JP5810506B2 - 方向性電磁鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、変圧器の鉄心材料等に用いて好適な方向性電磁鋼板に関し、特に剪断加工を施した場合における磁気特性の劣化を軽減しようとするものである。
電磁鋼板は、各種変圧器やモータ等の鉄心として広く用いられている材料であり、特に方向性電磁鋼板と呼ばれるものは、その結晶粒の方位がゴス方位と呼ばれる(110)[001]方位に集積している。
このような方向性電磁鋼板を製造するに当っては、インヒビターと呼ばれる析出物を用いて、仕上焼鈍中にゴス方位を有する結晶粒を二次再結晶させることが一般的な技術として使用されている。
例えば、上記のインヒビター成分として、特許文献1にはAlN、MnSを使用する方法が、また特許文献2にはMnS、MnSeを使用する方法がそれぞれ開示され 工業的に使用されている。さらに最近では、特許文献3において提案されているように、インヒビター成分を含有しない鋼板であっても、ゴス方位結晶粒を二次再結晶の作用によって発達させる技術がある。
特許文献3に記載の技術は、インヒビター成分等の不純物を極力排除することで、一次再結晶を生じる時の、結晶粒界が持っている粒界エネルギーの粒界方位差角依存性を顕在化させて、インヒビターを用いなくても、ゴス方位を有する粒を二次再結晶させる技術である。
この方法では、インヒビター成分が不要なため、インヒビター成分を純化する工程が不必要となる。また、純化焼鈍を高温化する必要がなく、インヒビター成分の鋼中微細分散工程が不必要なため、微細分散のために必須であった高温スラブ加熱も不要となるなど、工程およびコスト面でも、また設備等のメンテナンス面でも大きなメリットを有する方法である。
方向性電磁鋼板の諸特性のなかでも、鉄損特性は製品のエネルギーロスに直接つながる特性であり、最も重要とされる。その鉄損特性を改善するためには、W17/50(励磁磁束密度1.7T、励磁周波数50Hzにおけるエネルギー損失)に代表される値を低減することが良いとされる。
また、方向性電磁鋼板が使用されている変圧器においても、この鉄損特性は重視されており、変圧器を作製した後でも、実機での鉄損特性を管理するために、その測定を定期的に実施する必要がある。
特公昭40−15644号公報 特公昭51−13469号公報 特開2000−129356号公報
一般に、電磁鋼板の製品はシート状になっており、変圧器を作製する際には、所定の大きさに切断加工する。切断加工の方法としては、はさみのように2枚の刃を上下から押し付け合う(最終的に刃同士はすれ違う)剪断加工(スリット加工とも呼ばれる)方法が一般的である。
このように剪断された鋼板は、その加工面が剪断力により引きちぎられ、鋼板内に歪が多量に導入されることになる。そのため、剪断された電磁鋼板は、導入歪に由来する磁気特性の劣化が生じやすく問題となっていた。
この剪断加工に起因した磁気特性劣化を低減する方法として、剪断加工後に700〜900℃で数時間焼鈍する歪取焼鈍を適用する場合がある。しかし、歪取焼鈍を行うのは、大きさ(長さ)が500mm以下の小さい変圧器に限られ、数mの大きさの大型変圧器用の鉄心等に
は適用できなかった。
それ故、数mの大きさの大型変圧器用電磁鋼板においても、剪断加工を行った際の磁気特性劣化を低減できる技術が望まれていた。
さらに、近年、特に使用が増えてきている、板厚が0.220mm以下と薄い電磁鋼板の場合には、剪断加工がより困難であるため、歪導入量が増大する結果、剪断加工した後の鉄損の劣化がより大きくなってしまうという問題があった。
発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、Nb等の元素を微量含有させて、析出物量を増やすと共にその析出サイズを制御し、加えて粗大な介在物の存在頻度を制限することによって、前記したような薄い電磁鋼板(薄物材)を剪断加工する際の鉄損劣化を大幅に低減できることを見出した。
以下、本発明を成功に至らしめた実験について説明する。
<実験1>
質量%で、C:0.022%、Si:3.39%、Mn:0.08%、Sb:0.030%、Sn:0.050%、Cr:0.05%およびP:0.010%を含み、かつ質量ppmで、Al:50ppm、N:50ppm、S:50ppmおよびNb:41ppmを含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを、連続鋳造にて製造し、1220℃でスラブ加熱を施したのち、熱間圧延により2.4mm厚とした。ついで、1050℃で30秒の熱延板焼鈍を施し、冷間圧延により1.8mmの板厚として、1000℃で40秒の中間焼鈍を施したのち、冷間圧延により0.15mmの板厚に仕上げた。その後、均熱条件が850℃で60秒、50体積%N2−50体積%H2湿潤雰囲気での再結晶焼鈍(一次再結晶焼鈍)を施し、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布したのち、1200℃で10時間保定する最終仕上焼鈍(純化焼鈍)を施した。最終仕上焼鈍(純化焼鈍)の際、鋼板の最高到達温度を1200℃として保定の後、900℃から500℃までの冷却速度を平均で5〜300℃/hと種々変化させて、常温まで降温した。ここに、上記冷却速度を変化させたのは、最終仕上焼鈍後にも地鉄中に残存するNb系の析出物量を種々に変化させるためである。
その後、リン酸マグネシウムとほう酸を主体とした張力付与コーティング形成を兼ねた平坦化焼鈍を900℃、15秒の条件で施した。
このようにして得られた方向性電磁鋼板を、エプスタイン試験片と呼ばれる30mm×280mmサイズに切断した。このとき、ワイヤーカッターで、ゆっくりと鋼に歪が入らないように切断した場合と、前述したように、一般的な方向性電磁鋼板の切断方法である上刃と下刃を用いる剪断機により切断した場合との2通りの試験片を用意した。得られたサンプルの鉄損W17/50をJIS C 2550に記載の方法に従って測定した。
図1に、剪断機で切断したサンプルの鉄損値から、ワイヤーカッターで切断したサンプルの鉄損値を引いた値をΔW(以下、本発明について同じ)とし、このΔWと、鋼中のNbの含有量との関係について調べた結果を示す。
剪断機で切断した場合は、前述したとおり、鋼板に歪が残存し鉄損が劣化した。一方、ワイヤーカッターによる切断は、時間がかかったものの、鋼板に、歪をほとんど残存させることなく切断できた。
したがって、同図に示したΔWは、歪残存により劣化した鉄損量を、ほぼ示していると考えられる。それ故、同図から、Nbを含有させることで、剪断により劣化する鉄損量を低減できることが分かる。但し、Nb含有量を多くしても、ΔWが未だ大きい場合があることも同時に明らかになった。
上記したようなNbを含んだサンプルが、剪断による鉄損劣化を低減できた理由は必ずしも明らかでないが、発明者らは下記のように考えている。
今回の実験で用いたNb含有材の組織調査を行ったところ、Nbは析出物を形成して、鋼中に分散していることが明らかとなった。その析出物径は、小さい物で0.02μm程度、大きい物で3μm程度であった。通常の方向性電磁鋼板には、このような鋼中の析出物は、ほとんど存在しないことから、この析出物の存在が剪断による鉄損劣化の低減に寄与したのではないかと推測される。
一方、剪断により鉄損が劣化するのは、剪断した箇所において歪が蓄積するためである。ここに、歪の蓄積とは、鉄の結晶粒内において、鉄の原子が規則正しく配列されているところに、外部からの応力等が作用して、鉄の原子の配列が、歪むもしくは不規則になるという現象である。
しかし、この規則正しく配列している鉄の原子の中に、上記したような析出物が存在すると、剪断加工のような応力が加わった場合に、この析出物の周辺に応力集中が生じて、鉄の原子の配列をゆがめる前に亀裂が生じることが考えられる。そして、この作用により上記した歪の蓄積が緩和されると考えれば、上記した現象についての説明ができる。
鋼板中に含有されているNbは、固溶状態と析出物を形成している状態の二種類が考えられるが、上述したとおり、析出物を形成することが重要であると考えられる。そこで、Nbを22ppm含有する試料について、Nb析出割合(全Nb含有量に対する析出物中に含
まれるNbの含有量の割合)を調査した。
Nb析出物中のNb析出割合を求めるには、まず全Nb含有量(鋼板における含有量:質量%)を求める必要がある。全Nb含有量は、JIS G 1237記載の誘導結合プラズマ発光分光分析方法(ICP発光分光分析方法)から求めることができる。なお、Taの場合はJIS G 1236、同じくVはJIS G 1221、ZrはJIS G 1232に記載の各方法で含有量が求められる。
一方、析出物中に含まれるNbの含有量(鋼板における含有量:質量%)は、鋼板を電解で溶かして析出物だけ捕捉(ろ過)し、その析出物の中のNb重量を測定し、電解されて減少した鋼板の重量と、その析出物の中のNb重量とから計算することができる。
このような析出物中に含まれるNbの含有量の定量値は、具体的に、以下の方法で求める。
まず、製品板を50mm×20mmの大きさに切断し、85℃に温めた10質量%HCl水溶液に2分間浸漬することで、製品のコーティングや被膜を除去する。その後、重量測定を行い、市販の電解液(10質量%AA液:10質量%アセチルアセトン−1質量%テトラメチルアンモニウムクロライド−メタノール)を用いて約1g程度電解されるまで電解を行う。さらに、電解に供した製品板表面に付着している析出物を剥離させるために、製品板をエタノール溶液に浸漬させて、超音波を付与する。
このエタノール溶液と前記の電解で使用した電解液の中には析出物が含まれており、これらを0.1μmメッシュのろ紙(nmオーダーの析出物まで捕捉可能)を用いてろ過するこ
とで析出物を捕捉する。ろ過後、ろ取された析出物をろ紙ごと白金るつぼに入れて700℃
で1時間加熱し、さらにNa2B4O7とNaCO3を加え900℃で15分間加熱する。これを一旦冷却した後、さらに1000℃で15分間加熱する。
るつぼの中は飴状に固まっているので、るつぼごと25質量%HCl水溶液に加え、そのまま約90℃で30分間加熱し、飴状の物質をすべて溶解する。この溶液をJIS G1237記載のICP発光分光分析方法で分析することにより、析出物の中のNb質量が求められる。
そして、このNb質量を、電解により減少した製品板(鋼板)の質量で除することにより、析出物中に含まれるNbの含有量(質量%)を求める。
このようにして求めた析出物中に含まれるNbの含有量(質量%)を、さらに前記した全Nb含有量(質量%)で除することにより、Nb析出割合を求めることができる。
前記サンプルにおけるNb析出割合は65%であった。そこで、さらに調査を進めたところ、全Nb含有量のうち、少なくとも10%が析出していることが、本発明の効果を発現するために必要であることが明らかとなった。
前述したΔW特性向上のメカニズムからは、Nbのような析出物形成元素が鋼中に残存する量が多いほど、ΔW特性が良好であるように思えるが、析出物は加工前の素材自体の鉄損特性を劣化させる作用もある。したがって、剪断加工による鉄損劣化が小さい範囲では、析出物量が少ないほうが好ましい。本実験では、Nb含有量が50ppmを超える素材では素材自体の鉄損が劣化していたことから、含有量は50ppm以下に抑える必要があると考えられる。
また、板厚が0.220mm以下の薄物材の場合には、析出物量が前述した所定量を満足していても、剪断加工における磁気特性の劣化が大きくなる場合が認められた。そこで、発明者らは、さらに、その原因について以下の調査を進めた。
前記の実験で得られたサンプルのうち、剪断機で切断したサンプルの切断面を光学顕微鏡で調査した。その結果、析出物中のNb量が多いにもかかわらず、ΔWが大きいサンプルは、10μm以上の極めて粗大な介在物が観察された。
そこで、板厚:0.15mmの切断面を、およそ100mm長に渡って観察したところ、ΔWが大きい2種類のサンプルでは、10μm以上の粗大な介在物がそれぞれ7個および12個観察された。一方、同程度の析出物中のNb量を含有しつつ、ΔWが小さいサンプルでは、粗大な介在物が観測されなかった。したがって、粗大な介在物の存在が剪断加工による鉄損劣化を増大させていると言える。
ここに、薄物材の場合において、上記したような現象が発生する原因について、発明者らは次のように考えている。
前述したとおり、本発明では、剪断加工による歪の蓄積を析出物によって緩和しているが、粗大な介在物があると、そこに新たな応力集中が生じ、その付近で鉄原子の配列が大きく歪んでしまい、その結果としてΔWが劣化してしまうことが考えられる。したがって、特に薄物材の場合では、粗大な介在物は極力なくす必要がある。さらに、調査を進めたところ、粗大な介在物の存在頻度は15mm2の面積の内に15個未満(すなわち1mm2の面積中に1個未満)とする必要があることが分かった。
なお、本発明では、鋼板を剪断した際の剪断面に、介在物が少ないことが重要であるため、粗大な介在物は、単位体積当たりの個数ではなく、任意の断面の単位面積当たりの介在物の個数を規定するものとする。
続いて、ΔWに及ぼす二次再結晶粒の結晶粒径の影響について調査した。これは、結晶粒界が多数存在することによっても、上記したような剪断による歪蓄積が緩和されると予想され、したがって、結晶粒径が小さく粒界が多い場合は、そもそも剪断加工による鉄損劣化が小さく、上述の析出物による歪蓄積緩和メカニズムが効果を発現しない可能性があると考えられるからである。
<実験2>
質量%で、C:0.037%、Si:3.15%、Mn:0.15%、Sb:0.039%を含み、かつAl:31質量ppm、N:12質量ppm、S:21質量ppmを含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを連続鋳造にて製造し、1250℃でスラブ加熱した後、熱間圧延により2.0mmの厚さとし、1000℃、15秒間の熱延板焼鈍を施したのち、冷間圧延により0.20mmの板厚に仕上げた。
ついで、50体積%N2-50体積%H2湿潤雰囲気中にて、800〜880℃の温度範囲、60秒間の均熱条件で、再結晶焼鈍を施した後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布してから、1050〜1230℃の温度範囲で10時間保定する純化焼鈍(最終仕上焼鈍)を行った。
再結晶焼鈍と純化焼鈍の温度を変更したのは、純化焼鈍で起こる二次再結晶の結晶粒径を変化させるためである。
次に、リン酸マグネシウムとほう酸を主体とした張力付与コーティングの形成を兼ねた平坦化焼鈍を、900℃、30秒間の条件で行った。さらに、前記したエプスタイン試験片(30mm×280mm)サイズに切断した。このとき、実験1と同様に、ワイヤーカッター切断と、剪断機による切断とを行った。得られたサンプルの鉄損を、JIS C 2550に記載の方法に従い測定した。
その後、酸洗により地鉄を露出させ、二次再結晶粒の結晶粒径を測定した。結晶粒径は、各条件についてエプスタイン試験片4枚分の粒径を測定し、それらを平均した。なお、地鉄の成分分析を行ったところ、質量%で、C:0.0014%、Si:3.15%、Mn:0.15%、Sb:0.039%、Cr:0.05%、P:0.011%であって、その他元素は検出限界以下であった。ここに、前述した方法で求めたΔWと結晶粒径との関係を図2に示す。
この実験では、Nbのような析出物形成元素が残っていないため、実験1で得られた効果は発揮されない。したがって、平均粒径が大きい場合に、ΔWが大きい結果となり、平均粒径が小さくなるとΔWが小さくなる結果となった。すなわち、Nb等の析出物を形成する元素の添加によるΔW低減効果は、二次再結晶粒の平均粒径が5mm以上の場合にその効果を発揮すると考えられる。
以上の実験から、発明者らは、二次再結晶粒の粒径が大きく、かつ薄い方向性電磁鋼板の最終製品板に、Nbのような元素を10〜50ppm含有させ、かつ少なくともその10%を析出物の形で存在させ、さらには析出物のサイズや、粗大介在物の量を制御することによって、剪断加工時における鉄損劣化が抑制できることを知見した。
本発明は上記知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、C:0.005%以下、Si:1.0〜8.0%およびMn:0.005〜1.0%を含み、かつNb、Ta、VおよびZrのうちから選んだ1種または2種以上を合計で10〜50質量ppm含有して、残部がFeおよび不可避的不純物からなる板厚:0.220mm以下の鋼板であって、上記Nb、Ta、VおよびZrは含有量の少なくとも50%が析出物として存在し、該析出物の直径(円相当径)が平均で0.02〜3μmであり、かつ直径:10μm以上の介在物が1mm2当たり1個未満であって、さらに該鋼板の二次再結晶粒の平均粒径が5mm以上であることを特徴とする方向性電磁鋼板。
2.質量%で、さらにNi:0.010〜1.50%、Cr:0.01〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%、P:0.005〜0.50%、Sn:0.005〜0.50%、Sb:0.005〜0.50%、Bi:0.005〜0.50%およびMo:0.005〜0.100%のうちから選んだ少なくとも一種を含有することを特徴とする前記1に記載の方向性電磁鋼板。
3.鋼板表面に、鋼板の圧延直角方向に対して15°以内の角度で圧延方向と交差する、幅:50〜1000μm 、深さ:10〜50μm の直線状の溝を有することを特徴とする前記1または2に記載の方向性電磁鋼板。
本発明によれば、薄物材の方向性電磁鋼板において、剪断加工に起因した磁気特性劣化を効果的に抑制することができる。その結果、エネルギー損失の少ない変圧器用の鉄心とすることができる。
鋼中のNb含有量と剪断加工による鉄損劣化量(ΔW)との関係を示した図 である。 二次再結晶粒の結晶粒径と剪断加工による鉄損劣化量(ΔW)との関係を示 した図である。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において鋼板の成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。なお、鋼板(地鉄)成分における%表示およびppm表示は、特に断らない限り、それぞれ質量%および質量ppmを表すものとする。
C:0.005%以下
Cは、鋼中に不可避的に混入する元素であるが、磁気時効による磁気特性劣化が発生するため極力低減することが望ましい。しかし、完全に除去することは困難であり、製造コスト面からも0.005%以下であれば許容される。好ましくは0.002%以下である。C含有量の下限をとくに限定すべき理由はないが、工業的にはCは零を超えて含まれる。
Si:1.0〜8.0%
Siは、最終製品板において、鋼の比抵抗を高め、鉄損を改善させるために必要な元素であるが、1.0%未満ではその効果に乏しい。一方、8.0%を超えた場合には、鋼板の飽和磁束密度が顕著に低下する。従って、Siは1.0〜8.0%に限定する。Si含有量の好ましい下限は3.0%である。またSi含有量の好ましい上限は3.5%である。
Mn:0.005〜1.0%
Mnは、熱間圧延時の加工性を良くするために必要な元素であるが、添加量が0.005%
未満では加工性改善効果に乏しい、一方、1.0%を超えると二次再結晶が不安定になり磁
気特性が劣化する。したがって、Mnは0.005〜1.0%に限定する。Mn含有量の好ましい下限は0.02%である。またMn含有量の好ましい上限は0.20%である。
本発明では、析出物形成元素として、Nb、Ta、VおよびZrのうちから選んだ1種または2種以上(以下「Nb等」と呼ぶ)を合計で、10〜50ppmの範囲で含有させることが不可欠である。というのは、Nb等が合計で10ppm未満では、本発明の最大の特徴である、鉄損改善のための析出物が充分に生成しないからである。一方、Nb等が合計で50ppmを越えると、前述したとおり、素材自体の鉄損特性が劣化してしまうため、50ppmをその上限とする。好ましくは、10〜30ppmの範囲である。
また、上記したNb等の析出物の存在比率(割合)は10%以上であって、その析出物の平均径(円相当径)は0.02〜3μmの範囲とすることが必要である。
ここに、平均径が0.02μmに満たないと、析出物が小さすぎて応力集中が起こりにくくなる。一方、3μmを超えると、析出物の存在頻度(個数)自体が減少して、応力集中が起こる箇所が少なくなってしまう。好ましい析出物の平均径は0.05〜3μmである。より好ましい下限は0.12μm、さらに好ましい下限は0.33μmである。また、より好ましい上限は1.2μm、さらに好ましい上限は0.78μmである。
なお、Nb等の析出物の析出の割合は 20%以上であることが好ましく、31%以上であることがより好ましい。さらに好ましくは48%以上である。上限は定める必要が無く、100%析出していても問題はない。
Nb等の析出物の平均径は、得られたサンプルの断面を走査型電子顕微鏡で観察し、10000倍程度の倍率で10視野程度撮影し、画像解析により円相当径の平均を求めることが好ましい。また、析出物の割合(析出割合)は実験1に記載した方法で測定することができる。
析出物形成元素としてはNb、VおよびZrから選んだ1種又は2種以上が熱間圧延時に鋼板の欠陥を作りにくいという点から好ましい。特にNbは、熱間圧延時の欠陥を低減できる点から好ましい。
ここで、Nb等の析出物径や析出割合を調整するためには、純化焼鈍時における最高到達鋼板温度、およびその後の900℃から500℃までの冷却速度を制御することが有効である。というのは、これら析出物は、純化焼鈍を高温にして、一旦固溶させ、冷却する時に再析出をさせることによって、その径の大きさや析出割合を調整できるからである。
以上の現象においては、一般の析出現象と同様に、冷却速度が速い場合は、析出物量が少なくなり(一部固溶したまま残る)、かつ析出物の径も小さくなる。一方、冷却速度が遅い場合は、その逆の状態になる。
さらに、本発明では、前述したように、粗大な介在物を極力低減する必要がある。具体的には、直径(円相当径)が10μm以上の介在物の存在頻度を、1mm2当たり1個未満に制限する必要がある。というのは、前述したように、剪断加工による歪の蓄積は析出物によって緩和されているが、粗大な介在物が存在した場合、そこに応力集中が生じるために、粗大な介在物付近で鉄原子の配列が大きく歪んでしまうからである。
なお、粗大な介在物の個数密度は、剪断機で切断したサンプルの切断面を、100mmの長さ程度、光学顕微鏡で観察して、その領域に存在する直径(円相当径)10μm以上の粗大な介在物を計数し、それを1mm2当たりに換算して求めることができる。
ここに、本発明において、析出物とは、主に、Nb等の炭化物や酸化物、窒化物であり、粗大な介在物とは、主に、溶鋼中のフラックスやアルミナ等の不純物、および上記析出物が10μm以上に粗大化したものである。
加えて、析出物形成元素の添加によるΔW低減効果の発現のためには、前述したように、素材の二次再結晶粒の平均粒径は、5mm以上とする必要がある。なお、この粒径は、本発明の解決課題でも挙げた、数mの大きさの大型変圧器用電磁鋼板で一般的なものであるが、変圧器の大きさに限らず二次再結晶の昇温速度および雰囲気を制御することで、平均粒径:5mm以上に制御することができる。また、二次再結晶粒の平均粒径は、実験2に記載した方法で測定することが好ましい。
ここで、二次再結晶粒の平均粒径を5mm未満としてΔWを低減する方法も考えられるが、鉄損や磁束密度の絶対値が低下するなどの問題が生じてしまうために、好ましくない。
以上、本発明の基本的な成分や構成等を説明した。
本発明では、さらに必要に応じ、以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
Ni:0.010〜1.50%
磁気特性を向上させるために、Niを添加することができる。この場合、添加量が0.010%未満では磁気特性の向上幅が小さい。一方、1.50%を超えると二次再結晶が不安定になり磁気特性が劣化するおそれがある。したがって、Niは、0.010〜1.50%の範囲とすることが好ましい。
Cr:0.01〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%、 P:0.005〜0.50%
鉄損を低減させる目的で、Cr、CuおよびPのうちの少なくとも一種を添加することができる。
ただし、それぞれの添加量が上記の下限量より少ない場合には、鉄損の低減効果に乏しい。一方、上記の上限量を超えた場合には、二次再結晶粒の発達が抑制され、逆に鉄損が増大する。したがって、それぞれ上記の範囲で含有させることが好ましい。
Sn:0.005〜0.50%、 Sb:0.005〜0.50%、 Bi:0.005〜0.50%、Mo:0.005〜0.100%
磁束密度を向上させる目的で、Sn、Sb、BiおよびMoのうち少なくとも一種を添加することができる。
ただし、それぞれの添加量が上記の下限量より少ない場合には、磁気特性の向上効果に乏しい。一方、上記の上限量を超えた場合には、二次再結晶粒の発達が抑制され磁気特性が劣化する。したがって、それぞれ上記の範囲で含有させることが好ましい。
さらに、本発明では、鋼板の表面に、圧延直角方向(本発明において、圧延方向と直角な方向を意味する。)に対して15°以内の角度であり、圧延方向と交差する方向に、幅:50〜1000μm 、深さ:10〜50μm の直線状の溝を形成することが好ましい。かかる溝形成により、磁区細分化効果が発揮されて、鉄損の一層の低減が達成される。なお、その溝の間隔(ピッチ)は2〜7mm程度とするのが好ましい。また、「直線状」とは、実線だけでなく、線状に連なる点線や破線なども含むものとする。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の好適な製造方法について述べる。この製造方法の主要な工程は、通常の方向性電磁鋼板の製造工程を利用することができる。すなわち、前記したような所定の成分調整がなされた溶鋼を用いて製造したスラブを、熱間圧延し、得られた熱延板に必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して、最終板厚とし、ついで鋼板に再結晶焼鈍を施した後、純化焼鈍を施し、必要に応じて平坦化焼鈍を行ったのち、コーティングを付与するという一連の工程である。
溶鋼での成分調整を行う場合であるが、Cの添加量が0.10%を超えると、以後の工程で磁気時効の起こらない50ppm(0.005%)以下に低減することが困難になるので、溶鋼段階では0.10%以下とすることが望ましい。
また、Siは、最終的に必要な量である1.0〜8.0%を、溶鋼での成分調整の段階で調節しても問題はない。一方、スラブ製造以後の工程で浸珪処理等によりSi量を増加させる方法を利用する場合には、溶鋼でのSi量を最終的に必要な量よりも抑えて添加することもできる。
本発明の主要成分であるNb、Ta、VおよびZrについては、溶鋼段階以後の工程中で添加・削減することが困難であり、上記した溶鋼での成分調整の段階で必要量を添加することが、最も望ましい。
上記以外に、必要に応じてインヒビター成分(AlN形成元素であるAlおよびN、MnS形成元素であるMnおよびS、MnSe形成元素であるMnおよびSe、TiN形成元素であるTiおよびNなど)を少なくとも1組、常法に従い、適量を含有することができる。
ここで、粗大な介在物を極力低減することが本発明では重要である。そのためには、製鋼段階で真空中での二次精錬を実施し、さらにその二次精錬の時間を10分以上とし、望ましくは20分以上とする。また、連鋳機で鋳込む際は、鋳込み開始時に電磁撹拌等を行ない、溶鋼中の不溶性の介在物浮上促進および介在物沈降抑制を行なうことが望ましい。
上記した成分を有する溶鋼は、通常の造塊法、連続鋳造法でスラブを製造してもよいし、100mm以下の厚さの薄鋳片を直接鋳造法で製造してもよい。スラブは通常の方法で加熱して熱間圧延するが、鋳造後加熱せずに直ちに熱延してもよい。薄鋳片の場合には熱間圧延してもよいし、熱間圧延を省略してそのまま以後の工程に進んでもよい。
熱間圧延前のスラブ加熱温度としては、インヒビター成分を含む成分系では約1400℃の高温が通常採用される。一方、インヒビター成分を含まない成分系では1250℃以下の低温が通常採用され、コストの面で有利である。
次いで、必要に応じて熱延板焼鈍を施す。良好な磁性を得るためには、熱延板焼鈍温度は800℃以上1150℃以下が好適である。というのは、熱延板焼鈍温度が800℃未満であると、熱延でのバンド組織が残留し、整粒した一次再結晶組織を実現することが困難となるため、熱延板焼鈍を施しても二次再結晶の発達を促進する効果が相対的に小さいからである。一方、熱延板焼鈍温度が1150℃を超えると、熱延板焼鈍後の結晶粒が粗大化してしまう。したがって、この場合にも、整粒した一次再結晶組織を実現することが困難となる。
熱延板焼鈍後、必要に応じて中間焼鈍を挟む1回以上の冷延を施した後、再結晶焼鈍を行う。冷間圧延の温度を100℃〜300℃の範囲とし、また冷間圧延途中で100〜300℃の範囲での時効処理を1回または複数回行うことが、磁気特性をさらに向上させる点で有効である。再結晶焼鈍を施す場合において、脱炭が必要なときには、その雰囲気を湿潤雰囲気とするが、脱炭を必要としないときには、乾燥雰囲気で行ってもよい。再結晶焼鈍後は、浸珪法によってSi量を増加させる技術をさらに適用してもよい。
その後、鉄損を重視してフォルステライト被膜を形成させる場合には、MgOを主体とする焼鈍分離剤を適用した後に仕上焼鈍を施すことにより、二次再結晶組織を発達させると共にフォルステライト被膜を形成させることが可能である。
打ち抜き加工性を重視してフォルステライト被膜を積極的に形成しない場合には、焼鈍分離剤を適用しないか、適用する場合でもフォルステライト被膜を形成するMgOは使用せずにシリカやアルミナ等を用いるのがよい。これら焼鈍分離剤を塗布する際は、水分を持ち込まない静電塗布を行うことなどが有効である。また耐熱無機材料シート(シリカ、アルミナ、マイカ)を用いてもよい。
仕上焼鈍は、二次再結晶が発現する温度であれば充分であるが、800℃以上で行うことが望ましい。また、二次再結晶を完了させる焼鈍条件が望ましく、800℃以上の温度で20時間以上保持することが望ましい。打ち抜き性を重視してフォルステライト被膜を形成させない場合には、二次再結晶が完了すればよいので、保持温度は850〜950℃程度が望ましく、この保持処理までで仕上焼鈍を終了することも可能である。鉄損を重視して、あるいはトランスの騒音を低下させるためにフォルステライト被膜を形成させる場合は、1200℃程度まで昇温させることが有利である。
なお、かかる高温焼鈍の冷却に際し、少なくとも900℃から500℃の温度域については、5〜100℃/hの速度で冷却することが望ましい。900℃未満の保持温度から冷却する際はその保持温度から500℃までの温度域について、5〜100℃/hの速度で冷却することが望ましい。というのは、上記の温度域における冷却速度が、100℃/hを超えると、析出物が細かくなりすぎたり、固溶したまま析出しないおそれがあるからである。一方、5℃/hに満たないと、析出物の径が大きくなりすぎたり、またその冷却時間が長大となり生産性を低下させる等のおそれがある。
なお、より好ましい冷却速度の下限は7.8℃/hである。また、より好ましい冷却速度の上限は30℃/hであり、安定した結果を得る観点からさらに好ましい冷却速度の上限は14℃/hである。
仕上焼鈍後には、付着した焼鈍分離剤を除去するため、水洗やブラッシング、酸洗を行うことが望ましい。その後、平坦化焼鈍を行い形状を矯正することが鉄損低減のために有効である。
鋼板を積層して使用する場合には、鉄損を改善するために、平坦化焼鈍前もしくは後に、鋼板表面に絶縁コーティングを施すことが有効である。鉄損低減のためには、鋼板に張力を付与できるコーティングが望ましい。バインダーを介した張力コーティング塗布方法や物理蒸着法、化学蒸着法等により、無機物を鋼板表層にコーティングする方法を採用すると、コーティング膜の密着性に優れ、かつ著しい鉄損低減効果があるため、特に望ましい。
鉄損低減のためには、磁区細分化処理を行うことが望ましい。その処理方法としては、一般的に実施されているように、最終製品板に溝をいれたり、レーザーやプラズマにより線状に熱歪や衝撃歪を導入したりする方法や、最終仕上板厚に達した冷間圧延板などの中間製品にあらかじめ溝をいれたりする方法が例示される。
また、本発明の鋼板を用いた好適な鉄心の製造方法としては、例えば、本発明の鋼板を剪断し、歪取焼鈍することなく積層して鉄心を製造する方法が挙げられる。この製造方法はとくに大形(例えば最長辺の長さが500mm超え)の板に剪断して、大型の鉄心を製造する場合、とくに有利である。鋼板の積層数、前記剪断により得る鋼板の寸法・形状、前記溝の有無やその寸法、さらにはコーティングの有無や種類などは、従来の知識に基づき、適宜選択すればよい。
<実施例1>
表1記載の成分を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼片を溶製し、連続鋳造にて鋼スラブを製造した。溶製時、真空中での二次精錬を行い、その時間を変化させて介在物の存在頻度を調整した。1400℃でスラブ加熱した後、熱間圧延により2.4mmの厚さに仕上げた。その後1000℃で40秒の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延により1.8mmの板厚とし、さらに900℃の中間焼鈍を施した後、冷間圧延により0.20mm厚に仕上げた。
その後、60体積%N2-40体積%H2湿潤雰囲気中にて、850℃で90秒間の均熱条件の再結晶焼鈍を施した後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布して1220℃で6時間の純化焼鈍を行った。純化焼鈍では900℃から500℃までの冷却速度を1〜50℃/hの範囲に制御して、Nbの析出物径や析出割合を操作した。その後、850℃で20秒間の平坦化焼鈍を施した。
得られたサンプルを30mm×280mmサイズに切断した。このときの切断は、ワイヤーカッター切断と、剪断機による切断と2条件で行った。得られたサンプルの磁気特性をJIS C 2550に記載の方法で測定し、ワイヤーカッターによる切断で得られたサンプルの磁気特性を表1に記す。
さらに、2条件の切断方法で各々得られた鉄損について、剪断機で切断したサンプルの鉄損から、ワイヤーカッターによる切断で得られたサンプルの鉄損を引く方法で求めたΔWを、表1に併記する。次に、磁気測定後のサンプルを酸洗処理して被膜を除去し、二次再結晶粒の結晶粒径を測定した。その結果を、Nbの析出物径、析出割合および10μm以上の介在物の存在頻度を調査した結果と共に表1に併記する。
Figure 0005810506
同表に示したように、結晶粒径、Nbの析出物径や析出割合および介在物の存在頻度が、本発明の適正範囲を満足する発明例は、いずれも磁気特性が良好であり、かつΔWが小さく剪断加工による鉄損劣化が小さいことが分かる。
<実施例2>
表2記載の成分を含有し、二次精錬の時間を変化させて介在物の存在頻度を調整して製造した方向性電磁鋼板の製品板を90℃の熱塩酸に6分浸漬することで、コーティングとフォルステライト被膜を除去し、かつ板厚を0.10mmに減厚した。その後、均熱条件が850℃で70秒、60体積%N2-40体積%H2湿潤雰囲気で焼鈍を行ってSiO2の内部酸化層を付与し、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布した後に1200℃で2時間の純化焼鈍を行うことで再度フォルステライト被膜を形成した。
その後、リン酸マグネシウムとほう酸を主体とした張力付与コーティング形成を兼ねた平坦化焼鈍を900℃で30秒の条件で施した。このようにして0.10mm厚のサンプルを得た。得られたサンプルをエプスタイン試験片の30mm×280mmサイズに切断した。このとき、ワイヤーカッターで鋼に歪が入らないように切断した場合と、剪断機による切断と2条件で行った。
2条件の切断方法で各々得られた鉄損等の磁気特性およびΔWを実施例1と同様の手順にて求め、得られたΔWを表2に併記する。また、二次再結晶粒の結晶粒径は板厚を減じても変化はないので実施例1の値とした。その値も表2に併記する。
ここに、表2の地鉄中の成分とは、この酸洗処理後に被膜を除去したサンプルで成分調査を行った結果である。また、析出物等の調査を行った結果、平均の析出物径は0.60〜1.77μmであり、本発明範囲内であった。その他の調査結果を、表2に併記する。
Figure 0005810506
上記したとおりに、Nbの析出物径が本発明範囲内であり、かつ表2に示したように、二次再結晶粒の結晶粒径やNb等の析出割合、さらには介在物の存在頻度が本発明の適正範囲を満足する発明例は、いずれも磁気特性が良好であり、ΔWが小さく、剪断加工による鉄損劣化が小さいことが分かる。
<実施例3>
C:0.052%、Si:3.35%、Mn:0.20%、Cr:0.06%、Al:250ppm、N:80ppm、S:35ppm、P:0.008%、Sb:0.036%およびNb:30ppmを含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを、連続鋳造にて製造し、溶製時、真空中での二次精錬の時間を変化させて介在物の存在頻度を調整した。さらに1400℃でスラブ加熱した後、熱間圧延により2.4mmの厚さとした。ついで、1000℃で40秒の熱延板焼鈍を施したのち、冷間圧延により1.8mmの板厚として、700〜1020℃の温度範囲で中間焼鈍を施した後、冷間圧延により0.18mm厚の鋼板に仕上げた。
続いて、鋼板表面に局所的電解エッチングで、幅:100μm、深さ:25μmの線状溝を、圧延方向と80°の角度をなすように8mmピッチで形成した。その後、60体積%N2-40体積%H2湿潤雰囲気中にて、800〜900℃で90秒の均熱条件の再結晶焼鈍を施したのち、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布し、1220℃で6時間の純化焼鈍を行った。
その後、850℃で20秒間の平坦化焼鈍を施した。ここに、中間焼鈍温度と再結晶焼鈍温度を種々変更したのは、二次再結晶後の粒径の大きさを変更するためである。
なお、得られたサンプルはエプスタイン試験片の30mm×280mmサイズに切断した。このとき、ワイヤーカッター切断した場合と、剪断機による切断の場合との2条件で行った。
さらに、上記試験片の磁気特性をJIS C 2550に記載の方法で測定した。ワイヤーカッターによる切断で得られたサンプルの磁気特性を表3に記す。さらに、2条件の切断方法で各々得られた鉄損について、剪断機で切断したサンプルの鉄損からワイヤーカッターで切断したサンプルの鉄損を差し引く事で得られた値ΔWを表3に併記する。
また、磁気測定後のサンプルを酸洗処理して被膜を除去し、二次再結晶粒の結晶粒径を測定した。その結果を、Nbの析出物径、析出割合および介在物の存在頻度の調査結果と共に表3に併記する。
上記被膜を除去したサンプルで、鋼板中の成分調査を行った結果は、C:0.0016%、Si:3.35%、Mn:0.20%、Cr:0.06%、P:0.008%、Sb:0.036%、Nb:19ppmであり、本発明の要件を満足する成分組成であった。さらに、析出物調査を行った結果、平均の析出物径は0.52〜1.22μmであり、本発明範囲内であった。
Figure 0005810506
同表に示したように、結晶粒径、Nbの析出割合および介在物の存在頻度が、本発明の適正範囲を満足する発明例は、いずれも磁気特性が良好であり、かつΔWが小さく剪断加工による鉄損劣化が小さいことが分かる。
本発明によれば、剪断加工時の磁気特性劣化を効果的に軽減した薄物材の方向性電磁鋼板を得ることができる。その結果、鉄損の少ない鉄心を得ることができ、もって、エネルギー効率の高い大型変圧器等の作製が可能となる。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.005%以下、Si:1.0〜8.0%およびMn:0.005〜1.0%を含み、かつNb、Ta、VおよびZrのうちから選んだ1種または2種以上を合計で10〜50質量ppm含有して、残部がFeおよび不可避的不純物からなる板厚:0.220mm以下の鋼板であって、上記Nb、Ta、VおよびZrは含有量の少なくとも50%が析出物として存在し、該析出物の直径(円相当径)が平均で0.02〜3μmであり、かつ直径:10μm以上の介在物が1mm2当たり1個未満であって、さらに該鋼板の二次再結晶粒の平均粒径が5mm以上であることを特徴とする方向性電磁鋼板。
  2. 質量%で、さらにNi:0.010〜1.50%、Cr:0.01〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%、P:0.005〜0.50%、Sn:0.005〜0.50%、Sb:0.005〜0.50%、Bi:0.005〜0.50%およびMo:0.005〜0.100%のうちから選んだ少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板。
  3. 鋼板表面に、鋼板の圧延直角方向に対して15°以内の角度で圧延方向と交差する、幅:50〜1000μm 、深さ:10〜50μm の直線状の溝を有することを特徴とする請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板。
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