JP5810943B2 - 高圧燃料ポンプ - Google Patents
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Description
従来から、この種の高圧燃料ポンプは、種々な構成のものが実用に供されているが、シリンダとこのシリンダ内を滑動するプランジャとエンジンにより駆動されるカム機構とを備え、カム機構のカムの回転に伴うプランジャの往復動によって加圧室の燃料をコモンレールに圧送する基本構成である。
近年、燃料の高圧化や、大容量化が進んで、プランジャを高速で往復運動させざるを得なくなってきており、かくした場合における、シリンダとプランジャとの焼付き現象が危惧されている。
かかる提案は、プランジャの下側部分に小径の段付き部を設けるとともに、この段付き部を取り囲むように低圧燃料室を設け、プランジャの往復動による段付き部のポンプ作用によって低圧燃料室内とシリンダ外周側の低圧燃料通路との間で燃料の流動を発生させ、この燃料の流動によりシリンダを積極的に冷却するものである。
しかしながら、上記特許文献1に記載のような冷却構造を高圧燃料ポンプに採用した場合、高圧燃料ポンプ自体の構造が複雑になるのみならず、冷却燃料不足や滑動面の潤滑不足により焼付き現象が生じ、未だ充分な解決策になり得ていないのが実情である。
よって、上記焼付き問題を、コンパクトな構成で解決できる高圧燃料ポンプが切望されている。
請求項1に記載の発明によれば、燃料の加圧圧送のために軸方向に往復動するプランジャと、このプランジャが滑動する内周面を有し、プランジャを摺動可能に収納するシリンダと、プランジャを往復動させるカムを有するカム機構とを備え、カムの回転によりプランジャをシリンダ内で往復動させることにより、燃料を加圧圧送する高圧燃料ポンプにおいて、プランジャおよびシリンダの軸方向をP、カムの軸方向をC、この両軸方向P、Cと直交する方向をZと呼ぶとき、シリンダは、Z方向にのみ肉厚が薄い薄肉部を有することを特徴としている。
また、シリンダの横断面形状を変更するだけで、別部材、別部品を新たに追加するような構成ではないため、高圧燃料ポンプ自体をコンパクトなものとすることができる。
請求項2に記載の発明によれば、シリンダは、軸方向Pと直角な横断面形状が、一対の曲面部と一対の平面部とからなる外周面を有する二面幅形状を呈しており、平面部とシリンダの内周面とによって薄肉部を形成していることを特徴としている。
かかる構成によれば、円形状の外周面に二面幅の切削加工を施すだけで、薄肉部を有するシリンダを作製することができ、シリンダを安価に得ることができる。
請求項3に記載の発明によれば、シリンダは、軸方向Pと直角な横断面形状が、短軸と長軸とをもつ楕円状の外周面を有する楕円形状を呈しており、短軸方向の外周面とシリンダの内周面とによって薄肉部を形成している。
請求項4に記載の発明によれば、シリンダは、軸方向Pと直角な横断面形状が、短辺と長辺とからなる外周面を有する長方形を呈しており、長辺側の外周面とシリンダの内周面とによって薄肉部を形成している。
請求項5に記載の発明によれば、高圧燃料ポンプは、シリンダの外周側にプランジャをカム機構のカムに追従させる復元スプリングを備えており、シリンダには、復元スプリングに囲繞される筒部の領域のみにおいて薄肉部を有していることを特徴としている。
かかる構成によれば、シリンダに対しサイドフォースが作用する要所に的確に薄肉部を設けてシリンダを効率的に撓ませることができ、シリンダ自体もより一層安価に作製することができる。
また、高圧燃料ポンプが、シリンダの外周側にプランジャをカムに追従させる復元スプリングを備えている場合、シリンダには、復元スプリングに囲繞される筒部の領域においてのみ上記薄肉部を形成することにより、製作が容易な最小体積の薄肉部によって効果的にシリンダを撓ませ、サイドフォースを吸収することができる。
実施例1の高圧燃料ポンプは、1つのシリンダを有する所謂単筒型のものであり、その基本構成について、図1、図2、図4(a)、(b)を用いて概説する。
〔ポンプの基本構成〕
高圧燃料ポンプ1は、エンジン(図示せず)により回転駆動されるカム機構2と、カム機構2に駆動されて軸方向に往復動するプランジャ3と、プランジャ3が滑動する内周面を有し、プランジャ3を摺動可能に収納するシリンダ4とを備え、シリンダ4の上端側には燃料の加圧室5が形成されていて、プランジャ3をカム機構2により駆動してシリンダ4内で往復動させ、加圧室5の燃料を加圧圧送するものである。
本実施例では、シリンダ4がシリンダボディ6に鍛造・切削加工等により一体形成されているが、シリンダ4を別部材で作製しシリンダボディ6に圧入等にて組み付けることもできる。
上記の基本構成を有する高圧燃料ポンプ1は、次のように動作する。
エンジンによりカム機構2のシャフト7が回転駆動されると、カム8の外周面形状に応じてローラ14が回転しながらシリンダ4の軸方向に直線往復運動し、これに伴い、タペット15およびプランジャ3もシリンダ4の軸方向に直線往復運動する。
プランジャ3は、カム8からの回転方向の駆動力を受けて、その下端部3Aが軸線方向とは直交する方向(径方向)に移動し、プランジャ3がシリンダ4に対して傾斜することになる。このプランジャ3の径方向の動きは、プランジャ3の本来の軸方向移動以外の動きである。つまり、カム8が矢印Yのごとく回転することによりその回転方向の分力によって駆動力伝達機構13を介してプランジャ3の下端部3Aを白抜き矢印方向に押す力(以下、サイドフォースという。)が発生し、プランジャ3とシリンダ4との間には隙間があることから、プランジャ3がシリンダ4に対して傾斜することになる。その結果、プランジャ3がシリンダ4の内周面と局所的に接触しながら滑動するため、プランジャ3とシリンダ4との滑動面にサイドフォースによる過大な局所面圧が発生することになり、焼付きを招くことが確認された。
そこで、サイドフォースを吸収する手段として、プランジャ3およびシリンダ4のいずれかを弾性変形させることに着目した。
プランジャ3およびシリンダ4は、共に鉄鋼材料からなるものであるが、プランジャ3が中実であるのに対し、シリンダ4は中空で弾性変形が容易であるため、このシリンダ4の方を弾性変形させることを基本的な構成とし、図4(b)に示すように、シリンダ4を軸方向と直交する方向(径方向)に撓ませる(弾性変形させる)ことにより、プランジャ3の動きにシリンダ4の内周面が倣うようにするものである。
図5は、図4(a)におけるX−X線に沿うプランジャ3およびシリンダ4(筒部6B)の横断面図であり、白抜き矢印のサイドフォースの作用方向がZ方向に一致している。
上述のごとく、シリンダ4には、Z方向にのみ肉厚が薄い薄肉部4Aが形成されているため、シリンダ4は、サイドフォースが作用する方向の肉厚が薄く、サイドフォースを受けることにより図4(b)に示すように径方向に弾性変形する。よって、サイドフォースを吸収し、プランジャ3とシリンダ4との滑動面にサイドフォースによる過大な局所面圧が発生するのを抑止することができ、プランジャ3がシリンダ4の内周面に倣って良好に滑動するため、プランジャ3とシリンダ4との焼付きを防ぐことができる。
特に、図5(a)に示すシリンダ4は、例えば、シリンダボディ6全体を鍛造により作製した際に、一体に膨出形成した円筒状の筒部6Bに対して平面部4bを設けるための二面幅の切削加工を施すだけでよく、製造コストを安価にすることができる。
図5(d)に示すシリンダ4も、同様に鍛造により作製した円筒状の筒部6Bに対して軸方向溝4eを設けるための切削加工を施すだけでよく、安価に製造することができる。
実施例2の高圧燃料ポンプは、カム機構を挟んで2つのシリンダを対向配置した所謂2筒対向型のものであり、その基本構成について、図3および図4(c)を用いて概説する。ただし、実施例1と実質的に等価の構成要素については、実施例1と同一の符号を付し、説明を省略する。
高圧燃料ポンプ1のポンプハウジング10には、カム機構30を挟んで図示上下方向に対向配置されるように、2つのポンプ機構P1、P2が組み込まれている。
偏心カム32は、円柱形状を呈しており、シャフト31に一体的に設けられているが、その中心軸線は、シャフト31の中心軸線に対して偏心しており、この偏心カム32の外周に、カムリング33が嵌合されている。このカムリング33は、四角筒形状を呈しており、円形状の貫通孔34の内周面と偏心カム32の外周面とが接しながら偏心カム32に対して周方向に相対移動可能になっているため、シャフト31の周りを自転せずに公転する。
なお、本実施例でも、実施例1同様、シリンダ4がシリンダボディ6に鍛造・切削加工等により一体形成されているが、シリンダ4を別部材で作製しシリンダボディ6に圧入等にて組み付けることもできる。
本実施例においても、実施例1と同様に、プランジャ3は、偏心カム32からの回転方向Yの駆動力を受けて、その下端部3Bが軸線方向とは直交する方向(径方向)に移動し、プランジャ3がシリンダ4に対して傾斜することになる。つまり、プランジャ3には、その下端部3Bを白抜き矢印方向に押すサイドフォースが発生し、プランジャ3がシリンダ4の内周面と局所的に接触しながら滑動するため、プランジャ3とシリンダ4との滑動面にサイドフォースによる過大な局所面圧が発生することになり、焼付きを招くことが確認された。
以上、実施例1、2として、2つの型式の高圧燃料ポンプ1への適用例を詳述したが、この種の高圧燃料ポンプとしては、種々の構成のものが実用に供されているので、その他の適用事例を変形例として説明する。
また、シリンダ4に形成する薄肉部4Aの具体的形状・構造についても、図5に示すものに限定されることなく、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々変更することができることは勿論である。
(1)高圧燃料ポンプとしては、複数のシリンダが軸方向に配置される所謂列型タイプや、複数のシリンダがカム軸の周りに放射状に配置されるV字型タイプ等であっても、適用することができる。
(2)シリンダ4には、復元スプリング17に囲繞される筒部6B以外にも、薄肉部4A を設けても良い。特に、シリンダ4が別部材で作製される場合には、シリンダ4の軸方向の全領域にわたって薄肉部4Aを設ける方が、製造面で得策である。
Claims (5)
- 燃料の加圧圧送のために軸方向に往復動するプランジャ(3)と、
前記プランジャ(3)が滑動する内周面を有し、前記プランジャ(3)を摺動可能に収納するシリンダ(4)と、
前記プランジャ(3)を往復動させるカム(8、32、33)を有するカム機構(2、
30)とを備え、
前記カム(8、32、33)の回転により前記プランジャ(3)を前記シリンダ(4)内で往復動させることにより、燃料を加圧圧送する高圧燃料ポンプ(1)において、
前記プランジャ(3)および前記シリンダ(4)の軸方向をP、前記カム(8、32、33)の軸方向をC、前記両軸方向P、Cと直交する方向をZと呼ぶとき、前記シリンダ(4)は、Z方向にのみ肉厚が薄い薄肉部(4A)を有することを特徴とする高圧燃料ポンプ。 - 請求項1に記載の高圧燃料ポンプ(1)において、
前記シリンダ(4)は、前記軸方向Pと直角な横断面形状が、一対の曲面部(4a)と一対の平面部(4b)とからなる外周面を有する二面幅形状を呈しており、
前記薄肉部(4A)は、前記平面部(4b)と前記内周面とによって形成されていることを特徴とする高圧燃料ポンプ。 - 請求項1に記載の高圧燃料ポンプ(1)において、
前記シリンダ(4)は、前記軸方向Pと直角な横断面形状が、短軸と長軸とをもつ楕円状の外周面を有する楕円形状を呈しており、
前記薄肉部(4A)は、短軸方向の前記外周面と前記内周面とによって形成されていることを特徴とする高圧燃料ポンプ。 - 請求項1に記載の高圧燃料ポンプ(1)において、
前記シリンダ(4)は、前記軸方向Pと直角な横断面形状が、短辺(4c)と長辺(4d)とからなる外周面を有する長方形を呈しており、
前記薄肉部(4A)は、長辺側の前記外周面と前記内周面とによって形成されていることを特徴とする高圧燃料ポンプ。 - 請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の高圧燃料ポンプ(1)において、
この高圧燃料ポンプ(1)は、前記シリンダ(4)の外周側に前記プランジャ(3)を前記カム(8、32、33)に追従させる復元スプリング(17)を備えており、
前記シリンダ(4)は、前記復元スプリング(17)に囲繞される筒部(6B)の領域のみにおいて前記薄肉部(4A)を有していることを特徴とする高圧燃料ポンプ。
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