以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
<1.第1の実施の形態>
<1−1.車載装置の概要>
図1は、第1の実施の形態の車載装置1の外観を示す斜視図である。この車載装置1は、例えば、ユーザに目的地までの経路を案内するナビゲーション装置である。車載装置1は、主に、各種の情報を表示する表示パネル3と、表示すべき情報を表示パネル3へ出力する本体部2とを備えている。
表示パネル3は、情報を表示可能な液晶などの薄型のディスプレイ31を備えている。ディスプレイ31は、その長手方向が縦方向となるように配置されている。また、ディスプレイ31は、タッチパネルを備えており、画面に表示したコマンドボタンCなどによってユーザの操作を受け付けることが可能である。ユーザは、表示パネル3を視認することで各種の情報を得ることができるとともに、表示パネル3を介して各種の操作を行うことが可能となっている。
本体部2は、車載装置1の全体を制御する制御機能を備えており、表示パネル3に各種の情報を表示させる。また、本体部2は、車両に対して固定されており、表示パネル3の背面側を支持する。
なお、以下の説明においては、図中に示す三次元直交座標系(XYZ)を用いて、適宜、方向や向きを示すこととする。この直交座標系は、本体部2に対して相対的に固定される。X軸方向は前後方向、Y軸方向は左右方向、Z軸方向は上下方向に相当する。+X側が正面側(表示パネル3の表示面の側)、−X側が背面側となる。また、+Y側が左側、−Y側が右側、+Z側が上側、−Z側が下側となる。
図2は、車載装置1が搭載された車両の車室内の様子を車両の右側から見た図であり、図中右側が車両の前方側となる。車載装置1は、車室内の前方のダッシュボードの左右中央部にあるセンターコンソール91に設けられている。センターコンソール91には、DINなどの所定規格の収容スペース91aが設けられており、この収容スペース91aに車載装置1の本体部2が収容されて固定される。このように本体部2が固定された状態で表示パネル3の表示面は、車両の車室内側(車両の後方側)に向けられる。
車両のユーザは、座席92に着座した状態で、このように配置された車載装置1を利用する。車載装置1を利用するユーザは、運転席に着座するユーザ(ドライバ)、及び、助手席に着座するユーザのいずれも考えられる。車両が右ハンドル車である場合は、運転席に着座するユーザは車載装置1の右方向から車載装置1を利用し、助手席に着座するユーザは車載装置1の左方向から車載装置1を利用することになる。
一般に、車両のセンターコンソール91の表面は、デザイン等の関係から鉛直方向に対して傾いている。このため、センターコンソール91の収容スペース91aも、水平方向に対して傾いて設定される。
したがって、車載装置1の本体部2は、水平方向に対して傾いた姿勢で車両に対して固定されることになる。本体部2は、その正面側(+X側)の方が背面側(−X側)よりも上になる姿勢で固定される。車両が水平な路面上にあると仮定した場合において、図中に示す線Hは水平方向に沿っており、線Vは鉛直方向に沿っている(以降の図でも同様。)。図2に示すように、車載装置1の本体部2は、水平方向(線H)に対して角度α傾いて固定されている。本実施の形態では、角度αは例えば10°である。
このように本体部2は水平方向に対して傾いているため、本体部2に相対的に固定される直交座標系(XYZ)のX軸方向は水平方向とは一致せず、Z軸方向は鉛直方向とは一致しない。ただし、以下では便宜上、+Z側を上側、−Z側を下側として説明する。
表示パネル3は、このように車両に固定された本体部2に対して相対的に移動することが可能となっている。図3に示すように、表示パネル3は、本体部2から車両の車室内側(+X側)に突出した位置に移動することができる。車載装置1は、このように表示パネル3を前後方向(X軸方向)にスライドさせるスライド機構4を備えている。また、図4に示すように、表示パネル3は、その表示面の向きを左右方向(Y軸方向)に変更することができる。車載装置1は、このように表示パネル3の表示面の上下方向に沿った回転軸ax1を中心に表示パネル3を左右方向に回転させる(パンさせる)パン機構5を備えている。さらに、図5に示すように、表示パネル3は、その表示面の向きを上下方向に変更することができる。車載装置1は、このように表示パネル3の表示面の左右方向に沿った回転軸ax2を中心に表示パネルを上下方向に回転させる(チルトさせる)チルト機構6を備えている。
<1−2.車載装置の電気的な構成>
図6は、車載装置1の電気的な構成を示す図である。車載装置1の構成は、主に、本体部2と、表示パネル3を含むパネルユニット30とに大別される。スライド機構4は本体部2に含まれている。一方、パン機構5及びチルト機構6はパネルユニット30に含まれている。すなわち、パネルユニット30は、表示パネル3と、パン機構5と、チルト機構6とを備えている。
表示パネル3は、ディスプレイ31とともに、左近接センサ32、右近接センサ33、及び、照度センサ34を備えている。
左近接センサ32、及び、右近接センサ33は、表示パネル3へのユーザの接近を検出するセンサである。これらの近接センサ32,33は、例えば、赤外線を発光するとともに物体で反射した赤外線を受光することによって、接近するユーザの手などの物体を検出する。これらの近接センサ32,33がユーザの接近を検出した場合は、検出信号を出力する。なお、近接センサの検出方式は、電波、磁気、または、音声などを利用した他の方式であってもよい。
左近接センサ32は、表示パネル3の表示面の左側に配置される(図1参照。)。このため、左近接センサ32は、表示パネル3の左方向からのユーザの接近を検出することができる。また、右近接センサ33は表示パネル3の表示面の右側に配置される(図1参照。)。このため、右近接センサ33は、表示パネル3の右方向からのユーザの接近を検出することができる。
照度センサ34は、表示パネル3を照明する光の照度を検出し、その照度を示す照度信号を出力する。照度センサ34は、表示パネル3のディスプレイ31が配置される表示面の上部に配置される(図1参照。)。このため、照度センサ34は、ディスプレイ31を照明する光の照度を検出することができる。
本体部2は、スライド機構4とともに、制御部21、記憶部22、信号出力部23、及び、信号受信部24を備えている。制御部21は、CPU、RAM及びROMなどを備えたマイクロコンピュータであり、車載装置1の全体を制御する。記憶部22は、例えば、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリであり、各種の情報を記憶する。
信号出力部23、及び、信号受信部24は、表示パネル3との間のインターフェイスである。信号出力部23は、表示パネル3のディスプレイ31に表示すべき情報を出力する。また、信号受信部24は、左近接センサ32、右近接センサ33及び照度センサ34から出力された信号を受信して制御部21に入力する。また、信号受信部24は、ディスプレイ31が備えるタッチパネルから出力された信号を受信して制御部21に入力する。
制御部21の各種の機能は、記憶部22に記憶されたファームウェアであるプログラムに従ってCPUが演算処理を行うことで実現される。図中に示す、表示制御部21a、操作制御部21b、接近判定部21c、スライド制御部21d、パン制御部21e及びチルト制御部21fは、プログラムに従ってCPUが演算処理を行うことで実現される機能の一部である。
表示制御部21aは、表示パネル3のディスプレイ31の表示を制御する。操作制御部21bは、ユーザの操作に応じた動作をするように、車載装置1の動作を制御する。操作制御部21bは、ディスプレイ31のタッチパネルからの信号に基づいて、ユーザの操作の内容を判定する。タッチパネルを用いた場合にユーザの操作を受け付けるコマンドボタンCなどの操作部は、表示制御部21aの制御によりディスプレイ31に表示される。このようなコマンドボタンCなどの操作部は、通常、表示パネル3の上下中央よりも下側に配置される。図1においては、ディスプレイ31の下辺に沿って複数のコマンドボタンCが配置されている。
接近判定部21cは、2つの近接センサ32,33の検出結果となる検出信号に基づいて、ユーザが接近した接近方向を判定する。接近判定部21cは、ユーザの接近を検出した近接センサが、左近接センサ32及び右近接センサ33のいずれであるかに基づいて、ユーザの接近方向を判定する。すなわち、接近判定部21cは、左近接センサ32からの検出信号を受信した場合はユーザが左方向から接近したと判定し、右近接センサ33からの検出信号を受信した場合はユーザが右方向から接近したと判定する。
スライド制御部21dは、スライド機構4に駆動信号を送出して、スライド機構4の動作を制御する。パン制御部21eは、パン機構5に駆動信号を送出して、パン機構5の動作を制御する。また、チルト制御部21fは、チルト機構6に駆動信号を送出して、チルト機構6の動作を制御する。
<1−3.スライド機構>
次に、スライド機構4について説明する。図7及び図8は、車載装置1のスライド機構4を説明するための図である。これらの図は、車載装置1を右側(−Y側)から見た様子を示している。図7は、表示パネル3を格納した状態を示し、図8は、表示パネル3を車室内側(+X側)へ突出した状態を示している。図7に示す格納した状態での表示パネル3の位置を「基準位置」といい、図8に示す突出した状態での表示パネル3の位置を「突出位置」という。
スライド機構4は、本体部2に設けられている。スライド機構4は、前後方向(X軸方向)に沿って移動するスライドレバー41を備えている。スライドレバー41は、本体部2に設けられたモータ(図示省略)の駆動力を利用して、本体部2に固定されるX軸方向に延びるスライドレール(図示省略)に沿って直線的に移動する。
このスライドレバー41の正面側(+X側)の端部には、パネルユニット30を保持するユニットホルダ7が固定されている。したがって、スライドレバー41が前後方向に移動すると、スライドレバー41の動きに従ってパネルユニット30の全体が前後方向に移動することになる。これにより、スライド機構4は、表示パネル3を、基準位置と突出位置との間で移動することができる。
パネルユニット30においては、表示パネル3の背面側にパン機構5が設けられ、このパン機構5のさらに背面側にチルト機構6が設けられている。ユニットホルダ7は、チルト機構6の背面側を保持している。パン機構5はその周囲を機構カバー50で囲まれており、チルト機構6はその周囲を機構カバー60で囲まれている。
<1−4.パン機構>
次に、パン機構5について説明する。図9から図11は、車載装置1のパン機構5を説明するための図である。これらの図は、車載装置1の正面の上方からパン機構5をみた様子を示している。表示パネル3などのパン機構5以外の部位については図示を省略している。また、説明の便宜上、一部の部位については透過して示している。
パン機構5は、正面側に表示パネル3を保持するパネルホルダ52を備え、背面側に基準部材となるベースシャーシ51を備えている。パン機構5は、ベースシャーシ51に対してパネルホルダ52を左右方向に回転させる。表示パネル3の表示面は、パネルホルダ52の主面に略平行に固定される。したがって、パン機構5は、ベースシャーシ51に対して、表示パネル3の表示面の向きを左右方向に変更することになる。図9は、表示パネル3の表示面をベースシャーシ51に略平行として、表示パネル3の表示面を車載装置1の正面方向に向けた状態に相当する。また、図10は表示パネル3の表示面を左方向に向けた状態に相当し、図11は表示パネル3の表示面を右方向に向けた状態に相当する。
ベースシャーシ51の上部及び下部には、ベースシャーシ51に直交するように支持シャーシ56が設けられている。上下の支持シャーシ56は、互いに平行に配置され、パネルホルダ52の上下を支持する。パネルホルダ52の左右中央部は、この上下の支持シャーシ56それぞれの左右中央に設けられる中央シャフト57aにおいて回転自在に支持される。これら上下の2つの中央シャフト57aが、パネルホルダ52が左右方向に回転するときの回転軸ax1となる。この回転軸ax1は、表示パネル3の表示面の上下方向に沿っている。なお、パン機構5の構成は上下対称となっているため、以下、パン機構5の上面側で説明した構成に対応する下面側の構成に関しては説明を省略する。
ベースシャーシ51とパネルホルダ52との間には、2つのリンクレバー53,54が設けられている。これら2つのリンクレバー53,54は、一方の面が平面、他方の面が曲面となる板状の部材であり、その長手方向が表示面の縦方向に沿うように配置されている。左リンクレバー53は、曲面となる面を外側(左側)に向けてパン機構5の左側に配置され、右リンクレバー54は、曲面となる面を外側(右側)に向けてパン機構5の右側に配置される。2つのリンクレバー53,54は、それらの相互間が正面側ほど広くなるように配置されている。
左リンクレバー53の上面の正面側は、左シャフト57bによってパネルホルダ52の上部の左側に対して回転自在に接続されている。また、左リンクレバー53の上面の背面側には左スライドシャフト57cが設けられている。この左スライドシャフト57cは、上部の支持シャーシ56に設けられた左右方向に延びる左ガイド溝56aに係合され、左ガイド溝56aに沿って移動可能となっている。
このような構成により、支持シャーシ56、パネルホルダ52、左リンクレバー53、中央シャフト57a、左シャフト57b、左スライドシャフト57c及び左ガイド溝56aは、自由度が1となるリンク機構(スライダ・クランク機構)を形成する。左スライドシャフト57cが左ガイド溝56aに沿って移動すると、左リンクレバー53の動きに従って、パネルホルダ52が中央シャフト57aを中心に回転する。
左スライドシャフト57cが左ガイド溝56aの右側の端部へ移動した場合は、図10に示すように、パネルホルダ52の左側がベースシャーシ51に近接する。逆に、左スライドシャフト57cが左ガイド溝56aの左側の端部へ移動した場合は、図11に示すように、パネルホルダ52の左側がベースシャーシ51から離間することになる。
また、右リンクレバー54の上面の正面側は、右シャフト57dによってパネルホルダ52の上部の右側に対して回転自在に接続されている。また、右リンクレバー54の上面の背面側には右スライドシャフト57eが設けられている。この右スライドシャフト57eは、上部の支持シャーシ56に設けられた左右方向に延びる右ガイド溝56bに係合され、右ガイド溝56bに沿って移動可能となっている。
このような構成により、支持シャーシ56、パネルホルダ52、右リンクレバー54、中央シャフト57a、右シャフト57d、右スライドシャフト57e及び右ガイド溝56bは、自由度が1となるリンク機構(スライダ・クランク機構)を形成する。右スライドシャフト57eが右ガイド溝56bに沿って移動すると、右リンクレバー54の動きに従って、パネルホルダ52が中央シャフト57aを中心に回転する。
右スライドシャフト57eが右ガイド溝56bの左側の端部へ移動した場合は、図11に示すように、パネルホルダ52の右側がベースシャーシ51に近接する。逆に、右スライドシャフト57eが右ガイド溝56bの右側の端部へ移動した場合は、図10に示すように、パネルホルダ52の右側がベースシャーシ51から離間することになる。
左リンクレバー53の左スライドシャフト57cと、右リンクレバー54の右スライドシャフト57eとは、コイルバネ58によって接続されている。したがって、2つのスライドシャフト57c,57eのうちの一方が移動すると、その移動力がコイルバネ58を介して他方に伝達される。このため、2つのスライドシャフト57c,57eは、連動して同一の方向に移動する。
また、ベースシャーシ51の正面側の中心部付近には、板状の駆動レバー55が設けられている。駆動レバー55は、ベースシャーシ51の背面側に設けられたモータ(図示省略)の駆動力を利用して、水平方向に延びるガイドレール55aに沿って左右方向にスライドする。2つのリンクレバー53,54それぞれの内側の上下中央部には、駆動レバー55と係合するための係合溝53a,54aが設けられている。駆動レバー55は、これらの係合溝53a,54aと係合して、リンクレバー53の背面側を押圧して移動させる。
駆動レバー55を右側へ移動した場合は、駆動レバー55は右リンクレバー54の係合溝54aと係合し、右リンクレバー54の背面側を右側へ押圧する。これにより、図10に示すように、右リンクレバー54の右スライドシャフト57eが右ガイド溝56bに沿って右側へ移動する。この右スライドシャフト57eの移動力が、コイルバネ58を介して左リンクレバー53の左スライドシャフト57cに伝達され、左スライドシャフト57cも左ガイド溝56aに沿って右側へ移動する。その結果、パネルホルダ52は、左方向に向けて中央シャフト57aを中心に回転する。すなわち、表示パネル3の表示面の向きが左方向に変更されることになる。
逆に、駆動レバー55を左側へ移動した場合は、駆動レバー55は左リンクレバー53の係合溝53aと係合し、左リンクレバー53の背面側を左側へ押圧する。これにより、図11に示すように、左リンクレバー53に接続された左スライドシャフト57cが左ガイド溝56aに沿って左側へ移動する。この左スライドシャフト57cの移動力が、コイルバネ58を介して右リンクレバー54の右スライドシャフト57eに伝達され、右スライドシャフト57eも右ガイド溝56bに沿って左側へ移動する。その結果、パネルホルダ52は、右方向に向けて中央シャフト57aを中心に回転する。すなわち、表示パネル3の表示面の向きが右方向に変更されることになる。
このようにして、パン機構5は、ベースシャーシ51に対して、表示パネル3の表示面の向きを左右方向に変更することができる。
ところで、このようにパン機構5が、左右中央の回転軸ax1を中心にして表示パネル3の表示面の向きを左右方向に変更した場合には、表示パネル3の背面側において、変更した方向とは逆方向に隙間が形成される。例えば、パン機構5が、表示パネル3の表示面の向きを左方向に変更した場合は、表示パネル3の背面側の右側においてベースシャーシ51とパネルホルダ52とが離間して、隙間が形成される。逆に、パン機構5が、表示パネル3の表示面の向きを右方向に変更した場合は、表示パネル3の背面側の左側においてベースシャーシ51とパネルホルダ52とが離間して、隙間が形成される。
リンクレバー53,54として板状の部材でなく単なる棒材を採用した場合を想定すると、このような隙間に対してユーザの指や異物が侵入する可能性がある。このような隙間へのユーザの指や異物の侵入は、怪我や故障の原因となる。このため、本実施の形態のパン機構5では、リンク機構のリンク部材となる左右のリンクレバー53,54として板状の部材を採用している。これにより、リンクレバー53,54がこのような隙間を覆うようになっている。
例えば、図12は、パン機構5が、表示パネル3の表示面の向きを左方向に変更した場合(すなわち、左方向に向けてパネルホルダ52を回転した場合)における車載装置1の斜視図である。図12では、説明の便宜上、表示パネル3の図示を省略している。図12に示すように、パン機構5が、表示パネル3の表示面の向きを左方向に変更した場合は、表示パネル3の背面側の右側において隙間SP1が形成されるが、この隙間SP1は右リンクレバー54によって覆われる。このため、隙間SP1へのユーザの指や異物の侵入が防止される。同様に、パン機構5が、表示パネル3の表示面の向きを右方向に変更した場合は、表示パネル3の背面側の左側において形成される隙間は、左リンクレバー53によって覆われることになる。
なお、このような隙間を覆う専用のカバー部材を設けてもよい。ただし、本実施の形態のように、表示パネル3の表示面の向きを変更するリンク機構に含まれるリンク部材であるリンクレバー53,54が隙間を覆うカバーの役目を果たすことで、このような専用のカバー部材を配置する必要がない。これにより、車載装置1の構成を簡単にすることができるとともにコストを低減できる。また、専用のカバー部材を設けた場合は、カバー部材の内側となる、回転軸ax1に比較的近い位置にリンク部材を配置する必要がある。このようにリンク部材を回転軸ax1に近い位置に配置すると、モーメントの影響によりリンク部材を動かすモータの駆動力が大きくなってしまう可能性がある。したがって、本実施の形態の場合は、リンク部材であるリンクレバー53,54を動かすモータの駆動力を小さくでき、リンクレバー53,54をスムーズに動かすことができる。
<1−5.チルト機構>
次に、チルト機構6について説明する。図13及び図14は、車載装置1のチルト機構6を説明するための図である。これらの図は、車載装置1を右側(−Y側)から見た様子を示している。図13は、表示パネル3を格納した非チルト状態を示し、図14は、表示パネル3を可動範囲における最大にチルトしたチルト状態を示している。これらの図においては、説明の便宜上、一部の部位については透過して示している。なお、チルト機構6の構成は左右対称(Y軸方向に対称)となっているため、以下、チルト機構6の一方の側面で説明した構成に対応する他方の側面の構成に関しては説明を省略する。
チルト機構6は、ユニットホルダ7に固定される基準部材となるベースシャーシ61と、ベースシャーシ61に対して回転するホルダシャーシ62とを備えている。ホルダシャーシ62は、パン機構5の背面側を保持することにより間接的に表示パネル3を保持する。ベースシャーシ61とホルダシャーシ62とは、表示パネル3の表示面の左右方向(Y軸方向)に沿った支点シャフト65で回転自在に接続されている。この支点シャフト65が回転軸ax2となり、チルト機構6は、この支点シャフト65を中心にホルダシャーシ62をベースシャーシ61に対して回転させる。これにより、チルト機構6は、ベースシャーシ61に対して、表示パネル3の表示面の向きを上下方向に変更することになる。
支点シャフト65は、表示パネル3の上下中央よりも下側に設けられており、ベースシャーシ61の下部とホルダシャーシ62の下部とを接続している。したがって、チルト機構6は、表示パネル3をチルトさせる場合に、表示パネル3の上部を表示面の側(+X側)へ移動させる。
また、ベースシャーシ61の上部とホルダシャーシ62とは、リンクレバー63によって接続されている。リンクレバー63は、一方の面が平面、他方の面が曲面となる板状の部材であり、その長手方向が水平方向(Y軸方向)に沿うように配置されている。リンクレバー63は、曲面となる面が外側(上側)となるように配置されている。
リンクレバー63の側面の一端は、リンクシャフト67によってホルダシャーシ62の上部に回転自在に接続されている。また、リンクレバー63の側面の他端には、スライドシャフト66が設けられている。このスライドシャフト66は、ベースシャーシ61に設けられたガイド溝64に係合され、ガイド溝64に沿って移動可能となっている。ガイド溝64は、ベースシャーシ61が延びる方向(以下、「チルト基準方向」という。)と同一方向に沿って形成されている。
このような構成により、ベースシャーシ61、ホルダシャーシ62、リンクレバー63、支点シャフト65、リンクシャフト67、スライドシャフト66及びガイド溝64は、自由度が1となるリンク機構(スライダ・クランク機構)を形成する。スライドシャフト66が、ガイド溝64に沿って移動すると、リンクレバー63の動きに従ってホルダシャーシ62が支点シャフト65を中心に回転する。このようなスライドシャフト66は、ベースシャーシ61の内側に設けられたモータ(図示省略)の駆動力を利用して、ガイド溝64に沿って移動する。
スライドシャフト66がガイド溝64の上側の端部へ移動した場合は、図14に示すように、リンクレバー63がリンクシャフト67を介してホルダシャーシ62の上部を押圧する。これにより、支点シャフト65を中心にホルダシャーシ62が回転して、ホルダシャーシ62の上部が表示パネル3の表示面の側(+X側)へ移動する。その結果、表示パネル3の表示面の向きが下方向に変更され、表示パネル3がチルト状態となる。
逆にスライドシャフト66がガイド溝64の下側の端部へ移動した場合は、図13に示すように、リンクレバー63がリンクシャフト67を介してホルダシャーシ62の上部を引っ張る。これにより、支点シャフト65を中心にホルダシャーシ62が回転して、ホルダシャーシ62の上部が表示パネル3の背面側(−X側)へ移動する。その結果、表示パネル3の表示面の向きが上方向に変更され、表示パネル3が非チルト状態となる。
非チルト状態では、表示パネル3の表示面は、チルト基準方向(ベースシャーシ61が延びる方向)に略平行とされる。チルト機構6は、チルト基準方向に対して、表示パネル3の表示面を最大で角度βだけ回転させることができる。本実施の形態では、角度βは例えば30°である。
このようにして、チルト機構6は、ベースシャーシ61に対して、表示パネル3の表示面の左右方向に沿った支点シャフト65を中心に、表示パネル3を回転させることができる。また、表示パネル3を回転させる場合の回転軸ax2となる支点シャフト65が、表示パネル3の上下中央よりも下方に設けられる。このため、表示パネル3をチルトさせる場合において、表示パネル3の上部と比較して、表示パネル3の下部の移動量を少なくすることができる。前述のように、ユーザの操作を受け付けるコマンドボタンCなどの操作部は、表示パネル3の上下中央よりも下側に配置される。したがって、このような操作部が配置される表示パネル3の下部が大きく移動しないため、ユーザの操作性を向上できる。
ところで、チルト機構6が、表示パネル3の上部を表示面の側(+X側)へ移動させた場合は、表示パネル3の背面側の上部に隙間が形成される。具体的には、表示パネル3の背面側の上部において、ベースシャーシ61とホルダシャーシ62とが離間して、上部に開口した隙間が形成される。
リンクレバー63として板状の部材でなく単なる棒材を採用した場合を想定すると、このような隙間に対してユーザの指や異物が侵入する可能性がある。このような隙間へのユーザの指や異物の侵入は、怪我や故障の原因となる。このため、本実施の形態のチルト機構6では、リンク機構のリンク部材となるリンクレバー63として板状の部材を採用している。これにより、リンクレバー63がこのような隙間を覆うようになっている。
図15は、チルト機構6が、表示パネル3の上部を表示面の側へ移動させた場合における車載装置1の斜視図である。図15に示すように、チルト機構6が、表示パネル3の上部を表示面の側に移動した場合は、表示パネル3の背面側の上部において隙間SP2が形成されるが、この隙間SP2はリンクレバー63によって覆われる。このため、隙間SP2へのユーザの指や異物の侵入が防止されることになる。
なお、このような隙間を覆う専用のカバー部材を設けてもよい。ただし、本実施の形態のように、表示パネル3をチルトさせるためのリンク機構に含まれるリンク部材であるリンクレバー63が隙間を覆うカバーの役目を果たすことで、このような専用のカバー部材を配置する必要がない。これにより、車載装置1の構成を簡単にすることができるとともにコストを低減できる。また、専用のカバー部材を設けた場合は、カバー部材の内側となる、回転軸ax2に比較的近い位置にリンク部材を配置する必要がある。このようにリンク部材を回転軸ax2に近い位置に配置すると、モーメントの影響によりリンク部材を動かすモータの駆動力が大きくなってしまう可能性がある。したがって、本実施の形態の場合は、リンク部材であるリンクレバー6を動かすモータの駆動力を小さくでき、リンクレバー6をスムーズに動かすことができる。
<1−6.ユニットホルダ>
次に、パネルユニット30を本体部2に接続するために利用するユニットホルダ7について説明する。図16は、車載装置1の右側(−Y側)から見たユニットホルダ7を示す図である。前述のように、ユニットホルダ7は、スライド機構4のスライドレバー41に固定されるとともに、チルト機構6のベースシャーシ61に固定される。したがって、ユニットホルダ7は、本体部2に対するベースシャーシ61の設置角度を規定する。ベースシャーシ61が伸びる方向はチルト基準方向(非チルト状態で表示パネル3の表示面が沿う方向)となるため、ユニットホルダ7は本体部2に対するチルト基準方向を規定することになる。
図16に示すユニットホルダ7は、本体部2の直交方向に対するチルト基準方向の角度γを例えば20°に規定する。図14に示すように、本体部2は水平方向(線H)に対して10°(=α)傾いて設置される。したがって、チルト基準方向は鉛直方向(線V)に対して30°(=α+γ)傾くことになる。一方で、チルト機構6は、チルト基準方向に対して表示パネル3を最大で30°(=β)回転させることができる。したがって、チルト機構6がチルト基準方向に対して最大の角度で表示パネル3を回転させた場合は、表示パネル3の表示面が鉛直方向に沿うことになる。車両に搭載される車載装置1においては、操作性や視認性などから、表示パネル3の表示面が鉛直方向に沿うようにできることが望まれる。
ところで、本体部2を車両に設置した場合における水平方向に対する本体部2の角度αは車両の種別によって異なる。例えば、図17は、本体部2が水平方向(線H)に対して20°(=α)傾いて設置された状況を示している。この場合は、チルト基準方向は鉛直方向(線V)に対して40°(=α+γ)傾くことになる。したがって、チルト機構6が、チルト基準方向に対して表示パネル3を最大の角度の30°(=β)回転させたとしても、表示パネル3の表示面を鉛直方向に沿わすことができない。
本実施の形態の車載装置1においては、様々な種別の車両に対応するため、ユニットホルダ7を、本体部2に対するベースシャーシ61の設置角度が異なる他のユニットホルダに交換することが可能となっている。図18は、他のユニットホルダ71の一例を示す図である。このユニットホルダ71は、本体部2の直交方向に対するチルト基準方向の角度γを例えば10°に規定する。
図19は、車載装置1のユニットホルダ7(図16参照。)を図18に示す他のユニットホルダ71に交換した場合に、本体部2が水平方向(線H)に対して20°(=α)傾いて設置された状況を示している。この場合は、チルト基準方向は鉛直方向(線V)に対して30°(=α+γ)傾くことになる。したがって、チルト機構6が、チルト基準方向に対して表示パネル3を最大の角度の30°(=β)回転させた場合は、表示パネル3の表示面が鉛直方向に沿うことになる。
このように、車載装置1においては、本体部2に対するチルト機構6の基準部材(ベースシャーシ61)の設置角度を規定するユニットホルダ7を、他のユニットホルダに変更可能である。このため、車載装置1が搭載される車両の種別に応じたユニットホルダを用いることで、車両の種別に係わらず表示パネル3の姿勢を最適なものにすることができる。すなわち、本体部2の水平方向に対する角度αに関する車両の種別による差異を吸収するアダプタとして、ユニットホルダを用いることができる。
<1−7.車載装置の動作>
次に、車載装置1の動作について説明する。車載装置1が備えるスライド機構4、パン機構5及びチルト機構6のうち、スライド機構4とパン機構5とは連携して動作する。一方、チルト機構6は、スライド機構4及びパン機構5とは独立して動作することになる。以下、それぞれの動作について説明する。
<1−7−1.スライド機構及びパン機構>
まず、スライド機構4及びパン機構5に係る車載装置1の動作について説明する。図20は、スライド機構4及びパン機構5に係る車載装置1の動作の流れを示す図である。図20に示す動作は、制御部21の制御によって繰り返し実行される。
まず、制御部21が、表示パネル3が基準位置にあるか否かを判断する(ステップS11)。すなわち、制御部21は、スライド機構4が表示パネル3を格納しているか否かを判断する。
表示パネル3が基準位置にある場合は(ステップS11にてYes)、次に、接近判定部21cが、左方向または右方向からユーザが接近したか否かを判定する(ステップS12,S13)。接近判定部21cは、2つの近接センサ32,33からの検出信号の有無によって、ユーザが接近したか否かを判定する。接近判定部21cはまた、ユーザが接近した場合にはユーザが接近した接近方向を判定する。接近判定部21cは、左近接センサ32からの検出信号を受信した場合はユーザが左方向から接近したと判定し、右近接センサ33からの検出信号を受信した場合はユーザが右方向から接近したと判定する。
ユーザが左方向から接近した場合は(ステップS12にてYes)、スライド制御部21dの制御により、スライド機構4が、表示パネル3を基準位置から突出位置まで移動する。これとともに、パン制御部21eの制御により、パン機構5が、表示パネル3の表示面の向きをユーザの接近方向である左方向に変更する(ステップS13)。これにより、車載装置1は、表示パネル3が突出し、かつ、左方向へ向いた状態ST2(図21参照。)となる。
また、ユーザが右方向から接近した場合は(ステップS14にてYes)、スライド制御部21dの制御により、スライド機構4が、表示パネル3を基準位置から突出位置まで移動する。これとともに、パン制御部21eの制御により、パン機構5が、表示パネル3の表示面の向きをユーザの接近方向である右方向に変更する(ステップS15)。これにより、車載装置1は、表示パネル3が突出し、かつ、右方向へ向いた状態ST3(図21参照。)となる。
このように、表示パネル3へユーザが接近した場合に、表示パネル3が突出位置に移動され、かつ、表示パネル3の表示面の向きがユーザが接近した接近方向に変更される。このため、表示パネル3が突出位置に移動した場合においても、ユーザの視線の方向を表示パネル3の正面方向に近づけることができるため、表示パネル3の視認性を向上することができる。また、表示パネル3が突出位置に移動した場合における、表示パネル3に対する操作性も向上できる。
また、ステップS13及びステップS15において、スライド機構4とパン機構5とは並行して動作する。すなわち、スライド機構4及びパン機構5のうちの一方の動作が完了してから他方の動作が実行されるのではなく、双方の動作が同時間帯に並列的に実行される。
したがって、図21に示すように、ステップS13においては、車載装置1は、表示パネル3の格納状態ST1から、表示パネル3が突出して左方向へ向いた状態ST2に直接的に移行する。また、ステップS15においても、車載装置1は、表示パネル3の格納状態ST1から、表示パネル3が突出して右方向へ向いた状態ST3に直接的に移行する。すなわちいずれの場合も、車載装置1は、表示パネル3が正面方向へ向いたまま突出した状態ST4を経由せずに、状態ST1から直接的に状態ST2または状態ST3に移行することになる。このように、スライド機構4とパン機構5とが並行して動作するため、表示パネル3の移動が完了するまでの時間を短縮することができる。
また、ユーザが接近していない場合は(ステップS12及びステップS14にてNo)、操作制御部21bが、表示パネル3のディスプレイ31に表示された特定のコマンドボタンCを介して、表示パネル3を突出する突出指示をユーザが行ったか否かを判定する(ステップS16)。このような突出指示がある場合とは、左右の近接センサ32,33がユーザの接近を検出してない状態で、コマンドボタンCがユーザの操作を受け付けた場合に相当する。
このような突出指示があった場合は(ステップS16にてYes)、スライド制御部21dの制御により、スライド機構4が、表示パネル3を基準位置から突出位置まで移動する。この際、パン機構5は、表示パネル3の表示面の向きを、スライド機構4の移動方向である車載装置1の正面方向(+X側)に維持する(ステップS17)。これにより、車載装置1は、表示パネル3が突出し、かつ、正面方向へ向いた状態ST4(図21参照。)となる。
左右の近接センサ32,33がユーザの接近を検出してない状態でユーザの操作がなされた場合は、ユーザが接近した接近方向が不明である。すなわち、車載装置1に対して操作を行ったユーザが、車載装置1の左方向及び右方向のいずれに存在するかが不明である。このため、この場合は、表示パネル3の表示面の向きを車載装置1の正面方向にしたまま、表示パネル3を突出位置に移動させることで、車載装置1の左方向及び右方向のいずれにユーザがいたとしても車載装置1を容易に操作することができる。
また、表示パネル3が基準位置にない場合(ステップS11にてNo)、すなわち、表示パネル3が突出位置にある場合は、次に、操作制御部21bが、表示パネル3のディスプレイ31に表示された特定のコマンドボタンCを介して、表示パネル3を格納する格納指示をユーザが行ったか否かを判定する(ステップS18)。
このような格納指示があった場合は(ステップS18にてYes)、スライド制御部21dの制御により、スライド機構4が、表示パネル3を突出位置から基準位置まで移動する。また、表示パネル3の表示面が左方向あるいは右方向へ向いていた場合は、パン制御部21eの制御により、パン機構5が、表示パネル3の表示面の向きを車載装置1の正面方向(+X側)に変更する(ステップS19)。これにより、車載装置1は、表示パネル3の格納状態ST1(図21参照。)に移行することになる。
<1−7−2.チルト機構>
次に、チルト機構6に係る車載装置1の動作について説明する。図22は、チルト機構6に係る車載装置1の動作の流れを示す図である。図22に示す動作は、制御部21の制御によって繰り返し実行される。
まず、制御部21が、表示パネル3が非チルト状態であるか否かを判断する(ステップS11)。すなわち、制御部21は、チルト機構6が表示パネル3を格納しているか否かを判断する。
表示パネル3が非チルト状態である場合は(ステップS21にてYes)、操作制御部21bが、表示パネル3のディスプレイ31に表示された特定のコマンドボタンCを介して、表示パネル3をチルトさせるチルト指示をユーザが行ったか否かを判定する(ステップS22)。
このようなチルト指示があった場合は(ステップS22にてYes)、チルト制御部21fの制御により、チルト機構6が、表示パネル3を回転させ、表示パネル3の上部を表示面の側(+X側)へ移動させる。これにより、表示パネル3がチルトされてチルト状態となる(ステップS24)。
また、チルト指示がない場合は(ステップS22にてNo)、次に、制御部21が、ディスプレイ31を照明する光の照度が所定の閾値より大きいか否かを判定する(ステップS23)。この照度は、照度センサ34から出力される照度信号に基づいて得られる。
照度が閾値より大きい場合は(ステップS23にてYes)、ディスプレイ31に直射日光などが照射してディスプレイ31の視認性が悪化している可能性がある。このため、この場合は、チルト制御部21fの制御により、チルト機構6が、表示パネル3を回転させ、表示パネル3の上部を表示面の側(+X側)へ移動させる。これにより、表示パネル3がチルトされてチルト状態となる(ステップS24)。
また、表示パネル3がチルト状態である場合は(ステップS21にてNo)、次に、操作制御部21bが、表示パネル3のディスプレイ31に表示された特定のコマンドボタンCを介して、表示パネル3を格納する格納指示をユーザが行ったか否かを判定する(ステップS25)。
このような格納指示があった場合は(ステップS25にてYes)、チルト制御部21fの制御により、チルト機構6が、表示パネル3を回転させ、表示パネル3の上部を背面側(−X側)へ移動させる。これにより、表示パネル3が格納されて非チルト状態となる(ステップS26)。
以上説明したように、車載装置1は、表示パネル3を基準位置から車両の車室内側の突出位置に移動するスライド機構4と、表示パネル3の表示面の向きを左右方向に変更するパン機構5とを備えている。表示パネル3が基準位置にある場合にユーザの接近を検出したときは、スライド機構4は表示パネル3を基準位置から突出位置に移動し、かつ、パン機構5はユーザが接近した接近方向に表示パネル3の表示面の向きを変更する。このため、突出位置に移動した場合における表示パネルの視認性を向上できる。
また、車載装置1は、表示パネル3の上下中央よりも下側に配置され、ユーザの操作を受け付ける操作部を備えている。また、車載装置1は、表示パネル3の上下中央よりも下側に設けられ、表示パネル3の表示面の左右方向に沿った回転軸ax2を中心に表示パネル3を回転させるチルト機構6を備えている。チルト機構6の回転軸ax2が、表示パネル3の上下中央よりも下方に設けられるため、表示パネル3をチルトさせる場合において、ユーザの操作を受け付ける操作部の位置が大きく移動しない。表示パネル3をチルトさせる場合においても、ユーザの操作性を向上できる。
<2.第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態の車載装置1の構成及び処理は、第1の実施の形態とほぼ同様であるため、以下では、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。第2の実施の形態の車載装置1では、パン機構5が表示パネル3の表示面の向きを変更する場合において、表示パネル3の表示面をユーザの所望の方向に向けることができるようになっている。また、チルト機構6が表示パネル3をチルトさせる場合においても、表示パネル3の表示面をユーザの所望の方向に向けることができるようになっている。
図23は、第2の実施の形態の車載装置1の電気的な構成を示す図である。第2の実施の形態の車載装置1は、パン機構5が角度検出部59を備え、チルト機構6が角度検出部69を備えている。第2の実施の形態の車載装置1のその他の構成は、図6に示す第1の実施の形態と同様である。
パン機構5が備える角度検出部59は、パン機構5の基準部材となるベースシャーシ51に対する表示パネル3の表示面の角度(すなわち、パネルホルダ52の主面の角度)を検出する。表示パネル3の表示面の角度は、駆動レバー55の位置と相関関係がある(図9から図11参照。)。このため、角度検出部59は、例えば、可変抵抗器などを用いて駆動レバー55の位置を検出することで、表示パネル3の表示面の角度を検出する。この角度検出部59の検出結果は、制御部21のパン制御部21eに与えられる。
チルト機構6が備える角度検出部69は、チルト機構6の基準部材となるベースシャーシ61(すなわち、チルト基準方向)に対する表示パネル3の表示面の角度を検出する。表示パネル3の表示面の角度は、スライドシャフト66の位置と相関関係がある(図13及び図14参照。)。このため、角度検出部59は、例えば、可変抵抗器などを用いてスライドシャフト66の位置を検出することで、表示パネル3の表示面の角度を検出する。この角度検出部69の検出結果は、チルト制御部21fに与えられる。
<2−1.パン機構の動作>
図24は、第2の実施の形態のスライド機構4及びパン機構5に係る車載装置1の動作の流れを示す図である。図24に示す動作は、制御部21の制御によって繰り返し実行される。以下、この動作の流れについて説明する。
まず、制御部21が、表示パネル3が基準位置にあるか否かを判断する(ステップS31)。表示パネル3が基準位置にある場合は(ステップS31にてYes)、次に、接近判定部21cが、左方向または右方向からユーザが接近したか否かを判定する(ステップS32,S35)。
ユーザが左方向から接近した場合は(ステップS32にてYes)、次に、パン制御部21eが、表示パネル3の表示面を左方向に向ける場合の表示パネル3の表示面の角度としてユーザが指定した指定角度を読み出す(ステップS33)。この指定角度は記憶部22に記憶されている。
続いて、スライド機構4が表示パネル3を基準位置から突出位置まで移動するとともに、パン機構5が表示パネル3の表示面の向きを左方向に変更する(ステップS34)。この際、パン制御部21eが角度検出部59の検出結果に基づいてパン機構5の駆動を制御することにより、パン機構5は、ベースシャーシ51に対する表示パネル3の表示面の角度をステップS33で読み出した指定角度に合わせる。これにより、表示パネル3の表示面がユーザの所望の方向に向けられることになる。
また、ユーザが右方向から接近した場合は(ステップS35にてYes)、次に、パン制御部21eが、表示パネル3の表示面を右方向に向ける場合の表示パネル3の表示面の角度としてユーザが指定した指定角度を読み出す(ステップS36)。この指定角度は記憶部22に記憶されている。
続いて、スライド機構4が表示パネル3を基準位置から突出位置まで移動するとともに、パン機構5が表示パネル3の表示面の向きを右方向に変更する(ステップS37)。この際、パン制御部21eが角度検出部59の検出結果に基づいてパン機構5の駆動を制御することにより、パン機構5は、ベースシャーシ51に対する表示パネルの表示面の角度をステップS36で読み出した指定角度に合わせる。これにより、表示パネル3の表示面がユーザの所望の方向に向けられることになる。
また、ユーザの接近が検出されず(ステップS32及びステップS35にてNo)、突出指示があった場合は(ステップS38にてYes)、表示パネル3の表示面の向きを正面方向に維持した状態で、スライド機構4が表示パネル3を基準位置から突出位置まで移動する(ステップS39)。
また、表示パネル3が突出位置にある場合においては(ステップS31にてNo)、格納指示がなされるまでは(ステップS40にてNo)、角度調整処理(ステップS43)が行われる。表示パネル3の表示面の向きが左方向あるいは右方向へ向けられている場合には、角度調整処理において、ユーザは、所定の操作を行うことで表示パネル3の表示面の方向を所望の方向に調整することができる。例えば、ユーザが特定のコマンドボタンCに触れる毎に、ベースシャーシ51に対する表示パネル3の表示面の角度が5°ずつ変更される。この際、パン制御部21eが角度検出部59の検出結果に基づいて、パン機構5の駆動を制御する。
また、格納指示があった場合は(ステップS40にてYes)、その時点のベースシャーシ51に対する表示パネル3の表示面の角度が、ユーザが指定した指定角度として記憶部22に記録される(ステップS41)。
指定角度は、表示パネル3の表示面が向いている方向(左方向あるいは右方向)と関連付けて記録される。ステップS33及びステップS36においては、表示パネル3の表示面を向けるべき方向に関連付けられた指定角度が読み出される。したがって、表示パネル3の表示面を左方向に向ける場合と、右方向に向ける場合とで異なる指定角度を設定することができる。
指定角度が記録されると、スライド機構4が、表示パネル3を突出位置から基準位置まで移動する。また、表示パネル3の表示面が左方向あるいは右方向へ向いていた場合は、パン機構5が、表示パネル3の表示面の向きを正面方向に変更する(ステップS42)。
<2−2.チルト機構の動作>
図25は、第2の実施の形態のチルト機構6に係る車載装置1の動作の流れを示す図である。図25に示す動作は、制御部21の制御によって繰り返し実行される。以下、この動作の流れについて説明する。
まず、制御部21が、表示パネル3が非チルト状態であるか否かを判断する(ステップS51)。表示パネル3が非チルト状態である場合に(ステップS51にてYes)、チルト指示があった場合は(ステップS52にてYes)、次に、チルト制御部21fが、表示パネル3をチルトさせた場合の表示パネル3の表示面の角度としてユーザが指定した指定角度を読み出す(ステップS54)。この指定角度は記憶部22に記憶されている。
続いて、チルト機構6が、表示パネル3をチルトさせる(ステップS55)。この際、チルト制御部21fが角度検出部69の検出結果に基づいてチルト機構6の駆動を制御することにより、チルト機構6は、ベースシャーシ61に対する表示パネル3の表示面の角度をステップS54で読み出した指定角度に合わせる。これにより、表示パネル3の表示面がユーザの所望の方向に向けられることになる。
また、チルト指示がなく(ステップS52にてNo)、ディスプレイ31を照明する光の照度が閾値より大きい場合も(ステップS53にてYes)、同様にして、チルト制御部21fが指定角度を読み出す(ステップS54)。そして、チルト機構6は、ベースシャーシ61に対する表示パネル3の表示面の角度をステップS54で読み出した指定角度に合わせるように、表示パネル3をチルトさせる(ステップS55)。なお、この場合は、表示パネル3の表示面の角度を、指定角度に合わせず、ディスプレイ31を照明する光の照度が所定の閾値より小さくなる角度に調整してもよい。
また、表示パネル3がチルト状態である場合は(ステップS51にてNo)、格納指示がなされるまでは(ステップS56にてNo)、角度調整処理(ステップS59)が行われる。角度調整処理において、ユーザは、所定の操作を行うことで表示パネル3の表示面の方向を所望の方向に調整することができる。例えば、ユーザが特定のコマンドボタンCに触れる毎に、ベースシャーシ61に対する表示パネル3の表示面の角度が2°ずつ変更される。この際、チルト制御部21fが角度検出部69の検出結果に基づいて、チルト機構6の駆動を制御する。
また、格納指示があった場合は(ステップS56にてYes)、その時点のベースシャーシ61に対する表示パネル3の表示面の角度が、ユーザが指定した指定角度として記憶部22に記録される(ステップS57)。ステップS54においては、このようにして記録された指定角度が読み出される。指定角度が記録されると、チルト機構6が表示パネル3を回転させ、表示パネル3が格納される(ステップS58)。
<3.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。以下では、このような変形例について説明する。上記実施の形態及び以下で説明する形態を含む全ての形態は、適宜に組み合わせ可能である。
上記実施の形態では、表示パネル3を突出させる突出位置を指定することはできなかったが、突出位置に関してもユーザが指定できるようにしてもよい。この場合は、スライドレバー41の位置を、可変抵抗器やフォトセンサなどで検出できるようにすればよい。
また、上記実施の形態では、ユーザからの格納指示があった場合に、車載装置1は表示パネル3の格納状態ST1に移行していた。これに対して、他の格納条件が満足した場合にも、車載装置1が格納状態ST1に移行するようにしてもよい。例えば、車載装置1が搭載される車両の走行速度が所定の閾値を超えた場合に、ユーザが車両の運転に集中できるように、車載装置1が格納状態ST1に移行するようにしてもよい。
また、上記実施の形態では、ユーザの操作を受け付ける操作部は、コマンドボタンCであるとして説明したが、物理的に押下可能な操作ボタンなどであってもよい。
また、上記実施の形態では、プログラムに従ったCPUの演算処理によってソフトウェア的に各種の機能が実現されると説明したが、これら機能のうちの一部は電気的なハードウェア回路により実現されてもよい。