JP5816868B2 - 化合物 - Google Patents

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Description

本発明は、ある種の新規のイソフラバン誘導体、それを含有する組成物、それらの製造方法、及び治療薬としての、特に抗癌及び化学療法的選択薬としてのそれらの使用に関する。
700を上回る種々の天然イソフラボンが既知であり、そのうちのいくつかは潜在的治療利益を伴う生物学的特性を有する。
特許文献1は、良性前立腺肥大症の治療のためのある種のイソフラバン化合物、特に3,4−ジアリールクロマン及びセントクロマンを包括的に開示している。
特許文献2も、ある種のイソフラバン化合物を開示している。
米国特許第5,726,202号 国際公開第01/17986号パンフレット
強力な抗癌活性、化学療法的選択性及び癌の放射線増感などの重要な治療的活性を示す新規化合物の提供を課題とする。
本発明者等は、驚くべきことに、強力な抗癌活性、化学療法的選択性及び癌の放射線増感などの重要な治療的活性を示す一般式(I)の化合物の新規な群を、見出した。
したがって、本発明の一態様によれば、一般式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩あるいは誘導体が提供される:
式中、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル又はC(O)Rであり、
及びRは、独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、シクロアルキル、ハロ又はOC(O)Rであり、但し、R及びRがともに水素であることはなく、
、R及びRは、独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、シクロアルキル、アシル又はOC(O)Rであり、及び
は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル又はアミノである。
本発明の別の態様によれば、次の式(II)の化合物のケト基を、
(式中、Rは、アルキル又はSi(R)などの保護基であり、
及びRは、独立して、水素、アルコキシ又はOSi(R)であり、但し、R及びRがともに水素であることはなく、そして
は、独立してアルキル又はアリールである。)
アリール化剤Wと反応して、
(ここで、Wは所望により置換されたアリールラジカルであり、
そしてMは1つ又は複数の対イオン、好ましくは[MgBr]である。)
次の式(III)の中間体第三級アルコール又はその保護化誘導体あるいはその塩を形成し、
これは脱水されて、次の式(IV)の化合物を形成し、
その二重結合は、その後、例えば水素化により還元され、所望により脱保護化されて、式(I)の化合物を生成する、工程を含む式(I)の化合物の調製方法が提供される。
本発明の別の態様によれば、一般式(III)の化合物、それを含有する組成物及びその用途が提供される。
別の態様では、一般式(IV)の化合物、それを含有する組成物及びその用途が提供される。
したがって、本発明の別の態様によれば、療法、特に化学療法における及び/又は放射線増感剤としての式(I)の化合物の使用が提供される。
本発明の別の態様によれば、1つ又は複数の式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩あるいは誘導体を、所望により担体及び/又は賦形剤とともに、被験者に投与することを含む疾患又は障害の治療、予防又は改善のための方法が提供される。
本発明の別の態様によれば、疾患又は障害の治療のための薬剤の製造における1つ又は複数の式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩あるいは誘導体の使用が提供され
る。
本発明の別の態様によれば、1つ又は複数の式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩あるいは誘導体を含む疾患又は障害の治療、予防又は改善のための作用物質が提供される。
本発明の別の態様によれば1つ又は複数の、式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩あるいは誘導体を、1つ又は複数の薬剤の担体、賦形剤、助剤及び/又は希釈剤とともに含む薬学的組成物が提供される。
本発明の別の態様によれば、1つ又は複数の式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩あるいは誘導体を含有する飲料又は食料品が提供される。
本発明のこれらの及びその他の態様は、以下の説明及び特許請求の範囲、ならびに添付の図面から明らかになろう。
本発明によれば、強力な抗癌活性、化学療法的選択性及び癌の放射線増感などの重要な治療的活性を示す新規な化合物を提供することができた。
本発明者等は、一般式(I)の一クラスのイソフラバン誘導体が意外なかつ予期せぬ生物学的及び薬学的特性を示すことを見出した。
本発明の式(I)の化合物は、正常細胞に関する都合のよい毒性プロフィールならびに良好な生物学的利用能を有する、と考えられる。
本発明の化合物は、驚くべきことに既知の癌治療より極めて良好な又は少なくともそれに匹敵する抗癌活性を示す。
式(I)の化合物は、ヒト及び動物起源の広範囲な癌細胞に対して細胞分裂抑制性及び細胞毒性である。癌細胞とは、悪性の特徴を表示し、そして通常では首尾よく治療されない限り最終的には致命的である調節できない増殖及び行動により非癌細胞と区別される細胞を意味する。
式(I)の化合物に応答することが判明した癌細胞は、上皮起源(例えば、前立腺、卵巣、子宮頸部、乳房、胆嚢、膵臓、結腸直腸、腎臓及び非小肺癌細胞)、間葉起源(例えば、黒色腫、中皮腫及び肉腫癌細胞)、及び神経起源(例えば、神経膠腫癌細胞)のものである。癌細胞に対してこのような強力な細胞傷害性を示すが、しかしヒト包皮由来のケラチノサイトなどの非癌細胞に対して低毒性を有する化合物の関連群を見出すことは非常に珍しくかつ意外である。このような癌細胞選択性は非常に珍しくかつ予期せぬことである。
式(I)の化合物は、有利なことに、標準抗癌薬に貧感受性であることが十分に認識されている癌細胞に対して細胞傷害性を示す。癌、例えば胆管癌腫、膵臓腺癌及び黒色腫に対するこのような強力な活性を見出すことは非常に稀であり、予期されないことである。
式(I)の化合物は、有利なことに、癌細胞を放射線増感させる能力をも予期せず示す。これは、これらの化合物が細胞を殺害するのに必要とされるγ線の量を下げるか、又はそれらが癌細胞を放射線耐性の状態から放射線感受性に転換することを意味する。
上記の特性は、有意な臨床的利点を提供する。
したがって、本発明は、上記の化合物を単独で及び/又は互いに組合せて、及び/又は他の抗癌薬と組合せて、及び/又は放射線療法と組合せて用いる療法によって、このような腫瘍の増殖速度を低減することにより、又はこのような腫瘍のサイズを減少することにより、癌患者を治療するための式(I)の化合物の使用をも提供する。
単独での又は上記のような組合せ療法での本発明の化合物の使用は、標準的な抗癌治療を施したときに患者がしばしば経験する副作用を軽減し得る。本発明の化合物の使用は、癌罹患者のための重要な進歩を示すこのような療法においてより低い用量が用いられ得ることを意味し得る。
本発明の化合物は、次の式(I−a)の化合物を含む:
式中、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル又はC(O)Rであり、
及びRは、独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ又はOC(O)Rであり、但し、R及びRがともに水素であることはなく、
、R及びRは、独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、シクロアルキル、アシル又はOC(O)Rであり、そして
は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアリールアルキルである。
好ましくは、式(I−a)の化合物で、
は、水素、C〜Cアルキル又はC(O)Rであり、
及びRは、独立して、水素、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、ハロ又はOC(O)Rであり、但し、R及びRがともに水素であることはなく、
、R及びRは、独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、シクロアルキル、アシル又はOC(O)Rであり、そして
は、C〜Cアルキル、フェニル又はベンジルであり、
又はその薬学的に許容可能な塩あるいは誘導体である。
さらに好ましくは、式(I-a)の化合物で、
は、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル又はアセチルであり、
及びRは、独立して、水素、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブロモ、クロロ、フルオロ又はアセチルオキシであり、但し、R及びRがともに水素であることはなく、
は、水素、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ又はアセチルオキシであり、そして
及びRは、独立して、水素、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、アセチル又はアセチルオキシであり、
又はその薬学的に許容可能な塩あるいは誘導体である。
式(I−a)の特に好ましい化合物は、以下の置換基を有する:
は、水素、メチル又はアセチルであり、
及びRは、独立して、水素、ヒドロキシ、メトキシ、ブロモ又はアセチルオキシであり、但し、R及びRがともに水素であることはなく、
及びRは、独立して、水素、ヒドロキシ、メトキシ又はアセチルオキシであり、そして
は、水素であり、
又はその薬学的に許容可能な塩あるいは誘導体である。
本発明は、次の式(I−b)の化合物にも拡大適用される:
式中、Rは、水素又はC〜Cアルキル、さらに好ましくは水素又はメチル、特に水素を表し、
は、水素、ヒドロキシ又はC〜Cアルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシを表し、さらに好ましくはヒドロキシ又はメトキシ、特にヒドロキシを表し、
は、水素、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシを表し、さらに好ましくは水素又はメトキシ、特に水素を表し、但し、R及びRがともに水素を表すことはなく、
は、水素、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、C〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピルを表し、特に水素、ヒドロキシ、メトキシ又はメチル、とりわけメトキシ又はヒドロキシを表し、
は、水素、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルを表し、特に水素、メトキシ、ヒドロキシ、とりわけ水素を表し、
又はその薬学的に許容可能な塩あるいは誘導体である。
本発明の好ましい化合物は、次の一般式(I−c)の化合物を包含する:
式中、Rは、水素又はC〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二級ブチル、第三級ブチルであり、
は、水素又はC〜Cアルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、第二級ブトキシ、第三級ブトキシであり、そして
は、水素又はC〜Cアルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、第二級ブトキシ、第三級ブトキシである。
式(I−c)の化合物でさらに好ましくは、Rは水素又はメチルであり、特に水素である。
式(I−c)の化合物でさらに好ましくは、Rは水素又はメトキシであり、特に水素である。
式(I−c)の化合物でさらに好ましくは、 は水素又はメトキシであり、特にメトキシである。
特に好ましい式(I)の化合物としては、以下のもの又はその薬学的に許容可能な塩が挙げられる:
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)クロマン−7−オール(HMC)(化合物1)、
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルクロマン−7−オール(化合物2)、
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(3−メトキシフェニル)クロマン−7−オール(化合物3)、
3−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)クロマン−7−オール(化合物4)、
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メチルフェニル)クロマン−7−オール(化合物5)、
3−(4−メトキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−7−メトキシクロマン(化合物6)、
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(2,6−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)クロマン−7−オール(化合物7)、
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)クロマン−7−オール(化合物8)、
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(3−アシル−2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)クロマン−7−オール(化合物9)、
3−(3−ヒドロキシフェニル)−4−(3−メトキシフェニル)クロマン−7−オール(化合物10)、
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)クロマン−7−オール(化合物11)、
3−(4−ブロモフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)クロマン−7−オール(化合物12)、





本発明の式(I)の化合物は、2つのキラル中心を含む。本発明は、全てのエナンチオマー及びジアステレオマーならびに任意の割合でのその混合物を包含する。本発明は、単離されたエナンチオマー又はエナンチオマーの対にも及ぶ。エナンチオマー及びジアステレオマーの分離方法は、当業者に周知である。
式(I)の化合物において、複素環上のアリール置換基は、お互いについてシス又はトランスであり得ることは当業者には明らかである。式(I)の化合物で、これらの置換基は好ましくはシスである。
本発明の特に好ましい化合物は、次のHMCのシス異性体又はその薬学的に許容可能な塩である。
同様に、特に好ましい化合物は、シス型コンホメーションの化合物2〜12である。
式(III)及び(IV)の化合物は、本明細書中に既述されたような中間体である。化合物1〜12の各々に対応するイソフラバン−4−オール中間体及びイソフラバン−3−エン中間体も、本発明の好ましい化合物である。
式(III)及び(IV)の化合物におけるWは、例えば、以下のラジカル又はその保護化誘導体を表す:
式中、R、R及びRは、式(I)の化合物に関して上記で定義されたとおりである。
本明細書中で用いる「イソフラボン」という用語は、イソフラボン、イソフラベン、イソフラバン、イソフラバノン、イソフラバノール等として含むようブロードに解釈されるべきである。
「アルキル」という用語は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−(第二級)ブチル、t−(第三級)ブチル、ペンチル等の1から6個の炭素原子の直鎖及び分枝鎖の飽和アルキル基を含むよう解釈される。アルキル基はさらに好ましくは、1〜4個の炭素原子を含有し、特にメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルである。
シクロアルキルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルといったC〜C−シクロアルキルが挙げられる。
アルキル基又はシクロアルキル基は、1つ又は複数のフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、カルボキシル、C〜C−アルコキシカルボニル、C〜C−アルキルアミノ−カルボニル、ジ−(C〜C−アルキル)−アミノ−カルボニル、ヒドロキシル、C〜C−アルコキシ、ホルミルオキシ、C〜C−アルキル−カルボニルオキシ、C〜C−アルキルチオ、C〜C−シクロアルキル又はフェニルにより所望により置換され得る。
好ましくは、アルキル基は、置換基を全く有さない。
「アリール」という用語は、フェニル、ベンジル、ビフェニル及びナフチルを含むと解釈され、1つ又は複数のC〜C−アルキル、ヒドロキシ、C〜C−アルコキシ、カルボニル、C〜C−アルコキシカルボニル、C〜C−アルキルカルボニルオキシ、ニトロ又はハロにより所望により置換され得る。
「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを、好ましくはフルオロ及びクロロを、さらに好ましくはフルオロを含むよう解釈される。例えば、「ハロアルキル」について言えば、モノハロゲン化、ジハロゲン化そして過ハロゲン化までのアルキル基を含む。好ましいハロアルキル基は、トリフルオロメチル及びペンタフルオロエチルである。
本発明の化合物は、全ての塩、例えば酸付加塩、陰イオン性塩及び両イオン性塩を含み、特に当業者に既知であるような薬学的に許容可能な塩を含む。「薬学的に許容可能な塩」という用語は、電荷を保有し、そして例えば塩中の対カチオン又は対アニオンとして薬学的作用物質とともに投与され得る有機又は無機部分を指す。薬学的に許容可能なカチオンは当業者に既知であり、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛及び第四級アミンが挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容可能なアニオンは当業者に既知であり、塩化物、酢酸塩、トシラート、クエン酸塩、重炭酸塩及び炭酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
薬学的に許容可能な塩としては、以下から生成されるものが挙げられる:酢酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、クエン酸、桂皮酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルタミン酸、グルタル酸、グルコン酸、塩酸、臭化水素酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ナフトエ酸、ヒドロキシナフトエ酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレンアクリル酸、オレイン酸、シュウ酸、オキサロ酢酸、リン酸、ピルビン酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、トリフ
ルオロ酢酸、トリフェニル酢酸、トリカルバリル酸、サリチル酸、硫酸、スルファミン酸、スルファニル酸及びコハク酸。
「薬学的に許容可能な誘導体」又は「プロドラッグ」という用語は、レシピエントに投与時に、親化合物又は代謝産物を直接又は間接的に提供し得る、あるいはそれ自体活性を示す活性化合物の誘導体を指し、例えば、リン酸塩誘導体及びスルホン酸塩誘導体が挙げられる。したがって、誘導体としては、溶媒和物、薬学的に活性なエステル、プロドラッグ等などが挙げられる。これは、in vivoで切断され得る生理学的に切断可能な脱離基を有する誘導体も含み、本発明の化合物又はそれらの活性部分を提供する。脱離基としては、アシル、ホスフェート、サルフェート、スルホネートが挙げられるが、好ましくは、モノ、ジ及びパー−アシルオキシ−置換化合物であり、この場合、1つ又は複数のペンダントヒドロキシ基はアシル基、好ましくはアセチル基により保護される。本発明の代
表的なアシルオキシ置換化合物は、対応するヒドロキシ置換化合物に容易に切断可能である。
本発明の化合物及びそれらの出発物質の合成を助長するのに適切である場合、化学的官能基保護、脱保護、シントン及び当業者に既知のその他の技法が用いられ得る。
本発明の化合物及び誘導体上の官能基の保護は、例えばT.W. Greene, Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, New York, 1981に記載されたような当業界で十分に確立された方法により実施することができる。
ヒドロキシル保護基としては、カルボン酸エステル、例えば酢酸エステル;アリールエステル、例えば安息香酸塩;アセタール/ケタール、例えばアセトニド及びベンジリデン;エーテル、例えばo-ベンジル及びp-メトキシベンジルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル及びシリルエーテル、例えばt-ブチルジメチルシリルエーテルが挙げられる
が、これらに限定されない。
保護基は、例えば、酸又は塩基の接触加水分解又は還元、例えば水素化により除去され得る。シリルエーテルは、フッ化水素又はフッ化テトラブチルアンモニウムを要し、切断される。
式(I)の化合物は、例えば式(I)の化合物が1つ又は複数のヒドロキシル置換基を有する場合、式(I)の他の化合物に転化され、次に、そのアルコールをハロゲン化剤で処理することにより、1つ又は複数のこれらの置換基は、ブロモ、クロロ又はヨードなどのハロ置換基に転化され得る、ということは医化学分野の当業者には明らかである。ハロゲン化剤としてはNBS、臭化水素酸、塩素ガス等のような化合物が挙げられ、必要ならば、保護基を用いて、分子中の他の官能基を保護する。
フェノール型ヒドロキシルは、ハロゲン化剤で処理することにより、対応するハロゲン化合物に容易には転化できない。しかしながら、所望のハロゲン化合物は、例えば、HClの存在下、低温度条件下で、例えば0℃で、適切なアリールアミン出発物質をNaNOで処理して調製され、対応するアジ化塩を生成する。続いてCuCl、CuBr、KI又はHBFで処理して、そのアジ化物を所要のハロ化合物に転化し得る。
式(I)の化合物を製造するための一般的方法は、式(IV)の化合物を還元剤で処理して、式(I)の化合物又はその保護化誘導体を提供する工程を包含する。:
式中、R、R、R及びWは、式(II)の化合物に関して上記に定義されたとおりである。
還元剤は当業者に良く知られており、ホウ水素及びアルカリ金属ホウ水素のような水素化物源が挙げられるが、パラジウム担持カーボンなどの適切な触媒が用いられ得る接触水素化における水素を含む。その他の適切な水素化物源としては、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素テトラブチルアンモニウム及び
シアノ水素化ホウ素ナトリウムが挙げられる。
好ましくは、式(IV)の化合物中の二重結合は、水素化により還元される。
式(IV)の化合物は、次の式(III)の化合物又はその保護化誘導体を脱水することにより調製される。
式中、R、R、R及びWは式(II)の化合物に関して上記に定義されたとおりである。
脱水は、例えば酸により、塩基により触媒され、あるいは当業者に既知のより良好な脱離基に第三級アルコールを転化することにより促進され得る。
好ましくは、式(III)の化合物は、例えばパラトルエンスルホン酸で処理することににより脱水される。
式(III)の化合物は、式(II)の化合物又はその保護化誘導体をアリール化剤、例えば式Wの化合物(ここで、Wは任意置換アリールラジカルであり、そしてMは1つ又は複数の対イオン、好ましくは[MgBr]である)で処理することにより、製造され得る。
式中、R、R、Rは式(II)の化合物に関して上記に定義されたとおりである。
アリール化剤Wは、次のハロアリール化合物(V)又はその保護化誘導体が、金属、例えばマグネシウムと反応して、アリール化剤を生成するグリニャール化学により調製され得る。
式中、R、R及びRは、独立して、水素、アルコキシ、アルキル、アシル、OC
(O)R又は保護化ヒドロキシ、例えばOSi(R)であり、そして
は、独立して、アルキル又はアリールであり、そして
Xは、ハロ、好ましくはブロモである。
好ましくは、ハロアリール化合物(V)は、以下から選択される:
式中、R、R、R及びXは、式(V)の化合物に関して上記に定義されたとおりである。
アリール化剤と式(II)のケトンとの反応は、対応する本発明のイソフラバン−4−オール(III)、イソフラブ−3−エン(IV)及びイソフラバン(I)へのアクセスを提供する。
あるいは、式(III)の化合物は、式(II)の化合物を、式(V)の化合物(ここでXは、当業者に良く知られた反応によるケトンへのアリール部分の求核付加によって生成物生成の際に失われるあらゆる適切な脱離基Lを表す。)と類似の化合物と反応させることにより調製され得る。
好ましくは、式(II)のケト化合物中のあらゆる遊離アルコール、エステル又はその他のこのような反応基は、例えば、求核付加反応中にt−ブチルジメチルシリルエーテルとして保護される。
式(II)の化合物は、次の式(VI)の化合物又はその保護化誘導体中のエネオン二重結合を還元することにより調製され得る。
式中、R、R、Rは、式(II)の化合物に関して上記に定義されたとおりである。
適切な還元剤は上記されている。好ましくは、炭素−炭素二重結合の還元は、例えば水素化により達成され得る。
一般式(VI)の化合物へのアクセスは、下記のスキーム1に既述されているような、及び国際特許出願公開WO01/17986(この開示内容は、参照により本明細書中に組み込まれる。)に記載されたような一般的合成方法によりアクセス可能である。
種々の3−フェニル置換クロマンへのアクセスは、フェニル酢酸誘導基上の置換パターンを変えることにより、可能である。
4−フェニル置換クロマンへのアクセスは、アリール化剤(V)の置換パターンを変えることにより可能である。
本明細書中で用いる場合、「治療」、「予防」又は「防止」、「改善」等という用語は、それらの最もブロードな文脈で考えられるべきものである。特に、「治療」という用語は、動物が完全回復まで治療される、ということを必ずしも意味しない。したがって「治療」は、特定症状の症状又は重症度の改善、あるいは特定症状を発症する危険の防止又はそうでなければ低減を含む。
本発明の療法的処置に必要とされる1つ又は複数の式(I)の化合物の量は、多数の因子に依存し、因子としては、特定の用途、用いられる特定化合物の性質、治療される症状、投与方式及び患者の状態が挙げられる。
式(I)の化合物は、慣用的に実施されるような方法及び量で投与され得る。例えば、Goodman and Gilman, “The pharmacological basis of therapeutics”, 7th Edition, (1985) 参照。利用される特定の投薬量は、治療される症状、被験者の状態、投与経路及
び上記に示したようなその他の既知の因子に依存している。概して、患者当たりの1日用量は、0.1mg〜5gであり、典型的には0.5mg〜1g、好ましくは50mg〜200mgの範囲であり得る。投与の長さは、治療されるか又は緩和されるべき症状の重症度に依って、1日1回又は2日に1回投与される単回投与から、1週間から数ヶ月、要求に応じから数年間の期間に亘って投与される1日2回又は3回投与の範囲であり得る。
さらに、任意の特定の被験者に関して、特定投薬量レジメンは、個体の必要性及び組成物を投与するか又はその投与を指図する人間の専門的判断に従って、長期間に亘って調整されるべきである、と理解される。
活性化合物を用いた比較的短期間の治療が用いられ、癌の安定化又は収縮又は寛解を引き起こし得る。長期治療は、高危険度患者における癌の発症を防止するために採用され得る。
本明細書中に記載された療法的適応症の治療のための薬学的組成物の製造は、典型的には本発明の化合物(便宜上、以後「活性化合物」と呼ぶ)を、当該技術分野で既知である
ような1つ又は複数の薬学的又は獣医学的に許容可能な担体及び/又は賦形剤と混合することにより調製される。
担体は、もちろん、処方物中のあらゆるその他の成分と相溶性であるという意味で許容可能でなければならず、そして被験者に有害であってはならない。担体又は賦形剤は固体又は液体、あるいはその両方であり、好ましくは、100重量%までの活性化合物を、好ましくは0.5〜59重量%の活性化合物を含有し得る単位用量の、例えば錠剤として化
合物とともに処方される。
1つ又は複数の活性化合物は、本質的には、1つ又は複数の補助成分を所望により含む構成成分を混合することからなる薬学の周知のあらゆる技法により調製され得る本発明の処方物中に組み入れることができる。薬剤組成物において活性化合物の好ましい濃度は、薬剤の吸収、分配、不活性化及び排出速度、及び当業者に既知のその他の因子に依っている。
本発明の処方物としては、経口、直腸、眼、バッカル(例えば、舌下)、非経口(例えば、皮下、筋内、皮内又は静脈内)、経皮投与、例えば鼻、口、膣又は直腸を介した粘膜投与、ならびに吸入剤に適したものが挙げられるが、しかし所与のいかなる場合においても最も適切な経路は、治療される症状の性質及び重症度に、ならびに用いられている特定の活性化合物の性質に依っている。
経口投与に適した処方物は、各々所定量の活性化合物を含有する、カプセル、サッシェ、ロゼンジ又は錠剤などの個々の単位で、粉末又は顆粒として、水性又は非水性液体の溶液又は懸濁液として、あるいは水中油型又は油中水型エマルションとして提供され得る。このような処方物は、活性化合物と適切な担体(上記のような1つ又は複数の補助成分を含有し得る)とを会合させる工程を包含する薬学のあらゆる適切な方法により調製され得る。
概して、本発明の処方物は、活性化合物を液体又は微粉砕固体担体、あるいはその両方と均一にかつしっかり混合し、次いで、必要ならば、得られた混合物を、単位調剤を生成するよう造形することにより調製される。例えば、錠剤は、活性化合物を、所望により1つ又は複数のその他の成分とともに含有する粉末又は顆粒を圧縮又は型に入れて成形することにより調製され得る。
圧縮錠剤は、適切な機械で、所望により結合剤、滑剤、不活性希釈剤及び/又は界面活性剤/分散剤(単数又は複数)を混合した粉末又は顆粒などの易流動性の化合物を圧縮することにより調製され得る。鋳型成形錠剤は、適切な機械で、不活性液体結合剤で湿らせた粉末化合物を型に入れて成形することにより作られ得る。
バッカル(舌下)投与に適した処方物としては、風味処理基剤、通常はスクロース及びアカシア又はトラガカント中に活性化合物を含むロゼンジ、及びゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシアなどの不活性基剤中に本化合物を含むトローチが挙げられる。
眼投与に適した処方物としては、眼に許容可能な担体又は希釈剤中に活性化合物を含む液体、ゲル及びクリームが挙げられる。
非経口投与に適した本発明の組成物は、活性化合物の滅菌水性調製物を含むと便利であり、この調製物は、好ましくは意図されたレシピエントの血液と等張である。これらの調製物は、好ましくは静脈内投与されるが、投与は、皮下、筋内又は皮内注射によっても達
成され得る。このような調製物は、便宜上、化合物を水又はグリセリン緩衝液と混合し、得られた溶液を滅菌し、そして血液と等張にすることにより調製される。本発明の注射用処方物は、一般に0.1〜60%w/vの活性化合物を含有し、0.1ml/分/kgの割合で投与され得る。
直腸投与に適した処方物は、好ましくは単位用量座薬として提供される。膣投与に適した処方物は、好ましくは単位用量ペッサリーとして提供される。これらは、活性化合物を1つ又は複数の慣用的固体担体、例えばココアバターと混合し、次に得られた混合物を造形することにより調製され得る。
皮膚への局所投与に適した処方物又は組成物は、好ましくは、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゲル、スプレー、エーロゾル又は油の形態をとる。用いられ得る担体としては、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール及びそれらの2つ以上の組合せが挙げられる。活性化合物は、一般に、0.1〜5%w/w、特に0.5〜2%w/wの濃度で提供される。このような組成物の例としては、化粧用スキンクリームが挙げられる。
経皮投与に適した処方物は、長期間レシピエントの表皮と密接に接触したままであるよう適応される個々のパッチとして提供され得る。このようなパッチは、上記の活性化合物に関して例えば0.1〜0.2M濃度の所望により緩衝された水溶液として、活性化合物を含有するのが適切である。例えば、Brown, L., et al. (1998)参照。
経皮投与に適した処方物は、イオン電気導入法によっても送達され(例えば、Panchagnula R, et al., 2000参照)、そして典型的には所望により緩衝された活性化合物の水溶
液の形態をとる。適切な処方物は、クエン酸塩又はビス/トリス緩衝液(pH6)又はエタノール/水を含み、0.1〜0.2Mの活性成分を含有する。
吸入に適した処方物は、溶液、懸濁液又は乳濁液の形態での噴霧組成物として送達され得る。吸入噴霧組成物はさらに、二酸化炭素又は酸化窒素、又はフルオロカーボン、例えば1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン又はそれらの混合物を含有する水素など薬学的に許容可能な噴射剤を含み得る。
活性化合物は、添加され、混合され、被覆され、結合される食料品の形態で提供され、又はさもなければ食料品に添加され得る。食料品という用語は、考えられ得るその最も広い意味で用いられ、乳製品を含む飲料などの液体処方物、及びヘルスバー、デザート等のその他の食品が挙げられる。本発明の化合物を含有する食品処方物は、標準的な技法に従って容易に調製され得る。
治療的な方法、使用及び組成物は、ヒト、又は、コンパニオン・アニマル及び家庭動物(例えば、イヌ及びネコ)ならびに家畜(例えば、牛、ヒツジ、ブタ及びヤギ)などの哺乳類、鳥類(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル)、水産養殖環境中のもの(例えば魚類、甲殻類及び貝類)を含む海洋動物等を含むその他の動物への投与のためであり得る。
活性化合物あるいはその薬学的に許容可能な誘導体プロドラッグ又は塩は、所期の作用を損なわないその他の活性物質と、又は所期の作用を補充する物質と、例えば抗生物質、抗真菌剤、抗炎症薬又は抗ウイルス化合物と併用投与もされ得る。活性作用物質は、組合せ混合物又はシナジー混合物中に2つ以上のイソフラボン又はその誘導体を含み得る。活性化合物はまた、脂質低下剤、例えばプロブコール及びニコチン酸;血小板凝集阻害剤、
例えばアスピリン;抗血栓薬、例えばクマジン;カルシウムチャンネル遮断薬、例えばベラパミル、ジルチアゼム及びニフェジピン;アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、例えばカプトプリル及びエナラプリル、ならびにβ−遮断薬、例えばプロパノロール、テルブタロール及びラベタロールとともに投与され得る。化合物はまた、非ステロイド系抗炎症薬、例えばイブプロフェン、インドメタシン、アスピリン、フェノプロフェン、メフェナミン酸、フルフェナミン酸及びスリンダクと組合せて投与され得る。化合物はさらにまた、コルチコステロイド又は抗催吐薬、例えばゾフラン(登録商標)とともに併用投与され得る。
式(I)の化合物は、シスプラチン及び/又はデヒドロエクオール(DHE)及び/又はタキソールなどの他の抗癌薬との併用投与に特に適していると思われる。これは、1つの薬剤のみが用いられる場合と比較して、治療において効用改善をもたらし得る。
この併用投与は、同時的又は逐次的であり得る。同時的な投与は、同一時刻又は類似時刻に投与される同一単位用量又は個々の及び個別の単位用量である化合物により効果を示す。逐次的な投与は、必要に応じてどんな順序であってもよく、特に累積的又は相乗的効用が所望される場合、典型的には第2回目の又は後の活性作用物質が投与された時に、第1回目の又は最初の活性作用物質の進行中の生理学的効用が継続している必要がある。
本発明の好ましい合成方法において用いる化合物は、当業者に容易に同定可能なあらゆる多数の供給源から得られる。例えば、ダイゼインは容易に入手可能であり、又は当該技術分野で既知の標準的な方法により合成され得る。適切な方法は、例えば、国際公開第98/08503号パンフレット及び国際公開第00/49009号パンフレットならびにそこに引用された参考文献中に見出され得る(これらは、そっくり参照により本明細書中に組み込まれる)。
上記の一般式(II)、(III)及び(IV)の化合物は、式(I)の活性イソフラバン化合物の製造における中間体である。これらの中間体は、本発明のさらなる態様も表す。
理論に縛られることなく考えると、本発明の化合物は、動物細胞内の広範な種々のシグナル伝達プロセスを調節し、そしてこれらのシグナル伝達プロセスは全ての動物細胞の生存及び機能に不可欠な広範な機能に関与すると考えられる。したがって、これらの化合物は、ヒトを含めた動物における広範囲に及ぶかつ重要な健康上の利点を有し、特に、重要かつ共通なヒト疾患、障害及び機能を防止し、治療する可能性を有するが、これは実質的な予期せぬ利益を示す。
本発明の特有の利点は、(a)その化合物により目標とされる広範囲のシグナル伝達プロセス、(b)これらの種々のプロセスの調節は、あるプロセスのアップレギュレーションと他のプロセスのダウンレギュレーションの両方を含むという事実、及び(c)シグナル伝達プロセスに及ぼすこのような広範なかつ種々の作用は、代謝及びステロイド生成に基本的である一連の重要な酵素に及ぼす独自の作用に伴うことにある。
本発明のイソフラバン化合物は、正常細胞に対して良好なin vitro毒性プロフィールを示す。該イソフラバンは、デヒドロエクオールより顕著に良好な、又は少なくともそれに匹敵する広範な活性を有する。イソフラバンは、白血病、神経膠腫、前立腺癌、卵巣癌、乳癌及び肺癌を代表する癌細胞に対して非常に活性である。イソフラバン化合物は、黒色腫及び胆管癌腫(胆嚢癌)細胞株に対する潜在的活性を示す。良好な活性は、結腸直腸癌細胞に対して観察された。
以下の非限定的な実施例及び添付の図面により、本発明をさらに説明する。
以下の実施例及び添付の図面において、略号「DHE」はデヒドロエクオールとして用い、そして略号「HMC」は本明細書中では最も好ましい化合物、3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−クロマン−7−オールとして用いる。
1.0.合成
実施例1:4’,7−ジアセトキシダイゼイン
ダイゼイン(2.0g、7.9mmol)、無水酢酸(10ml)及びピリジン(2m
l)の混合物を105〜110℃で1時間加熱した。混合物を室温に冷却後、それをさらに30分間撹拌し、この間、溶液からジアセテートを結晶化した。生成物を濾過し、水で十分に洗浄し、メタノールから再結晶化して、4’,7−ジアセトキシダイゼイン(2.
4g、90%)を無色角柱として得た。
実施例2:7−アセトキシ−3−(4−アセトキシフェニル)クロマン−4−オン
パラジウム担持チャコール(5%、0.02g)を、酢酸エチル(80ml)中の4’,7−ジアセトキシダイゼイン(0.50g、1.5mmol)の溶液に加え、混合物を水素雰囲気下、室温で72時間撹拌した。セライトを通す濾過により触媒を除去し、得られた濾液を真空蒸発した。残渣をエタノールから再結晶化して、7−アセトキシ−3−(4−アセトキシフェニル)クロマン−4−オン(0.40g、80%)を無色平板として
得た。
実施例3:7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)クロマン−4−オン
イミダゾール(0.63g)を、無水エタノール(5.0ml)中の4’,7−ジアセトキシジヒドロダイゼイン(0.26g、0.08mmol)の懸濁液に加え、混合物をアルゴン下で45分間還流した。溶液を減圧下で濃縮し、蒸留水(10ml)を残渣に加えた。混合物を冷蔵下で一晩放置し、得られた沈殿を濾過した。粗生成物を酢酸エチル/ジクロロメタンから再結晶化して、7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)クロマン−4−オン(0.14g、71%)を白色粉末として得た。
実施例4:7−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−3−(4−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)フェニル)クロマン−4−オン
7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)クロマン−4−オン42g(160mmol)、イミダゾール130g(1600mmol)、塩化t-ブチルジメチルシリ
ル127g(704mmol)及びN,N-ジメチルホルムアミド(500ml)を2L丸底フラスコ中で混合し、窒素下、室温で16時間撹拌した。反応を、冷却HO(200ml)を加えてクエンチして、反応混合物を氷浴中で冷却した。得られた白色固体を濾過し、水ですすいだ。エタノールからの再結晶化により、生成物を白色綿毛状結晶(35.7g、52%)として得た。
実施例5:7−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−3−(4−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)フェニル)−4−(4−メトキシフェニル)クロマン−4−オール
7−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−3−(4−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)フェニル)−4−(4−メトキシフェニル)クロマン−4−オール25g(50mmol)を2首丸底フラスコ中に秤量し、窒素下でフラッシュした。無水THF80mlを反応容器に加えて、透明なわずかに黄色い溶液を得た。冷却器を取り付けて、反応容器を氷浴中に入れた。市販の臭化4−メトキシフェニルマグネシウム(THF中の0.5M溶液)225ml(112mmol)を10分間かけて反応混合物に滴下した。依然として窒素下でのウェットエーテル(50:50 HO:ジメチルエーテル)の滴下により反応をクエンチし、漸増量のHOを加えると白色沈殿が生成した。さらなる量のHOを反応混合物に加えた後、ジエチルエーテルで抽出した。
有機層を併合し、水、ブラインで洗浄して、無水MgSO上で乾燥して、溶媒をロトバップ(Rotovap)で除去して、透明黄色油を生成し、これを一晩固化して、オフホワイトの固体を得た。粗生成物を精製せずに次の工程に用いた。
実施例6:3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−2H−クロメン−7−オール
7−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−3−(4−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)フェニル)−4−(4−メトキシフェニル)クロマン−4−オール42g(70mmol)、pTsOH435g(228mmol)、ボイリングチップ及び2.5Lのエ
タノールを、冷却器が装着された2首5L丸底フラスコ中で混合した。反応物を3時間加熱還流した。溶媒を〜100mlに真空濃縮した後、冷却撹拌水(700ml)中に注ぎ入れた。
次に混合物を酢酸エチルで抽出し、併合有機層を水(3×2L)、ブライン(1×500ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥して、濾過し、溶媒を真空除去して、赤/褐色油を得た。この油をメタノール(〜100ml)中に溶解し、冷凍庫中に一晩置いた。
一晩で白色沈殿が生成したが、これを濾過して、メタノールですすいだ。濾液を真空濃縮して、褐色油を得た。
実施例7:3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−クロマン−7−オール
3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−2H−クロメン−7−オール25.5g(70mmol)、10%Pd/Al3.95g及び200mlのエタノールを2首500ml丸底フラスコ中で混合した。反応物を、標準的な条件を用いて低圧で3時間、水素化した。反応物を、セライトを通して濾過して触媒を除去し、エタノール(300ml)に通してすすいだ。濾液を〜50mlに濃縮した後、冷却撹拌水(1.4L)中に注ぎいれた。淡橙色沈殿が生成し、これは次に褐色油を生成した。次に混合物をジエチルエーテルで抽出し、併合有機層を水(3×1L)、ブライン(1×500ml)で洗浄して、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過した。溶媒を真空除去して、赤/褐色油を得た。生成物をジエチルエーテル(〜100ml)から再結晶化して、褐色固体を生成し、これを冷却ジエチルエーテルですすいで、オフホワイトの結晶11.3gを得た。1H NMRスペクトル及び番号を付したスキームを以下に示す。
上記の一般的方法において、その構造は、適切な置換基あるいはそのシントン又は誘導体で所望により置換され、又は保護され得る。化合物は、熟練した合成化学者により確定され得るように、例えば、それらの塩、酢酸塩、ベンジル又はシリルオキシ誘導体として提供され得る。ヒドロキシ基は、当該技術分野で既知の標準的な方法により、容易にアルキル化(MeI/塩基)、アシル化(AcO/Py)又はシリル化(C1-SiR
塩基)され、同様に脱保護化され得る。
2.0.材料及び方法
2.1.組織培養
ヒト膵臓癌細胞株HPAC(CRL-2119)を、HEPES(15mM)、インス
リン(0.002mg/ml)、トランスフェリン(0.005mg/ml)、ヒドロコルチゾン(40ng/ml)、表皮成長因子(10ng/ml)を含有した、1:1混合物DMEM(Sigma)+ハムF12(Sigma)培地で常套的に培養した。卵巣癌細胞株;CP70を、ジル・モア(Gil Mor)博士(エール大学)から贈与され、1:1混合物DME
M+ハムF12培地中で培養し、そしてSKOV-3はATCCから購入し、マッコイ5
a培地中で培養した。
乳癌細胞株MDA-MB-468をライボビッツL-15培地中で培養した。黒色腫細胞
株MM200をピーター・ハーシイ(Peter Hersey)(ニューカッスル大学)から、そしてA2058をピーター・パーソンズ(Peter Parsons)博士(QIMR)から贈与された。
ともに、DMEM培地中で培養した。
全培養に10%FCS(CSL, Australia)、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100mg/ml)、L-グルタミン(2mM)及び重炭酸ナトリウム(1.2g/L)を補充して、5%COの加湿大気中、37℃で培養した。細胞株は全て、特に言及する場合を除いて、ATCC(Maryland, USA)から購入した。
正常細胞株NFF(新生児包皮繊維芽細胞)は、ピーター・パーソンズ博士(クィーンズランド医学研究所)から贈与された。RK(ウサギ腎臓)細胞は、ミラー・ホエイリー(Miller Whalley)(マクオーリー大学)から入手した。両細胞株を、10%FCS(CS
L, Australia)、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100mg/ml)、L-グルタミン(2mM)及び重炭酸ナトリウム(1.2g/L)を補充したRPMI中で培養し、5%COの加湿大気中、37℃で培養した。
2.2.増殖検定
各細胞株に関して、IC50値を測定した。増殖速度分析から確定されるような適切な細胞密度で96ウエルプレート中に細胞を植え付けて、試験化合物の非存在下及び存在下で5日間培養した。メーカーの取扱説明書に従って、臭化3-4,5ジメチルチアゾール-
2,5-ジフェニルテトラゾリウム(MTT、PBS中に2.5mg/ml、Sigma)20μlを付加後、37℃で3〜4時間、細胞増殖を査定した。x軸上の対数用量に対するy軸上の対照増殖%の片対数プロットから、IC50値を算定した。
2.3.DHE及びHMC薬物動態−経口
HMC及びDHEを、1%CMC中の均質懸濁液(m:v、水)として調製した。両処方物を、50mg/kgの投与量で、雌BALB/cマウスに強制栄養法により経口的に送達した。3匹の動物を、各時点に割り当てた(15分、30分、1時間、4時間及び24時間)。それぞれの時点で、頚椎脱臼により動物を安楽死させて、血液を採取した。
遊離HMCを質量分光法により分析した。
2.4.HMC薬物動態−i.v.及びi.p.
HMCを、20%ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン中の溶液(m:v、水)として調製した。処方物を、50mg/kgの投与量で、雌BALB/cマウスに胃管栄養法により経口的に、又はi.p.注射により送達した。3匹の動物を、各時点に割り当てた(15分、30分、1時間、4時間及び24時間)。それぞれの時点で、頚椎脱臼により動物を安楽死させて、血液を採取した。尿も採取し、HMCに関して分析した。遊離HMCを質量分光法により分析した。
2.5 パイロットin vivo効力試験−HPAC腫瘍保有マウス
HPAC細胞の亜集密的(80%)フラスコをトリプシン処理し、ハンクス平衡塩溶液(Sigma)中で洗浄し、ダルベッコの最小必須培地(Sigma)及び等容積のマトリゲル(登録商標)(Becton Dickson)中に3.7×10細胞/mlの密度で再懸濁した。胸腺欠
損nu/nu BALB/cマウスに、背面に沿った中間部分に両側に3.7×10HPAC細胞をs.c.(皮下)接種した。HMC群(n=3/投薬量レジメン)及び対照群(n=2)に関して、接種後5日目に処置を開始して、腫瘍を形成させた。HMCを20%HPBCDに処方して、15日間毎日、i.p.送達した。対照群には、20%HPBCDの等価(重量:重量)のi.p.用量を投与した。腫瘍測定を接種後5日目に開始し(10×10mm)、カリパスを用いて2つの寸法、即ち長さ(a)及び幅(b)で測定した。腫瘍重量(W)を、式W=ab2/2(式中、aは2つの測定値の長い方である)により、算定した(O’Dwyer et al., 1994)。最大腫瘍抑制(処置/対照、T/C)に関して、腫
瘍増殖曲線を分析した。屠殺時に、肝臓、腎臓、大腿骨、胃及び結腸組織を緩衝化ホルマリン中で固定し、パラフィンに包埋して、切片にして、H&Eで染色した。次に染色切片を組織病理学的分析のためにロスウェル診断に付した。対照、ビヒクル対照及びHMC処置群から採取した血液に関して、血清生化学検査を実行した。獣医学的臨床病理検査(U.
Syd)により、血清分析を実行した。
3.0.結果
3.1.正常細胞毒性
デヒドロエクオール(DHE)は、NFF及びウサギ腎臓細胞の両方に対して低毒性であり、IC50値は、HMC(それぞれ86μM及び61μM)と比較した場合、150μMより高かった(表1及び図1)。標線化学療法薬であるシスプラチンと比較した場合
、HMCが示す毒性の程度は軽度である(9.9μM対86μM)。
表2に新生児包皮繊維芽細胞(NFF)及びウサギ腎細胞に対するDHE、HMC及びシスプラチンの相対毒性を示す。
3.2.癌細胞に対するin vitro効能
DHE IC50値と比較して、HMCは、多薬剤耐性、p53mt卵巣癌細胞株(S
KOV-3)、AR陰性、p53Mt前立腺癌細胞株(PC3)、ER陽性(p53wt
)及び陰性(p53mt)両方の乳癌細胞株(それぞれ、MCF−7及びMDA−MB−468)、p53Mt神経膠腫(HTB−138)、p53Mt膵臓癌(HPAC)及びp53Mt大細胞肺癌に対して顕著に優れた活性(〜5から10倍より大きい)を実証した(表3)。HMCは、試験した全ての他の細胞株に対するDHEの抗癌活性に匹敵する活性を示した(表1)。黒色腫細胞に対して、HMCの特別な効能が注目された(表2及び図2)。これは、従来技術を上回る実質的利点を表す。
HMC、2つの別個の結腸直腸細胞株に対して示差的に活性であり、HT−29細胞に対しては顕著な活性が観察され、そしてHCT-15に対しては多少低い活性が観察され
た。
HT−29とHCT−15は、それぞれCOX−2陽性及び欠乏性である、ということが注目される。顕微鏡的に検査し、ビヒクルのみで処置された細胞と比較した場合、HMC処置SKOV−3細胞は、アポトーシスを受けている細胞と一致する形態学的変化を示した(細胞拡大、サイトゾルの粒状外観及びプラズマ細胞膜の泡状突起)。これに対比して、100μMのデヒドロエクオールに曝露されたSKOV−3細胞は18時間後、ビヒクルのみで処置された細胞の場合に匹敵する相対的に正常な形態を保持した。
表2に種々の悪性腫瘍を代表する細胞株に対するデヒドロエクオールとHMCの細胞毒性の比較を示す
3.3.HMC薬物動態−経口
経口投与DHEの薬物動態プロフィールと比較した場合、同じ経路と投薬量(50mg/kg)で投与したHMCは、DHEの511μM(15分後に達成)と比較して、141μM(1時間後に達成)というCmaxを示した(表3及び図3)。DHEと同様に、HMCも、低血漿濃度の、観察された遊離形態の分子と結合しやすい(30分後に1.3
μM)(表3及び図3)。これは、同一投薬量レジメンを用いて達成される遊離デヒドロエクオールの最大濃度(15分後に3.3μM)の半分未満である(図3)。遊離:全体の比は、DHE(それぞれ0.92対0.64)と比較して、HMCの場合の方が大きい。
表3に、HMC又はDHEのいずれも50mg/kgで投薬されたマウスで得られた遊離及び全血漿濃度の比較を示す。
3.4.HMC薬物動態−i.v.及びi.p.
HPBCD中に処方され、i.v.送達される場合、投与の15分後に、非常に高レベルのHMCが、1mMの薬剤に均等化した血中に観察された(図4)。i.v.送達HMCの排除動態は、二相性であり、HMCは投与後最初の1時間で〜1000μM/hrの速度で血液から迅速に排出された。線状排出と仮定すると、この速度は投与後1〜4時間で0.9
7μM/hrまで遅くなった。同一処方物をi.p.投与した場合、投与後1時間までに、約1対数少ないHMCが血漿中に観察された(i.p.投与による131μM対i.v.投与による
1069μM)(図4)。しかしながらi.p.投与による排除動態は、この期間中は非常に遅く(112μM/hr)、したがって投与後1時間に約4.5倍高い血清濃度になった
(i.p.による18.7対i.v.による3.98)。逆に、投与後1〜4時間で、排除動態は、i.v.と比較して、i.p.投与後により速かった(i.p.による4.6μM/hr対i.v.による
0.97μM/hr)。これらのデータは、HMCが、i.v.又はi.p.の経路により投与さ
れた場合、その遊離状態で非常に生物利用可能性であることを確証する。経口PKデータと連係して、これらのデータは、HMCがGI解毒酵素による迅速除去を受け易い、ということも示唆する。高濃度の遊離HMCが、採取される場合、0.5、1及び4時間に亘
って尿中に観察された(3.3mM、3.9mM及び0.0093mM)。
表4は、20%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンに処方されたHMCを50mg/kgの投薬量でi.v 及び i.p投与後の血清中の薬物動態プロフィールの比較である。差し込み図は、血清中のHMC濃度を示す。
3.5.パイロットin vivo効能試験−HPAC腫瘍保有マウス
HMCは、100mg/kgでi.p.で毎日投与した場合、ビヒクル対照と比較して、治療期間中、HPAC腫瘍の増殖を有意に遅延した(図5)。平均末端腫瘍塊を査定した場合、最終腫瘍荷重の有意の低減(%T/C=62)も認められた(図6)。重要なことであるが、体重損失により確定した場合、15日間毎日100mg/kgでHMCを投与された動物において毒性の徴候が認められなかった。実際、HMCで処置した動物は、対照と比較して、盛んに成長するようにみられた(図7)。器官(肝臓、腎臓、脾臓、大腿骨、胃及び結腸)を採取し、ロスウェルコンサルティングによる組織病理学的査定を行なった。限定血清生化学分析も実行した。これらのデータは、HMCがin vivoでHPAC腫
瘍に対する抗腫瘍原性活性を実証することを確証する。
3.5.1.HMC処置群の組織病理学的検査
2つのシリーズの実験マウスからのホルマリン固定組織から切り出したヘマトキシリン及びエオシン染色切片の組織病理学的検査を行なった。肝臓、腎臓、胃及び結腸は、毒性損傷の痕跡に関して、脾臓及び骨髄は、骨髄抑制の痕跡に関して、そして腫瘍は、壊死の程度に関して検査した。各腫瘍検体に存在する壊死の程度に関して0〜5のスコアを割り当て、スコア0は壊死なしを表し、スコア5は全体的壊死を表す。切片を2回の別個のタイミングで「ブラインド」評価し、結果に示された最終スコアはこれら2つのスコアの平均である。表5にHMC毒性を示す。
3.5.1.1.結果の概要
薬剤処置マウスの組織から切り出した切片において、毒性又は骨髄抑制の痕跡は検出されなかった。しかしながら、全ての薬剤処置マウスにおいて、検査した組織のいくつかで、漿膜及び付着腸間膜に影響を及ぼす斑状の軽症/中程度の重症度の慢性炎症性変化、ならびに中皮細胞の反応性変化が認められた。これらの変化は、中等度の刺激性物質の腹腔内注射と一致する。
腫瘍組織の有意の壊死は、対照検体1/8及び1/11においては検出されなかった。しかしながら、薬剤処置マウスからの腫瘍切片にかなりの壊死が認められた。
3.5.1.2.対照との比較におけるHMC処置マウスの血清生化学
アルカリ性ホスファターゼ(ALP)、アラニントランスフェラーゼ(ALT)及びクレアチン(Cre)を、HMC処置動物対対照動物において査定した。ALP及びCreレベルは、対照と同様であり、正常範囲内(ラットに関して)であったが、しかしながらビヒクル対照及びHMC処置群におけるALTレベルは、非処置対照レベルよりはるかに低かった。
3.6.黒色腫細胞及び正常繊維芽細胞におけるHMC誘導アポトーシス
3.6.1.黒色腫
HMCは、24及び48時間の曝露中に、2μMに至るまでの濃度で、TRAIL感受性及びTRAIL耐性黒色腫細胞全てにおいてアポトーシスを誘導した(〜7から10%アポトーシス)(表7及び図8A)。4μMという臨床的に有意の薬剤濃度では、HMCに24時間曝露後のアポトーシス細胞の出現率は、TRAIL感受性(MEL-RM)及
びTRAIL陰性(IGR3)細胞株においてそれぞれ25%及び39%に上昇した(表7及び図8A)。他の細胞株における24時間曝露後の4μMでHMC誘導アポトーシスの出現率は、〜9%であった。比較した場合、24時間曝露後の4μMの濃度でのDHE処置細胞におけるアポトーシス出現率は、0〜1%であった。同一濃度のHMC(4μM)での48時間の間に、アポトーシスの出現率は、検査した全ての細胞株において21〜42%に上昇した(表7及び図8B)。DHEは、4μMの濃度で48時間曝露後に中等度レベルのアポトーシスを誘導する唯一の他の作用物質であったが、しかしME4405(14%)及びMel-AT(15%)細胞株においてだけであった(表7及び図8B)

表7は、DHE及びHMC処理した黒色腫細胞において、24時間及び48時間にわたるアポトーシス出現率をまとめたものである。
3.6.2.正常繊維芽細胞
8μMのDHE又はHMCを用いて、24及び48時間にわたる間曝露し、正常繊維芽細胞(MRC-5)及びTRAIL感受性黒色腫細胞(ME4405及びMEL-RM)に関して調査を実行した(図9)。これらのデータは、HMCが、及びそれ程ではないにせよDHEが、24及び48時間の間、両方の黒色腫細胞株において顕著なレベルのアポトーシスを誘導した、ということを実証する。重要なことには、悪性細胞におけるプログラムされた細胞死を促進する一方で、正常繊維芽細胞は、8μMの薬剤での24及び48時間の曝露の間、HMC及びDHE誘導アポトーシスを示した。これらのデータは、HMCが癌細胞に対して選択的に細胞傷害性であることを確証する。
本発明のイソフラバン化合物は、DHEと比較した場合、試験した全ての癌に対して優れた効能プロフィールを示す。HMCは、NFF及びRK細胞においてDHEよりわずかにより有毒であるのに、HMCはシスプラチンより明らかに低毒性である。マウスにおいて経口的に送達されるHMCは、DHEと比較した場合、生物学的利用性は低いが、遊離:全体比はより大きい。HPBCD処方HMCは、i.v.及びi.p.送達した場合、その遊離形態で顕著に生物学的利用可能であった。i.p.送達後の遊離HMCの有意の血清濃度は、経口送達HMCの血清濃度の約18倍高かった。20%HPBCD中に処方され、i.p.送達されるHMCは、in vivoでHPAC腫瘍に対して中等度の抗腫瘍形成活性を発揮する、ということが実証された。HMCは、マウスに100mg/kgで送達された場合、組織病理学的に確定されるように主要な器官に対して有毒でないが、全ての薬剤処置マウスにおいて、漿膜及び付着腸間膜に影響を及ぼす斑状の軽症/中等度の重症度の慢性炎症性変化、ならびに中皮細胞の反応性変化が認められ、これらは、中等度刺激性物質の腹腔内注射と一致する。
HMCは、TRAIL耐性及びTRAIL感受性黒色腫細胞において24及び48時間の両方の曝露後に、中等度に強力なレベルのアポトーシスを誘導した。正常繊維芽細胞は、48時間曝露後に、アポトーシスに対して耐性であった。DHEは、TRAIL耐性及びTRAIL感受性黒色腫細胞において、48時間の曝露後に、軽度〜中等度レベルのアポトーシスを誘導する。正常繊維芽細胞は、48時間曝露後にアポトーシスに対して耐性であった。カスパーゼ陰性細胞において、アポトーシスを誘導するHMC及びDHEの両方の能力は、操作可能的外因性のプログラムされた細胞死経路が、HMC及びDHE媒介アポトーシスに不可欠でない、ということを示唆する。
3.7.前立腺癌細胞を用いたHMC放射線増感試験
HMC誘導放射線感受性は、照射前にHMCに曝露されたPC3前立腺癌細胞において観察される。PC3細胞を、5μg/ml及び25μg/mlのHMC濃度で1時間及び
24時間前処置した。細胞にγ線照射を施し、その後24時間、細胞生育能力cell viabilityを確定した。HMCは、5μg/mlの用量で24時間処置した細胞に対して強力な放射線増感作用を示した。
過度の実験をしなくても読者が本発明を実施できるよう、特定の好ましい実施形態を参照しながら本発明をここで説明してきた。しかしながら、構成成分及びパラメーターの多くは、本発明の範囲を逸脱しないある特定の範囲まで変更又は修飾し得る、と当業者は容易に理解する。さらに表題、見出しなどは、この文書の読者の理解を深めるために提供されるものであり、本発明の範囲を限定するとして解されるべきでない。
ここで引用された全ての特許出願、特許及び出版物の全ての開示は、もしあれば、参照により組み込まれる。
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体を通して、文脈が他の意味を要求しない限り、「含む(comprises)」という用語、ならびに「含む(comprises)」又は「含む(comprising)」という変形は、記述された全体又は段階あるいは全体又は段階の群を含むが、しかし如何なるその他の全体又は段階あるいは全体又は段階の群を排除するものでないことを意味すると理解される。
当業者は、ここに記載された本発明は、特定的に記載されたもの以外の変更及び修正を受け入れる、と理解する。本発明は、このような変更及び修正を全て含む、と理解されるべきである。本発明は、個々に又は集合的に、本明細書中で言及され、又は示された段階、特徴、組成物及び化合物の全て、ならびに任意の2つ以上の前期段階又は特徴のあらゆる及び全ての組合せをも含む。
本明細書におけるあらゆる先行技術への参照は、先行技術が、努力分野における共通一般知識の一部を構成するとの認識又はなんらかの形態の示唆ではなく、又はそのように解釈されるべきでない。
本発明の化合物は、ヒトを含めた動物における広範囲に及ぶかつ重要な健康上の利点を有し、特に、重要かつ共通なヒト疾患、障害及び機能を防止し、治療する可能性を有するが、これは実質的な予期せぬ利益を示す。
新生児包皮繊維芽細胞におけるデヒドロエクオール(DHE)、3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)クロマン-7-オール(HMC、本発明の化合物1)及びシスプラチン毒性の比較を示す。 シスプラチンと比較した場合の黒色腫細胞中のHMC効能を示す。 BALB/cマウスへのp.o(経口)投与(50mg/kg)後の遊離及び全形態のHMC(A)及びDHE(B)の薬物動態プロフィールを示す。 50mg/kgの用量で、20%ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン中に処方されたHMCのi.v(静脈内)及びi.p(腹腔内)投与後の血清中のHMC濃度の薬物動態プロフィールの比較を示す。 i.p投与20%HPBCD(ビヒクル対照、qd×15)又はHMC(100mg/kg、qd×15)のいずれかで処置されたHPAC膵臓癌腫瘍を保有するヌードマウスから得られた比較平均腫瘍容量データを示す。データは、平均±SEM、スチューデントT検定、p<0.01として表す。 i.p投与20%HPBCD(ビヒクル対照、qd×15)又はHMC(100mg/kg、qd×15)のいずれかで処置されたHPAC膵臓癌腫瘍を保有するヌードマウスから得られた比較平均末端腫瘍質量データを示す。データは、平均±SEM、スチューデントT検定、p<0.01として表す。 i.p投与20%HPBCD(ビヒクル対照、qd×15)又はHMC(100mg/kg、qd×15)のいずれかで処置されたHPAC膵臓癌腫瘍を保有するヌードマウスから得られた比較平均末端腫瘍質量データを示す。データは、平均±SEM、スチューデントT検定、p<0.01として表す。 24及び48時間にわたるDHE及びHMC処置黒色腫細胞におけるアポトーシス出現率の要約を示す。 HMC及びDHE処置悪性黒色腫細胞(Mel-RM及びMe4405)におけるプログラムされた細胞死の選択的開始を示す。同一濃度のDHE及びHMCならびに曝露時間は、正常繊維芽細胞(MRC-5)においてアポトーシスを誘導しない。 5μg/ml及び25μg/mlでのHMCの細胞傷害性(A)、ならびに、5μg/ml及び25μg/mlのHMC濃度で1及び24時間予備処置されたPC3前立腺癌細胞におけるγ線照射に対するHMC誘導放射線増感度(A)を示す。細胞生存率は24時間後に決定した。
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Claims (17)

  1. 次の一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩含む、腫瘍塊又は癌を治療するための医薬組成物。

    式中、Rは、アルキルであり、
    及びRは、独立して、水素、ヒドロキシ、又はアルコキシであり、但し、R及びRがともに水素であることはなく、
    、R及びRは、独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、又はアルキルである。
  2. はC1−4アルキルであり、
    及びRは、独立して、水素、ヒドロキシ、又はC1−4アルコキシであり、但し、R及びRがともに水素であることはなく、そして、
    、R及びRは、独立して、水素、ヒドロキシ、又はアルコキシである、
    請求項1記載の医薬組成物。
  3. はメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルであり、
    及びRは、独立して、水素、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、又はイソプロポキシであり、但し、R及びRがともに水素であることはなく、
    は水素、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、又はイソプロポキシであり、そして、
    及びRは、独立して、水素、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、又はイソプロポキシである、
    請求項1又は2記載の医薬組成物。
  4. はメチルであり、
    及びRは、独立して、水素、ヒドロキシ、又はメトキシであり、但し、R及びRがともに水素であることはなく、
    及びRは、独立して、水素、ヒドロキシ、又はメトキシであり、
    は水素である、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  5. 前記化合物は、3−(4−メトキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−7−メトキシクロマンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  6. 前記化合物は、次の一般式(I−b)で表される、請求項1記載の医薬組成物。

    式中、RはC1−6アルキルであり、
    、R及びRは、独立して、水素、ヒドロキシ、又はC1−6アルコキシであり、但し、R及びRがともに水素であることはなく、そして、
    は水素、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、又はC1−6アルキルである。
  7. 前記化合物は、次の一般式(I−c)で表される、請求項1記載の医薬組成物。

    式中、RはC1−6アルキルであり、
    はヒドロキシ又はC1−6アルコキシであり、そして、
    はヒドロキシ又はC1−6アルコキシである。
  8. はヒドロキシ又はメトキシである、請求項7記載の医薬組成物。
  9. はヒドロキシ又はメトキシである、請求項7又は8記載の医薬組成物。
  10. 化学療法又は放射線増感剤若しくは化学増感剤として用いる請求項1〜9のいずれかに記載の医薬組成物。
  11. 前記癌又は腫瘍塊は、上皮起源、間葉起源、又は神経起源である、請求項10に記載の医薬組成物。
  12. 前記上皮起源の癌又は腫瘍塊は、前立腺、卵巣、子宮頸部、乳房、胆嚢、膵臓、結腸直腸、腎臓、又は非小肺癌である、請求項11に記載の医薬組成物。
  13. 前記間葉起源の癌又は腫瘍塊は、黒色腫、中皮腫、又は肉腫癌細胞である、請求項11に記載の医薬組成物。
  14. 前記神経起源の癌又は腫瘍塊は、神経膠腫癌である、請求項11に記載の医薬組成物。
  15. 1つ又は複数の薬学的担体、賦形剤、助剤及び/又は希釈剤を伴う、請求項1〜14のいずれかに記載の医薬組成物。
  16. 化学療法剤を更に含む、請求項15記載の医薬組成物。
  17. 前記化学療法剤が、シスプラチン、デヒドロエクオ又はタキソールである、請求項16記載の医薬組成物。
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