図1は本実施例の概略構成図の例である。照明部101、検出部102、試料Wを載置可能なステージ103、信号処理部105、制御部53、表示部54、入力部55、を有する。照明部101はレーザ光源2、アッテネータ3、出射光調整部4、ビームエキスパンダ5、偏光制御部6、照明強度分布制御部7を適宜備える。レーザ光源2から射出されたレーザ光ビームは、アッテネータ3で所望のビーム強度に調整され、出射光調整部4で所望のビーム位置、ビーム進行方向に調整され、ビームエキスパンダ5で所望のビーム径に調整され、偏光制御部6で所望の偏光状態に調整され、照明強度分布制御部7で所望の強度分布に調整され、試料Wの検査対象領域に照明される。
照明部101の光路中に配置された出射光調整部4の反射ミラーの位置と角度により試料表面に対する照明光の入射角が決められる。照明光の入射角は微小な欠陥の検出に適した角度に設定される。照明入射角が大きいほど、すなわち照明仰角(試料表面と照明光軸との成す角)が小さいほど、試料表面上の微小異物からの散乱光に対してノイズとなる試料表面の微小凹凸からの散乱光(ヘイズと呼ばれる)が弱まるため、微小な欠陥の検出に適する。このため、試料表面の微小凹凸からの散乱光が微小欠陥検出の妨げとなる場合には、照明光の入射角は好ましくは75度以上(仰角15度以下)に設定するのがよい。一方、斜入射照明において照明入射角が小さいほど微小異物からの散乱光の絶対量が大きくなるため、欠陥からの散乱光量の不足が微小欠陥検出の妨げとなる場合には、照明光の入射角は好ましくは60度以上75度以下(仰角15度以上30度以下)に設定するのがよい。また、斜入射照明を行う場合、照明部101の偏光制御部6における偏光制御により、照明の偏光をP偏光とすることで、その他の偏光と比べて試料表面上の欠陥からの散乱光が増加する。また、試料表面の微小凹凸からの散乱光が微小欠陥検出の妨げとなる場合には、照明の偏光をS偏光とすることで、その他の偏光と比べて試料表面の微小凹凸からの散乱光が減少する。
また、必要に応じて、図1に示すように、照明部101の光路中にミラー21を挿入し、適宜他のミラーを配置することにより、照明光路が変更され、試料面に対して実質的に垂直な方向から照明光が照射される(垂直照明)。このとき、試料面上の照明強度分布は照明強度分布制御部7vにより、斜入射照明と同様に制御される。ミラー21と同じ位置にビームスプリッタを挿入することで、斜入射照明と試料面の凹み状の欠陥(研磨キズや結晶材料における結晶欠陥)からの散乱光を得るには、試料表面に実質的に垂直に入射する垂直照明が適する。なお、図1に示す照明強度分布モニタ24については後に詳説する。
レーザ光源2としては、試料表面近傍の微小な欠陥を検出するには、試料内部に浸透しづらい波長として、短波長(波長355nm以下)の紫外または真空紫外のレーザビームを発振し、かつ出力2W以上の高出力のものが用いられる。出射ビーム径は1mm程度である。試料内部の欠陥を検出するには、試料内部に浸透しやすい波長として、可視あるいは赤外のレーザビームを発振するものが用いられる。
アッテネータ3は、第一の偏光板と、照明光の光軸周りに回転可能な1/2波長板と、第二の偏光板を適宜備える。アッテネータ3に入射した光は、第一の偏光板により直線偏光に変換され、1/2波長板の遅相軸方位角に応じて偏光方向が任意の方向に回転され、第二の偏光板を通過する。1/2波長板の方位角を制御することで、光強度が任意の比率で減光される。アッテネータ3に入射する光の直線偏光度が十分高い場合は第一の偏光板は必ずしも必要ない。アッテネータ3は入力信号と減光率との関係が事前に較正されたものを用いる。アッテネータ3として、グラデーション濃度分布を持つNDフィルタを用いることも、互いに異なる複数の濃度のNDフィルタを切替えて使用することも可能である。
出射光調整部4は複数枚の反射ミラーを備える。ここでは二枚の反射ミラーで構成した場合の実施例を説明するが、これに限られるものではなく、三枚以上の反射ミラーを適宜用いても構わない。ここで、三次元の直交座標系(XYZ座標)を仮に定義し、反射ミラーへの入射光が+X方向に進行しているものと仮定する。第一の反射ミラーは入射光を+Y方向に偏向するよう設置され(XY面内での入射・反射)、第二の反射ミラーは第一の反射ミラーで反射した光を+Z方向に偏向するよう設置される(YZ面内での入射・反射)。各々の反射ミラーは平行移動とあおり角調整により、出射調整部4から出射する光の位置、進行方向(角度)が調整される。前記のように、第一の反射ミラーの入射・反射面(XY面)と第二の反射ミラー入射・反射面(YZ面)が直交するような配置とすることで、出射調整部4から出射する光(+Z方向に進行)のXZ面内の位置、角度調整と、YZ面内の位置、角度調整とを独立に行うことができる。
ビームエキスパンダ5は二群以上のレンズ群を有し、入射する平行光束の直径を拡大する機能を持つ。例えば、凹レンズと凸レンズの組合せを備えるガリレオ型のビームエキスパンダが用いられる。ビームエキスパンダ5は二軸以上の並進ステージに設置され、所定のビーム位置と中心が一致するように位置調整が可能である。また、ビームエキスパンダ5の光軸と所定のビーム光軸が一致するようにビームエキスパンダ5全体のあおり角調整機能が備えられる。レンズの間隔を調整することにより、光束直径の拡大率を制御することが可能である(ズーム機構)。ビームエキスパンダ5に入射する光が平行でない場合には、レンズの間隔の調整により、光束の直径の拡大とコリメート(光束の準平行光化)が同時に行われる。光束のコリメートはビームエキスパンダ5の上流にビームエキスパンダ5と独立にコリメートレンズを設置して行ってもよい。ビームエキスパンダ5によるビーム径の拡大倍率は5倍から10倍程度であり、光源から出射したビーム径1mmのビームが5mmから10mm程度に拡大される。
偏光制御部6は、1/2波長板、1/4波長板によって構成され、照明光の偏光状態を任意の偏光状態に制御する。照明部101の光路の途中において、ビームモニタ22によって、ビームエキスパンダ5に入射する光、および照明強度分布制御部7に入射する光の状態が計測される。
図2乃至図6に、照明部101より試料面に導かれる照明光軸120と照明強度分布形状との位置関係の模式図を示す。なお、図2乃至図6における照明部101の構成は照明部101の構成の一部を示したものであり、出射光調整部4、ミラー21、ビームモニタ22等は省略されている。図2に、斜入射照明の入射面(照明光軸と試料表面法線とを含む面)の断面の模式図を示す。斜入射照明は入射面内にて試料表面に対して傾斜している。照明部101により入射面内において実質的に均一の照明強度分布が作られる。照明強度が均一である部分の長さは、単位時間当たりに広い面積を検査するため、100μmから4mm程度である。図3に、試料表面法線を含みかつ斜入射照明の入射面に垂直な面の断面の模式図を示す。この面内で、試料面上の照明強度分布は中心に対して周辺の強度が弱い照明強度分布を成す。より具体的には、照明強度分布制御部7に入射する光の強度分布を反映したガウス分布、あるいは照明強度分布制御部7の開口形状を反映した第一種第一次のベッセル関数あるいはsinc関数に類似した強度分布となる。この面内での照明強度分布の長さ(最大照明強度の13.5%以上の照明強度を持つ領域の長さ)は、試料表面から発生するヘイズを低減するため、前記入射面内における照明強度が均一である部分の長さより短く、2.5μmから20μm程度である。照明強度分布制御部7は、後述する非球面レンズ、回折光学素子、シリンドリカルレンズアレイ、ライトパイプなどの光学素子を備える。照明強度分布制御部7を構成する光学素子は図2、図3に示されるように、照明光軸に垂直に設置される。
照明強度分布制御部7は入射する光の位相分布および強度分布に作用する光学素子を備える。照明強度分布制御部7を構成する光学素子として、回折光学素子71(DOE:Diffractive Optical Element)が用いられる(図7)。回折光学素子71は、入射光を透過する材質によりなる基板の表面に、光の波長と同等以下の寸法の微細な起伏形状を形成したものである。入射光を透過する材質として、紫外光用には溶融石英が用いられる。回折光学素子71を通過することによる光の減衰を抑えるため、反射防止膜によるコーティングが施されたものを用いるとよい。前記の微細な起伏形状の形成にはリソグラフィ法が用いられる。前記ビームエキスパンダ5を通過後に準平行光となった光を、回折光学素子71を通過させることにより、回折光学素子71の起伏形状に応じた試料面上照明強度分布が形成される。回折光学素子の71起伏形状は、試料表面上で形成される照明強度分布が前記入射面内に長く均一な分布となるよう、フーリエ光学理論を用いた計算に基づいて求められた形状に設計され、製作される。照明強度分布制御部7に備えられる光学素子は、入射光の光軸との相対位置、角度が調整可能となるよう、二軸以上の並進調整機構、および二軸以上の回転調整機構が備えられる。さらに、光軸方向の移動によるフォーカス調整機構が設けられる。前記回折光学素子71と同様の機能を持つ代替の光学素子として、非球面レンズ、シリンドリカルレンズアレイとシリンドリカルレンズとの組合せ、ライトパイプと結像レンズとの組合せを用いてもよい。
照明部101における照明光の状態がビームモニタ22によって計測される。ビームモニタ22は、出射光調整部4を通過した照明光の位置および角度(進行方向)、あるいは照明強度分布制御部7に入射する照明光の位置および波面を計測して出力する。照明光の位置計測は、照明光の光強度の重心位置を計測することによって行われる。具体的な位置計測手段としては、光位置センサ(PSD:Position Sensitive Detector)、あるいはCCDセンサやCMOSセンサなどのイメージセンサが用いられる。照明光の角度計測は前記位置計測手段より光源から遠く離れた位置、あるいはコリメートレンズによる集光位置に設置された光位置センサあるいはイメージセンサによって行われる。ビームモニタ22において計測された照明光位置、照明光角度は制御部53に入力され、表示部54に表示される。照明光位置あるいは角度が所定の位置あるいは角度からずれていた場合は、前記出射光調整部4において所定の位置に戻るよう調整される。
照明光の波面計測は、照明強度制御部7に入射する光の平行度を測定するために行われる。シアリング干渉計による計測、あるいはシャックハルトマン波面センサによる計測が行われる。シアリング干渉計は、両面を平坦に研磨した厚さ数mm程度の光学ガラスを照明光路中に斜めに傾斜させて挿入し、表面による反射光と裏面による反射光とをスクリーンに投影した際に観測される干渉縞の模様によって、照明光の発散・収束状態を計測するものであり、シグマ光機社製SPUV−25などがある。スクリーン位置にCCDセンサやCMOSセンサなどのイメージセンサを設置すれば照明光の発散・収束状態の自動計測が可能である。シャックハルトマン波面センサは、細かなレンズアレイによって波面を分割してCCDセンサなどのイメージセンサに投影し、投影位置の変位から個々の波面の傾斜を計測するものである。シアリング干渉計と比較して、部分的な波面の乱れなど詳細な波面計測を行うことができる。波面計測により照明強度制御部7に入射する光が準平行光でなく、発散あるいは収束していることが判明した場合、前段のビームエキスパンダ5のレンズ群を光軸方向に変位させることで、準平行光に近づけることができる。また、波面計測により照明強度制御部7に入射する光の波面が部分的に傾斜していることが判明した場合、空間光変調素子(SLM:Spatial Light Modulator)の一種である空間光位相変調素子を照明強度制御部7の前段に挿入し、波面が平坦になるよう光束断面の位置ごとに適当な位相差を与えることで、波面を平坦に近づける、すなわち照明光を準平行光に近づけることができる。以上の波面精度計測・調整手段により、照明強度分布制御部7に入射する光の波面精度(所定の波面(設計値あるいは初期状態)からのずれ)がλ/10rms以下に抑えられる。
照明強度分布制御部7において調整された試料面上の照明強度分布は、照明強度分布モニタ24によって計測される。なお、図1で示したように、垂直照明を用いる場合でも、同様に、照明強度分布制御部7vにおいて調整された試料面上の照明強度分布が照明強度分布モニタ24によって計測される。照明強度分布モニタ24はレンズを介して試料面をCCDセンサやCMOSセンサなどのイメージセンサ上に結像して画像として検出するものである。照明強度分布モニタ24で検出された照明強度分布の画像は制御部53において処理され、強度の重心位置、最大強度、最大強度位置、照明強度分布の幅、長さ(所定の強度以上あるいは最大強度値に対して所定の比率以上となる照明強度分布領域の幅、長さ)などが算出され、表示部54において照明強度分布の輪郭形状、断面波形などと共に表示される。
斜入射照明を行う場合、試料面の高さ変位によって、照明強度分布の位置の変位およびデフォーカスによる照明強度分布の乱れが起こる。これを抑制するため、試料面の高さを計測し、高さがずれた場合は照明強度分布制御部7、あるいはステージ103のZ軸による高さ調整によりずれを補正する。図8は本実施例の照明部および照明光の計測、補正に関連する部分の構成図の例である。試料面の高さ計測は、光線射出部31と、光線射出部31から射出し試料面で反射した光線を受光する受光部32とを用いて行われる。光線射出部31は半導体レーザなどの光源と投光レンズを備える。受光部32は受光レンズと光位置センサを備える。半導体シリコン表面や磁気ディスク基板表面など光沢の強い試料面の計測を行うため、光線射出部31から射出し試料面で正反射した光を受光部32で検出するよう、光線射出部31と受光部32が配置される。試料面の高さ変位は、三角測量の原理により、受光部32の光位置センサにて検出される光スポットの位置ずれとして検出される。
試料面の高さ変位による、照明光照射位置の試料面内方向の位置ずれの補正は、照明強度分布制御部7の下流に設置され照明光を試料面に向ける偏向手段33の偏向角度調整により行われる。偏向手段33は、照明光を偏向する反射ミラーおよび反射ミラーの照明光軸に対するあおり角を制御するピエゾ素子を備え、あおり角を±1mrad程度の範囲で400Hz以上の周波数で制御するものである。高さ変位計測値と照明光入射角から照明光照射位置の試料面内方向の位置ずれ量が求められ、このずれを補正するよう、偏向手段33において制御部53から出力された制御信号をうけ反射ミラーが制御される。なお、照明光照射位置の試料面内方向の位置ずれは、照明強度分布モニタ24を用いて照明強度分布の重心位置等を直接計測することによっても可能である。試料面の高さ変位による、照明光照射位置の試料面内方向の位置ずれを上記偏向手段33により補正した場合、照明強度分布制御部7と試料表面との光路長が補正前とずれるため、ずれ量によっては照明スポットのデフォーカスが起こる。光路長の変化量は高さ変位計測値と高さ変位計測値と照明光入射角から求められ、これに基づいて、照明強度分布制御部7に備えられる光学素子の光軸方向の位置調整あるいはビームエキスパンダ5の発散角調整などによりデフォーカスが低減される。
光源2として、高出力が得やすいパルスレーザを用いる場合は、試料に与えられる照明のエネルギーがパルスの入射する瞬間に集中するため、パルスの入射による瞬間的な温度上昇に起因して試料に熱ダメージが生じる場合がある。これを回避するためには、パルスレーザの光路を分岐し、分岐した光路間に光路差を付けた後で光路を合成することで、図10に示すように総エネルギーを保ちつつ一パルスあたりのエネルギーを減少させることが有効である。
図9に上記を実施するための光学系の一例を示す。ビームエキスパンダ5を通過した後の照明光が、偏光ビームスプリッタ151により、偏光ビームスプリッタ151にて反射した第一の光路と偏光ビームスプリッタ151を透過した第二の光路とに分岐される。第一の光路はレトロリフレクタ152により反射して戻り、偏光ビームスプリッタ153で反射され、第二の光路と合成される。レトロリフレクタ152は互いに直交する二枚以上の反射ミラーを備え、入力光を180度反対の方向に折り返すものである。コーナーキューブとも呼ばれる。レトロリフレクタの代わりに独立した二枚以上の反射ミラーを用いてもよい。レトロリフレクタ偏光ビームスプリッタ151にて反射する光強度と透過する光強度を等しくするため、波長板150により、照明光の偏光が円偏光あるいは斜め45度の直線偏光などに調整される。第一の光路と第二の光路との間の光路差をLとすると、第一の光路を通過した光のパルスと第二の光路を通過した光のパルスの時間間隔Δtp=L/cとなる。Δtpを、単一のパルスが入射した際の温度上昇が緩和するのに要する時間と同等以上にすることで、単一パルスによる試料の瞬間的な温度上昇および複数パルスによる熱の蓄積による温度上昇が抑制される。
照明部101によって試料面上に形成される照度分布形状(照明スポット20)と試料走査方法について図11及び図12を用いて説明する。試料Wとして円形の半導体シリコンウェハを想定する。ステージ103は、並進ステージ、回転ステージ、試料面高さ調整のためのZステージ(いずれも図示せず)を備える。照明スポット20は前述の通り一方向に長い照明強度分布を持ち、その方向をS2とし、S2に実質的に直交する方向をS1とする。回転ステージの回転運動によって、回転ステージの回転軸を中心とした円の円周方向S1に、並進ステージの並進運動によって、並進ステージの並進方向S2に走査される。走査方向S1の走査により試料を1回転する間に、走査方向S2へ照明スポット20の長手方向の長さ以下の距離だけ走査することにより、照明スポットが試料W上にてらせん状の軌跡Tを描き、試料1の全面が走査される。
検出部102は、照明スポット20から発する複数の方向の散乱光を検出するよう、複数配置される。検出部102の試料Wおよび照明スポット20に対する配置例について図13乃至図15を用いて説明する。図13に検出部102の配置の側面図を示す。試料Wの法線に対して、検出部102による検出方向(検出開口の中心方向)のなす角を、検出天頂角と定義する。検出部102は、検出天頂角が45度以下の高角検出部102hと、検出天頂角が45度以上の低角検出部102lを適宜用いて構成される。高角検出部102h、低角検出部102l各々は、各々の検出天頂角において多方位に散乱する散乱光をカバーするよう、複数の検出部を備えてなる。図14に、低角検出部102lの配置の平面図を示す。試料Wの表面と平行な平面内において、斜入射照明の進行方向と検出方向とのなす角を検出方位角と定義する。低角検出部102は、低角前方検出部102lf、低角側方検出部102ls、低角後方検出部102lb、およびそれらと照明入射面に関して対称な位置にある低角前方検出部102lf’、低角側方検出部102ls’、低角後方検出部102lb’を適宜備える。例えば、低角前方検出部102lfは検出方位角が0度以上60度以下、低角側方検出部102lsは検出方位角が60度以上120度以下、低角後方検出部102lbは検出方位角が120度以上180度以下に設置される。図15に、高角検出部102hの配置の平面図を示す。高角検出部102は、高角前方検出部102hf、高角側方検出部102hs、高角後方検出部102hb、および高角側方検出部102hsと照明入射面に関して対称な位置にある高角側方検出部102hs’を適宜備える。例えば、高角前方検出部102hfは検出方位角が0度以上45度以下、高角側方検出部102sは検出方位角が45度以上135度以下、高角後方検出部102bは検出方位角が135度以上180度以下に設置される。なお、ここでは高角検出部102hが4つ、低角検出部102lが6つある場合を示したがこれに限られず、検出部の数・位置を適宜変更してもよい。
検出部102の具体的な構成図の例を図16に示す。照明スポット20から発生する散乱光を対物レンズ201によって集光し、偏光フィルタ202を通過させた後、結像レンズ203によって複数画素センサ204の受光面に導かれ、検出される。散乱光を効率良く検出するため、対物レンズ201の検出NAは0.3以上にするのが好ましい。低角度検出部の場合、対物レンズ201の下端が試料面Wに干渉しないよう、必要に応じて対物レンズの下端を切り欠く。偏光フィルタ202は偏光板あるいは偏光ビームスプリッタからなり、任意の方向の直線偏光成分をカットするよう設置される。偏光板として、透過率80%以上のワイヤグリッド偏光板や偏光ビームスプリッタなどが用いられる。楕円偏光を含む任意の偏光成分をカットする場合は、波長板と偏光板を備えてなる偏光フィルタ202を設置する。
図18に複数画素センサ204の構成を示す。対物レンズ201および結像レンズ203によって、試料面の像が試料面と共役な試料面共役面205に結像される。図18における欠陥像221および欠陥像の一軸拡大像225は、欠陥が検出部102の検出視野の中央にある状態の一例を模式的に示したものである。欠陥像221は試料面共役面225上で一旦結像した後、結像レンズ203の像側のNAに従う広がり角を持って、検出部102の光軸方向に進行する。この光が一軸結像系223により、試料面共役面205における走査方向S2に対応する方向について結像し、アレイセンサ224の受光面上に像を結ぶ。試料面共役面205における走査方向S1に対応する方向に関しては、前記の広がり角を持ったままアレイセンサ224の受光面上に達する。
一軸結像系223は、走査方向S1に対応する方向のみ光を集光させる作用を持ち、シリンドリカルレンズあるいはシリンドリカルレンズと球面レンズとの組合せによって構成される。一軸結像系223の作用により、欠陥像221は走査方向S1に対応する方向に拡大される。試料共役面上205上の欠陥像の大きさは、照明光の波長より小さい微小欠陥の場合、検出部102の光学的な解像度によって決まり、具体的には結像レンズ203の像側のNAによって決まる(微小欠陥の像の大きさ(点像広がり)=1.22×(波長)/(像側NA))。欠陥像の一軸拡大像225のS1方向の長さ、すなわちS1方向の拡大率は、試料面共役面205とアレイセンサ224の受光面との間の光路長、および結像レンズ203の像側のNAによって決まる。この長さは、アレイセンサ224の受光面のS1方向の長さと実質的に等しくなるよう複数画素センサ204が構成される。欠陥像の一軸拡大像225のS2方向の幅は、一軸結像系223の倍率によって決まる。この長さは、アレイセンサ224の受光面のS2方向の長さと同等かそれ以下になるよう、複数画素センサ204が構成される。
試料面上からの散乱光は、照明スポット20の位置から発生し、検出部102によって検出されるが、光の波動的性質により照明スポット20の外の領域にも相対的に弱い強度の照明が実質的には照射される。この結果、照明スポット20の外の大きい異物や試料面の端の角で発生した散乱光の一部がアレイセンサ224の受光面に入射し、ノイズとなって感度を低下させる場合がある。これが問題になる場合、遮光スリット222を設置することで、これらの邪魔な散乱光を遮光し、低減することが可能である。遮光スリットは試料面共役面205における照明スポット20の像の幅より広い幅のスリット状の開口部(光透過部)を有し、スリット状開口部の中心が照明スポット20の像の位置と一致するよう設置される。開口部以外が遮光されるため、照明スポット20の当った試料面上の領域以外からの散乱光が低減される。
図19はアレイセンサ224の受光面の構成図の一例である。アレイセンサ224は、複数のアバランシェフォトダイオード(APD)を二次元に配列した構成を有する。以下、個々のAPDの受光部をAPD画素と呼ぶ。APD画素231は各々がガイガーモード(光電子増倍率が105以上)で動作するように電圧が印加される。APD画素231に一つの光子が入射すると、APD画素の量子効率に応じた確率でAPD画素231内に光電子が発生し、ガイガーモードAPDの作用で増倍され、パルス状の電気信号を出力する。S1方向のAPD画素行232(図19で点線の四角232で囲まれた中にあるAPD画素の集合)を一つの単位とし、S1方向APD画素行毎に、画素行に含まれるAPDの各々で発生したパルス状電気信号が合計されて出力される。S2方向に複数のAPD画素行が配列されており、各行のAPD画素の出力信号が並列に出力される。
図20は一つのS1方向APD画素行232と等価な回路の回路図の例である。図中の一つのクエンチング抵抗226とAPD227の組が、一つのAPD画素231に対応する。各APDに逆電圧VRが印加される。逆電圧VRをAPDの降伏電圧以上に設定することで、APD227がガイガーモードで動作する。図20に示した回路構成とすることで、S1方向APD画素行232に入射した光子数の合計に比例した出力電気信号(電圧、電流の波高値、あるいは電荷量)が得られる。S1方向APD画素行232各々に対応する出力電気信号(電圧、電流の波高値、あるいは電荷量)はアナログ−デジタル変換され、時系列のデジタル信号として並列に出力される。
個々のAPD画素は、短い時間内に複数の光子が入射しても一つの光子が入射した場合と同程度のパルス信号しか出力しないため、個々のAPD画素への単位時間当たりの入射光子数が大きくなると、APD画素行の合計出力信号が入射光子数に比例しなくなり、信号の線形性が損なわれる。また、APD画素行の全ての画素に一定量(一画素当り平均1光子程度)以上の入射光が入ると、出力信号が飽和する。S1方向に多数のAPD画素を並べた構成とすることで、一画素当りの入射光量を低減することができ、より正確な光子計数が可能となる。例えばS1方向の画素数を1000画素とすることで、APD画素の量子効率が30%の場合、検出の単位時間当り約1000光子以下の光強度で十分なリニアリティを確保でき、約3300光子程度以下の光強度を飽和することなく検出することが可能となる。
図18に示した複数画素センサ204の構成では、S1方向に関して、光強度が一様でなく、アレイセンサ224の中央に対して端の光強度が弱くなる。これはS1方向の実効的なAPD画素数が減少することを意味する。シリンドリカルレンズの代わりにS1方向に曲率を持つ微小なシリンドリカルレンズをS1方向に多数並べたレンチキュラーレンズ、回折型光学素子、あるいは非球面レンズを用いることで、欠陥像の一軸拡大像225のS1方向の分布を強度が均一な分布とすることができる。こうすることで、S1方向のAPD画素数を保ったまま、リニアリティを確保できる光強度範囲あるいは飽和しない光強度範囲を拡大することができる。
以上述べた複数画素センサ204の構成により、試料面共役面205のS2方向の各位置ごとの光子数を同時並列に計数することができる。
検出部102の具体的な構成図の変形例を図17に示す。照明スポット20から発生する散乱光を対物レンズ201によって集光し、偏光フィルタ202通過させた後、結像レンズ203によって、試料面と共役な面に設置された回折格子206上に試料面の像(中間像)が結像される。回折格子206上に形成された試料面の像は、結像系207によって複数画素センサ204の受光面上に投影され、検出される。複数画素センサ204は、一方向に長い照明スポット20の形状に合せ、画素の配列方向が照明スポット20の像の長手方向に一致するよう、試料面に共役な面内に設置される。回折格子206は、結像レンズ203によって導かれ中間像を形成する光を回折格子206の表面の法線方向に回折させるため、結像レンズ203によって導かれ中間像を形成する光の光軸に沿った入射光のN次回折光が回折格子206の表面の法線方向に向かうよう、回折格子形状が形成されたものを用いる。回折効率を高めるため、ブレーズ回折格子が用いられる。以上の構成をとり試料面に共役な面に複数画素センサ204を設置することで、試料面上のS1方向についてもピントのずれを低減して広い範囲で有効視野を確保することができ、かつ光量ロスを少なく散乱光を検出することができる。
ここで、照明スポット20の長さと検出部102の光学倍率、複数画素センサ204の寸法との関係を説明する。高感度、高速検査を行う場合、照明スポット20の長さは概略500μmに設定される。複数画素センサ204としてS2方向に25μmピッチで100画素が並んだもの(S1方向APD画素行232が100行並んだもの)を設置する場合、検出部の光学倍率は5倍となり、試料面上に投影される画素のピッチは5μmとなる。
この条件で試料を回転速度2000rpmで回転させた場合、直径300mmの円形試料は9秒で、直径450mmの円形試料は14秒で全面が走査される。さらに高速に検査を行う場合、照明スポット20の長さは概略1000μmに設定される。この場合、検出部の光学倍率は0.4倍となり、試料面上に投影される画素のピッチは62.5μmとなる。この条件で試料を回転速度2000rpmで回転させた場合、直径300mmの円形試料は5秒で、直径450mmの円形試料は7秒で全面が走査される。
次に、図21を用いて、広い角度範囲をカバーする複数の検出光学系によって同時に検出される様々な方向の散乱光強度検出信号に基づいて様々な欠陥種の分類や欠陥寸法の推定を高精度に行う信号処理部105について説明する。ここでは簡単のため複数の検出部102のうち検出部102a、102b(図示しない)の二系統備えた場合の信号処理部105の構成について説明する。また検出部102a、102b各々が、APD画素行毎に信号を出力する。ここではその中の一つの画素行の信号に着目した説明を行うが、他の画素行についても同様の処理が並列して行われることは言うまでもない。検出部102a、102b各々に備えられた検出器から出力された、検出散乱光量に対応する出力信号500a、500bは、デジタル処理部52において、ハイパスフィルタ604a、604bの各々により欠陥信号603a、603bの各々が抽出され、欠陥判定部605に入力される。欠陥は照野20によりS1方向に走査されるため、欠陥信号の波形は照野20のS1方向の照度分布プロファイルを拡大縮小したものとなる。従って、ハイパスフィルタ604a、604bの各々により、欠陥信号波形の含まれる周波数帯域を通し、ノイズが相対的に多く含まれる周波数帯域および直流成分をカットすることで、欠陥信号603a、603bのS/Nが向上する。各ハイパスフィルタ604a、604bとしては、特定のカットオフ周波数を持ちその周波数以上の成分を遮断するよう設計されたハイパスフィルタ、あるいはバンドパスフィルタ、あるいは照明スポット20の形状が反映された欠陥信号の波形と相似形を成すFIRフィルタを用いる。欠陥判定部605は、ハイパスフィルタ604a、604bの各々から出力された欠陥波形を含む信号の入力に対してしきい値処理を行い、欠陥の有無を判定する。即ち、欠陥判定部605には、複数の検出光学系からの検出信号にもとづく欠陥信号が入力されるので、欠陥判定部605は、複数の欠陥信号の和や加重平均に対してしきい値処理を行うか、または複数の欠陥信号に対してしきい値処理により抽出された欠陥群についてウェハの表面に設定された同一座標系でORやANDを取ることなどにより、単一の欠陥信号に基づく欠陥検出と比較して高感度の欠陥検査を行うことが可能となる。
更に、欠陥判定部605は、欠陥が存在すると判定された箇所について、その欠陥波形と感度情報信号に基づいて算出されるウェハ内の欠陥位置を示す欠陥座標および欠陥寸法の推定値を、欠陥情報として制御部53に提供して表示部54などに出力する。欠陥座標は欠陥波形の重心を基準として算出される。欠陥寸法は欠陥波形の積分値あるいは最大値を元に算出される。
さらに、アナログ処理部51からの各々の出力信号は、デジタル処理部52を構成するハイパスフィルタ604a、604bに加えて、ローパスフィルタ601a、601bの各々に入力され、ローパスフィルタ601a、601bの各々において、ウェハ上の照明スポット20における微小ラフネスからの散乱光量(ヘイズ)に対応する周波数の低い成分および直流成分が出力される。このようにローパスフィルタ601a、601bの各々からの出力はヘイズ処理部606に入力されてヘイズ情報の処理が行われる。即ち、ヘイズ処理部605は、ローパスフィルタ601a、601bの各々から得られる入力信号の大きさからウェハ上の場所ごとのヘイズの大小に対応する信号をヘイズ信号として出力する。また、微小ラフネスの空間周波数分布に応じてラフネスからの散乱光量の角度分布が変わるため、図13乃至23に示したように、互いに異なる方位、角度に設置された複数の検出部102の各検出器からのヘイズ信号をヘイズ処理部606への入力とすることで、ヘイズ処理部606からはそれらの強度比などから微小ラフネスの空間周波数分布に関する情報を得ることができる。
照明部101によって試料面上に作られる照明強度分布の変形例を説明する。前記の一方向に長く(線状の)、長手方向に関して実質的に均一な強度を持つ照明強度分布の代替として、長手方向に関してガウス分布を持つ照明強度分布を用いることも可能である。一方向に長いガウス分布照明は、照明強度分布制御部7に球面レンズを有し、ビームエキスパンダ5にて一方向に長い楕円ビームを形成する構成とすること、あるいは照明強度分布制御部7をシリンドリカルレンズを含む複数のレンズで構成すること、などにより形成される。照明強度分布制御部7が有する球面レンズあるいはシリンドリカルレンズの一部あるいは全部は、試料面に対して平行に設置されることで、試料面上の一方向に長く、それに垂直な方向の幅の狭い照明強度分布が形成される。均一な照明強度分布を作る場合に比べて、照明強度分布制御部7に入射する光の状態の変動による試料面上の照明強度分布の変動が小さく、照明強度分布の安定性が高い、また照明強度分布制御部7に回折光学素子やマイクロレンズアレイなどを用いる場合と比べて光の透過率が高く効率がよい、という特長がある。
アレイセンサ224の変形例の構成図を図22に示す。APD画素を配列したアレイセンサ224において、個々のAPD画素が小さい場合、APD画素間の不感帯の面積がAPD画素の受光部の有効面積に対して相対的に大きくなるため、アレイセンサ224の開口率が低下し、光検出効率が低下する問題がある。そこで、アレイセンサ224の受光面の前にマイクロレンズアレイ228を設置することで、画素間の不感帯に入射する光の割合を低減し、実効的な回効率を向上することができる。マイクロレンズアレイ228はAPD画素の配列ピッチとおなじピッチで微小な凸レンズが並んだものであり、アレイセンサ224への入射光の主光軸に平行な光線(図22の点線)が対応するAPD画素の中央付近に入射するよう設置される。
図23に複数画素センサ204の変形例の構成図を示す。S1方向の結像作用を持つ一軸結像系229と、S2方向の結像作用を持つ一軸結像系223を有する。S1方向の結像倍率をS2方向の結像倍率より高くすることで、欠陥像221がS1方向に拡大される。一軸結像系229および一軸結像系223としてシリンドリカルレンズを用いる場合、一軸結像系229を一軸結像系223よりも試料面共役面205の近くに設置してS1方向の結像関係を作ることで、S1方向の倍率がS2方向の倍率より高くなる。前述の構成(図18)では、一軸拡大像225のS1方向の光強度分布あるいは像の広がりの大きさが、試料面共役面205における散乱光のS1方向の角度分布に依存して変化するケースがある。これに対し、本変形例では欠陥像221の大きさと、一軸結像系229および一軸結像系223の構成と配置で決まるS1およびS2方向の結像倍率とによって一軸拡大像225の大きさが決まる。微小欠陥の欠陥像221の大きさは、前述の通り検出部102の光学解像度で決まるため、一軸拡大像225の大きさの変化が小さく、安定した検査結果が得られる。
アレイセンサ224を構成要素であるアバランシェフォトダイオードの代用として、電子増倍率の高い(104以上)光電子増倍管を用いることも可能である。アバランシェフォトダイオードを用いた方が、個々の画素の大きさを小さくできるため、検出部102の光学倍率を低くできること、数百画素、数千画素以上の集積が低コストで可能であること、などの利点があるのに対し、光電子増倍管は電子増倍率の温度依存性が低く安定しているという利点がある。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。