JP5815285B2 - 放射性汚染水処理装置 - Google Patents

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本発明は、事故や災害時に機動的に運用が可能な放射性廃液や汚染水から放射性物質を除去する放射性汚染水処理装置に関する。
従来の放射性物質で汚染された水処理は、原子力発電所や原子力研究所等に設置された大型のプラント施設として運用されている。
通常の大型のプラント施設で放射性廃液や汚染水を処理する場合、ウラン等の核燃料物質や放射性物質が付着した金属物質を含む汚染水は、イオン交換樹脂を介して放射性物質が分離される。イオン交換樹脂に付着した放射性イオンは、溶離用の硫酸水溶液をイオン交換樹脂に通液することで付着した放射性イオンを分離した後、硫酸水溶液に水酸化ナトリウムを中和剤として投入し中和させた硫酸ナトリウムを含有する中和廃液を濃縮して濃縮中和廃液を抽出する。抽出された濃縮中和廃液は、コンクリート詰めにされ保管されている。
例えば、特許文献1に記載された放射性廃液分離装置、及びそれを備えた放射性イオン交換樹脂の処理システムでは、放射性廃液分離装置により放射性廃液を貯蔵する濃縮廃液タンクと、廃液の上澄み液を抽出し吸着剤で放射性物質を吸着処理した放射性廃液を生成する。当該放射能廃液を、更にイオン交換樹脂により低レベル放射能廃液を生成してセメントで固化し、濃縮廃液タンク内の放射性廃液の沈殿物を分離回収して高濃度放射能混合体をセメントで固化する装置を備えた処理システムが開示されている。
また、例えば特許文献2に記載された放射性廃液処理方法及び処理装置では、放射性廃液処理に伴う二次廃棄物の増加を抑え、金属イオンに起因する沈殿物による電気透析槽の循環系の閉塞を回避して除染廃液中の酸の回収率を向上させることができる放射性廃液処理方法及び処理装置が開示されている。
特開2004−28903号公報 特開2006−194621号公報
しかし、地震や津波等による被災や爆発事故等の災害により、原子力発電所や原子力研究所等に設置された放射性廃液処理用の大型のプラント施設が停止或いは損傷した場合、原子炉で生成される放射性物質に汚染された廃液や汚染水の処理ができない状態となる問題があった。
また、機能が停止した原子炉や使用済み燃料保管プール等において、冷却水を確保するための冷却水循環システムが損傷した場合、他の水源から供給され高圧放水車から放水された冷却水は、火災現場と同様に原子炉や使用済み燃料保管プール等の冷却後に漏れ出る状況で、これらの排水に含まれる放射性物質を除去して再使用するための循環システムは考慮されておらず、従って災害現場に搬送して機動的に運用できる放射性汚染水処理装置は無いという問題があった。
更に、冷却水に使用された後の真水や海水は、大量の汚染水となって施設内に溜まり、含まれる高濃度放射性物質から多量の放射線を放出して復旧作業の妨げとなる一方で、飛散して周辺地域を汚染する原因ともなっている。復旧作業には溜まった汚染水の処理方法が重要であるにも係わらず、放射性廃液や汚染水を従来の大型プラントによる処理工程を踏襲する時間的猶予もない状況で、この放射性物質で汚染された廃液や汚染水から安全な冷却水に除染して再利用する循環型冷却システムを短時間で構築する必要性が災害現場では求められる。
また、放射性廃液処理用の大型のプラント施設を復旧させるまでの間の緊急避難的に運用できる放射性廃液処理装置も運用されていないという問題があった。
本発明は、上記の問題点についてなされたもので、放射性廃液処理用の大型のプラント施設が復旧するまでの間、放射性汚染水から放射性物質を除去して安全な冷却水として再利用するため、搬送可能なコンテナ構造体に収納され機動的に運用が可能な放射性汚染水処理装置を提供することを目的とする。
本発明は上述の目的を達成するため、以下(1)〜(5)の構成を備えるものである。
(1)放射性汚染水から放射性物質を除去する装置であって、車両で搬送可能な単独或いは複数の遮蔽材で被覆されたコンテナ構造体に、前記放射性汚染水を吸引する吸水ポンプと、吸引された前記放射性汚染水を蓄える取水槽と、前記放射性汚染水と投入された凝集剤とを撹拌して前記放射性物質を凝集沈殿させる撹拌凝集槽と、前記撹拌凝集槽で凝集沈殿させた前記放射性物質を吸着濾過する吸着フィルタを有する吸着槽と、前記吸着フィルタを透過した前記放射性汚染水から放射性イオン及び微細な前記放射性物質と浄水とを分離する分離槽と、前記分離槽で回収された前記浄水を冷却装置で冷却し蓄える給水槽と、前記浄水を所定の圧力で送水する排水ポンプとが、着脱可能なユニット構造で連結し収納されていることを特徴とする放射性汚染水処理装置。
(2)前記撹拌凝集槽は、投入される前記凝集剤と前記放射性汚染水とを撹拌する螺旋ポンプを有することを特徴とする前記(1)記載の放射性汚染水処理装置。
(3)前記吸着槽の吸着フィルタは、粒状体或いは透水ブロックからなる吸着材を、透水性フィルム及び金属フィルムと樹脂フィルムを重ねて形成された所定の形状を有するカートリッジ構造体に封入したものであることを特徴とする前記(1)または(2)記載の放射性汚染水処理装置。
(4)前記分離槽は、逆浸透膜及びイオン交換樹脂を一体構造或いは分離構造としたカートリッジ構造体でることを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の放射性汚染水処理装置。
(5)前記取水槽は、前記放射性汚染水に含まれる放射性ガス及び水素ガスを分離するためのガス分離装置を有することを特徴とする前記(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の放射性汚染水処理装置。
本発明によれば、放射性廃液処理用の大型のプラント施設を復旧させるまでの間、機能が停止した原子炉や燃料保管プール等を冷却するため排出される放射性物質を含んだ汚染水及び廃液から、放射性物質を除去した冷却水を確保するための循環システムを短時間で構築し、緊急避難的に運用できる貨車、トレーラ、船舶等に積載して機動的に運用が可能なコンテナ構造体に収納された放射性汚染水処理装置を提供することができる。
(a)本実施例に係る放射性汚染水処理装置の概略図、(b)放射性汚染水処理装置をトレーラに載置した図 (a)放射性汚染水処理装置の吸水ポンプと取水槽の概略図、(b)ガス分離装置の構成を示す断面図 (a)放射性汚染水処理装置の撹拌凝集槽と吸着槽の概略図、(b)吸着フィルタの外観図、(c)吸着フィルタの断面図 (a)放射性汚染水処理装置の分離槽の概略図、(b)逆浸透膜カートリッジ及びイオン交換樹脂カートリッジの分離構造を示す図 放射性汚染水処理装置の貯水槽と排水ポンプの概略図
以下、本発明を実施するための形態を、実施例により詳しく説明する。
地震や津波或いは爆発事故等の災害で、原子炉や使用済み燃料保管プール等の破損や冷却機能の喪失、または非常制御用電源の喪失により緊急炉心冷却装置の循環型冷却システムが作動しない場合、外部から消防ポンプ車や消防放水車等を使った放水や注水等で原子炉及び使用済み燃料保管プールを冷却する方法がとられる。この放水や注水に使用する冷却水を確保するため外部に水源を確保し、その水源から真水或いは海水を放水或いは注水する必要が発生する。
しかし、冷却水として使用された真水や海水は、放射性汚染水となって施設内に溜まり高濃度の放射線を放出して復旧作業の妨げとなる一方で拡散して周辺地域を汚染する原因ともなり、原子力災害において構内に溜まった放射性汚染水の処理方法が重要となっている。また放射性廃液処理用の大型のプラント施設が停止した状態では、通常の放射性廃液や汚染水を処理する工程を踏襲する時間的猶予及び施設が無い状況であっても、復旧作業を安全に実施するため、放射性物質で汚染された廃水及び汚染水から安全な冷却水に再利用する冷却水循環システムを早急に構築する必要が求められる。
しかし、放水や注水で使用した放射性汚染水には、放射性物質の他に瓦礫や塵等の様々な物体が含まれ簡単に再利用することはできないため、様々な工夫を凝らした処理装置が必要となり、特に気密性と放射線(α線、β線、γ線、中性子線等)に対する遮蔽能力と、安全な放射性物質回収機能が必要となる。
図1(a)は本実施例に係る放射性汚染水処理装置1の構成を示す概略図である。放射性汚染水処理装置1の構成は、構内に溜まった放射性物質汚染水或いは廃液に投入されるメッシュ状フィルタ20aの吸入部を有する吸引ホース20が、汚染水のみを吸引する吸水ポンプ2に接続され、放射性汚染水或いは廃液より瓦礫や塵等の物体の流入を排除する。吸引された放射性汚染水は、汚染水に含まれる放射性ガスや水素ガス等を分離するためのガス分離フィルタ31付き取水槽3に一旦汚染水を貯めガスを分離した後、汚染水は凝集剤タンク9から送られてきた凝集剤と共に撹拌凝集槽4に注水され、螺旋ポンプ41で撹拌して汚染水に含まれる放射性物質を凝集し沈殿させ、ゼオライト(アルミノケイ酸塩の結晶構造体)等の吸着材51を積層して形成された透過フィルタ50を有する汚染物質の吸着槽5に通水する。更に凝集した放射性物質を除去した汚染水に含まれる塩分や放射性イオンを除去するため、逆浸透膜62とイオン交換樹脂61からなる分離槽6に注水して冷却用の浄水と汚染物質とを分離抽出し、分離抽出された浄水は出力用の給水槽7に貯めて、冷却装置75で冷却され安全な除染水として排水ポンプ8を使って消防放水車や貯水タンクに冷却水として供給される。
放射性汚染水処理装置1の放射性汚染水の処理能力は、逆浸透膜62とイオン交換樹脂61からなる分離槽6の構成、及び駆動電源を供給する電源装置の能力に合わせて性能が選択され、20〜100t/hrの処理能力を有する。単独或いは複数のコンテナ構造体10を組み合わせる構成により、処理能力を自由に選択できる。
図1(b)に示すようにトラクタ100に牽引されるトレーラ101に載置された放射性汚染水処理装置1の収納は、トレーラ101の他、貨車、船舶等に積載して移動できるようにするため、道路や海上での運送可能な規格化されたコンテナ構造体10で、20フィート或いは40フィートのハイキューブコンテナを使用し、最大総重量30トンの放射線遮蔽材11で防護された単独或いは複数のコンテナ構造体10に組込まれている。放射性汚染水処理装置1は、機動性と汎用性を重視することで吸水ポンプ2、取水槽3、撹拌凝集槽4、吸着槽5、分離槽6、給水槽7、排水ポンプ8を夫々ユニット構造で形成することで必要に応じて組合せて連結することが可能で、単独或いは複数のコンテナ構造体10に収納して搬送し、災害現場において消防用ホース等の連結ホース25で連結して冷却水循環システムを構築できる構成となっている。
コンテナ構造体10の各面に装着された放射線遮蔽材11と、取水用、排水用及びユニット連結用に使用される連結ホース25及び装置配管には、放射線の遮蔽能力を備えた特殊熱可塑性エラストマ樹脂に鉛、タングステン等の重金属を組み合わせた遮蔽材で被覆する構造の放射線防護カバーが使用され、取り扱う作業員の被曝を可能な限り低減させる防護対策が施されている。
放射性汚染水処理装置1を駆動する電力は、トレーラを牽引するトラクタ100の電源、コンテナ構造体10を乗せた船舶、或いは外部電源として市販されている4000kVA/3600kW等の大型電源車から電力供給を受けて運用され、自立型の冷却水循環システムを構築する。
<放射性汚染水処理装置の機能>
放射性汚染水処理装置1を構成する吸水ポンプ2、取水槽3、撹拌凝集槽4、吸着槽5、分離槽6、給水槽7、排水ポンプ8等の機能を具体的に説明する。図2(a)に示す汚染水のみを吸引するため吸水ポンプには、構内に溜まった放射性物質汚染水或いは廃液に投入されるメッシュ状フィルタ20aの吸入部を有する吸引ホース20が接続され、放射性汚染水或いは廃液より瓦礫や塵等の物体の流入を排除する。
放射性汚染水処理装置1に装備される吸引ホース20及び吸水ポンプ2、排水ポンプ8は、消防用のA級ポンプ車と同一の内径が125mmの取付口を複数装備することで消防用ホースが使用可能であり、災害現場で消防用車両と連携して統一的な運用ができる機動性と汎用性を確保している。また放射性汚染水処理装置1を複数のコンテナ構造体10で構成する場合は、各コンテナ構造体10を連結する連結ホース25も消防用ホースの規格で作成されている。ポンプ性能については、消防用のA級ポンプ車と同等の性能を有することで取水ポンプ2、排水ポンプ8の代わりに消防用のA級ポンプ車を連結して使用しても問題なく動作する仕様となっている。
取水槽3は、一次貯水タンクとして吸水ポンプ2で取り込んだ放射性汚染水を所定量まで蓄え、安定した圧力で撹拌凝集槽4へ送水する機能を有している。取水槽3には、汚染水の水量を測定する低水位センサ32、リミットセンサ33の検知信号によって吸水ポンプ2のオン/オフ制御をおこない、汚染水の処理量に合わせて取水槽3の貯水量を一定に保つ働きをする。
図2(b)に示す取水槽3に取付けられたガス分離装置30は、汚染水に含まれている水素ガス、放射性ヨウ素、キセノン等の放射性ガス或いは放射性希ガスを、ガス分離装置30に組込まれたファン30aで排気し、繊維状活性炭等で作成されたガス吸着フィルタ31で吸着し分離する。
図3(a)に示す撹拌凝集槽4は、ミキサー車等で使用されているアルキメデス・スクリュウの螺旋ポンプ40を利用した撹拌装置を有し、凝集剤タンク9より投入される凝集剤9aと放射性汚染水とを撹拌により均一に混合して凝集効果を高める働きをする。撹拌凝集槽4に投入される凝集剤9aには、例えば納豆の成分から抽出されたポリグルタミン酸を原料とする凝集剤(PGα21Ca:日本ポリグル株式会社製)を使用する場合、廃液や汚染水のPH値に関係なく使用可能で、汚染水に含まれる多種多様な汚染物質を短時間で凝集し沈殿させることが可能で、放射性物質を凝集し沈殿させる効果も確認されている。
螺旋ポンプ40の使用は、汚染水を撹拌しながら汲み上げることで対流を発生させ、凝集剤9aによる放射性物質を含む微細粒子やオイルが凝集した集合体を形成する時間を確保すると共に、微細粒子やオイルが凝集した沈殿物に含まれる凝集剤9aの残存する凝集効果を更に引き出すことで、凝集剤9aの投入量の削減と凝集効率を高める効果が期待できる。
吸着槽5には、凝集沈殿物を吸着しイオン交換機能を有するゼオライト(アルミノケイ酸塩の結晶構造体)等を、粒状体或いは透水ブロック等の積層構造の吸着材51で形成された吸着フィルタ50に通水して、撹拌凝集槽から送水された放射性物質を含む凝集沈殿物と水とを分離するもので、吸着フィルタ50を構成する吸着材51のゼオライトは放射性セシウム等の放射性物質を吸着することが確認されている。またゼオライトには、焼却した際に溶融してガラス化し凝集沈殿物の焼却灰を取り込んでガラス固化させることができるため、焼却灰をセメントで固化する必要性がなく、発生する放射性廃棄物の量を低減することができる。
そのため、図3(b)、図3(c)に示す吸着フィルタ50は、吸着槽5の形状に合わせて、ゼオライト等の粒状体或いは透水ブロックの積層構造の吸着材51を、透水性フィルム52及び金属フィルムと樹脂フィルムを重ねてラミネート加工しパックキングした遮蔽機能を持つ所定の形状のカートリッジ構造体53に収めて形成し、放射性物質を含む凝集沈殿物を吸着させた後の処理において、吸着された放射性物質が低濃度の場合はカートリッジ単位で交換ができる。吸着フィルタ50に使用される透水性フィルム52は、吸水ポリマ等で一定の高吸水性能を付加することで使用後のカートリッジ交換の際、凝集沈殿物に含まれる汚染水が吸着フィルタ50から漏出することを防ぐ効果がある。
また、凝集撹拌槽4と吸着槽5の構造を分離可能な一体構造にすることで、ユニット化した吸着槽5の吸着フィルタ50に吸着された放射性物質がカートリッジ容器53では遮蔽できない高濃度の場合は、より遮蔽能力の高い吸着槽5ごと分離して安全に放射性物質を回収する構造も有している。
図4(a)に示す分離槽6は、電気透析装置で槽内に陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂からなるイオン交換樹脂カートリッジ61を配置し汚染水を電極61a,61bの電界中に通す過程で、汚染水に含まれる塩分(ナトリウムイオン)や放射性イオン物質を夫々の電極61a,61bで吸着する過程でイオン交換膜を介して分離する。
次に逆浸透膜カートリッジ62でミクロン単位或いはナノ単位の放射性物質を分離して浄水のみを抽出する装置である。放射性物質の最小分子の大きさは、ウランが0.5nm、ストロンチウムが0.6nm、セシウムが0.6nmであることから、撹拌凝集槽4、吸着槽5で回収できなかった分子レベルの放射性物質は、逆浸透膜カートリッジ62の濾過能力が0.1nmの透過膜であれば殆どの放射性物質を分離回収することができる。
吸着槽5から送水された汚染水をイオン交換樹脂カートリッジ61及び逆浸透膜カートリッジ62を透過させることで、汚染水に含まれる塩分や放射性イオン物質が分離回収され、放射性物質のおよそ90%以上を除去し回収された浄水からは、放射される放射線量が人体にとって安全なレベルまで低減されているため、現場の作業員が被曝することのない安全な放水用冷却水を供給することができる。
しかし、透過膜の目の大きさが細か過ぎると早期に目詰まりして濾過性能を低下させ交換が必要となるため、どの程度の透過膜を選定して逆浸透膜カートリッジ62の濾過性能を設定するかは、回収された浄水の放射線量による。
図4(b)に示すように逆浸透膜カートリッジ62及びイオン交換樹脂カートリッジ61は一体構造或いは分離構造のカートリッジ構造でも良く、放射線遮蔽材で被覆された収納容器63にカートリッジが収納されているため取扱いが簡単で、低濃度の放射線量であればカートリッジ単位で交換できる。また、カートリッジから放射される線量が高濃度の場合は、カートリッジを収めたユニット化され遮蔽能力の高い収納容器63ごと交換できる構造も有している。また、分離槽6は処理能力を上げるため、複数のカートリッジ収納容器63を増設することが可能な構造であり、要求される汚染水の処理能力に応じて分離槽6を増設して設置することができる。
分離槽6に使用されるイオン交換樹脂カートリッジ61は、収納容器内にイオン交換樹脂(カチオン樹脂、アニオン樹脂等)を複数に積層して汚染水の放射性イオン物質を分離する浄水所等で使用されている混床式ポリシャーであっても良い。
また、分離槽6に使用される逆浸透膜カートリッジ62には、例えばナノレベルの微細な穴を持つ濾過膜と、その濾過膜を1秒間に60回振動を加えることで濾過膜の目詰まりを防止して機能の低下を防ぎ、一台で約20t/hrの処理能力を有する振動膜式濾過装置(テクノアルファ:米国ニューロジック・リサーチ社製)を使用しても良い。
図5に示す貯水槽7には、分離槽6で放射性物質を除去した浄水を貯める二次貯水タンクとして一定量の浄水を確保し、安定した圧力で排水ポンプ8から浄水を供給する機能を有している。貯水槽7には、浄水の水量を測定する低水位センサ72、リミットセンサ73の信号により排水ポンプ8のオン/オフ制御をおこない、貯水槽7の貯水量の減少による排水ポンプ8の空転を防ぐ働きをする。また、貯水槽7に熱交換機75aと冷却機75bからなる冷却装置75を組込むことで、高温の汚染水から冷却水として利用可能な低温の浄水を供給できる。
吸水ポンプ2と同様、A級消防用ポンプ車との連携を考慮した仕様の取水口に連結ホース25で連結する構造となっているため、貯水槽7と排水ポンプ8を消防用ポンプ車に置き換えて運用することも可能である。
<放射性汚染水処理装置の運用方法>
トレーラ101や貨車、船舶等に積載できるコンテナ構造体10に収納された放射性汚染水処理装置1の運用例として、日本の原子力発電所や研究所は海岸に面して設置されていることが多く、また引き込み線を有している施設もあるため、地震や津波或いは爆発事故等で被災した場合に利用可能なあらゆる輸送機関を考慮し、放射性汚染水処理装置1を速やかに搬入し運用を可能にする機動性を備えている。また被災した原子力発電所等の施設において、バックアップ用の非常設備が全て停止した場合は、災害現場では求められている放射性物質で汚染された廃液や汚染水を再利用して、安全な冷却水に確保する自立型の循環システムを短時間で構築できる能力を備えている。
また、災害によって原子力施設に設置された従来の大型の放射性物質処理施設が使用できない場合、或いは従来の放射性物質処理施設が復旧するまでの緊急避難的に暫定使用する場合に使用するため、トレーラ101や貨車、船舶等に積載可能なコンテナ構造体10の放射性汚染水処理装置1を、単独或いは複数配置して大量に発生する放射性汚染水を処理する自立型の循環システムを構築し、特に消防用ポンプ車等と連携して運用することができる。
また、放射性汚染水処理装置1は、100%の完全な放射性物質除去能力を目指すものではなく、様々な物質を含む放射性汚染水から放射性物質を人体や環境に影響の出ない安全レベルまで除去し、安全な冷却水として再利用するための自立型の循環システムを確立し、放射性物質汚染水の増加を防止する効果を発揮させることが重要である。そのため放射性汚染水処理装置1は、必要とされる処理能力に応じて複数のコンテナ構造体10に収納して搬送し、災害現場で消防用ホース等の連結ホース25で連結して運用する構造であっても良い。
被災した原子力施設から河川や海洋に排出された放射性汚染水を、予め拡散防止フェンス等で堰き止め、排出された汚染水を陸上或いは海上の船舶に設置された放射性汚染水処理装置1を介して除染し安全な排水にすることもできる。
1 放射性汚染水処理装置
2 吸水ポンプ
3 取水槽
4 撹拌凝集槽
5 吸着槽
6 分離槽
7 貯水槽
8 排水槽
9 凝集剤タンク
9a 凝集剤
10 コンテナ構造体
11 遮蔽材
20 取水ホース
20a メッシュ状フィルタ
21 排水ホース
25 連結ホース
31 ガス分離フィルタ
32 低水位センサ
33 リミットセンサ
40 螺旋ポンプ
50 吸着フィルタ
61 イオン交換膜
62 逆浸透膜
63 収納容器
71 低水位センサ
72 リミットセンサ
75 冷却装置
100 トラクタ
101 トレーラ

Claims (5)

  1. 放射性汚染水から放射性物質を除去する装置であって、
    車両で搬送可能な単独或いは複数の遮蔽材で被覆されたコンテナ構造体に、
    前記放射性汚染水を吸引する吸水ポンプと、
    吸引された前記放射性汚染水を蓄える取水槽と、
    前記放射性汚染水と投入された凝集剤とを撹拌して前記放射性物質を凝集沈殿させる撹拌凝集槽と、
    前記撹拌凝集槽で凝集沈殿させた前記放射性物質を吸着濾過する吸着フィルタを有する吸着槽と、
    前記吸着フィルタを透過した前記放射性汚染水から放射性イオン及び微細な前記放射性物質と浄水とを分離する分離槽と、
    前記分離槽で回収された前記浄水を冷却装置で冷却し蓄える給水槽と、
    前記浄水を所定の圧力で送水する排水ポンプとが、着脱可能なユニット構造で連結し収納されていることを特徴とする放射性汚染水処理装置。
  2. 前記撹拌凝集槽は、投入される前記凝集剤と前記放射性汚染水とを撹拌する螺旋ポンプを有することを特徴とする請求項1記載の放射性汚染水処理装置。
  3. 前記吸着槽の吸着フィルタは、粒状体或いは透水ブロックからなる吸着材を、透水性フィルム及び金属フィルムと樹脂フィルムを重ねて形成された所定の形状を有するカートリッジ構造体に封入したものであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の放射性汚染水処理装置。
  4. 前記分離槽は、逆浸透膜及びイオン交換樹脂を一体構造或いは分離構造としたカートリッジ構造体でることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射性汚染水処理装置。
  5. 前記取水槽は、前記放射性汚染水に含まれる放射性ガス及び水素ガスを分離するためのガス分離装置を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の放射性汚染水処理装置。
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