JP5810574B2 - 楽音合成装置 - Google Patents
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Description
自然楽器のうち、例えばピアノにおいては、多数並んだ弦のうち、鍵盤で押鍵された鍵に対応する弦をハンマーで叩いて発音させ、離鍵と同時に弦にダンパを当てて振動を静止することにより発音を停止させる。また、ある弦を叩いて振動させると、その弦から音が発せられるだけでなく、付近の弦が共鳴したり、また、弦の振動が響板を伝わって他の弦に伝達され、他の弦を振動させたりすることにより、他の弦からも音が発せられることになる。そして、このような共鳴や振動の伝達も、ピアノの演奏音を形成する大きな要素となっている。
特許文献1には、各音高の弦と対応する共鳴音形成チャンネルを設けて、音源が生成した、押鍵された鍵に対応する音高の楽音信号をその各共鳴音形成チャンネルに入力して各音高の弦と対応する共鳴音を形成させることが記載されている。
この発明は、このような背景に基づきなされたものであり、打弦楽器の弦モデルに供給する励振信号を、打弦楽器の音をサンプリングした波形から生成できるようにすることを目的とする。
まず図1に、この発明の楽音合成装置の実施形態の機能ブロック図を示す。
この図に示すように、楽音合成装置は、音源部11,響き除去部12,弦モデル演算部13,響板モデル演算部14,弦モデル制御部15,出力波形生成部16を備えている。また、音源部11には、演奏操作子である鍵盤21からの、少なくとも打鍵に係る操作情報(NoteONイベント)が入力し、弦モデル制御部15には、これに加えて離鍵に係る操作情報(NoteOFFイベント)及び、サスティンペダル22からのペダルオンオフに係る操作情報が入力する。
また、波形メモリに記憶させておく波形データは、ピアノを自然な状態で打鍵して得られる波形データ、すなわち、弦の共鳴や、響板の響き、駒や響板を介しての、弦間での振動の伝達に起因する響き等が含まれる音の波形データである。この実施形態の一つの特徴は、このような波形データを用いても、弦モデル演算部13を適切に駆動できるようにした点である。
また、弦モデル演算部13及び響板モデル演算部14は、それぞれピアノの弦及び響板の挙動をシミュレートしたモデルに従った演算を行う機能を有する。そして、弦モデル演算部13及び響板モデル演算部14は、相互に音響信号を授受しつつ、弦モデル演算部13に対する打弦波形の入力に応じて、ピアノの各弦及び響板が発する音を示す波形データを、演算結果として出力する。これらの機能の詳細については、弦モデル演算部13を中心に、後に詳述する。
図2に、その弦モデル演算部が備える弦モデルの概略構成を示す。ピアノにおいては、音高により1音当たり1本から3本の弦が設けられ、それが88音分ある。図2に示すのは、このうち、1音分として3本の弦の挙動を再現する部分を取り出して示したものであり、実際には1〜3弦×88音分の弦モデルが実装されることになる。すなわちその弦数分だけ後述する弦模擬部を備えた弦モデルが実装されることになる。
ピアノにおいて、弦の振動する部分は、主にピン(チューニングピン)と駒との間の部分であり、弦模擬部30は、弦のうちこの部分の挙動をモデル化したものである。また、ピン側結合部40及び駒側結合部50は、それぞれピン及び駒における弦の接合による弦間のエネルギー授受をモデル化したものである。さらに、駒においては、響板との間でのエネルギー授受も起こるので、駒側結合部50には、これをモデル化した構成も設けている。
このとき、進行波演算部31aの出力を加算器51により正負反転して後退波演算部31bに入力し、後退波演算部31bの出力を加算器41により正負反転して進行波演算部に入力することにより、駒及びピンにおける固定端反射を模している。
すなわち、ピン側結合部40には、加算器43を設け、各弦模擬部の後退波演算部の出力に各弦からの寄与を示す係数(a1〜a3)を乗算器により乗じて加算器43に入力し、加算する。そしてその結果を、進行波演算部への入力に加算する。
第1弦模擬部31の場合、後退波演算部31bの出力に乗算器42で係数a1を乗じて加算器43に入力し、加算器43による加算の結果を、ピンを通じた他弦からの伝播成分として、加算器41により固定端反射の成分に加算する。
ここで、響板モデル演算部14は、駒からの振動波形を入力し、響板による共鳴の効果を付与した振動波形を出力する、ピアノの響板の特性をシミュレートするフィルタである響板モデルに従って演算を行うものである。
また、響版モデル演算部14は、弦モデル演算部13を構成する全ての弦モデルについて共通であり、全ての弦モデルからの信号が入力し、全ての弦モデルに対して信号を出力する。
図3に示す構成のうち、上側のディレイ61aからLPF(ローパスフィルタ)68aまでの各部が進行波演算部であり、下側のLPF68bからディレイ61bまでの各部が後退波演算部である。
これらの減衰係数及びkの値の設定は、鍵盤21からのNoteONイベント及びNoteOFFイベントと、サスティンペダル22からのペダルオンオフのイベントに従い、弦モデル制御部15が行う。打鍵時にはハンマによる弦の打撃前に、打撃する弦のダンパを解除し、離鍵時にはダンパを弦に接触させ、サスティンペダルがオンされた場合には全ての弦のダンパを解除し、オフされた場合にはダンパを戻すといった具合である。
LPF68a,68bは、振動の伝播に伴って高次の振動波が低次の振動波より急速に減衰することを再現するためのフィルタである。低次の振動波もLFP68a,68bにより徐々に減衰させ、振動の自然減衰を再現する。
図4に、響き除去部12の構成を示す。
図4に示すように、響き除去部12は、n個のBPF(バンドパスフィルタ)71〜7nと、各BPFに対応して設けたn個のゲート81〜8nと、加算器90とを備える。
各BPF71〜7nは、n個のフィルタで鍵盤21の最低音から最高音までの周波数を通過帯域としてカバーしつつ、隣接するフィルタ間では通過帯域がなるべく重複しないように設けることが好ましい。そして、通過帯域の幅がログスケールの周波数で均等幅となるように設けることが好ましい。図5に、このような条件を満たす各フィルタのフィルタ特性の例を、模式的に示す。
また、より粗く、4鍵に1バンドのフィルタとし、22バンドの各フィルタが対応する1/3オクターブに入る周波数の信号を通過させるようにしてもよい。逆に、より細かくして、1鍵に2バンドのフィルタとし、176バンドの各フィルタが対応する1/24オクターブに入る周波数の信号を通過させるようにしてもよい。
以上のような各BPF71〜7nにより、音源部11から入力する波形データを、各BPFと対応する周波数帯域の波形データに分離することができる。
なお、最低音をローパスフィルタとし、最高音と対応するフィルタをハイパスフィルタとすることも考えられる。
図6に示す通り、ゲート81〜8nはそれぞれ、エンベロープ検知部91、テーブル92、LPF93及び乗算器94を備える。
そして、エンベロープ検知部91が、ゲートと対応するBPFの出力波形のレベル(エンベロープ値)を検知し、テーブル92に入力する。テーブル92は、入力のレベルが所定の閾値sより小さい場合に0を、s以上である場合に1を出力する。LPF93は、乗算器94に与える係数が、急激に変化しないようにスムージングするために設けたものであり、係数補間器にて代替することもできる。そして、テーブル92の出力をLPF93を通して乗算器94に乗算係数として設定し、対応するBPFの出力波形にその乗算係数を乗じて、図4に示した加算器90に入力する。
従って、各ゲート81〜8nの出力を加算器90により加算することにより、音源部11から入力する波形データのうち、音量レベルが所定レベルに達しない周波数帯域の成分を除去した波形データを生成することができる。
一方、音源部11が使用する波形データのサンプリングにかかる手間も小さいため、多彩な機種、あるいは多彩な奏法での波形データを低コストでサンプリングすることができ、多彩な機種や奏法に係る音を、低コストで再現することができる。
図7は、楽音合成装置を構成するハードウェアの例を示す図である。
この図に示すように、楽音合成装置10は、CPU101,ROM102,RAM103,MIDI_I/F(インタフェース)104,パネルスイッチ105,パネル表示器106,音源部107,DSP(デジタルシグナルプロセッサ)108,DAC(デジタル/アナログコンバータ)109をシステムバス112により接続すると共に、サウンドシステム110及び波形メモリ111を設けて構成することができる。
RAM103は、CPU101のワークメモリとして使用する記憶手段である。
MIDI_I/F104は、鍵盤21及びサスティンペダル22といった演奏操作子や、これらに代わって演奏内容を示す演奏データを提供するMIDIシーケンサ等の外部装置との間でMIDIデータの入出力を行うためのインタフェースである。
パネル表示器106は、液晶ディスプレイ(LCD)や発光ダイオード(LED)ランプ等によって構成され、楽音合成装置10の動作状態や設定内容あるいはユーザへのメッセージ、ユーザからの指示を受け付けるためのグラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)等を表示するための表示手段である。
DSP108は、図1乃至図6を用いて説明してきた響き除去部12、弦モデル演算部13、響板モデル演算部14及び出力波形生成部16の機能に係る信号処理を実行する。プログラマブルなプロセッサを用いて構成することも可能である。
DAC109は、DSP108が出力するデジタル波形データをアナログ音響信号に変換して、サウンドシステム110を構成するスピーカを駆動する。なお、サウンドシステム110は、楽音合成装置10を音声でなく楽音信号を出力するように構成する場合には、不要である。DAC109も、アナログではなくデジタルの波形データを出力するように構成する場合には、不要である。
例えば、響き除去部12については、図8に示す構成を採用することもできる。
すなわち、周波数分析部121と、減衰部122と、波形合成部123とを備えた構成とすることができる。
なお、周波数分析部121での周波数分析は、高速フーリエ変換(FFT)により、波形合成部123での波形データ生成は、逆高速フーリエ変換(IFFT)により行うことができる。このときの時間窓の長さは、リアルタイム処理を行うことを考慮して、128〜2048サンプル程度に定めるとよい。2048サンプルの場合、サンプリング周波数が50キロヘルツであれば、時間にして約4ミリ秒分である。時間窓を狭くすれば時間遅れは小さくなるが、周波数分解能が落ちるため、あまりサンプル数を少なくすることも好ましくない。
上述した実施形態ではピアノの楽音を再現する例について説明したが、固定された複数の弦に振動を与えて発音させる楽器であれば、ピアノ以外の楽器の楽音を再現する場合も、この発明は適用可能である。
また、実施形態の説明において述べたものも含め、以上において述べた変形は、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて適用可能である。
従って、この発明を適用することにより、より多彩な楽音の出力が可能な楽音合成装置を容易に構成することができる。
Claims (3)
- 少なくとも遅延手段を含むループ部からなるループ手段を有し、発音指示に応答して励振信号を前記ループ手段に入力することによって楽音信号を合成するようにした楽音合成装置であって、
共鳴を含む自然楽器の第1波形データを記憶する波形メモリと、
該第1波形データのうち、音量レベルが所定レベル以上の周波数帯域の成分をそのまま通過させ、音量レベルが該所定レベルに達しない周波数帯域の成分を減衰させて第2波形データを生成する波形加工部を備え、
前記波形加工部が生成した第2波形データを、前記励振信号として前記ループ手段に入力することを特徴とする楽音合成装置。 - 請求項1に記載の楽音合成装置であって、
前記波形加工部が、
前記第1波形データを複数の周波数帯域の波形データに分離する分離部と、
前記複数の周波数帯域の各々に対応する複数のレベル制御部であって、それぞれ、前記分離手段による分離により得られた対応する周波数帯域の波形データのレベルを検出し、該レベルが前記所定のレベルに達していなければ該波形データを減衰させる複数のレベル制御部と、
前記複数のレベル制御部が出力した波形データを合成して前記第2波形データを生成する波形合成部とを備えることを特徴とする楽音合成装置。 - 請求項1に記載の楽音合成装置であって、
前記波形加工部が、
前記第1波形データを周波数分析して、該第1波形データの周波数特性を示す第1周波数特性データを得る周波数分析部と、
前記第1周波数特性データのうち所定レベルに達していない周波数成分のレベルを減衰させて第2周波数特性データを得る減衰部と、
前記第2周波数特性データに基づいて、該第2周波数特性データが示す周波数特性を持つ波形データを、前記第2波形データとして生成する波形合成部とを備えることを特徴とする楽音合成装置。
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