JP2014037367A - 光学活性化合物、液晶組成物および光学フィルム - Google Patents
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Abstract
Description
ここで、キラル剤の性能を表す指標として、HTPが一般的に用いられている。HTPは、Helical Twisting Powerの略であり、下記式(1)で表されるらせん配向能力を示すファクターである。詳しくは、『液晶ディスプレー用カラーフィルターのためのコレステリック液晶用光反応性キラル剤の開発』(湯本眞敏、市橋光芳)に説明がある。
式(1) HTP=液晶の屈折率/(反射波長×キラル剤の濃度)
例えば、赤外光領域の長波長の光を反射させるには、コレステリック液晶相を示す液晶化合物(例えば棒状液晶化合物)にキラル剤を添加し、キラル剤の添加濃度を調整して反射帯域の調整が行なう方法が一般的である。この場合、定性的には、反射波長を長波長側にシフトするためにはキラル剤の添加量は少なくする必要がある。次に、フィルムのヘイズを減少させるためには、コレステリック液晶相の配向性を良くすることが必要となる。これにより、光反射性フィルムの配向欠陥を無くし、低へイズ化することができる。よって、赤外光を反射するように反射波長を長波長側にシフトし、かつより配向性の良い光反射性フィルムを作製するには、HTPが高いキラル剤を、少ない添加量で用いて反射波長を調整することが望まれる。
特に、本発明の発明者らが特許文献1に記載の光学活性化合物の光照射前後の液晶のねじり力(HTP)の変化を検討したところ、変化していないことがわかった。
また、近年ではいわゆるエコロジーの観点から液晶を用いた光学フィルム製造時のトータルエネルギーを低減して、環境負荷を低減することも求められている。そのため、液晶組成物を調製するときの加熱温度を抑制し、調製時間を短くする観点からキラル剤の溶媒への溶解性を高めることが求められてきている。しかしながら、本発明者らが特許文献2に例示されているイソソルビド骨格を有するキラル剤について溶媒への溶解性を検討したところ、さらなる改善が求められるものであることがわかった。
本発明が解決しようとする課題は、酒石酸由来の骨格を有し、光照射により液晶のねじり力(HTP)が変化し、溶媒への溶解性が良好である光学活性化合物を提供することにある。
[1] 下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表されることを特徴とする光学活性化合物。
[2] [1]に記載の光学活性化合物は、前記一般式(4)中、R41およびR42で表される光反応性部位を有する基がそれぞれ独立に下記一般式(5)または(6)で表される基であることが好ましい(但し、前記R41およびR42が下記一般式(6)で表される場合には、前記一般式(4)においてL41およびL42はCOを表す)。
[3] [2]に記載の光学活性化合物は、前記一般式(4)中、R41およびR42で表される光反応性部位を有する基がそれぞれ独立に前記一般式(6)で表される基であり、L41およびL42がCOを表すことが好ましい。
[4] [2]または[3]に記載の光学活性化合物は、前記一般式(5)および(6)中、R51およびR61がそれぞれ独立にC1〜C8のアルキルオキシ基、アルケニルオキシ基または総炭素数3〜15の(メタ)アクリロイルオキシアルキルオキシ基であることが好ましい。
[5] [1]〜[4]のいずれか一項に記載の光学活性化合物は、前記一般式(1)で表されることが好ましい。
[6] [1]〜[5]のいずれか一項に記載の光学活性化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする液晶組成物。
[7] [1]〜[5]のいずれか一項に記載の光学活性化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする光学フィルム。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
なお、本明細書中において、液晶化合物を含む固形物は、液晶化合物の結晶からなる場合もあるし、結晶でないアモルファス状の場合もある。また、重合開始剤やキラル剤など他の成分も含んでいる場合もある。また、これら全てもしくは一部が混合したものの場合もある。
なお、本明細書中において、“(メタ)アクリレート”はアクリレートおよびメタクリレートを表し、“(メタ)アクリル”はアクリルおよびメタクリルを表し、“(メタ)アクリロイル”はアクリロイルおよびメタクリロイルを表す。また、本明細書中において、“単量体”と“モノマー”とは同義である。本発明における単量体は、オリゴマーおよびポリマーと区別され、重量平均分子量が1,000以下の化合物をいう。本明細書中において、キラル剤はカイラル剤と同義である。
本発明の光学活性化合物は、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表されることを特徴とする。
(一般式(4)中、♯は結合手を表す。*は光学活性部位を表す。L41およびL42はそれぞれ独立にCO、COOまたはCONR43を(R43は炭素数1〜8のアルキル基を表す)を表す。R41およびR42はそれぞれ独立に光反応性部位を有する基を表す。)
このような構成により、本発明の光学活性化合物は、酒石酸由来の骨格を有し、光照射により液晶のねじり力(HTP)が変化し、溶媒への溶解性が良好である。
本発明の光学活性化合物は、液晶化合物と併用した場合に、該液晶化合物の螺旋構造を変化させるカイラル化合物(光反応型カイラル剤)として機能し、ある波長の光が照射されると、該波長域に感応波長を持つ光学活性化合物が感応して、液晶化合物の配向構造を制御すると共に、液晶の螺旋ピッチ、即ち螺旋構造の捻れ力(HTP:ヘリカルツイスティングパワー)を変化させることができる特質を有する。即ち、本発明の光学活性化合物は液晶化合物、好ましくはネマチック液晶化合物に誘起する螺旋構造の捻れ力の変化を光照射(紫外線〜可視光線〜赤外線)によって起こさせる化合物であり、同一分子内にカイラル部位と光反応性部位(光の照射によって構造変化を生じる部位)とを備える。
以下、前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される光学活性化合物の好ましい構造について説明する。
前記一般式(1)〜(3)中、X11、X21およびX31はそれぞれ独立にハロゲン原子または炭素数1〜8のアルキル基もしくはアルキルオキシ基を表し、ハロゲン原子または炭素数1〜8のアルキルオキシ基であることが好ましい。
X11、X21およびX31が表すハロゲン原子としては、フッ素原子または塩素原子を挙げることができ、フッ素原子が好ましい。
X11、X21およびX31が表す炭素数1〜8のアルキルオキシ基は、炭素数1〜4のアルキルオキシ基であることが好ましく、炭素数1〜3のアルキルオキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることが特に好ましい。
前記一般式(1)〜(3)で表される各分子内のR11、R12、R21、R22、R31およびR32のうち前記一般式(4)で表される基の数は、1つであることが光照射前後の液晶のねじり力(HTP)変化を高める観点から好ましく、HTPを高め、光照射前後の液晶のねじり力(HTP)変化量の絶対値を高める観点から2つであることがより好ましい。
R43は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
前記光反応性部位は、光の照射によって構造変化を生じる部位のことを言い、光によって異性化して大きく構造変化し得る部位であることが好ましい。
前記光反応性部位を有する基としては、例えば、単一方向からの光の照射によって官能基の化学構造または該官能基を有する分子の配向状態に変化が起こり、これにより分子の異方性を特定の方向へ変化させることができる官能基を指す。
前記光反応性部位を有する基は、具体的には、クマリン誘導体、スチリルピリジン誘導体、アゾベンゼン誘導体、桂皮酸誘導体、カルコン誘導体、スチルベン類、α−ヒドラゾノ−β−ケトエステル類、ベンジリデンフタルイミジン類、レチノイン酸誘導体、スピロピラン類、スピロオキサジン類、アントラセン誘導体およびベンゾフェノン誘導体由来の基が好ましく用いられ、スチルベン類および桂皮酸誘導体由来の基がより好ましい。
R51およびR61が表すC1〜C8のアルキルオキシ基としては、炭素数1〜6のアルキルオキシ基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキルオキシ基であることがより好ましく、炭素数2〜4のアルキルオキシ基であることが特に好ましく、n−ブトキシ基であることがより特に好ましい。
R51およびR61が表すC2〜C8のアルケニル基としては、炭素数2〜8のアルケニル基であることが好ましく、炭素数2〜6のアルケニル基であることがより好ましい。
R51およびR61が表すC2〜C8のアルケニルオキシ基としては、炭素数2〜8のアルケニルオキシ基であることが好ましく、炭素数2〜4のアルケニルオキシ基であることがより好ましく、炭素数3のアルケニルオキシ基であることが特に好ましい。
R51およびR61が表すC2〜C8のアルキニル基としては、炭素数2〜8のアルキニル基であることが好ましく、炭素数2〜6のアルキニル基であることがより好ましい。
R51およびR61が表すC2〜C8のアルキニルオキシ基としては、炭素数2〜8のアルキニルオキシ基であることが好ましく、炭素数2〜6のアルキニルオキシ基であることがより好ましい。
R51およびR61が表す総炭素数3〜15の(メタ)アクリロイルオキシアルキルオキシ基としては、総炭素数3〜8の(メタ)アクリロイルオキシアルキルオキシ基であることが好ましく、総炭素数6〜8の(メタ)アクリロイルオキシアルキルオキシ基であることがより好ましい。
X51、X52およびX61が表すハロゲン原子としては、フッ素原子または塩素原子を挙げることができ、フッ素原子が好ましい。
X51、X52およびX61が表す炭素数1〜8のアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
X51、X52およびX61が表す炭素数1〜8のアルキルオキシ基としては、炭素数1〜6のアルキルオキシ基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキルオキシ基であることがより好ましい。
前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される光学活性化合物は、D体であることが、イソソルビド系に比べて溶解性が優れる観点から好ましい。
(光学活性化合物の液晶のねじり力(HTP)の変化量)
本発明の光学活性化合物の光照射前後の液晶のねじり力(HTP)の変化量としては特に制限はないが、例えば光照射前のHTPが5〜20μm-1程度である場合は1μm-1以上変化することが好ましく、2μm-1以上変化することがより好ましく、2.5μm-1以上変化することが特に好ましく、3〜10μm-1変化することがより特に好ましく、3.5〜10μm-1変化することがさらにより特に好ましい。
本発明の光学活性化合物の光照射前後の液晶のねじり力(HTP)の変化率としては特に制限はないが、例えば光照射前の5%以上変化することが好ましく、10%以上変化することがより好ましく、15〜50%変化することが特に好ましく、30〜50%変化することが特に好ましい。
本発明の光学活性化合物の光照射前後の液晶のねじり力(HTP)の変化の方向は、特に制限はないが、光照射前後でHTPが増加する場合、光照射前後でHTPが減少する場合のどちらでもよく、特に光照射前後でHTPが減少する場合が好ましい。
本発明の光学活性化合物は、有機溶媒に対する溶解性が良好である観点で、イソソルビド骨格やイソマンニド骨格を有する光学活性化合物よりも好ましい。
具体的には本発明の光学活性化合物は、MEK(メチルエチルケトン)などの有機溶媒に対する溶解性が良好であることが好ましく、10質量%のMEK溶液となるように調製したときに結晶の析出が生じないことがより好ましく、20質量%のMEK溶液となるように調製したときに結晶の析出が生じないことが特に好ましい。
また、後述する本発明の液晶組成物中に含まれる前記一般式(1)〜(3)で表される本発明の光学活性化合物の量は、併用される液晶化合物に対して、1〜30質量%であることが好ましく、0.5〜25質量%であることがより好ましく、1〜20質量%であることが特に好ましい。光学活性化合物の使用量は、より少なくした方が液晶性に影響を及ぼさないことが多いため好まれる。従って、キラル剤として用いられる光学活性化合物は、少量でも所望の螺旋ピッチの捩れ配向を達成可能なように、強い捩り力のある化合物が好ましい。
前記一般式(1)〜(3)で表される光学活性化合物は、公知の文献中に記載されている方法により、またはこれと同様にして合成することができる。例えば、特開2010−70482号公報および特許4287598号公報に記載の方法に、適宜公知の方法を組み合わせて合成することができる。
また、本発明の光学活性化合物は、高い収率で合成することができる観点で、イソソルビド骨格やイソマンニド骨格を有する光学活性化合物よりも好ましい。本発明の光学活性化合物を製造するときの前記一般式(4)で表される基を導入する工程の収率は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが特に好ましく、80%以上であることがより特に好ましい。
また、前記一般式(1)〜(3)で表される光学活性化合物のL体とD体は、それぞれ原料としてL体のみまたはD体のみの原料を用いて合成することで、合成することができる。その他、公知の方法によりラセミ体を光学分割してもよい。
本発明の液晶組成物は、本発明の光学活性化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする。
本発明の液晶組成物は本発明の光学活性化合物を含むため、本発明の液晶組成物に光量を変えて光照射し液晶の捻れ力を変化させ、液晶の捻れ構造、即ち、螺旋の捻れの程度(捻れ力;HTP)を変化させることができる。液晶組成物のねじれ構造を変化させる方法としては、特許4287598号公報などに記載の方法を用いることができる。
以下、本発明の液晶組成物の組成の好ましい態様などについて説明する。
本発明の液晶組成物は、液晶化合物を含む。
前記液晶化合物は、棒状液晶化合物であることが好ましい。
本発明に使用可能な棒状液晶化合物の例は、棒状ネマチック液晶化合物である。前記棒状ネマチック液晶化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
重合性棒状液晶化合物は、重合性基を棒状液晶化合物に導入することで得られる。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、及びアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。重合性基は種々の方法で、棒状液晶化合物の分子中に導入できる。重合性棒状液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個、特に好ましくは1〜2個である。重合性棒状液晶化合物の例は、後述する前記一般式(12)で表される液晶化合物のほか、Makromol. Chem., 190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、及び特開2001−328973号公報などに記載の化合物が含まれる。2種類以上の重合性棒状液晶化合物を併用してもよい。2種類以上の重合性棒状液晶化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
一般式(12)
本発明の液晶組成物は、前記一般式(12)中、P1およびP2のうち少なくとも一方が下記一般式群(7)のいずれかで表される重合性基であることが好ましい。
一般式群(7)
本発明の液晶組成物は、前記一般式(12)中、L1〜L4はそれぞれ独立にO、S、COO、OCO、OCOOであることが好ましく、O、COOまたはOCOであることがより好ましい。
さらにその中でも、L1およびL4はそれぞれ独立にOであることが特に好ましい。一方、L2およびL3はそれぞれ独立にCOOまたはOCOであることが特に好ましい。
M1〜M3はそれぞれ独立にフェニレン基またはシクロヘキシレン基であることが好ましく、フェニレン基であることがより好ましい。
M1〜M3が示す各環上の水素原子を置換していてもよいハロゲン原子は、フッ素原子または塩素原子であることがより好ましい。
M1〜M3が示す各環上の水素原子を置換していてもよい炭素数1〜8のアルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
本発明の液晶組成物は、その他の成分を添加剤として含んでいてもよい。例えば、重合性液晶化合物を用いるときは重合開始剤を含んでいてもよい。配向の均一性や塗布適性、膜強度を向上させるために、配向制御剤(その中でも水平配向剤)、ムラ防止剤、ハジキ防止剤、及び重合性モノマー等の種々の添加剤から選ばれる少なくとも1種を含有していてもよい。また、前記液晶組成物中には、必要に応じて、さらに重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等を、光学的性能を低下させない範囲で添加することができる。本発明の液晶組成物は、各成分を2種以上含んでいてもよい。
本発明の液晶組成物は、重合性液晶組成物であるのが好ましく、そのためには、重合開始剤を含有しているのが好ましい。本発明では、紫外線照射により硬化反応を進行させるので、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であるのが好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
前記液晶組成物中に、安定的に又は迅速にコレステリック液晶相となるのに寄与する配向制御剤を添加してもよい。配向制御剤の例には、含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマー、及び下記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物が含まれる。これらから選択される2種以上を含有していてもよい。これらの化合物は、層の空気界面において、液晶化合物の分子のチルト角を低減若しくは実質的に水平配向させることができる。尚、本明細書で「水平配向」とは、液晶分子長軸と膜面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が20度未満の配向を意味するものとする。液晶化合物が空気界面付近で水平配向する場合、配向欠陥が生じ難いため、可視光領域での透明性が高くなり、また赤外領域での反射率が増大する。一方、液晶化合物の分子が大きなチルト角で配向すると、コレステリック液晶相の螺旋軸が膜面法線からずれるため、反射率が低下したり、フィンガープリントパターンが発生し、ヘイズの増大や回折性を示すため好ましくない。
配向制御剤として利用可能な前記含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマーの例は、特開2007−272185号公報の[0018]〜[0043]等に記載がある。
なお、本発明では、配向制御剤として、前記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物の一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明の液晶組成物の溶媒としては特に制限は無く、公知の溶媒を用いることができ、その中でも有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
本発明の光学フィルム(以下、本発明のフィルムとも言う)は、本発明の光学活性化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする。
本発明の光学フィルムは、本発明の液晶組成物を硬化させてなることが好ましい。また、本発明のフィルムは、本発明の液晶組成物の液晶組成物からなるコレステリック液晶相を固定してなることが好ましい。
本発明の液晶組成物を塗布等の方法により製膜することによりフィルムを形成することができる。液晶組成物を配向膜の上に塗布し、液晶層を形成することにより光学異方性素子を作製することもできる。本発明のフィルムは、光学異方性を示すことが好ましい。
(1) 基板等の表面に、硬化性の液晶組成物を塗布して、コレステリック液晶相の状態にすること、
(2) 前記硬化性の液晶組成物に紫外線を照射して硬化反応を進行させ、コレステリック液晶相を固定した層を形成すること、
を少なくとも含む製造方法である。
可視光に対する透過性が高いポリマーフィルムとしては、液晶表示装置等の表示装置の部材として用いられる種々の光学フィルム用のポリマーフィルムが挙げられる。前記基板としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム;ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム;ポリイミドフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、などが挙げられる。
紫外線の照射エネルギー量については特に制限はないが、一般的には、100mJ/cm2〜800mJ/cm2程度が好ましい。また、前記塗膜に紫外線を照射する時間については特に制限はないが、硬化膜の充分な強度及び生産性の双方の観点から決定されるであろう。
本発明のフィルムは、本発明の液晶組成物のコレステリック液晶相を固定してなる層であることも好ましく、その場合は選択反射特性を示すことがより好ましく、赤外線波長領域に選択反射特性を示すことが特に好ましい。コレステリック液晶相を固定してなる光反射層については、特開2011−107178号公報および特開2011−018037号公報に記載の方法に詳細が記載されており、本発明でも好ましく用いることができる。
ここで、液晶相を「固定化した」状態は、コレステリック液晶相となっている液晶化合物の配向が保持された状態が最も典型的、且つ好ましい態様である。それだけには限定されず、具体的には、通常0℃〜50℃、より過酷な条件下では−30℃〜70℃の温度範囲において、該層に流動性が無く、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を意味するものとする。本発明では、紫外線照射によって進行する硬化反応により、コレステリック液晶相の配向状態を固定する。
なお、本発明においては、コレステリック液晶相の光学的性質が層中において保持されていれば十分であり、最終的に本発明のフィルム中の液晶組成物がもはや液晶性を示す必要はない。例えば、液晶組成物が、硬化反応により高分子量化して、もはや液晶性を失っていてもよい。
本発明のフィルムは、本発明の液晶組成物のコレステリック液晶相を固定してなる層を複数積層してなる積層体とすることも好ましい。例えば、右ねじりの光学活性化合物を含む右円偏光を反射できる層と、左ねじりの光学活性化合物を含む左円偏光を反射できる層を積層することにより、光反射性を高めたフィルムとすることができる。
本発明のフィルムは、波長700nm以上(より好ましくは800〜1300nm)に反射ピークのある選択反射特性を示すフィルムとすることができる。この様な特性のフィルムは、住宅、オフィスビル等の建造物、又は自動車等の車両の窓に、日射の遮熱用の部材として貼付される。又は、本発明の赤外光反射板は、日射の遮熱用の部材そのもの(たとえば、遮熱用ガラス、遮熱用フィルム)として、その用途に供することができる。加えて波長700nm以下に反射ピークのある選択反射特性を示すフィルムを作製することも可能である。その場合、液晶ディスプレイ用のカラーフィルター等の用途に供することができる。
本発明の液晶組成物を重合させて高分子として用いてもよい。
また、本発明の液晶組成物を、本発明の液晶組成物からなることを特徴とするコレステリック液晶に用いてもよい。
前記高分子や、前記コレステリック液晶の用途としては、特表2009−533360号公報に記載のものに用いることができる。
(例示化合物(1)の調製)
下記スキームに従い、例示化合物(1)を調製した。
中間体1(1.0g、3.8mmol)、4−ブトキシシンナミルクロリド(1.8g、8.3mmol)をTHF20mLに溶解させ、氷冷下トリエチルアミン(1.7mL、12.5mmol)を滴下し、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(以下、DMAPとも言う)を触媒量加え、氷冷下で1時間、室温で4時間反応させた。その後、酢酸エチルを加え、希塩酸、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒留去後カラム精製を行うことで、例示化合物(1)を2.0g、収率80%で得た。
1H−NMR(DMSO,300MHz):
0.80〜1.00(m,9H)、1.30〜1.75(m,12H)、2.65(t,2H)、4.05(t,4H)、6.22(s,2H)、6.62(d,2H)、6.95(d,4H)、7.30〜7.45(m,4H)、7.70〜7.90(m,6H)
例示化合物(1)1質量部をネマチック液晶組成物(Demus−5、メルク社製)99質量部と混合し、ポリイミド配向膜で1軸処理を施した楔形セル(ガラス厚み1.1mm、青色板)に注入した。ここで偏光顕微鏡を用いて室温でのらせんピッチを測定し、ヘリカルツイスティングパワー(HTP)を求めたところ、8.7μm-1であった。
得られた結果を下記表1に記載した。
(例示化合物(2)の調製)
下記スキームに従い、例示化合物(2)を調製した。
中間体2(0.84g、3.8mmol)、4−ブトキシシンナミルクロリド(1.8g、8.3mmol)をTHF20mLに溶解させ、氷冷下トリエチルアミン(1.7mL、12.5mmol)を滴下し、DMAPを触媒量加え、氷冷下で1時間、室温で4時間反応させた。その後、酢酸エチルを加え、希塩酸、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒留去後カラム精製を行うことで、例示化合物(2)を1.9g、収率80%で得た。
1H−NMR(DMSO,300MHz):
0.80〜1.00(m,6H)、1.30〜1.75(m,8H)、2.70(s,3H)、4.05(t,4H)、6.22(s,2H)、6.62(d,2H)、6.95(d,4H)、7.30〜7.45(m,4H)、7.70〜7.90(m,6H)
例示化合物(2)1質量部をネマチック液晶組成物(Demus−5、メルク社製)99質量部と混合し、ポリイミド配向膜で1軸処理を施した楔形セル(ガラス厚み1.1mm、青色板)に注入した。ここで偏光顕微鏡を用いて室温でのらせんピッチを測定し、ヘリカルツイスティングパワー(HTP)を求めたところ、7.7μm-1であった。
得られた結果を下記表1に記載した。
下記スキームに従い、例示化合物(3)を調製した。
中間体3(0.9g、3.8mmol)、4−メトキシ−4’−クロロカルボニル−trans−スチルベン(2.3g、8.3mmol)をTHF20mLに溶解させ、氷冷下トリエチルアミン(1.7mL、12.5mmol)を滴下し、DMAPを触媒量加え、氷冷下で1時間、室温で4時間反応させた。その後、酢酸エチルを加え、希塩酸、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒留去後カラム精製を行うことで、例示化合物(3)を1.5g、収率55%で得た。
1H−NMR(DMSO,300MHz):
3.80(s,3H)、4.05(s,6H)、6.31(s,2H)、7.30〜7.90(m,24H)
例示化合物(3)1質量部をネマチック液晶組成物(Demus−5、メルク社製)99質量部と混合し、ポリイミド配向膜で1軸処理を施した楔形セル(ガラス厚み1.1mm、青色板)に注入した。ここで偏光顕微鏡を用いて室温でのらせんピッチを測定し、ヘリカルツイスティングパワー(HTP)を求めたところ、8.5μm-1であった。
得られた結果を下記表1に記載した。
下記スキームに従い、例示化合物(4)を調製した。
テトラアセチル中間体(6.0g、11.9mmol)をエタノール(60mL)に加え、氷冷下アセチルクロリド(7.2mL、95.2mmol)滴下し、室温で4時間反応させた。溶媒流去後、酢酸エチルを加え冷却し、生じた沈殿をろ別し、冷酢酸エチルで洗浄し、その後風乾させることでテトラオール中間体を3.8g、収率95%で得た。
テトラオール中間体(1.0g、3.0mmol)、4−ブトキシシンナミルクロリド(3.5g、15mmol)をTHF20mLに溶解させ、氷冷下トリエチルアミン(3.1mL、23.0mmol)を滴下し、DMAPを触媒量加え、氷冷下で1時間、室温で4時間反応させた。その後、酢酸エチルを加え、希塩酸、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒留去後カラム精製を行うことで、例示化合物(4)を2.1g、収率62%で得た。
1H−NMR(CDCl3,300MHz):
0.80〜1.00(m,12H)、1.30〜1.80(m,16H)、4.20(m,8H)、5.82(s、2H)、6.12(s,2H)、6.45(d,4H)、6.80(d、4H)、7.30〜7.90(m,20H)
例示化合物(4)0.5質量部をネマチック液晶組成物(Demus−5、,ルク社製)99.5質量部と混合し、ポリイミド配向膜で1軸処理を施した楔形セル(ガラス厚み1.1mm、青色板)に注入した。ここで偏光顕微鏡を用いて室温でのらせんピッチを測定し、ヘリカルツイスティングパワー(HTP)を求めたところ、14.3μm-1であった。
得られた結果を下記表1に記載した。
実施例1〜4で調製した例示化合物(1)〜(4)について、それぞれ20質量%、10質量%のMEK溶液になるように調製した。これらの調液サンプルをそれぞれ密栓可能な容器に適量加え密栓し、さらに加熱し完全に溶解させた後、室温にて1日静置した。
静置後のサンプルにおいて、以下の基準で評価した。
<評価基準>
+++評価:20質量%MEK溶液で結晶の析出が生じなかったもの
++評価:20質量%MEK溶液で結晶の析出が生じたが、10質量%MEK溶液では結晶の析出が生じなかったもの
+評価:10質量%MEK溶液で結晶の析出が生じたもの
−評価:評価せず
得られた結果を下記表1に示した。
(光照射前後のHTP変化分評価)
特開2010−70482号公報に記載の下記構造の比較化合物(1)1質量部をネマチック液晶組成物(Demus−5、メルク社製)99質量部と混合し、ポリイミド配向膜で1軸処理を施した楔形セル(ガラス厚み1.1mm、青色板)に注入した。高圧水銀ランプから300mW/cm3の照射強度で3分間紫外線を照射し、その前後で偏光顕微鏡を用いて室温でのらせんピッチを実施例1〜4と同様にして測定した。
HTPは8.0μm-1であり、光照射前後でHTPに変化は無かった。
得られた比較例1の光照射前後のHTP変化分評価の結果を下記表1に示した。
(MEK溶解性試験)
下記構造の比較化合物2を用いた以外は実施例1〜4と同様にして、MEK溶解性試験を行った。
得られた比較例2のMEK溶解性試験の結果を下記表1に示した。
また、上記表1より、MEK溶解性試験において、本発明の例示化合物1〜4はすべて++以上の評価であり、溶媒への溶解性が良好であることがわかった。一方、酒石酸誘導体ではないイソソルビド系の比較化合物2は+評価レベルであり、溶媒への溶解性の観点からはさらなる改善が求められるものであった。
[実施例11:選択反射特性を示す積層フィルムの形成、ヘイズ測定]
例示化合物(4)、(5)と重合性液晶化合物(M−1)を用いて、下記の組成の液晶組成物塗布液AおよびBを調製した。
・組成物塗布液A
例示化合物(4) 13質量部
重合性液晶化合物(M−1) 100質量部
空気界面配向剤(1) 0.04質量部
重合開始剤IRGACURE819(BASF社製) 3質量部
溶媒 MEK 800質量部
・組成物塗布液B
例示化合物(5) 13質量部
重合性液晶化合物(M−1) 100質量部
空気界面配向剤(1) 0.04質量部
重合開始剤IRGACURE819(BASF社製) 3質量部
溶媒 MEK 800質量部
得られた結果を下記表2に示した。
比較化合物(2)、(3)と重合性液晶化合物(M−1)を用いて、下記の組成の液晶組成物塗布液CおよびDを調製した。
・組成物塗布液C
比較化合物(2) 4.7質量部
重合性液晶化合物(M−1) 100質量部
空気界面配向剤(1) 0.04質量部
重合開始剤IRGACURE819(BASF社製) 3質量部
溶媒 MEK 800質量部
・組成物塗布液D
比較化合物(3) 5.3質量部
重合性液晶化合物(M−1) 100質量部
空気界面配向剤(1) 0.04質量部
重合開始剤IRGACURE819(BASF社製) 3質量部
溶媒 MEK 800質量部
得られた結果を下記表2に示した。
Claims (7)
- 下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表されることを特徴とする光学活性化合物。
- 前記一般式(4)中、R41およびR42で表される光反応性部位を有する基がそれぞれ独立に下記一般式(5)または(6)で表される基であることを特徴とする請求項1に記載の光学活性化合物(但し、前記R41およびR42が下記一般式(6)で表される場合には、前記一般式(4)においてL41およびL42はCOを表す)。
- 前記一般式(4)中、R41およびR42で表される光反応性部位を有する基がそれぞれ独立に前記一般式(6)で表される基であり、L41およびL42がCOを表すことを特徴とする請求項2に記載の光学活性化合物。
- 前記一般式(5)および(6)中、R51およびR61がそれぞれ独立にC1〜C8のアルキルオキシ基、アルケニルオキシ基または総炭素数3〜15の(メタ)アクリロイルオキシアルキルオキシ基であることを特徴とする請求項2または3に記載の光学活性化合物。
- 前記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学活性化合物。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学活性化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする液晶組成物。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学活性化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする光学フィルム。
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