以下、本発明を実施するための形態を説明する。
本発明の屋根材Aは、屋根下地に敷設されるものであって、屋根の軒棟方向及びこの軒棟方向に直交する方向に、一部が互いに上下に重ねられて屋根下地に敷設されるものである。ここで、屋根の軒棟方向とは、屋根の傾斜方向、あるいは水流れ方向と同じ方向をいう。
図1に示すように、屋根材Aは、略平板状の金属板の表面に複数の凸条部1が形成されて成るものである。この凸条部1について具体的に説明する。凸条部1は、上方(屋根材Aを屋根下地に敷設したときの屋根下地とは反対側の方向)に突出するように形成されている。この凸条部1は、屋根材Aの縦方向の略全長に亘って形成されていてもよいし、縦方向に沿って所定の間隔を空けて複数個形成されていてもよいが、敷設状態がより安定すると共に雨水等を排水し易いという点で、屋根材Aの縦方向の略全長に亘って形成されていることが好ましい。以下、本明細書においては、凸条部1は、屋根材Aの縦方向の全長に亘って形成されていることを前提として説明する。尚、屋根材Aの縦方向とは、屋根材Aを屋根下地に敷設して屋根を形成させた場合における屋根の軒棟方向と同じ方向を示す。
上記凸条部1は、所定の間隔Sを有しながら、屋根材Aの横方向の略全長に亘って複数個形成されている。この場合、横方向で隣り合う凸条部1は互いに略平行に配列している。そして、各間隔Sの長さはいずれも略同じであることが好ましく、この場合、横方向で隣接する屋根材Aどうしの重ね合わせ、すなわち屋根材Aの横葺きをスムーズに行えるようになる。尚、屋根材Aの横方向とは、上記縦方向と直交する方向、すなわち上記の軒棟方向と直交する方向を示す。また、間隔Sを介して隣り合う凸条部1、1の間には略平坦状の平板部2が形成されており、屋根材Aの縦方向の略全長に亘って形成されている。従って、本発明の屋根材Aでは、上記凸条部1と平板部2とが横方向に交互に繰り返し形成されて成るものであり、屋根材Aの横断面(縦方向から見た断面)が略波形状に形成されて成るものである。
横方向に複数個形成された凸条部1、1、・・・において、それぞれの凸条部1の幅長さLは、一端側から他端側に向かって段階的に短くなるように形成されている。そして、凸条部1は後述するように、複数の屋根材Aを屋根の軒棟方向と直交する方向にずらしつつ、互いの凸条部1どうしを上下に重ね合わせるように敷設した際、下側に位置する凸条部1が、上側に位置する凸条部1で覆われるように形成されたものである。
ここでいう凸条部1の幅長さLとは、凸条部1の横方向(すなわち、屋根の軒棟方向と直交する方向)の長さを示す。また、図1の実施の形態のように、凸条部1の横方向の長さが凸条部1の高さ方向で一定でない場合は、その最大の長さの部分を示す。従って、図1の実施の形態の場合では、凸条部1の幅長さLとは、隣り合う平板部2、2間の側端縁どうしの最短距離の長さを示す(図示のLで表記)。以下、図1の実施の形態の屋根材Aを例に挙げて凸条部1の構成について詳述する。
図1の実施の形態の屋根材Aでは、横方向に複数形成されている凸条部1、1、・・・において、両側端に形成されている2つの凸条部1、1のうちの一方の凸条部1の幅長さLが最大であり、他方の凸条部1の幅長さLが最小となるように形成されている。図1では、両側端に形成されている2つの凸条部1、1のうちの一方を凸条部1L、他方を凸条部1Rと表しており、凸条部1Lが、上記最大の幅長さL(図示ではLmaxと表記)、凸条部1Rが、上記最小の幅長さL(図示ではLminと表記)で形成されている。もちろん、本発明の屋根材Aでは、図1の実施の形態に限定されず、例えば、一方の側端部である凸条部1Rが最大の幅長さLmax、他方の側端部である凸条部1Lが最小の幅長さLminとなるように形成されたものであってもよい。尚、以下、本明細書において、最大の幅長さLmaxを有する凸条部1を最大幅凸条部、最小の幅長さLminを有する凸条部1を最小幅凸条部ということがある。
そして、間隔S(又は平板部2)を介して上記凸条部1Lと隣り合う凸条部1(図1では1aと表記)の幅長さL(図1ではLaと表記)は、凸条部1Lの幅長さLmaxよりも短くなるように形成されている(すなわち、Lmax>Laとなる)。さらに、上記凸条部1aと間隔Sを介して隣り合う凸条部1、1のうち、凸条部1Lと逆側の凸条部1(図1では凸条部1b)は、幅長さLaよりもさらに短い幅長さLbで形成されている(すなわち、La>Lbとなる)。同様に、上記凸条部1bと隣り合う凸条部1c(凸条部1aと逆側)、及び凸条部1cと隣り合う凸条部1dも、徐々にこれらの幅長さLc、Ldが短くなるように形成されている。そして、凸条部1Lと逆側の端部に形成されている凸条部1Rは、これと隣り合う凸条部1dよりも幅長さLが短く形成されており、横方向に並んだ凸条部1のうちで、最も短い幅長さLminとなる。
上記のように、屋根材Aの横方向において、一方の端部に形成された凸条部1Lから逆側の端部に形成された凸条部1Rに向かうにしたがって、各凸条部1の幅長さLが段階的に短くなるように形成されている。そのため、本発明の屋根材Aでは、横方向に並んだ凸条部1のうちで、一方の側端部に位置する凸条部1の幅長さLが最大であると共に、他方の側端部に近づくにつれて段階的に幅長さLが短くなっていき、他方の側端部に位置する凸条部1の幅長さLが最小の長さで形成されて成るものである。図1の実施の形態でいうと、屋根材Aは、幅長さがLmax>La>Lb>Lc>Ld>Lminの関係で各凸条部1が横方向にそれぞれ形成されて成るものである。
ここで、間隔Sを介して隣り合う凸条部1、1の幅長さLの長さの差(例えば、Lmax−Laや、La−Lbなど)は、いずれも同じであってもよいし、異なっていてもよいが、屋根材Aの敷設時の施工性や、屋根材Aの意匠性を考慮すると、同じであることが好ましい。
また、隣り合う凸条部1、1において、幅長さLが長い方の凸条部1と幅長さLが短い方の凸条部1との幅長さLの比(例えば、Lmax/Laや、La/Lbなど)は、1.01〜1.2であることが好ましく、この場合、屋根材Aの敷設時の施工性が低下しにくくなると共に、屋根材Aの意匠性が低下してしまうおそれが小さくなる。つまり、隣り合う凸条部1の幅長さLが大きく異ならない限りは、屋根材Aの外観の美麗性が低下しにくく、また、隣り合う凸条部1の幅長さLの比が上記の範囲であれば、後述のように一方の屋根材Aと他方の屋根材Aの側端部どうしの重ね合わせがスムーズに行える。
さらに、屋根材Aの両側端部側にそれぞれ形成されている凸条部1L及び凸条部1Rにおいて、それぞれの幅長さLの比、すなわち、最大幅凸条部と最小幅凸条部との幅長さの比(Lmax/Lmin)は、1.1〜1.5であることが好ましく、この場合、屋根材Aの意匠性が低下してしまうおそれが小さくなる。
また、本発明の屋根材Aにおいて、複数の凸条部1の高さHはいずれも略同一であることが好ましく、この場合、屋根材Aを横方向にずらしつつ上下に互いに重ねて敷設する際に、その重ね合わせを行い易い。ここでいう凸条部1の高さHとは、図1に示すように、屋根材Aの平坦部を通る平行な平面と、凸条部1の最上部を通り、かつ、平坦部に平行な平面との最短距離のことを示す。凸条部1の高さHは、特に制限されるものではないが、例えば、10〜30mmとすることができ、屋根材Aの縦横の寸法に応じて任意に設定すればよい。
一方、複数の凸条部1の断面形状はいずれも任意の形状にすることができ、例えば、図1の実施の形態に示すような断面略逆U字状(または断面略倒コ字状)、その他、断面投影像が略半円状、断面投影像が略半楕円状、断面略逆V字状等に形成することができる。凸条部1のより好ましい断面形状は、断面略逆U字状(または断面略倒コ字状)であり、この場合、隣接する屋根材Aの側端部どうしを横方向に互いに上下に重ね合わせて敷設した際に、敷設状態がより安定し、屋根材Aのずれや、浮き上がり等を抑制し易い。特に好ましい凸条部1の断面形状は、図1のように凸条部1の上端(凸条頂部6)が平坦状に形成されていると共に、凸条部1の横方向の長さが下部に向かうにつれて幅広になるように形成されていることである。すなわち、凸条部1は、その断面の投影像が略台形状に形成されたものであり、図1のように平坦状の凸条頂部6が形成されていると共に、凸条部頂部6の両端部から平板部2に向かってそれぞれ傾斜面7、7が形成されていることが好ましい。この場合、屋根材Aを敷設した際に隣接する屋根材Aどうしの接続がより強固になり、また、後述のように、例えば、屋根材Aを敷設して屋根を形成した場合に、屋根の上面に太陽光発電モジュール等の敷設物を設置しやすいと共に、その設置状態もより安定するようになる。
ここで、凸条部1の断面の投影像が略台形状に形成された場合の屋根材A、すなわち図1の実施形態の屋根材Aについての凸条部1についてさらに詳述する。この場合、凸条頂部6は平坦部2と平行に形成されている。そして、屋根材Aに複数形成された凸条部1において凸条頂部6の幅長さはいずれも同じ長さで形成されていてもよいが、屋根材Aを重ね合わせて敷設しやすいという点で、凸条部1と同様、一端側から他端側に向かって、段階的に短くなっていることが好ましい。凸条頂部6の幅長さが段階的に短くなっていく方向は、凸条部1の幅長さLが段階的に短くなっていく方向と同じである。この場合、傾斜面7の長さ(凸条頂部6の側端と、平板部2との最短距離)は、複数の凸条部1において同じであってもよいし、同様に一端側から他端側に向かって、段階的に短くなるように形成されていてもよい。
ここで、本発明の屋根材Aの寸法や、凸条部1の具体的な形成個数について説明する。まず、屋根材Aの幅寸法(横方向の全長)は、例えば、300〜1070mmとすることができる。また、屋根材Aの縦方向の長さは、特に限定されるものではないが、例えば、1000〜2500mmとすることができる。
本発明の屋根材Aにおいて、横方向に所定の間隔Sを空けて形成させる凸条部1の個数は、図1の実施の形態の屋根材Aに限定されるものではないが、屋根材Aの幅寸法によって任意の個数で形成させることができる。具体的に、屋根材Aの幅寸法が300〜1070mmである場合、2〜7個とすることができる。
また、屋根材Aの幅寸法が300〜1070mmである場合、隣り合う凸条部1、1の間隔Sは80〜110mmとすることができる。
ここで、屋根材Aのその他の部位について説明する。屋根材Aの両側端縁部のうち、幅長さLが最も大きい凸条部1に近い側の側端縁部3(図1の実施の形態では凸条部1L側)は、屋根材Aの側端部が裏面側に折り返し屈曲されることにより、二重の金属板で形成された補強片3aとして形成されていることが好ましい。このように補強片3aが形成されていることで、屋根材Aの側端縁部3の剛性や耐食性を高めることができると共に、意匠性や取扱い性も向上するものとなる。
一方、屋根材Aの両側端部のうち、幅長さLが最も小さい凸条部1が形成されている側の側端縁部4(図1では凸条部1R側)も凸条部1L側と同様に補強片3aが形成されていてもよいし、図1のように、形成されていなくてもよい。側端縁部4に補強片3aが形成されている場合も上記同様の効果を得ることができる。
本発明の屋根材Aは、金属板をロール成形加工などで加工して所望の形状に形成することができる。金属板としては、例えば、厚み(板厚)0.3〜0.5mm、面積あたりの重量3〜6kg/m2のものを好適に用いることができる。
また、金属板の種類としては、塗装鋼板や亜鉛めっき鋼板、塗装ガルバリウム鋼板(登録商標)などの各種のものを用いることができる。尚、屋根材Aの製造については、公知のロール成形機で製造することができる他、ベンダー加工機で製造してもよく、また、端部加工はヘミング曲げ加工及びプレス加工を使用してもよい。
本発明の屋根材Aは、例えば、屋根下地の軒棟方向及びこの軒棟方向に直交する方向に順次敷設させることで屋根を形成することができる。そして、本発明の屋根材Aでは、屋根下地の一方の側端から他方の側端に向かって敷設させていくものである。以下、屋根材Aの屋根下地への敷設について詳述する。
屋根材Aを屋根下地に敷設するにあたっては、まず、屋根下地の一方の側端部において、縦方向(軒棟方向又は屋根の傾斜方向)の略全長に亘って屋根材Aを一列敷設させる。縦方向の敷設においては、屋根材Aを屋根の水上側端部から水下側端部に向かって敷設させていってもよいし、その逆方向に敷設させていってもよい。敷設の手順を具体的に説明すると、まず、複数枚の屋根材Aを用意し、そのうち一枚の屋根材Aを屋根下地の一方の側端に配置させる。配置させる屋根材Aの向きは、最大幅凸条部が屋根下地の側端に位置するように、すなわち、最大幅凸条部が屋根の最も外側(屋外側)に位置するように屋根材Aを配置させる。例えば、屋根下地の平面視において、屋根下地の左側端に屋根材Aを配置させる場合、最大幅凸条部が最も左側に位置する向きに屋根材Aを配置させる。逆に、屋根下地の平面視における右側の側端に最初に配置させる屋根材Aを配置させる場合、最大幅凸条部が最も右側に位置する向きに屋根材Aを配置させる。尚、ここでいう左右とは、棟側(水上側)を上、軒側(水下側)を下として見た場合の方向を示す。以下、屋根下地の左側端部から右側端部へ、屋根材Aを敷設していく場合についての敷設方法を説明する。
屋根材Aを縦方向に敷設していく際、縦方向で隣接する屋根材A、Aの一部が互いに重なるように敷設する。具体的には、縦方向で隣接する屋根材A、Aどうしを縦方向に所定長さだけずらすことで両者の重なり部分(以下、縦重ね代という)を設けつつ、凸条部1どうし及び平板部2どうしが互いに上下に重なり合うように敷設させる。この場合、上下に重なり合う凸条部1、1では、互いに幅長さLが同じである凸条部1どうしが重なり合うようにする。尚、屋根材Aの屋根下地等への固定は、ねじ等の固定具を用いて屋根材Aを貫通させることで、屋根下地等に直接固定させることができる。
そして、上記と同様の手順を繰り返して、屋根下地の軒棟方向の全長に亘って敷設していく。
屋根材Aを縦方向に敷設した際に形成される上記縦重ね代の長さは、特に限定されるものではないが、屋根材Aの縦横の寸法や、屋根上に設置する太陽光発電パネルモジュール等の大きさや配置位置、あるいは、屋根面の流れ長さに応じて適宜設定すればよい。
次に、新たな屋根材A(以下、新設屋根材A3という)を別途用意し、これを、既に縦方向に敷設されている各々の屋根材A(以下、既設屋根材A1という)に対して横方向にも敷設する。本発明の屋根材Aは凸条部1の幅長さLが屋根材Aの一端から他端に向かって段階的に短くなっているが、その一端から他端に向かう方向と、屋根材Aの横方向への敷設の方向とが一致するように新設屋根材A3を配置させていく。すなわち、一方の端部に形成された最大幅凸条部から、他方の端部に形成された最小幅凸条部へ向かう方向が、いずれの屋根材Aも同じとなるように新設屋根材A3を敷設させる。このように屋根材Aを敷設させることで、敷設されたすべての屋根材Aは、それらの左右方向がすべて同じ向きとなる。
屋根材Aを横方向に敷設する際には、新設屋根材A3の一部と、既設屋根材A1の一部とが互いに上下に重なり合うように、すなわち、新設屋根材A3と既設屋根材A1とを、所定長さだけ互いに横方向にずらして重なり部分(以下、横重ね代という)を設けるように敷設する。この場合、横方向に隣接する屋根材Aにおいて、互いの凸条部1どうし及び平板部2どうしが上下に重なるように敷設させるが、新設屋根材A3の最大幅凸条部(1L)は、既設屋根材Aの最大幅凸条部(1L)以外の凸条部1(すなわち、最大幅凸条部1Lよりも幅長さLが短く形成されている凸条部1)の上側に重ね合わせるようにする。
ここで、横重ね代の長さ(以下、横重ね代長さTという)は、図2に示すように、新設屋根材A3の最大幅凸条部(1L)を、既設屋根材Aの複数の凸条部1のうちのいずれの凸条部1に重ね合わせるかによって、調節することが可能である。ここでいう横重ね代長さTとは、横方向で隣接する屋根材A、Aどうしの横方向における重ね合わせの長さのことをいう。以下、図2によって、上記横重ね代長さTの調整について具体的に説明する。尚、図2では、屋根下地は省略して示している。
図2(a)では、既設屋根材A1の最小幅凸条部(1R)から起算して3つめの位置に形成された凸条部1(1a)と、新設屋根材A3における最大幅凸条部(1L)とが互いに上下に重ね合わせられている。この場合、既設屋根材A1の最小幅凸条部(1R)及びこれと間隔Sを介して隣り合う凸条部1bとはそれぞれ、新設屋根材A3の凸条部1b及び凸条部1aと、互いに上下に重なり合っている。すなわち、図2(a)では、既設屋根材A1の3つの凸条部1と、新設屋根材A3の3つの凸条部1とがそれぞれ上下で重なり合っている。
また、図2(b)では、既設屋根材A1の最小幅凸条部(1R)から起算して2つめの位置に形成された凸条部1(1b)と、新設屋根材A3の凸条部1Lとが、互いに上下に対向して重なり合っている。この場合、既設屋根材A1の最小幅凸条部(1R)は、新設屋根材A3の凸条部1aと上下で重なり合っている。さらに、図2(c)では、既設屋根材A1の最小幅凸条部(1R)と、新設屋根材A3の最大幅凸条部(1L)とが、上下で重なり合っている。
上記のように横重ね代長さTを所定の長さに調整しつつ既設屋根材A1の横方向に新設屋根材A3を敷設するようにして縦方向に亘って敷設していく。この場合の新設屋根材Aの縦方向への敷設は上述と同じ方法で行えばよい。このような手順、すなわち、縦方向の敷設及び横方向への敷設を繰り返し行うことで、屋根が形成されることになる。尚、図2の実施形態の屋根材Aでは、4つの凸条部1が形成されたものを例に挙げて示しているが、この実施の形態の屋根材Aに限られず、凸条部1の形成個数がさらに多いものであっても、同様に横重ね代長さTを任意に調整することができる。
以上のように、本発明の屋根材Aを屋根下地に敷設すると、横方向(軒棟方向と直交する方向)で隣接する屋根材A、Aは、凸条部1、1どうしが互いに上下に重ねあわされて敷設される。このとき、横方向で隣接する屋根材A、Aの平板部2、2どうしも互いに略平行になるように重ね合わされている。そして、互いに上下に重ねられた凸条部1、1においては必ず、下側の凸条部1の幅長さLよりも長い幅長さLを有する凸条部1が上側に位置するようになる。これは、本発明の屋根材Aが、少なくとも、凸条部1が一方の側端に形成された凸条部の幅長さLが最大であると共に、他方の側端に近づくにつれて前記凸条部の幅長さLが段階的に(徐々に)短くなるように形成されていること、並びにすべての屋根材Aは、その左右が同じ方向となるように敷設されているからである。
そして、上側の凸条部1の幅長さLの方が、下側の凸条部1の幅長さLよりも長いことによって、横方向に隣接する屋根材A、Aどうしを互いに重ね合わせて敷設する際に、必要以上に力を加えなくても重ね合わせができるようになり、屋根の施工性に優れるものとなる。
ここで、屋根材Aが縦方向及び横方向に順次敷設された場合における縦横に隣接する4枚の屋根材Aに着目すると、図3に示すように、屋根材Aが4重になって重ね合わされる部分(以下、4重部Fという)が存在する。尚、図3では、4重部Fは斜線で囲まれる領域(斜線部も含む)である。
図3では、4重部Fにおいて、最も下側(屋根下地側)に位置している屋根材Aが屋根材A1であり、この上に屋根材A2、A3、A4がこの順で縦横にずらされつつ重なっている。尚、凸条部1や屋根下地などは省略して示している。
従来のような凸条部1の幅長さLがすべて同じ長さで形成されていた屋根材Aでは、この4重部Fの重ね合わせには大きなストレスをかけなければならなかったが、本発明の屋根材Aでは、4重部Fの部分でも大きなストレスをかけることなく、容易に重ね合わせを行うことができる。これは、本発明の屋根材Aでは、横方向に隣接する屋根材Aでは、下側の凸条部1の幅長さLよりも長い幅長さLを有する凸条部1が上側に位置するようになるので、過度の力を加えなくても、凸条部1どうしが嵌合されやすいためである。そのため、屋根材Aをスムーズに敷設することができ、その上、従来に比べて4重部Fでの屋根材Aの浮き上がりの発生や、不陸の発生を抑えることもできる。従来のように凸条部1の幅長さLがすべて同じ長さのものの場合、2重の重ね合わせまでであれば、ストレスをかければ浮き上がりを防げることがあったものの、4重部Fでは不陸の発生等が起こり易いものであった。それに対し、本発明の屋根材Aでは屋根の全体にわたって不陸の発生等が起こりにくくすることができ、また、隣接する屋根材Aどうしの密着性も高くなるので、屋根の防水性の低下や意匠性の低下を防ぐことができ、また施工性にも優れるものとなる。
また、既述したように、本発明の屋根材Aでは、横方向で隣接する屋根材A、Aにおける横重ね代の長さTも自在に調節することも可能である。そのため、屋根材Aを切断することなく、屋根の横方向の長さを調節することができる。具体的にいうと、図2からもわかるように、横重ね代の長さTは、凸条部1の幅長さLと間隔Sの長さの和の分だけ(すなわち、L+Sピッチで)長くしたり短くしたりすることができる。したがって、従来では屋根材Aを一方の側端から他方の側端に向かって敷設していく際に、他方の側端にさしかかったときに、寸法調整のために屋根材Aを所定の部分で切断することがあったが、本発明では、屋根材Aをあえて切断する必要がない。そのため、施工性が非常に優れると共に、施工時の廃材も低減させることも可能となる。
また、住宅用の屋根においては、当該屋根上に太陽光発電パネルモジュール(PVモジュール)が設置されることがあるが、本発明の屋根材Aでは横重ね代の長さTの調節が容易であるため、PVモジュールの幅に応じて屋根の横方向の寸法を調整することが可能である。また、屋根材Aの不陸も抑制されているので、屋根材AにPVモジュールを安定に設置させることができる。