ前記外面に貼り付けられた接着層と、
を備え、
前記磁性シートの厚さが100μm以上であり、
前記外面の幅が10mm以下であることを特徴とする非接触ICラベル付き物品。 - 金属部材を有する物品と、前記金属部材に設けられた細長状の外面に貼り付けられた非接触ICラベルと、を有する非接触ICラベル付き物品であって、
前記非接触ICラベルは、
磁性シートと、
前記磁性シートの一方の面に設けられ、ICチップを有するダイポールアンテナと、
前記磁性シートの他方の面に設けられ前記外面に貼り付けられた接着層と、
を備え、
前記磁性シートの厚さが200μm以上であり、
前記外面の幅が25mm以下であることを特徴とする非接触ICラベル付き物品。 - 金属部材を有する物品と、前記金属部材に設けられた細長状の外面に貼り付けられた非接触ICラベルと、を有する非接触ICラベル付き物品であって、
前記非接触ICラベルは、
磁性シートと、
前記磁性シートの一方の面に設けられ、ICチップを有するダイポールアンテナと、
前記磁性シートの他方の面に設けられ前記外面に貼り付けられた接着層と、
を備え、
前記磁性シートの厚さが300μm以上であり、
前記外面の幅が50mm以下であることを特徴とする非接触ICラベル付き物品。 - 前記外面の長さが300mm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の非接触ICラベル付き物品。
- データ読み取り装置との間の通信方式に電波方式を用いたことを特徴とする請求項4に記載の非接触ICラベル付き物品。
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