JP5810959B2 - 燃料噴射ノズル - Google Patents
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Description
従来より、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関(エンジン)の燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁として、軸線方向に往復移動するニードルと、このニードルをその軸線方向へ往復摺動可能に支持する摺動孔を有する有底筒状のノズルボデーとを備えた燃料噴射ノズルが公知である(例えば、特許文献1及び2参照)。
ノズルボデー103の噴孔周辺部には、逆円錐状のノズルシート面104、サック室107および複数の噴孔108等が設けられている。
燃料噴射ノズルの閉弁時には、ピストンおよびスプリングから閉弁方向の軸力がニードル101に付与されている。
燃料噴射ノズルの閉弁時には、燃料圧力とスプリング荷重によるニードル軸力(ノズル閉弁力:F1+F2)が働く。これにより、ニードル101の弁部102が、ノズルボデー103のノズルシート面104に着座して噴孔108を閉鎖する。よって、噴孔108からの燃料噴射が停止される。
このように、ノズルボデー103のノズルシート面104は、燃料噴射ノズルの閉弁時に、ニードル101の弁部102が着座することで、大きい衝撃荷重を繰り返し受けるので、硬度アップおよび耐摩耗性の向上が望まれる。
近年、ディーゼルエンジンの燃焼室内に高圧燃料を噴射する燃料噴射ノズルにおいて、環境改善や省エネ推進のため、排気ガス規制や燃費規制の要求が厳しくなって来ている。そのため、初期の噴射量精度の向上および燃料の噴射圧力の上昇が進んでいる。
この燃料の噴射圧力の高圧化に伴って燃料の噴射圧力の使用範囲がより拡大し、ノズル閉弁時における燃料圧力とスプリング荷重によるニードル軸力(ノズル閉弁力:F1+F2)が更に大きくなり、ノズルボデー103のノズルシート面104に過剰な力が加わり、ノズルシート面104の耐摩耗性が低下する可能性がある。
また、排気ガス等のエミッション性能の維持には、初期だけでなく長期間の安定的な性能が要求されて来ている。
しかし、高圧噴射化やエンジンの燃焼室内の燃焼温度上昇等で、燃料噴射ノズルの環境の変化が厳しくなり、作動を繰り返すことによって経年劣化(変化)による噴射性能変化が、上記の排気ガス規制や燃費規制を守るための課題になっている。
このとき、噴孔108を閉じるタイミングになると、ニードル101の弁部102がノズルボデー103のノズルシート面104に着座する時の衝撃荷重により、図5(c)に示したように、ノズルシート面104のシート部111の周辺がノズルボデー103の外側に凹み、ノズルシート面104よりも下流側のシート下流部112がノズルボデー103の内側へ盛り上がる態様の塑性変形が起こる。
ノズルボデーは、サック部よりも燃料流方向の上流側に位置し、ニードルの弁部が着座可能なノズルシートを有している。
ノズルシートは、ニードルの弁部の縮径部が当接可能なシート部、およびこのシート部よりも燃料流方向の下流側に位置し、ニードルからシート部が荷重を受けた際に生じる塑性変形による盛り上がり部を吸収する内容積の変形逃がし部を有している。
そして、縮径部は、閉弁時にノズルシートに密着するシール部と、このシール部よりも燃料流方向の下流側に位置し外径が徐々に縮径していく傾斜角度の異なる2つの円錐面とを有し、上流側の円錐面を第2円錐面、下流側の円錐面を第3円錐面と呼ぶとき、第2円錐面と第3円錐面との間に円環状の交差稜線が形成されており、変形逃がし部は、交差稜線よりも燃料流方向の上流側で第2円錐面と対峙している。
請求項3に記載の発明によれば、環状空間は、ノズルシートの内面をニードルの弁部側に対して反対側に凹ませることで設けられる。
請求項4に記載の発明によれば、燃料噴射ノズルは、ニードルの開弁時に、ニードルの弁部とノズルボデーのノズルシートとの間に形成される環状隙間を備えている。
環状空間は、環状隙間側に対して反対側に凹ませることで設けられる。
請求項6に記載の発明によれば、ノズルボデーは、一端に向かって徐々に内径が縮径する円錐形状のシート面を有するノズルシートを備えている。
ニードルの弁部に設けられるシール部は、ノズルボデーのノズルシートに設けられるシート面に対して着座、離脱する。これにより、ノズルシートのシート面よりも燃料流方向の下流側に設けられる噴孔が閉鎖、開放される。そして、噴孔が開放されている間は、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関(エンジン)の気筒の燃焼室内に燃料が噴射される。
請求項8に記載の発明によれば、ノズルボデーの噴孔の周辺部は、燃料流路と噴孔とを連通すると共に、燃料流路にて環状に流れる燃料を集合させて噴孔へ分配供給するサック室が形成される有底筒状のサック部を有している。
請求項9に記載の発明によれば、噴孔は、サック部の内外を連通するように貫通する複数の噴孔である。これらの噴孔は、サック部の周方向に所定の距離を隔てて形成されている。
請求項10に記載の発明によれば、ノズルボデーまたは噴孔の周辺部が、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関(エンジン)の燃焼室内に露出(突出)するように配置されている。
本発明は、ノズルボデーのノズルシートの経年劣化後におけるノズル開弁力の変化を抑え、燃料噴射量の変化を低減するという目的を、ノズルボデーのノズルシートに、ニードルからシート部が荷重を受けた際に生じる塑性変形を許容する変形逃がし部を設けて、ニードルのシート径下流側で微小隙間となる面積を縮小させることで実現した。
図1ないし図3は、本発明を適用した燃料噴射ノズルを備えたインジェクタ(実施例1)を示したものである。
このコモンレール式燃料噴射システムは、燃料タンクから低圧燃料を汲み上げるフィードポンプを内蔵したサプライポンプと、このサプライポンプの燃料吐出口から高圧燃料が導入されるコモンレールと、このコモンレールの各燃料出口から高圧燃料が分配供給される複数のインジェクタとを備え、コモンレールの内部に蓄圧された高圧燃料を各インジェクタを介してエンジンの各気筒毎の燃焼室内に噴射供給するように構成されている。
コモンレールの内部には、エンジンの各気筒毎の燃焼室内に噴射供給する燃料の噴射圧力に相当する高圧燃料を蓄圧する蓄圧室が形成されている。
なお、サプライポンプまたはコモンレールは、高圧燃料を発生する高圧発生部を構成する。
インジェクタは、エンジンへの燃料噴射を行う燃料噴射ノズルと、この燃料噴射ノズルのハウジングに締結固定される電磁弁とを一体化した電磁式燃料噴射弁である。
電磁弁は、エンジン制御ユニット(電子制御装置:ECU)から印加されるインジェクタ駆動電流によって電子制御されるように構成されている。これにより、インジェクタのノズル噴孔部から燃料噴射される燃料噴射量および噴射時期が制御される。
ノズルボデー3は、エンジンの燃焼室内に露出してエンジンの燃焼熱に直接晒される円筒状の噴孔周辺部4を備えている。この噴孔周辺部4は、ニードル1の弁部2が着座可能な円錐面形状のノズルシート5、内部にサック室6を形成する円錐形状のサック部7、およびサック室6に連通する複数の噴孔8を備えている。
また、ノズルボデー3の軸線方向の中央部には、燃料溜り室15が形成されている。この燃料溜り室15に連通する燃料流路16は、ニードル1の弁部2と噴孔周辺部4のノズルシート5との間に形成される環状隙間(以下微小隙間17)を介して、サック室6に連通している。微小隙間17とは、燃料噴射ノズルの開弁時(ノズル開弁時)に、ニードル1の弁部2のシート径よりも燃料流方向の下流側に形成される燃料流路のことである。
チップパッキン10は、コマンドピストン12やコイルスプリング13から軸方向荷重(閉弁方向の軸力)を受けるニードル1のフルリフト量を規定する規制部材である。
電磁弁は、オリフィスプレート22と、このオリフィスプレート22に対して着座、離脱することが可能なボールバルブ(電磁弁の弁体)25と、このボールバルブ25を開弁方向に駆動する電磁アクチュエータとによって構成されている。また、オリフィスプレート22には、通過する燃料の流量を調節するための入口側、出口側オリフィス26、27が形成されている。なお、出口側オリフィス27は、電磁弁の弁孔を構成している。
電磁アクチュエータは、円筒状のバルブボデー21と、このバルブボデー21をその中心軸線方向に貫通する摺動孔内に摺動自在に支持される磁性体製のアーマチャ31と、通電されると周囲に磁束を発生するソレノイドコイル(以下コイル)32と、このコイル32の内周側および外周側に磁路を形成する磁性体製のステータコア33とを備えている。 ボールバルブ25およびアーマチャ31は、コイルスプリング34の付勢力によって、オリフィスプレート22のバルブシートに押し付けられている。
コイル32は、電力の供給を受けると(電流印加または通電されると)、アーマチャ31をステータコア33の磁極面側に引き寄せる磁力を発生する磁束発生手段(磁力発生手段)である。
コイル32の端末部は、一対の外部接続端子(ターミナル)35に接続されている。これらのターミナル35は、コイル32と外部回路(外部電源や外部制御回路:ECU)との接続を行うためのコネクタ端子である。
コイル32は、アーマチャ31を吸引することで、アーマチャ31の先端収納孔に収納されているボールバルブ25をオリフィスプレート22のバルブシートより離脱させる。これにより、出口側オリフィス27を有する出口流路が開放される。
コイル32への通電が停止されると、コイルスプリング34の付勢力によって、アーマチャ31が移動してボールバルブ25がオリフィスプレート22のバルブシートに着座する。これにより、出口側オリフィス27を有する出口流路が閉鎖される。
また、マイクロコンピュータは、イグニッションスイッチがオン(IG・ON)されると、ROM、RAM等のメモリ内に格納された制御プログラムに基づいて、エンジンの各気筒毎の燃焼室内への燃料噴射圧力、各インジェクタの燃料噴射時期、各インジェクタからの燃料噴射量等を演算し、複数のインジェクタの各電磁弁のコイル32への供給電流量(所謂インジェクタ駆動電流)を電子制御する。
燃料噴射ノズルは、軸線方向に真っ直ぐに延びるニードル1、軸線方向に真っ直ぐに延びるコマンドピストン12、およびこのコマンドピストン12の周囲に螺旋状に巻装されるコイルスプリング13を内蔵するハウジングを備えている。
ニードル1は、その軸線方向に往復移動可能に設置され、且つノズルボデー3の中心軸線上に設置されている。そして、ニードル1は、ノズルシート5に対して着座、離脱して複数の噴孔8を閉鎖、開放する。
また、ニードル1は、コマンドピストン12との間に、コイルスプリング13のスプリング荷重(ニードル1の閉弁方向の軸力)を受け止めるスプリング座を有するロッドプレッシャ43を装着している。
また、中径軸部44よりも先端側、つまりニードル1の軸線方向の一端部(先端部)には、中径軸部44よりも外径が小さい弁部2が設けられている。
なお、ニードル1の弁部2の詳細は、後述する。
コマンドピストン12は、インジェクタボデー9の中心軸線上に設置されており、ニードル1と同一軸線上に配設されている。このコマンドピストン12は、ニードル1に連動して中心軸線方向(図示上下方向)に往復移動する。
なお、摺動部47の摺動面は、インジェクタボデー9の摺動孔の孔壁面に対して摺動可能となっている。また、小径軸部48の先端面(図示下端面)には、ロッドプレッシャ43を介して、ニードル1の頭部41の図示上端面と当接する円形状の当接面が設けられている。
また、コマンドピストン12には、摺動部47の端面に円形状の受圧面49が設けられている。この受圧面49は、ニードル1のフルリフト時に、圧力制御室14内の燃料圧力を受ける第2燃料受圧部となる。
ノズルボデー3の軸線方向の一端側(先端側)には、内部に円錐形状空間を形成する逆円錐形状の噴孔周辺部4が設けられている。この噴孔周辺部4は、ノズルボデー3の軸線方向の一端側、つまりエンジンの各気筒毎の燃焼室内に露出(突出)するように配置されるノズル噴孔部である。
また、ノズルシート5よりも燃料流方向の下流側には、有底円筒状のサック部7が設けられている。サック部7の内部には、サックボリュームであるサック室6が形成されている。このサック室6は、燃料流路16と複数の噴孔8とを連通すると共に、燃料流路16にて環状に流れる燃料を集合させて複数の噴孔8へ分配供給する分配室である。
複数の噴孔8は、サック部7の内壁面で開口した噴孔入口、サック部7の外壁面で開口した噴孔出口、および噴孔入口と噴孔出口とを連通する噴孔流路を有している。また、複数の噴孔8は、エンジンの各気筒毎の燃焼室内に燃料噴霧が効率良く行き渡るように、サック部7の円周方向に所定の間隔で複数個形成されている。
なお、ノズルボデー3、特にノズルシート5の詳細は、後述する。
そして、インジェクタボデー9は、内部にコマンドピストン12が嵌挿される円筒状のシリンダ55を有している。このシリンダ55の中心軸線上には、オリフィスプレート22の密着面に液密的に密着する結合面(密着面)からノズルボデー側へと真っ直ぐに延びるシリンダ孔(軸方向孔)が設けられている。このシリンダ孔の内部には、コマンドピストン12がその軸線方向に往復移動可能に収容されている。
コイルスプリング13は、ニードル1の弁部2をノズルボデー3のノズルシート5に押し付ける方向(閉弁方向)に付勢する付勢力(閉弁方向の軸力)を発生するニードル付勢手段である。
シリンダ孔の図示上端には、圧力制御室14が設けられている。この圧力制御室14は、内部に導入される燃料の油圧力が、ニードル1の閉弁方向に作用する第2圧力室(背圧制御室、第2燃料室)としての機能を有している。
これらの燃料流路62〜66は、インジェクタの各部(インジェクタの内部に設けられる圧力制御室14、燃料溜り室15、燃料流路16、微小隙間17、サック室6、複数の噴孔8、入口側、出口側オリフィス26、27等)に高圧燃料を導入(供給)するための高圧燃料通路である。
燃料溜り室15は、燃料流路66に連通している。また、燃料溜り室15は、ニードル1の中径軸部44の外周とノズルボデー3の軸方向孔の孔壁面との間に形成される燃料流路16に連通している。
燃料回収通路73内に流入した余剰燃料は、燃料戻し配管を経て燃料タンクに戻される。
ニードル1は、上記の各部が鍛造加工や機械加工(切削加工、研削加工)等により設けられている。また、ニードル1は、機械加工が成されたニードル部品形状の鍛造成形体に対して、ニードル1の耐摩耗性の向上、およびニードル1の表面硬化のための熱処理(浸炭焼入れ処理および焼戻し処理等)が施されている。
縮径部77は、一端に向かって徐々に外径が縮径する円錐台形状の第1円錐面81、一端に向かって徐々に外径が縮径すると共に、第1円錐面81よりも傾斜(テーパ)角度が急な円錐台形状の第2円錐面82、および一端に向かって徐々に外径が縮径すると共に、第2円錐面82よりも傾斜(テーパ)角度が急な円錐形状の第3円錐面83を有している。
また、第2円錐面82と第3円錐面83との間には、円環状の交差稜線(エッジライン)85が形成されている。
また、第3円錐面83は、ニードル1のリフト開始時に、サック室6内および微小隙間17内の燃料圧力(開弁方向の燃料圧力:以下ノズル開弁力)を受ける第3燃料受圧部となる。
ノズルボデー3は、ニードル1と同様に、上記の各部が鍛造加工や機械加工(切削加工、研削加工)等により設けられている。また、ノズルボデー3は、機械加工が成されたノズルボデー部品形状の鍛造成形体に対して、ノズルボデー3の耐摩耗性の向上、およびノズルボデー3の表面硬化のための熱処理(浸炭焼入れ処理および焼戻し処理等)が施されている。
ノズルシート5は、ノズル閉弁時にシール部84が当接可能な円環状のシート部94、およびニードル1の弁部2からシート部94が軸方向荷重(ニードル軸力)を受けた際(ノズル閉弁時)に生じる塑性変形(盛り上がる態様の塑性変形)を許容する円環状の変形逃がし凹部95を有している。
なお、変形逃がし凹部95の内面(凹曲面)とノズルシート5の内面(ノズルシート面)との間には、円環状の交差稜線(シートライン)96が形成されている。また、変形逃がし凹部95の内面(凹曲面)とノズルボデー3の内面(円錐台面)との間には、円環状の交差稜線(シートライン)97が形成されている。また、ノズルボデー3の内面(円錐台面)とサック部7の内面(凹曲面)の間には、円環状の交差稜線(シートライン)98が形成されている。
環状空間99は、ノズルシート面をニードル1の弁部2側に対して反対側に凹ませることで設けられる。また、環状空間99は、ニードル1のシール部84のシート径下流側の微小隙間17側に対して反対側に凹ませることで設けられる。
変形逃がし凹部95の内容積、つまり環状空間99の容積は、ノズルシート5の経年劣化後にノズルシート5の内面に塑性変形により形成される凹み部Aと盛り上がり部Bの容積を考慮して設定されている(図3参照)。なお、少なくとも盛り上がり部Bの容積を考慮して変形逃がし凹部95の内容積(溝深さ、溝幅)を決定すると良い。
次に、本実施例のインジェクタの作用を図1ないし図3に基づいて簡単に説明する。
コモンレールからインジェクタに供給される高圧燃料は、インジェクタの燃料導入流路61に到達する。燃料導入流路61に到達した燃料は、各燃料流路62〜66を通って、インジェクタの各部(入口側オリフィス26、圧力制御室14、出口側オリフィス27、燃料溜り室15、燃料流路16等)に導入(供給)される。
これによって、ニードル1は、コマンドピストン12を介して、圧力制御室14内の燃料圧力によって押し下げる方向(ニードル1の閉弁方向)の力(軸力)を受けると共に、燃料溜り室15内の燃料圧力によって押し上げる方向(ニードル1の開弁方向)の力(軸力)を受けることになる。
その結果、電磁弁の閉弁時には、ニードル1の弁部2がノズルボデー3の噴孔周辺部4のノズルシート5に着座して各噴孔8を塞いでいる。
したがって、当該インジェクタは、ニードル1が閉弁した閉弁(全閉)状態となり、エンジンの燃焼室内への燃料噴射が成されない。
これにより、ボールバルブ25がオリフィスプレート22から離脱して、オリフィスプレート22の出口側オリフィス27が開放される。したがって、圧力制御室14の内部に充満していた燃料は、圧力制御室14から出口側オリフィス27→燃料排出流路71→燃料排出流路72→燃料回収通路73を経て燃料タンクに戻される。
したがって、当該インジェクタは、エンジンの燃焼室内への燃料の噴射を開始する。
本実施例の燃料噴射ノズルの特徴を図1ないし図3に基づいて説明する。
上記の構造を有する燃料噴射ノズルを備えたインジェクタをエンジンのシリンダヘッドに取り付けて使用した場合、ノズルシート5の経年劣化が起きる前の初期状態における、燃料噴射ノズルの閉弁時(ノズル閉弁時)には、図3(a)に示したように、燃料圧力とスプリング荷重によるニードル軸力(F1+F2)によってニードル1の軸線方向の一端部に設けられる弁部2がノズルボデー3の噴孔周辺部4に形成されるノズルシート5の内面(円錐面形状のノズルシート面)に着座することで、複数の噴孔8からの燃料噴射が成されない。
一方、初期状態における、燃料噴射ノズルの開弁時(ノズル開弁時)には、図3(b)に示したように、燃料圧力によるノズル開弁力(F3+F4)によってニードル1の弁部2がノズルボデー3のノズルシート5の内面より離脱することで、複数の噴孔8からエンジンの各気筒の燃焼室内への燃料噴射が行われる。
このような従来の燃料噴射ノズルに対して、本実施例の燃料噴射ノズルにおいては、ノズルシート5のシート部94よりも下流側(サック室6よりも上流側)に変形逃がし凹部95を設けたことで、シート部94の下流側が盛り上がる態様の塑性変形分を軽減させたことによって上記性能が得られた。なお、塑性変形により形成される盛り上がり部Bの頂部(最小内径部)がノズルシート面の延長線上よりもニードル1の弁部2側に突き出さないように変形逃がし凹部95の容積が考慮されている。
以上のように、本実施例の燃料噴射ノズルにおいては、ノズルボデー3のノズルシート5の内面に、ニードル1からシート部94がニードル軸力を受けた際に生じる盛り上がる態様の塑性変形を許容する変形逃がし部95を設けることにより、ニードル1の弁部2のシート径下流側で微小隙間17となる面積を縮小させることができる。これにより、ノズルシート5の経年劣化が起きる前の初期状態とノズルシート5の経年劣化後との間のノズル開弁力(F4)の変化を抑制することができる。
したがって、複数の噴孔8からエンジンの各気筒の燃焼室内へ噴射される燃料噴射量の変化を低減することができる。
本実施例では、本発明を備えた燃料噴射弁として、コモンレールの内部に蓄圧した高圧燃料を、エンジンの気筒内に噴射供給するインジェクタ(燃料噴射ノズルと電磁弁を一体化した燃料噴射弁)に適用した例を説明したが、本発明を備えた燃料噴射弁として、列型燃料噴射ポンプや分配型燃料噴射ポンプ等の燃料噴射ポンプから燃料溜り室の内部に直接燃料が圧送され、燃料溜り室内の燃料圧力(ノズル開弁力)がスプリング(バネ)の付勢力(閉弁方向の軸力:ノズル閉弁力)よりも上回るとニードルが開弁して、エンジンの気筒内に燃料を噴射供給する燃料噴射装置に使用される燃料噴射ノズルに適用しても良い。
また、ニードル1をその軸線方向に開閉動作させるアクチュエータを、モータ、減速機構、変換機構を備えた電動アクチュエータによって構成しても良い。
また、ノズルボデー3の軸線方向の先端側からサック室6およびサック部7を廃止しても良い。また、ノズルボデー3の軸線方向の一端側(先端側)に、ノズルボデー3の軸線方向の先端壁部(円頂部)を貫通する噴孔を設けても良い。
また、本発明の燃料噴射ノズルを備えた燃料噴射弁を、例えばガソリンエンジン等の内燃機関の気筒内に燃料を直接噴射するフューエルインジェクタに適用しても良い。
2 ニードルの弁部
3 ノズルボデー
4 ノズルボデーの噴孔周辺部
5 ノズルシート(ノズルシート面)
8 ノズルボデーの噴孔
17 ニードルのシート径下流側の微小隙間(環状隙間)
94 ノズルシートのシート部
95 ノズルシートの変形逃がし凹部
99 環状空間
Claims (10)
- 円錐形状の縮径部(77)が形成された弁部(2)を有し、軸線方向に往復移動可能なニードル(1)と、
燃料噴射を行う噴孔(8)が形成されたサック部(7)を有し、前記ニードル(1)をその軸線方向に往復移動可能に支持するノズルボデー(3)と
を備えた燃料噴射ノズルにおいて、
前記ノズルボデー(3)は、前記サック部(7)よりも燃料流方向の上流側に位置し、前記ニードル(1)の弁部(2)が着座可能なノズルシート(5)を有し、
前記ノズルシート(5)は、前記弁部(2)の縮径部(77)が当接可能なシート部(94)、およびこのシート部(94)よりも燃料流方向の下流側に位置し、前記ニードル(1)から前記シート部(94)が荷重を受けた際に生じる塑性変形による盛り上がり部(B)を吸収する内容積の変形逃がし部(95)を有しており、
前記縮径部(77)は、閉弁時に前記ノズルシート(5)に密着するシール部(84)と、このシール部(84)よりも燃料流方向の下流側に位置し外径が徐々に縮径していく傾斜角度の異なる2つの円錐面(82、83)とを有し、上流側の前記円錐面を第2円錐面(82)、下流側の前記円錐面を第3円錐面(83)と呼ぶとき、前記第2円錐面(82)と前記第3円錐面(83)との間に円環状の交差稜線(85)が形成されており、
前記変形逃がし部(95)は、前記交差稜線(85)よりも燃料流方向の上流側で前記第2円錐面(82)と対峙していることを特徴とする燃料噴射ノズル。 - 請求項1に記載の燃料噴射ノズルにおいて、
前記変形逃がし部(95)は、前記ニードル(1)の外面と前記ノズルボデー(3)の内面との間に環状空間(99)を形成することで設けられることを特徴とする燃料噴射ノズル。 - 請求項2に記載の燃料噴射ノズルにおいて、
前記環状空間(99)は、前記ノズルシート(5)の内面を前記ニードル(1)の弁部(2)側に対して反対側に凹ませることで設けられることを特徴とする燃料噴射ノズル。 - 請求項2または請求項3に記載の燃料噴射ノズルにおいて、
前記ニードル(1)の開弁時に、前記弁部(2)と前記ノズルシート(5)との間に形成される環状隙間(17)を備え、
前記環状空間(99)は、前記環状隙間(17)側に対して反対側に凹ませることで設けられることを特徴とする燃料噴射ノズル。 - 請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載の燃料噴射ノズルにおいて、
前記弁部(2)は、前記シール部(84)として、前記ノズルシート(5)に着座可能な円環状のシール部(84)を有していることを特徴とする燃料噴射ノズル。 - 請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載の燃料噴射ノズルにおいて、
前記ノズルシート(5)は、一端に向かって徐々に内径が縮径する円錐形状のシート面を有していることを特徴とする燃料噴射ノズル。 - 請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載の燃料噴射ノズルにおいて、
前記ノズルボデー(3)は、前記ニードル(1)との間に、前記ノズルボデー(3)内に供給された燃料を前記ノズルシート(5)よりも燃料流方向の下流側へ導くための環状の燃料流路(16)を有していることを特徴とする燃料噴射ノズル。 - 請求項7に記載の燃料噴射ノズルにおいて、
前記噴孔(8)の周辺部(4)は、前記燃料流路(16)と前記噴孔(8)とを連通すると共に、前記サック部(7)として、前記燃料流路(16)にて環状に流れる燃料を集合させて前記噴孔(8)へ分配供給するサック室(6)が形成される有底筒状のサック部(7)を有していることを特徴とする燃料噴射ノズル。 - 請求項8に記載の燃料噴射ノズルにおいて、
前記噴孔(8)は、前記サック部(7)の内外を連通するように貫通する複数の噴孔(8)であって、
前記複数の噴孔(8)は、前記サック部(7)の周方向に所定の距離を隔てて形成されていることを特徴とする燃料噴射ノズル。 - 請求項1ないし請求項9のうちのいずれか1つに記載の燃料噴射ノズルにおいて、
前記ノズルボデー(3)または前記噴孔(8)の周辺部(4)は、内燃機関の燃焼室内に露出するように配置されていることを特徴とする燃料噴射ノズル。
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