JP5813371B2 - 立体画像認識装置 - Google Patents

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Description

本発明は、利用者が立体的な表示を感得し得るための画像表示技術に関する。
特開平5−257083号公報(特許文献1)には、偏光方向が90°異なる偏光板をそれぞれ左右の目に合うように貼り合わせた偏光めがねを用いた立体表示技術について開示されている。また、特開平6−178325号公報(特許文献2)には、立体表示用の左右の画像に同期させて左右のシャッターを開閉させる液晶シャッターメガネを用いた立体表示技術について開示されている。
しかし、特許文献1に代表される先行例においては、液晶パネルにおいて画素列を1列おきに用いて右画像と左画像をそれぞれ形成しているため表示画像の解像度が低下するという不都合がある。また、このような偏光めがねを用いる立体表示技術の1つとして、微細偏光素子を規則正しく配列して構成された高価な光学フィルムを用いるものもある。しかし、その場合には液晶パネル等の表示装置の出射光側に上記の光学フィルムを高い精度で取り付ける必要があり、光学フィルムの設置が容易ではない。
一方、特許文献2に代表される先行例は、液晶表示装置以外の方式の表示装置にも広く適用できる優れた技術である。しかし、特許文献2には液晶シャッターメガネの具体的な構成については開示されていない。ここで、例えば先行例がTN型の液晶素子を用いてシャッターメガネを構成していると仮定する。この場合には、比較的に高いコントラストを得ることができるが視角に依存して偏った光抜けが生じるという不都合がある。このため、シャッターメガネを用いて立体的表示を視認する利用者がその顔をほとんど動かすことなく表示を視認するのであればよいが、少しでも顔を傾けた場合には逆の視差の画像も目に入ってくることになる。このように遮光しなければならない時に光が抜けてくると左右の視差画像が混在するため立体表示としてもクオリティが下がるという不都合がある。
特開平5−257083号公報 特開平6−178325号公報
本発明に係る具体的態様は、視角にあまり依存せず、優れた遮光性を有し、クロストークが抑制された良好な状態で利用者に立体表示を視認させることを可能とする技術を提供することを目的の1つとする。
本発明に係る一態様の立体画像認識装置は、右目用画像と左目用画像を所定周期で交互に表示する画像表示装置と組み合わせて用いられる立体画像認識装置であって、(a)利用者に装着される一対の第1及び第2シャッター素子と、(b)前記画像表示装置による前記右目用画像と前記左目用画像の切り替えに対応して前記第1及び第2シャッター素子を選択的に動作させる駆動部を含み、前記第1及び第2シャッター素子は、各々、(c)相互に対向配置された第1基板及び第2基板と、(d)前記第1基板に設けられた第1電極と、(e)前記第2基板に設けられた第2電極と、(f)前記第1基板と前記第2基板の間に配置された液晶層と、(g)各々の吸収軸を略直交に配置され、かつ前記第1基板及び前記第2基板を挟んで対向配置された第1偏光板及び第2偏光板を有し、(h)前記液晶層は、電圧無印加時において多数の微小領域に分かれ、当該微小領域のそれぞれにおいて前記第1基板と前記第2基板の間で液晶分子の配向方向が略90°に捻れた配向状態を有し、前記第1基板及び前記第2基板のそれぞれとの界面における前記液晶分子の配向方向が前記微小領域ごとに不揃いである、ことを特徴とする立体画像認識装置である。
上記の立体画像認識装置によれば、視角にあまり依存せず、優れた遮光性を有し、クロストークが抑制された良好な状態で利用者に立体像を視認させることが可能となる。また、上記の立体画像認識装置は、液晶ディスプレイに限らず、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、ブラウン管ディスプレイ、電界放出ディスプレイなど種々の方式の画像表示装置と組み合わせて用いることが可能であり、かつ画像表示装置に対する改造等が不要であり、かつ解像度を落とすことなく立体的な表示を実現できる。
上記の立体画像認識装置において、前記液晶層は、電圧印加時における平面視の100μm四方の領域内のディスクリネーション中心の数を8個以下とされることが好ましく、ディスクリネーション中心の数を5個以下とされることがさらに好ましい。
ディスクリネーション中心の数を8個以下とすることで光散乱をほとんど生じない状態とすることができ、さらに5個以下とすることで光散乱をほぼ解消できる。従って、利用者に視認される立体像の画質をさらに向上することができる。
上記の立体画像認識装置において、前記画像表示装置の出射光が一方向に偏光している場合には、前記第1偏光板の偏光軸を前記画像表示装置の出射光の偏光方向に揃えることが好ましい。
一実施形態の立体画像認識装置の概略構成を示す模式的な斜視図である。 各シャッター素子の詳細構成を示す模式的な断面図である。 シャッター素子の液晶層の構造を示す模式図である。 視角特性における方位角の定義について示す図である。 立体画像認識装置を画像表示装置に同期して動作させたときのタイムチャートの一例を示す図である。 実施例1のシャッター素子の電気光学特性を示す図である。 実施例1のシャッター素子の視角特性を示す図である。 シャッター素子のディスクリネーションラインの観察像を示す図である。 シャッター素子のディスクリネーションラインの観察像を示す図である。 実施例2のシャッター素子の電気光学特性を示す図である。 実施例2のシャッター素子の視角特性を示す図である。
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態の立体画像認識装置(立体表示装置)の概略構成を示す模式的な斜視図である。図1に示す本実施形態の立体画像認識装置1は、一対のシャッター素子11a、11bとこれらのシャッター素子11a、11bを駆動する駆動部12を含んで構成されており、画像表示装置2によって表示される画像を利用者に立体像として視認させるために用いられる。
一対のシャッター素子11a、11bは、人間の両目の平均的な間隔に対応して、所定位置を挟んで一方向に並べて配置されており、例えば図1に示すようにメガネ状に構成されている。
駆動部12は、画像表示装置2の画像表示タイミングに同期して所定の駆動電圧を液晶セル13に供給する。駆動部12は、例えば駆動周波数1000Hzの矩形波電圧を液晶セル13に供給する。駆動電圧は、例えばオフ電圧を0V、オン電圧を10Vとすることができる(スタティック駆動)。駆動部12による駆動電圧の供給方法についてはさらに後述する。なお、駆動部12はシャッター素子11a等と一体化されていてもよいし、画像表示装置2に内蔵されていてもよい。画像表示装置2と駆動部12は図1のような有線接続の他、電波や赤外線などによる無線通信によって接続されていてもよい。
図2は、各シャッター素子の詳細構成を示す模式的な断面図である。各シャッター素子11a、11bは、それぞれ図2に示すように上側偏光板13、液晶セル(液晶素子)15、下側偏光板17を有して構成されている。
上側偏光板13は、液晶セル15等を挟んで下側偏光板17と対向配置されている。この上側偏光板13は、各シャッター素子11a等が利用者に装着された際に、その視認位置を基準として当該視認位置から遠い側、換言すれば画像表示装置2に近い側に配置される。また、下側偏光板17は、各シャッター素子11a等が利用者に装着された際に、その視認位置を基準として当該視認位置に近い側、換言すれば画像表示装置2から遠い側に配置される。上側偏光板13と下側偏光板17は、各々の吸収軸が略直交するように配置される(クロスニコル配置)。
液晶セル15は、上側基板21、上側電極22、配向膜23、下側基板24、下側電極25、配向膜26、液晶層27を含んで構成されている。
上側基板21および下側基板24は、それぞれ、例えばガラス基板、プラスチック基板等の透明基板である。プラスチック基板は、軽い、割れにくい、曲げやすい等の長所を有するので、シャッター素子11a、11bをメガネ状に形成するにあたってより好ましい。この場合には、ガスバリア層などを有するプラスチック基板がより好ましい。上側基板21と下側基板24との相互間には、スペーサー(粒状体)が分散して配置されている。これらのスペーサーにより、上側基板21と下側基板24との間隙が所定距離(例えば数μm程度)に保たれる。
上側電極22は、上側基板21の一面上に設けられている。同様に、下側電極25は、下側基板24の一面上に設けられている。上側電極22および下側電極25は、それぞれ、例えばインジウム錫酸化物(ITO)などの透明導電膜を適宜パターニングすることによって構成されている。
配向膜23は、上側基板21の一面側に、上側電極22を覆うようにして設けられている。同様に、配向膜26は、下側基板24の一面側に、下側電極25を覆うようにして設けられている。本実施形態においては、配向膜23および配向膜26としては、液晶層27の初期状態(電圧無印加時)における配向状態を略水平配向に規制するもの(水平配向膜)が用いられている。各配向膜23、26には特段の配向処理(例えばラビング処理)を施していない。
液晶層27は、上側基板21の上側電極22と下側基板24の下側電極25の相互間に設けられている。本実施形態においては誘電率異方性Δεが正(Δε>0)の液晶材料(ネマティック液晶材料)を用いて液晶層27が構成されている。液晶層27に図示された太線は、電圧無印加時における液晶分子の配向方向(ダイレクタ)を模式的に示したものである。この液晶層27は、図3において模式的に示すように、初期状態(電圧無印加状態)における液晶層の配向状態が無限ドメインに分かれたランダム配向状態を有しながら上側基板21と下側基板24の間で液晶層27のツイスト角がそれぞれ90°程度になるような捻れ配向状態(いわゆるアモルファスTN配向状態)を有している。
図4は、視角特性における方位角の定義を示す図である。各方位の基準(0°)は図中に示された通りである。なお、シャッター素子11a、11bがほぼ水平方向(画像表示装置2の左右方向)に並んでいる状態を想定する。この状態は、例えば上記のようにシャッター素子11a、11bがメガネ状に構成されている場合においてはこれらを利用者がメガネと同様に装着し、かつ首を傾けずに画像表示装置2を正視した状態に相当する。
次に、本実施形態の立体画像認識装置1の駆動方法について例示する。
上記した画像表示装置2は、立体的表示を行うために、右目用画像と左目用画像を所定周期で切り替えながら交互に表示する。表示切り替え周波数は、例えば120Hzである。この場合、約8.3ミリ秒間ごとに右目用画像と左目用画像が切り替わる。画像表示装置2がいわゆる倍速表示を行うものである場合には、表示切り替え周波数は240Hzとなる。この場合には、約4.2ミリ秒間ごとに右目用画像と左目用画像が切り替わる。
このとき、立体画像認識装置1は、駆動部12が画像表示装置2の表示切り替えタイミングに対応してシャッター素子11a、11bを駆動する。例えば、右目用画像が表示されているフレームでは、利用者の右目に対応付けられたシャッター素子11bには駆動部12からオフ電圧が印加され、利用者の左目に対応付けられたシャッター素子11aには駆動部12からオン電圧が印加される。それにより、シャッター素子11bは光透過状態となり、シャッター素子11aは遮光状態となるので、利用者は右目でのみ右目用画像を視認できる状態となる。逆に、左目用画像が表示されているフレームでは、利用者の左目に対応付けられたシャッター素子11aには駆動部12からオフ電圧が印加され、利用者の右目に対応付けられたシャッター素子11bには駆動部12からオン電圧が印加される。それにより、シャッター素子11aは光透過状態となり、シャッター素子11bは遮光状態となるので、利用者は左目でのみ左目用画像を視認できる状態となる。これらの動作を画像表示装置2による右目用画像と左目用画像の切り替えタイミングに同期して実行することにより、利用者は立体的な表示を視認することができる。
図5は、立体画像認識装置を画像表示装置に同期して動作させたときのタイムチャートの一例を示す図である。本例では画像表示装置2における1フレームの時間が16.7ミリ秒間であり、当該1フレームが2つのサブフレームSB1、SB2に分割されている。各サブフレーム時間はそれぞれ約8.33ミリ秒間である。サブフレームSB1が右目用画像の表示期間であり、サブフレームSB2が左目用画像の表示期間である。各サブフレーム時間は、画像形成時間とバックライト点灯時間に分けられる。
上記の画像表示装置2として、例えば液晶表示装置を想定した場合には、右目用、左目用の各画像を形成するのに数ミリ秒間の時間を要する。これを考慮し、本実施形態では、画像が形成されたタイミングで画像表示装置2のバックライトが点灯することにより、右目用または左目用の画像が選択的に表示される。これに対して、本実施形態の立体画像認識装置1における各シャッター素子11a、11bは、画像表示装置2における各画像形成時間に対して十分に速い応答特性を有している。従って、どのような条件で表示が行われる場合であってもバックライトの点灯に合わせてシャッター素子11a、11bの各液晶セル15を選択的に光透過状態または遮光状態に制御できる。
なお、画像表示装置2が液晶表示装置である場合には、この液晶表示装置の出射側偏光板の透過軸(若しくは吸収軸)と、各シャッター素子11a等の入射側となる上側偏光板13の透過軸(若しくは吸収軸)とは同じ方向に揃えられていることが望ましい。
次に、いくつかの実施例について示す。
(実施例1)
ガラス基板上(ガラス板厚:0.7mmt)に透明電極であるインジウム錫酸化物(ITO)膜を蒸着法やスパッタ法などによって500〜1000Å程度形成し、フォトリソグラフィ工程により所望の形状にパターニングした。このパターニングされたITO膜を有するガラス基板上に、蒸着法、スパッタ法もしくはフレキソ印刷法などにより所定の位置(シャッター画素部分とメインシール部分に形成し、導通部分と端子部分には形成しない)に酸化珪素膜などの絶縁膜を形成した。なお、この絶縁膜は必ずしも形成する必要はないが、上下基板間の短絡防止のためには形成することが望ましい。
次いで、絶縁膜上にほぼ同じパターンの水平配向膜を形成する(シャッター画素部分に形成し、メインシール部分と導通部分と端子部分には形成しない)。ここで用いる水平配向膜は水平配向膜であれば何でも構わない。なお、民生用途など信頼性をそれほど求められない用途には配向膜を形成しなくても構わないが、車載用途など信頼性を高くしたい用途には配向膜を形成することが望ましい。本実施例では一般的なポリイミド配向膜を用い、成膜後、180〜200℃で90分間の本焼成を行った。なお、ラビング処理等の一軸配向処理は一切行わなかった。
次いで、上下基板を貼り合わせるためのシール剤を所定のパターンに印刷した。ここでは、真空注入法を用いる場合には注入口を有するパターンとし、ODF(One Drop Fill)法の場合には注入口のない閉パターンとする。本実施例ではスクリーン印刷法を用いてシール材を印刷したが、ディスペンサなどを用いてもよい。シール剤は熱硬化型のものを用いたが、光硬化型のシール剤、あるいは光・熱併用型シール剤などを用いてもよい。シール剤として薄いギャップまで押し込むことが可能なタイプのものが望ましい。本実施例のシール剤は4μm径のシリカボールを1−3wt%含んでいる。さらに上下基板の電極間を導通させるための導通材として金がコーティングされたプラスチックボールを含むシール剤を所定位置に印刷してもよい。ここでは上記と同じシール剤に4μm径の金コーティングされたプラスチックボールを2wt%含有させたものをスクリーン印刷法によって印刷することで導通材を形成した。シール剤のパターン(および導通材のパターン)は片側の基板上にのみ形成した。
反対側の基板上にはギャップコントロール剤を乾式散布法にて散布した。ギャップコントロール剤には4μm径のプラスチックボールを用いたが、シリカボールを用いてもよい。ギャップコントロール剤には液晶分子の配向を乱さないための表面処理が行われており、かつ散布後の熱処理により基板上に固着するような処理が施されているものを用いてもよいが、本実施例では用いなかった。ギャップコントロール剤の散布量は200±30個/mm程度とした。なお、基板に固着する処理が施されたギャップコントロール剤を用いる場合には散布後に熱処理(例えば100〜150℃で10〜60分間)を行うことによりギャップコントロール剤を固着させる。
次いで、上下基板を所定位置で重ね合わせてセル化し、これをプレスした状態で熱処理によりシール剤を硬化させた。次いでスクライバー装置により上下基板に傷をつけ、プレイキングにより所定の大きさ、形状に分割した。この液晶セルに真空注入法にてΔε>0で低粘度、かつd/pが約0.25となるようにカイラル剤を添加した液晶材料を注入し、注入口をエンドシール剤にて封止した。
エンドシール後の液晶セルに対して、なるべく速やかに熱処理を行った。これは再配向処理とも呼ばれる。すなわち、液晶セルの液晶配向状態は真空注入法による液晶材料の注入時における液晶分子の流れに起因して配向方向が決まる(いわゆる流動配向)。この流動配向状態は、注入後なるべく短時間内(概ね6時間以内)に液晶材料の相転移温度以上に加熱を行い、液晶材料をアイソトロピック状態(等方相状態)にし、その後冷却することで消去することが可能である。ここでは、冷却速度を−11.0℃/minとした。
本実施例では配向膜に配向処理を施していないため、液晶分子の配向方向を決める要素がない。このため、等方相状態になった液晶材料を徐々に冷却していくと、まず液晶層のバルク部分に液晶相状態(液晶ドロップレット)が発現し、温度低下とともにその領域が界面側へ広がっていく。液晶ドロップレットが界面まで達したときには、界面においてそのときに液晶分子の向いている方向に配向状態が固定される。配向処理を行っていない配向膜には方位角方向の配向力がないが、表面エネルギーの関係で極角方向については、基板面とほぼ水平になるように液晶分子の極角方向が規制される。
このとき、液晶材料中にはカイラル剤がd/p=0.25となるように添加されているため、上下基板間でみると各々の微小領域(ドメイン)での液晶分子の配向方向は上下基板間で約90°捻れた状態になる。さらに温度を下げていくと、液晶ドロップレット同士がぶつかり、その境界では隣同士の液晶分子の配向方向がなるべく揃うように配向方向が決められる。さらに温度を下げると液晶セル内の全体が液晶相に相転移する。こうして液晶相が流動配向状態からランダム配向状態(アモルファス配向状態)に変換される。
ところで、液晶分子の配向状態にはメモリー効果と呼ばれるものがあり、配向状態が決まってからしばらく時間が経過すると熱処理(再配向処理)を行っても流動配向状態が消えなくなり、再配向が行えなくなる。再配向処理が可能な時限は液晶材料、配向膜材料、熱処理温度などにも依存するため一概にいえないが、液晶材料の注入から概ね6時間以上経過すると液晶材料の相転移温度より30℃程度高い温度を与えても流動配向状態を完全に解消することはできなくなる。
上記の再配向処理を行った後に、液晶セルの面取りと洗浄を行い、さらに偏光板を上下基板でクロスニコル配置となるように貼り合わせることにより、液晶シャッター素子が完成した。こうして作製されたシャッター素子の液晶層にはΔε>0でd/pが約0.25の液晶材料が満たされており、無限ドメインに分かれたランダム配向状態を有しながら上下基板間では液晶分子のツイスト角がそれぞれ90°程度になるような捻れ配向状態を有する。また、本実施例では液晶層厚(セル厚)を略4μm、Δndを略490nmに設定している。
図6は、実施例1のシャッター素子の電気光学特性(室温時)を示す図である。駆動条件については、駆動波形を矩形波、駆動周波数を300〜1000Hz、駆動電圧をオフ電圧0V、オン電圧5〜20Vと設定した(スタティック駆動)。図6では、オン電圧を10Vとした場合の明状態(高透過率)から暗状態(低透過率)へのスイッチング時ならびに暗状態から明状態へのスイッチング時における電気光学特性の過渡応答波形が示されている。電気光学特性に基づいて応答速度を詳しく調べたところ以下の結果が分かった。オフ電圧からオン電圧への変化(立ち下がり)については、高めの電圧を印加することにより比較的速くスイッチングしていた。具体的には、透過率が最大値からその10%値になるまでの時間については、電圧を7V以上とすることで2msecを下回る数値となり、10V以上としたときは1msecを下回る数値となった。一方、オン電圧からオフ電圧への変化(立ち上がり)については、立ち下がりに比べて遅く、透過率が最小値から最大値の90%になるまでの時間は3〜4msec程度であった。立ち上がり時間は電圧が高いほど大きくなる傾向がみられるが立ち下がり時間ほどには電圧への依存性をもたない。また、透過率が最大値の10%と最大値の90%の間で切り替わるときの時間は、オフ電圧からオン電圧への変化については電圧が高いほど小さくなり(例えば5V印加時に2.75msec、10V印加時に0.53msec)、オン電圧からオフ電圧への変化については電圧にほとんど依存せず2.3msec程度で安定していた。
図7は、実施例1のシャッター素子の視角特性を示す図である。駆動条件としては、駆動波形を矩形波、駆動周波数を1000Hz、オフ電圧を0V、オン電圧を10Vのスタティック駆動とした。図7(A)は視角方向におけるオン/オフ時の透過率、図7(B)は45°方向におけるオン/オフ時の透過率、図7(C)は90°方向におけるオン/オフ時の透過率、図7(D)は135°方向におけるオン/オフ時の透過率を示している。なお、視角特性における方位角の定義については図5に示す通りである。図7(A)〜図7(D)の各図におけるオフ透過率(透明状態)に注目すると、視角方向によらず高い透過率を示していることがわかる。従って、観察者は違和感なく明るい状態で立体像を視認することができる。また、図7(A)〜図7(D)の各図におけるオン状態(遮光状態)に注目すると、視角がプラス方向またはマイナス方向に振られるとわずかに遮光性が低下し、光抜けが生じることがわかる。光抜け量の視角依存性は、視角方向および90°方向においては小さく、45°方向および135°方向においては大きいことがわかる。
ここで、上記した画像表示装置2が液晶表示装置であり、かつMVA(Multi-domain Vertical Alignment)モードもしくはIPS(In Plane Switching)モードの液晶層を備えており、かつ偏光板の吸収軸を水平方向(画面の上下方向)または垂直方向(画面の左右方向)に配置しているとする。この場合、各シャッター素子における偏光板についてもそれらの吸収軸を水平方向または垂直方向とされる。それにより、図7における視角方向もしくは90°方向の性能に優れた本実施例の液晶シャッターは、MVAモードもしくはIPSモードの液晶表示装置と組み合わせて用いるのに特に適している。
図8および図9は、実施例1のシャッター素子の電圧印加時のディスクリネーションラインの観察像を示す図である。本実施例の液晶シャッターは、液晶セルの配向膜に対して積極的な配向処理を行っていない関係で液晶層の配向状態が無定形である。その配向状態は再配向処理を行った際の冷却時の冷却速度に依存する。その様子が図8および図9の観察像に表れている。具体的には、図8(A)は冷却速度が−0.34℃/minのときの観察像、図8(B)は冷却速度が−11.0℃/minのときの観察像、図8(C)は冷却速度が−32.0℃/minのときの観察像、図9(A)は冷却速度が−75.5℃/minのときの観察像、図9(B)は冷却速度が−283℃/minのときの観察像、図9(C)は冷却速度が−313℃/minのときの観察像をそれぞれ示している。
各図からわかるように、冷却速度が速いほどドメインサイズが小さくなり(細かいドメイン)、冷却速度が遅いほどドメインサイズが大きくなる(大きなドメイン)。従って、ドメインサイズは再配向処理での冷却速度に基づいて制御することが可能である。なお、この配向状態は再配向処理後、時間が経過すると解消できなくなる。つまり、配向状態が一旦安定した後には、いくら再配向処理を行っても同じ配向状態が現れるようになる。すなわち、製造時の再配向処理の冷却速度の条件設定により液晶層のアモルファス配向状態が決定される。
本実施例では、ドメインサイズが細かい場合、ごく僅かではあるが光散乱が生じる。この光散乱の程度はドメインサイズが大きいほどに少なくなり、冷却速度が−75.5℃/min(図9(A)参照)になればほぼ問題ない状態となる。また、冷却速度が−11.0℃/min(図8(B)参照)になると光散乱はなくなり(ヘーズ値がほぼ0%)、光散乱の問題を解消することができる。
ここで、ディスクリネーション(回位、転傾)中心の数に基づいてドメインサイズの好適値を規定する。ここでいう「ディスクリネーション中心」とは、複数のディスクリネーションラインが交差している部分をいう。なお、ディスクリネーションラインには電圧印加後に時間とともに消えるものがあるため、1本のディスクリネーションラインであっても不自然に曲がっており、曲がっている部分のライン幅が細くなったり消えかかったりしている部分についてはディスクリネーション中心とみなす。各冷却速度の条件での100μm×100μmの領域内(図中、矩形の枠で示す)におけるディスクリネーション中心(図中、円形の枠で示す)を数えると、冷却速度−0.34℃/minにおいては2〜3個、冷却速度−11.0℃/minにおいては5個、冷却速度−32.0℃/minにおいては6〜7個、冷却速度−75.5℃/minにおいては8〜9個、冷却速度−283℃/minにおいては12個、冷却速度−313℃/minにおいては14〜15個となっていた。このことから、100μm×100μmの領域内(100μm四方の領域内)におけるディスクリネーション中心を8個以下(冷却速度:−75.5℃/min)にすれば光散乱はほとんど生じず、さらに5個以下(冷却速度:−11.0℃/min)にすれば光散乱の問題を解消できるといえる。
(実施例2)
実施例2として、上記した実施例1よりも液晶層厚を小さくした液晶シャッターを作製した。作製手順については上記の実施例1と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。本実施例では、シール剤として径2.5μmの大きさのシリカボールを用い、さらに導通材として金コーティングされた径2.5μmのプラスチックボールを用いることで、液晶層厚を略2.5μmとした。また、液晶材料としてΔnの値が0.2と比較的大きいものを用いており、液晶層のΔndを略490nmに設定した。
図10は、実施例2のシャッター素子の電気光学特性(室温時)を示す図である。駆動条件については、駆動波形を矩形波、駆動周波数を300〜1000Hz、駆動電圧をオフ電圧0V、オン電圧5〜20Vと設定した(スタティック駆動)。図10では、オン電圧を10Vとした場合の明状態(高透過率)から暗状態(低透過率)へのスイッチング時ならびに暗状態から明状態へのスイッチング時における電気光学特性の過渡応答波形が示されている。電気光学特性に基づいて応答速度を詳しく調べたところ、実施例1の場合とほぼ同様の結果が得られた。すなわち、オフ電圧からオン電圧への変化(立ち下がり)については、高めの電圧を印加することにより比較的速くスイッチングしていた。具体的には、透過率が最大値からその10%値になるまでの時間については、電圧を7V以上とすることで2msecを下回る数値となり、10V以上としたときは1msecを下回る数値となった。一方、オン電圧からオフ電圧への変化(立ち上がり)については、立ち下がりに比べて遅く、透過率が最小値から最大値の90%になるまでの時間は3〜4msec程度であった。立ち上がり時間は電圧が高いほど大きくなる傾向がみられるが立ち下がり時間ほどには電圧への依存性をもたない。また、透過率が最大値の10%と最大値の90%の間で切り替わるときの時間は、オフ電圧からオン電圧への変化については電圧が高いほど小さくなり(例えば5V印加時に2.75msec、10V印加時に0.53msec)、オン電圧からオフ電圧への変化については電圧にほとんど依存せず2.3msec程度で安定していた。
図11は、実施例2のシャッター素子の視角特性を示す図である。駆動条件としては、駆動波形を矩形波、駆動周波数を1000Hz、オフ電圧を0V、オン電圧を10Vのスタティック駆動とした。図11(A)は視角方向におけるオン/オフ時の透過率、図11(B)は45°方向におけるオン/オフ時の透過率、図11(C)は90°方向におけるオン/オフ時の透過率、図11(D)は135°方向におけるオン/オフ時の透過率を示している。なお、視角特性における方位角の定義については図5に示す通りである。図11(A)〜図11(D)の各図におけるオフ透過率(透明状態)に注目すると、視角方向によらず高い透過率を示していることがわかる。従って、観察者は違和感なく明るい状態で立体像を視認することができる。また、図11(A)〜図11(D)の各図におけるオン状態(遮光状態)に注目すると、視角がプラス方向またはマイナス方向に振られるとわずかに遮光性が低下し、光抜けが生じることがわかる。光抜け量の視角依存性は、視角方向および90°方向においては小さく、45°方向および135°方向においては大きいことがわかる。
このように視角方向もしくは90°方向の性能に優れた本実施例の液晶シャッターは、実施例1と同様に、MVAモードもしくはIPSモードの液晶表示装置と組み合わせて用いるのに特に適している。また、液晶層のドメインサイズの面でいえば、同じ冷却速度で作製した場合には液晶層厚(セル厚)が薄いほどドメインが細かくなりやすいので薄ギャップ条件はやや不利ともいえる。ただし、本実施例の条件では光散乱の問題は見られなかった。また、ディスクリネーション中心の数と冷却速度との関係については実施例1と同様であったので、ここでは説明を省略する。
以上のような本実施形態並びに各実施例によれば、視角にあまり依存せず、優れた遮光性を有し、クロストークが抑制された良好な状態で利用者に立体像を視認させることが可能となる。また、上記の立体画像認識装置は、液晶ディスプレイに限らず、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、ブラウン管ディスプレイ、電界放出ディスプレイなど種々の方式の画像表示装置と組み合わせて用いることが可能であり、かつ画像表示装置に対する改造等が不要であり、かつ解像度を落とすことなく立体的な表示を実現できる。
なお、本発明は上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した実施形態では、シャッター素子の外形については特段に言及していなかったが、矩形状、五角形などの多角形や任意の曲線形状など所望の形状を選択することができる。
1:立体画像認識装置
2:画像表示装置
11a、11b:シャッター素子
12:駆動部
13:上側偏光板
15:液晶セル(液晶素子)
17:偏光板
21:上側基板
22:上側電極
23:配向膜
24:下側基板
25:下側電極
26:配向膜
27:液晶層

Claims (4)

  1. 右目用画像と左目用画像を所定周期で交互に表示する画像表示装置と組み合わせて用いられる立体画像認識装置であって、
    利用者に装着される一対の第1及び第2シャッター素子と、
    前記画像表示装置による前記右目用画像と前記左目用画像の切り替えに対応して前記第1及び第2シャッター素子を選択的に動作させる駆動部、
    を含み、
    前記第1及び第2シャッター素子は、各々、
    相互に対向配置された第1基板及び第2基板と、
    前記第1基板に設けられた第1電極と、
    前記第2基板に設けられた第2電極と、
    前記第1基板と前記第2基板の間に配置された液晶層と、
    各々の吸収軸を略直交に配置され、かつ前記第1基板及び前記第2基板を挟んで対向配置された第1偏光板及び第2偏光板と、
    を有し、
    前記液晶層は、電圧無印加時において多数の微小領域に分かれ、当該微小領域のそれぞれにおいて前記第1基板と前記第2基板の間で液晶分子の配向方向が略90°に捻れた配向状態を有し、前記第1基板及び前記第2基板のそれぞれとの界面における前記液晶分子の配向方向が前記微小領域ごとに不揃いである、
    立体画像認識装置。
  2. 前記液晶層は、電圧印加時における平面視の100μm四方の領域内のディスクリネーション中心の数を8個以下とした、
    請求項1に記載の立体画像認識装置。
  3. 前記ディスクリネーション中心の数を5個以下とした、
    請求項2に記載の立体画像認識装置。
  4. 前記画像表示装置の出射光が一方向に偏光しており、
    前記第1偏光板の偏光軸を前記画像表示装置の出射光の偏光方向に揃えた、
    請求項1〜3の何れか1項に記載の立体画像認識装置。
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