JP5815328B2 - 鋳型砂とその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は溶融球状物からなる鋳型砂とその製造方法に関する。詳しくは、歩留まりが向上し、粉塵の発生量が少なくて製造時の作業環境に優れている鋳型砂とその製造方法に関するものである。
鋳造工場で使用される鋳型砂は、一般に有機系や無機系の粘結剤を添加して所定形状にされ、これを硬化させることで鋳型に成型される。そしてこの鋳型に金属溶湯が注入されることで鋳造品が製造される
鋳型砂は、一般的に珪砂が用いられている。しかし、珪砂は573℃において急激な熱膨張が現れるため、それらによる鋳造欠陥を発生し易いといった問題点がある。また、珪砂は加熱によって砂粒子が破壊され易いため、鋳型砂とした場合に発塵が多くなり、廃棄物が多量に生じるという環境上の問題点がある。
従来、上記問題点を解消するため、合成ムライトの原料からなる微粉末を焼成して球状化した鋳型砂が提案されている(特許文献1参照)。すなわち、この鋳型砂は、化学成分がAlが20〜70重量%でSiOが80〜30重量%となるようにスラリー状に泥漿(スラリー状物)を配合し、これに解こう剤を添加してスプレードライヤーにより微粒化し、これをロータリーキルンにて1550℃付近で焼結して球状の鋳型砂としている。
このような鋳型砂は、珪砂に比べて強度が高く、廃棄物の減少化と砂の再使用率の向上、鋳型強度の向上、さらに粘結剤の使用量の減少によるコスト面での効果に優れている。しかしながら、これらの鋳型砂は上記配合のスラリー状物を噴霧して得た微粒子を焼結していることから、焼結物である微粒子の表面はムライト結晶として存在している。しかもその表面は、図4(c)に示す走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」と称する)写真の如く、凹凸形状となっていて滑らかではない。
このように、砂粒子の表面に凹凸が多いと、砂粒子への粘結剤の吸着量の増加、ひいては粘結剤の使用量が多くなりコスト高になるうえ、砂粒子の破砕性を増大させる傾向がある。また、回収した鋳型砂に含まれる残留物が多くなることで耐熱性と硬化特性を低下させる問題がある。その結果、この鋳型砂はリサイクル性や強度的に安定した鋳型特性を得る観点からは未だ十分とは言えない状態にある。
そこで、砂粒子の表面を平滑にした鋳型砂を得るための製造方法として、上記の造粒して焼結する方法(特許文献1参照)の他に、アーク溶融吹き込み法(特許文献2参照)が提案されている。アーク溶融吹き込み法は、Al−SiO系の耐火物原料を溶融させ、高圧ガスを吹き付けて微粒子状に飛散させながら冷却固化することで、Alが40〜90重量%、SiOが60重量%以下でムライト並びにアルミナの結晶構造を有する溶融球状鋳型砂を得る方法である。この方法によれば、図4(a)に示すSEM写真の如く、表面が平滑な砂粒子を得ることができる。
アーク溶融吹き込み法に用いられる鋳型砂製造装置が、製造装置としては簡易であり、汎用装置として適用実績が多く、連続溶融作業が可能であることから、アーク溶融吹き込み法は、工業的に実施する製造方法としては最適な方法として考えられる。
特公平3−47943号公報 特許第3878496号公報
しかし、Al−SiO系の原料をアーク法で溶融して高圧ガスで吹き込む場合、例えば、カオリン繊維(Alが45.5重量%、SiOが50.5重量%)やボーキサイト繊維(Alが70重量%、SiOが23重量%)のようなSiOの重量%が高い成分が原料中に多く含まれていると、原料の溶融点が低くなると同時に高圧ガスの吹き付けによって鋳型砂が繊維状や楕円状になり易い。つまりカオリン繊維やボーキサイト繊維のようなSiOの重量%が高い成分が原料中に多く含まれていると目的とする球状砂の作成が困難となる。
また、上記の従来技術においてはムライト(3Al・2SiO;化学成分Alが71.8重量%、SiOが28.2重量%)およびアルミナに近い範囲にある組成の原料を使用する場合が多い。その場合においても、SiOの含有量は比較的高いため、高圧ガスで飛散した溶融物は繊維状や楕円状の粒子になる傾向があり、そのため、鋳型砂に適した球状粒子を容易に得ることができない。このように、鋳型砂に適した球状粒子砂を効率よく得ることに対しては更なる改善が必要であり、問題点として残されている。
さらに、アーク溶融時の炭素による還元反応を原因としてシリカの分離が生ずることがある。シリカの分離が生ずると浮遊微粒子の粉塵が多量に発生し易い。それによって吹き付け後の球状粒子の生産性が劣ることや作業環境が劣悪となるといった作業環境の悪化が懸念されている。
そこで、本願発明の目的は、上記課題を鑑み、歩留まりが向上し、粉塵の発生量が少なくて製造時の作業環境に優れている鋳型砂を提供することである。また、別の目的は、その鋳型砂の製造方法を提供することである。
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に係る鋳型砂は、Al54.473.0重量%、MgOが23.728.8重量%、SiO1.37〜10.7重量%の化学成分を有し、Alの重量%とMgOの重量%とSiOの重量%との合計が100重量%以下であり、かつ、スピネル(MgO・Al)を結晶構成の一種とする溶融球状物を含み、この溶融球状物が30〜3000μmの粒度分布を有することを特徴とする。
また、本発明の請求項2に係る鋳型砂は、スピネル(MgO・Al)と、アルミナ(α−Al)、ムライト(3Al・2SiO)、コーディエライト(2MgO・2Al・5SiO)、およびサフィリン(4MgO・5Al・2SiO)のいずれかとの複合物を結晶構成の一種とし、Al54.473.0重量%、MgOが23.728.8重量%、SiO1.37〜10.7重量%の化学成分を有する溶融球状物を含み、Alの重量%とMgOの重量%とSiOの重量%との合計が100重量%以下であり、溶融球状物が30〜3000μmの粒度分布を有することを特徴とする。
また、本発明の請求項3に係る鋳型砂の製造方法は、MgO源およびアルミナ源の少なくとも一方から調製され、Al54.473.0重量%、MgOが23.728.8重量%、SiO1.37〜10.7重量%の化学成分を有し、Alの重量%とMgOの重量%とSiOの重量%との合計が100重量%以下である耐火物原料を溶融炉に投入後、耐火物原料を溶融し、耐火物原料が溶融することで形成された溶融物に高圧ガスを吹き付けて微粒子状に飛散させながら冷却固化することで、スピネルを結晶構成の一種とし、かつ、30〜3000μmの粒度分布を有する溶融球状物を形成することを特徴とする。
また、本発明の請求項4に係る鋳型砂の製造方法は、MgO源およびアルミナ源の少なくとも一方から調製され、Al54.473.0重量%、MgOが23.728.8重量%、SiO1.37〜10.7重量%の化学成分を有し、Alの重量%とMgOの重量%とSiOの重量%との合計が100重量%以下である耐火物原料を溶融炉に投入後、耐火物原料を溶融し、耐火物原料が溶融することで形成された溶融物に高圧ガスを吹き付けて微粒子状に飛散させながら冷却固化することで、スピネルと、アルミナ、ムライト、コーディエライト、およびサフィリンのいずれかとの複合物を結晶構成の一種とし、かつ、30〜3000μmの粒度分布を有する溶融球状物を形成することを特徴とする。
ここで、「溶融球状物」とは、耐火物原料を溶融状態で微粒子化し、球状のまま冷却固化して得たものをいう。この溶融球状物の化学成分はSiOが20重量%を越えると繊維状や楕円状の物が増加する傾向が認められるが、本発明ではスピネルにおけるシリカの重量%を0重量%を超え20重量%以下に設定した場合、溶融物に高圧ガスを吹き付けて飛散させることでより効率的に球状物の製造が可能となる。
「複合物」とは、複数の種類の結晶が合わさって1つになったものを言う。上述した「スピネルと、アルミナ、ムライト、コーディエライト、およびサフィリンのいずれかとの複合物」とは、アルミナ、ムライト、コーディエライト、およびサフィリンのいずれかとスピネルとが合わさって1つになったものを意味する。
Al54.473.0重量%、MgOが23.728.8重量%、SiO1.37〜10.7重量%の化学成分を有し、Alの重量%とMgOの重量%とSiOの重量%との合計が100重量%以下である溶融物は、Al−SiO系耐火物原料の場合の溶融性に比較して溶融時における発塵量が少なく、溶融性、作業環境および生産性が向上し、なおかつ、耐火性に優れるとの特徴がある
上記の鋳型砂は粘結剤を含んでいてもよく、この粘結剤としては、具体的にはフラン樹脂、フェノール樹脂、オイルウレタン樹脂、フェノールウレタン樹脂、アルカリフェノール樹脂、珪酸ソーダ、ベントナイト、耐火粘土、コロイダルシリカ、エチルシリケート加水分解液などをあげることができるが、これらに限定されるものではない。
上記の鋳型砂の製造方法において用いる耐火物原料としては、具体的には、Mg−O系の耐火物原料(「MgO源」と称する。)、及び、Al−SiO系の耐火物原料(「アルミナ源」と称する。)を挙げることができる。MgO源の例には、マグネシアクリンカー、焼成マグネサイト、カンラン石、コーディエライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、スピネル、MgOがある。アルミナ源の例には、合成ムライト、焼成ボーキサイト、ボーキサイト、溶融アルミナ、焼結アルミナ、水酸化アルミニウム、バン土頁岩、シャモット、焼熱焦宝石、焦宝石、仮焼フリントクレー、フリントクレー、カイヤナイト、シリマナイト、アンダルサイト、メタカオリン、及びカオリンがある。もちろん、MgO源、及び、アルミナ源は、これら例示したものに限定されない。さらに、MgO源として上述したものの中から選ばれた1種または2種以上の混合体を用いてもよいし、アルミナ源として上述したものの中から選ばれた1種または2種以上の混合体を用いてもよい。MgO源としてどのようなものを用いるかということ、および、アルミナ源としてどのようなものを用いるかということは、鋳型砂の性状には大きな影響を与えない。
本発明は上記のように構成され作用することから、歩留まりが向上し、粉塵の発生量が少なくて製造時の作業環境に優れている。
本発明の鋳型砂の製造に用いられる鋳型砂製造装置の一実施形態を示す概略構成図である 実施例1−1に係る鋳型砂のSEM写真である。 実施例2−1に係る鋳型砂のSEM写真である 従来技術にかかる鋳型砂のSEM写真である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、
(A) 本発明の鋳型砂の製造に用いられる鋳型砂製造装置の説明
(B) 鋳型砂製造装置(A)により鋳型砂を製造する手順について
(C) 実施例と比較例との説明
(D) 実施例と比較例との対比
の流れに従い説明する。
(A) 本発明の鋳型砂の製造に用いられる鋳型砂製造装置の説明
図1は、本発明の鋳型砂の製造に用いられる鋳型砂製造装置の一実施形態を示す概略構成図である。鋳型砂製造装置(1)は、耐火物原料(2)を収容し溶融する溶融炉(3)と、高圧空気を吹き出す(その結果、耐火物原料(2)の溶融物(4)を飛散させる)高圧空気吹付け装置(5)と、飛散して冷却固化した溶融球状物(6)を捕集する捕集容器(7)とからなる。
溶融炉(3)はアーク溶融炉からなり、耐火物原料(2)を溶融するためのアークを発生させる電極(8)と、溶融物(4)を流出する出湯口(9)とを備える。
高圧空気吹き付け装置(5)は高圧空気供給装置(10)と空気供給路(11)と吹き込みノズル(12)とを順に備える。この吹き込みノズル(12)のノズル口(13)は、出湯口(9)の下方位置で水平方向に位置している。そしてこのノズル口(13)の吹き出し方向前方の下方位置に捕集容器(7)を配置している。
本実施形態では、耐火物原料(2)を溶融する溶融炉(3)としてアーク炉を用いたが、本発明に用いる溶融炉は特定の形式のものに限定されず、例えば、坩堝炉、誘導電気炉、電気炉、反射炉、真空溶融炉等を用いることができる。ただし、この実施形態のようにアーク炉を用いると、比較的操作が容易で経済的であるため好ましい。
上記の溶融炉(3)の出湯口(9)から耐火物原料(2)の溶融物(4)を流出させる方法は、傾注方式や開孔方式などを用いることができるが、開孔方式を採用すると一定の流出量を容易に安定維持でき、好ましい。
本実施形態では、耐火物原料(2)の溶融物(4)を飛散させる高圧ガスとして高圧空気を用いており安価に実施できるが、本発明で用いる高圧ガスは、得られる溶融球状物(6)に悪影響を与えない範囲で、この高圧空気に代えて高圧水蒸気や他の種類の高圧ガスを用いることができる。また、本実施形態では、高圧空気で飛散された溶融物(4)が大気中を移動する間に自然冷却するように構成してあるが、上記の鋳型砂製造装置(1)は、冷却水などを用いた強制冷却部を備えていてもよい。そのような強制冷却部の具体的構造は周知なので、ここではその詳細な説明は繰返さない。
(B) 鋳型砂製造装置により鋳型砂を製造する手順について
次に鋳型砂製造装置(1)により鋳型砂を製造する手順について説明する。
最初に、作業者は、MgO源およびアルミナ源の少なくとも一方を、例えば100mm以下程度の適当なサイズになるまで粉砕し、溶融炉(3)に収容する。
本実施形態で使用する耐火物原料(2)は、乾燥結晶水を除く化学成分がAl54.473.0重量%、MgOが23.728.8重量%、SiO1.37〜10.7重量%に調製してあればよい。ただし、Alの重量%とMgOの重量%とSiOの重量%との合計は100重量%以下でなくてはならない。上述したように、MgO源として、マグネシアクリンカー、焼成マグネサイト(重焼マグネシア、軽焼マグネシア)、カンラン石、コーディエライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、スピネル、MgOなどを用いる。アルミナ源として、合成ムライト、焼成ボーキサイト、ボーキサイト、溶融アルミナ、焼結アルミナ、水酸化アルミニウム、バン土頁岩、シャモット、焼熱焦宝石、焦宝石、仮焼フリントクレー、フリントクレー、カイヤナイト、シリマナイト、アンダルサイト、メタカオリン、カオリンなどを用いる。作業者は、MgO源とアルミナ源とのうち少なくとも一方を乾燥または仮焼して脱水することにより所定の化学成分となるように調製したものを上述した耐火物原料(2)として使用する。
上記の耐火物原料(2)には、Fe、TiO、CaO、NaO、KOの少なくとも一種を、本実施形態にかかる鋳型砂の作用を阻害しない範囲で含んでもよい。鋳型砂の総含有量に占めるその含有量の割合は10重量%以下とすることが望ましい。
作業者は、上記の溶融炉(3)内に収容した耐火物原料(2)を溶融させる。耐火物原料(2)は、溶融炉(3)内でアーク熱によって溶融する。アーク熱は溶融炭素電極(8)に通電することにより発生する。このときの炉内の溶融温度は、通常、1800〜2300℃の範囲が選ばれる。そしてこの溶融物(4)は、所定量が溶融炉(3)の出湯口(9)から流出して落下していく。
上記の出湯口(9)から落下する溶融物(4)には、高圧空気供給装置(10)から供給され空気供給炉(11)を経由して吹き込みノズル(12)のノズル口(13)から水平方向へ広角に吹き出される高圧圧縮空気が吹き付けられる。これにより、上記の溶融物(4)は風砕分散される。風砕分散された溶融物(4)は直ちに溶融粒子自体の表面張力によって球状化するとともに、大気中を移動する間に自然冷却されて固化する。その結果、所定の粒子径を有した溶融球状物(6)が形成される。その溶融球状物(6)は補集容器(7)内に落下堆積して捕集される。
なお、上記溶融球状物(6)の粒度分布は、耐火物原料(2)の組成や溶融温度、高圧空気の吹き付け位置、圧力、吹き付け速度、吹き込みノズル(12)のノズル口(13)の形状(円形状または板状など)、吹き付け面積、吹き付け角度(水平または上向きなど)、飛散距離によって調整が可能である。
作業者は、上述した過程を経て捕集された溶融球状物(6)を、空冷および水冷の少なくとも一方により冷却したのち、3000μmよりも大きい粒子と30μm以下の小さい粒子とを篩分けにより除去する。これにより、30〜3000μmの粒度分布の溶融球状物(6)からなる鋳型砂が完成する。
(C) 実施例と比較例との説明
以下、本発明の一実施形態における実施例1−1〜−2と比較例1−1、1−2、2とについて説明する。
[実施例1−1]
作業者は、Alの重量%が約70重量%、SiOが1〜2重量%、そしてMgOが約20重量%となるよう、粒径10ミリメートル以下の溶融アルミナと粒径10ミリメートル以下のマグネシアクリンカーとを適宜混合した原料を調製した。作業者は、その原料15kgを図1に示す鋳型砂製造装置(1)の溶融炉(3)すなわちアーク炉(75KVA、3個の炭素アーク電極を上方部より挿入)で1時間溶融した。次に、作業者は、溶融した原料を溶融炉(3)より排出させて、高圧空気供給装置(10)すなわちコンプレッサー(風量11m/min)より排出した高圧圧縮空気をその溶融した原料に吹き付けた。これにより球状粒子化した溶融物(4)が得られたので、作業者は、そこから粒径が600マイクロメートル以下のものを採取し、鋳型砂とした。粒径が600マイクロメートル以下の溶融物(4)を採取したのは、そのようなものが鋳型砂として用いるための実用的な粒度分布を示すためである。
[実施例1−2]
作業者は、実施例1−1の鋳型砂を1500℃で再焼成することにより、鋳型砂を得た。
[実施例2−1]
作業者は、Alの重量%が約55重量%、SiOが約10重量%、そしてMgOが約30重量%となるよう、粒径20ミリメートル以下のAl−SiO系耐火物原料(ムライト−アルミナ結晶系、Alが75重量%、SiOが20重量%)と粒径10ミリメートル以下のマグネシアクリンカーとを適宜混合した原料を調製した。その後、作業者は、実施例1と同様の方法により鋳型砂を製造した。
[実施例2−2]
作業者は、実施例2−1の鋳型砂を1500℃で再焼成することにより、鋳型砂を得た
[比較例1−1]
作業者は、Alの重量%が約75重量%、SiOが約15重量%、そしてMgOが5重量%以下となるよう、原料に粒径20ミリメートル以下のAl−SiO系耐火物原料(ムライト−アルミナ結晶系、Alが63重量%、SiOが32重量%)を使用し、実施例1と同様の方法により鋳型砂を製造した。
[比較例1−2]
作業者は、Alの重量%が約80重量%、SiOが約10重量%、そしてMgOが5重量%以下となるよう、原料に粒径20ミリメートル以下のAl−SiO系耐火物原料(ムライト−アルミナ結晶系、Alが75重量%、SiOが20重量%)を使用し、実施例1と同様の方法により鋳型砂を製造した。
[比較例2]
市販の合成ムライト系球状砂であるセラビーズ(登録商標)#650を用いた。
(D) 実施例と比較例との対比
[結晶組成について]
実施例1−1〜実施例−2にかかる鋳型砂と比較例1−1、1−2、2にかかる鋳型砂との結晶組成の分析を行った。さらに、それらの鋳型砂についてX線回折を行った。表1は、それらの鋳型砂の組成とX線回折のメインピーク強度とを示す。
Figure 0005815328
表1から明らかな通り、実施例1−1〜実施例−2にかかる鋳型砂では、全てにおいてスピネルが認められた。一方、比較例1−1、1−2、2いずれにおいてもスピネルは認められなかった。比較例1−1、1−2にかかる鋳型砂ではα−アルミナとムライトとが認められた。比較例2かかる鋳型砂ではムライトが認められた。このことから、従来方式の合成ムライト及びアルミナ系の溶融球状粒子と本実施形態にかかる鋳型砂とは結晶構造を異にしていることが明らかである。
また、表1から明らかな通り、Al−MgO−SiO系鋳型砂においてA54.473.0重量%、MgOが23.728.8重量%、SiO1.37〜10.7重量%であってこれらの合計が100重量%以下であるものではスピネルが得られることが判明した。
また、表1において示される実施例2−2のX線回折分析の結果からは、それにコーディエライトが含まれていると言える。このことは、実施例2−1にかかる鋳型砂を1500℃の高温で再焼成したことにより、Al−MgO−SiO系の非晶質(これは鋳型砂製造時において主要結晶鉱物であるスピネルの他に残留していたもの)が、コーディエライトといった安定相へ結晶変態したことを示す
[シリカの減耗比率について]
アーク熱による溶融時には溶融物(4)よりシリカの分離が生じて粉塵化し易いが、シリカの分離が生じて粉塵化した場合には作業環境の劣化と溶融球状粒子の生成歩留まりが低下する結果とを伴う。このことから、シリカの減耗比率が溶融球状粒子の生成歩留まりの高低に影響することと、シリカの減耗比率がシリカの分離による作業時の粉塵発生量に対する尺度となることが類推される。そして、シリカの減耗比率がシリカの分離による作業時の粉塵発生量に対する尺度となること(言い換えると、減耗したシリカが作業時の粉塵となっていること)は、溶融作業時の粉塵発生状況の観察結果と局所的に設置した集塵機で回収した集塵粉の量とからも裏付けられている。そこで、これらの溶融物(4)の生成歩留まりと粉塵化を類推する方法として溶融前のシリカ成分と溶融後のシリカ成分とを測定し溶融前後のシリカ比を求めてシリカの減耗比率として算出した。溶融時の粉塵発生量の指標については従来技術(比較例1−1、1−2)の合成ムライト系におけるシリカ減耗比率に対する比較値として数値化することで示すものとした。
以上の測定結果を表2に示す。表2は、本実施形態に係る実施例1−1、2−1および比較例1−1、1−2の溶融球状粒子の成分と歩留まり(収率)と減耗比率と粉塵発生の比率とを示す。なお、表2に示す「減耗比率」とは、次の式(1)で示される値である。この比率が高いほど溶融時の発塵量SiO減量値が多くなる傾向となる。
(数1)
減耗比率(%)=100-(溶融物のSiO値)/(原料のSiO値)×100 (1)
Figure 0005815328
製造時の溶融物の原料に対するSiOの減耗比率(表2参照)を調べた結果、実施例1−1、2−1にかかるスピネル系溶融物の製造にあたっては、従来技術のムライト、アルミナ系溶融物に比較してSiOの減耗比率が大幅に低くなる傾向となっている。すなわち、溶融時の溶融球状粒子の生成量が多くなり(=歩留まりが向上し)、更に、粉塵の発生量が少なくて溶融作業時の作業環境に優れることが明らかとなった。特に、600μm以下の粒径を有した溶融球状粒子の歩留まり(表2において「−600μm〜」と示される値)が比較例1−1、1−2のものに比べて大きく向上することが明らかとなっている。ちなみに、表2において「+600μm〜」と示される値は、600μmを超える粒径を有した溶融球状粒子の歩留まりを示す。
[鋳型砂の表面について]
図2と図3とは、本実施形態に係る鋳型砂の走査型電子顕微鏡(SEM)による砂粒子の写真である。なお、図2は実施例1−1に係る鋳型砂のSEM写真である。図3は実施例2−1に係る鋳型砂のSEM写真である。図4は比較例1−1(a)、1−2(b)、比較例2(c)に係る鋳型砂のSEM写真である。図2と図3とに示すSEMによる写真から明らかであるように、上記実施例の鋳型砂の表面はガラス質の如く平滑な球形をなし、特に比較例2の凹凸の顕著な形状に比べて、これらは鋳型を成型する場合の充填密度を向上させることや粘結剤の被覆性を向上させて添加量を削減することに効果を奏する
[粘結剤について]
上記の鋳型砂は、従来の鋳型砂と同様に処理され各種の粘結剤を用いた鋳型に成型されて使用することができる。これらの粘結剤としては、例えば、フラン樹脂、フェノール樹脂、オイルウレタン樹脂、フェノールウレタン樹脂、アルカリフェノール樹脂、珪酸ソーダ、ベントナイト、耐火粘土、コロイダルシリカ、エチルシリケート加水分解液などが上げられる。
上記の粘結剤はそれぞれの用途に応じた硬化剤の使用によって硬化させる。具体的には、フラン樹脂の硬化剤としては、硫酸、燐酸、燐酸エステル、ピロ燐酸などの無機酸、キシレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸が挙げられる。フェノール樹脂用の硬化剤としてはヘキサメチレンテトラミンなどが挙げられる。珪酸ソーダ用の硬化剤としては炭酸ガス、ダイカルシリケート、Fe−Si粉末、有機エステルなどが挙げられる。ベントナイト及び耐火粘土については所定量の水を添加して混練した後につき固めて、あるいはジョルトスクイズ方式で成型して使用される。コロイダルシリカ及びエチルシリケート加水分解液はロストワックス法やセラミックモールド法あるいは消失模型鋳造法の分野に使用され、本実施形態に係る鋳型砂をこれらの造型材として使用する。
なお、これらの粘結剤の使用量は、鋳型砂の充填性や鋳造時のガス発生等の鋳造欠陥との関連性からできるだけ少ないほうが好ましい
上記の鋳型砂で成型した鋳型は、対象鋳物としては特に限定されず、種々の鋳物の鋳造に使用することができる。具体的には、アルミニウム、銅、普通鋳鉄、ダクタイル鋳鉄、ステンレス鋼を挙げることができる。また、本実施形態に係る鋳型砂は、球形に近いことから高い充填性と通気性が得られるので、鋳型強度に起因する鋳造欠陥やガス欠陥の少ない鋳物の製造が可能である。具体的には、鋳型砂を、フラン鋳型鋳造法やアルカリフェノール鋳型鋳造法の肌砂に適用して高クロム鋳鋼品を鋳造した結果、鋳物離れの良い美麗な鋳物肌をもつ無欠陥の鋳物をつくることができた。
本発明は、歩留まりが向上し、粉塵の発生量が少なくて製造時の作業環境に優れているので、大形鋳鋼品用のほか各種の鋳型に用いる鋳型砂として利用することができる。
1 鋳型砂製造装置
2 耐火物原料
3 溶融炉
4 溶融物
5 高圧空気吹き付け装置
6 溶融球状物
7 捕集容器
8 電極(炭素電極)
9 出湯口
10 高圧空気供給装置
11 空気供給路
12 吹き込みノズル
13 ノズル口

Claims (4)

  1. Al54.473.0重量%、MgOが23.728.8重量%、SiO1.37〜10.7重量%の化学成分を有し、前記Alの重量%と前記MgOの重量%と前記SiOの重量%との合計が100重量%以下であり、かつ、スピネル(MgO・Al) を結晶構成の一種とする溶融球状物を含み、この溶融球状物が30〜3000μmの粒度分布を有することを特徴とする、鋳型砂。
  2. スピネルと、アルミナ、ムライト、コーディエライト、およびサフィリンのいずれかとの複合物を結晶構成の一種とし、Al54.473.0重量%、MgOが23.728.8重量%、SiO1.37〜10.7重量%の化学成分を有する溶融球状物を含み、前記Alの重量%と前記MgOの重量%と前記SiOの重量%との合計が100重量%以下であり、前記溶融球状物が30〜3000μmの粒度分布を有することを特徴とする、鋳型砂。
  3. MgO源およびアルミナ源の少なくとも一方から調製され、Al54.473.0重量%、MgOが23.728.8重量%、SiO1.37〜10.7重量%の化学成分を有し、前記Alの重量%と前記MgOの重量%と前記SiOの重量%との合計が100重量%以下である耐火物原料を溶融炉に投入後、前記耐火物原料を溶融し、前記耐火物原料が溶融することで形成された溶融物に高圧ガスを吹き付けて微粒子状に飛散させながら冷却固化することで、スピネルを結晶構成の一種とし、かつ、30〜3000μmの粒度分布を有する溶融球状物を形成することを特徴とする、鋳型砂の製造方法。
  4. MgO源およびアルミナ源の少なくとも一方から調製され、Al54.473.0重量%、MgOが23.728.8重量%、SiO1.37〜10.7重量%の化学成分を有し、前記Alの重量%と前記MgOの重量%と前記SiOの重量%との合計が100重量%以下である耐火物原料を溶融炉に投入後、前記耐火物原料を溶融し、前記耐火物原料が溶融することで形成された溶融物に高圧ガスを吹き付けて微粒子状に飛散させながら冷却固化することで、スピネルと、アルミナ、ムライト、コーディエライト、およびサフィリンのいずれかとの複合物を結晶構成の一種とし、かつ、30〜3000μmの粒度分布を有する溶融球状物を形成することを特徴とする、鋳型砂の製造方法。
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