以下、本発明について具体的な実施形態を示しつつ説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。なお、同一部材については同一の符号を付してある。
図1に本発明に係るアンテナの実施形態の一例を示す。図1のアンテナaは、基体(磁性体チップ若しくは誘電体チップ)と導体部とを有するアンテナである。該アンテナは基板に実装して用いることができる。図1は本実施の形態のアンテナの平面図(アンテナが基板に実装されている場合の基板面の上方から見た図に相当)である。
図1に示すように、本実施の形態のアンテナは、第1の基体10と、その内部に設けられた導体7を有する第1のアンテナ素子4と、板状の導体部100と接続導体12とを有する第2のアンテナ素子1とからなり、前記接続導体12は板状の導体部100の途中に接続されている。また前記導体部100を金属導電箔やワイヤ(線状)で形成すると、よりアンテナの形状自由度も向上させることができ、省スペースに構成することができる。図1に示す構成では、導体部100の一辺は、長手方向に前記第1の基体10と平行に離間して配置されて、前記第1の基体10の導体7の給電側である他端は給電線11と接続され、非給電側である一端は導体部100と線状の接続導体12で接続され、配置されている。第1のアンテナ素子4においては、導体7は基体10を貫通している。無論、導体7と接続導体12は連続した1本の導体で接続したものであっても良い。即ち接続導体12は第2のアンテナ素子1の構成部材と考えるのではなく、第2のアンテナ素子1と第1のアンテナ素子4の共通の構成部材であると考えることができる。これは以下の実施例でも同様である。連続した一体の線状の導体で構成されるようにすれば、接続数を減らすことができ、アンテナや通信機器の製造工程の簡略化や製品信頼性の向上を図ることができる。図1に示す構成では、第3のアンテナ素子21がないので前記導体部100を第1のアンテナ素子4を囲むように長く確保することができる。このためGSM帯よりも低い周波数でかつ帯域の広い地上デジタルテレビ放送帯域などに対応するようにすることもできる。
次に図2に戻る。図2に本発明に係るアンテナの実施形態の一例を示す。図2のアンテナaは、基体(磁性体チップ若しくは誘電体チップ)と導体部を有するアンテナである。該アンテナは基板に実装して用いることができる。図2は平面図(アンテナが基板に実装されている場合の基板面の上方から見た図に相当)である。図2に示すアンテナは、第1の基体10と、その内部に設けられた導体7を有する第1のアンテナ素子4と、板状、線状等の導体部100と接続導体12とを有する第2のアンテナ素子1と、板状、線状等の導体部200と接続導体15とを有する第3のアンテナ素子21とを備えている。さらに前記第1のアンテナ素子4の導体の一端が前記接続導体12に接続され、前記第1のアンテナ素子4の導体の他端が前記接続導体15に接続される。前記接続導体12は前記導体部100の途中に接続され、前記接続導体15は前記導体部200の途中に接続される。また前記導体部を板状ではなく金属導電箔やワイヤ(線状)で形成すると、よりアンテナの形状自由度も向上させることができ、省スペースに構成することができる。図2に示す構成では、導体部100と導体部200のそれぞれ一辺は、長手方向に前記第1の基体10と平行に離間して配置されて、前記第1の基体10の導体7の給電側である他端と導体部200は線状の接続導体15で接続され、非給電側である一端は導体部100と線状の接続導体12で接続され、配置されている。第1のアンテナ素子4においては、導体7は基体10を貫通している。無論、導体7と接続導体12、15は連続した1本の導体で接続したものであっても良い。
図4に本発明に係るアンテナの実施形態の一例を示す。図4のアンテナaは、基体(磁性体チップ若しくは誘電体チップ)と導体部を有するアンテナである。該アンテナaは基板に実装して用いることができる。図4に示すアンテナaは、基体10を貫通して設けられた導体7を有する第1のアンテナ素子4と、接続導体15と、導体部200からなる第3のアンテナ素子21を備えている。前記第1のアンテナ素子4の導体7の給電側である他端は接続導体15を介して導体部200に直接接続して、給電線11も接続導体15の接続点とは異なる点で導体部200に直接接続している。そして導体部200は板状でかつ略L字状に形成している。また前記導体部を板状ではなく金属導電箔やワイヤ(線状)で形成すると、よりアンテナの形状自由度も向上させることができ、省スペースに構成することができる。第1のアンテナ素子4においては、導体7は基体10を貫通している。無論、導体7と接続導体15は連続した1本の導体で接続したものであっても良い。また図3と同様に接続導体15は給電線11の途中に接続することもできる。
図1〜4のアンテナaは、図1〜3では前記基体10と、前記導体部100の一辺が、図2〜4では導体部200の一辺がグランド部端部40aから離れて配設されており、更には前記基体10部分はヘリカル電極を有する誘電体チップアンテナや磁性体チップアンテナのように導体が基体に巻回されていないので、後述するように線間容量成分を形成しにくく、帯域を拡大するうえで優れた構成となる。また、図1〜3では前記第1のアンテナ素子4の導体7の非給電側である一端側には放射電極である前記接続導体12が導体部100の途中に接続される。図2〜4では給電側である他端側には前記接続導体15が導体部200の途中に接続される。したがって、従来の前記誘電体チップアンテナや磁性体チップアンテナに比べ導体部が多くなる。すなわち、導体部100および200を有するため、主回路基板のグランド部40との間に於ける放射抵抗が増加して放射効率が向上する。特に導体部は接続導体との接続点から2方向に若干異なる、使用周波数の略λ/4に相当する長さで伸延して形成することができるので、例えば図21に示すようにその長さに対応した2つの周波数f1、f2に共振させることができる。その結果、一つの共振周波数のときよりVSWRが低くて、高い利得が得られる周波数帯域を広く取ることができる。そして広帯域で良好なアンテナ特性を得ることができる。
図1〜4のアンテナaでは、第1のアンテナ素子4の導体7の給電側である他端側と非給電側である一端側には全体形状が略L字状の導体部100および/または200が各々接続する。すなわち図2〜4では第1のアンテナ素子4の導体7の給電側である他端側は接続導体15を介して導体部200の途中に接続されて第3のアンテナ素子21が形成される。図1〜3では前記導体7の非給電側である一端側は接続導体12を介して導体部100の途中に接続され、第2のアンテナ素子1が形成される。各々導体部と接続導体とにより第2、第3のアンテナ素子の全体形状が略T字状に形成される。第2、第3のアンテナ素子の全体形状は携帯通信機器の筐体形状に合わせて略U字状、略逆V字状あるいは略Y字状等であってもよい。
また導体部と接続導体との接続点で導体部をn(n=1,2・・・)個に分岐して、n個の導体部の長さを少しずつ異ならせることによりそれぞれの周波数の略λ/4で共振させることができる。このことにより一つの帯域内で少しずつ異なる共振周波数をn個有することになるのでnの個数が大きいほどVSWRが低くて、高い利得が得られる周波数帯域を広く取ることができる。その場合、導体部同士の干渉が生じ易くなるが、分岐した導体部同士を一定間隔離せばよい。
導体部100には給電線11を介して、送受信回路等(図示せず)が接続されてアンテナ装置が構成される。尚、図2では接続導体15は導体部200に接続される。また給電線11も導体部200へ接続される。しかし給電線11は接続導体15の導体部200への接続点とは異なる点に接続される。また図3に示すように前記導体7の給電側である他端側を給電線11の途中に接続することもできる。接続導体12、15の材質は線状、板状、あるいは基板に印刷した箔状の導電性金属で形成することもできる。
図1〜6では第1のアンテナ素子4の一端側に前記接続導体12と立設した板状の導体部100とで略T字状になるように、および他端に前記接続導体15と立設した板状の導体部200とで略T字状になるように、各々が接続されて形成されている。前記板状の導体部100の面をグランド部40が形成された主回路基板面に対して垂直になるように立設するため、基体(磁性体チップ若しくは誘電体チップ)のみのアンテナにくらべ金属導体部分を多く有することになる。その結果、放射抵抗が少なくなり広い周波数帯域において電磁波の放射利得も高くなる。しかしながら電磁波の放射利得を上げるために導体部100および200の表面積を大きくするほど、導体部は立設しているため主回路基板のグランド部40との対向面積が増え容量成分が増える。容量成分が増えると前記グランド部40に、導体部100および200に生じるアンテナの共振電流を打ち消す逆位相の鏡像電流がグランド部40に生じやすくなり、その分アンテナの利得が低下するだけでなく帯域幅も狭くなる。したがって、前記板状の導体部100の面積と、グランド部端部40aからの距離Wは放射効率が高くなるようにバランスさせて決めることが好ましい。また距離Wを一定間隔確保する以外の容量成分を増加させない方法としては導体部100および200を基板上に形成する金属導電箔や金属導電線からなる線状の導体で形成すると良い。この方法により前記板状の導体部100および200の面がグランド部40に対して平行になるので放射抵抗を少なくすることができるので導体部100および200とグランド部40が近接した場合でもVSWRが低い周波数帯域を拡大することができる。
次にアンテナaの最適形状、構成部品との位置関係を決定する方法について述べる。まず筐体のスペースや形状に合わせて導体部の形状をコの字状や円弧状(アーチ状)やL字状に形成する。そして基体の全体必要長さを決め、スペースに合わせて分割個数と並べ方を決める。放射利得が一定値以上保たれる帯域幅を確保できるように導体部、基体の位置を検討する。次に容量成分を減らすために導体部の形状を筐体の制約条件から板状、線状等のいずれにするのが良いのかを検討する。次にグランド部端部40aに対向する導体部の一辺の面との距離Wを決める。
図5に本発明に係るアンテナの実施形態の別の一例を示す。図5のアンテナaは、基体として磁性体チップ若しくは誘電体チップと導体部を有するアンテナである。該アンテナは基板に実装して用いることができる。図5は平面図(アンテナが基板に実装されている場合の基板面の上方から見た図に相当)である。図5に示すアンテナは、第1の基体10と、その内部に設けられた導体7を有する第1のアンテナ素子4と、第2の基体8と、その内部に設けられた導体5を有する第4のアンテナ素子2と、導体部100と接続導体12からなる第2のアンテナ素子1と導体部200と接続導体15からなる第3のアンテナ素子21を備えている。図5に示す構成では、一直線上に並んだ基体10及び基体8と、導体部100および200の各一辺は長手方向に平行に離間して配置される。基体10の導体7と導体部100は接続導体12で接続され、基体10の導体7の給電側の他端と基体8の導体5の非給電側である一端は接続導体13で接続され、基体8の導体5の給電側である他端は接続導体15を介して導体部200に接続される。導体部200には給電線11を介して、送受信回路等(図示せず)に接続されてアンテナ装置が構成される。第1のアンテナ素子4においては、第1の基体10の内部に設けられた導体7は基体10を貫通し、第4のアンテナ素子2においては、第2の磁性基体8の内部に設けられた導体5は基体8を貫通している。無論、接続導体12と導体5と接続導体13と導体7及び接続導体15は連続した1本の導体で接続したものであっても構わない。尚、接続導体15は図6に示すように、前記導体5の給電側である他端側が給電線11の途中に接続することもできる。
図5のアンテナaは、図1の場合と同様に前記導体部100がグランド部端部40aから一定間隔離れて配設されている。前記アンテナaの導体は基体を貫通しており、ヘリカル電極を有する誘電体チップアンテナや磁性体チップアンテナのように導体は基体に巻回されていない。したがって後述するようにヘリカル電極の線間容量成分を形成しにくく、帯域を拡大するうえで優れた構成となる。更に基体が分割され、各アンテナ素子が接続導体で接続される構造であるため、図5においては一直線上に並んでいるが、図6のように縦方向に並べるなど実装空間に応じてその配置を変えることができる。また、基体が分割された構造とすることにより、個々の基体の長さを小さくすることもできるため、構造的強度が高まり割れにくく、アンテナの信頼性向上に寄与する。すなわち、前記構成は基体を用いるアンテナでありながら、実装の自由度が非常に高いものとなる。かかる分割構造の磁性体チップアンテナや誘電体チップアンテナが可能となる理由は後述する。
また、図5および6のアンテナaの場合であれば、第4のアンテナ素子2の導体5の給電側である他端側は接続導体15を介して放射電極である導体部200に接続する。すなわち接続導体15と導体部200とでアンテナ素子の等価的形状として略T字状に形成され、第3のアンテナ素子21を構成する。また第1のアンテナ素子4の導体7の非給電側である一端側は接続導体12を介して放射電極である導体部100に接続する。すなわち接続導体12と導体部100とでアンテナ素子の等価的形状として略T字状に形成され、第2のアンテナ素子1を構成する。該構成では導体部100および200の2つの面を有し、主回路基板のグランド部40間に於ける放射抵抗が、導体部が1つの場合に比べ増加することにより放射効率が向上する。特に基体のみで構成されるアンテナでは利得が低下してしまうところ、本構成によれば導体部があることにより利得の低下を防ぐことができる。また前記導体部は接続導体との接続点から伸びた導体部のそれぞれの長さを決めることができるので、目的とした複数の周波数に容易に共振させることができる。導体部200には給電線11を介して、送受信回路(図示せず)に接続されてアンテナ装置が構成される。尚、導体部100および200が板状に形成される場合、上記した第1の実施形態と同様の理由により、板状の面をグランド部40が形成された主回路基板面に対して垂直になるように立設させるとともに、前記面とグランド部端部40aと一定の距離Wを確保して配設するのが好ましい。そして、アンテナaの最適形状、構成部品との位置関係を決定する場合は、第1の実施形態と同様であるので以下では説明を省略する。
尚、導体部での共振周波数が1つでよい場合は、図7のように導体部100‘、200は導体7の一端、他端との接続点から1方向にのみ伸延して形成することもできる。伸延した部分は直線でも良いし、筐体形状に合わせて適宜曲げることもできる。破線部分は共振周波数を調節するための調節導体部100‘を示している。この場合、基体10と給電線11(接続導体15)と調節導体部100‘とでGSM帯に共振し、給電線11(接続導体15)と導体部200とで例えばDCS/PCSおよびUMTS帯に共振する。この例では一見接続導体15は導体部200の端部に接続されているように見えるが、給電線11と接続導体15を含めてλ/4長にしているので給電線11を接続導体15に含ませているので導体部の途中に接続されているとみなせる。図7の破線で囲まれた調節導体部100‘はGSM帯のうち目的とする周波数範囲によって長さを適宜変更することができる。また前記導体部100‘、200を板状ではなく金属導電箔やワイヤ(線状)で形成すると、よりアンテナの形状自由度も向上させることができ、省スペースに構成することができる。無論、導体7と給電線11(接続導体15)と導体部100‘、200は連続した1本の導体で接続したものであっても良い。
また、第1のアンテナ素子4や第4のアンテナ素子2の基体において、基体として誘電体を使用する場合、誘電体を貫通する導体の全周に誘電体が存在することになるので基体が持つ実効誘電率が高くなる。また基体として磁性体を使用する場合、磁性体を貫通する導体の全周に磁性体が存在することになるので磁界は導体の周りに同軸状にできるので基体が持つ透磁率が高くなる。よって導体が誘電体でも磁性体でも波長短縮効果が生じてアンテナ全体の小型化を図ることができる。基体に導体を巻回する場合には導体が貫通してない場合に比べて、導体を巻回するのに必要とする導体長さと同じ導体長を確保した場合に、アンテナ素子全体の小型化を図ることができる。さらに、該導体の他端や一端を用いて他の回路素子や電極との電気的接続や接合が可能であり、設計自由度や固定強度が高められる。なお、図1〜図8に示す構成では、各導体の両側が基体から突出している。各導体の両側は必ずしも突出していなくてもよいが、この場合は前記導体との接続を図る外部電極を設ける必要がある。かかる場合には、例えば図10に示すようにアンテナ素子の外部電極を他のアンテナ素子の外部電極とともに基板上に設けた電極にハンダ接合して、アンテナ素子同士を直列に接続すればよい。また基板上に設けた接続導体を形成する電極は金属導電箔などの印刷導体パターンで形成することもできる。
上述のように、図1〜図8に示す構成では、前記各導体と前記各接続導体とが、一本の導線で構成されているため、基体8の非給電側である他端から突出している導体5と基体10の給電側である他端から突出している導体7とは共通しており、これは接続導体12、13、15も兼ねている。該接続導体と前記導体の突出している部分とは必ずしも一本の導線で構成されていなくてもよい。例えば、第1の基体10を貫通し該基体10の給電側である一端から突出している導体7と基体8を貫通し、突出している導体5の非給電側である一端とを、前記導体とは別部材の接続導体を用いて接続しても良い。また、前記別部材の接続導体として、図10(b)のように基板上に設けられた電極を用い、該電極に前記突出している接続導体13、14を基板16の導体部分にハンダ接合した構成であってもよい。ただし、前記各導体と前記各接続導体とが一本の導線、すなわち連続した一体の線状の導体で構成されるようにすれば、接続数を減らすことができ、アンテナや通信機器の製造工程の簡略化や製品信頼性の向上を図ることができる。図10(b)の構成の場合、2つの基体は導体部100や200の一辺とともに長手方向が平行になるように配列され、接続導体13を用いて基体8と基体10を、接続導体12を用いて基体9と導体部100を(図示せず)、接続導体15を用いて基体10と導体部200(図示せず)が接続され配置される。全体の配置は、各基体間、基体と導体部が適当な間隔を保って配置され、各基体と接続導体と導体部とが直列に接続されていれば良い。
図6に示す構成では、図3に示す構成と同様に前記各導体と前記各接続導体とが、一本の導線で構成されても良いし、導線同士が接続されても良い。そして2つの基体8、10は導体部100および200の各一辺とともに長手方向が平行に並ぶように配列される。接続導体13は基体8と基体10を接続する。接続導体15は基体8と導体部200を接続する。接続導体12は基体10と導体部100を接続する。そして基体、接続導体および導体部で構成される全体が略ミアンダ状に形成されている。尚、接続導体15は図3と同様に給電線11の途中に接続しているが、図5のように接続導体15を介して導体部200に直接接続することもできる。
図6を用いて本発明に係るアンテナの他の実施形態の一例を説明する。図6に示す構成では、基体10と基体9と基体8及び導体部100および200の各一辺は長手方向に平行に離間して配置しているが、例えば第4のアンテナ素子2と同じ構成の第5のアンテナ素子3(図示せず)を第4のアンテナ素子2の下方に並べて配置しても良い。さらに第5のアンテナ素子3と同じ構成の第6のアンテナ素子3‘(図示せず)を第5のアンテナ素子3の下方にさらに平行に離間して複数設け、各々接続導体で直列に接続し全体としてミアンダ状に配置しても良い。
また、アンテナ素子2、3、4及びアンテナ素子3’に使用される基体の材質は同じであっても良いし、異なっていてもかまわない。第1のアンテナ素子4においては、第1の基体10の内部に設けられた導体7は基体10を貫通し、第4のアンテナ素子2においては、第2の基体8の内部に設けられた導体5は基体8を貫通し、第5のアンテナ素子3においては、第3の基体9(図示せず)の内部に設けられた導体6(図示せず)は基体9を貫通している。無論、給電線11と導体6と接続導体14と導体5と接続導体13と導体7と接続導体12はこの順に直列に接続されて構成されるが、連続した1本の導体で構成しても良い。尚、導体6の給電側である他端は図2と同様に、給電線11の途中に接続しているが、接続導体15を介して導体部200に接続することもできる。
ここで基体が磁性体チップの場合、セラミックスを基体の母体材質とするため過大な衝撃が加わったときには割れる可能性がある。通信機器、特に携帯通信機器においては、落下等の衝撃が加わるため、アンテナの信頼性を高めるためには、より高い耐衝撃性が要求される。磁性基体の長手方向を短くすれば、外力に対する磁性基体の信頼性を高めることができる。例えば、幅w、厚さt、支点間距離dとした場合の最大荷重Nに対する曲げ強度Sの関係式は、S=3Nd/(2wt2)である。すなわち、耐えうる最大荷重は、N=2Swt2/(3d)となり、幅と支点間距離の比に比例する。通信機器の落下の場合などは磁性体チップアンテナにかかる外力の方向が一定ではないため、強度上は立方体が理想的な形状と考えられる。この場合、幅と支点間距離(ここでは磁性基体の長さに相当する)の比w/dは1である。本発明に係るアンテナは複数のアンテナ素子に分割した構成とすることができるため、このw/dを1に近づけて、(すなわちより立方体に近づけることで)強度を高めることができる。次に基体を分割した具体例を説明する。
アンテナ素子2、3、3‘、4を持つ構成は、一つの線状の導体が基体を貫通してアンテナ素子の基体部分が3分割されているものと見ることもできるが、上述したようにアンテナ素子の数は1または2に限定されるものではなく、3以上とすることも可能である。つまり3、4、5・・個と増やしていくことにより一個当たりの基体部分の長さを短くして複数のアンテナ素子を数珠状に連結してもよい。このことにより体を用いたアンテナの性能を低下させることなくアンテナの配置の自由度を得ることができる。
上述のように、アンテナ素子2、3、3‘、4に分割された構成では、前記各導体と前記各接続導体とが、一本の導線で構成されているため、基体9(図示せず)の非給電側である一端から突出している導体部分と基体8の給電側である他端から突出している導体部分とが共通し、さらに接続導体14も兼ねていることになる。同様に、基体8の非給電側である一端から突出している導体部分と磁性基体10の給電側である一端から突出している導体部分とが共通し、さらにこれらの部分が接続導体13も兼ねている。しかし接続導体と導体の突出している部分とは必ずしも一本の導線で構成されていなくてもよい。例えば、基体を貫通し基体の端から突出している導体と、別の基体を貫通し突出している導体とを、前記導体とは別部材の接続導体を用いて接続しても良い。また、前記別部材の接続導体として、図10に示すように基板上に設けられた電極を用い、該電極に前記突出している導体部分をハンダ接合した構成であってもよい。或いは複数のスルーホールとそれを電気的に接続している電極を有する基板を用い、前記突出している導体部分を前記スルーホールに挿入し、ハンダ接合することによって、導体同士を接続してもよい。かかる方法によれば、通信機器内で用いられる基板上に基体(チップ)をより強固に固定することができる。ただし、前記各導体と前記各接続導体とが連続した一体の線状導体で構成されるようにすれば、接続個所を減らすことができ、チップアンテナや通信機器の製造工程の簡略化や製品信頼性の向上を図ることができる。
さらに、前記第1のアンテナ素子4と、前記第4のアンテナ素子2と、第5のアンテナ素子3(図示せず)及び第6のアンテナ素子3‘(図示せず)の配置は屈曲状またはミアンダ状、L字状、クランク軸状、弧状に配置されていても良い。かかる構成によれば、前記アンテナは複数のアンテナ素子の間に接続導体部分を有するため、該接続導体部を介して接続し、アンテナ素子とアンテナ素子を屈曲状またはミアンダ状、L字状、クランク軸状、弧状に配置させることができる。屈曲状に配置させるとは、アンテナ素子とアンテナ素子との長手方向が互いに所定の角度を持つことを意味する。例えば、V字状、U字状等である。また、ミアンダ状とはアンテナ素子とアンテナ素子が略S字状に折り返した接続導体により接続され、かつ、アンテナ素子とアンテナ素子の長手方向が平行になるように配置される状態である。更に図8により、本発明に係るアンテナの他の実施形態を説明する。図8に示す構成では、複数の基体がミアンダになる方向を図6とは90度回転した方向に配置している。その場合の前記第1のアンテナ素子4、第4のアンテナ素子2、第5のアンテナ素子3などの寸法は長さ3〜8mm、径2〜4mm程度とすることが好ましい。かかる構成とすれば、携帯通信機器筐体内の端部など、曲面で規定される実装空間にもアンテナ装置の形状を適合させて実装することができるため、いっそう空間使用効率のよい通信機器となる。
次に、個々のアンテナ素子について以下説明する。図9に、アンテナを構成する基体が磁性体チップによるアンテナ素子の一例を示す。図9の(a)は斜視図、(b)は長手方向に沿って導体を含んだ断面図、(c)は長手方向に垂直な方向での断面図である。図9に示す構成は、第4のアンテナ素子の例である。直線状の導体5が直方体状の基体8をその長手方向に貫通している。すなわち、直線状の導体5は、直方体の側面や円柱の外周面など、導体を囲むように位置する基体外側の面に沿うように延設され、基体の長手方向両端面間を貫通している。基体内において、線状導体の線素に対して、その延出方向に、直角方向に導体部分がないことがより好ましい。たとえば図6の構成では、前記導体の両端、すなわち導体5の一端と他端が基体8から突出している。基体8の内部には、導体部分としては直線状の中実の導体5が存在するだけなので、容量成分の低減に理想的な構造となる。放射導体として機能する直線状の導体が一本貫通している構造なので、該導体は基体内部で実質的に対向する部分を持たないので、容量成分の低減に特に有効なのである。かかる観点からは、基体を貫通する導体は一本のみが好ましい。ただし、間隔を十分に取るなどして容量成分の影響が小さい場合などは、一本の貫通導体の他に、更に別の導体が貫通した、または埋設された構成とすることも可能である。この構造は第1、第4、第5、第6のアンテナ素子にも勿論適用できる。
また、直線状の導体5が基体8を貫通している構造なので、基体に導体を巻回する場合に比べて、導体を巻回するのに必要とする導体長さと等価の貫通している導体長を確保した場合には、アンテナ素子全体の小型化を図ることができる。さらに、直線状の導体5が基体8を貫通しているので、直線状の導体5の両端で、他のアンテナ素子、回路素子、電極との接合や電気的接続が可能であり、設計自由度が高い。直線状の導体は、磁界が該導体を周回するように形成させるため基体の外側の面からの距離を一定に保ちつつ基体の中心軸を貫通していることが好ましい。図10(a)に示した構成では、直線状の導体5、6、7は基体8、9、10の長手方向に、該磁性基体の中心軸上を貫通している。すなわち、基体8、9、10の長手方向に垂直な断面において、直線状の導体5、6、7は前記中心軸上に位置している。
次に、本発明に係るアンテナの構成が優れる点を説明するが、本発明は磁性体チップアンテナをベースに板状、線状等の導体部を付加したアンテナであるので、初めに磁性体チップアンテナ部分による効果を説明する。たとえば携帯電話で使用するGSM帯(810〜960MHz)や、DCS/PCSおよびUMTS帯(1710〜2170MHz)の各周波数帯域は150〜500MHzと広く、更にこれらの各周波数帯域が1000MHzも離れている。この帯域全体で所定の通信品質を得るには各周波数帯域全体に亘って一定の利得を維持することが必要である。広帯域化のためにはアンテナのQ値を下げることが必要となるが、Q値はインダクタンスをL、容量をCとすると(C/L)1/2で表されるため、Lを上げる一方、Cを下げる必要がある。基体として誘電体を用いた場合、インダクタンスLを上げるためには導体の巻き線数を増やす必要があるが、巻線数の増加は線間容量の増加を招くため、アンテナのQ値を効果的に下げることができない。
本発明においては、上述のように容量成分の低減に効果的な、直線状の導体が磁性基体を貫通する構成のアンテナ素子を採用するので、巻線数を増やすことなく透磁率でインダクタンスLを上げることができる。したがって巻線数の増加による線間容量の増加を回避して、Q値を下げることができ、アンテナの広帯域化に特に顕著な効果を発揮するのである。たとえば第4のアンテナ素子2の導体5の場合、磁路は該導体5を周回するように基体内に形成されるため、閉磁路を構成する。該構成で得られるインダクタンス成分Lは導体5を覆う基体部分の長さや断面積に依存する。よって、第4のアンテナ素子2は、導体5が基体8を前記断面の中心軸上を貫通するアンテナ素子を有する構成であるため、効率よくL成分を確保し、アンテナの小型化を図ることができる。もちろん基体として誘電体を用いることで同様の効果を得ることができるが、誘電体の場合は導体の巻回により線間容量が増えるので、周波数帯域をより広くするには磁性基体を用いるほうが有利である。
さらに、上述のように、本発明に係るアンテナ素子2、3、3’、4における磁路は、導体5、6、7の中心軸を周回するように形成されるため、基体が導体の長手方向に複数個に分割されても、分割したことがインダクタンス成分Lの形成に与える影響は原理的に極めて小さいものとなる。このため、基体を複数個に分割してアンテナを構成することが可能となるのである。これに対して、誘電体の場合など基体にヘリカル電極を巻回して形成する場合は、基体内の磁路はコイルの軸方向(基体の長手方向を貫くように)に形成されるため、基体を分割すると磁路が分断されL成分は著しく低下する。したがって、分割した基体に各々ヘリカル電極を形成しても単純に基体を複数個に分割したチップアンテナを構成することはできない。
ここで導体部と基体(磁性体チップ)を組み合わせたことによる効果について詳細に述べる。従来の基体と基体内を通る導体のみからなるアンテナでは、帯域全体の利得を向上させることはできるが、板状、線状等の導体部のみで構成されるアンテナに比べて利得がやや劣り、携帯通信機器で使用する各周波数帯域の中心周波数に対して低い側の周波数では利得の低下が大きい。そこで前述のように前記第1のアンテナ素子4の導体の給電側および/または非給電側に板状、線状等の導体部を設けることにより利得を向上させ、各周波数帯域を広げることができる。更には前記第1のアンテナ素子4の導体の給電側に板状、線状等の導体部200を、前記導体部の途中に接続導体を接続し、その接続点から2方向に若干異なる、使用周波数の略λ/4に相当する長さで伸延して設けることにより、例えば図21に示すようにその長さに対応した2つの周波数f1、f2に容易に共振させることができるため、周波数帯域をより広げることができる。その結果、基体と基体内を通る導体のみで構成されるアンテナに比べ、例えばDCS/PCS、UMTS帯のような高い周波数帯域内の低い側の周波数での利得を向上させることが出来る。更には前記第1のアンテナ素子4の導体の非給電側に板状、線状等の導体部100を設けることにより、前記第1のアンテナ素子4と組み合せてGSM帯のような低い周波数帯域内の低い側の周波数での利得も向上させることが出来る。また基体と、前記導体部200の基体と平行な部分との間では多重的な共振も起こるため、特に高い周波数帯域で広帯域であるDCS/PCSとUMTS帯に亘ってVSWRが低くて、高い利得が得ることができる。つまり各帯域においてVSWRが低い周波数帯域が拡大し、電磁波の放射利得を高くすることができる。
基体の外部での導体の取り回しは、基体の導体が現れている面に印刷電極(金属導電箔)を形成することでもできる。すなわち該面に形成され印刷電極と該面が接する基板面に印刷された電極とをハンダ付けにより固定することが出来る。一方、製造工程を簡略化し、かつ容量の増加を抑える観点からは、導体の突出した端部を用いてハンダ付け等により取り回しを行うことが好ましい。なお、印刷電極で基体の外部での取り回しを行う場合には、該印刷電極は、その面積および対向部分を可能な限り小さくすることが望ましい。図6の構成のように導体5、7の両端が突出している場合は、導体5と接続する接続導体13、15と導体7と接続する接続導体12、13と基体8、10で構成されたアンテナ素子はハンダで固定することができるので、安定な実装が可能となる。もちろんこれらの導体は連続した一本の導体であってもかまわない。突出した導体の端部は必ずしも直線状でなくてもよく、屈曲していてもよい。
図10には磁性体チップアンテナの基板への実装例を示す。図10の(a)に示す構成では、基板に実装しやすいように、前記接続導体12と接続導体13と接続導体14と接続導体15がそれぞれ基体10、8、9から離間した部分で基体10、8、9の搭載面側に向かって屈曲してあり、その先端部分は基体の一端面である底面と平行に、より具体的には略同一面上に位置するようにしてある。屈曲している部分が基体の端面から離間していることで、容量の増加を抑えるとともに、導体と基体の境界における基体の欠けや導体の損傷を抑制する。一方、突出した端部を兼ねる接続導体13、14は基板の側面から見て直線状としてある。前記導体6の接続導体12と接続導体15は基板が有する導体部分にハンダ等で接合できる。図10の(b)は、接続導体13、14も基体8、9、10の搭載面側に向かって屈曲している例である。接続導体の屈曲は前記接続導体12と接続導体15と同様に、基体から離間した部分で施されていることが好ましい。
突出した導体の端部を利用して導体の取り回しを行う場合は、いずれの場合でも基体の表面に電極を形成する必要がないため、容量成分の増加を抑えることができる。図1〜8に示す実施形態のように突出している導体部分が直線状である構成では、基体の内部および表面において導体同士が対向する部分を持たないので、容量成分の低減に特に効果的である。
次に、本発明に係るアンテナの他の実施形態を図12に示す。図12(a)に示す例は、第1のアンテナ素子4と第2のアンテナ素子1と第3のアンテナ素子21と、第4のアンテナ素子2とを備えるアンテナaである。そして基体を有する第1のアンテナ素子4と第4のアンテナ素子2とが一つのケース36に収容されている構成である。図12の(b)は第1のアンテナ素子4と第4のアンテナ素子2を収容する樹脂製のケース36を示している。また図12の(c)は前記ケース36に収容された前記アンテナ41の平面図を示している。ケース36はアンテナ素子を収容可能な空間を深さ方向に有し、両側面には、側面上面から略中央にかけて、接続導体12、15をケース内部からケース外部へと導出可能となるようにスリットが設けられている。なお、スリットのかわりに貫通孔を設けてもよい。また、前記スリットまたは貫通孔は、必ずしも両側面に設ける必要はなく片側の側面に設けてもよい。ケース36には、各アンテナ素子の長手方向の二点においてアンテナ素子の長手方向に直角方向の動きを拘束する突起部37Aをケース内壁に設けてある。図8の例では、前記突起部37Aは、深さ方向に柱状に形成されており、アンテナ素子を線で拘束する。柱状の突起部の断面形状は特に限定するものではないが、例えば三角形状、半円状等とすればよい。突起部は点状の突起として、突起部で拘束しても良い。
また、突起部を設けるかわりに、基体を有するアンテナ素子の形状と略同一の空間を設け、該空間に前記アンテナ素子を嵌挿して前記アンテナ素子の動きを拘束してもよい。また、突起部だけが立設された平板状のケースを用いて前記アンテナ素子の動きを拘束することも可能である。ケースの深さは、特に限定するものではないが、基体8及び10を保護する観点からは、基体の厚さよりも大きく、基体がケース上面から突出しないことが好ましい。前記アンテナ素子は、接着剤で基板もしくはケースに固定しても良い。本発明に係るアンテナは複数の前記アンテナ素子を用いるため位置がずれたりし易いが、前記ケースを用いた構成を採用することによって複数の前記アンテナ素子の位置関係を保持することが可能となる。かかる場合においては、例えば導体部材を樹脂モールドで固定してもよいし、該導体部材は電極ピン構造としてケースから突出する形態としてもよい。また、ケース上部には、蓋部材を設けてもよい。蓋部材は接着剤で接着固定してもよいし、蓋部材はケースに掛止される構成を用いてもよい。蓋部材を設けることにより、アンテナ素子全体を保護することができる。また、上述の突起部の形成に加えて、または換えて前記蓋部材を用いてアンテナ素子の動きを拘束しても良い。
上述の例は、ケースを用いて基体を有するアンテナ素子の動きを拘束する例であるが、ケースを用いる替わりに、前記アンテナ素子全体を樹脂でモールドした構成としてもよい。例えば図6に示すアンテナ素子群を金型内に挿入し、樹脂を充填して樹脂モールドされた前記アンテナ素子を得る。この場合、基体から突出した導体は樹脂の外側まで延出するようにしておく。また、あらかじめ導体部と基体を装着できるように形成した樹脂体に導体部と基体を組み付けることもできる。
次にアンテナを構成する部材について説明する。導体部の材質は、特に限定するものではないが、例えば、板金や導電線で構成する場合はCu、Ag、Ni、Pt、Au、Al等の金属の他、42アロイ、コバール、リン青銅、黄銅、コルソン系銅合金等の合金を用いることができる。このうちCu等の硬度の低い導体材料は、導体部等の両端を屈曲して用いる場合に適し、42アロイ、コバール、リン青銅、コルソン系銅合金など硬度の高い導体材料は基体を強固に支持する部材として使用する場合に適する。
また、基体を貫通して使用される導体には42アロイ、コバール、リン青銅、コルソン系銅合金など硬度の高い導体材料が好ましい。これらの材質は特に導体の両端を屈曲せず直線状のまま使用する場合に適する。導体にはポリウレタンやエナメル等の絶縁被覆を設けてもよい。例えば基体に体積抵抗率の高い、例えば1×105Ω・m以上の磁性基体を用いることで絶縁被覆を設けることなく絶縁を確保することも可能であるが、絶縁被覆を設けることによって、特に高い絶縁性が得られる。この場合絶縁被覆の厚さは25μm以下が好ましい。これが厚くなりすぎると基体と導体との隙間が大きくなり、インダクタンス成分が減少する。
基体の形状は、特に限定するものではないが断面は長方形、正方形又は円形で、外観形状としては直方体、円柱等とすることができる。安定な実装を実現する上では直方体の形状が好ましい。また、直方体の場合には、長手方向に垂直な方向に位置する角の部分に面取りを設けることが好ましい。面取りを設けることによって、例えば基体に磁性基体を使用する場合は磁束が漏れにくくなるほか、チッピング等の不具合も防止できる。面取りの仕方は、角部を直線状に切り落とす方法であってもよいし、アールを設ける方法でもよい。面取りの幅(磁性基体の側面において面取り部分によって失われている長さ)は、その実質的な効果を発揮するためには0.2mm以上であることが好ましい。一方、面取りが大きくなると直方体形状であっても安定な実装が困難になるので1mm以下(基体の幅または高さの1/3以下)が好ましい。また各アンテナ素子の基体の長さは必ずしも同一でなくてもよいが、同一とすることにより製造工程の簡略化が図られる。
基体に磁性体を使用する場合、該基体の長さ、幅、高さの寸法が大きくなると共振周波数は低下する。例えば、GSM帯(810〜960MHz)、DCS/PCSおよびUMTS帯(1710〜2170MHz)のクワッドバンド携帯電話に使用できるようにするためには、筐体のアンテナ搭載スペースから基体の寸法は幅が5mm、高さが5mm以下として、基体を分割した場合でも長手方向の長さの合計は60mm以下とするのが好ましい。より好ましくは基体の長さの合計は30mm程度、幅は2〜4mm、高さは2〜4mmの範囲である。
また、基体を貫通する導体の断面形状も特に限定するものではないが、例えば円形、正方形、長方形等である。すなわち、導体としては線状(ワイヤ)、箔状(リボン)のものを用いることができる。例えば基体に磁性基体を使用する場合は導体の断面形状と基体の断面形状を略相似とし、導体の外周を同軸状に取り囲む磁体の厚さを一定にすると、均一性の高い磁路が形成されるので好ましい。ここで断面とは前記基体の長手方向に垂直な断面を指す。例えば、直方体、円柱の基体の長手方向に直線状の導体が貫通している場合は、該長手方向に垂直な断面は、導体の外周を基体が同軸状に取り囲む断面となる。また、基体が該長手方向に円弧状(アーチ形状)等のように曲線状である場合は、円弧の周方向に垂直、すなわち円弧の径方向で切る断面である。この場合も、導体の外周を基体が同軸状に取り囲む断面となる。
導体部の外観形状も特に限定するものではないが、板状の場合、長方形、正方形等とすることが好ましい。例えば長方形の板状導体部を立設させて用いる場合、導体部を基板スペースや筐体の形状に合わせて導体部を折り曲げて略L字状に形成しても構わないが、該板状である導体部の形状を基板スペースや筐体の形状に合わせて略中央部分をコ字状や円弧状(アーチ形状)とすることも出来る。
更に導体部の態様として線状、箔状、格子状など加工が容易な材料形態を用いると、板状のものよりフレキシブルであるので複雑な形状の筐体にも合わせることが出来る。箔状とは、主に基板上に印刷手段により形成する厚さが10μm程度の金属導電箔をいう。材質はCuやAgなどを用いる。格子状とは外観形状は板状であるが、板状の面に数十μm程度の孔が多数開いたものか、直径数十μm程度の線状の導体を多数本網目状にハンダ付け等により接続したものである。材質はCuやAgなどを用いる。さらに図5および図6の場合、前記導体部100と導体部200の合計長さは前記第1のアンテナ素子4の長さ、または前記第1のアンテナ素子4と前記第4のアンテナ素子2の合計長さよりも長い板状、箔状、格子状もしくは線状の導体部とすることができる。これによりGSM帯よりも低い周波数でかつ帯域の広い地上デジタルテレビ放送帯域などに対応できるようにすることもできる。また該導体部の一辺は基体の長手方向と近接して並行となることが好ましい。
例えば図3に示すように導体部100および200が板状、箔状又は格子状の導体で略L字状に形成される場合、各寸法は一辺が6〜10mm、別の一辺が10〜30mm、縦方向(高さ)幅が0・4m〜10mm、厚さが0.6〜1mmの範囲にあるのが好ましい。導電線で形成される場合は、直径は0.4〜0.8mm程度が好ましい。パターン幅は1mm程度が好ましい。このとき略L字状の導体部の途中には接続導体が接続され、アンテナの等価的形状として略T字状に形成されて第2のアンテナ素子1と、第3のアンテナ素子21を構成する。基体から突出した両端部は各々前記接続導体に接続される。導体部のグランド部と対向する導体部の一辺と、グランド部が近いと容量結合により放射に寄与しない寄生容量が増えてアンテナの放射効率が低下する。このため、前記導体部100および200の一辺と主回路基板上のグランド部端部40aとの距離Wは送受信回路やグランドとの容量結合による影響を少なくするよう6〜10mmに保つことが好ましい。また、導体部100および200のグランド部に最も近い端部と、グランド部端部40aとの間隔は0.2〜1mm程度に近接していることが好ましい。このように導体部の端面をグランド部に対向させて近接させておくと、前記間隔を増減する場合でも周波数の変化が少ないので共振周波数の微調整に好適である。
図9に示す直線状の導体が基体を貫通している構成についてさらに詳述する。かかる構成は、基体を形成してから導体を貫通させて製造することが出来る。例えば、基体の主成分であるFe2O3、BaO、CoOを一定のモル比とし、この主成分に対してCuO0.6重量部を添加し、水を媒体として湿式ボールミルにて混合する。次に、この混合粉を乾燥後、仮焼する。この仮焼粉を湿式ボールミルにて粉砕した。得られた粉砕粉に水、バインダ、潤滑剤および可塑剤を添加して、中心部に導体が貫通するように中空となるようにして押出し成形を行う。これを焼結し、直方体形状の焼結体を得る。得られた焼結体の中空部に導体を挿入して完成させる。
また別な製造方法としては基体と導体を一体で形成してもよい。例えば、基体が磁性体で構成される場合、特許文献1に開示されているような方法、すなわち磁性体の粉末の中に導線を配した状態で圧縮成形し、その後焼結する方法で形成することができる。また、基体と導体を一体で形成する方法として、グリーンシートを積層する積層プロセスを採用することもできる。磁性体粉末と結合剤、可塑剤の混合物をドクターブレード法等でシート成形してグリーンシートを得て、該グリーンシートを積層して積層体を得る。グリーンシートにAg等の導体ペーストを直線状に印刷して導体が貫通している磁性基体を得ることができる。
基体の貫通孔の断面形状は特に限定するものではないが、例えば、円形、四角形、長方形などとすればよい。導体の挿入を容易にし、基体と導体との隙間を小さくするためには、貫通孔の断面形状は、導体の断面形状と相似の形状にするとよい。基体と導体との間には隙間があってもよいが、隙間の存在はインダクタンス成分の低下につながるので、該隙間は基体の厚さに対して十分小さいことが望ましい。該隙間は片側で50μm以下であることが好ましい。好ましくは、貫通孔の断面形状と導体の断面形状が、導体を挿入可能な範囲で略同一であることが好ましい。かかる点は貫通孔の形成方法によらない。
図9に示す直線状の導体が基体を貫通している構成を、基体が磁性基体で構成される場合、磁性基体と導体を別体で形成し、実現する一例を図11に示す。図11に示す例は、直方体状の磁性基体が複数の部材で構成され、貫通孔が前記複数の部材によって形成されている実施形態である。図11(a)は、磁性基体が、導体を挿入するために溝が設けられた磁性部材26と、導体5と、該溝を挟んで該磁性部材26と貼り合わせるための磁性部材25で構成され、アンテナ素子と構成する手前の状態である。図11(b)は磁性部材26の溝に導体5を挿入し、さらに磁性部材25を貼り合わせて固定してアンテナ素子とした状態を示した図である。磁性部材26と磁性部材25を貼り合わせた後に、形成された貫通孔に導体を挿入してもよい。いずれも、磁性部材26と磁性部材25を貼り合わせることによって、貫通孔が形成されることになる。溝は例えばダイシング加工を用いれば、精度よく形成することができる。図11の例では、簡単な溝加工と部材の貼り合わせで基体を組み上げるので、貫通孔を極めて簡易に形成することができる。溝の断面形状は、導体の挿入が可能になるように導体の断面形状に応じたものにする。すなわち、溝の深さは、導体が溝の上面からはみださないように設定する。図11の例では、磁性部材の一方に溝を設けてあるが、両方の磁性部材に溝を設け、その溝を対向させて貼り合わせることによって、貫通孔を形成してもよい。この場合は、挿入する導体が両方の磁性部材の位置決めする機能も発揮する。
磁性基体が複数の部材で構成され、貫通孔が前記複数の部材よって形成されている他の実施形態として以下の構成を用いてもよい。すなわち、磁性基体は直方体状をなし、薄板状の2つの磁性部材を、他の磁性部材で挟むことで構成される。前記磁性部材はともに直方体である。前記薄板状の2つの磁性部材が所定の間隔を持つことで貫通孔が形成され、前記2つの磁性部材の間隔および厚みで貫通孔の形状、大きさが決定される。かかる構成は、溝加工を必要とせず、簡単な加工だけで磁性部材を製作することができるので、チップアンテナの簡易な製造に適する。
磁性基体と導体、磁性部材と磁性部材同士は、クランプ等を用いて固定することも可能であるが、確実に固定するためには固着することが好ましい。例えば、磁性基体と導体との固着であれば、磁性基体と導体隙間に接着剤を塗布して固着すればよい。磁性部材同士の固着は、貼り合わせ面に塗布して接着する。接着剤が厚くなると磁気ギャップが大きくなるため、接着剤の厚さは50μm以下が好ましい。より好ましくは10μm以下である。磁気的なギャップの形成を抑えるためには、貼り合わせ面以外の部分に接着剤を塗布して固着してもよい。例えば側面で、磁性部材の貼り合わせ部分を跨ぐように接着剤を塗布する。
接着剤は熱硬化性、紫外線硬化性等の樹脂や無機接着剤などを用いることができる。樹脂には酸化物磁性体などの磁性体フィラーを含有させてもよい。接着剤は、チップアンテナをハンダ固定する場合を考慮して、耐熱性の高いものを用いることが好ましい。特に、チップアンテナ全体が加熱されるリフローを適用する場合は、300℃程度の耐熱性があることが好ましい。なお、磁性基体と導体との隙間が小さく、磁性基体の貫通孔に設けられた導体の動きが磁性基体で十分に拘束される場合は、磁性基体と導体との間に必ずしも固定手段を講ずる必要はない。
前記の磁性基体としては、Ni−Zn系フェライト、Li系フェライトに代表されるスピネル型フェライト、プラーナと呼ばれるZ型、Y型等の六方晶フェライト、これらフェライト材料を含む複合材等を用いることができるが、フェライトの焼結体であることが好ましく、特にY型フェライトを用いることが好ましい。フェライトの焼結体は体積抵抗率が高く、導体との絶縁を図るうえで有利である。体積抵抗率の高いフェライト焼結体を用いれば、導体との間に絶縁被覆を必要としなくなる。
一般的にフェライトをアンテナに用いた場合、アンテナの損失は磁気損失tanδ×透磁率μに比例するが、磁気損失tanδは極力小さいのが好ましく、透磁率μは2〜6程度が好ましい。なかでもY型フェライトのうち後述する表1のY型フェライトは、3GHz以上の高周波まで透磁率μが2〜6程度に維持される点、3GHzまでの周波数帯域で磁気損失tanδが小さい点から、携帯電話でGSM帯(810〜960MHz)からDCS/PCSおよびUMTS帯(1710〜2170MHz)までを含むクワッドバンドのアンテナ素子に好適である。かかる場合、Y型フェライトの焼結体を磁性基体として用いればよい。Y型フェライトの焼結体は、Y型フェライト単相に限らず、Z型やW型等他の相を含有するものであってもよい。焼結体は、焼結後で磁性部材として十分な寸法精度を有していれば加工を必要としないが、貼り合わせ面は、研磨加工を施し、平坦度を確保することが望ましい。
前記Y型フェライトの1GHzにおける初透磁率を2以上で、損失係数を0.1以下、より好ましくは0.05以下とすると、広帯域、高利得のアンテナ素子を得る上で有利である。初透磁率が低くなりすぎると、広帯域化を図ることが困難となる。また、損失係数、すなわち磁気損失が大きくなるとチップアンテナの利得が低下する。アンテナ素子として−5dBi以上の平均利得を得るためには、損失係数は0.05以下が好ましい。損失係数を0.03以下と低くすることによって、特に利得の高いアンテナ素子を得ることができる。
このように本発明の磁性基体に係る構造は容量成分を形成しにくいため、比誘電率が多少大きくなってもアンテナ素子の内部損失の増加が抑制される。損失の観点からは、比誘電率は低いことが好ましいが、本発明の磁性基体に係る構造ではアンテナの内部損失が比誘電率の影響を受けにくい、すなわち比誘電率に対してかなり不感である。したがって、共振周波数のばらつきを抑えるために、基体には誘電率の大きい誘電材料を用いることもできる。この場合、比誘電率は4以上が好ましく、より好ましくは6以上である。
次にアンテナ素子の接続、固定方法について図13を用いて説明する。図2の第1のアンテナ素子4を用いる場合、その接続方法は磁性基体10から突出している導体の非給電側である一端は接続導体12を介して導体部200に接続し、給電側である他端は接続導体15を介して導体部100に接続し、導体部100に接続した給電線11が給電電極28に接続し、給電電極28を経由して送受信回路等29(図示せず)に接続されて、アンテナ装置が構成される。これらの接続はハンダ等により接合して行う。
アンテナ素子の具体的な固定方法は、前述のように各導体をハンダ等による接続をすることと、各導体や基体を基板に固定することにより行う。導体部100および導体部200が板状の導体部の場合は、該導体部が基板面に接する縁の部分にピン状の突出部を形成し、この突出部を基板16に設けた固定用電極27にハンダ接合で固定することにより基板に対して垂直になるように立設させる。導体部100および導体部200が線状の導電線で形成された導体部の場合も該導電線にピン状の突出部を接続して、この突出部を基板16に設けた固定用電極にハンダ接合で固定することにより基板に対して垂直になるように立設させることが出来る。基体10と導体7で構成される第1のアンテナ素子4は、両端を接続導体12を介して導体部200に、及び接続導体15を介して導体部100にハンダ接合により接続する。そして底面を接着剤等で基板に接合することにより固定する。
導体部100や導体部200に接続する第1のアンテナ素子4の導体7の他端や一端は必ずしも基板の電極等に固定する必要はないが、安定な実装や共振周波数の調整のためには、導体部に接続する側も基板の電極等に一旦固定してから導体部に接続することが好ましい。たとえば図1〜8の態様では、図10に示す態様と同様にすると良い。また第1のアンテナ素子4は、導体7の長手方向すなわち磁性基体10の長手方向が基板平面に平行になるように配置されているため、低背かつ安定な実装を可能にしている。この点は、後述する他の実施形態のアンテナ装置においても同じである。
導体部100および導体部200が筐体の内側面に沿って接着剤等で固定された導電箔あるいは副基板である別の基板に印刷等で形成された金属導電膜の導体パターンの場合、接続導体12および15を導体部100および導体部200にそれぞれハンダ接合することが出来る。磁性基体から突出している導体7と導体部100および導体部200との接続はそれぞれ接続導体12、15で直接接続しても良い。また本発明のアンテナ装置は、受信アンテナ、送信アンテナ、送受信アンテナのいずれの態様でも用いることができる。また、図14に示すようにアンテナaを前記副基板16aに実装し、主回路から離してもよい。この場合、主回路基板上のグランド部40とアンテナaとの距離が広がることにより、グランド部との容量結合が減少し利得や帯域幅が向上する他、主回路から放射されるノイズをアンテナ側で受信し難くなり無線機器の受信感度が向上する効果もある。
次に、アンテナ装置の共振周波数の調整方法について説明する。本発明のアンテナで使用する帯域を決めるには、まず中心周波数f0を決める必要がある。そのためには導体部の仕様から決めるが、まず材質を選定し、筐体内のスペースの制約条件を考慮して使用する周波数帯域の共振周波数に合わせて導体部の長さ、幅、厚さ或いは太さなどをおおよそ決める。また基体が磁性基体で構成される場合、あらかじめ対象とする周波数帯域に好ましい透磁率μと寸法から選定した磁性基体を装着して最後に対象とする周波数帯域の中心周波数f0に合うように導体部の長さを調整して決める。
詳細には、磁性基体の調整は材質を選定することにより透磁率μが決まり、次に導体部を装着して接続することによりアンテナとしての中心周波数f0が決まっていくが、磁性基体の大きさが大きいほど共振周波数は低下するので、まず磁性基体の幅、高さを決めて、磁性基体全体の概略長さをやや大きめに決めておく。更に形状の制約から筐体の幅を広く確保できない時などは磁性基体を分割しておいて、合計長で基体全体の長さを決めていく。次に導体部の長さを決める。はじめに低い周波数帯域を調整するが、磁性基体の給電側に接続された導体部の長さを調整する。このとき低い周波数帯域で広く帯域を確保するためには、前記接続導体と導体部の接続点を基点として伸びる複数の導体部の長さを少し異ならせて複数の共振点を持つように調整する。次に高い周波数帯域を調整するが、磁性基体の非給電側に接続された導体部の長さを調整する。このとき高い周波数帯域で広く帯域を確保するためには、前記接続導体と導体部の接続点を基点として伸びる複数の導体部の長さを少し異ならせて複数の共振点を持つように調整する。最後に全帯域においてバランスの取れた利得、VSWRとなるよう各導体部の長さ、各導体部とグランドとの間隔を微調整する。
次に、アンテナ装置の別の共振周波数の調整方法について図14、15を用いて説明する。図14、15においてはアンテナ装置が副基板16aに搭載されているので接地電極30を設けている。もちろんアンテナ装置が、アンテナ装置以外の主回路部品も搭載されている基板16に搭載されている場合、接地は基板16のグランド部40に取ればよい。図14に示すアンテナ装置は、導体部100および導体部200と接地電極30の間に基体10を配置し、さらに導体部100および導体部200の平面部を接地電極30の表面に対して垂直になるように配置したものである。この配置により距離を確保するとともに容量成分を大幅に抑えた構造とすることができるが、所望のアンテナ特性に対して容量成分(固定電極27と接地電極30の間)が不足する場合には、図15に示す方法により容量成分27aを付加することによってアンテナ特性の調整を行う。アンテナの共振周波数を調整する具体例として、固定用電極27と接地電極30との間に少なくとも一つのコンデンサとスイッチを接続して切り換える、給電電極28と送受信回路29との間に整合回路31を設ける、あるいは可変容量ダイオード(バラクタ・ダイオード)を接続し、この印加電圧によって静電容量を変えながら所定の共振周波数まで調整するなどの方法を用いることができる。これらの方法によればチップアンテナ自体の容量成分を調整する方法に比べて、簡易に容量成分の調整を行うことができる。
本発明に係るアンテナを用いてアンテナ装置を構成することによって、アンテナ装置の動作周波数帯域の広帯域化を図ることができる。携帯電話で使用する周波数帯域はGSM帯(810〜960MHz)や、DCS/PCSおよびUMTS帯(1710〜2170MHz)であるが、各々の周波数帯域幅は150MHz、460MHzと広く、かつGSM帯と、DCS/PCSおよびUMTS帯の間隔は約1000MHzも離れている。
一般的に、各々使用する周波数帯域の間隔が数百MHz以上も離れている場合は複数のアンテナ装置を用いる必要がある。その場合は実装面積、実装空間が増加してしまう。本発明によれば接続導体が導体部の途中に接続しているため、その接続点を基点として2方向に伸びる導体部の使用周波数の略λ/4に相当する長さを若干異ならせることにより、例えば図21に示すように複数の周波数f1、f2に共振させることができる。その結果各周波数帯域を広げることができる。この効果を利用して基体と基体の先端側の導体部とでGSM帯に共振させることができる。また基体と基体の給電側の導体部とでDCS/PCSおよびUMTS帯に共振させることができる。このとき基体と基体の給電側の導体部とが対向する部分の間では多重的な共振も起こるため、特に高い周波数帯域で広帯域であるDCS/PCSとUMTS帯に亘ってVSWRが低くて、高い利得が得ることができる。その結果、動作する周波数帯域が広く、各々数百MHz以上も離れている周波数帯域を一つの携帯電話に搭載する場合にもアンテナ装置を一つで済ますことができる。上述のような帯域幅を有するアンテナ装置を用いれば、GSM帯およびDCS/PCSおよびUMTS帯の周波数帯域をカバーすることが可能である。
アンテナ装置の必要平均利得としては好ましくは−5dBi以上であるが、本発明によれば上記離れた各々の周波数帯域においても利得−3dBi以上を確保することができる。また必要VSWRについては4以下が望ましいが、本発明によれば上記離れた各々の周波数帯域においてVSWR3.5以下を確保することができる。
本発明に係るアンテナは誘電体チップアンテナ若しくは磁性体チップアンテナと複数の導体部を組み合わせたものであり広い周波数帯域をカバーすることができるが、更に広帯域において高利得なアンテナとするためには、図16に示すようにアンテナ素子と送受信回路の間に、アンテナ装置の共振周波数を調整する整合回路31を設けても良い。整合回路31は例えば、図16に示すようなものを用いる。図16の例では、キャパシタC1、インダクタL1で整合回路を構成している。キャパシタC1の他端とインダクタL1の他端にアンテナ素子の導体を接続し、インダクタL1の一端は接地し、キャパシタC1の一端には送受信回路29を接続する。本発明に係るアンテナはそれ自体で広い周波数帯域をカバーすることができるので、このような簡単な整合回路とすることができ、省スペースとすることが出来る。
前記アンテナおよびそれを用いて構成した前記アンテナ装置は、通信機器に用いられる。例えば、前記アンテナおよびアンテナ装置は、携帯電話、無線LAN、パーソナルコンピュータ、地上デジタルテレビ放送関連機器等の通信機器に用いることができ、これらの機器を用いた通信における広帯域対応に寄与する。特に、本発明に係るアンテナまたはそれを用いたアンテナ装置を用いることにより広帯域で、実装面積、実装空間の増加を抑えることができるので、地上デジタルテレビ放送を送受信する携帯電話、携帯端末等にも用いることができる。
図17は通信機器として携帯電話に用いた例を示している。内蔵されたアンテナaの位置は図の上部の部分である。携帯電話33は、アンテナaが基板に取付けられている。アンテナaを構成する第1のアンテナ素子4と導体部100からなる第2のアンテナ素子1の一辺と、導体部200からなる第3のアンテナ素子21の一辺は長手方向に平行に配置されている。さらに、導体部100と導体部200の主部は携帯電話33の先端部分で空間ロスの小さい実装をするために携帯電話33の筐体の先端内側に沿うように配置されている。この例では基板16の表面から見て、凹字状の副基板16aを基体10と基板16のグランド部40との間に空間50がロ字状になるように凹字状部を基板10の一辺に向けて接している。
アンテナaを、副基板16aに設けることなく基板16に直接設ける場合は基体10の下方にロ字状に空間(開口部)50を設けてもよい。この空間50の存在により誘電率を下げることになりQ値が下がり、この間の静電容量が小さくなりアンテナaに生じる共振電流を打ち消す逆方向電流(グランド部40a近傍に生じる)が減少する結果、広帯域化や高利得化などの効果が得られる。また給電線11に対向したCuやAg等からなる導電体60を基板16の裏面あるいは基板16の層間に設けることにより、インピーダンス整合が良好になり、帯域幅が広がった結果、帯域内全体で高利得とすることができアンテナ性能が改善された。
以上、説明したアンテナの配置等、本発明に係る通信機器にかかわる技術内容は、携帯電話に限らず、いわゆる副基板にアンテナを搭載した携帯通信機器のアンテナ装置に適用してもよいのは言うまでもない。
さらに、図22に本発明の一実施形態に係るアンテナの斜視図を示す。この例のアンテナは、平面視においては図23に示すようになる。このアンテナは、主基板16mと略同一面に設けられ、コの字状(square bracket形状)をなして、主基板16mとの間に空間50を形成するアンテナ基板(副基板)16a上に設けられる。主基板16m側には、副基板16aとの境界部までグランドパターンが形成されているものとする。なお、この空隙空間50は、必ずしも必要ではないが、アンテナのQ値が高い場合にはこれを形成することでQ値を低下させ得る。
図22においては、給電線11が主基板16mから副基板16aへと延伸されている。また第1導体150が(図9に示したものと同様に)アンテナ基体10を貫通しており、その両端はアンテナ基体10の外に露出している。この第1導体150の一端は給電線11に接続され、また、他端は板状の第2導体100に電気的に接続される。
アンテナ基体10は、既に説明したように、磁性体チップや誘電体チップであり、アンテナ基体10内部の第1導体150の部分が、アンテナ基体10とともに第1のアンテナ素子4として機能する。
図22に示す例では、第2導体である導体部100は、基板16のグランドパターン面(基板の面と平行に配されている)に対して略垂直に立てられた板状の導体としている。グランドパターンとの間の対向面積が増大することによる容量成分の増大を防止するためである。この導体部100は、副基板16aの周に沿って、折曲部では鈍角をなすよう折り曲げられている。なお、ここでは平面視において多角形をなすよう折り曲られているが、これに限らず、導体部100は、弧状に湾曲させられていてもよい。
また第1導体150の端部は、図23に示すように、導体部100の長手方向両端部LT,RTからそれぞれ予め定めた長さL1,L2だけ離れた位置にある一点E1(LT−E1間の導体長さL1、RT−E1間の導体長さL2)で電気的に接続される。導体部100は、この第1導体150を介して給電線11からの給電を受けて、第2のアンテナ素子1として機能することとなる。
このように導体部100を、副基板16aの外周に沿って、第1のアンテナ素子4を囲むように配設することで、第2のアンテナ素子1は、比較的低い周波数帯域、例えばGSM帯よりも低い周波数で、かつ帯域の広い地上デジタルテレビ放送帯域などに対応できる。
またここまでの説明では導体部100は、板状の導体としていたが、本実施の形態はこれに限られず、図24に例示するように電線や金属箔などで基板16aの面内に形成されてもよい。さらに導体部100は基板16上に形成した導体線路パターンであってもよい。いずれの場合も、両端部LT,RTからそれぞれ予め定めた長さL1,L2の位置にある一点E1に第1導体150を電気的に接続する。
例えば帯域の広い地上デジタルテレビ放送帯では、L1,L2の長さを若干異ならせることにより、それぞれ互いに異なる導体長さL1,L2に対応した2つの共振周波数を持つことにより前記放送帯全域で利得低下を少なくしてカバーすることができる。
さらに、ここでは導体部100は、第1導体150を介して給電を受けることとしているが、これに限らず給電線11から第1導体150とは異なる接続導体を介して給電を受けてもよい。この場合、導体部100の両端部LT,RTからそれぞれ導体長さL1,L2だけ離れた位置にある一点に接続導体を電気的に接続する。また、このように接続導体を用いて導体部100に給電する場合、第1導体150の一端は、当該接続導体に接続されて給電を受けてもよいし、導体部100に接続されて給電を受けてもよい。
図25には、本発明の実施の形態に係るアンテナのもう一つの例を示す。この図25の例のアンテナは、第2導体である導体部100と第3導体である導体部200とが、第1のアンテナ素子4を取り囲むように配設される。この導体部100や、導体部200もまた、基板16mのグランドパターン面(基板の面と平行に配されている)に対して略垂直に立てられた板状の導体として構わない。
ここで導体部200の両端部LT2,RT2からそれぞれ予め定めた長さL3,L4の位置にある一点E2に、接続導体150bの一端が接続される。この接続導体150bの他端側は給電線11に接続され、導体部200は、接続導体150bを介して給電線11から給電を受ける。
また給電点E1からの長さL1,L2だけ延びている導体部分はGSM帯に共振させ、給電点E2から長さL3だけ延びている導体部分はDCS/PCS帯に共振させ、長さL4の導体部分はUMTS帯に共振させることでクワッドバンドに対応することができる。また特定の一つの周波数に共振させる場合や、GSM帯が不要な場合はL1=0またはL2=0として、第1導体150aの一端から直線的に延長して導体部100を設けてもよい。この場合、図7に破線部分で示した導体部100′に相当する位置に導体部100が設けられる。DCS/PCS帯が不要な場合はL3=0とすることができ、またUMTS帯が不要な場合はL4=0とすることができる。L3=0またはL4=0のいずれの場合も図7に示したのと同様に導体部200を設ければよい。
また、この導体部200には、第1導体150aの一端が接続される。第1導体150aは、アンテナ基体10を貫通して、両端がアンテナ基体10の外へ露出している。この第1導体150aは、導体部100の両端部LT,RTからそれぞれ予め定めた長さL1,L2だけ離れた位置にある一点E1に電気的に接続される。
この図25に示した例においても、導体部100や導体部200は、板状の導体でなくてもよく、電線や金属箔などで形成されてもよい。さらに基板16上に形成した導体線路パターンであってもよい。また第1導体150aは導体部200ではなく、接続導体150bに接続されてもよい。この場合、第1導体150aは接続導体150bを介して給電を受ける。
本実施の形態のアンテナにおいては、アンテナ基体10にはヘリカル電極を有する誘電体チップアンテナや磁性体チップアンテナとは異なり、導体が巻き回されていないので、線間容量成分(stray capacity between the lines)を形成しにくく、帯域を拡大する上で有利である。またアンテナ基体10と導体部100や導体部200の一辺とが離間されており、導体部100や導体部200の端部は、主基板16mのグランドパターンからも離れている。従って主基板16mのグランドと導体部100や導体部200との間における放射抵抗が増大し、放射効率が向上する。
さらに本実施の形態では、導体部100、導体部200とも、それらの各両端から予め定めた導体長だけ離れた位置に給電が行われるので、L1≠L2とすることで、それぞれ対応周波数のλ/4に設定して、各導体が2つの互いに異なる周波数に共振できるようにすることもできる。これにより電圧定在波比(VSWR)が低く、利得を向上した周波数帯域を広くできる。すなわち、これらにより広帯域で良好なアンテナ特性が得られるのである。
なお、導体部100、導体部200の形状は副基板16aやこれを内蔵する筐体形状に合わせて略U字状、略逆V字状あるいは略Y字状等としてもよい。
主基板16mには、信号処理回路や送受信回路が接続される。信号処理回路は例えば送信の対象となるデータの入力を受けて、当該データを符号化して送受信回路に出力する。送受信回路ではこの符号化されたデータを変調し、高周波信号として給電線11を介して出力し、副基板16aに搭載されたアンテナ(第1のアンテナ素子4,第2のアンテナ素子1等)から放射させる。
また送受信回路は、アンテナ側に到来した信号を給電線11を介して受けて、当該信号を復調して信号処理回路に出力する。信号処理回路は当該復調された信号に含まれる符号化されたデータを復号し、復号によって得られたデータを出力する。
本実施の形態のアンテナでは、図26に示すように、第1導体150が複数のアンテナ基体10a,10bを貫通するようにしてもよい。この場合、各アンテナ基体10a,10b間は離間して配置する。このようにすると、第1導体150のアンテナ基体10aを貫通する部分が、アンテナ基体10aとともにアンテナ素子として機能することとなり、同様に第1導体150のアンテナ基体10bを貫通する部分とアンテナ基体10bとがまた別のアンテナ素子として機能する。なお図26の例では、導体部100を配設した例を示しているが、これに限らず導体部100、導体部200を共に配設している場合も、第1導体150が複数のアンテナ基体10を貫通するようにしてもよい。なお、これら複数のアンテナ基体10の材質は互いに異なっていてもよい。
また図26に示した例では、複数の基体10が第1導体150と平行な直線上に並んでいるが、図27に平面図を示すように、第1導体150をクランク状に蛇行させて、アンテナ基体10を並列に配置するなど、実装空間に応じてその配置を変えてもよい。またアンテナ基体10(10a,10bなど)を複数に分割することで、個々のアンテナ基体10の長さを短くでき、構造的強度が向上して、アンテナの信頼性向上に寄与する。
ここで第1導体150の蛇行経路の形状は、ミアンダ状であってもよいし、L字状であってもよい。また、第1導体150は、弧状に配設されてもよい。
なお、第1のアンテナ素子4の複数のアンテナ基体10として、誘電体を使用する場合、誘電体を貫通する第1導体150を誘電体が取り囲む構造となるので、アンテナ基体10が持つ実効誘電率が高くなる。またアンテナ基体10として磁性体を使用する場合、磁性体を貫通する第1導体150を磁性体が取り囲む構造になるので、磁界は第1導体150を中心とした同軸状に形成され、アンテナ基体10が持つ透磁率が高くなる。これによりアンテナ基体10が誘電体であっても、磁性体であっても波長短縮効果が生じ、アンテナ全体の小型化を図ることができる。
また、ここまでの説明では、第1導体150の両端が給電線11または他の導体に接続されているが、既に説明したように、第1導体150の両端から給電線11または他の導体までは、他の接続導体を利用して接続してもよい。この場合、第1導体150は、その全長が直線状に形成されてもよい。
また、ここまでの説明では第1導体150aを第2導体部や第3導体部が囲む配置としていたがこの例には限られない。例えば図28に示すように、第1導体150aの両端のそれぞれに、導体長さL1,L2の導体部100a、100bを接続し、また第1導体150aの一端側に給電点を設けて接続導体150bにて主基板16mからの給電を受けるようにしてもよい。ここでは導体部100a,100bは、副基板16aの形状に沿って、L字に屈曲させた例としている。さらに図28の例では、接続導体150bの、主基板16mから第1導体150aの給電点までの間に接続され、予め定めた長さL3だけ第1導体150aに略平行に伸ばした導体部200を設けている。これにより、導体部100a,第1導体150a,導体部100bが、導体部200を取り囲むような形状で配されることとなる。
なお、この構成においては、主基板16mのグランド面から導体部200までの距離d2よりも、導体部200から第1導体150a(アンテナ基体10)までの距離d1が、より小さくなるよう、導体部200を配設する。これにより、接地容量を小さくしつつ、アンテナ基体10等との間の寄生容量が大きくなり、広帯域化を図ることができる。
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。