JP5813083B2 - 貯蔵容器 - Google Patents

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本発明は、浮上式屋根、浮上式蓋などの浮上式閉塞体を備え、流体を貯蔵する容器に関する。
液体貯蔵タンク、ガス貯蔵タンク等の円筒形貯蔵容器、多角形貯蔵容器において、浮上式屋根、浮上式蓋(以下、浮上式閉塞体と総称する)には貯蔵物の内容量増減によって高さを調整して貯蔵領域を変動できるように昇降装置が装備してある。
地震発生時には浮上式閉塞体は水平方向に振動して、貯蔵対象である液体、気体に対する気密性が保持できなくなったり、容器の外殻シェル、浮上式閉塞体が損傷したりすると、使用の再開をするには大規模な工事が必要となる。
従来、地震動に対して、特許文献1に開示されるように、浮上式閉塞体の全周に粘弾性体としての例えばゴムを設置して、振動エネルギを吸収する方法や、特許文献2に開示されるようにレールの変形に追従できるよう粘弾性体とばねを直列に繋いだローラにより、昇降を妨げずに振動エネルギを吸収する方法が知られている。
特開2006-69627号公報 特開平7-228447号公報
特許文献1,2に開示される従来の技術により、地震動に対して振動エネルギを吸収することができるが、本発明は揺れの大きな地震動に対して有効に振動エネルギを吸収することのできる制振機構を備える浮上式の閉塞体を備える貯蔵容器を提供することを目的とする。
かかる目的のもと、上下に昇降可能な閉塞体により貯蔵領域が変動する本発明の貯蔵容器は、閉塞体が、容器の壁面を押圧しながら走行する第1車輪と、粘弾性体と弾性体が並列に配列され、壁面に作用する制振機構と、を各々が備える複数のガイドローラが、容器の周方向に間隔を空けて設けられることを特徴とする。
本発明によると、地震時に閉塞体が水平方向に大きく変位し、ガイドローラと容器との間に隙間が生じたとしても、粘弾性体と並列に弾性体を設けることにより、制振機構を容器との接触を確保しやすく、揺れ戻しの際に減衰を効果的に得ることができる。
本発明の貯蔵容器において、ガイドローラは、各々、上下に間隔を空けて配置される一対の第1車輪を備える場合に、制振機構は、一対の第1車輪の間に配置される。一対の第1車輪に制振機構が挟まれることで、制振機構に伸縮が生じても、一対の第1車輪に伸縮に伴う荷重の変動を均等に分配できるので、一方の車輪だけが過大な負荷を受けるのを防ぐことができる。
また、本発明の貯蔵容器において、制振機構は、粘弾性体と弾性体に支持され、壁面に作用する第2車輪を備えることが好ましい。第2車輪が壁面を走行することで、ガイドローラの円滑な走行を確保することができる。
本発明によれば、地震時に閉塞体が水平方向に大きく変位し、容器との間に隙間が生じたとしても、粘弾性体と並列に弾性体を設けることにより、制振機構を容器との接触を確保し、揺れ戻しの際に減衰を効果的に働かせることができる。
本実施の形態におけるガスホルダを示す正面図である。 図1のガスホルダの縦断面の概略構造を示す図である。 図1のガスホルダの横断面の概略構造を示す図である。 図1のガスホルダに用いられるガイドローラを示し、(a)は北側を向く領域Aに適用されるガイドローラであり、(b)は南側を向く領域Bに適用されるガイドローラである。 図1のガスホルダに地震動が生じたときの挙動を示す図である。 本実施の形態におけるガスホルダの効果を示すグラフである。 本実施形態の制振装置を備えるガイドローラの配置例を示す図である。
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
本実施形態に係るガスホルダ1は、図1〜図3に示すように、円筒形状の外殻構造を有する筒状容器2と、筒状容器2の内部を上下に区画するピストン3とを備えるとともに、ピストン3の下方に形成された貯蔵空間4に対して、ガス出入口管5から供給されたガスを貯蔵し、さらに、ガス出入口管5を通じて貯留したガスを払い出しできるようになっている。
筒状容器2は、その側壁部7が、ガスホルダ1の設置対象位置を囲むように所定間隔で立設された基柱8と、基柱8同士の間に架設されるとともに、その板面を筒状容器2の内部に向けて配置された側板9とにより形成されている。
ピストン3は、平面視した場合に円盤状に形成されるとともに、側壁部7の内壁面7aに沿って上下に昇降可能とされており、その昇降位置(上下位置)が貯蔵空間4へのガスの流出入に応じて変化するようになっている。また、ピストン3の周囲には、ピストン3と側壁部7の内壁面7aとの間を封止して貯蔵空間4からのガスの漏洩を防ぐとともに、ピストン3が上下に円滑に摺動できるようにピストン3を案内するシール部10が設けられている。
シール部10は、図3に示すように、ガイドローラ20を備えており、このガイドローラ20は側壁部7の内壁面7aに対して当接するとともに、側壁部7の内壁面7aに沿って走行し、これによりピストン3を上下に案内する役割を果たす。図3に示すように、ガスホルダ1は、ピストン3の周方向に均等な間隔をあけて、複数(本実施形態では24個)のガイドローラ20を備えている。また、ガスホルダ1は、向いている方位が南側と北側で異なるガイドローラ20を用いている。具体的には、図3において、北側を向いている領域Aには固定式と称されるガイドローラ20を、南側を向いている領域Bにはばね式と称されるガイドローラ20を用いる。以下、領域Aに用いられるのをガイドローラ20Aと、また、領域Bに用いられるのをガイドローラ20Bという。
本実施形態が、向いている方位により異なるガイドローラ20A,20Bを用いるのは、南側を向いている方が北側を向いている方より日射を強く受けるからである。つまり、日射を強く受ける南側は筒状容器2の熱膨張による変形が大きい。したがって、南側を向いている領域Bには、この筒状容器2の伸縮に追従できるように、弾性体であるばねによりローラを支持するガイドローラ20Bを用いる。一方、北側を向いている領域Aは、熱膨張による変形が、ガイドローラ20Aの走行に支障のないレベルであるから、コストのかかるばね式ではなく、ローラを単純に支持する固定式のガイドローラ20Aを用いる。以下、固定式のガイドローラ20A、ばね式のガイドローラ20Bの順に、その構造を説明する。
図4(a)に示すように、固定式のガイドローラ20Aは、上側に配置される上ローラ21Aと、下側に配置される下ローラ22Aの一対を備えている。上ローラ21Aと下ローラ22Aは配置が異なるのを除くと構成が同じであるから、上ローラ21Aを説明するのにとどめ、下ローラ22Aには上ローラ21Aと同じ符号を図4に付け、その説明を省略する。
上ローラ21Aは、シール部10の要素であるトラス構造の支持体11にシム12を介して固定される箱型のブラケット23と、ブラケット23に支持される車軸24と、ブラケット23の内部において車軸24に回転可能に支持される車輪(第1車輪)25と、を備えている。車輪25は、側壁部7の内壁面7aに対して当接するとともに、側壁部7の内壁面7aに沿って回転する。
ガイドローラ20Aは、上ローラ21Aと下ローラ22Aの間に、制振機構40を備える。制振機構40は、粘弾性体41と弾性体42を制振要素として備えるのに加えて、粘弾性体41と弾性体42に支持されるローラ43を備える。
粘弾性体41と弾性体42は、並列に配置され、各々一方端が支持体11に固定されるとともに、他方端がローラ43のブラケット44に固定されている。
ローラ43は、粘弾性体41と弾性体42の他方端が固定される箱型のブラケット44と、ブラケット44に支持される車軸45と、ブラケット23の内部において車軸45に回転可能に支持される車輪(第2車輪)46と、を備えている。車輪46は、側壁部7の内壁面7aに対して当接するとともに、側壁部7の内壁面7aに沿って回転し、制振機構40が、上ローラ21Aと下ローラ22Aの昇降に追従して昇降するのを担保する。
次に、図4(b)に示すように、ばね式のガイドローラ20Bは、上側に配置される上ローラ21Bと、下側に配置される下ローラ22Bの一対を備えている。上ローラ21Bと下ローラ22Bは配置が異なるのを除くと構成が同じであることは、ガイドローラ20Aと同様である。
上ローラ21Bは、支持体11に固定される支持ブロック31と、支持ブロック31に支持される揺動軸32と、揺動軸32に一端側が回転可能に支持されるブラケット33と、ブラケット33に支持される車軸34と、ブラケット33の内部において車軸34に回転可能に支持される車輪(第1車輪)35と、ブラケット33の他端側にその基端側が支持され、支持体11に先端が押し付けられるばね36と、を備えている。
上ローラ21Bは、ブラケット33が、一端側が揺動軸32で支持されるとともに、他端側がばね36により支持体11に対して接近又は離間する揺動運動が可能とされている。したがって、上ローラ21Bと下ローラ22Bを備えるばね式のガイドローラ20Bを、南側を向く領域Bに設けると、強い日射により筒状容器2が伸縮したとしても、上ローラ21Bと下ローラ22Bが、この伸縮に追従してばね36を設けた他端側が変位するので、ガイドローラ20Bの円滑な走行を確保することができる。
ガイドローラ20Bも、上ローラ21Bと下ローラ22Bの間に、上述したのと同じ制振機構40を備えている。
本実施形態における制振機構40について詳しく説明する。
制振機構40において、粘弾性体41は地震による振動を受けて筒状容器2が変形する際に、その変形にガイドローラ20を追従させることで、ピストン3の昇降を妨げずに振動エネルギを吸収する目的で設けられている。
しかし、粘弾性体41を設けたとしても、物理的に粘弾性体41が筒状容器2の内壁面7aと直接又は間接を問わずに接触しないと減衰効果が発揮されない。そこで、弾性体42を設けることで、粘弾性体41の内壁面7aへの接触を担保するが、本実施形態は弾性体42を粘弾性体41と並列に配列することで、粘弾性体41の筒状容器2の変形に対する追従性を敏感にする。このことを、図5をも参照して説明する。
いま、図5に示すように、ガスホルダ1に水平方向の地震動が生じているものとする。
図5(a)の矢印に示すように、左向きに大きく揺れたものとすると、図に向かって右側のガイドローラ20Rは、ピストン3が左側に変位するのに追従して内壁面7aから離れる。これに伴って、制振機構40は、粘弾性体41及び弾性体42ともに伸びる。
ピストン3が左側に最大の変位をした後は、右側に向けて揺れ戻しがあり、ピストン3が図5(b)に示す中立の位置に戻ると、ガイドローラ20R及びガイドローラ20Lの両者の制振機構40(粘弾性体41)は縮んで前述の伸びが解消される。
ピストン3は、中立の位置を通過して、今度は右側に変位するので、図5(c)に示すように、ガイドローラ20Lが内壁面7aから離れ、制振機構40は、粘弾性体41及び弾性体42ともに伸びる。
地震動が生じている間は、以上の左向き、右向きの揺れが継続する。
以上の揺れの経過において、制振機構40の粘弾性体41は、縮む際に地震動によるエネルギを吸収し、ピストン3の応答変位を小さくすることができる。したがって、筒状容器2の変形、換言すればピストン3の変位に対して、縮んでいる粘弾性体41を迅速に追従して伸ばしてやることが、揺れ戻しの際に減衰が効果的に働く上で好ましい。例えば、図5(b)から図5(c)に揺れ戻しされる際に、左側のガイドローラ20Lの制振機構40がピストン3の右側に向けた変位に追従して十分に伸びると、次の左側に向けた揺れ戻しの際のエネルギ吸収の効率がよい。
この際、本実施形態の弾性体42が粘弾性体41を伸ばす向きの力(伸張力)を備えていれば、粘弾性体41が伸びるのをアシストすることができるので、揺れ戻しの際のエネルギ吸収を効果的に行なうことができる。
以上に対して、仮に、粘弾性体41と弾性体42が直列に繋がっているとすると、弾性体42の伸張力は、粘弾性体41が伸びるのをアシストするのではなく、逆に、粘弾性体41を縮ませる向きに働いてしまう。
粘弾性体41と弾性体42を並列に配列した本実施形態の制振機構40を用いた場合と、粘弾性体と弾性体を直列に配列した従来の制振機構を用いた場合との応答加速度を対比して示すと、図6に示すとおりである。
制振機構40が以上の作用・効果を奏するために、弾性体42は、粘弾性体41の抵抗力を上回る弾性力(ばね力)を備えることが、ピストンの応答速度に追従するために必要である。これを前提として、粘弾性体41としては、オイルダンパに代表されるパッシブ型のダンパを用いることができる。この中には、軟鋼に比べて強度が低く、延性が極めて高い低降伏点鋼材を主要素とする制振ダンパ、あるいは、硬質ゴムを一対の鋼板で挟み込んだ形態の制震ダンパなどが含まれる。弾性体42としては、典型的にはコイルばねを用いるが、これに限定されず、他のばね、例えば板ばねを用いることもできるし、ゴムを弾性体42に用いることもできる。
以上説明したように、本実施形態のガスホルダ1によると、地震時にピストン3が水平方向に大きく変位し、筒状容器2との間に隙間が生じたとしても、粘弾性体41と並列に弾性体42を設けることにより、制振機構40を筒状容器2との接触を確保し、揺れ戻しの際に減衰を効果的に働かせることができる。
また、制振機構40は、ローラ43を備えているので、ピストン3の昇降を妨げることがない。
さらに、制振機構40が、上下一対のローラ(ローラ21Aと下ローラ22A、上ローラ21Bと下ローラ22B)の間に挟まれて設けられているので、制振機構40に伸縮が生じても、一対のローラに伸縮に伴う荷重の変動を均等に分配できるので、一方のローラだけが過大な負荷を受けるのを防ぐことができる。
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
はじめに、制振機構40を配置する箇所であるが、地地震時に効果を発揮させる必要があるため、どの方向に地震動が発生しても、制振機構40によるエネルギ吸収が行われるよう、図7(a)に示すように、ピストン3の周囲に配置されている全てのガイドローラ20に配置することができる。なお、図7において、制振機構40を備えるガイドローラ20を黒塗りしている。
本発明は、上記の他に、制振効果が必要量発揮できる場合は、例えば1か所おき(図7(b))や、半周分(図7(c))でも良い。また、地震動の卓越方向が事前に想定できている場合には、量矢印で示す卓越方向の1/4周分を対にして配置(図7(d))しても良い。
また、以上ではガスホルダ1のピストン3について説明したが、本発明の対象はこれに限らない。例えば原油の貯蔵用タンクとして用いられている浮屋根式タンクの浮屋根に適用することができるなど、容器の中に貯蔵される気体、液体などの貯蔵領域を区画するとともに、貯留物の量に応じて昇降する部材としての閉塞体に広く適用することができる。また、貯蔵容器として平面形状が筒状の例を示したが、多角形の平面形状を有する容器に本発明を適用することもできる。
また、以上説明したガスホルダ1は、向いている方位により異なるガイドローラ20A,20Bを用い、さらに、ガイドローラ20A,20Bは、各々の上ローラ21A,下ローラ22A,上ローラ21B,下ローラ22Bを備えているが、本発明はこれに限定されない。周方向に配置される全てのガイドローラが同じであっても良く、また、上下の一方のガイドローラ20だけを備えるものでも良い。
1 ガスホルダ
2 筒状容器
3 ピストン
4 貯蔵空間
5 ガス出入口管
7 側壁部
7a 内壁面
8 基柱
9 側板
10 シール部
11 支持体
12 シム
20,20A,20B,20L,20R ガイドローラ
21A,22A 上ローラ
21B,22B 下ローラ
23,33 ブラケット
24,34 車軸
25,35 車輪
31 支持ブロック
32 揺動軸
36 ばね
40 制振装置
41 粘弾性体
42 弾性体
43 ローラ
44 ブラケット
45 車軸
46 車輪

Claims (2)

  1. 上下に昇降可能な閉塞体により貯蔵領域を変動させる貯蔵容器であって、
    前記閉塞体は、
    前記容器の壁面を押圧しながら走行する第1車輪と、
    粘弾性体と弾性体が並列に配列され、前記壁面に作用する制振機構と、を各々が備える複数のガイドローラが、前記容器の周方向に間隔を空けて設けられ
    前記ガイドローラは、各々、
    上下に間隔を空けて配置される一対の前記第1車輪を備え、
    前記制振機構は、一対の前記第1車輪の間に配置される、
    とを特徴とする流体の貯蔵容器。
  2. 前記制振機構は、
    前記粘弾性体と前記弾性体に支持され、前記壁面に作用する第2車輪を備える、
    請求項1に記載の貯蔵容器。
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