JP5813295B2 - 重合性組成物、高分子、及びフィルム - Google Patents
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本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、高Δnを示し且つ無色である重合性アゾメチン化合物を利用して、透明で且つ着色のない種々の光学部材の作製に有用な、重合性組成物、高分子、及びフィルムを提供することを課題とする。特に、薄膜で高機能特性が要求される位相差膜及び選択反射膜の作製に有用な、重合性組成物、高分子、及びフィルムを提供することを課題とする。
[1] 下記式(I):
m1及びm2はそれぞれ、1〜10の整数を表し、m1又はm2のCH2のうち、1つのCH2又は隣接しない2以上のCH2は、酸素原子又は硫黄原子に置き換わっていてもよく;
A1、A2、及びA3はそれぞれ、置換されていてもよい、5〜18員環の芳香族炭化水素環又は5〜18員環の芳香族複素環の基表し;
Rは、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し
Z1は、−COO−、−OCO−、−OCO−CH=CH−、−NHCO−、又は−NR1CO−を表し、R1は炭素原子数1〜10のアルキル基を表し;
L1及びL2はそれぞれ、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−OCO−CH=CH−、−OCOO−、−NHCO−、又は−NR1COを表し、R1は炭素原子数1〜10のアルキル基を表し;
n1は1又は2である;
で表される化合物の少なくとも1種を含むことを特徴とする重合性組成物。
[3] 式(I)中、n1が1であり、且つA1、A2及びA3がそれぞれ、置換基を有していてよい、1,4−フェニレンである[1]又は[2]の重合性組成物。
[4] 式(I)中、L1及びL2が−O−であり、且つZ1が−OCO−又は−OCO−CH=CH−である[1]〜[3]のいずれかの重合性組成物。
[7] 式(I)中、m1及びm2がそれぞれ2〜8の整数を表す[1]〜[6]のいずれかの重合性組成物。
[8] 少なくとも1種のキラル化合物を含有する[7]の重合性組成物。
[9] [1]〜[8]のいずれかの重合性組成物を重合させてなる高分子。
[10] [9]の高分子の少なくとも1種を含有するフィルム。
[11] [1]〜[8]のいずれかの重合性組成物のコレステリック液晶相を固定してなるフィルム。
[12] 光学異方性を示す[10]又は[11]のフィルム。
[13] 選択反射特性を示す[10]〜[12]のいずれかのフィルム。
[14] 赤外線波長域に選択反射特性を示す[13]のフィルム。
本発明は、下記式(I)で表される化合物の少なくとも1種を含有する重合性組成物に関する。下記式(I)の化合物は、メソゲンとともに、アゾメチン基を分子内に一つ有することを特徴とする。アゾメチン基を分子内に有する液晶化合物は、高Δnを示すが、一方で、従来の、アゾメチン基を分子内に2つ有するビスアゾメチン液晶化合物は黄色の問題があり、用途が制限される。下記式(I)の化合物は、十分に高いΔnを示すとともに、白色であるので、着色の問題はない。さらに、下記式(I)の化合物は、末端の重合性基とメソゲンを繋ぐ側鎖が長いので、液晶相となる温度範囲が広く、重合工程において結晶化し、白濁化するという問題も解消できる。さらに、溶剤への溶解性、及び他の液晶材料との相溶性も良好であり、重合で硬化可能であることから、光学部材等の種々の用途に有用である。特に、Δnが高いことから、薄膜の形態で所望の光学特性を示すことが要求される位相差膜及び選択反射膜等の光学フィルムの作製に有用である。
m1及びm2はそれぞれ、1〜10の整数を表し、m1又はm2のCH2のうち、1つのCH2又は隣接しない2以上のCH2は、酸素原子又は硫黄原子に置き換わっていてもよく;
A1、A2、及びA3はそれぞれ、置換されていてもよい、5〜18員環の芳香族炭化水素環又は5〜18員環の芳香族複素環の基を表し;
Rは、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し
Z1は、−COO−、−OCO−、−OCO−CH=CH−、−NHCO−、又は−NR1CO−を表し、R1は炭素原子数1〜10のアルキル基を表し;
L1及びL2はそれぞれ、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−OCO−CH=CH−、−OCOO−、−NHCO−、又は−NR1COを表し、R1は炭素原子数1〜10のアルキル基を表し;
n1は1又は2である。
P1及びP2はそれぞれ、(メタ)アクリレート基であるのが好ましく、即ち、以下のいずれかの基であるのが好ましい。
高いΔnを達成するためには、配向秩序を高くすることが必要であり、このためには液晶相の上限温度を上げることが有効である。本発明の組成物に使用する上記式(I)の化合物は、少なくとも環状の芳香族基を3環(式(I)中のA1〜A3)以上連結したものであり、その分子構造の特徴から、NI点(ネマチック液晶相→等方相の転移温度)が高く、具体的には160℃以上という極めて高いNI点を示し、組成物のΔnの向上に大きく寄与する。この環数を適当な連結基を介して4環にすることによって、着色することなしに、NI点をさらに高めて、Δnを大きくすることができる。また、芳香族環は、不飽和環や非芳香族環と比べて分子長軸方向の分極率を増大し、Δnの向上に寄与する。但し、環数の増大は、融点や粘性の増大を招き、光学膜に使用する用途領域では塗布工程で結晶化を起こしやすく膜均一性が下がるといった欠点もある。
以下に、A1〜A3の例を示すが、これらに限定されるものではない。
高いΔnのためには、吸収を長波化することが有効であり、それが従来のビスアゾメチン系液晶化合物の着色の原因であったが、本発明による式(I)の化合物では、アゾメチン結合によって繋がれた2つの芳香環の置換基の種類は化合物の色味にほとんど影響を与えず、任意の置換基を有する化合物を使用することができる。溶解性の観点からみると、置換基は原子の大きさがより大きいほど溶解性の向上に寄与し、小さいほど溶解性が低下し、配向性が低下する。このことから、置換基を有することが望ましい。置換基の数としては、より多いほど溶解性の上昇が期待できるが、多過ぎると液晶性が損なわれる。
これらを踏まえて、式(I)の化合物の環数としては、環の数が少ないのが好ましく、n1は1又は2であり、より好ましくは1である。
を参照して合成できる。
即ち、一般式(I)で表される化合物は、前記反応式(1)における、化合物(A)と化合物(B)との脱水縮合反応で化合物(C)を合成し、続いて化合物(C)と化合物(D)及び化合物(E)との反応により合成することができる。
また、反応中の熱重合を抑えるためにハイドロキノン誘導体などの重合禁止剤を用いてもよい。
また、該化合物は、芳香環の置換基の種類や連結基によらず、可視光領域での吸収が極めて小さいことから無色透明であり、液晶相範囲が広いために溶剤に溶解しやすい、重合しやすいなどといった複数の特性をも満足する。式(I)の化合物を含有する本発明の重合性組成物を用いて作製される硬化膜は、十分な硬度を示し、無色透明であり、耐候性・耐熱性が良好である等、複数の特性を満足し得るであろう。従って、本発明の重合性組成物を利用して形成された硬化膜は、例えば、光学素子の構成要素である位相差板、偏光素子、選択反射膜、カラーフィルタ、反射防止膜、視野角補償膜、ホログラフィー、配向膜等、種々の用途に利用することができる。
本発明の組成物をコレステリック液晶相を示す組成物として調製するためには、キラル化合物を添加するのが好ましい。キラル化合物は液晶性であっても、非液晶性であってもよい。前記キラル化合物は、公知の種々のキラル剤(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)から選択することができる。キラル化合物は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物も用いることができる。軸性不斉化合物又は面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファン及びこれらの誘導体が含まれる。キラル化合物(キラル剤)は、重合性基を有していてもよい。キラル化合物が重合性基を有するとともに、併用する棒状液晶化合物も重合性基を有する場合は、重合性キラル化合物と重合性棒状液晶合物との重合反応により、棒状液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、キラル化合物から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性キラル化合物が有する重合性基は、重合性棒状液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であることが好ましい。従って、キラル化合物の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基又はアジリジニル基であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが特に好ましい。
本発明の組成物は、前記式(I)の化合物とともに、他の1種以上の液晶性化合物を含有していてもよい。前記式(I)の化合物は、他の液晶性化合物との相溶性も高いので、他の液晶性化合物を混合しても、不透明化等が生じず、透明性の高い膜を形成可能である。他の液晶性化合物を併用可能であることから、種々の用途に適する種々の組成の組成物を提供できる。併用可能な他の液晶化合物の例には、棒状ネマチック液晶化合物である。前記棒状ネマチック液晶化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が含まれる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
重合性棒状液晶化合物は、重合性基を棒状液晶化合物に導入することで得られる。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、及びアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。重合性基は種々の方法で、棒状液晶化合物の分子中に導入できる。重合性棒状液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性棒状液晶化合物の例は、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、及び特開2001−328973号公報などに記載の化合物が含まれる。2種類以上の重合性棒状液晶化合物を併用してもよい。2種類以上の重合性棒状液晶化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
本発明の組成物は、重合開始剤を含有しているのが好ましい。例えば、紫外線照射により硬化反応を進行させて硬化膜を形成する態様では、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であるのが好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
本発明の組成物中に、安定的に又は迅速に液晶相(例えば、コレステリック液晶相)となるのに寄与する配向制御剤を添加してもよい。配向制御剤の例には、含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマー、及び下記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物が含まれる。これらから選択される2種以上を含有していてもよい。これらの化合物は、層の空気界面において、液晶化合物の分子のチルト角を低減若しくは実質的に水平配向させることができる。尚、本明細書で「水平配向」とは、液晶分子長軸と膜面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が20度未満の配向を意味するものとする。液晶化合物が空気界面付近で水平配向する場合、配向欠陥が生じ難いため、可視光領域での透明性が高くなる。一方、液晶化合物の分子が大きなチルト角で配向すると、例えば、コレステリック液晶相とする場合は、その螺旋軸が膜面法線からずれるため、反射率が低下したり、フィンガープリントパターンが発生し、ヘイズの増大や回折性を示すため好ましくない。
配向制御剤として利用可能な前記含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマーの例は、特開2007−272185号公報の[0018]〜[0043]等に記載がある。
なお、本発明では、配向制御剤として、前記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物の一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明の組成物は、1種又は2種類以上の、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増感剤、安定剤、可塑剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、消泡剤、レべリング剤、増粘剤、難燃剤、界面活性物質、分散剤、染料、顔料等の色材、等の他の添加剤を含有していてもよい。
本発明の組成物は、位相差フィルム、反射フィルム等の種々の光学フィルムの材料として有用である。
本発明は、前記式(I)の化合物の少なくとも1種を含有する、本発明の重合性組成物を用いて形成されるフィルムにも関する。本発明の重合性組成物は、位相膜、反射膜等の種々の光学フィルムの材料として有用である。
(1)本発明のフィルムの製造方法
本発明のフィルムの製造方法の一例は、
(i) 基板等の表面に、本発明の組成物を塗布して、液晶相(コレステリック液晶相等)の状態にすること、
(ii) 前記組成物の硬化反応を進行させ、液晶相を固定して硬化膜を形成すること、
を少なくとも含む製造方法である。
(i)及び(ii)の工程を、複数回繰り返して、複数の上記硬化膜が積層されたフィルムを作製することもできる。
一例では、紫外線を照射して、硬化反応を進行させる。紫外線照射には、紫外線ランプ等の光源が利用される。この工程では、紫外線を照射することによって、前記組成物の硬化反応が進行し、コレステリック液晶相が固定されて、硬化膜が形成される。
紫外線の照射エネルギー量については特に制限はないが、一般的には、100mJ/cm2〜800mJ/cm2程度が好ましい。また、前記塗膜に紫外線を照射する時間については特に制限はないが、硬化膜の充分な強度及び生産性の双方の観点から決定されるであろう。
なお、本発明においては、液晶相の光学的性質が層中において保持されていれば十分であり、最終的に硬化膜中の組成物がもはや液晶性を示す必要はない。例えば、組成物が、硬化反応により高分子量化して、もはや液晶性を失っていてもよい。
本発明のフィルムは、基板を有していてもよい。当該基板は自己支持性があり、上記硬化膜を支持するものであれば、材料及び光学的特性についてなんら限定はない。ガラス板、石英板、及びポリマーフィルム等から選択することができる。用途によっては、紫外光に対する高い透明性が要求されるであろう。可視光に対する透過性が高いポリマーフィルムとしては、液晶表示装置等の表示装置の部材として用いられる種々の光学フィルム用のポリマーフィルムが挙げられる。前記基板としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム;ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム;ポリイミドフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、などが挙げられる。ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロースが好ましい。
本発明のフィルムは、基板と前記硬化膜との間に、配向層を有していてもよい。配向層は、液晶化合物の配向方向をより精密に規定する機能を有する。配向層は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成等の手段で設けることができる。さらには、電場の付与、磁場の付与、或いは光照射により配向機能が生じる配向層も知られている。配向層は、ポリマーの膜の表面に、ラビング処理により形成するのが好ましい。
本発明のフィルムの一態様は、本発明の組成物の、液晶相の配向(例えば、水平配向、垂直配向、ハイブリッド配向等)を固定したフィルムであって、光学異方性を示すフィルムである。当該フィルムは、液晶表示装置等の光学補償フィルム等として利用される。
本発明のフィルムの一態様は、本発明の重合性組成物のコレステリック液晶相を固定したフィルムであって、所定の波長域の光に対して選択反射特性を示すフィルムである。コレステリック液晶相では、液晶分子はらせん状に配列している。赤外線波長域(波長800〜1300nm)に選択反射特性を示す当該フィルムは、例えば建物又は車両の窓ガラスに貼付され、もしくは合わせガラスに組み込まれて、遮熱部材として利用される。
また、本発明のフィルムは、光学素子の構成要素である、偏光素子、選択反射膜、カラーフィルタ、反射防止膜、視野角補償膜、ホログラフィー、配向膜等、種々の用途に利用することができる。
本発明は、前記式(I)の重合性化合物の1種又は2種以上を重合してなる高分子、及び本発明の重合性組成物を重合してなる高分子にも関する。該高分子は、液晶性であっても、非液晶性であってもよい。前記式(I)の重合性化合物から誘導される繰り返し単位を含むことから、高いΔnを示し、種々の光学要素の材料として有用である。
例示化合物(I−1)の合成:
(2)別途、3つ口フラスコにMsCl 4.3ml(55mmol)とTHF 10mlを添加し、氷・メタノールバスに浸し、内温を−5℃にした。この溶液に、内温を5℃以下に保ちながら、4−アクリロイルオキシ桂皮酸 14.5g(50mmol)/ジイソプロピルエチルアミン(以下、DIPEAとする)9.6ml(55mmol)/2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール 0.30g/THF 30mlの混合溶液を滴下した。この溶液を5℃以下に保って、2時間攪拌した後、DIPEA 9.6ml(55mmol)、DMAP 0.15g、(1)で調製した溶液Aをこの順で添加した(内温を5℃以下に維持)。反応温度を25℃に上昇し、2時間攪拌後、メタノールを10ml加えてクエンチした。酢酸エチル/純水を加えて分液し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濃縮し、褐色の油状物質を得た。この油状物質を酢酸エチル/ヘキサンによりカラムにかけて濃縮し、メタノールで再結晶することで、白色固体である化合物(I−1)を6.3g(収率20%)得た。
1H-NMR(CDCl3) : δ= 1.8-2.0(brs,8H), 2.4(s,3H), 4.1(m,4H), 4.3(m,4H), 5.8(d,2H), 6.1(dd,2H), 6.4(d,2H), 6.5(d,1H), 6.9-7.1(m,7H), 7.5(d,2H), 7.8(d×2,3H), 8.3(s,1H)
1H-NMR(DMSO) : δ= 1.8-2.0(brs,8H), 4.0(m,4H), 4.2(m,4H), 5.9(d,2H), 6.1(dd,2H), 6.4(d,2H), 6.7(d,1H), 7.0(d,2H), 7.1(d,2H), 7.2(d,1H), 7.3(d,1H), 7.4(s,1H), 7.7(d,2H), 7.8(d,1H), 7.9(d,2H), 8.5(s,1H)
1H-NMR(CDCl3) : δ= 1.8-2.0(brs,8H), 2.3(s,3H), 4.1(m,4H), 4.3(m,4H), 5.8(d,2H), 6.1(dd,2H), 6.4(d,2H), 6.5(d,1H), 7.0(d×2,4H), 7.1(m,3H), 7.5(d,2H), 7.8(m,3H), 8.4(s,1H)
1H-NMR(CDCl3) : δ= 1.8-2.0(brs,8H), 4.1(m,4H), 4.3(m,4H), 5.8(d,2H), 6.1(dd,2H), 6.4(d,2H), 6.5(s,1H), 7.0(d×2,4H), 7.0(d×2,4H), 7.5(d,2H), 7.8(d×2,3H), 8.4(s,1H)
1H-NMR(CDCl3) : δ= 1.8-2.0(brs,8H), 4.1(m,4H), 4.3(m,4H), 5.8(d,2H), 6.1(dd,2H), 6.4(d,2H), 7.0(d×2,4H), 7.3(d×2,4H), 7.8(d,2H), 8.2(d,2H), 8.4(s,1H)
上記で合成した各化合物のΔnを、液晶便覧(液晶便覧編集委員会)のp.202に記載の方法に従って、直接測定した。具体的には、上記で合成した各化合物を、くさび型セルに注入し、これに波長550nmのレーザー光を照射し、透過光の屈折角を測定することにより、Δnを求めた。
下記表に、各化合物のΔn、偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって求めた相転移温度、結晶の色味についても併せて示す。また、比較例として、下記比較例用化合物(R−1)〜(R−3)のΔn、相転移温度、及び固体の色味を併せて示した。さらに、一連の化合物の吸収スペクトルを図1及び2にそれぞれ示した。図2のグラフは、図1のグラフの一部を拡大したグラフである。
なお、(R−1)は、モノアゾメチン化合物であるが、重合性基とメソゲンとを連結する側鎖が短く;(R−2)は、ビスアゾメチン化合物であり;及び(R−3)はアゾメチン基を含まない液晶化合物である。
なお、例示化合物(II−1)は、温度70℃では結晶化してしまうので、温度70℃のΔnは測定できなかった。一般に温度が低くなるとΔnが大きくなる傾向があり、化合物(II―1)の温度とΔnの関係は一次相関に近い関係が見られ、外挿値として70℃で0.25となる。
また、図1及び2に示す吸収スペクトル曲線から、従来知られているビスアゾメチン型重合性液晶(R−2)は波長400nm以上に吸収を持つことから黄色味を持つが、本発明に係わる式(I)のモノアゾメチン化合物は、波長400nm以上の吸収が小さく、白色であることが理解できる。
実施例6:
上記で合成した本発明に係わる式(I)の例示化合物I−1を用いて、下記の組成の液晶性組成物塗布液(1)を調製した。
例示化合物(I−1) 100質量部
空気界面配向剤(1) 0.1質量部
重合開始剤IRGACURE819(チバジャパン社製) 3質量部
溶媒 クロロホルム 800質量部
さらにこの膜をAXOMETRIX社製のAxoScanを用いてTip−Tiltモードで測定した結果、この装置が算出した液晶の平均傾斜角度は1度であり、A−plate型の位相差膜が形成できていることを確認した。
また、この装置を用いて測定した位相差と、共焦点レーザー膜厚測定装置(キーエンス社製FV−7510を用いて測定した位相差膜の膜厚から算出した波長550nmにおけるΔnは0.235であった。
上記でそれぞれ合成した各化合物を、例示化合物(I−1)の代わりにそれぞれ用いた以外は同様にして、液晶性組成物塗布液をそれぞれ調製した。これらの塗布液をそれぞれ用いて、実施例6と同様にして、実施例7〜10の位相差膜をそれぞれ作製した。
これらの位相差膜はいずれも良好な配向性を示し、0.1以下の低いヘイズであった。実施例6と同様にして求めた位相差膜のΔnを、下記表にまとめた。
実施例6と同様にして下記の組成の液晶性組成物塗布液(2)を調製した。
上記重合性液晶化合物(R−1) 100質量部
空気界面配向剤(1) 0.1質量部
重合開始剤IRGACURE819(チバジャパン社製) 3質量部
溶媒 クロロホルム 800質量部
液晶性組成物塗布液(1)の代わりに液晶性組成物塗布液(2)を用いる以外は実施例6と同様にして、比較例4の位相差膜を作製した。但し、この重合性組成物の液晶上限温度が例示化合物I−5よりも低いため、配向熟成の温度は90℃とした。また塗布後に加熱するまでの間に、塗布膜上に結晶が一部析出した。そのため再加熱して配向熟成後も、析出部分に膜厚ムラが残った。
実施例6と同様な方法によって測定した比較例4の位相膜の波長550nmにおけるΔnは0.256であり、ヘイズは0.18であった。
実施例6と同様にして下記の組成の液晶性組成物塗布液(3)を調製した。
上記重合性液晶化合物(R−2) 100質量部
空気界面配向剤(1) 0.1質量部
重合開始剤IRGACURE819(チバジャパン社製) 3質量部
溶媒 クロロホルム 800質量部
液晶性組成物塗布液(1)の代わりに液晶性組成物塗布液(3)を用いる以外は実施例6と同様にして、比較例5の位相差膜を作製した。但し、この重合性組成物の液晶上限温度が例示化合物I−5よりも低いため、配向熟成の温度は90℃とした。また塗布後に加熱するまでの間に、塗布膜上に結晶が一部析出した。そのため再加熱して配向熟成後も、析出部分に膜厚ムラが残った。
実施例6と同様な方法によって測定した比較例4の位相膜の波長550nmにおけるΔnは0.360であり、ヘイズは0.13であった。
上記で合成した本発明に係わる式(I)の例示化合物(I−1)を用いて、下記の組成の液晶性組成物塗布液(4)を調製した。
例示化合物(I−1) 33質量部
重合性液晶化合物(R−3) 67質量部
キラル剤Paliocolor LC756 (BASF社製) 3質量部
空気界面配向剤(1) 0.04質量部
重合開始剤IRGACURE819(チバジャパン社製) 3質量部
溶媒 クロロホルム 300質量部
得られた選択反射膜を偏光顕微鏡で観察したところ配向欠陥が無く均一に配向していることを確認した。さらにこの膜を島津社製の分光光度計UV−3100PCで透過スペクトルを測定したところ1000nmに中心を持つ赤外領域に選択反射ピークがあり、その半値幅が146nmであった。ピークの半値幅と重合性組成物の螺旋周期とを用いて算出した波長1000nmにおけるΔnは0.232であった。また、日本電飾社製ヘイズメータNHD2000を用いて測定したヘイズは0.07であった。
上記でそれぞれ合成した例示化合物を、例示化合物(I−1)の代わりにそれぞれ用いた以外は、実施例11と同様にして液晶性組成物塗布液をそれぞれ調製した。これらの塗布液をそれぞれ用いて、実施例11と同様な方法によって、実施例12〜15の選択反射膜をそれぞれ作製した。これらの選択反射膜はいずれも良好な配向性を示した。同様に求めた選択反射膜のピーク半値幅とそれから求められるΔnを下記表にまとめた。
実施例11と同様にして下記の組成の液晶性組成物塗布液(5)を調製した。
重合性液晶化合物(R−1) 33質量部
重合性液晶化合物(R−3) 67質量部
キラル剤Paliocolor LC756 (BASF社製) 2.8質量部
空気界面配向剤(1) 0.04質量部
重合開始剤IRGACURE819(チバジャパン社製) 3質量部
溶媒 クロロホルム 300質量部
液晶性組成物塗布液(4)の代わりに液晶性組成物塗布液(5)を用いる以外は実施例11と同様にして、比較例6の選択反射膜を作製した。但し、この重合性組成物の液晶上限温度が実施例11で用いた組成物よりも低いため、配向熟成の温度は90℃とした。塗布後に加熱するまでの間に、塗布膜上に結晶が一部析出した。そのため再加熱して配向熟成後も、析出部分に膜厚ムラと配向不均一性が残った。
得られた比較例6の選択反射膜は、1000nm付近に中心を持つ赤外領域に選択反射ピークがあり、その半値幅が120nmであった。ピークの半値幅と重合性組成物の螺旋周期とを用いて算出した波長1000nmにおけるΔnは0.190であった。
実施例11と同様にして下記の組成の液晶性組成物塗布液(6)を調製した。
重合性液晶化合物(R−2) 33質量部
重合性液晶化合物(R−3) 67質量部
キラル剤Paliocolor LC756 (BASF社製) 2.8質量部
空気界面配向剤(1) 0.04質量部
重合開始剤IRGACURE819(チバジャパン社製) 3質量部
溶媒 クロロホルム 300質量部
液晶性組成物塗布液(4)の代わりに液晶性組成物塗布液(6)を用いる以外は実施例11と同様にして比較例7の選択反射膜を作製した。
この選択反射膜は、1000nm付近に中心を持つ赤外領域に選択反射ピークがあり、その半値幅が154nmであった。ピークの半値幅と重合性組成物の螺旋周期とを用いて算出した波長1000nmにおけるΔnは0.243であった。膜の色は黄色であった。
Claims (13)
- 下記式(I):
で表される基からなる群から選ばれる重合性基を表し;
m1及びm2はそれぞれ、1〜10の整数を表し、m1又はm2のCH2のうち、1つのCH2又は隣接しない2以上のCH2は、酸素原子又は硫黄原子に置き換わっていてもよく;
A1、A2、及びA3はそれぞれ、置換されていてもよい、5〜18員環の芳香族炭化水素環又は5〜18員環の芳香族複素環の基を表し;
Rは、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し;
Z1は、−COO−、−OCO−、−OCO−CH=CH−、−NHCO−、又は−NR1CO−を表し、R1は炭素原子数1〜10のアルキル基を表し;
L1及びL2はそれぞれ、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−OCO−CH=CH−、−OCOO−、−NHCO−、又は−NR1COを表し、R1は炭素原子数1〜10のアルキル基を表し;
n1は1又は2である;
で表される化合物の少なくとも1種を含むことを特徴とする重合性組成物。 - A1、A2、及びA3がそれぞれ無置換の5〜18員環の芳香族炭化水素環又は5〜18員環の芳香族複素環の基であるか、又はA1、A2及びA3の少なくとも一つが、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアミド基、炭素原子数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜5のアシルオキシ基、炭素原子数2〜5のアシル基、シアノ基、又はハロゲン原子に置換されている5〜18員環の芳香族炭化水素環又は5〜18員環の芳香族複素環の基である請求項1に記載の重合性組成物。
- 式(I)中、n1が1であり、且つA1、A2及びA3がそれぞれ、置換基を有していてよい、1,4−フェニレンである請求項1又は2に記載の重合性組成物。
- 式(I)中、L1及びL2が−O−であり、且つZ1が−OCO−又は−OCO−CH=CH−である請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合性組成物。
- 式(I)中、P1及びP2はそれぞれ、メタクリレート基又はアクリレート基である請求項1〜4のいずれか1項に記載の重合性組成物。
- 式(I)中、m1及びm2がそれぞれ2〜8の整数を表す請求項1〜5のいずれか1項に記載の重合性組成物。
- 少なくとも1種のキラル化合物を含有する請求項6に記載の重合性組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の重合性組成物を重合させてなる高分子。
- 請求項8に記載の高分子の少なくとも1種を含有するフィルム。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の重合性組成物のコレステリック液晶相を固定してなるフィルム。
- 光学異方性を示す請求項9又は10に記載のフィルム。
- 選択反射特性を示す請求項9〜11のいずれか1項に記載のフィルム。
- 赤外線波長域に選択反射特性を示す請求項12に記載のフィルム。
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