本願の第1の発明は、受信側無線通信装置との間で無線チャネル上にディジタルリンクを設定した送信側無線通信装置において、複数のディジタル音声データを含む音声パケットを前記受信側無線通信装置へ送信するデータ送信手段と、前記受信側無線通信装置により前記音声パケットのエラーレートが所定の閾値よりも大きいと判断され、前記受信側無線通信装置から前記音声パケットのエラーレートが所定の閾値よりも大きいと通知された場合に、前記ディジタル音声データの一部をエラー検知ビットに変換することを特徴とする送信側無線通信装置である。この発明によれば、送信側のデータ送信手段がディジタル音声データの一部をエラー検知ビットに変換して送信し、受信側のデータ変換手段が受信したエラー検知ビットの値に応じてディジタル音声データを変換するので、音声データのデータレートを維持したままで、各ディジタル音声データについてエラーの検出を行うことができる。また、エラー判定手段の判定結果が良好であれば、データ送信手段がディジ
タル音声データの一部をエラー検知ビットに変換しないことを選択することができ、エラー検知ビットを含まない状態のディジタル音声データとすることができる。従って、通信環境が良好な場合には最もよい音声品質で送受信することができる。
本願の第2の発明は、送信側無線通信装置との間で無線チャネル上にディジタルリンクを設定した受信側無線通信装置において、前記送信側無線通信装置より受信した複数のディジタル音声データを含む音声パケットを受信するデータ受信手段と、前記音声パケットのエラーレートが所定の閾値よりも大きいか否かを判定するエラー判定手段と、を備え、前記エラー判定手段が前記音声パケットのエラーレートが所定の閾値よりも大きいと判定した場合に、前記送信側無線通信装置が前記ディジタル音声データの一部をエラー検知ビットに変換するように前記送信側無線通信装置に対して前記判定の結果を通知し、かつ受信した前記エラー検知ビットの値に応じて前記ディジタル音声データを変換することを特徴とする受信側無線通信装置である。この発明によれば、送信側のデータ送信手段がディジタル音声データの一部をエラー検知ビットに変換して送信し、受信側のデータ変換手段が受信したエラー検知ビットの値に応じてディジタル音声データを変換するので、音声データのデータレートを維持したままで、各ディジタル音声データについてエラーの検出を行うことができる。また、エラー判定手段の判定結果が良好であれば、データ送信手段がディジタル音声データの一部をエラー検知ビットに変換しないことを選択することができ、エラー検知ビットを含まない状態のディジタル音声データとすることができる。従って、通信環境が良好な場合には最もよい音声品質で送受信することができる。
(実施の形態)
本発明の実施の形態に係る無線通信装置を、コードレス電話機を例に、図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るコードレス電話機を示す図であり、(A)は親機を示すブロック図、(B)は子機を示すブロック図である。なお、図1においては、便宜上、親機は送信機能、子機は受信機能のみを図示しているが、いずれも両方の機能を備えている。
コードレス電話機は、図1(A)に示すベースユニットである親機(第1の通信端末)10と、同図(B)に示すハンドセットである複数台の子機(第2の通信端末)20とを備えている。コードレス電話機は、親機10と子機20との間で無線チャネル上にディジタルリンクを設定し、音声信号を適応型差分パルスコード変調方式で圧縮し、音声パケットに載せ、TDMA(Time Division Multiple Access)/TDD(Time Division Duplex)方式で通信する無線通信システムである。コーデックはITU−T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization sector)勧告のG.727を採用している。
親機10は、音声入力部11と、PCM変換部12と、ADPCM符号化部13と、送信変換テーブル14と、送信変換テーブル切替部15と、送信パケット生成部16と、無線送信回路17とを備えている。
音声入力部11は、電話回線網またはIPネットワークからの信号から音声信号を入力する。また、音声入力部11は、親機10にハンドセットが設けられていればマイクとすることができる。
PCM変換部12は、この音声信号を所定時間ごとにサンプリングして、所定のビット数の整数値に量子化するものである。
ADPCM符号化部13は、ADPCM(Adaptive Differential Pulse Code Modulation)によるディジタル音声データ(以下
、単に音声データと称する。)を生成する。ここでADPCM符号化部13について、図2に基づいて説明する。図2は、ADPCM符号化部13を説明するための図である。
ADPCM符号化部13は、適応量子化器13aとビットマスク部13bと適応逆量子化器13cと適応予測器13dとを備えている。ビットマスク部13bは、適応量子化器13aにより生成された4ビットのADPCM符号のうちコアビットとして設定されているビットを取り出す。ここでは上位3ビットがコアビットとして設定されている。適応逆量子化器13cは、コアビット(3ビット)のデータを基に量子化された差分信号を計算し出力する。適応逆量子化器13cより出力された差分信号は適応予測器13dと加算器13fに送られる。加算器13fは本符号器内で生成された予測信号と差分信号とを足し合わせて再生信号を生成する。適応予測器13dは適応逆量子化器13cからの差分信号と加算器13fからの再生信号に基づいて予測信号を生成する。加算器13eによりPCM変換部12からの入力信号と適応予測器13dからの予測信号の差分を計算し、得られた差分信号は適応量子化器13aへ送られ、適応量子化器13aによりADPCMの符号を生成する。
本実施の形態では、データレートを32kbpsとしているので、音声データは4ビットで、最上位ビットを正負の符号ビットとしたADPCMデータとして親機10のADPCM符号化部13により生成される。従って、4ビットのADPCMデータは、図3に示すように、0000〜1111となる。ADPCMのデータは直前に数値化したデータとの差分を示すものであるため、0000が正の最小値であり、1111が負の最小値である。また、0111が正の最大値であり、1000が負の最大値である。
G.727ではコアビットは2ビット以上に設定するように決められている。本実施の形態では4ビットのADPCM符号のうち3ビットをコアビットとして設定し、残りの1ビットはエンハンスメントビットとして設定される。ADPCM符号化部13において上位3ビットをコアビットとし、受信側の復号化部でも上位3ビットをコアビットとして処理する。このように符号器と復号器でコアビットの数を揃えておけば、適応予測器13dにより生成される予測信号は符号器側・復号器側で同じ値となるので、エンハンスメントビットをデータ通信用等の別の用途として使用しても音声品質の大きな劣化は避けることができる。
図1において、送信変換テーブル14はADPCM符号化部13より出力された4ビットの音声データを子機20へ送信する4ビットの送信データへ変換して出力する。ここで送信変換テーブル14について、図3に基づいて詳細に説明する。図3は、送信変換テーブル14を説明するための図である。
送信変換テーブル14は、テーブルT1,T2から構成される。テーブルT1は、入力された音声データをそのまま同じ値で出力するように構成されている。テーブルT2は、4ビットのうち上位3ビットは入力されたままの値となり、下位1ビットが上位3ビットに対する偶数パリティビットとなるように構成されている。つまり、ADPCM音声データの4ビットの中の“1”の数に応じて、該4ビット中の“1”の数が偶数になるように最下位ビットを反転させることによりパリティ信号の作用を持たせている。
このテーブルT2で変換することにより、送信される音声データ列の1サンプル値当たりの4ビット、例えば図3に示すb0,b1,b2,b3の4ビットのうち最下位ビットb3 がパリティ信号となり、また次ぎの4ビットb4,b5,b6,b7のうちの最下位ビットb7がパリティ信号となる。
図1において、送信変換テーブル切替部15は、送信変換テーブル14の2つのテーブル(テーブルT1,T2)を子機20からの受信エラー情報に基づいて切り替えることで
、送信変換テーブル14と共に送信側処理部として機能する。ここで送信変換テーブル切替部15について、図4に基づいて説明する。
図4は、送信変換テーブル切替部15を説明するための図である。送信変換テーブル切替部15は、送信変換テーブル14と、ADPCM符号化部13および送信パケット生成部16とのそれぞれの接続を切替スイッチ15a,15bにより切り替える。良好な通信環境が維持されて送信変換が必要で無い場合、切替スイッチ15a,15bをテーブルT1側に倒す。通信環境が悪化して送信変換が必要になると、切替スイッチ15a,15bをテーブルT2側に倒し、送信データの最下位ビットがパリティ信号になるように変換する。
図1において、送信パケット生成部16は、送信変換テーブル14からの音声データを10msec分蓄積して音声パケットを生成する。この音声パケットについて図5に基づいて説明する。図5は、本実施の形態の音声パケットのフォーマットを示す図である。
図5に示す音声パケットは、同期用のデータ(同期語)が格納されるシンクフィールド領域(16ビット)と、制御信号用データが格納されるAフィールド(48ビット)と、Aフィールドに対するCRC(Cyclic Redundancy Check)が格納されるAフィールドCRC(16ビット)と、音声データが格納されるBフィールド(320ビット)と、Bフィールドに対するCRCが格納されるBフィールドCRC(4ビット)とで構成されている。Bフィールドに対するCRCは、320ビットのBフィールド全部が対象ではなく、ビット番号で表すとb48〜b63,b112〜b127,b176〜b191,b240〜b255,b304〜b319の合計80ビットのみである。本実施の形態では、このBフィールドに格納される4ビットのADPCMの音声データのうちのエンハンスメントビットである最下位1ビットがパリティビットの役割を持つようにデータ変換される。ADPCMデータとしては最下位ビットも含めて4ビットすべてを音声データとして使用するが、予測信号の生成に使われるコアビット3ビットは変換せずにそのまま使用するので、音声品質の劣化は少なく、ある程度音声品質を維持したまま通話が行える。
無線送信回路17は、送信パケット生成部16からの音声パケットを変調して、無線信号としてアンテナ17aから送信する送信回路部として機能する。
このように親機10では、ADPCMの音声データの一部をパリティビットに変換する送信変換テーブル14と、変換された音声データを含めた音声パケットを生成する送信パケット生成部16と、無線信号として子機20へ送信する無線送信回路17とでデータ送信手段が構成されている。
次に、子機20について図1(B)に基づいて説明する。子機20は、無線受信回路21と、受信パケット処理部22と、受信変換テーブル23と、受信エラー処理部24と、受信変換テーブル切替部25と、ADPCM復号化部26と、PCM変換部27と、音声出力部28と、受信電界強度処理部29とを備えている。
無線受信回路21は、親機10からの無線信号をアンテナ21aにより受信し復調して音声パケットとして受信パケット処理部22へ出力する受信回路部として機能する。また、無線受信回路21は、受信音声パケットの受信電界強度(RSSI:Received
Signal Strength Indicator)を測定して受信電界強度処理部29へ出力する。
受信パケット処理部22は、所定の同期語が得られなかった場合の同期エラーや、Aフ
ィールドまたはBフィールドに対するCRCエラー、音声データのパリティエラーを検出して受信エラー処理部24へ通知したり、音声データを取り出して受信変換テーブル23へ出力したりする。
受信変換テーブル23は、親機10から受信した4ビットの音声データを変換して出力する。ここで受信変換テーブル23について、図6に基づいて詳細に説明する。図6は、受信変換テーブル23を説明するための図である。
受信変換テーブル23は、テーブルR1〜R4から構成される。テーブルR1は、入力された音声データをそのまま同じ値で出力するように構成されている。
テーブルR2は、4ビットをパリティチェックした結果、パリティエラーが発生している場合、ミュートデータに置き換えるように構成されている。親機10側では偶数パリティの規則に従って、下位1ビットにパリティビットの役割を持たせているので、それ以外の3ビットを含む全4ビット中の「1」の数によりパリティエラーの発生を識別する。すなわち“1”の数が奇数である「0001」や「0010」、「0111」などがパリティエラーである。
受信変換テーブル23のテーブルR2による変換は、パリティエラーが発生していなければそのままの音声データを出力し、パリティエラーが発生(受信データ4ビット中の「1」の数が奇数)していれば音声データをミュートデータに変換する。本実施の形態では、ミュートデータとしてはG.726で推奨され、負の最小値でもある「1111」とする。このようにパリティエラーの発生により、受信変換テーブル23が、エラーが発生した音声データに対してミュートデータに変換することで再生音声に対する影響を抑えることができる。なお「1111」に限らず、その他のミュートデータを使用しても良い。
テーブルR3は、テーブルR2と同様にパリティエラー発生のデータをミュートデータに変換することに加えて、パリティエラーが発生していないデータについては、受信データの上位1ビットが“0”であれば「1」を減算し、受信データの上位1ビットが“1”であれば「1」を加算することで音声を減衰させる音声データに置き換えるように構成されている。図6の例では、パリティエラー無しでかつ上位1ビットが“0”である場合、すなわち「0011」「0101」「0110」の場合に「1」を減算してそれぞれ「0010」「0100」「0101」と変換する。またパリティエラー無しでかつ上位1ビットが“1”である場合、すなわち「1001」「1010」「1100」の場合に「1」を加算してそれぞれ「1010」「1011」「1101」と変換する。
テーブルR4は、パリティエラーの発生に無関係に、全てをミュートデータ「1111」に置き換えるように構成されている。
図1(B)において、受信エラー処理部24は、受信パケット処理部22により検出された同期エラー、Aフィールドエラー、Bフィールドエラーなどの受信エラーが発生したときにカウントアップし、受信エラーが発生していなければカウントダウンするカウンタ(詳細は後述する)を有するエラー判定手段である。このカウンタの値は受信変換テーブル切替部25へ送られ、カウンタの値に応じて受信変換テーブル23が切り替えられる。
受信変換テーブル切替部25は、受信変換テーブル23の4つのテーブル(テーブルR1〜R4)を子機20からの受信エラー処理部24の指示、または受信電界強度処理部29からの受信電界強度信号に基づいて切り替えることで、受信変換テーブル23と共にデータ変換手段(受信側処理部)として機能するものである。ここで受信変換テーブル切替部25について、図7に基づいて説明する。図7は、受信変換テーブル切替部25を説明
するための図である。
受信変換テーブル切替部25は切替スイッチ25a,25bにより、受信変換テーブル23の中の使用するテーブル(R1〜R4)を切り替える。例えば変換処理をしない場合は受信パケット処理部22およびADPCM復号化部26をテーブルR1へ切り替え、パリティ処理をする場合は受信パケット処理部22およびADPCM復号化部26をテーブルR2へ切り替える。またパリティ処理+減衰処理をする場合は受信パケット処理部22およびADPCM復号化部26をテーブルR3へ切り替える。
ADPCM復号化部26は、受信変換テーブル23からの4ビットの音声データを復号化する。つまり、下位1ビットのパリティビットや、ミュートデータなどを含む4ビット全部を音声データとして復号化する。ここでADPCM復号化部26について、図8に基づいて説明する。図8は、ADPCM復号化部26を説明するための図である。
ADPCM復号化部26は、フィードバック適応逆量子化器26aとフィードフォワード適応逆量子化器26bとビットマスク部26cと適応予測器26dとを備えている。ADPCM符号入力からビットマスク部26cによりコアビットが取り出され、取り出されたコアビットのみがフィードバック適応逆量子化器26aに入力される。このフィードバック適応逆量子化器26aでは量子化された差分信号を計算し出力する。出力された量子化差分信号は、予測信号とともに加算器26eで加算され、適応予測器26dに入力され、予測信号を生成する。
フィードフォワード適応量子化器26bではADPCMすべてのビットを用いて量子化された差分信号を計算し出力する。音声データが32kbpsの場合は4ビットのADPCM符号入力となる。コアビットのみから計算された予測信号と4ビットすべてから計算された量子化差分信号を加算器26fにより加算することにより再生信号を出力する。
図1(B)において、PCM変換部27は、再生信号からアナログの音声信号を生成する。音声出力部28は、音声信号を再生するスピーカとすることができる。
受信電界強度処理部29は、無線受信回路21により測定された受信電界強度の変化を判定して、その判定結果を受信変換テーブル切替部25へ出力する受信電界強度レベル判定手段として機能する。この判定は、親機10と子機20との距離が離れた場合などにより受信電界強度が低下して、閾値A(第1の閾値)を下回ったときに通信環境が不良であると判断される。また、親機10と子機20とが接近して通信環境が良好となることで受信電界強度が上昇して、閾値B(第2の閾値)を上回ったときに通信環境が良好であると判断する。但し、判定では、閾値Aより閾値Bを高い値に設定している。
受信電界強度処理部29が通信環境に関する情報を受信変換テーブル切替部25へ出力することで、受信変換テーブル切替部25は、通信環境が良好であればパリティチェックを行わないテーブルR1を選択する。また、通信環境が不良であればパリティチェックを行ない(送信側:テーブルT2)、受信側では音声処理する他のテーブル(テーブルR2〜R4)のいずれかを選択する。受信電界強度処理部29は、受信電界強度の変化を判定した判定結果情報を親機10へ制御パケットを使って伝え、親機10と変換テーブルの同期をとる。
閾値Aより閾値Bを高い値とすることで、通信環境が悪化してパリティチェックを行わないテーブルR1から、パリティチェックを行なって音声処理するテーブルR2〜R4へ切り替わり、その後通信環境と良好となっても、悪化したときに受信変換テーブル23が切り替わったと同じ電界強度では切り替わらない。通信環境が十分なレベルまで良好にな
ってからパリティチェックを止めるので、受信変換テーブル23と送信変換テーブル14とが頻繁に切り替わることを防止することができる。
以上のように構成された本発明の実施の形態に係るコードレス電話機の通信方法について図面に基づいて説明する。まず、親機10と子機20との通信に際して、通信環境が良好で、受信エラーが発生しない場合を説明する。なお、送信変換テーブル14は図3に示されるテーブルT1が選択され、受信変換テーブル23は図6に示されるテーブルR1が選択されているものとする。
音声入力部11からの音声信号がPCM変換部12により量子化される。そして、ADPCM符号化部13によりADPCMで1符号が4ビットの音声データに圧縮する。
この4ビットの音声データは、送信変換テーブル14のテーブルT1に入力される。するとテーブルT1からは入力と同じ値の音声データが送信データとして出力される。送信変換テーブル14から出力された音声データは、送信パケット生成部16により音声パケットに内包され、無線送信回路17によりアンテナ17aを介して子機20へ無線信号として送信される。
子機20では、アンテナ21aを介して親機10からの無線信号を無線受信回路21が受信する。無線受信回路21が受信した無線信号は、復調され、音声パケットとして受信パケット処理部22へ出力される。
受信パケット処理部22は、音声パケットの受信エラーの有無をチェックし、音声パケットに内包された4ビットの音声データを取り出し受信変換テーブル23へ出力する。
受信変換テーブル23のテーブルR1へ入力されると、テーブルT1からは入力と同じ値の4ビットの音声データが出力される。受信変換テーブル23から出力された音声データは、ADPCM復号化部26へ入力されて伸張され、PCM変換部27により音声信号となり、音声出力部28により再生される。
この場合、送信側である親機10から子機20へ、4ビットのADPCMの音声データ全部を加工せずにそのまま使用して音声を送信するので、高い品質の音声を送信することができる。
次に、子機20が受信エラーを検出した場合を説明する。
子機20の受信パケット処理部22が同期エラーまたはCRCエラーなどの受信エラーを検出すると、図示しない送信機能を使って親機10へ受信エラーが発生した旨の受信エラー情報を送信する。親機10は受信エラー情報が通知されたことで通信環境が悪化したことを認識することができる。そこで、送信変換テーブル切替部15は、ADPCM符号化部13および送信パケット生成部16と、送信変換テーブル14との接続を、テーブルT1からテーブルT2へと切り替える。そうすることで、4ビットの音声データのうち下位1ビットがパリティビットとして変換される(図3参照)。パリティビットの生成に送信変換テーブル14を使用した方が、パリティビットを演算により算出するより簡単に変換することができる。
子機20では、親機10への受信エラー情報の通知と同期して、受信変換テーブル切替部25が、受信変換テーブル23をテーブルR1からテーブルR2へ切り替えるよう指示する(図6参照)。テーブルR2による変換は前述の通り、パリティエラーが発生していなければそのままの音声データを出力し、パリティエラーが発生していれば、音声データ
をミュートデータに変換する。
次に、従来の音声パケットと本実施の形態の音声パケットとの音声に対する影響について、図9から図11に基づいて説明する。図9は、従来の音声パケットのフォーマットを示す図、図10は、従来の音声パケットでの音声処理を説明するための図、図11は、本実施の形態の音声パケットでの音声処理を説明するための図である。
図9に示す従来の音声パケットでは、Bフィールドに対して、5箇所に分散した16ビットの音声データを対象にBフィールドのCRCが付加されているため、CRCの対象となっていない音声データが存在し、すべての音声データに対する受信エラーを検出できない場合がある。従って、BフィールドのCRCエラーだけでなく、同期用データのエラー、制御信号用データに付加されたCRCのエラー(AフィールドのCRCエラー)が検出された場合にも、BフィールドのCRC対象となっていない音声データにもエラーが発生している確率が高いと想定し、1フレーム全体に対してミュート等の音声処理を行うしかなかった。図10に示すように、1フレーム分には約10msecの音声データが含まれているので、1フレーム分の音声データを処理するとなると、音声に与える影響が大きい。
本実施の形態の音声パケットでは、4ビットの音声データに1ビットのパリティビットが含まれているので、エラーの検出を4ビットごとにできる。従って、図11に示すように、パリティエラーが発生した音声データのみをミュートデータとすることで、1フレーム分全部の音声処理を行う必要がなく、影響範囲は置き換えられた音声データのみであるため、音声に与える影響が小さい。
受信変換テーブル23から出力された音声データは、ADPCM復号化部26へ入力されて伸張され、PCM変換部27により音声信号となり、音声出力部28により再生される。再生される音声は、データレートを維持したままで、下位1ビットをパリティビットとして使用しているので、4ビット全部を音声データとして使用しているときより、多少劣化するものの、通信環境の悪化に伴う同期語のエラーやCRCエラーで1フレーム分の音声データを処理する場合よりも、高音質を確保することができる。
次に、受信エラー処理部24による送信および受信変換テーブルの切り替え方法について、図12から図16に基づいて説明する。図12は、受信エラー処理部24に設けられたカウンタを示す図であり、(A)はフレームエラーカウンタを示す図、(B)は音声データエラーカウンタを示す図である。図13は、受信変換テーブル切替処理を説明するためのフローチャートである。図14は、図13から引き続いて行われる受信変換テーブル切替処理を説明するためのフローチャートである。図15は、受信電界強度により判定される受信変換テーブル切替処理を説明するための図である。図16は、フレームエラーカウンタによる判定される受信変換テーブル切替処理を説明するための図である。
受信エラー処理部24には、受信パケット処理部22からのエラー通知の内容に応じて計数するカウンタを2つ有している。このカウンタは、図12に示すように、同期語エラー、AフィールドCRCエラー、またはBフィールドのCRCエラーによりカウントアップされ、エラーなしでカウントダウンされるフレームエラーカウンタC1と、4ビットの音声データがパリティエラーであったときにカウントアップされ、エラーなしでカウントダウンされる音声データエラーカウンタC2とからなる。なお、本実施の形態では、カウントアップは+1、カウントダウンは−1としているが、アップとダウンとで重み付けを変えるために異なる値としてもよい。この値はコードレス電話機が設置される通信環境に応じて適宜決定することが可能である。
図13に示すように、受信エラー処理部24は、受信パケット処理部22から同期語エラー、AフィールドCRCエラーまたはBフィールドのCRCエラーなどのフレーム系のエラーが発生しているか否かを判定する(S100)。発生していればフレームエラーカウンタC1を+1する(S110)。発生していなければフレームエラーカウンタC1を−1する(S120)。
次に現在使用している受信変換テーブル25が、テーブルR1か否かを判定する(S125)。受信変換テーブル25がテーブルR1である場合には、フレームエラーカウンタ値が閾値Cより大きいか否かを判定する(S130)。フレームエラーカウンタ値が閾値Cより大きければテーブルR1フラグを無効とする(S135)。つまり、図16に示すように、妨害電波等によりエラーが増えたため、テーブルR1フラグを無効にして、受信変換テーブル25を、パリティチェックを行わないテーブルR1からパリティチェックを行うまたは音声処理するテーブルR2〜R4へ切り替える。そうすることで、通信環境の悪化に伴って発生する音声データのエラーを精度よく検出することができる。S130にて、フレームエラーカウンタ値が閾値Cを下回っていれば、受信変換テーブル25は現状どおりテーブルR1を使用するため、テーブルR1フラグは有効のままとする。
また、図13に示すS125にて、現在使用している受信変換テーブル25が、テーブルR1でないと判定された場合、フレームエラーカウンタ値が閾値Dを下回っているか否かを判定する(S140)。下回っていればテーブルR1フラグを有効とする(S150)。つまり、図16に示すように、妨害電波が無くなったためエラーが無くなった場合に、テーブルR1フラグを有効にして、受信変換テーブル25を、パリティチェックを行うまたは音声処理するテーブルR2〜R4からパリティチェックを行わないテーブルR1へ切り替える。そうすることで、通信環境が良好となったことで、より品質のよい音声データで会話することができる。S140にて、フレームエラーカウンタ値が閾値Dを下回っていなければ、受信変換テーブル25は現状通りテーブルR2〜R4を使用するため、テーブルR1フラグは無効のままとする。
次に、受信電界強度処理部29は、現在使用している受信変換テーブル25が、テーブルR1か否かを判定する(S160)。受信変換テーブル25がテーブルR1である場合には、受信電界強度処理部29は、無線受信回路21により測定された受信電界強度が閾値Aを下回っているか否かを判定する(S170)。受信電界強度が閾値Aを下回っていればテーブルR1フラグを無効とする(S180)。つまり、図15に示すように、親機10と子機20との間の距離が離れるなどして受信電界強度が閾値Aより下回ったため、テーブルR1フラグを無効にして、受信変換テーブル25を、パリティチェックを行わないテーブルR1からパリティチェックを行うまたは音声処理するテーブルR2〜R4へ切り替える。そうすることで、通信環境の悪化に伴って発生する音声データのエラーを精度よく検出することができる。S170にて、受信電界強度が閾値Aを下回っていなければ、受信変換テーブル25は現状通りテーブルR1を使用するため、テーブルR1フラグは有効のままとする。
また、図13に示すS160にて、現在使用している受信変換テーブル25が、テーブルR1でないと判定された場合、受信電界強度処理部29は、受信電界強度が閾値Bを上回っているか否かを判定する(S190)。受信電界強度が閾値Bを上回っていればテーブルR1フラグを有効とする(S200)。つまり、図15に示すように、親機10と子機20との間の距離が接近するなどして受信電界強度が閾値Bを上回ったため、テーブルR1フラグを有効にして、受信変換テーブル25を、パリティチェックを行うまたは音声処理するテーブルR2〜R4からパリティチェックを行わないテーブルR1へ切り替える。そうすることで、通信環境が良好となったことで、より品質のよい音声データで会話することができる。S190にて、受信電界強度が閾値Bを上回っていなければ、受信変換
テーブル25は現状通りテーブルR2〜R4を使用するため、テーブルR1フラグは無効のままとする。
図14に示すように、次に、受信エラー処理部24は、音声データのパリティエラーである音声データエラーが発生している否かを判定する(S210)。発生していれば音声データエラーカウンタC2を+1する(S220)。発生していなければ−1する(S230)。
受信エラー処理部24は、テーブルR1フラグが有効であるか否かを判定する(S240)。テーブルR1フラグが有効であれば、フレームエラーレートが低く、良好な通信環境なので音声データエラーカウンタC2のカウント値とは無関係に親機10側ではテーブルT1とし、子機20側ではテーブルR1とするためS300へ移行する。
次に、受信エラー処理部24は、音声データエラーカウンタC2がレベルBの範囲内か否かを判定する(S250)。このレベルBは、フレーム系のエラーレートが高くなってきたが、音声データエラーレートはまだ低いと判断できる範囲である。従って、音声データのパリティチェックを行うために受信変換テーブル23はテーブルR2を選択するテーブルR2フラグを有効とする(S260)。そしてS300へ移行する。
音声データエラーカウンタC2がレベルBの範囲内でない場合、次にレベルCの範囲内か否かを判定する(S270)。このレベルCは、音声データエラーレートが徐々に高くなってきたと判断できる範囲である。従って、音声データのパリティエラーが発生した場合に音声データをミュートデータに置き換えるだけでなく、パリティエラーが発生していない場合でも音声を減衰させる音声データに置き換えるテーブルR3を選択するテーブルR3フラグを有効とする(R280)。そしてS300へ移行する。
音声データエラーカウンタC2がレベルCの範囲内でない場合ではレベルDであるので、テーブルR4フラグを有効とする。このレベルDは通信環境が最悪である。従って、受信変換テーブル23は、全ての音声データをミュートデータに置き換えるテーブルR4が選択される(S290)。
S300では、フラグに応じた受信変換テーブル23の切り替えを行う。例えば、テーブルR1フラグが有効であれば、受信エラー処理部24は受信変換テーブル切替部25へ受信変換テーブル23をテーブルR1とするように指示する。また、受信エラー処理部24は親機10へ送信変換テーブル14をテーブルT1とするように制御パケットを送信する。
また、テーブルR2フラグからテーブルR4フラグのいずれかが有効であれば、受信エラー処理部24は受信変換テーブル切替部25へ受信変換テーブル23をテーブルR2〜R4のいずれかのテーブルとするように指示する。また、親機10へエラー情報を通知して、送信変換テーブル14についてテーブルT2とするように指示する。
このように受信エラー処理部24が、音声データのパリティエラーに、同期語エラー、AフィールドCRCエラーまたはBフィールドのCRCエラーなどのフレーム系エラーを加味してエラーレートの増減を決定しているので、より精度よくエラーの発生に対応することができる。
また、受信エラー処理部24が、音声データのパリティビットの値によりエラーが発生したと判定された場合に音声データエラーカウンタC2をカウントアップし、エラーが発生しない場合は音声データエラーカウンタC2をカウントダウンし、この音声データエラ
ーカウンタC2によりエラーレートを増減することで、悪化したり良好となったりする通信環境に対応することができる。
また、受信変換テーブル23のテーブルR2ではパリティエラーが発生した音声データをミュートデータに変換しているが、音声データによってはクリックノイズが発生するおそれがある。そこで受信変換テーブル23をテーブルR3とすることで、同一フレーム内のエラーが発生していない音声データについては音声が減衰するように変換することにより、クリックノイズの影響を抑えることができる。
また、更に通信環境が悪化した場合に、同一フレーム内の全ての音声データをミュートデータに変換する受信変換テーブル23をテーブルR4とすることで、よりクリックノイズをより効果的に抑えることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は実施の形態に限定されるものではない。例えば、本実施の形態では、32kbpsのデータレートとしているので音声データが4ビットであるが、40kbpsのデータレートで音声データが5ビット、または24kbpsのデータレートで音声データが3ビットでも親機10と子機20とで同じデータレートであれば採用することが可能である。また、音声データに含まれるパリティビットは1ビットとする以外に複数ビットとしてもよい。
また、本実施の形態では、音声データの下位ビットをエラー検知ビットとしてパリティビットを採用しているが、他のエラー検出方法により最下位ビットを生成するようにしてもよい。