JP5811831B2 - 磁性酸化物焼結体及びアンテナ、並びに無線通信機器 - Google Patents

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Description

本発明は、GHz帯で使用するアンテナに適した磁性酸化物焼結体、及びこの磁性酸化物焼結体を用いたアンテナ、並びにこのアンテナを用いた無線通信機器に関する。
近年、携帯電話機や携帯情報端末等の無線通信機器で使用される無線信号周波数の高域化が進行している。例えば、第一世代の携帯電話機では、使用周波数が800MHz帯であったのに対し、2001年からサービスが開始された第三世代の携帯電話機では、使用周波数が2GHz帯となっており、GPSやBluetooth(登録商標)、無線LAN用途を含めGHz帯域で使用できるアンテナが求められている。また、無線通信機器の多機能化に伴い、複数の無線方式に対応したマルチバンド・モード化が進展してきており、このような無線通信機器に用いられるアンテナに対しては、広い周波数帯域において使用可能であることも要求されている。さらに、近時、無線通信機器の小型化に伴って、アンテナ自体の更なる小型化も喫緊の課題となっている。このように、近年の無線通信機器に用いられるアンテナには、高周波数における広帯域化と小型化の両立が熱望されている。
かかる技術に関し、例えば、特許文献1には、放射電極と接地電極の形状を適宜選択することにより、小型低背化、高利得、及び広帯域特性を得ることを目的としたマイクロストリップ構造のチップ型アンテナ素子が記載されている。また、特許文献2には、Y型フェライトを主相として含有する六方晶フェライト、及び、それを用いたアンテナが記載されている。さらに、特許文献3には、Y型、Z型、又はM型のフェライト化合物からなる酸化物系磁性材料で構成された絶縁体層を備えるアンテナ装置が記載されている。
特許第3625191号公報 特開2009−170704号公報 特開2005−278067号公報
ここで、アンテナの小型化に関しては、電磁波の波長短縮率が伝送媒体中の位相速度の低下率に等しく、その位相速度は、理論的に、媒体の比透磁率と比誘電率 の積の平方根に反比例することから、一般に、アンテナの基材やマトリックスとして、透磁率及び/又は誘電率が真空中のそれらに比してより大きな材料を用いることにより、そのアンテナ中を伝播する電磁波の波長が短縮され、その小型化が図られ得る。具体的には、磁性材料内を通過する電磁波(電波)の波長λは、λ∝1/√(μ´×ε´)で表される(波長短縮効果)。ここで、因子μ´は、磁性材料の複素透磁率μの実数部を示し、因子ε´は、磁性材料の複素誘電率εの実数部を示す。なお、ここでの「波長短縮率」とは、「伝送媒体を伝播する電磁波の波長/真空中の電磁波の波長」で表される値であり、この値が小さいほど、波長短縮効果が高いことを示す。
また、アンテナの使用可能な周波数帯域に関して、磁性材料を用いたアンテナは、磁気損失tanδμと誘電損失tanδεが共に放射効率に影響を及ぼすため、所定の放射効率以上となる周波数帯域(帯域幅)が狭められて使用可能な周波数帯域が制限されることのないよう、磁気損失tanδμと誘電損失tanδεを共に十分に小さい値としなければならない。
特許文献1には、比誘電率を高めることによるアンテナの小型化に関する記載がある。しかし、特許文献1記載のアンテナにおいて比誘電率が大きい基材を用いた場合、帯域幅が狭められてしまい、その結果、使用可能な周波数帯域が不都合な程度に制限されてしまう。
また、特許文献2に記載されたY型六方晶フェライトのような磁性材料を用いると、GHz以上の高周波帯域における磁気損失tanδμが過大となってしまい、この場合にも、使用可能な周波数帯域が不都合な程度に制限されてしまう。さらに、誘電損失tanδεに関しては記載されていない。
またさらに、特許文献3には、上述の如く、アンテナの材料として種々の組成のフェライトが開示されているものの、それらの詳細な材料物性は不明であり、一般的には、かかる材料を用いたアンテナも、GHz以上の高周波帯域における磁気損失tanδε、及び誘電損失tanδεが不都合に大きいものと考えられる。このように、GHz帯における磁気損失tanδμと誘電損失tanδεの両方について、十分には検討されていない。以上のように、従来技術においては、高周波数におけるアンテナの広帯域化と小型化とを同時に実現することが出来ないという課題がある。
上記課題を解決するために、本発明者らは、特定の結晶構造を有するフェライトの組成、格子定数、及び物性に着目して鋭意検討を重ねた結果、上記課題に対する有効な解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明による磁性酸化物焼結体は、下記組成式(1)
Ba(Ti0.5Mn0.5Fe12−x19・・・(1)
(式中のxは、3.5≦x≦7.0)で表されるM型六方晶フェライトを主相として95%以上含む磁性酸化物焼結体であり、該磁性酸化物焼結体の磁化容易軸と直交するa軸の格子定数(Å)が、下記関係式(2)
5.92≦a≦0.0125×x+5.89・・・(2)
を満たすことを特徴とする磁性酸化物焼結体とする。
本発明者らが、かかる構成を有するアンテナ用磁性酸化物焼結体の特性を測定したところ、その磁性酸化物焼結体の2GHzにおける磁気損失tanδμと誘電損失tanδεが共に0.01以下と十分小さい値を取るのみならず、前記アンテナ用磁性酸化物焼結体を用いて作製したアンテナは、従来のものに比して、2GHzにおいて有効な帯域幅及び放射効率に優れることが確認された。このような有利な効果が奏される作用機構の詳細は、未だ明らかではないものの、例えば、以下のとおり推察される。但し、作用はそれらに限定されない(以下同様)。
上述した組成のフェライトを含むアンテナ用磁性酸化物焼結体においては、自然共鳴周波数が4GHz以上となるM型六方晶フェライトを主相として95%以上含むため、自然共鳴周波数未満の周波数における磁気損失tanδμは十分に抑えられることから、2GHzにおける磁気損失tanδμが0.01以下になったものと推察される。一方、主相が95%未満であると、M型六方晶フェライトよりも磁気損失tanδμの大きいY型、Z型等の他の六方晶フェライトやFe等の異相の寄与が大きくなることから、磁気損失tanδμは0.01よりも大きくなったものと推察される。さらに上述した格子定数のフェライトを含むアンテナ用磁性酸化物焼結体においては、主相のM型六方晶フェライト中で、誘電損失tanδε増加の原因となるFe2+の量が減少し、一方でFe2+と比較してイオン半径が小さく、誘電損失tanδε増加に寄与しないFe3+の量が増加したことから、2GHzにおける誘電損失tanδεが0.01以下になったものと推察される。
また、本発明によるアンテナは、本発明のアンテナ用磁性酸化物焼結体を用いて有効に製造可能なものであり、その磁性酸化物焼結体を含む基体と、その基体の表面又は内部に設けられた導体と、この導体に接続されており、且つ、その導体に電気エネルギーを供給するための給電端子とを備える。
さらに、本発明による無線通信機器は、本発明のアンテナを用いて有効に得られるものであって、上述した本発明のアンテナを備えることを特徴とする。
本発明によれば、磁性酸化物焼結体の複素透磁率の実部μ´と複素誘電率の実部ε´を2GHzの周波数において共に真空中のそれらに比してより大きい値にすることができ、そのため波長短縮効果が得られることから、前記磁性酸化物焼結体を用いてGHz帯を対象とするアンテナの小型化を実現することができ、且つ、磁気損失tanδμと誘電損失tanδεを2GHzの周波数において共に0.01以下にすることができるため、前記アンテナが使用可能となる周波数帯域を十分に広く維持(すなわち広帯域化)することができる。
図1は、アンテナを構成する磁性材料の誘電損失と放射効率との関係を示す図である。 図2は、本実施形態に係る磁性酸化物焼結体の(Ti0.5Mn0.5)量と格子定数との関係を示す図である。 図3は、本実施形態に係る磁性酸化物焼結体を用いて構成されるアンテナの一例を示す概念図である。 図4は、本実施形態に係る磁性酸化物焼結体を用いたアンテナを備える携帯電話機を示す図である。 図5は、アンテナの特性を評価するためのモデルを示す概念図である。
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
[磁性酸化物焼結体]
本実施形態の磁性酸化物焼結体は、M型六方晶フェライト単相であることが好ましい。しかしながら、製造過程のばらつき等により、Y型、Z型等、他の六方晶フェライト、Fe、BaTiO、及びBaFe等の異相が磁性酸化物焼結体に生成する場合がある。したがって、本実施形態に係る磁性酸化物焼結体は、M型六方晶フェライトを主相とするが、上述したような異相を含むことも許容する。ただし、アンテナの小型化を実現しつつ、使用可能となる周波数帯域を十分に広く維持するため、M型六方晶フェライトの比率は95%以上とする。ここでM型六方晶フェライトの比率とは、本実施形態に係る磁性酸化物焼結体を構成する各相のX線回折におけるメインピーク(強度が最も強いピーク)の強度の和に対するM型フェライトのメインピ−ク強度の割合である。
磁気損失tanδμと誘電損失tanδεに関して、アンテナを構成する磁性材料の誘電損失tanδεと放射効率との関係を示した図1によると、例えば、アンテナの基体に用いられる磁性材料の2GHzにおける誘電損失tanδεが0.01から0.02、0.05と大きくなるにしたがって、所定の放射効率、例えば60%、以上となる帯域幅が狭まるため、所定の帯域幅、例えば2GHzを中心として200MHz、を所望する場合、2GHzにおける誘電損失tanδεは0.01以下でなければならない。これに関し、放射効率と磁気損失tanδμについても、同様の傾向を示す。ここで放射効率は、「電磁波へ変換されるエネルギー/アンテナへ供給される電気エネルギー」で表される。
本実施形態では、磁性酸化物焼結体としてGHz帯において磁気損失tanδμが十分に小さいM型六方晶フェライトBa(Ti0.5Mn0.5Fe12−x19を用いる。そして、前記M型六方晶フェライトの(Ti0.5Mn0.5)量xを3.5≦x≦7.0の範囲とし、且つ、磁化容易軸と直交するa軸の格子定数(Å)を5.92≦a≦0.0125×x+5.89の範囲に調整することで、2GHzにおいて低磁気損失tanδμ、且つ、低誘電損失tanδεの前記M型六方晶フェライトを主相として95%以上含ませることにより、磁性酸化物焼結体の2GHzにおける磁気損失tanδμと誘電損失tanδεを共に0.01以下にする。このようにして作製した本実施形態に係る磁性酸化物焼結体を、高周波数を対象とするアンテナの基体に用いれば、前記アンテナの小型化を実現しつつ、前記アンテナが使用可能となる周波数帯域を十分に広く維持することができる。
本実施形態の磁性酸化物焼結体として用いるM型六方晶フェライトBa(Ti0.5Mn0.5Fe12−x19のx及び磁化容易軸と直交するa軸の格子定数の範囲は、次のように決定される。xが3.0以上8.0以下の範囲でM型六方晶フェライト粉を作製し、各xのM型六方晶フェライト粉について1200℃から1400℃の範囲で焼成してM型六方晶フェライトの焼結体を得る。得られた各焼結体について、格子定数a、及び2GHzにおける誘電損失tanδεを測定する。誘電損失tanδεが0.01以下となり得るM型六方晶フェライト焼結体の組成の範囲をxの範囲とする。各xに対して誘電損失tanδεが0.01となるaをプロットすることで、各xに対して誘電損失tanδεが0.01以下となるaの範囲を決定する(図2)。この時、aが5.92Å未満の小さい値では、誘電損失tanδεが0.02となる。したがって、aの値は5.92Åを下限とする。
[アンテナ]
図3は、本実施形態に係る磁性酸化物焼結体を用いて構成されるアンテナの一例を示す概念図である。アンテナ1は、基体2の表面に導体3が設けられ、この導体3と電気的に接続される給電端子4とで構成される。導体3は、例えば、銅や銅合金を印刷、蒸着、貼り合わせ、あるいはメッキによって基体2の表面に設けられる。導体3の形状は、図3に示すものに限定されるものではなく、ミアンダ状、ヘリカル状等様々な形状を用いることができる。給電端子4は、導体3と給電線とを電気的に接続する端子であり、給電線から供給される電圧又は電流を導体3に印加する。基体2は、本実施形態に係る磁性酸化物焼結体で構成される。基体2の形状は、図3に示すような直方体が好ましいが、これに限定されるものではなく、無線通信機器に実装する際には様々な形状を用いることができる。次に、本実施形態に係る磁性酸化物焼結体の作製方法について説明する。
本実施形態に係る磁性酸化物焼結体は、例えば、次のように作製される。まず、M型六方晶フェライト粉を作製する。これは、原料となるFe、BaCO、Mn、TiO等をボールミル等の混合手段によって配合し、配合が終了した配合粉について電気炉などを用いて所定温度で所定時間仮焼する。そして、仮焼終了後の仮焼粉を振動ミルやボールミル等の粉末作製手段で粉砕して粉末とすることで、M型六方晶フェライト粉が完成する。
次に、このM型六方晶フェライトの焼結体を作製する。まず、作製したM型六方晶フェライト粉にPVAなどのバインダーを添加した後、スプレイドライヤー等によって造粒することにより造粒粉を得る。この造粒粉をプレス機により成形した後、電気炉などを用いて所定時間焼成を行い、焼結体を得る。焼成時の酸素分圧が大気中よりも低いと、2価のFeイオン量が増加し、比抵抗が減少することから、誘電損失tanδεは増加する。したがって、焼成は大気中よりも酸素分圧の高い焼成雰囲気、好ましくは酸素中で行う。
焼成温度は1200℃以下の低い温度では、十分に反応が進行せずに単相にならないため、誘電損失tanδεが0.02以上となる。一方、1400℃以上の高温で焼成を行った場合、格子定数が大きくなり、この場合も誘電損失tanδεが0.02以上となる。したがって焼成温度の範囲は1200℃以上1400℃以下とする。また、透磁率を大きくして小型化率を高める観点から、密度を高くするため、焼成温度は1400℃以下でできるだけ高い温度、好ましくは1340℃以上1400℃以下とする。
このようして作製した本実施形態の磁性酸化物焼結体は、組成式Ba(Ti0.5Mn0.5Fe12−x19で表され、3.5≦x≦7.0で、且つ、磁化容易軸と直交するa軸の格子定数(Å)が5.92≦a≦0.0125×x+5.89を満たすM型六方晶フェライト焼結体である。
[無線通信機器]
次に、無線通信機器に本実施形態に係る磁性酸化物焼結体を用いたアンテナを搭載した例を説明する。図4は、本実施形態に係る磁性酸化物焼結体を用いたアンテナを備える携帯電話機を示す図である。無線通信機器である携帯電話機10は、第1筐体10CAと第2筐体10CBとがヒンジ13で連結された折り畳み式の携帯通信機器である。第2筐体10CBの内部であって、ヒンジ13とは反対側における端部には、第1アンテナ11が配置される。第1アンテナ11は、携帯電話機10の無線通信に用いる送受信アンテナであり、携帯電話機10と基地局との間で、通話や電子メール等に係る電波の送受信に用いられる。ここで、携帯電話機10の使用周波数帯域は、2GHz帯である。
第1アンテナ11を構成する基体は、本実施形態に係る磁性酸化物焼結体で構成される。このため、第1アンテナ11を小型化できるとともに、携帯電話機10の無線通信に用いる周波数帯域(2GHz帯)において、第1アンテナ11を広帯域(200MHz程度)で使用できる。そして、第1アンテナ11が小型化できるため、携帯電話機10が備える内部機器の配置の自由度が向上する。また、第1アンテナ11が小型化されることにより、携帯電話機10の筐体を小型化できる。
図4に示す携帯電話機10は、第2筐体10CBの内部であってヒンジ13側に、第2アンテナ12が配置される。第2アンテナ12は、例えば、GPS受信に用いられる受信アンテナであり、GPS衛星から発信される電波の受信に用いられる。第2アンテナ12の対象とする周波数帯域は、本実施形態においては1.5GHz帯である。第2アンテナ12の基体にも本実施形態に係る磁性酸化物焼結体を用いることで、1.5GHz帯という高周波の電波を対象とする第2アンテナ12を小型化できるとともに、GPS受信に用いる周波数帯域において、第2アンテナ12を広帯域(200MHz程度)で使用できる。第2アンテナ12は、携帯電話機10の筐体内で配置できる場所が限られるが、本実施形態に係る磁性酸化物焼結体を用いることで第2アンテナ12を小型化できるので、筐体内における配置の自由度が向上する。
なお、本実施形態に係る磁性酸化物焼結体の適用対象は、携帯電話機10のアンテナに限定されるものではなく、GHz帯を使用する無線通信機器全般に対して適用できる。また、本実施形態に係る磁性酸化物焼結体は、アンテナを小型化できるという効果があるので、特に、携帯電話機やPDA(Personal Data Assistant)、あるいはパーソナルコンピュータ等に装着されてデータ通信等に用いられる情報通信用カード等の小型化が要求される携帯通信機器に対して好適である。
さらに、無線通信機器であれば、携帯され持ち運ばれる頻度の高いものに限らず、本実施形態に係る磁性酸化物焼結体は適用できる。例えば、本実施形態に係る磁性酸化物焼結体は、携帯電話機の室内アンテナや室内に配置される無線LAN用の送受信機等のようなものであっても適用でき、このようなものの中でも、特に小型化が要求されるものに対して好適である。
次に、上述した実施形態をより具体的に実施した実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。表1に、実施例及び比較例に係る磁性酸化物焼結体を構成するM型フェライトBa(Ti0.5Mn0.5Fe12−x19における(Ti0.5Mn0.5)量x、焼成温度、格子定数a、2GHzにおける複素透磁率の実部μ´、磁気損失tanδμ、複素誘電率の実部ε´、誘電損失tanδε、及びアンテナの特性として放射効率が60%以上となる帯域幅の評価結果を示す。
Figure 0005811831
実施例として、酸化鉄(Fe)、炭酸バリウム(BaCO)、酸化マンガン(Mn)、酸化チタン(TiO)を原料とし、これらを表1に示す実施例1〜実施例10それぞれに対応する所定の組成となるように秤量した。そして、秤量後の原料を湿式ボールミルで水を媒体として16時間配合した後、大気中において1150℃で仮焼した。これによって得られた磁性酸化物を振動ミルで10分間乾式粉砕した後、湿式ボールミルで水を媒体として24時間粉砕し、粉砕後の磁性酸化物を150℃で24時間乾燥させて、磁性酸化物の粉末を作製した。この磁性酸化物は、M型六方晶フェライトBa(Ti0.5Mn0.5Fe12−x19(3.5≦x≦7.0)を主成分とする。
次に、この磁性酸化物粉末にバインダーとしてPVAを添加して造粒することにより造粒粉を得た。この造粒粉をプレス機により所定の圧力(100MPa)で成形してから、酸素雰囲気中において所定の温度(1300℃及び1350℃)で所定の時間(2時間)焼成して磁性酸化物焼結体を作製した。
比較例として、M型六方晶フェライトBa(Ti0.5Mn0.5Fe12−x19を主成分としながら、(Ti0.5Mn0.5)量xの範囲が3.5≦x≦7.0から逸脱する磁性酸化物焼結体(比較例1〜比較例7)、さらに、xの範囲は3.5≦x≦7.0の範囲内にあるものの、焼成温度を変更することにより、主相のM型六方晶フェライトBa(Ti0.5Mn0.5Fe12−x19の比率が95%未満となる磁性酸化物焼結体(比較例8〜比較例12)、またさらに、磁性酸化物焼結体の磁化容易軸と直交するa軸の格子定数(Å)がa>0.0125×x+5.89となるように調整した磁性酸化物焼結体(比較例13〜比較例17)を作製した。
表1に示す比較例1〜比較例3は、上述した実施例において、(Ti0.5Mn0.5)量xの値がx=3.0となるように作製したものである。
表1に示す比較例4〜比較例7は、上述した実施例において、(Ti0.5Mn0.5)量xの値がx=8.0となるように作製したものである。
表1に示す比較例8〜比較例12は、上述した実施例において、焼成温度を1200℃以下とすることにより、異相を含ませ、主相のM型六方晶フェライトBa(Ti0.5Mn0.5Fe12−x19の構成比が95%未満となるように作製したものである。
表1に示す比較例13〜比較例17は、上述した実施例において、焼成温度を1400℃以上とすることにより、磁性酸化物焼結体の磁化容易軸と直交するa軸の格子定数(Å)がa>0.0125×x+5.89となるとなるように作製したものである。
上記手順によって作製した実施例1〜実施例10及び比較例1〜比較例17それぞれに対応する磁性酸化物焼結体を粉砕して粉末状にし、粉末X線回折法により回折ピークの位置を求め、これによりM型フェライトの磁化容易軸と直交するa軸の格子定数を計算した。粉末X線回折法にはX線回折装置(リガク(株)製、RINT−2500)を用いた。
次に、上記手順によって作製した実施例1〜実施例10及び比較例1〜比較例17それぞれに対応する磁性酸化物焼結体を切断して、複素透磁率の実部μ´、磁気損失tanδμ、複素誘電率の実部ε´、及び誘電損失tanδε測定用の試験片を得た。複素透磁率の実部μ´と磁気損失tanδμの測定に供する試験片は、外径7mm、内径3mm、厚さ2mmの環状の試験片であり、複素誘電率の実部ε´と誘電損失tanδεの測定に供する試験片は、1mm×1mm×60mmの棒状の試験片である。
複素透磁率の実部μ´、磁気損失tanδμ、複素誘電率の実部ε´、及び誘電損失tanδεは、ネットワークアナライザ(アジレント・テクノロジー(株)製、HP8510C)を用いて測定した。2GHzでの複素透磁率の実部μ´、磁気損失tanδμは、上述した複素透磁率測定用の環状の試験片を使用して同軸型Sパラメーター法により測定した。2GHzでの複素誘電率の実部ε´と誘電損失tanδεは上述した複素誘電率測定用の棒状の試験片を使用して空洞共振器摂動法により測定した。
そして、上記手順によって作製した実施例1〜実施例10及び比較例1〜比較例17それぞれに対応する磁性酸化物焼結体を用いてアンテナを作製し、その特性を評価した。本発明においては、帯域幅が狭まらないことに重点を置いているため、アンテナの特性として評価する項目は帯域幅のみである。ここで、帯域幅は、2GHzを中心とした放射効率が60%以上となる周波数の範囲のことである。小型化率については特別に評価していないものの、本実施例においては、複素透磁率の実部μ´と複素誘電率の実部ε´が共に1.1以上であることから、前述した波長短縮効果により、磁性酸化物焼結体の寸法を小さくできるため、これを用いたアンテナを小型化することができることは明らかである。
図5に、無線通信機器への実装を想定してアンテナの特性を評価するためのモデルを示す。アンテナ1は、基体2に導体3及び導体3と電気的に接続される給電端子4とを設けて構成される。基体2は、実施例1〜実施例10及び比較例1〜比較例17それぞれに対応する磁性酸化物焼結体を用いて作製される。そして、それぞれの基体2に導体3及び給電端子4が設けられて、実施例1〜実施例10及び比較例1〜比較例17それぞれに対応したアンテナが作製される。
アンテナ1の形状は立方体であり、矩形形状をした基板5上の短辺側端部側に配置されて、給電端子4を介して導体3に電気エネルギーが供給される。放射効率は小型3D放射指向性測定機(SATIMO社製、STARLAB)を用いて測定した。本実施例において、アンテナ1の特性として評価する帯域幅は、放射効率が60%以上となる2GHzを中心とした周波数の範囲である。
上述した手法によって得た、M型フェライトの磁化容易軸と直交するa軸の格子定数、2GHzでの複素透磁率の実部μ´、磁気損失tanδμ、複素誘電率の実部ε´、誘電損失tanδε、及び放射効率が60%以上となる帯域幅の評価結果を表1に示す。帯域幅は評価した値を用いて○(許容;200MHz以上)、×(許容できない;200MHz未満)の評価とした。
表1の結果から分かるように、実施例1〜実施例10に係る磁性酸化物焼結体は、いずれも2GHzにおいて200MHz以上の十分な帯域幅を有している。これらの磁性酸化物焼結体は、2GHzにおいて磁気損失tanδμと誘電損失tanδεが共に0.01以下であるため、2GHzを中心とした広い周波数の範囲で、アンテナに供給されるエネルギーを効率的に電磁波へ変換できると考えられる。
実施例6〜実施例10に係る磁性酸化物焼結体は、いずれも焼成温度を1350℃としており、焼成温度を1300℃とした実施例1〜実施例5に係る磁性酸化物焼結体よりも、同一の(Ti0.5Mn0.5)量xで比較した場合、複素透磁率の実部μ´が0.1だけ大きくなっている。これは焼成温度が高い方が、密度が大きくなることが原因であると考えられる。したがって、焼成温度を1300℃とした実施例1〜実施例5に係る磁性酸化物焼結体よりも、焼成温度を1350℃とした実施例6〜実施例10に係る磁性酸化物焼結体の方が、小型化の効果は顕著になる。
さらに、(Ti0.5Mn0.5)量xを4.0、焼成温度を1350℃とした実施例4に係る磁性酸化物焼結体は、2GHzにおける複素透磁率の実部μ´が1.5となっており、小型化の効果が最も顕著になる。
比較例1〜比較例7に係る磁性酸化物焼結体は、いずれも帯域幅の評価が200MHzに達しておらず、帯域幅が狭められている。これらの磁性酸化物焼結体は、磁気損失tanδμは0.01以下と小さいものの、誘電損失tanδεが0.02以上と大きいため、アンテナに供給されるエネルギーを効率的に電磁波へ変換できる周波数の範囲が狭くなっていると予想される。比較例1〜比較例3に係る磁性酸化物焼結体は、いずれも(Ti0.5Mn0.5)量xの値が3.0であり、比較例4〜比較例7に係る磁性酸化物焼結体は、いずれも(Ti0.5Mn0.5)量xの値が8.0である。これらの磁性酸化物焼結体で誘電損失tanδεが大きくなったのは、いずれもM型六方晶フェライトBa(Ti0.5Mn0.5Fe12−x19の(Ti0.5Mn0.5)量xの範囲が3.5≦x≦7.0から逸脱することが原因である。これに対して、実施例1〜実施例10に係る磁性酸化物焼結体は、xの範囲が3.5≦x≦7.0であるので、磁気損失tanδμと誘電損失tanδεが共に0.01以下となり、帯域幅を十分に広く維持できると考えられる。
比較例8〜比較例12に係る磁性酸化物焼結体は、いずれも帯域幅の評価が200MHzに達しておらず、広帯域化ができていない。これらの磁性酸化物焼結体は、磁気損失tanδμは0.01以下と小さいものの、誘電損失tanδεが0.02と大きいため、アンテナに供給されるエネルギーを効率的に電磁波へ変換できる周波数の範囲が狭くなっていると予想される。これらの磁性酸化物焼結体で誘電損失tanδεが大きくなったのは、いずれも焼成温度が低く十分に反応が進行していないため、主相のM型六方晶フェライトBa(Ti0.5Mn0.5Fe12−x19の比率が95%未満となったことが原因である。これに対して、実施例1〜実施例10に係る磁性酸化物焼結体は、主相のM型六方晶フェライトの比率は95%以上であるので、磁気損失tanδμと誘電損失tanδεが共に0.01以下となり、帯域幅を十分に広く維持できると考えられる。
比較例13〜比較例17に係る磁性酸化物焼結体は、いずれも帯域幅の評価が200MHzに達しておらず、広帯域化ができていない。これらの磁性酸化物焼結体は、磁気損失tanδμは0.01以下と小さいものの、誘電損失tanδεが0.02と大きいため、アンテナに供給されるエネルギーを効率的に電磁波へ変換できる周波数の範囲が狭くなっていると予想される。これらの磁性酸化物焼結体で誘電損失tanδεが大きくなったのは、いずれもM型六方晶フェライトBa(Ti0.5Mn0.5Fe12−x19の磁化容易軸と直交するa軸の格子定数(Å)の範囲が5.92≦a≦0.0125×x+5.89から逸脱することが原因である。これに対して、実施例1〜実施例10に係る磁性酸化物焼結体は、aの範囲が5.92≦a≦0.0125×x+5.89であるので、磁気損失tanδμと誘電損失tanδεが共に0.01以下となり、帯域幅を十分に広く維持できると考えられる。
以上のように、本発明に係る磁性酸化物焼結体及びアンテナ、並びに無線通信機器は、高周波を対象とするアンテナに有用であり、このようなアンテナの小型化を実現しつつ、前記アンテナが使用可能となる周波数帯域が狭まることを抑制することができる。
1 アンテナ
2 基体
3 導体
4 給電端子
5 基板
10 携帯電話機
10CA 第1筐体
10CB 第2筐体
11 第1アンテナ
12 第2アンテナ
13 ヒンジ

Claims (3)

  1. 下記組成式(1)
    Ba(Ti0.5Mn0.5Fe12−x19・・・(1)
    (式中のxは、3.5≦x≦7.0)で表されるM型六方晶フェライトを主相として95%以上含む磁性酸化物焼結体であり、
    該磁性酸化物焼結体の磁化容易軸と直交するa軸の格子定数(Å)が、下記関係式(2)
    5.92≦a≦0.0125×x+5.89・・・(2)
    を満たすことを特徴とする磁性酸化物焼結体。
  2. 請求項1記載の磁性酸化物焼結体により構成される基体と、前記基体の表面又は内部に設けられた導体と、前記導体と電気的に接続されており、且つ、該導体に電気エネルギーを供給する給電端子と、を備えるアンテナ。
  3. 請求項2に記載のアンテナを備える、無線通信機器。
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