以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
<1.第1の実施の形態>
<1−1.概要>
図1は、操作パネル1を備えた車載装置3の本体部2を設置した車両の車室100の内部を示す斜視図である。
車両の車室100のセンターコンソール又はその付近に操作パネル1を備えた車載装置3を設置することで、ユーザは車内で操作パネル1を操作して、操作パネル1又は車載装置3へ情報を入力することができる。例えば、操作パネル1で道路地図を表示し、ルート案内などのナビゲーション機能を実行する場合、ユーザは操作パネル1を操作することで目的地等の情報を入力できる。操作パネル1は、車載装置3の本体部2に対して移動可能に設置されている。
以下、図中に示す3次元のXYZ直交座標系を用いて、適宜、方向や向きを示すことにする。X軸方向を車両の前後方向、Y軸方向を車両の左右方向、Z軸方向を車両の鉛直方向とする。また、センターコンソールからみてユーザが着座する側(ユーザ側)、すなわち車両の後方側を+X側とし、鉛直上側を+Z側とし、車両の右側を+Y側とする。したがって、車両の前方側は−X側、鉛直下側は−Z側、車両の左側は−Y側となる。
操作パネル1は、画像表示用の液晶の画面と接触センサ(接触位置座標に応じた信号を出力する静電容量式や抵抗式のタッチパネルデバイス)とを備えたタッチパネルである。操作パネル1の画面は、ユーザの操作面となる。また、操作パネル1には、機械式のスイッチが設けられていてもよい。かかる画面には、ナビゲーション用の地図やオーディオ用の音声(音楽)情報、タッチパネル用のボタン画像等が表示される。
車載装置3は、操作パネル1を保持する保持部11を有している。車載装置3は、この保持部11に操作パネル1が取り付けられた状態で、車両の車室100のセンターコンソール又はその付近の車室内パネル内部に設置されている。車載装置3は、操作パネル1の取り付け面をやや上方(+Z側)に向けて設置することが好ましい。取り付けられた操作パネル1の操作面が上方を向き易いよう、すなわちユーザの顔と向き合い易いように操作面を配置することが容易となるためである。なお、多くの自動車では、センターコンソールに設置されるエアコン等の操作部の操作性やデザイン上の関係から、センターコンソールの下方が車両後方となるようにセンターコンソールが傾斜している。このセンターコンソールの車載機用開口部に隙間無く車載機を設置するため、センターコンソール面に垂直に車載機を固定する構造が一般的となっている。その結果、多くの車載機の操作パネル面はやや上向きに設置されることになる。
保持部11は、操作パネル1を車載装置3に取り付けるための保持部材である。保持部11は、車載装置3に取り付けた操作パネル1が、取り付け箇所を軸として、傾動可能となるように操作パネル1を取り付ける。後に説明するように、操作パネルの操作面のチルト角度を変更できるようにするためである。なお、保持部11は、操作パネル1を車載装置3に着脱可能に取り付けるよう構成されてもよい。
以下、車両の車室100の内部に設置された操作パネル1及び車載装置3の構成及び処理の流れについて詳細に説明する。
<1−2.車載装置3の構成>
操作パネル1を備える車載装置3の構成について説明する。図2は、操作パネル1を備える車載装置3の構成を示す図である。
操作パネル1は、前述した液晶の画面(図示せず)の他、操作SW12、近接センサ13、及び照度センサ14を備えている。操作パネル1は、タッチパネルが好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではなく、ユーザにより操作情報が入力できるものであればよい。
操作SW12は、機械式のスイッチ機構である。ユーザが押下することで、オン又はオフ情報を本体部2へ送信する。なお、操作SW12をポテンショメータとして、ユーザがスライダを操作するようにしてもよい。
近接センサ13は、物体の接近を検知する赤外線センサである。物体の接近を検知すると、近接センサ13は、本体部2へ所定の検知信号を送信する。近接センサ13が設けられる箇所は、操作パネル1の画面の外枠である。特に外枠上辺の左右及び中央に1箇所づつ、合計3箇所に設けられる。ユーザが近接センサ13に手を翳すことで、本体部2は検知信号を受信する。本体部2は、近接センサ13から送信される検知信号に基づき、操作パネル1の位置の移動を開始させることができる。これにより、ユーザは操作パネル1の画面外枠付近に手を翳すだけで、操作パネル1の位置の移動を開始させることができる。このため、近接センサ13は、数センチまで接近した物体のみを検知するようセンサ感度が調整される。なお、外枠上辺の中央に設けた近接センサ13からの信号に応答して、操作パネル1のチルト角度の変更を開始させてもよい。また、近接センサ13は、赤外線を利用するもののほか、電波や音波を利用するものであってもよく、物体の接近を検知するものであればよい。
照度センサ14は、操作パネル1に照射される日光等の光の照度を検出し、検出した照度情報を制御部27へ送信する。操作パネル1の画面へ強い光が照射されると、かかる光が運転者へ反射して、運転者は画面に表示される画像を判読し難い。したがって、制御部27は、運転者が画面に表示される画像を判読し難い程度に画面に強い光が照射されていると判断すると、チルト角度を変更して反射を抑制したり(反射方向を変える)、また色調を調整して運転者が画像を判読し易いよう制御を行う。照度センサ14は、操作パネル1の上辺に設けられるのが好ましい。操作パネル1に照射される光は主に日光であり、日光は操作パネル1上方のフロントガラスを通して操作パネル1を照射するからである。なお、光の照度を検出する照度センサ14の代わりに、所定の照度又は光量の有無を検知する光センサを設けてもよい。
本体部2は、操作パネル1が取り付けられ、車両の車室100に設置される筐体である。本体部2は、車載機器の規格として適用されるいわゆる2DIN規格の筐体であり、その寸法は、X、Y、Z軸方向において、例えば約190mm×170mm×94mmである。また、本体部2は、パネル位置移動機構21、パネル角度変更機構22、位置センサ23、角度センサ25、制御部27、及びメモリ28を備えている。
パネル位置移動機構21は、操作パネル1の位置を基準位置から操作位置へ移動させる機構である。なお、操作パネル1を着脱可能とした場合には、パネル位置移動機構21は、保持部11の位置を移動させる機構となる。パネル位置移動機構21は、下側移動部21a、ユーザ側移動部21b、及び駆動部21cを備えている。
ここで基準位置とは、操作パネル1がパネル位置移動機構21によって最も車両前方側(−X側)かつ上側(+Z側)に配置される位置である。例えば、図1に示す操作パネル1の位置である。また、操作位置とは、操作パネル1がパネル位置移動機構21によって最もユーザ側(車両後方側)(+X側)かつ下側(−Z側)に配置される位置である。例えば、後に説明する図3に示す操作パネル1の位置である。もっとも、基準位置及び操作位置は、ユーザの指示に応じて微調整を行うことができる。微調整のためのユーザの指示内容は、後に説明するように基準位置及び操作位置を特定するデータとしてメモリ28に記憶されている。
下側移動部21aは、操作パネル1を基準位置に対して下側(−Z側)に移動させる機構である。下側移動部21aが、操作パネル1を下側(−Z側)に移動させる動作については、後に詳述する。
ユーザ側移動部21bは、操作パネル1を基準位置に対してユーザ側(+X側)に移動させる機構である。ユーザ側移動部21bが、操作パネル1をユーザ側(+X側)に移動させる動作については、後に詳述する。
駆動部21cは、下側移動部21a及びユーザ側移動部21bを駆動する機構である。駆動部21cは、モータ、ギア、ラックギアレバー、及びクラッチ機構24からなる。駆動部21cが、下側移動部21a及びユーザ側移動部21bを駆動する動作については、後に詳述する。
クラッチ機構24は、操作位置に配置された操作パネル1に対し、外部より一定の衝撃が加わった際に、操作パネル1を基準位置の方向へ移動させる。これにより、操作パネル1がユーザ側(+X側)に位置する場合に、車両の障害物への追突等によりユーザが操作パネル1に衝突した場合でも、ユーザへの衝撃をより緩和できる。また、ユーザが誤って操作パネル1に接触した場合に、操作パネル1に連結されるパネル位置移動機構21の駆動部21cを構成するギアの破損やモータの過駆動を防止できる。クラッチ機構24の構成及び動作の詳細は、後に説明する。
パネル角度変更機構22は、操作パネル1のチルト角度を変更する機構である。操作パネル1の操作面をチルトさせる。すなわち、パネル角度変更機構22は、操作パネル1の操作面を、Y軸方向を軸として上下方向(Z軸方向)に傾斜させる。パネル角度変更機構22が、操作パネル1のチルト角度を変更する動作についても、後に詳述する。
位置センサ23は、操作パネル1の本体部2に対する位置を検出し、検出した位置情報を制御部27へ送信する。位置センサ23は、可変抵抗器や、所定間隔で配列したスリットを光学的に検出する光学センサ、操作パネル1を移動させるギア(歯車)の回転数又は回転時間を制御するモータで構成することができる。
角度センサ25は、操作パネル1のチルト角度を検出して、チルト角度を示す角度情報を制御部27へ送信する。かかる角度情報は、操作パネル1がどの程度傾斜しているかを示すものであり、度数法([度])や弧度法([rad])に変換できる値である。例えば、操作パネル1の操作面が鉛直方向(Z軸方向)に沿った状態のチルト角度が0ーであり、かかる状態から操作面が上側(+Z側)に向くに従い、チルト角度が増加する。なお、角度センサ25は、可変抵抗器等で構成することができる。
制御部27は、本体部2に備えられた機構やセンサ等を統括的に制御するマイクロコンピュータである。制御部27は、CPU、RAM、及びROMを備えている。CPUがメモリ28に記憶されたプログラム28dに従い所定の演算を行うことで、機構やセンサ等の制御が実現される。
メモリ28は、電子的データを記憶する不揮発性のメモリであり、例えばフラッシュメモリやEEPROMにより構成される。メモリ28は、制御部27と接続され、制御部27により記憶したデータの読出しや書き込みが行われる。また、メモリ28は、基準位置データ28a、操作位置データ28b、速度閾値28c、及びプログラム28dを記憶している。なお、メモリ28をメモリカード等の可搬性記憶媒体として構成し、メモリ28を本体部2に対して着脱可能としてもよい。
基準位置データ28a及び操作位置データ28bはそれぞれ、操作パネル1の位置を特定するデータであり、上下位置(Z軸方向の位置)、前後位置(X軸方向の位置)、及び、チルト角度を含んでいる。基準位置データ28aは、基準位置における操作パネル1の上下位置、前後位置、及び、チルト角度を含む。また、操作位置データ28bは、操作位置における操作パネル1の上下位置、前後位置、及び、チルト角度を含む。
また、操作位置データ28bは、複数の操作位置を特定するデータを含んでいてもよい。これら複数の操作位置は、複数のユーザのそれぞれに対して個別に設定されたものである。この場合は、このような複数の操作位置から、その時点のユーザ(運転者)に応じた一の操作位置が選択される。
パネル位置移動機構21は、基準位置データ28a又は操作位置データ28bに含まれる上下位置及び前後位置を参照して、操作パネル1を移動する。また、パネル角度変更機構22は、基準位置データ28a又は操作位置データ28bに含まれるチルト角度を参照して、操作パネル1のチルト角度を変更する。これらのデータ28a、28bは、操作パネル1の備えるタッチパネル又は操作SW12を介してユーザによって入力され、メモリ28に記憶される。
速度閾値28cは、制御部27に参照される車両速度のデータである。制御部27は、速度閾値28cを参照して、車両が所定の速度を超えて走行する場合には、操作パネル1の移動を制限、あるいは、操作パネル1を基準位置に強制的に移動させる。速度閾値28cの示す速度は、例えば時速5[km]である。なお、速度閾値28cは複数の異なるデータとしてもよい。この場合、制御部27に参照される機会に応じて、異なる速度閾値28cがメモリ28から読み出される。
プログラム28dは、制御部27により読み出され、制御部27が本体部2の各機構等を制御するために実行する、いわゆるシステムソフトウェアである。
変位閾値28eは、制御部27に参照される距離を示すデータである。制御部27は、変位閾値28eを参照して、操作パネル1が操作位置においてユーザから押圧された場合には、操作パネル1を強制的に基準位置へ移動させる。変位閾値28eの示す距離は、操作パネル1が操作位置からユーザにより押圧されて移動したとみなされる距離であり、例えば5[mm]である。
ステアリングSW31は、車両のステアリング3に備えられたスイッチ機構である。ユーザはステアリングSW31を操作することで、所定の情報を制御部27へ入力することができる。
車速センサ4は、車載装置3を搭載した車両の速度を検出し、速度情報を制御部27へ送信するセンサで、車両のスピードメータやエンジン制御等で用いられているセンサを利用できる。
<1−3.操作位置の例>
次に、操作パネル1の操作位置について図を用いて説明する。
図3は、操作パネル1を操作位置に移動させた際の車両の車室100の内部を示す図である。図3に示す操作パネル1の操作位置は、図1に示す操作パネル1の基準位置と比較して、ユーザ側(+X側)かつ下側(−Z側)となっている。これはパネル位置移動機構21が、操作パネル1を基準位置から移動させ、操作位置へ配置したものである。このように操作位置に配置された操作パネル1は、車両内のユーザ、特に運転席又は助手席に着座するユーザにとって操作しやすい状態となっている。すなわち、操作パネル1が図1の基準位置よりも下側かつユーザ側に移動しているため、ユーザは手を大きく伸ばすことなく、また手をあまり上方に挙げることなく、概ね下に向けたまま操作パネル1のタッチパネルを操作できるからである。
<1−4.操作パネル1の移動>
次に、操作パネル1を基準位置と操作位置との間を移動させる動作について説明する。
図4から図7は、操作パネル1及びパネル位置移動機構21を+Y側(車両右側)から見た側面図である。これら図4から図7までの一連の図は、操作パネル1を基準位置から操作位置へ移動させる動作を時系列で表している。特に、図4から図6までの動作が操作パネル1を下側(−Z側)へ移動させる下側移動部21aの動作を表し、図6から図7までの動作が操作パネル1をユーザ側(+X側)へ移動させるユーザ側移動部21bの動作を表す。
図4から図7に示すように、下側移動部21aは、第1スライドベースアッシA、移動ピンC、移動板D、回動ピンE、回動板F、支軸ピンG、パネルピンH、パネルシャーシIを含んでいる。また、ユーザ側移動部21bは、第2スライドベースアッシJを含んでいる。そして、下側移動部21a及びユーザ側移動部21bは、メインシャーシK上に構成されている。
なお、説明の便宜上、図中において、各構成を重畳して記載する。したがって、他の構成より−Y側(車両左側)に位置する構成が、当該他の構成と重なって記載される場合がある。また、図4から図7においてメインシャーシKは移動せず、メインシャーシKの位置は不変とする。
図4は、操作パネル1が基準位置に配置された状態を示す図である。
図中の第1スライドベースアッシAは、第2スライドベースアッシJに対してX軸方向に移動可能に、第2スライドベースアッシJ上に取付られている。図中において、第1スライドベースアッシAは、斜線ハッチングで示される。また、第1スライドベースアッシAのX軸方向の移動は、駆動部21cにより行われる。スライドベースアッシAには、スリットBが設けられている。
スリットBは、第1スライドベースアッシAのXZ平面上に設けられている。スリットBは、Z軸方向の位置の異なる2つの終端部と、これら2つの終端部を繋げる傾斜部とを備えている。スリットBの+X側の終端部の位置は、−X側の終端部の位置より低く(−Z側に)形成される。スリットBの2つの終端部の形状はX軸方向に沿って延伸して形成される。スリットBには、移動ピンCが嵌め込まれている。
移動ピンCは、第1スライドベースアッシAの移動に合わせ、スリットBの2つの終端部の相互間を、スリットBの形状に沿って移動する。移動ピンCは、移動板Dに固定されている。なお、移動ピンCが、スリットBに沿って移動した後、スリットBのいずれかの終端部に達すると、駆動部21cにより押圧されて終端部に嵌合する。これにより、第1スライドベースアッシAと移動板Dとの相互間のガタツキが防止される。移動ピンCが、同箇所において、+Z側、−Z側、及び+X側(あるいは−X側)の三方で固定されるためである。
移動板Dは、Z軸方向へ延びる板状(又は棒状)の部材である。移動板Dは、移動ピンCがスリットBに沿って移動することにより、上下方向(Z軸方向)に移動する。なお、移動板Dは、移動ピンCがスリットBの−X側の終端部に位置したときに、最も高い位置に位置する。
この移動板21Dには、回動ピンEが設けられている。回動ピンEは、移動板Dと回動板Fとを接続し、回動板Fが移動板Dに対し回動可能に両者を接続している。
回動板Fは、回動ピンEと接続されるほか、回動ピンEより+X側に位置する支軸ピンGにおいて、第2スライドベースアッシJに対して回動可能に接続される。支軸ピンGは、第2スライドベースアッシJに固定された図示しない部材により第2スライドベースアッシJに相対的に固定される。これにより、支軸ピンGの位置は第2スライドベースアッシJに対して固定される。この構成により、回動板Fは、回動ピンEで接続された移動板Dが上下方向(Z軸方向)に移動することにより、支軸ピンGを軸としてXZ平面に沿って回動する。なお、回動板Fは、上下方向(Z軸方向に並列して複数、例えば2枚設けることが好ましい。後に述べるように、回動板FはパネルシャーシIに対して回動可能であり、回動板Fが回動してパネルシャーシIがZ軸方向(上下方向)に移動する。このため、回動板Fを複数設けることで、パネルシャーシIが移動する際にガタツキが防止され、より円滑な移動が可能になるためである。
さらに、回動板Fには、回動ピンE及び支軸ピンGが存在する側とは反対側にパネルピンHが設けられている。パネルピンHは、回動板FとパネルシャーシIを接続し、回動板FがパネルシャーシIに対し回動できるように両者を接続している。
パネルシャーシIは、操作パネル1を保持する保持部11に固定され操作パネル1を支持する。前述したように、回動板Fは、パネルピンHにおいて、パネルシャーシIに対して回動可能である。したがって、パネルシャーシIは、回動板Fが回動することにより、Z軸方向(上下方向)に移動する。
パネルシャーシIは、保持部11を介して操作パネル1を支持するため、パネルシャーシIの移動に伴って、操作パネル1も移動する。したがって、第1スライドベースアッシAが移動すれば、この移動に連動して移動板D、回動板F及びパネルシャーシIが移動し、結果として操作パネル1が上下方向(Z軸方向)に移動することになる。
また、第2スライドベースアッシJは、メインシャーシKに対してX軸方向に移動可能に形成される。第2スライドベースアッシJのX軸方向の移動は、駆動部21cにより行われる。
メインシャーシKは、本体部2における筐体部分を構成し、本体部2が車両の車室100に設置される際に取付ブラケットにより車両に取り付けられる部材である。したがって、メインシャーシKは、車両に対して相対的に固定される。
図5は、操作パネル1が図4で示す基準位置から下側(−Z側)へ移動途中の状態を示す図である。
操作パネル1の基準位置から下側(−Z側)への移動は、第1スライドベースアッシAが駆動部21cによりユーザ側(+X側)へスライドすることにより開始される。第1スライドベースアッシAがユーザ側(+X側)へスライドすると、スリットBの+X側の終端部に位置していた移動ピンCがスリットBの傾斜部に沿って上側(+Z側)へ移動する。移動ピンCが上側へ移動すると、移動ピンCに固定されている移動板Dも同様に上側へ移動する。移動板Dの移動に伴い、回動板Fの上部が、支軸ピンGを軸としてXZ平面上を+X側へ回転する。この回動板Fの回転することにより、回動板Fの上部にあるパネルピンHが同様に、支軸ピンGを軸としてXZ平面上を+X側へ回転する。そして、かかる回転に伴って、パネルピンHに固定されたパネルシャーシI、及びパネルシャーシIが保持する操作パネル1は、パネルピンHの回転移動のうちZ軸方向の成分だけ、下側へ移動する。
図6は、操作パネル1が図5で示す位置からさらに下側(−Z側)へ移動した状態(下側への移動が完了した状態)を示す図である。
第1スライドベースアッシAが、図5で示す位置からさらにユーザ側(+X側)へスライドすると、移動ピンCがスリットBの傾斜部に沿ってさらに上側(+Z側)へ移動し、スリットBの−X側の終端部に位置する。この移動ピンCの移動により、図5で説明した動きと同様に、移動板D等の部材の一連の移動が行われ、パネルピンHがさらに下側(−Z側)へ移動する。移動ピンGは、移動板Dの切り欠け部に当接し、移動板Dの移動が超過するのを防止する。この際、回動ピンEの移動は、移動ピンGよりわずかに−X側で停止する。第1スライドベースアッシAが−X側へ反転してスライドした場合に、回動板FがパネルピンHを軸としてXZ平面上を−X側へ回転できるようにするためである。これにより、操作パネル1の下側への移動が完了する。
本実施の形態において、操作パネル1が−Z側(下側)へ移動する長さは、回動板Fの長さにより定まる。したがって、操作パネル1を所望の量だけ−Z側へ移動させるには、回動板Fの長さをその量に合わせて設計すればよい。また、かかる設計すべき長さは、操作パネル1大きさや、車両の車室100のシフトレバー位置、スイッチ類の配置等を考慮したうえ、ユーザが操作パネル1を操作する手の位置を推定して決定すればよい。なお、操作パネル1が下側(−Z側)へ移動する長さは、例えば25[mm]である。
図7は、操作パネル1が図6で示す位置からユーザ側(+X側)へ移動し、操作位置に配置された状態を示す図である。
第2スライドベースアッシJは、図6で示す位置からユーザ側(+X側)へ移動する。第2スライドベースアッシJのX軸方向への移動は、駆動部21cにより行われる。
操作パネル1は、第2スライドベースアッシJ上にある下側移動部21aに支持されているため、第2スライドベースアッシJのユーザ側(+X側)への移動に伴って、操作パネル1もユーザ側(+X側)へ移動する。これにより、下側移動部21aに保持される操作パネル1が、ユーザ側(+X側)へ移動する。なお、操作パネル1がユーザ側(+X側)へ移動する長さは、例えば100[mm]である。
このようにして、図4から図7までの一連の動作により、操作パネル1が基準位置から操作位置へ移動する。なお、このような図4から図7までの動作中は、パネル角度変更機構22が駆動せず、操作パネル1のチルト角度は変更されない。すなわち、パネル位置移動機構21は、操作パネル1の操作面の角度を維持したまま、操作パネル1を移動することになる。
また、操作パネル1の操作位置から基準位置への移動は、図7の状態から第2スライドベースアッシJが車両前方側(−X側)へ移動し、上述した図4から図7までの一連の動作が逆順及び逆方向で行われて完了する。
<1−5.駆動部>
次に、駆動部21cが、第1スライドベースアッシA及び第2スライドベースアッシJをX軸方向に移動させる動作について説明する。
図8は、駆動部21cを+Z側(上側)から見た駆動部21cの上面図である。駆動部21cは、ギアGE1、ギアGE2、ギアGE3、ギアGE4、モータM、ラックギアレバーRG1、及びラックギアレバーRG2を備え、メインシャーシK上に構成される。
ギアGE1は、モータMのウォームギアと噛合し、ギアGE2と重畳して構成される歯車である。ギアGE2は、ギアGE3と噛合し、ギアGE1と重畳して構成される歯車である。ギアGE1とギアGE2とは、バネで付勢され、モータMの動力を伝達する程度に結合している。また、ギアGE1とギアGE2とは、クラッチ機構24を構成する。クラッチ機構24については、後に詳述する。ギアGE3は、ギアGE2及びギアGE4と噛合する歯車である。ギアGE4は、ギアGE3、ラックギアレバーRG1、及びラックギアレバーRG2と噛合する歯車である。
モータMは、Y軸方向に沿ったモータ軸を備え、かかるモータ軸にギアGE1と噛合するウォームギアが固着されている。
ラックギアレバーRG1は、ギアGE4と噛合し、図示しない第1スライドベースアッシAと接合されている。また、ラックギアレバーRG1は、ギアGE4の回動により、X軸方向に移動する。したがって、ラックギアレバーRG1の動作に応じて、第1スライドベースアッシAがX軸方向に移動する。また、ラックギアレバーRG1は、当接部PM1及びPM3を備える。
当接部PM1は、ラックギアレバーRG1の一部として設けられ、ラックギアレバーRG1のユーザ側(+X側)への移動により、ラックギアレバーRG2に備わる当接部PM2と当接し、当接部PM2を押圧する。 当接部PM3は、ラックギアレバーRG1の一部として設けられ、ラックギアレバーRG1の車両前方側(−X側)への移動により、ラックギアレバーRG2に備わる当接部PM4と当接し、当接部PM4を押圧する。
ラックギアレバーRG2は、ギアGE4と噛合し、図示しない第2スライドベースアッシJと接合されている。また、ラックギアレバーRG2は、ギアGE4の回動により、X軸方向に移動する。したがって、ラックギアレバーRG2の動作に応じて、第2スライドベースアッシJがX軸方向に移動する。なお、ラックギアレバーRG2は、操作パネル1が基準位置に配置される際には、ギアGE4とは噛合していない。ラックギアレバーRG2とギアGE4との噛合は、後に説明するように、ラックギアレバーRG2の移動により行われる。また、ラックギアレバーRG2は、当接部PM2及びPM4を備える。
なお、ラックギアレバーRG1及びラックギアレバーRG2は、Z軸方向に重畳して配置される。
当接部PM2は、ラックギアレバーRG2の一部として設けられ、ラックギアレバーRG2の車両前方側(−X側)への移動により、ラックギアレバーRG1に備わる当接部PM1と当接する。当接部PM4は、ラックギアレバーRG2の一部として設けられ、ラックギアレバーRG2の車両前方側(−X側)への移動により、ラックギアレバーRG1に備わる当接部PM1と当接する。
このような構成において、操作パネル1の基準位置への配置時に、モータ軸をその軸線まわりに回動させると、その回転駆動力は順次、ウォームギア、ギアGE1、ギアGE2、ギアGE3、ギアGE4に伝達され、まずラックギアレバーRG1がユーザ側(+X側)へ駆動する。そして、当接部PM1が当接部PM2をユーザ側(+X側)へ押圧することにより、ラックギアレバーRG2とギアGE4が噛合する。ラックギアレバーRG2とギアGE4が噛合すると、ラックギアレバーRG2がユーザ側(+X側)へ移動し、制御部27のモータ駆動停止により、ラックギアレバーRG2のユーザ側(+X側)への移動は停止する。移動の停止の際、ラックギアレバーRG1とラックギアレバーRG2とは、ギアRG4と噛合したままである。かかる停止した位置が、操作パネル1が操作位置へ配置される位置である。このようにして、操作パネル1は基準位置から操作位置へ配置される。
なお、操作パネル1の操作位置から基準位置への配置のための駆動動作は、上記と逆の順を追って説明される。すなわち、操作パネル1が操作位置へ配置された位置から、モータを上記と逆方向に回転させることにより開始する。その逆回転駆動力は順次、ウォームギア、ギアGE1、ギアGE2、ギアGE3、ギアGE4に伝達され、まずラックギアレバーRG1及びラックギアレバーRG2が車両前方側(−X側)へ駆動する。ギアGE4がラックギアレバーRG2の−X側端に至ると、ラックギアレバーRG2とギアRG4との噛合は離脱する。ラックギアレバーRG2とギアGE4との噛合が離脱した後、ラックギアレバーRG1が車両前方側(−X側)へさらに移動し、制御部27のモータ駆動停止により、ラックギアレバーRG1の車両前方側(−X側)への移動は停止する。この際、ラックギアレバーRG1の当接部PM3は、ラックギアレバーRG2の当接部PM4と当接し、当接部PM4を押圧する。これにより、ラックギアレバーRG2とギアGE4との噛合を確実に離脱させる。ラックギアレバーRG2とギアGE4との噛合を離脱させることで、モータMの誤動作や振動でギアGE4が誤回転した場合でも、直ちにラックギアレバーRG2が移動することがなく、第2スライドベースアッシJを確実に静止状態とすることができる。ラックギアレバーRG1が車両前方側(−X側)で停止した位置が、操作パネル1が基準位置へ配置される位置である。このようにして、操作パネル1は操作位置から基準位置へ配置される。
<1−6.クラッチ機構>
次に、クラッチ機構24について説明する。クラッチ機構24は、操作パネル1がユーザ側(+X側)に位置する場合に、車両の障害物への追突等によりユーザが操作パネル1に衝突した場合でも、ユーザへの衝撃を緩和する機構である。また、クラッチ機構24は、ユーザが誤って操作パネル1に接触した場合に、操作パネル1に連結されるパネル位置移動機構21の駆動部21cを構成するギアの破損やモータの過駆動を防止する機構である。
図9は、ユーザ側(+X側)から見たクラッチ機構24のYZ平面での断面図である。クラッチ機構24は、メインシャーシK上に構成されたギアGE1、ギアGE2、及びバネSPを備えている。ギアGE1とギアGE2とは、Z軸方向に軸を同一にして重ねて形成される。なお、ギアGE1とギアGE2の上下方向の移動規制は、Eリング等を軸に嵌めることにより行われる。ギアGE1とギアGE2とは、バネSPで離反方向に付勢されることによりEリング等の軸止部材に滑り回転可能な程度に圧接固定されると共に相互にバネを介して滑り可能に圧接固定され、同一方向に回転する。なお、必要に応じてバネとギア間にフェルト等の滑り部材を挿入しても良い。ギアGE1とギアGE2とを固定するこの付勢力は、ギアGE1に伝達されるモータMの動力をギアGE2へ伝達可能であり、かつモータMの動力より大きい力に対してはギアGE1とギアGE2とを固定できない程度の力である。したがって、一方のギアにモータMの動力より大きい力が加わると、当該ギアは空転し、他方のギアへ動力を伝達できないよう構成されている。
ここで、ギアGE2と噛合するラックギアレバーRG2が、+X側へ移動した状態、つまり操作パネル1がユーザ側へ移動した状態において、操作パネル1へ車両前方側(−X側)への力が加えられる場合を想定する。これは、車両の障害物への追突等によりユーザが操作パネル1に衝突した場合やユーザが誤って操作パネル1に接触した場合等である。。この場合、ラックギアレバーRG2が車両前方側(−X側)へ移動するため、加えられた力によりギアGE2に噛合する各ギアを回転させる。このため、当該力が大きく急激である場合には、各ギアに急な回転を生じさせ、バネSPの付勢力はギアGE1とギアGE2とを固定できない。したがって、操作パネル1からラックギアレバーRG2を介してギアGE2へ伝達さられた力は、ギアGE2を回転させるものの、ギアRG1には伝達されない。ギアGE1とギアGE2とが固定されず、ギアGE2が空転するためである。このようにして、クラッチ機構24は、操作パネル1がユーザ側へ移動した状態において、車両前方側(−X側)へ力が加えられた場合に、ユーザの操作パネル1への衝突緩和や、ギアの破損やモータの過駆動を防止し得る。
<1−7.操作パネル1の角度変更>
次に、操作パネル1のチルト角度を変更する動作について説明する。
図10及び図11は、操作パネル1及びパネル位置移動機構21を+Y側(車両右側)から見た側面図である。図において、パネル角度変更機構22及び保持ピンIMにより、操作パネル1が保持部11に取り付けられている。
パネル角度変更機構22は、操作パネル1を、Y軸方向に沿った保持ピンIMを軸として上下方向に回動する機構、すなわち、チルトする機構である。パネル角度変更機構22は、操作パネル1の下部を支持する支持棒22aを備えている。支持棒22aの一端は、ディスプレイ1の下部に回動可能に接続されている。支持棒22aの他端は、図示しない本体部2内のモータと連結して上下動するシャフトと接続され、スライドレール22bに沿って上下方向に移動可能となっている。この支持棒22aの他端をスライドレール22bに沿って移動することにより、保持ピンIMを軸として操作パネル1の下部が上下方向に移動して、操作パネル1をチルトさせることができる。支持棒22aの他端は、図示しないモータによって移動させることができる。保持ピンIMを軸としてパネル角度変更機構22が変更可能な操作パネル1の最大のチルト角度は、例えば20[度]である。
保持ピンIMは、操作パネル1の取り付け金具を保持部11に接続するシャフトである。
図10は、パネル角度変更機構22が、操作パネル1のチルト角度を変更していない状態(デフォルト状態)を示す図である。図において、操作パネル1は鉛直方向に対して傾斜しており、その操作面の正面は水平方向(X軸方向)よりも上側に向けられる。このようなデフォルト状態から操作パネル1の角度変更が開始される。
パネル角度変更機構22が、操作パネル1のチルト角度の変更を開始する条件は、例えば、照度センサ14が一定の照度を検出した場合である。照度センサ14が一定の照度を検出すると、操作パネル1の画面(操作面)に光が照射されて、ユーザが画面を視認し難い場合がある。この場合、パネル角度変更機構22が、操作パネル1のチルト角度を変更することで、画面への光の照射を抑制することができる。この際、パネル角度変更機構22が、操作パネル1の下部をY軸方向に沿った軸線まわりに−X側へ回動させ、操作パネル1のチルト角度が少なくなるように(操作パネル1が鉛直方向に近づくように)変更することが好ましい。
変更する角度は、例えば、20[度]である。照度センサ14が一定の照度を検出するのは、主にフロントガラスから差し込む日光に基づくためである。すなわち、操作パネル1の下部をY軸方向に沿った軸線まわりに−X側へ回動することで、操作パネル1より上部に位置するフロントガラスから差し込む日光の照射を抑制できるためである。なお、操作パネル1に所定の照度又は光量の有無を検知する光センサを設け、パネル角度変更機構22は光センサの検知結果に基づいて操作パネル1のチルト角度を変更してもよい。
図11は、パネル角度変更機構22が、操作パネル1のチルト角度を変更した状態を示す図である。図において、操作パネル1は略鉛直方向(Z軸方向)に沿っており、その操作面の正面は略水平方向(X軸方向)に向けられる。なお、操作パネル1は操作位置に配置された場合も図10及び図11と同様にチルト角度の変更が可能である。
パネル角度変更機構22は、操作SW12やステアリングSW31、近接センサ13のユーザによる操作に応じて、操作パネル1のチルト角度を変更してもよい。この場合、操作SW12又はステアリングSW31がユーザにより操作される回数又は時間により、変更するチルト角度を設定してもよい。例えば、ユーザが操作SW12又はステアリングSW31を1度又は1秒操作する毎に5°変更する。
<1−8.処理の流れ>
次に、操作パネル1を移動させる処理の流れについて説明する。
図12は、操作パネル1を移動させる処理工程を示すフローチャートである。この処理は、車載装置3に電源が投入されることにより開始され、制御部27により所定の周期、例えば1秒毎に繰り返し実行される。
操作パネル1を移動させる処理が開始されると、制御部27が、位置センサ23から送信される操作パネル1の位置情報に基づき、操作パネル1が操作位置に配置されているか判断する(ステップS11)。
操作パネル1が操作位置に配置されていると判断する場合には(ステップS11でYes)、制御部27は車速センサ4から車両の速度を取得する。車両の速度を取得すると、制御部27は、メモリ28から速度閾値28cを読出し、取得した車両の速度と読み出した速度閾値28cの示す閾値となる速度とを比較して、車両の速度が速度閾値28cの速度より大きいか否かを判断する(ステップS12)。
制御部27は、車両の速度が速度閾値28cの速度より大きいと判断すると(ステップS12でYes)、ステップS15以下に続く処理を実行し、操作パネル1を基準位置へ移動させる。車両の速度が速度閾値28cの速度より大きい場合には、車両は走行中と判断されるため、車両の走行中に操作パネル1が操作されないようにするためである。走行中の操作パネル1の操作は、特に操作者が運転者である場合には、前方注意が散漫となる恐れがあるためである。
一方、制御部27は、車両の速度が速度閾値28cの速度より小さいと判断すると(ステップS12でNo)、位置センサ23から操作パネル1の位置を取得し、操作パネル1の位置と操作位置との距離を算出する。そして、制御部27は、メモリ28から変位閾値28eを読出し、算出した距離が読み出した変位閾値28eの示す閾値となる距離より大きいか、すなわち、操作パネル1が操作位置から変位しているか否かを判断する(ステップS13)。なお、別途操作完了を指示するための操作スイッチをハンドル等に配置し、当該操作完了指示スイッチの操作により操作終了を判断したり、所定時間以上操作が無い場合に操作終了を判断してもよい。
制御部27は、操作パネル1の位置が操作位置から変位していると判断すると(ステップS13でYes)、ステップS15以下に続く処理を実行し、操作パネル1を基準位置へ移動させる。操作パネル1が操作位置から変位している場合には、操作パネル1はユーザにより押圧されていると判断されるためである。これにより、操作パネル1をユーザによる押圧から保護することができる。また、ユーザが操作パネル1を基準位置へ移動しようと操作パネル1を押圧した場合には、ユーザによる操作パネル1の操作性を向上させることができる。
一方、制御部27は、操作パネル1の位置が操作位置から変位していないと判断すると(ステップS13でNo)、ユーザによる操作パネル1への操作が終了したか判断する(ステップS14)。制御部27は、近接センサからの信号に基づき、ユーザによる操作パネル1への操作が終了したか判断する。なお、既に述べたように、ユーザは近接センサに手を翳すことで、操作パネル1の位置を操作位置から基準位置へ移動すべき旨、すなわち操作パネル1への操作が終了した旨を車載装置へ入力することができる。
制御部27はユーザによる操作パネル1への操作が終了したと判断する場合は(ステップS14でYes)、制御部27はメモリ28から基準位置データ28aの読込みを行う(ステップS15)。なお、基準位置データ28aは、操作パネル1が基準位置に配置される際の位置を示すデータである。また、基準位置とは、例えば、操作パネル1の移動可能範囲及び角度変更可能範囲において、操作パネル1の前後位置が最も前方側(−X側)、上下位置が最も上側(+Z側)、かつ、チルト角度が最大となる(操作パネル1の下辺が最も+Z側となる)位置である。なお、基準位置データ28aの示す位置及びチルト角度は、ユーザにより微調整が行われてもよい。
制御部27は、メモリ28から基準位置データ28aの読込みを行うと、パネル位置移動機構21を制御し、基準位置データ28aの示す位置へ操作パネルを移動させる(ステップS16)。
一方、制御部27はユーザによる操作パネル1への操作が終了していないと判断する場合は(ステップS14でNo)、ユーザの操作により基準位置を変更する操作があったかを判断する(ステップS17)。ユーザの基準位置を変更する操作があったと判断すると(ステップS17でYes)、制御部27は変更後の基準位置を示す新たな基準位置データ28aをメモリ28に記憶する(ステップS18)。
制御部27はユーザの操作により基準位置を変更する操作がなかったと判断すると(ステップS17でNo)、操作パネル1を移動させる処理は終了する。
次に、ステップS11において、制御部27が、操作パネル1が操作位置に配置されていないと判断された場合、すなわち、操作パネル1が基準位置に配置されている場合について説明する。制御部27が、操作パネル1が操作位置に配置されていないと判断すると(ステップS11でNo)、制御部27はユーザによる操作パネル1への操作が開始されたか判断する(ステップS19)。制御部27は、近接センサ13からの信号入力の有無に基づき、かかる判断を行うことができる。
制御部27はユーザによる操作パネル1への操作が開始されたか判断すると(ステップS19でYes)、制御部27は車速センサ4から車両の速度を取得する。車両の速度を取得すると、制御部27は、メモリ28から速度閾値28cを読出し、取得した車両の速度と読み出した速度閾値28cの示す閾値となる速度とを比較して、車両の速度が速度閾値28cの速度より小さいか否かを判断する(ステップS20)。
制御部27は、車両の速度が速度閾値28cの速度より小さいと判断すると(ステップS20でYes)、ステップS21以下に続く処理を実行し、操作パネル1を操作位置へ移動させる。この場合の速度閾値28cは、操作パネル1による操作が車両の運転に支障の生じない速度である。
制御部27はユーザによる操作パネル1の操作が開始したと判断する場合は(ステップS19でYes)、制御部27はメモリ28から操作位置データ28bの読込みを行う(ステップS21)。なお、操作位置データ28bは、操作パネル1が操作位置に配置される際の位置を示すデータである。また、操作位置とは、例えば、操作パネル1の移動可能範囲及び角度変更可能範囲において、操作パネル1の前後位置が最もユーザ側(+X側)、上下位置が最も下側(−Z側)、及び、チルト角度が最大となる(操作パネル1の下辺が最も+Z側となる)位置である。
なお、基準位置及び操作位置のいずれにおいてもチルト角度が最大に設定されている場合は、基準位置との操作位置との間の移動において、パネル角度変更機構22が駆動せず、チルト角度は変更されない。すなわち、操作パネル1の操作面の角度を維持したまま、操作パネル1が移動される。
また、操作位置データ28bの示す位置及びチルト角度は、ユーザにより微調整が行われてもよい。また、ユーザごとに異なる操作位置が設定できるようになっていてもよい。この場合は、操作位置データ28bは、複数のユーザそれぞれに対応する複数の操作位置を特定するデータを含むことになる。複数の操作位置は、対応するユーザの識別情報に関連付けされる。
制御部27は、メモリ28から操作位置データ28bの読込みを行うと、パネル位置移動機構21を制御し、操作位置データ28bの示す操作位置へ操作パネル1を移動させる(ステップS22)。なお、操作位置データ28bが複数の操作位置を特定するデータを含む場合は、制御部27は、これら複数の操作位置からその時点のユーザ(運転者)に応じた一の操作位置を選択し、その操作位置に操作パネル1を移動させる。ユーザの識別情報は、車載装置3の起動時に入力すればよい。
一方、制御部27はユーザによる操作パネル1の操作が開始していないと判断する場合は(ステップS19でNo)、ユーザの操作により操作位置を変更する操作があったかを判断する(ステップS23)。ユーザの操作位置を変更する操作があったと判断すると(ステップS23でYes)、制御部27は変更後の操作位置を示す新たな操作位置データ28bをメモリ28に記憶する(ステップS24)。
制御部27はユーザの操作により操作位置を変更する操作がなかったと判断すると(ステップS23でNo)、操作パネル1を移動させる処理は終了する。
次に、パネル位置移動機構21による操作パネル1の移動処理について説明する。
図13は、パネル位置移動機構21による操作パネル1の基準位置及び操作位置へ移動させる処理工程を示すフローチャートである。特に、図13(a)は図12のステップS16の詳細を示すものであり、図13(b)は図12のステップS22の詳細を示すものである。
まず、図13(a)を参照し、操作パネル1を操作位置から基準位置へ移動させる処理について説明する。パネル位置移動機構21のユーザ側移動部21bは、操作パネル1をユーザ側とは逆側の車両前方側(−X側)へ移動させる(ステップS31)。操作パネル1の車両前方側への移動は、図8におけるモータMの駆動により開始され、ギアGE4とラックギアレバーRG2と噛合がラックギアレバーRG2のX方向端において離脱することで終了する。
ユーザ側移動部21bが操作パネル1を車両前方側(−X側)へ移動させると、続いて、下側移動部21aが操作パネル1を上側(+Z側)へ移動させる(ステップS32)。操作パネル1の上側への移動は、ギアGE4とラックギアレバーRG1とが噛合することで開始され、モータMの駆動が停止することで終了する。
下側移動部21aが操作パネル1を上側へ移動させると、操作パネル1を操作位置から基準位置へ移動させる処理は終了する。
次に、図13(b)を参照し、操作パネル1を基準位置から操作位置へ移動させる処理について説明する。パネル位置移動機構21の下側移動部21aは、操作パネル1を下側(−Z側)へ移動させる(ステップS41)。操作パネル1の下側への移動は、図8におけるモータMの駆動により開始され、ギアGE4とラックギアレバーRG1との噛合がラックギアレバーRG1の−X方向端において離脱することで終了する。
下側移動部21aが操作パネル1を下側(−Z側)へ移動させると、続いて、ユーザ側移動部21bが操作パネル1をユーザ側(+X側)へ移動させる(ステップS42)。操作パネル1のユーザ側への移動は、ギアGE4とラックギアレバーRG2とが噛合することで開始され、モータMの駆動が停止することで終了する。
ユーザ側移動部21bが操作パネル1をユーザ側へ移動させると、操作パネル1を操作位置から基準位置へ移動させる処理は終了する。
以上説明したように、本実施の形態に係る車載装置3は、操作パネル1を基準位置と、基準位置に対して下側(−Z側)かつユーザ側(+X側)の操作位置との間で移動させるので、ユーザの操作しやすい位置に操作パネル1を配置することができる。
上記では、スライド機構となるユーザ側移動部21bが、操作パネル1を直線的にスライドすることでユーザ側(+X側)へ移動させると説明した。一般には、スライド機構21bのスライド方向(X軸方向)は、本体部2(筐体)の下面と平行となるように設定される。
図14に示すように、本体部2の下面が水平方向に沿うように本体部2を車両に固定した場合は、スライド機構21bのスライド方向(X軸方向)は水平方向となる。本実施の形態の車載装置3のパネル位置移動機構21は、操作パネル1を、基準位置Paから下側へ移動させつつスライド方向にスライドして、操作位置Pbまで移動させる。このため、通常は、図14に示すように操作位置Pbは基準位置Paよりも下側となる。
ただし、図15に示すように、操作パネル1のユーザ側が高くなるように本体部2の下面が傾斜した状態で、本体部2が車両に固定される場合がある。この場合は、スライド機構21bのスライド方向(X軸方向)は水平方向とはならない。このため、図15に示すように、操作位置Pbが、基準位置Paよりも上側、あるいは、基準位置Paと同一の高さとなることもある。
図15に示すように、本体部2が傾斜して固定された状態を想定する。この状態において、基準位置Paに対してスライド機構のスライド方向(X軸方向)に沿ってユーザ側(+X側)となる位置Pcに操作パネル1を単純に移動させたとすると、操作パネル1の位置が過剰に高くなってしまう。その結果、ユーザが操作しにくくなったり、ユーザの視界を遮る可能性がある。
これに対して、本実施の形態の車載装置3のパネル位置移動機構21は、基準位置Paに対してスライド機構のスライド方向(X軸方向)に沿ってユーザ側に移動した位置Pcよりも下側となる操作位置Pbに、操作パネル1を移動させる。このため、図15に示すように本体部2が傾斜して固定される場合であっても、操作パネル1の位置が過剰に高くなることを防止することができ、ユーザの操作しやすい位置に操作パネル1を配置することができる。
<2.第2の実施の形態>
以下に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、操作パネル1を移動させるパネル位置移動機構21に第一回転部RM1及び第二回転部RM2備えたものである(図17参照。)。パネル位置移動機構21は、第一回転部RM1及び第二回転部RM2の駆動により、操作パネル1を下側(−Z側)かつユーザ側(+X側)へ移動させる。第2の実施の形態における操作パネル1を移動させる構成は、第1の実施の形態と同一の構成を含むため、第1の実施の形態との相違点を中心に、以下に説明する。
<2−1.構成>
図16は、第2の実施の形態における車載装置3の構成を示す図である。車載装置3のパネル位置移動機構21は、第一腕部AR1、第二腕部AR2、第一回転部RM1、及び第二回転部RM2を備える、いわゆるアーム形状からなる機構である。パネル位置移動機構21は、第一回転部RM1及び第二回転部RM2を同時、かつ異なる方向へ回転駆動することにより、操作パネル1を移動させる。
第一腕部AR1は、パネル位置移動機構21のうち、本体部2と第一回転部RM1とを接続する棒状部材である。第一腕部AR1は、本体部2に固定される。これにより、操作パネル1は、第一腕部AR1の第一回転部RM1側端を基準位置として、下側(−Z側)かつユーザ側(+X側)へ移動する。
第二腕部AR2は、パネル位置移動機構21のうち、第一回転部RM1と第二回転部RM2とを接続する棒状部材である。なお、第一腕部AR1及び第二腕部AR2は、金属材料により作成されることが好ましい。一定の重量のある操作パネル1を保持するのに十分な強度が必要だからである。
第一回転部RM1は、第一腕部AR1と第二腕部AR2とを回転可能に接続した、モータを備えた回転機構である。
第二回転部RM2は、第二腕部AR2と保持部11とを回転可能に接続した、モータを備えた回転機構である。この第二回転部RM2は、操作パネル1の操作面の角度を変更する。
<2−2.動作>
パネル位置移動機構21が、操作パネル1を移動させる動作について説明する。
図17は、操作パネル1及びパネル位置移動機構21を+Y側(車両右側)から見た側面図である。特に、図17の(a)、(b)、及び(c)は、操作パネル1を基準位置から操作位置へ移動させる動作を時系列で表している。
図において、第一回転部RM1及び第二回転部RM2は、Y軸方向を軸として回転可能に構成されている。また、図中において、Y軸方向を軸として、左回りの回転方向を正方向、右回りの回転方向を負方向として説明する。なお、説明の便宜上、図中において、各構成を重畳して記載する。したがって、他の構成より−Y側(車両左側)に位置する構成が、当該他の構成と重なって記載される場合がある。
図17(a)は、操作パネル1が基準位置に配置された状態を示す図である。この状態から第一回転部RM1及び第二回転部RM2が回転を開始し、第二腕部AR2及び操作パネル1が移動することにより、操作パネル1が操作位置へ移動する。なお、第一回転部RM1及び第二回転部RM2の回転の開始は、制御部27からの信号が入力され、各回転部の備えるモータが駆動することにより開始される。
図17(b)は、操作パネル1が基準位置から操作位置へ移動する途中の状態を示す図である。第一回転部RM1が正方向へ回転することで、第二腕部AR2の第二回転部RM2側端がユーザ側(+X側)へ移動している。また、第二回転部RM2が負方向へ回転することで、保持部11に保持された操作パネル1の操作面が上側(+Z側)を向いている。
図17(c)は、操作パネル1が操作位置に配置された状態を示す図である。図17(b)の状態からさらに、第一回転部RM1が正方向へ回転し、第二腕部AR2の第二回転部RM2側端がユーザ側(+X側)へ移動している。また、第二回転部RM2が負方向へ回転し、保持部11に保持された操作パネル1の操作面が上側(+Z側)を向いている。これにより、図17(a)で示した操作パネル1の基準位置よりも、下側(−Z側)かつユーザ側(+X側)に操作パネル1を移動させることができる。
操作パネル1を操作位置から基準位置へ移動させる動作は、図17の(a)、(b)、及び(c)で示した各動作について、逆の順を追って動作することにより行われる。
なお、第一回転部RM1及び第二回転部RM2は、同時に回転動作を開始かつ終了することが好ましい。第一回転部RM1を回転し第二回転部RM2を回転しなかった場合は、操作パネル1の操作面の正面が下側(−Z側)に向いてしまうためである。したがって、第一回転部RM1及び第二回転部RM2の回転動作を同時に開始かつ終了することで、操作パネル1の操作面の角度を一定範囲に保つことができ、ユーザによる画面(操作面)の参照が容易になるためである。図17の場合においては、操作パネル1がユーザ側(+X側)に移動するほど、操作パネル1の操作面の正面が上側(+Z側)に向くようにしている。これにより、ユーザが操作パネル1を操作しやすくすることができる。
<2−3.処理の流れ>
パネル位置移動機構21による操作パネル1の移動処理について説明する。
図18は、パネル位置移動機構21による操作パネル1の基準位置及び操作位置へ移動させる処理工程を示すフローチャートである。特に、図18(a)は操作パネル1を操作位置へ移動させる処理を示し、図18(b)は操作パネル1を基準位置へ移動させる処理を示す。処理の開始は、近接センサ等からの信号に基づき、制御部27が各回転部のモータを駆動させることにより行われる。
まず、図18(a)を参照し、操作パネル1を基準位置から操作位置へ移動させる処理について説明する。処理が開始されると、第一回転部RM1は、正方向へ駆動し、第二腕部AR2の第二回転部RM2側端をユーザ側(+X側)へ移動させる(ステップS51)。また、第二回転部RM2が負方向へ回転し、保持部11に保持された操作パネル1の操作面の正面が上側(+Z側)を向くよう動作する(ステップS52)。ステップS51及びステップS52の処理は、同時に実行される。両ステップが実行されると、処理は終了する。
次に、図18(b)を参照し、操作パネル1を操作位置から基準位置へ移動させる処理について説明する。処理が開始されると、第一回転部RM1は、負方向へ駆動し、第二腕部AR2の第二回転部RM2側端を車両前方(−X側)へ移動させる(ステップS61)。また、第二回転部RM2が正方向へ回転し、保持部11に保持された操作パネル1の操作面の正面が下側(−Z側)を向くよう動作する(ステップS62)。ステップS61及びステップS62の処理は、同時に実行される。両ステップが実行されると、処理は終了する。
以上のように、本実施の形態に係る車載装置3は、操作パネル1を基準位置に対して下側かつユーザ側に移動させる。これにより、ユーザの操作しやすい位置に操作パネルを配置することができる。また、第1の実施の形態と比較して、比較的単純な機構で、操作パネル1を基準位置と操作位置との間で移動させることができる。
<3.変形例>
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。以下に変形例について説明する。上記実施の形態及び以下で説明する変形例は、適宜に組み合わせが可能である。
上記第1の実施の形態において、操作パネル1の位置と操作位置との距離に基づき操作パネル1を基準位置へ移動する処理を行ったが、圧力センサを操作パネル1に設け、操作パネル1に加わった圧力を検出して操作パネル1を基準位置へ移動するようにしてもよい。
上記第2の実施の形態において、第一回転部RM1及び第二回転部RM2の回転動作の開始について、第二回転部RM2の回転動作を第一回転部RM1の回転動作より先に行ってもよい。第二回転部RM2の回転動作は、操作パネル1の画面(操作面)の角度を変更するものであるため、操作パネル1の画面の角度を一定範囲に保つことができ、ユーザによる画面の参照が容易になるためである。
上記実施の形態において、プログラムに基づくCPUの演算により実現される処理の一部又は全部は、電気的なハードウェア回路により実現されてもよい。