JP5815040B2 - 射出成形機における保圧工程制御方法 - Google Patents

射出成形機における保圧工程制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、溶融樹脂を金型のキャビティへ射出充填したその直後に行われる保圧工程における圧力制御方法に関し、液晶パネル等の表示パネルに採用される導光板等の薄物を成形する際に発生する残留応力を高精度で制御することができる射出成形機における保圧工程制御方法に関する。
近年、比較的小型化された液晶の表示モニターには、光を均一に面発光する導光板が採用されている。こうした導光板等の肉厚の薄い板材を成形する場合や、高精度な成形が要求される精密成形においては、キャビティへ溶融樹脂を充填した後に生ずる残留応力を排除するため、高圧状態から低圧状態に急減圧を行うことが要求されており、例えば、減圧が遅い場合には、金型内に残る圧力による残留応力よって、成形体にそりや肉厚の不均一が発生してしまう。また、減圧が速すぎると、所定圧力に到達した後の過度なオーバーシュートやハンチングが発生してしまい、成形不良やゲートの詰まりが起きてしまうという問題があった。
上記技術に関連するものとして特許文献1には、保圧工程前に行われる充填工程において、スクリューが前進して所定の位置に到達したら、該スクリューを設定位置まで設定速度で戻すことにより、V−P切換え(速度制御から圧力制御への切換え)直前に圧抜きを行う射出成形機の充填工程制御方法が開示されている。また、特許文献2には、射出成形において、高圧高速射出後にスクリューを一旦停止又は後退させて、高圧高速射出後に減圧制御を行う技術が開示されている。
特許第3404652号公報 特開昭59−165634号公報
特許文献1の技術は、充填工程において、スクリューを後退させる技術であり、充填工程後に行われる保圧工程において圧力を制御しようという技術は開示されてはなく、すなわち、保圧工程で発生する残留応力を制御しようという技術については開示されていない。また、特許文献2の技術においては、保圧工程前に減圧を行おうというものであり、特許文献1と同様に保圧工程で発生する残留応力を制御しようという技術ではない。また、特許文献2では、スクリューを後退して減圧するときには、単に、スクリューの移動位置(後退位置)を検出するセンサやタイマの計測値のみに基づいて減圧制御を行っているものであることから、細やかな減圧制御を行うことは難しく、高品質な成形品を得ることは実質困難であると言わざるを得ない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、射出充填工程後に実行される保圧工程における圧力制御を高精度で行い、高品質な成形体を成形することができる射出成形機における保圧工程制御方法を提供することを目的とする。
射出成形機における保圧工程制御方法は、
スクリューを前進させ金型のキャビティへ溶融樹脂を射出充填する射出充填工程と、前記スクリューを後退させ減圧による保圧工程とを行う射出成形機における制御方法であって、
前記射出充填工程の射出充填完了後に前記保圧工程に切換え、
該保圧工程に切換後の初期段階である1次保圧工程で、圧力制御により1次保圧力を減圧して前記スクリューを急速に後退させ、該減圧された1次保圧力が、前記1次保圧工程後に行なわれる2次保圧工程の設定圧力に短時間で達するよう減圧制御されるようにし、
前記射出充填工程では前記スクリューの前進運動が速度制御で行われる一方で、前記保圧工程では前記スクリューの後退運動が圧力制御で行われるよう、前記射出充填工程から前記保圧工程への切換えでV−P切換えを行うようにし、
前記減圧によりスクリューを後退させる1次保圧工程にて、前記1次保圧力の実測圧力が前記設定圧力に到達しないときには、前記スクリューを後退させ減圧を行う際の該スクリューの後退幅Bを、下記の数1の数式で算出し、該数1の数式で算出した後退幅Bで前記スクリューを後退させることを特徴とする。
Figure 0005815040
C:1ショット前の設定されたスクリューの後退幅(mm)
a:1ショット前のV−P切換時の実測されたV−P切換圧と1ショット前の1次保圧工程の実測圧力との差圧(MPa)
b:1ショット前のV−P切換時の実測されたV−P切換圧と2次保圧工程における設定圧力との差圧(MPa)
射出成形機における保圧工程制御方法は、
スクリューを前進させ金型のキャビティへ溶融樹脂を射出充填する射出充填工程と、前記スクリューを後退させ減圧による保圧工程とを行う射出成形機における制御方法であって、
前記射出充填工程の射出充填完了後に前記保圧工程に切換え、
該保圧工程に切換後の初期段階である1次保圧工程で、圧力制御により1次保圧力を減圧して前記スクリューを急速に後退させ、該減圧された1次保圧力が、前記1次保圧工程後に行なわれる2次保圧工程の設定圧力に短時間で達するよう減圧制御されるようにし、
前記射出充填工程では前記スクリューの前進運動が速度制御で行われる一方で、前記保圧工程では前記スクリューの後退運動が圧力制御で行われるよう、前記射出充填工程から前記保圧工程への切換えでV−P切換えを行うようにし、
前記減圧によりスクリューを後退させる1次保圧工程にて、前記1次保圧力の実測圧力が前記設定圧力に到達したときには、下記の数2の数式で演算し、
前記数2の数式を満たさないときには、
前記スクリューを後退させ減圧を行う際の該スクリューの後退幅Bを、下記の数3の数式で算出し、該数3の数式で算出した後退幅Bで前記スクリューを後退させることを特徴とする。
Figure 0005815040
Figure 0005815040
A:1ショット前のV−P切換時から、1次保圧工程と2次保圧工程とが切換えられた時までに移動されるスクリューの移動幅(mm)
B:スクリューの後退幅(mm)
射出成形機における保圧工程制御方法は、
スクリューを前進させ金型のキャビティへ溶融樹脂を射出充填する射出充填工程と、前記スクリューを後退させ減圧による保圧工程とを行う射出成形機における制御方法であって、
前記射出充填工程の射出充填完了後に前記保圧工程に切換え、
該保圧工程に切換後の初期段階である1次保圧工程で、圧力制御により1次保圧力を減圧して前記スクリューを急速に後退させ、該減圧された1次保圧力が、前記1次保圧工程後に行なわれる2次保圧工程の設定圧力に短時間で達するよう減圧制御されるようにし、
前記射出充填工程では前記スクリューの前進運動が速度制御で行われる一方で、前記保圧工程では前記スクリューの後退運動が圧力制御で行われるよう、前記射出充填工程から前記保圧工程への切換えでV−P切換えを行うようにし、
前記減圧によりスクリューを後退させる1次保圧工程にて、前記1次保圧力の実測圧力が前記設定圧力に到達しないときには、前記スクリューを後退させ減圧を行う際の該スクリューの後退幅Bを、下記の数1の数式で算出し、該数1の数式で算出した後退幅Bで前記スクリューを後退させ、
他方、前記減圧によりスクリューを後退させる1次保圧工程にて、前記1次保圧力の実測圧力が前記設定圧力に到達したときには、下記の数2の数式で演算し、
前記数2の数式を満たさないときには、
前記スクリューを後退させ減圧を行う際の該スクリューの後退幅Bを、下記の数3の数式で算出し、該数3の数式で算出した後退幅Bで前記スクリューを後退させることを特徴とする。
Figure 0005815040

Figure 0005815040

Figure 0005815040

A:1ショット前のV−P切換時から、1次保圧工程と2次保圧工程とが切換えられた時までに移動されるスクリューの移動幅(mm)
C:1ショット前の設定されたスクリューの後退幅(mm)
a:1ショット前のV−P切換時の実測されたV−P切換圧と1ショット前の1次保圧工程の実測圧力との差圧(MPa)
b:1ショット前のV−P切換時の実測されたV−P切換圧と2次保圧工程における設定圧力との差圧(MPa)
射出成形機における保圧工程制御方法は、
前記数2の数式を満たすときには、
ショット数をk、前記実測圧力が前記2次保圧工程の設定圧力に到達した時の時間をt、時間tでスクリューの後退する後退幅をX(t)、時間tにおける射出速度をV(t)、時間tにおける射出圧力P(t)、任意に決定する学習係数をα、β、評価関数f(t)=αV(t)+βP(t)として、
該評価関数を用い、下記数4の数式によりf(t)≒0になる方向に後退幅X(t)を1ショット毎に算出し、該1ショット毎の算出値に基づき前記スクリューの後退幅を自動調整することを特徴とする。
Figure 0005815040
本発明の射出成形機における保圧工程制御方法によれば、射出充填工程から保圧工程に切換えられた後、保圧工程の初期段階の1次保圧工程にて、スクリューを後退させるための1次保圧力を急速に減圧し、当該1次保圧力が、2次保圧工程の設定圧力に短時間で到達するよう減圧制御を行うから、保圧工程におけるこうした高精度な圧力制御(保圧工程で発生する残留応力の制御)により、高品質な成形品を製造(薄肉成形品の肉厚を均一に成形)することが可能となる。
さらに、1次保圧力の実測圧力値及び前記数式を用いて、スクリューの減圧制御を行うに際し、前記実測圧力値に基づき自己学習をさせ、それから得られた結果から、スクリューの後退幅が最適な後退幅になるよう自動調整(微調整)をして減圧制御を行う。よって、保圧工程において細やかな圧力制御が可能となり、製造される成形品の品質を向上することが可能となる。
射出成形機の射出ユニットを示す概略構成図である。 射出成形機の射出ユニットの射出充填工程及び保圧工程を示すグラフである。 1次保圧工程にてスクリューの後退幅を調整するときの動作を示すフローチャートである。 スクリューの後退幅が小さ過ぎる場合において、当該後退幅を大きくするために数1の数式を適用してスクリューの後退幅を調整するときの1次保圧工程の動作を示す説明図であり、縦軸にスクリューの速度、横軸にスクリューの移動位置を位置として表し、1次保圧工程において、数1の数式で算出した後退幅でスクリューを後退させたときの波形を実線で表し、1ショット前の設定されたスクリューの後退幅でスクリューを後退させたときの波形を点線で表したものである。 スクリューの後退幅が小さ過ぎる場合において、当該後退幅を大きくするために数1の数式を適用してスクリューの後退幅を調整するときの1次保圧工程の動作を示す説明図であり、縦軸にスクリューの圧力及び速度を表し、横軸に時間を表し、数1の数式で算出した後退幅でスクリューを後退させたときの圧力の波形を時間軸より上側にて実線で表し、1ショット前の設定されたスクリューの後退幅でスクリューを後退させたときの圧力の波形を時間軸より上側にて点線で表している。また、数1の数式で算出した後退幅でスクリューを後退させたときの速度の波形を時間軸より下側にて実線で表し、1ショット前の設定されたスクリューの後退幅でスクリューを後退させたときの速度の波形を時間軸より下側にて点線で表したものである。 スクリューの後退幅が大き過ぎる場合において、当該後退幅を小さくするために数3の数式を適用してスクリューの後退幅を調整するときの1次保圧工程の動作を示す説明図であり、縦軸にスクリューの速度、横軸にスクリューの移動位置を位置として表し、1次保圧工程において、数1の数式で算出した後退幅でスクリューを後退させたときの波形を実線で表し、1ショット前の設定されたスクリューの後退幅でスクリューを後退させたときの波形を点線で表したものである。 スクリューの後退幅が大き過ぎる場合において、当該後退幅を小さくするために数3の数式を適用してスクリューの後退幅を調整するときの1次保圧工程の動作を示す説明図であり、縦軸にスクリューの圧力及び速度を表し、横軸に時間を表し、数3の数式で算出した後退幅でスクリューを後退させたときの圧力の波形を時間軸より上側にて実線で表し、1ショット前の設定されたスクリューの後退幅でスクリューを後退させたときの圧力の波形を時間軸より上側にて点線で表している。また、数3の数式で算出した後退幅でスクリューを後退させたときの速度の波形を時間軸より下側にて実線で表し、1ショット前の設定されたスクリューの後退幅でスクリューを後退させたときの速度の波形を時間軸より下側にて点線で表したものである。 学習係数の可変傾斜を示すグラフである。 数1の数式を適用してスクリューの後退幅を調整するときの動作を示すグラフであり、縦軸にスクリューの速度を速度測定として示し、横軸にスクリューの移動位置を位置として示している。 数1の数式を適用してスクリューの後退幅を調整するときの動作を示すグラフであり、縦軸にスクリューの圧力を圧力測定として示し、横軸にスクリューの移動位置を位置として示している。 数1の数式を適用してスクリューの後退幅を調整するときの動作を示すグラフであり、縦軸にスクリューの速度を速度測定として示し、横軸に時間を示している。 数1の数式を適用してスクリューの後退幅を調整するときの動作を示すグラフであり、縦軸にスクリューの圧力を圧力測定として示し、横軸に時間を示している。 数3の数式を適用してスクリューの後退幅を調整するときの動作を示すグラフであり、縦軸にスクリューの速度を速度測定として示し、横軸にスクリューの移動位置を位置として示している。 数3の数式を適用してスクリューの後退幅を調整するときの動作を示すグラフであり、縦軸にスクリューの圧力を圧力測定として示し、横軸にスクリューの移動位置を位置として示している。 数3の数式を適用してスクリューの後退幅を調整するときの動作を示すグラフであり、縦軸にスクリューの速度を速度測定として示し、横軸に時間を示している。 数3の数式を適用してスクリューの後退幅を調整するときの動作を示すグラフであり、縦軸にスクリューの圧力を圧力測定として示し、横軸に時間を示している。
以下、本発明の実施形態を図1〜図8により以下に説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反しない範囲で、実施形態において説明した以外の構成のものに対しても容易に適用可能なことは説明を要するまでもない。
図1は射出成形機1に構成される射出ユニット2を示す正面図であり、同図に示すように、射出ユニット2には、粒状の原料である樹脂(ペレット)が投入されるホッパ3、このホッパ3から粒状の樹脂が供給される筒型の加熱シリンダ4、加熱シリンダ4内に供給され熱で可塑化された溶融樹脂を計量するスクリュー5、計量された溶融樹脂を金型のキャビティへ射出充填する加熱シリンダ4先端に装着された射出ノズル6、加熱シリンダ4内で溶融樹脂の混練等を行うときにタイミングベルト7を介してスクリュー5を回転させる駆動源としての計量用モータ8、計量された溶融樹脂を射出ノズル6先端から射出するに際し、タイミングベルト9、ボールネジ機構10を介してスクリュー5を前進させる駆動源としての射出用モータ11、スクリュー5の前進等に伴い溶融樹脂を押出す力(射出圧力)を反力として検出する圧力センサたるロードセル12、後述する数式1〜4の演算処理など射出成形機1全体の各種制御を行う制御手段13、射出成形機1の実測値等の各種数値、前記数式等が格納される記憶手段14等が構成されている。
次に、本実施形態の射出成形機1の保圧工程について以下説明する。図2では、縦軸に圧力及び速度を、横軸に時間を表したグラフであり、同図に示すように、スクリュー5を前進させ金型のキャビティへ溶融樹脂を射出充填する射出充填工程が行われた後、保圧工程が行われるようになっており、射出充填工程で速度制御されていたスクリュー5は、射出充填工程が完了すると、そのタイミングでV−P切換えが行なわれ、保圧工程では速度制御ではなく圧力制御が行われる。なお、図2では、圧力の波形を実線で、速度の波形を点線で表している。
保圧工程は、射出充填工程から切換えられた初期段階に1次保圧工程を行い、当該1次保圧工程の後には、2次保圧工程(本保圧工程)を行うようになっており、1次保圧工程の1次保圧力が、2次保圧工程の設定圧力に短時間で到達するよう、制御手段13が、1次保圧工程において、スクリューを急速に後退させ、1次保圧力の減圧制御を行う。
ここで、前記1次保圧工程について、図3〜図5によりさらに説明する。1次保圧工程でスクリュー5の後退により減圧を行なうときの、スクリュー5の後退幅Bの調整は、図3のフローチャートに示した動作順で行われる。射出成形機1の稼動により、実測された1次保圧工程の実測圧力が、予め設定された2次保圧工程の設定圧力に到達しないときには(ステップ1)、ステップ2に移行し、スクリュー5を後退させ減圧を行う際のスクリュー5の後退幅Bが、制御手段13によって、下記数式1の計算で行なわれる。
Figure 0005815040
C:1ショット前の設定されたスクリューの後退幅(mm)
a:1ショット前のV−P切換時の実測されたV−P切換圧と1ショット前の1次保圧工程の実測圧力との差圧(MPa)
b:1ショット前のV−P切換時の実測されたV−P切換圧と2次保圧工程における設定圧力との差圧(MPa)
そして、数1の数式で算出した後退幅Bでスクリュー5が後退されることにより、1次保圧工程の1次保圧力が急速に減圧される。なお、数1の数式で算出した後退幅Bでスクリュー5が後退されるときの後退幅Bの微調整(後退幅Bが小さ過ぎる場合)について、図4A、図4Bに基づきここでさらに説明する。図4Aは、縦軸にスクリュー5の速度、横軸にスクリュー5の移動位置を位置として表し、1次保圧工程において、数1の数式で算出した後退幅Bでスクリュー5を後退させたときの波形を実線で表し、1ショット前の設定されたスクリュー5の後退幅Cでスクリュー5を後退させたときの波形を点線で表したものであり、また、図4Bは、縦軸にスクリュー5の圧力及び速度を表し、横軸に時間を表し、数1の数式で算出した後退幅Bでスクリュー5を後退させたときの圧力の波形を時間軸より上側にて実線で表し、1ショット前の設定されたスクリュー5の後退幅Cでスクリュー5を後退させたときの圧力の波形を時間軸より上側にて点線で表し、また、数1の数式で算出した後退幅Bでスクリュー5を後退させたときの速度の波形を時間軸より下側にて実線で表し、1ショット前の設定されたスクリュー5の後退幅Cでスクリュー5を後退させたときの速度の波形を時間軸より下側にて点線で表したものである。そして、図4Bに示されているように、数1の数式で算出した後退幅に基づき、スクリュー5の後退幅を微調整することで、スクリュー5を適切な後退幅Bで動作させることができる。
また、ステップ1にて、実測された1次保圧工程の実測圧力が、予め設定された2次保圧工程の設定圧力に到達したときには、ステップ3に移行し、制御手段13によって、下記数式2の計算で行なわれる。
Figure 0005815040
A:1ショット前のV−P切換時から、1次保圧工程と2次保圧工程とが切換えられた時までに移動されるスクリューの移動幅(mm)
そして、数2の数式を満たさないときには(ステップ3)、ステップ4に移行し、スクリュー5を後退させ減圧を行う際のスクリュー5の後退幅Bが、制御手段によって、下記数式3の計算で行なわれる。
Figure 0005815040
そして、数3の数式で算出した後退幅Bでスクリュー5が後退されることにより、1次保圧工程の1次保圧力が急速に減圧される。なお、数3の数式で算出した後退幅Bでスクリュー5が後退されるときの後退幅Bの微調整(後退幅Bが大き過ぎる場合)について、図5A、図5Bに基づきここでさらに説明する。図5Aは、縦軸にスクリュー5の速度、横軸にスクリュー5の移動位置を位置として表し、1次保圧工程において、数1の数式で算出した後退幅Bでスクリュー5を後退させたときの波形を実線で表し、1ショット前の設定されたスクリュー5の後退幅Cでスクリュー5を後退させたときの波形を点線で表したものであり、また、図5Bは、縦軸にスクリュー5の圧力及び速度を表し、横軸に時間を表し、数3の数式で算出した後退幅Bでスクリュー5を後退させたときの圧力の波形を時間軸より上側にて実線で表し、1ショット前の設定されたスクリュー5の後退幅Cでスクリュー5を後退させたときの圧力の波形を時間軸より上側にて点線で表し、また、数3の数式で算出した後退幅Bでスクリュー5を後退させたときの速度の波形を時間軸より下側にて実線で表し、1ショット前の設定されたスクリュー5の後退幅Cでスクリュー5を後退させたときの速度の波形を時間軸より下側にて点線で表したものである。そして、図5Bに示されているように、数3の数式で算出した後退幅に基づき、スクリュー5の後退幅を微調整することで、スクリュー5を適切な後退幅Bで動作させることができる。
また、ステップ3にて、数2の数式を満たすときには、ステップ5に移行する。
(勾配法による微調整)
ステップ5では、ステップ2やステップ4でスクリュー5の後退幅の微調整を行なったとしても、当該微調整が最適で無い場合には、圧力制御に切り替った後に不安定な圧力挙動を示す事がある。この問題を解消するための微調整手段として、極所解を求めるのに有効な最急降下法を用いる。ここでは最急降下法は下記の式で表すものとする。
Figure 0005815040
k:ショット数
t:実測圧力が2次保圧工程の設定圧力に到達した時の時間
X(t):時間tでスクリューの後退する後退幅
f(t):この仕様で用いられる評価値で、後退幅の調整量を出力する。
ここでは、評価関数として下記関数を用意する。
f(t)=αV(t)+βP(t)
V(t):時間tにおける射出速度
P(t):時間tにおける射出圧力
α、β:任意に決定する学習係数
そして、上記の評価関数を用い、f(t)≒0になる方向に後退幅X(t)を1ショット毎に更新すると数4の式になる。
Figure 0005815040
この時、学習係数α,βは、図6のグラフのように定数を可変にして、極所解に近似した場合の過学習を抑制する。
なお、ここでは下記の仕様でパラメータを決定する。
Figure 0005815040
そして、上記評価関数を用い、制御手段により、数4の数式によりf(t)≒0になる方向に後退幅X(t)を1ショット毎に算出され、該1ショット毎の算出値に基づき前記スクリュー5の後退幅が自動調整される。
次に、数1の数式により後退幅Bを微調整するときの動作の一例について図7により説明する。図7Aは縦軸にスクリュー5の速度を速度測定として示し、横軸にスクリュー5の移動位置を位置として示し、図7Bは縦軸にスクリュー5の圧力を圧力測定として示し、横軸にスクリュー5の移動位置を位置として示し、図7Cは縦軸にスクリュー5の速度を速度測定として示し、横軸に時間を示し、図7Dは縦軸にスクリュー5の圧力を圧力測定として示し、横軸に時間を示している。図7A〜図7Dにおいて、1ショット目(1.00mm)の波形は実線で、2ショット目(2.70mm)の波形は点線で、3ショット目(3.38mm)の波形は一点鎖線で表している。そして、1ショット目のスクリュー5の後退幅を1mmに、2次保圧工程の設定圧力に相当する目標圧力を10MPaとして、射出成形機1を稼動して成形を行う。すると、図7Bから、1mmの位置で圧力が約66MPaであることから、1ショット目では、目標圧力に到達していない。そのため、スクリュー5の後退幅が大きくなるよう調整するため、前記数1の数式(B=Cb/0.9a)が用いられる。
ここで、C=1.0mm、1ショット前のV−P切換時の実測されたV−P切換圧が105aMPa、1ショット前のV−P切換時の実測されたV−P切換圧と1ショット前の1次保圧工程の実測圧力との差圧(MPa)が、105MPa−66MPa=39MPaにて、a=39MPa、b=95MPa(105MPa−10MPa(2次保圧工程の設定圧力))であるから、
B=Cb/0.9a=(1.0×95)/(0.9×39)≒2.70mm
よって、2ショット目は、B=2.70mm、目標圧力を10MPaで成形を行なう。
そして、その結果、B=2.70mmのときには、圧力が約20.7MPaであり、目標圧力である10MPaに達することができなかったときには、目標圧力である10MPaに到達するよう、再度、数1の数式(B=Cb/0.9a)を用い、
C=2.7mm、1ショット前のV−P切換時の実測されたV−P切換圧が105aMPa、図7Bに示されているように、2ショット目の2.70mmの位置で圧力が20.7MPaであることから、1ショット前のV−P切換時の実測されたV−P切換圧と1ショット前の1次保圧工程の実測圧力との差圧(MPa)が、105MPa−20.7MPa=84.3MPaであり、a=84.3MPa、b=95MPa(105MPa−10MPa(2次保圧工程の設定圧力))であるから、
B=Cb/0.9a=(2.7×95)/(0.9×84.3)≒3.38mmにより、
3ショット目は、B=3.38mm、目標圧力10MPaで成形され、B=3.38mmのときには、結果、圧力が12.2 MPaになるが、当該12.2 MPa(1次保圧工程の圧力)が、目標圧力(2次保圧工程の設定圧力)に達しないため、数1の数式を用いたスクリュー5の後退幅の微調整を行いながら収束する。
他方、1次保圧工程の圧力が2次保圧工程の設定圧力に達するときには、図3のフローにも示されているように、ステップ1からステップ3へと移行されることとなり、数2の数式(A/B>0.98)の要件を満たしているか否かの判断が制御手段13によりなされ、当該要件を満たさないときには、数3の数式を用いたスクリュー5の後退幅の微調整が行われる。当該微調整を行なうときの動作の一例について図8により以下に説明する。
図8Aは縦軸にスクリュー5の速度を速度測定として示し、横軸にスクリュー5の移動位置を位置として示し、図8Bは縦軸にスクリュー5の圧力を圧力測定として示し、横軸にスクリュー5の移動位置を位置として示し、図8Cは縦軸にスクリュー5の速度を速度測定として示し、横軸に時間を示し、図8Dは縦軸にスクリュー5の圧力を圧力測定として示し、横軸に時間を示している。図8A〜図8Dにおいて、1ショット目(5.00mm)の波形は実線で、2ショット目(4.05mm)の波形は点線で、3ショット目(3.57mm)の波形は一点鎖線で表している。そして、例えば、1ショット目のスクリューの後退幅を5.00mmに、2次保圧工程の設定圧力に相当する目標圧力を10MPaとして成形が行われときに、1次保圧工程の1次保圧力が2次保圧工程の設定圧力に到達させるためには、後退幅Bを4.01mmで到達することになるのだが、1ショット目では、B=5.00、A=3.97であるため、数2の数式(A/B>0.98)の要件を満たさないことから、スクリュー5の後退幅が小さくなるよう調整するため、前記数3の数式(B=A/0.99)が用いられる。
そして、数3の数式(B=A/0.99)、後退幅B=4.05mm、目標圧力を10MPaで2ショット目の成形を行なうと、1次保圧工程の1次保圧力が2次保圧工程の設定圧力に達するときの後退幅Bが3.53mmとなるため、数3の数式(B=A/0.99)で再び計算を行なう。
その結果、B=3.57mmになるから、3ショット目では、B=3.57mm、目標圧力を10MPaで成形し、後退幅Bが3.57mmで、1次保圧工程の1次保圧力が2次保圧工程の設定圧力(目標圧力)である10MPaに達すると、数3の数式を用いたスクリュー5の後退幅の微調整は終了される。
1 射出成形機
2 射出ユニット
3 ホッパ
4 加熱シリンダ
5 スクリュー
6 射出ノズル
7 タイミングベルト
8 計量用モータ
9 タイミングベルト
10 ボールネジ機構
11 射出用モータ
12 ロードセル
13 制御手段
14 記憶手段

Claims (4)

  1. スクリューを前進させ金型のキャビティへ溶融樹脂を射出充填する射出充填工程と、前記スクリューを後退させ減圧による保圧工程とを行う射出成形機における制御方法であって、
    前記射出充填工程の射出充填完了後に前記保圧工程に切換え、
    該保圧工程に切換後の初期段階である1次保圧工程で、圧力制御により1次保圧力を減圧して前記スクリューを急速に後退させ、該減圧された1次保圧力が、前記1次保圧工程後に行なわれる2次保圧工程の設定圧力に短時間で達するよう減圧制御されるようにし、
    前記射出充填工程では前記スクリューの前進運動が速度制御で行われる一方で、前記保圧工程では前記スクリューの後退運動が圧力制御で行われるよう、前記射出充填工程から前記保圧工程への切換えでV−P切換えを行うようにし、
    前記減圧によりスクリューを後退させる1次保圧工程にて、前記1次保圧力の実測圧力が前記設定圧力に到達しないときには、前記スクリューを後退させ減圧を行う際の該スクリューの後退幅Bを、下記の数1の数式で算出し、該数1の数式で算出した後退幅Bで前記スクリューを後退させることを特徴とする射出成形機における保圧工程制御方法。
    Figure 0005815040
    C:1ショット前の設定されたスクリューの後退幅(mm)
    a:1ショット前のV−P切換時の実測されたV−P切換圧と1ショット前の1次保圧工程の実測圧力との差圧(MPa)
    b:1ショット前のV−P切換時の実測されたV−P切換圧と2次保圧工程における設定圧力との差圧(MPa)
  2. スクリューを前進させ金型のキャビティへ溶融樹脂を射出充填する射出充填工程と、前記スクリューを後退させ減圧による保圧工程とを行う射出成形機における制御方法であって、
    前記射出充填工程の射出充填完了後に前記保圧工程に切換え、
    該保圧工程に切換後の初期段階である1次保圧工程で、圧力制御により1次保圧力を減圧して前記スクリューを急速に後退させ、該減圧された1次保圧力が、前記1次保圧工程後に行なわれる2次保圧工程の設定圧力に短時間で達するよう減圧制御されるようにし、
    前記射出充填工程では前記スクリューの前進運動が速度制御で行われる一方で、前記保圧工程では前記スクリューの後退運動が圧力制御で行われるよう、前記射出充填工程から前記保圧工程への切換えでV−P切換えを行うようにし、
    前記減圧によりスクリューを後退させる1次保圧工程にて、前記1次保圧力の実測圧力が前記設定圧力に到達したときには、下記の数2の数式で演算し、
    前記数2の数式を満たさないときには、
    前記スクリューを後退させ減圧を行う際の該スクリューの後退幅Bを、下記の数3の数式で算出し、該数3の数式で算出した後退幅Bで前記スクリューを後退させることを特徴とする射出成形機における保圧工程制御方法。
    Figure 0005815040
    Figure 0005815040
    A:1ショット前のV−P切換時から、1次保圧工程と2次保圧工程とが切換えられた時までに移動されるスクリューの移動幅(mm)
    B:スクリューの後退幅(mm)
  3. スクリューを前進させ金型のキャビティへ溶融樹脂を射出充填する射出充填工程と、前記スクリューを後退させ減圧による保圧工程とを行う射出成形機における制御方法であって、
    前記射出充填工程の射出充填完了後に前記保圧工程に切換え、
    該保圧工程に切換後の初期段階である1次保圧工程で、圧力制御により1次保圧力を減圧して前記スクリューを急速に後退させ、該減圧された1次保圧力が、前記1次保圧工程後に行なわれる2次保圧工程の設定圧力に短時間で達するよう減圧制御されるようにし、
    前記射出充填工程では前記スクリューの前進運動が速度制御で行われる一方で、前記保圧工程では前記スクリューの後退運動が圧力制御で行われるよう、前記射出充填工程から前記保圧工程への切換えでV−P切換えを行うようにし、
    前記減圧によりスクリューを後退させる1次保圧工程にて、前記1次保圧力の実測圧力が前記設定圧力に到達しないときには、前記スクリューを後退させ減圧を行う際の該スクリューの後退幅Bを、下記の数1の数式で算出し、該数1の数式で算出した後退幅Bで前記スクリューを後退させ、
    他方、前記減圧によりスクリューを後退させる1次保圧工程にて、前記1次保圧力の実測圧力が前記設定圧力に到達したときには、下記の数2の数式で演算し、
    前記数2の数式を満たさないときには、
    前記スクリューを後退させ減圧を行う際の該スクリューの後退幅Bを、下記の数3の数式で算出し、該数3の数式で算出した後退幅Bで前記スクリューを後退させることを特徴とする射出成形機における保圧工程制御方法。
    Figure 0005815040

    Figure 0005815040

    Figure 0005815040

    A:1ショット前のV−P切換時から、1次保圧工程と2次保圧工程とが切換えられた時までに移動されるスクリューの移動幅(mm)
    C:1ショット前の設定されたスクリューの後退幅(mm)
    a:1ショット前のV−P切換時の実測されたV−P切換圧と1ショット前の1次保圧工程の実測圧力との差圧(MPa)
    b:1ショット前のV−P切換時の実測されたV−P切換圧と2次保圧工程における設定圧力との差圧(MPa)
  4. 前記数2の数式を満たすときには、
    ショット数をk、前記実測圧力が前記2次保圧工程の設定圧力に到達した時の時間をt、時間tでスクリューの後退する後退幅をX(t)、時間tにおける射出速度をV(t)、時間tにおける射出圧力P(t)、任意に決定する学習係数をα、β、評価関数f(t)=αV(t)+βP(t)として、
    該評価関数を用い、下記数4の数式によりf(t)≒0になる方向に後退幅X(t)を1ショット毎に算出し、該1ショット毎の算出値に基づき前記スクリューの後退幅を自動調整することを特徴とする請求項3に記載の射出成形機における保圧工程制御方法。
    Figure 0005815040
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