JP5810556B2 - ガス透過性試験片及びガス透過性評価方法 - Google Patents

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本発明は、金属の腐食状態を測定することでガス透過性を評価するガス透過性試験片及びガスバリア透過性評価方法に関する。
ガスバリア機能を持つフィルムは、食料品,精密電子部品及び医薬品等の包装材料に用いられている。これらの包装材料は、内容物の変質を抑制し、包装中でも包装材料の有する機能や性質を保持するために、包装材料を透過するガスによる影響を防止する必要がある。そのため、包装材料は、ガス透過を遮断するガスバリア性を備えていることが求められている。
さらに、近年、以上のような包装用フィルムは、地球温暖化対策の一環として急拡大の傾向にある太陽電池モジュールの部材である裏面保護シートや有機EL素子のガスバリア層を代表とした産業資材用途に用いられるようになってきた。
ところで、包装用フィルムの重要な機能であるガス透過性の評価方法としては、カルシウム腐食法を代表とする金属腐食法が知られている(例えば特許文献1)。
この金属腐食法による評価方法は、測定対象となるフィルムを透過した目的ガスが腐食性金属と反応して腐食するので、その腐食した金属の量を測定することで、ガス透過性を評価することができる。具体的には、測定対象となるフィルムに透過したガスのみに反応する腐食性金属層を形成した後、当該腐食性金属層を非腐食性材料層で密封してなる試験片を作製する。その後、この試験片を一定ガス濃度、一定温度の環境下に暴露し、測定対象となるフィルムに目的ガスを透過させることにより、腐食性金属層の腐食状態を測定する。
ところで、この種のフィルムは、均一な気密性を有するように見えるが、微視的には微細なクラック等、ガスが透過しやすい個所が存在しており、ガスがこの個所から透過する。そのため、金属腐食法では、一定時間暴露後の腐食性金属層について、測定対象のフィルムを通して観察すると、透過しやすい個所の周囲から腐食性金属層が腐食していることが分かる。従って、この腐食した金属面積を測定することで、ガス透過性を評価し、ガス透過度を測定することができる。
一般にガス透過度は、規定の温度及び湿度の環境下で、単位時間中にフィルムを通過する単位面積当たりのガスの量で表す値である。
そこで、金属腐食法を用いて評価する場合、例えば図5に示すように上側方向からフィルム1を通して観察できる腐食性金属層2の腐食部4cの面積と深さとから、腐食部4cの体積を算出し、その体積相当量を腐食させるのに必要なガス量を求めた後、そのガス量を暴露時間で除することにより、ガス透過度を求めている。特許文献1によれば、ガス透過度Tは、下記の式(1)で表される。
T=m×(M[Gas]/M[Metal])×(δhαρ/A)×1/t …(1)
上式において、mは腐食性金属の価数、M[Gas]は透過ガスの分子量、M[Metal]は腐食性金属の分子量、δは腐食性金属層2の腐食部分の面積、hは腐食性金属層2の厚み、αは厚み補正係数、ρは腐食性金属層2の腐食後の密度、Aは腐食性金属層2の腐食4cと非腐食部との面積の合計、tは暴露時間を示す。ここで、暴露時間とは、試験片を一定ガス濃度、一定温度環境下に暴露する時間である。
従って、腐食した金属の面積からフィルム1のガス透過性を評価し、ガス透過度を測定する金属腐食法としては、その透過性、透過のメカニズム、腐食性金属の膜厚等に応じて、適切な暴露時間が存在する。
そのため、例えば暴露時間が短すぎる場合、腐食が十分でないので、腐食部の面積から正確な腐食体積を見積もることができなくなる。その結果、正確なガス透過度を測定することができない。
また、腐食性金属層内を腐食部が貫通するように腐食していたとしても、その腐食面積が小さすぎる場合には、正確な腐食面積を測定することができない。
反対に、暴露時間が長すぎる場合、腐食部が広がり過ぎてしまい、例えば図4に示すように一部の透過したガス5が溜まり、腐食に寄与しなくなり、正確なガス透過度を測定することができない。
従って、金属腐食法を用いて正確なガス透過度を測定するためには、腐食部が適切な腐食面積を持つ暴露時間において観察する必要がある。
特許第4470707号公報
ところで、従来から金属腐食法を用いてガス透過性を評価している既知のサンプルがあれば、適切な暴露時間を決定できるが、ガス透過性が未知のサンプルを用いた場合、腐食性金属が適切な腐食面積になるまで腐食させるための暴露時間は不明である。
よって、ガス透過度を正確に測定するためには、腐食の経時変化を長時間にわたって継続的に観察しながら、適切な腐食状態を把握する必要があり、手間と時間を要する問題がある。
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、暴露時間による影響を低減し、少ない時間の観察で適切な腐食状態を選択し、ガスの透過性を評価するガス透過性試験片及びガス透過性評価方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、請求項1に対応する発明は、ガス透過性の評価対象のフィルムと、前記フィルムの一方面に密着され、複数の異なる膜厚の領域が、その膜厚が大きくなるに従いその断面積が小さく階段状に連なって形成され、ガスと反応して腐食する腐食性金属層と、前記ガスと反応しない材料からなり、前記腐食性金属層の表面において前記フィルムの一方面と密着する表面を除く表面を密封する非腐食性材料層と、を備えることを特徴とするガス透過性試験片である。
請求項1に対応する発明によれば、試験片をその膜厚が大きくなるに従いその断面積が小さく階段状に連なって形成するため、一定のガス濃度及び一定の温度の環境下に暴露することで、腐食性金属層がフィルムを透過したガスと反応して腐食されるが、このとき試験片がガスと一面のみで接し、その膜厚に応じてその断面積が小さく階段状に連なって形成される複数の膜厚の領域を持つ腐食性金属層を備えることにより、ガス透過量が同じであっても各領域の膜厚に応じて腐食面積が異なる。その結果、これら複数の膜厚の領域の中から腐食部が領域を完全に貫通し、全ての透過ガスが腐食に寄与する腐食状態を有する領域を観察し選択することで、正しいガス透過度を測定することができる。
請求項に対応する発明は、前記腐食性金属層として、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはその合金の何れかを含むことを特徴とする。
これらアルカリ金属、アルカリ土類金属またはその合金は、反応性に富み、水蒸気によって容易に腐食されるので、水蒸気のガス透過性を示す水蒸気透過度を求めるのに適している組合せである。
請求項に対応する発明は、前記アルカリ土類金属として、カルシウム、マグネシウムまたはその合金の何れかを含むことを特徴とする。
これらカルシウム、マグネシウムまたはその合金は、水蒸気によって容易に腐食される上に、安価であり、かつ蒸着により薄膜を形成しやすいために、水蒸気透過度を求めるためにより一層適している組合せである。
また、請求項4に対応する発明は、 ガス透過性の評価対象のフィルムと、前記フィルムの一方面に密着され、複数の異なる膜厚の領域がその膜厚が大きくなるに従いその断面積が小さく階段状に連なって形成され、ガスと反応して腐食する腐食性金属層と、前記ガスと反応しない材料からなり、前記腐食性金属層の表面において前記フィルムの一方面と密着する表面を除く表面を密封する非腐食性材料層と、を備えるガス透過性試験片を、一定のガス濃度及び一定の温度の環境下に暴露し、前記腐食性金属層を構成する複数の膜厚の領域の腐食の進行する程度を指標とし、前記フィルムのガス透過度を求めることを特徴とするガス透過性評価方法。
本発明によれば、暴露時間による影響を低減し、少ない時間の観察で適切な腐食状態を選択し、ガスの透過性を評価するガス透過性試験片及びガス透過性評価方法を提供できる。
本発明に係るガス透過性試験片を示す断面図。 本発明に係るガス透過性試験片を作製するための装置の概略構成を示す図。 ガス透過性試験片を一定のガス濃度及び一定の温度の環境下で暴露させたときの腐食性金属層の小なる腐食状態を説明する図。 ガス透過性試験片を一定のガス濃度及び一定の温度の環境下で暴露させたときの腐食性金属層の腐食に寄与しないガスの溜まった腐食状態を説明する図。 ガス透過性試験片を一定のガス濃度及び一定の温度の環境下で暴露させたときの腐食性金属層の適切な腐食状態を説明する図。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明方法はこの実施形態によって限定されるものでなく、フィルムの種類や用途に応じて適宜選択されるものである。
先ず、本発明に係るガス透過性評価法は、金属腐食法を用いて評価する観点から、例えば図1に示すような試験片を作製する。
すなわち、評価対象となるフィルム1の片側面部のほぼ中央部分に、ガスと反応して腐食する腐食性金属層2を形成した後、該腐食性金属層2を含むその周囲を囲むように前記ガスと反応しない非腐食材料層3を形成することにより、当該腐食性金属層2を密封してなる試験片を作製する。
前記腐食性金属層2は、一端部(図示左端)側から他端部(図示右端)側に薄い膜厚の領域から厚い膜厚の領域に変化する,いわゆる階段状となるように形成する。つまり、場所ごとに異なる厚さを有する腐食性金属層2を形成するものである。
このような試験片を作製するための装置としては、例えば図2に示すように、フィルム保持チャンバー11の内部に腐食性金属層2を成膜する装置12及び腐食性金属層2の膜厚を調整する装置13が設けられ、フィルム保持チャンバー11内の所定位置に評価対象となるフィルム1が設定保持される。
腐食性金属層2を成膜する装置12の例としては、例えば真空蒸着装置やスパッタ装置が使用され、また、腐食性金属層2の膜厚を調整する装置13の例としては、複数のステンシルマスクを膜中に交換できる装置が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明方法に適用する装置としては、フィルム保持チャンバー11内に評価対象となるフィルム1をセットした後、腐食性金属層2を成膜する装置12を用いて、フィルム1の片面側表面に腐食性金属を成膜しながら、腐食性金属の膜厚を調整する装置13を用いて、場所ごと膜厚を調整していくことにより、異なる複数の膜厚の領域を備えた断面階段状となる腐食性金属層2を形成することができる。
なお、腐食性金属層2の膜厚を調整する装置13としては、成膜中に複数のステンシルマスクを交換できる装置を用いれば、パターンがより狭いマスクに交換することで、これまで成膜していた部分の一部をマスクし、他の部分は継続して成膜をしていくことができる。従って、前述する膜厚調整装置13を用いて、マスクの交換を繰り返すことにより、腐食性金属層2を階段状に加工することができる。
前記腐食性金属層2を形成する腐食性金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはその合金の何れかを含むものを用いるが、これらの材料に限定されるものではない。アルカリ金属、アルカリ土類金属あるいはその合金は、反応性に富み、水蒸気によって容易に腐食されることから、水蒸気のガス透過性を示す水蒸気透過度を求める場合に適している組合せである。
なお、アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、あるいはその合金の何れかを含むものでもよい。カルシウム、マグネシウム、あるいはその合金は、水蒸気によって容易に腐食される上に、安価であり、かつ蒸着によって薄膜を形成し易いことから、水蒸気透過度を求める場合はより一層適している組合せと言える。
引き続き、評価対象となるフィルム1面に形成された階段状の腐食性金属層2に対して、当該腐食性金属層2を囲むように非腐食性材料を用いて密封し、非腐食性材料層3を形成する。
この非腐食性材料としては、金属だけでなく、ガラスや樹脂等との組合せでもよく、できるだけガスがフィルム1以外の個所から腐食性金属層2側に透過しないようにすることが望ましい。
さらに、以上のようにして作製された試験片(図1参照)を、一定ガス濃度、一定温度環境下に暴露し、評価対象となるフィルム1に目的のガスを透過させることにより、腐食性金属層2を腐食させる。
そして、一定時間経過後、試験片を取り出し、公知の観測装置を用いて、異なる階段状の各膜厚の領域ごとの腐食性金属層2を観察する。この観察装置の例としては、例えば腐食性金属の腐食部と非腐食部を識別できる実体顕微鏡、光学顕微鏡、レーザ顕微鏡等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
そこで、以上のように試験片を観察した結果、次のようなことが判明できた。
腐食性金属層2は、フィルム1を透過したガスとのみ反応し腐食される。この際、階段状の様々な膜厚の腐食性金属層2を備えているので、それぞれ同じガス透過量であるにも拘らず、各膜厚領域ごとに腐食面積が異なってくる。すなわち、膜厚によって腐食状態が異なっている。
因みに、腐食性金属層2の厚い膜厚の領域においては、図3に示すように腐食性金属の腐食部4aが腐食性金属層2を貫通していないか、あるいは腐食面積が小さ過ぎる場合、正確な腐食面積を算出できない。よって、厚い膜厚の領域では、正しいガス透過度を測定することができない。
また、腐食性金属層2の薄い膜厚の領域では、図4に示すように腐食部4bが広がり過ぎるため、フィルム1を透過したガスのうち腐食性金属の腐食に寄与せずに溜まったガス5が残存する。このことは、透過した全てのガスが腐食に寄与されておらず、正確なガス透過度を測定することはできない。
一方、腐食性金属層2の適切な膜厚を持つ領域においては、図5に示すように腐食性金属の腐食部4cが腐食性金属層2を貫通し、かつ、全ての透過ガスが腐食に寄与しているために、正確な腐食体積を算出でき、ひいては正確なガス透過度を測定することができる。
従って、以上の観察結果から、異なる複数の膜厚を備えた腐食性金属層2を形成し、フィルム1を透過したガスで腐食させた後、適切な腐食面積を持つ膜厚領域を選択し、その領域のみの腐食面積と腐食性金属層2の膜厚の値とを用いて、前述した式(1)をもとにガス透過度を求めれば、正確なガス透過度を求めることができる。
従って、以上のような実施形態によれば、1つの試験片において、複数の膜厚の腐食性金属層2を備えることで、フィルム1のガス透過性や暴露時間に関わらず、全ての透過ガスが腐食に寄与している状態の膜厚の領域の腐食状態(腐食面積)及び腐食性金属層2の膜厚の値とから正確なガス透過度を求めることができる。
その他、本発明は、以上のような各実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば腐食性金属層2としては、階段状に膜厚を変更させたが、要はフィルム1面上に異なる複数の膜厚を有する腐食性金属層2が分散配置されている構成であってもよい。
1…測定対象となるフィルム、2…腐食性金属層、3…非腐食性材料層、4a〜4c…腐食部、5…腐食性金属の腐食に寄与せずに溜まったガス、11…フィルム保持チャンバー、12…腐食性金属層を成膜する装置、13…腐食性金属層の膜厚を調整する装置。

Claims (4)

  1. ガス透過性の評価対象のフィルムと、
    前記フィルムの一方面に密着され、複数の異なる膜厚の領域が、その膜厚が大きくなるに従いその断面積が小さく階段状に連なって形成され、ガスと反応して腐食する腐食性金属層と、
    前記ガスと反応しない材料からなり、前記腐食性金属層の表面において前記フィルムの一方面と密着する表面を除く表面を密封する非腐食性材料層と、
    を備えることを特徴とするガス透過性試験片。
  2. 前記腐食性金属層は、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはその合金の何れかを含むことを特徴とする請求項1に記載のガス透過性試験片。
  3. 前記アルカリ土類金属は、カルシウム、マグネシウムまたはその合金の何れかを含むことを特徴とする請求項2に記載のガス透過性試験片。
  4. ガス透過性の評価対象のフィルムと、前記フィルムの一方面に密着され、複数の異なる膜厚の領域がその膜厚が大きくなるに従いその断面積が小さく階段状に連なって形成され、ガスと反応して腐食する腐食性金属層と、前記ガスと反応しない材料からなり、前記腐食性金属層の表面において前記フィルムの一方面と密着する表面を除く表面を密封する非腐食性材料層と、を備えるガス透過性試験片を、一定のガス濃度及び一定の温度の環境下に暴露し、前記腐食性金属層を構成する複数の膜厚の領域の腐食の進行する程度を指標とし、前記フィルムのガス透過度を求めることを特徴とするガス透過性評価方法。
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