(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る回転式圧縮機1を用いた冷凍サイクル装置100を、図1乃至図6を用いて説明する。
図1は第1の実施形態に係る冷凍サイクル装置100の構成を模式的に示す説明図、図2は冷凍サイクル装置100に用いられる回転式圧縮機1の構成を示す断面図、図3は回転式圧縮機1における圧縮機構部11の構成を示す上面図、図4は圧縮機構部11の構成を示す上面図、図5は圧縮機構部11の要部構成であって、特にローラ24及び一次側吐出孔41,51及び二次側吐出孔42,52の構成を示す上面図、図6は圧縮機構部11の要部構成であって、特に下死点におけるローラ24及び一次側吐出孔41,51及び二次側吐出孔42,52の構成を示す上面図である。
冷凍サイクル装置100は、空気調和機に用いられる。以下、冷凍サイクル装置100を空気調和機100として説明する。
図1に示すように、空気調和機100は、一次側にアキュムレータ2を有する回転式圧縮機1と、四方弁101と、熱源側熱交換器である室外熱交換器102と、膨張装置103と、利用側熱交換器である室内熱交換器104と、を備え、これらがサイクル状に連通されている。
空気調和機100は、回転式圧縮機1のアキュムレータ2の一次側に四方弁101が接続されるとともに、回転式圧縮機1の二次側に四方弁101が接続される。空気調和機100は、四方弁101に、室外熱交換器102、膨張装置103及び室内熱交換器104が順次接続され、四方弁101を切り換えることで、回転式圧縮機1から吐出された冷媒の流れ方向を切換可能に形成されている。
回転式圧縮機1は、密閉容器10と、密閉容器10内の下部に設けられた圧縮機構部11と、密閉容器10の上部に設けられた電動機部12と、密閉容器10に設けられた冷媒の吸込管13と、密閉容器10に設けられた冷媒の吐出管14と、を備えている。また、回転式圧縮機1は、吸込管13に接続されたアキュムレータ2を備えている。
密閉容器10は、その上部に、その内部を密閉する上蓋10aを備え、内部に圧縮機構部11及び電動機部12を収納後、上蓋10aが溶接等により固定されることで密閉される。
圧縮機構部11は、第1シリンダ21及び第2シリンダ22と、回転軸23と、ローラ24と、軸受25と、仕切板26と、ブレード27と、を備えている。
図3、図5、図6に示すように、第1シリンダ21は第1シリンダ室21aを形成する。また、第1シリンダ21は、第1シリンダ室21aと連通するブレード溝21b、及び、吸込管13に接続され、第1シリンダ室21aと連通する吸込孔21cを備えている。ブレード溝21bは、ブレード27が第1シリンダ室21aに対して突没自在に収容される。また、ブレード溝21bは、吸込孔21cと隣接して設けられる。
また、第1シリンダ21は、外形寸法が密閉容器10の内径寸法よりも僅かに小に形成され、密閉容器10内周面に挿入され、密閉容器10外部からの溶接加工によって位置決め固定される。なお、第1シリンダ21は、図2に示すように、密閉容器10に固定された場合に、第1シリンダ21の下方の空間と第1シリンダ21の上方の空間を連通させる連通孔21bを備えている。
図3、図5、図6に示すように、第2シリンダ22は第2シリンダ室22aを形成する。また、第2シリンダ22は、第2シリンダ室22aと連通するブレード溝22b、及び、吸込管13に接続され、第2シリンダ室22aと連通する吸込孔22cを備えている。ブレード溝22bには、ブレード27が第2シリンダ室22aに対して突没自在に収容される。ブレード溝22bは、ブレード27が第2シリンダ室22aに対して突没自在に収容される。また、ブレード溝22bは、吸込孔22cと隣接して設けられる。
これら第1、第2シリンダ21、22は、互いに外形形状及び寸法が相違し、且つ、第1シリンダ室21a及び第2シリンダ室22aの内径寸法が同一となるよう設定されている。なお、図3乃至図6においては、同一図面により圧縮機構部11の要部である第1、第2シリンダ21,22その他要部構成を図示する。
回転軸23は、第1シリンダ室21a内及び第2シリンダ室22a内に挿通されるとともに、軸受25により枢支される。回転軸23は、第1シリンダ室21a内及び第2シリンダ室22aに位置する部位に、例えば略180度の位相差を有するクランク偏心部28,28を備えている。
クランク偏心部28,28は、その高さ寸法が第1、第2シリンダ室21a、22aの高さ寸法より若干小に形成される。
ローラ24は、クランク偏心部28,28にそれぞれ係合され、第1シリンダ室21a及び第2シリンダ室22a内を摺動可能、且つ、ブレード27の端部と摺動可能に形成されている。ローラ24は、その高さ寸法が、第1、第2シリンダ室21a、22aの高さ寸法と略同一に形成される。
ローラ24,24は、位相差を有するクランク偏心部28,28に設けられるため、互いに略180度の位相差がある。ローラ24は、第1、第2シリンダ室21a、22a内で偏心回転する。
軸受25は、第1シリンダ室21aの上方を覆う第1シリンダ21の上面部に設けられた主軸受31と、第2シリンダ室22aの下方を覆う第2シリンダ22の下面部に設けられた副軸受32と、を備えている。軸受25は、主軸受31及び副軸受32により、回転軸23を枢支可能に形成されている。
主軸受31は、第1シリンダ室21aの上面を形成する測板であって、ローラ24が摺動する。主軸受31は、その上方を覆うように設けられた2つの第1バルブカバー33を備えている。また、主軸受31は、冷媒を第1シリンダ室21aから第1バルブカバー33へ案内する第1吐出孔34と、第1吐出孔34を開閉する第1開閉弁35と、を備えている。
第1吐出孔34は、主軸受31であって、ブレード27を挟んで吸込孔21cと隣接する位置に複数設けられる。具体的には、第1吐出孔34は、ブレード27の吸込孔21cが設けられた側とは相対する側にブレード27に隣接して配置され、主軸受31に二つ設けられた一次側吐出孔41及び二次側吐出孔42を備えている。
一次側吐出孔41は、二次側吐出孔42よりもブレード27(ブレード溝21b)から離間して、ブレード27から二次側吐出孔42よりも遠い位置に設けられる。一次側吐出孔41は、二次側吐出孔42よりも、第1シリンダ室21aの中心Q側に設けられる。さらに言えば、一次側吐出孔41は、図5に示すように、その端部が僅かに第1シリンダ21の端面と重なるが、その殆どが第1シリンダ室21aに対向して位置し、且つ、上死点直前のローラ24と重なる位置に設けられる。
二次側吐出孔42は、ブレード27に隣接して設けられ、一次側吐出孔41よりブレード27に近い位置に設けられる。二次側吐出孔42は、その一部、さらに言えば略中心近くまで第1シリンダ21の端面と重なるように位置し、残り略半分が第1シリンダ室21aに対向して位置する。なお、第1シリンダ21には、二次側吐出孔42と重なる位置に、第1シリンダ室21a内の圧縮された冷媒を二次側吐出孔42へと案内する切欠部が形成されている。
また、第1吐出孔34は、主軸受31に設けられ、一次側吐出孔41及び二次側吐出孔42の周囲にそれぞれ形成された第1開閉弁35の弁座43と、前記弁座43の周囲にそれぞれ設けられ、図4中二点鎖線で示すようにその一部が互いに重なり合う凹部44と、を備えている。また、第1吐出孔34は、弁座43,43の近傍であって凹部44,44の周囲の一部に設けられ、凹部44,44よりもその深さが浅く、且つ、一次側吐出孔41及び二次側吐出孔42から吐出された冷媒の流れを案内する案内部45と、を備えている。
第1開閉弁35は、一次側吐出孔41を開閉する一次側開閉弁46と、二次側吐出孔42を開閉する二次側開閉弁47と、を備えている。一次側開閉弁46は、主軸受31に固定される固定部46aと、一次側吐出孔41の弁座43に離接することで、一次側吐出孔41を開閉する弁部46bと、固定部46a及び弁部46bを接続する連結部46cと、を備えている。
二次側開閉弁47は、主軸受31に固定される固定部47aと、二次側吐出孔42の弁座43に離接することで、二次側吐出孔42を開閉する弁部47bと、固定部47a及び弁部47bを接続する連結部47cと、を備えている。
なお、二次側開閉弁47は、その固定部47a中心及び弁部47b中心を結ぶ直線S上に一次側吐出孔41が位置しないように、主軸受31上に配置される。換言すると、二次側開閉弁47は、固定部47a及び弁部47bを結ぶ直線上から一次側吐出孔41が離間して位置するように、固定部47aが主軸受31上に配置される。
副軸受32は、第2シリンダ室22aの下面を形成し、ローラ24が摺動する。副軸受32は、その下方を覆うように設けられた第2バルブカバー36を備えている。また、副軸受32は、冷媒を第2シリンダ室22aから第2バルブカバー36へ案内する第2吐出孔37と、第2吐出孔37を開閉する第2開閉弁38と、を備えている。
第2吐出孔37は、副軸受32であって、ブレード27を挟んで吸込孔22cと隣接する位置に複数設けられる。具体的には、第2吐出孔34は、ブレード27の吸込孔22cが設けられた側とは相対する側にブレード27に隣接して配置され、副軸受32に二つ設けられた一次側吐出孔51及び二次側吐出孔52を備えている。
一次側吐出孔51は、ブレード27(ブレード溝22b)から離間して設けられる。一次側吐出孔51は、二次側吐出孔52よりも、第2シリンダ室22aの中心側に設けられる。さらに言えば、一次側吐出孔51は、図5に示すように、その端部が、僅かに第2シリンダ22の端面と重なるがり、その殆どが第2シリンダ室22aに対向して位置し、且つ、上死点直前のローラ24と重なる位置に設けられる。
二次側吐出孔52は、ブレード27に隣接して設けられる。二次側吐出孔52は、その一部、さらに言えば略中心近くまで第2シリンダ22の端面と重なるように位置し、残り略半分が第2シリンダ室22aに対向して位置する。なお、第2シリンダ22は、二次側吐出孔52と重なる位置に、第2シリンダ室22a内の圧縮された冷媒を二次側吐出孔52へ案内する切欠部が形成されている。
また、第2吐出孔37は、副軸受32に設けられ、一次側吐出孔51及び二次側吐出孔52の周囲にそれぞれ設けられた第2開閉弁38の弁座53と、前記弁座53の周囲にそれぞれ設けられ、その一部が互いに重なり合う凹部54と、を備えている。また、第2吐出孔37は、弁座53,53の近傍であって凹部54,54の周囲の一部に設けられ、凹部54,54よりもその深さが浅く、且つ、一次側吐出孔51及び二次側吐出孔52から吐出された冷媒の流れを案内する案内部55と、を備えている。
第2開閉弁38は、一次側吐出孔51を開閉する一次側開閉弁56と、二次側吐出孔52を開閉する二次側開閉弁57と、を備えている。一次側開閉弁56は、副軸受32に固定される固定部56aと、一次側吐出孔51の弁座53に離接することで一次側吐出孔51を開閉する弁部56bと、固定部56a及び弁部56bを接続する連結部56cと、を備えている。
二次側開閉弁57は、副軸受32に固定される固定部57aと、二次側吐出孔52の弁座53に離接することで、二次側吐出孔52を開閉する弁部57bと、固定部57a及び弁部57bを接続する連結部57cと、を備えている。
なお、二次側開閉弁57は、その固定部57a中心及び弁部57b中心を結ぶ直線S上に、一次側吐出孔51が位置しないように、副軸受32上に配置される。換言すると、二次側開閉弁57は、固定部57a中心及び弁部57b中心を結ぶ直線上から一次側吐出孔51が離間して位置するように、固定部57aが副軸受32上に配置される。
なお、第1シリンダ21、第2シリンダ22、仕切板26、主軸受31、副軸受32、第1バルブカバー33及び第2バルブカバー36はボルトB等により一体に結合され、第1シリンダ21を介して密閉容器10に固定される。
仕切板26は、その外径寸法が第1シリンダ室21a及び第2シリンダ室22aの内径寸法より大であって、且つ、第1シリンダ21及び第2シリンダ22の外形寸法よりも小径に形成されている。仕切板26は、第1シリンダ室21a及び第2シリンダ室22aを覆うように配置される。
ブレード27は、ブレード溝21b、22bにそれぞれ設けられ、その高さ寸法が第1、第2シリンダ室21a、22aの高さ寸法と略同一に形成される。ブレード27は、その先端が例えば半円筒状に形成されている。ブレード27は、例えば背圧がその背面に印加されることで、当該背圧によりローラ24に向かって押圧され、ローラ24の回転角度に係らず、その先端がローラ24の外周面に接触可能に形成されている。
ブレード27及びブレード溝21b、22bは、吸込孔21c、22c及び第1、第2吐出孔34,37との間を区画するようにそれぞれ第1、第2シリンダ21,22に設けられる。ブレード27は、ローラ24に接触することで、第1、第2シリンダ室21a、22aを、吸込室と圧縮室とに区画する。
電動機部12は、密閉容器10の内面に固定される固定子12aと、この固定子12aの内側に所定の間隔を存して配置され、且つ、回転軸23に固定される回転子12bとを備えている。電動機部12は、例えば運転周波数を可変するインバータに接続される。なお、インバータは、このインバータを制御する制御部に電気的に接続され、必要に応じて、回転軸23の回転数を、任意の回転数で回転させる。
吸込管13は、第1シリンダ21及び第2シリンダ22の吸込孔にそれぞれ接続されている。また、吸込管13は、密閉容器10から突出した中途部において略90度で上方に折曲され、その一部がアキュムレータ2内に挿通されるとともに、その端部が、アキュムレータ2の所定の高さに配置される。なお、アキュムレータ2内に挿通された吸込管13の端部の高さは、その高さによって、アキュムレータ2内に貯液可能な液状の冷媒及び潤滑油の容量が変わるため、必要に応じて適宜設定される。
また、吸込管13は、アキュムレータ2内に挿入された部位であって、アキュムレータ2の底面から高さ方向の所定の位置に、油戻孔を備えている。なお、当該油戻孔は、アキュムレータ2内に貯液された液状の冷媒及び潤滑油の混合液中の下方に溜まる潤滑油を、気体状の冷媒と同時に第1シリンダ室21a及び第2シリンダ室22aに供給可能であればよく、アキュムレータ2の容量や寸法等により、その高さや内径は適宜設定される。
吐出管14は、密閉容器10の上端部、具体的には上蓋10aに接続されている。この吐出管14は、四方弁101に接続される。
アキュムレータ2は、その両端が閉塞する円筒形状の容器61と、容器61内に設けられた気液分離部62と、を備えている。アキュムレータ2は、容器61の下端部からその内部に吸込管13が挿入されるとともに、気液分離部62の直下まで吸込管13が配置され、容器61の上端部に冷媒が戻る戻り管63が接続される。なお、戻り管63は、四方弁101に接続される。
気液分離部62は、直下の吸込管13,13に、戻り管63から戻った冷媒が直接進入することを防止する冷媒の案内手段である。即ち、気液分離部62は、戻り管63から戻った気液混合の冷媒が衝突可能、且つ、当該衝突した気液混合の冷媒を、容器61の内周面方向へと案内可能に形成されている。
このようなアキュムレータ2は、気液分離部62により液状の冷媒及び潤滑油を容器61下方に貯留するとともに、気体の冷媒を吸込管13から供給可能な、所謂気液分離器である。
このように構成された回転式圧縮機1を用いた空気調和機100では、まず回転式圧縮機1の電動機部12に商用電源等を供給することにより回転子12bが回転し、回転子12bに固着された回転軸23が回転する。この回転軸23の回転によりクランク偏心部28,28及びローラ24,24は偏心回転する。このローラ24,24の回転摺動により、第1シリンダ室21a及び第2シリンダ室22aに吸込まれた冷媒が圧縮される。
具体的には、先ず、ローラ24が上死点を過ぎた位置から、ローラ24及びブレード27により区画された二つの室の一方(吸込室)で吸込孔21c、22cから冷媒の吸込みが開始されるとともに、他方(圧縮室)にて先に吸込孔21c、22cから吸込まれた冷媒の圧縮が開始される。
ここで、図6に示すように、ローラ24が下死点に位置した場合には、一次側吐出孔41,51は、ローラ24の端面と重なることなく、その第1、第2シリンダ室21a、22aの圧縮室に位置することとなる。即ち、一次側吐出孔41,51は、ローラ24が下死点に位置する場合に、第1、第2シリンダ室21a、22aに対向して開口する位置に設けられる。また、ローラ24の回転により、冷媒が圧縮されて所定の圧力に達すると、一次側開閉弁46,56が開き、一次側吐出孔41,51から冷媒が吐出される。
また、略同時に、二次側開閉弁47,57も開き、二次側吐出孔42,52からも冷媒が吐出される。なお、一方の室においては、冷媒の吸込みが継続して行われる。
さらにローラ24が回転すると、一次側開閉弁46,56が閉じ、二次側吐出孔42,52からのみ冷媒が吐出される。さらにローラ24が回転し、上死点に位置すると、二次側開閉弁47,57が閉じる。なお、このとき、ブレード27に近い二次側吐出孔42,52は、圧縮室内に残存する冷媒を極力全て排出する。
また、上死点をローラ24が通過すると、一方の室で冷媒の吸込みが終了し、冷媒の圧縮が成されるとともに、他方の室で冷媒の吸込みが開始される。なお、第1、第2シリンダ室21a,22a、ローラ24及びブレード27により形成される2つの室は、偏心回転したローラ24の位置により、一方の室が吸込室を、他方の室が圧縮室を形成する。
これらの繰り返しにより、圧縮機構部11により圧縮された冷媒が第1、第2バルブカバー33,36を介して密閉容器10内へと吐出される。当該密閉容器10内へ吐出された冷媒は、吐出管14を介して四方弁101へと移動する。
ここで、空気調和機100の冷房運転時においては、四方弁101は、回転式圧縮機1の二次側と室外熱交換器102とを接続する。図1の実線の矢印Cに示すように、回転式圧縮機1で圧縮された冷媒は、室外熱交換器102を通過し、外気と熱交換して凝縮される。次に凝縮された冷媒は、膨張装置103を介して室内熱交換器104を通過し、室内空気と熱交換を行い、蒸発し、室内空気を冷却する。
室内熱交換器104を通過した冷媒は、四方弁101を通過してアキュムレータ2に移動する。アキュムレータ2内に移動した冷媒は、気液分離部62により液状の冷媒及び潤滑油がアキュムレータ2内に貯留され、気体状の冷媒が、吸込管13から回転式圧縮機1内へと吸込まれる。また、このとき、油戻孔から、貯留された潤滑油が吸込まれ、気体状の冷媒とともに、第1シリンダ室21a及び第2シリンダ室22a内へと吸込まれる。この繰り返しにより、空気調和機100は、冷房運転として熱交換を行う。
なお、空気調和機100の暖房運転時においては、四方弁101は、回転式圧縮機1の二次側と室内熱交換器104とを接続する。図1の破線の矢印Hに示すように、回転式圧縮機1で圧縮された冷媒は、室内熱交換器104を通過し、室内空気と熱交換を行い、凝縮される。凝縮した冷媒は、膨張装置103を介して室外熱交換器102を通過し、室外熱交換器102において室外空気と熱交換を行い蒸発する。この蒸発した冷媒は、四方弁101及びアキュムレータ2を介して気液分離がなされて回転式圧縮機1に吸込まれる。この繰り返しにより、空気調和機100は、暖房運転として熱交換を行う。
このように構成された回転式圧縮機1を用いた空気調和機100によれば、圧縮機構部11の一次側吐出孔41,51を二次側吐出孔42,52よりも第1、第2シリンダ室21a、22aの中心側に設けることで、二次側吐出孔42,52から冷媒が吐出されている場合に、一次側吐出孔41,51に冷媒が逆流することを極力防止することが可能となる。
具体的に説明すると、図5に示すように、第1、第2シリンダ室21a、22aの中心から略同一位置に一次側吐出孔Xを設けた場合には、一次側吐出孔Xと重なる第1、第2シリンダ21,22の内周壁に、冷媒の流れを案内する切欠部を設けることとなる。この切欠部により一次側吐出孔Xが第1、第2シリンダ室21a、22aへと連通する流路面積が確保されることから、二次側吐出孔42,52から吐出された冷媒が、一次側吐出孔Xへと移動し、一次側開閉弁46,56が閉塞せずに冷媒の逆流が発生する虞が有る。
しかし、本実施形態のように、図5に示すように、二次側吐出孔42,52が冷媒を吐出する場合には一次側吐出孔41,51はローラ24と重なり、第1、第2シリンダ室21a、22a内と連通する開口面積が極小となる。このように一次側吐出孔41,51は、上死点付近においてその殆どがローラ24と重なる位置に配置されるため、流路抵抗が高い。
これらのように、圧縮機構部11は、一次側吐出孔41,51を二次側吐出孔42,52より内径方向に設け、上死点付近の一次側吐出孔41,51の流路抵抗を増大させることで、二次側吐出孔42,52から吐出された冷媒が、一次側吐出孔41,51へ逆流することを防止できる。
また、図6に示すように、圧縮機構部11のローラ24及びブレード27が下死点に位置する際に、一次側吐出孔41,51がローラ24の外径よりも外側に位置するように構成することで、一次側吐出孔41,51の吐出流路の流路面積を極力確保可能となる。このため、圧縮機構部11は、吐出流路の損失を防止可能となる。
これは、下死点において、圧縮される室の容積変化が最も大きくなることから、吐出が開始されると、その吐出流量が最大となる。このため、一次側吐出孔41,51を、ローラ24と重ならないように配置することで、吐出流路を確保し、流路面積が小さいことによる損失を極力低減することが可能となる。
これらのように、一次側吐出孔41,51による吐出流路損失の低減、及び二次側吐出孔42,52から吐出された冷媒の一次側吐出孔41,51への逆流の防止を行うことで、再膨張損失の低減を図り、高性能の回転式圧縮機1とすることが可能となる。
また、圧縮機構部11は、一次側吐出孔41,51及び二次側吐出孔42,52をそれぞれ別体の一次側開閉弁46.56及び二次側開閉弁47,57で開閉可能、且つ、二次側開閉弁47の固定部47a及び弁部47bを結ぶ直線上から一次側吐出孔41を離間し配置される。この配置により、二次側吐出孔42,52から吐出される冷媒が、一次側開閉弁46,56方向に吐出されることを極力防止し、二次側吐出孔42,52から吐出される冷媒により一次側開閉弁46,56による一次側吐出孔41,51の閉塞を阻害することを防止可能となる。これにより、一次側開閉弁46,56の閉じ遅れを防止し、当該閉じ遅れによる再膨張損失の増大が防止可能となる。
また、圧縮機構部11は、一次側吐出孔41,51及び二次側吐出孔42,52の弁座43,43及び弁座53,53の周囲に、一部が互いに重なり合う凹部44,44及び凹部54,54をそれぞれ設けられる。
これにより、一次側吐出孔41,51及び二次側吐出孔42,52の一方から吐出された冷媒は、その凹部44,54だけでなく、他方の凹部44,54も流路とすることが可能となり、吐出された冷媒の流路抵抗を低減することができる。また、各凹部44,44及び凹部54,54は、互いに一部が重なり合う構成であることから、弁座43,43及び弁座53,53は互いに干渉することがない。
このため、弁座43,43(53,53)、凹部44,44(54,54)、一次側吐出孔41(51)及び二次側吐出孔42(52)は、同一の加工冶具(刃物等)により加工可能となり、製造性が向上し、製造コストを低減することが可能となる。
上述したように、第1の実施形態に係る回転式圧縮機1を用いた冷凍サイクル装置100によれば、一次側吐出孔41、51を二次側吐出孔42,52よりも第1、第2シリンダ室21a、22aの中心側に配置することで、一次側吐出孔41,51への冷媒の逆流を防止し、再膨張損失の低減が可能となる。
なお、第1の実施形態は、上述した構成に限定されない。例えば、一次側吐出孔41、51は、下死点にローラ24が位置する場合に、一次側吐出孔41,51を、ローラ24と重ならないように配置する構成を説明したがこれに限定されない。例えば、図5に二点鎖線で示すように、さらに第1、第2シリンダ室21a、22aの中心側に配置し、下死点のローラ24に、その一部が重なる一次側吐出孔41a,51aとしても良い。
このような構成とすることで、一次側吐出孔41,51の吐出流路断面積が小さくなるが、上死点付近において、確実にローラ24により一次側吐出孔41,51が閉塞されるため、二次側吐出孔42,52から吐出された冷媒が逆流することを確実に防止することが可能となる。
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態に係る回転式圧縮機1を用いた空気調和機100について、図7及び図8を用いて説明する。なお第2の実施形態に係る回転式圧縮機1は、上述した第1の実施形態に係る回転式圧縮機1と同様の構成には、同一符号を付しその詳細な説明は省略する。
図7は第2の実施形態に係る回転式圧縮機1に用いられる圧縮機構部11Aの構成を示す上面図、図8は圧縮機構部11Aに用いられる開閉弁80Aの構成を示す断面図である。なお、図7及び図8においては、圧縮機構部11Aの軸受25Aの主軸受31A及び副軸受32Aを同一図面により示す。
第2の実施形態に係る空気調和機100の回転式圧縮機1は、密閉容器10と、密閉容器10内の下部に設けられた圧縮機構部11Aと、電動機部12と、吸込管13と、吐出管14と、を備えている。
圧縮機構部11Aは、第1シリンダ21及び第2シリンダ22と、回転軸23と、ローラ24と、軸受25Aと、仕切板26と、ブレード27と、を備えている。
軸受25Aは、第1シリンダ室21aの上方を覆う第1シリンダ21の上面部に設けられた主軸受31Aと、第2シリンダ室22aの下方を覆う第2シリンダ22の下面部に設けられた副軸受32Aと、を備えている。軸受25Aは、主軸受31A及び副軸受32Aにより、回転軸23を枢支可能に形成されている。
主軸受31Aは、第1シリンダ室21aの上面を形成し、ローラ24が摺動する。主軸受31Aは、その上方に第1バルブカバー33が設けられる。また、主軸受31は、第1吐出孔34及び第1吐出孔34を開閉する開閉弁80Aを備えている。
第1吐出孔34は、主軸受31に設けられ、一次側吐出孔41及び二次側吐出孔42の周囲にそれぞれ設けられた、開閉弁80Aの弁座43と、弁座43,43の周囲に設けられた凹部44Aと、凹部44Aに連続して二次側吐出孔42の周囲に設けられ、凹部44Aよりもその深さが浅く、且つ、一次側吐出孔41及び二次側吐出孔42から吐出された冷媒の流れを案内する案内部45Aと、を備えている。
副軸受32Aは、第2シリンダ室22aの上面を形成し、ローラ24が摺動する。副軸受32Aは、その上方に第2バルブカバー36が設けられる。また、副軸受32は、第2吐出孔37及び第2吐出孔37を開閉する開閉弁80Aを備えている。
第2吐出孔37は、副軸受32に設けられ、一次側吐出孔51及び二次側吐出孔52の周囲にそれぞれ設けられた、開閉弁80Aの弁座53と、弁座53,53の周囲に設けられた凹部54Aと、凹部54Aに連続して二次側吐出孔52の周囲に設けられ、凹部54Aよりもその深さが浅く、且つ、一次側吐出孔51及び二次側吐出孔52から吐出された冷媒の流れを案内する案内部55Aと、を備えている。
主軸受31A及び副軸受32Aに用いられる開閉弁80Aは、所謂リード弁であり、弁体81Aと、弁体81Aの変形量を規制する弁押さえ82と、を備えている。弁体81Aは、主軸受31に固定される固定部84と、一次側吐出孔41を開閉する一次側弁部85と、二次側吐出孔42を開閉する二次側弁部86と、固定部84及び一次側弁部85を接続する第1連結部87と、一次側弁部85及び二次側弁部86を接続する第2連結部88と、を備えている。すなわち、1つの弁体で2つの吐出孔を開閉するようになっている。また、弁体81Aは、固定部84中心、一次側弁部85中心及び二次側弁部86中心が一直線上に配置される。すなわち、弁体81Aの固定部84中心と一次側吐出孔41を結ぶ直線と、一次側吐出孔41中心と二次側吐出孔42中心を結ぶ直線のなす角度が180°にされている。
一次側弁部85は、二次側弁部86よりも、小径に形成されている。換言すると、二次側弁部86は、一次側弁部85よりも大径に形成され、弁座43に対して固定部84を中心とした回転方向のずれを一次側弁部85よりも許容可能に形成されている。
第1連結部87は、図7に示すように、その幅H1が第2連結部88の幅H2よりも広く形成されている。換言すると、第2連結部88は、第1連結部87の幅H1よりも、その幅H2が小さく形成されることで、第2連結部88の剛性が第1連結部87の剛性よりも低く形成されている。
弁押さえ82は、弁体81Aの変形を規制し、結果弁体81Aのリフト量を規制する規制部材である。弁押さえ82は、弁体81Aの形状と略同一形状に形成され、弁体81Aの上面に設けられ、例えば樹脂材料により形成された板状部材である。弁押さえ82は、図8に示すように、一次側弁部85の最大リフト量(弁座43からの移動量)L1を二次側弁部86の最大リフト量L2よりも小さくするように、弁体81Aの変形量を規制可能に形成されている。
このように構成された圧縮機構部11Aを有する回転式圧縮機1を用いた冷凍サイクル装置100は、二つの一次側吐出孔41,51及び二次側吐出孔42,52を開閉する一次側弁部85及び二次側弁部86を一つの弁体81Aに形成された開閉弁80Aを備える。このため、ローラ24の回転により、冷媒が圧縮されて所定の圧力に達すると、一次側弁部85及び二次側弁部86が開き、一次側吐出孔41,51及び二次側吐出孔42,52から冷媒が吐出される。
さらにローラ24が回転すると、一次側弁部85が閉じ、二次側弁部86のみが開状態となり、二次側吐出孔42,52からのみ冷媒が吐出される。さらにローラ24が回転し、上死点に位置すると、二次側弁部86が閉じる。
このように構成された回転式圧縮機1によれば、一枚の開閉弁80Aにより一次側吐出孔41,51及び二次側吐出孔42,52を開閉することが可能となる。また、弁体81Aは、固定部84、一次側弁部85及び二次側弁部86が直列、且つ、一直線上に配置されることで、開閉弁80Aの構成を単純化することが可能となる。また、開閉弁80Aは、対称形状となる。
これらのことにより、2つの主軸受31A及び副軸受32Aにおいても、開閉弁80Aを共有することが可能となり、開閉弁80Aの製造コストを低減することが可能となるとともに、管理コストの低減も可能となる。
また、弁体81Aは、固定部84、一次側弁部85及び二次側弁部86が直列に配置されることから、一次側吐出孔41,51及び二次側吐出孔42,52を近接させて配置可能となる。このため、第1吐出孔34及び第2吐出孔37をより吐出側に近接して配置することが可能となり、一次側吐出孔41,51及び二次側吐出孔42,52と、冷媒の吸込みが行われる室(吸込室)とが連通する時期を極力遅らせることが可能となり、再膨張損失を低減することが可能となる。
また、弁押さえ82により弁体81Aの一次側弁部85のリフト量を、二次側弁部86のリフト量より小さくすることで、確実に一次側弁部85を二次側弁部86よりも早く閉じることとなる。これにより、二次側吐出孔42,52から吐出された冷媒が一次側吐出孔41,52へ逆流することを防止可能となり、再膨張損失の低減が防止可能となる。
また、第2連結部88は、第1連結部87よりもその幅が小さく形成されるため、二次側弁部86が二次側吐出孔42,52の弁座43,53に確実に当接することが可能となる。
具体的に説明すると、二次側吐出孔42,52の弁座43,53は、一次側吐出孔41,51の弁座43,53よりも固定部84から離間しているため、弁座43,53の平行度が悪い場合には、二次側弁部86は一次側弁部85に比べ、閉状態においてシール性能の低下の虞がある。しかし、第2連結部88を第1連結部87よりも剛性を低くすることで、第2連結部88は、弁座43,53の平行度に沿って二次側弁部86が当接するように変形しやすくなる。これにより、二次側弁部86が確実に弁座43,53と当接可能となり、シール性能の低下を防止可能となる。
さらに、二次側弁部86を一次側弁部85よりも大径とすることで、固定部84を中心に回転方向のずれが大きくなる二次側弁部86であっても、確実に二次側吐出孔42,52をシールすることが可能となる。
(第3の実施形態)
次に本発明の第3の実施形態に係る回転式圧縮機1を用いた空気調和機100について、図9を用いて説明する。なお第3の実施形態に係る回転式圧縮機1は、上述した第2の実施形態に係る回転式圧縮機1と同様の構成には、同一符号を付しその詳細な説明は省略する。また、本実施形態も、1つの弁体で2つの吐出孔を開閉するようになっている。
図9は第3の実施形態に係る回転式圧縮機1に用いられる圧縮機構部11Bの構成を示す平面図である。なお、図9においては、圧縮機構部11Bの主軸受31B及び副軸受32Bを同一図面により示す。
第3の実施形態に係る空気調和機100の回転式圧縮機1は、密閉容器10と、密閉容器10内の下部に設けられた圧縮機構部11Bと、電動機部12と、吸込管13と、吐出管14と、を備えている。
圧縮機構部11Bは、第1シリンダ21及び第2シリンダ22と、回転軸23と、ローラ24と、軸受25Bと、仕切板26と、ブレード27と、を備えている。
軸受25Bは、主軸受31Aと、副軸受32Aと、第1吐出孔34及び第2吐出孔37を開閉する開閉弁80Bと、を備えている。
開閉弁80Bは、弁体81B及び弁押さえ82を備えている。弁体81Bは、固定部84と、一次側弁部85と、二次側弁部86と、第1連結部87と、第2連結部88と、を備えている。弁体81Bは、固定部84、一次側弁部85及び二次側弁部86が直列に配置されるとともに、固定部84中心と一次側弁部85中心を結ぶ直線に対して一次側弁部85中心と二次側弁部86中心を結ぶ直線が異なる方向に延設されるように配置される。
すなわち、弁体81Bの固定部84中心と一次側吐出孔41の中心を結ぶ直線と、一次側吐出孔41の中心と二次側吐出孔42を結ぶ直線とが一直線とならないように、角度を付けて設けられており、弁体81Bもこれに合わせた形状にされている。なお、当該角度は、90度より大きい角度(鈍角)であって、例えば一次側吐出孔41,51から吐出される冷媒の吐出方向と、二次側吐出孔42,52から吐出される冷媒の吐出方向とが略同方向となる角度に形成される。一例を述べると、弁体81Bは、固定部84中心と一次側弁部85中心を結ぶ直線と一次側弁部85中心と二次側弁部86中心を結ぶ直線との角度が略170度程度に形成されている。
このように構成された圧縮機構部11Bを有する回転式圧縮機1を用いた冷凍サイクル装置100は、弁体81Bは、固定部84及び一次側弁部85を結ぶ直線に対して一次側弁部85及び二次側弁部86を結ぶ直線が一直線とならないように、角度を付けて設けられる。
このため、第3の実施形態の回転式圧縮機1を用いた冷凍サイクル装置100は、上述した圧縮機構部11Aの固定部84、一次側弁部85及び二次側弁部86を直列、且つ、一直線上に配置することで得られる作用効果を除く第2の実施形態に係る圧縮機構部11Aを用いた冷凍サイクル装置100の作用効果と同様の効果を有することとなる。
なお、圧縮機構部11Bの開閉弁80Bは、固定部84及び一次側弁部85を結ぶ直線に対して一次側弁部85及び二次側弁部86を結ぶ直線が90度を超える角度を設けて配置させることで、固定部84から二次側弁部86までの距離を短くすることが可能となり、開閉弁80Bの配置の自由度を向上することが可能となる。
なお、上述した第1乃至第3の実施形態の回転式圧縮機1を用いた冷凍サイクル装置100に限定されるものではない。上述した実施形態の回転式圧縮機1では、第1シリンダ21及び第2シリンダ22の二つのシリンダを用いる構成を説明したが、これに限定されない。シリンダは一つであってもよく、3以上であってもよい。
また、上述した例では、冷凍サイクル装置100は、空気調和機100として、四方弁101を有する構成を説明したがこれに限定されず、例えば、四方弁101を有さず、暖房運転又は冷房運転のみを行う冷凍サイクル装置100であっても良い。
さらに、上述した例では、回転式圧縮機1は、ローラ24とブレード27が別体の構成を用いて説明したがこれに限定されない。例えば、ローラ及びブレードが一体となったスイングタイプの回転式圧縮機においても同等の効果が得られる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。