図1には、本発明の第1実施形態の燃料タンクシステム12が示されている。この燃料タンクシステム12は、内部に燃料を収容可能な燃料タンク14を有している。
燃料タンク14には給油配管82の下部が接続されている。給油配管82の上端は給油口16とされており、この給油口16に給油ガンを差し入れて、燃料タンク14に給油することができる。給油時以外は、給油口16はたとえば給油口用キャップ18等で閉塞されている。
自動車のボデーパネルには、給油口16及び給油口用キャップ18を車体の外側から覆うリッド20が設けられている。リッド20は、リッドオープナースイッチ22を操作することで、制御装置32によって矢印R1方向に回転される。リッド20がこのように矢印R1方向に回転した状態では、給油口用キャップ18を給油口16から脱着すると共に、給油口16に給油ガンを差し入れることが可能となる。
リッド20の開閉状態は、リッド開閉センサ20Sで検出されて、制御装置32に送られる。本実施形態では、リッド20が開放された状態を「燃料タンクへの給油状態」とみなしており、リッド開閉センサ20Sは給油状態センサの一例となっている。給油状態センサとしては、リッド開閉センサ20Sに代えて、給油口用キャップ18の着脱状態を検出するセンサ等を用いることも可能である。
燃料タンク14内には、燃料ポンプ24が備えられている。燃料ポンプ24とエンジン26とは燃料供給配管28で接続されている。燃料ポンプ24の駆動により、燃料タンク14内の燃料を、燃料供給配管28を通じてエンジン26に送ることができる。
燃料タンク14には、タンク内圧センサ30が備えられている。タンク内圧センサ30は、燃料タンク14のタンク内圧を検出し、その情報を制御装置32に送る。
燃料タンクシステム12には、キャニスタ34が備えられている。キャニスタ34の内部には、蒸発燃料を吸着可能な吸着剤(活性炭等)が収容されている。キャニスタ34と燃料タンク14の上部とは、ベント配管36で接続されている。燃料タンク14内で生じた蒸発燃料は、このベント配管36を通じてキャニスタ34に送られる。
キャニスタ34には、エンジン26と連通するパージ配管38と、キャニスタ34内を大気開放する大気開放配管40とが接続されている。エンジン26の駆動時等において、エンジン26の負圧を作用させて、キャニスタ34内の吸着剤に吸着された蒸発燃料を脱離させ、エンジン26に送ることができる。このとき、大気開放配管40を通じてキャニスタ34に大気が導入される。
大気開放配管40には、診断用ポンプ42が備えられている。診断用ポンプ42は、制御装置32によって制御される。診断用ポンプ42は、キャニスタ34を通じて燃料タンクシステム12に所定の圧力を作用させることで、燃料タンクシステム12の故障等を診断するときに用いられる。
ベント配管36の一端(燃料タンク14内の端部)には、満タン規制バルブ44が取り付けられている。燃料タンク14内の燃料液面が所定の満タン液面以下では、満タン規制バルブ44は開弁されており、燃料タンク14内の蒸発燃料を含む気体をキャニスタ34に送ることができる。燃料タンク14内の燃料液面が所定の液面(満タン液面)を超えると、満タン規制バルブ44は閉弁される。これにより、燃料タンク14内の気体がキャニスタ34に流れなくなる。この状態で、さらに燃料タンク14内に給油されると、燃料が給油配管82を上昇して給油ガンに達する。給油ガンのオートストップ機能が働くと、給油が停止される。
ベント配管36の中間部分(燃料タンク14とキャニスタ34の間の部分)には、ダイヤフラム弁46が設けられている。ダイヤフラム弁46は、本発明の弁部材の一例である。以下、必要に応じて、このダイヤフラム弁46よりも燃料タンク側のベント配管36をタンク側ベント配管36Tといいい、ダイヤフラム弁46よりもキャニスタ34側のベント配管36をキャニスタ側ベント配管36Cという。
図2(A)に詳細に示すように、ダイヤフラム弁46の弁ハウジング48は、タンク側ベント配管36Tから連続し、タンク側ベント配管36Tの他端側を偏平な円筒状に拡径した第1ケース48Aを有している。第1ケース48Aの内部には、キャニスタ側ベント配管36Cの一端側が弁ハウジング48(第1ケース48Aの外周)と同軸となるように収容されており、弁座50が構成されている。第1ケース48Aの外周部分も弁座50を取り囲むように円筒状に形成され、上部が開口された開口部となっている。
ダイヤフラム弁46はさらに、第2ケース48Bを有している。第2ケース48Bは、第1ケース48Aの外周部分と略同一の径を有する、有底の円筒状に形成されている。第1ケース48Aの接合面84Aと、第2ケース48Bの接合面84Bとを接合することで、弁ハウジング48が構成される。
本実施形態では、第1ケース48A及び第2ケース48Bはいずれも樹脂製とされている。このため、接合面84A、84Bにおいて、第1ケース48Aと第2ケース48Bとを溶着により接合することが可能である。溶着により、第1ケース48Aと第2ケース48Bの間に気密性(シール性)も確保される。もちろん、第1ケース図48A及び第2ケース48Bの材質は樹脂に限定されず、たとえば金属であってもよい。この場合には、接合面84A、84Bの間にガスケットを配置すれば、第1ケース48Aと第2ケース48Bの間の気密性(シール性)を高く確保できる。
接合面84A、84Bの内周側には、保持部86が形成されている。保持部86には、ダイヤフラム56の周囲が全周にわたって保持されている。ダイヤフラム56の中央には、弁座50を閉塞可能な弁部材本体54が配設されている。
そして、キャニスタ側ベント配管36Cにおける弁座50の近傍部分、弁ハウジング48及びダイヤフラム56で囲まれた領域が主室52となっている。図1から分かるように、主室52はタンク側ベント配管36Tを通じて燃料タンク14の内部と連通可能になる。
また、弁部材本体54及びダイヤフラム56と、第2ケース48Bとの間(図2においてダイヤフラム56の上側の空間)が、背圧室58となっている。換言すれば、主室52と背圧室58とが、ダイヤフラム56によって区画されていることになる。
弁部材本体54及びダイヤフラム56が圧力を受ける面積(受圧面積)は、背圧室58側の受圧面積の方が、主室52側の受圧面積よりも、弁座50の断面積の分だけ、広くなっている。
背圧室58には圧縮コイルスプリング60が収容されている。圧縮コイルスプリング60は、弁部材本体54に対し、弁座50に向かう方向(矢印S1方向)の所定のバネ力を作用させている。さらに、ダイヤフラム56も、弁部材本体54に対し矢印S1方向への所定のバネ力を作用させている。これにより、弁部材本体54は、弁座50の開口部分を閉塞する方向に付勢されている。たとえば、主室52の内圧と背圧室58の内圧とが同程度である場合には、弁部材本体54は弁座50の開口部分に密着する。これにより、ダイヤフラム弁46は閉弁状態となり、ベント配管36における気体の移動が阻止される。
これに対し、たとえば、背圧室58が主室52よりも所定以上の負圧(内圧が低い状態)になると、圧縮コイルスプリング60及びダイヤフラム56のバネ力に抗して弁部材本体54が背圧室58側へ移動し、弁座50の開口部分を開放する。これにより、ダイヤフラム弁46は開弁状態となり、ベント配管36において、気体の移動が可能になる。
タンク側ベント配管36Tと背圧室58との間には、タンク側バイパス通路62が設けられている。このタンク側バイパス通路62を通じて、燃料タンク14と背圧室58との間で気体が移動可能となる。
本実施形態では、主室52の外側において、第1バイパス構成部62Aが第1ケース48Aと一体形成されている。第1バイパス構成部62Aは、主室52の外周側で主室52の軸方向(矢印S1と同方向)に延在するように設けられている。第1バイパス構成部62Aの一端(下端)は、タンク側ベント配管36Tに連通している。
さらに、背圧室58の外周側には、第2バイパス構成部62Bが第2ケース48Bと一体形成されている。第2バイパス構成部62Bは、第2ケース48Bの径方向に延在されると共に、径方向外側に向かうにしたがって内径が漸減されたオリフィス部88と、このオリフィス部88から連続して形成され、第1バイパス構成部62Aに接続される接続部90とを有している。オリフィス部88は、本発明における断面積減少部の例であり、本実施形態では、この断面積減少部であるオリフィス部88が第2バイパス構成部62Bにおいて、第2ケース48Bと一体形成されている。
接合面84A、84Bが接合されると、第1バイパス構成部62Aと第2バイパス構成部62Bとが連通し、一体的なタンク側バイパス通路62が構成される。特に本実施形態では、第1バイパス構成部62Aと第2バイパス構成部62Bのみで、すなわちホース等の部材を必要とすることなく、タンク側バイパス通路62が構成されている。
このようにタンク側バイパス通路62が構成されると、オリフィス部88は、背圧室58に近い部分、すなわち、タンク側バイパス通路62における背圧室58との連通部分にオリフィス部88が位置している。オリフィス部88では、タンク側バイパス通路62が局所的に縮径されているため、燃料タンク14と背圧室58との間の気体に移動に所定の抵抗が生じる。
キャニスタ側ベント配管36Cと背圧室58(第2ケース48Bの側面)との間には、キャニスタ側バイパス通路66が設けられている。キャニスタ側バイパス通路66の中間部分には、電磁弁68が設けられている。
電磁弁68は、電磁弁ハウジング70を有している。電磁弁ハウジング70内には、制御装置32によって通電制御されるコイル部72と、このコイル部72からの駆動力を受けて、矢印S2方向及びその反対方向に移動するプランジャ部74、及びプランジャ部74の先端に設けられた円板状の電磁弁本体76を有している。さらに、キャニスタ側バイパス通路66の一部(中間部分)が電磁弁ハウジング70内を通っている。
電磁弁本体76は、キャニスタ側バイパス通路66に設けられた弁座78に接触した状態では、キャニスタ側バイパス通路66を閉塞する。これに対し、図3に示すように、電磁弁本体76が弁座78から離れると、キャニスタ側バイパス通路66を通じて気体が移動可能となる。本実施形態では、電磁弁本体76が弁座78から離れる方向、すなわち、キャニスタ側バイパス通路66を開放するときの電磁弁本体76の移動方向が、背圧室58からの正圧を受ける方向と一致するように、電磁弁本体76の向きが設定されている。
プランジャ部74には、圧縮コイルスプリング80が装着されている。圧縮コイルスプリング80は、電磁弁本体76に対し所定のバネ力を矢印S2方向に作用させることで、電磁弁本体76が不用意に弁座78から離れないようにしている。ただし、背圧室58から作用する正圧が所定値以上になると、コイル部72への通電によらずに電磁弁本体76が矢印S1と反対の方向へ移動するように、圧縮コイルスプリング80のバネ力は所定の値に設定されている。
本実施形態では、特に、キャニスタ側バイパス通路66と電磁弁ハウジング70とを、第2ケース48Bと一体成形している。そして、図2(A)から分かるように、キャニスタ側バイパス通路66に設けた連通部92により、キャニスタ側バイパス通路66をキャニスタ側ベント配管36Cに連通させている。
次に、本実施形態の燃料タンクシステム12の作用を説明する。
本実施形態の燃料タンクシステム12では、通常状態、すなわち、燃料タンク14に給油していない状態(車両は走行中であっても駐車中であってもよい)では、図2(A)に示すように、電磁弁68の電磁弁本体76は閉弁されている。また、ダイヤフラム弁46の弁部材本体54も閉弁されている。このため、燃料タンク14のタンク内圧が、ダイヤフラム弁46の主室52及び背圧室58の双方に作用している。ダイヤフラム弁46は、圧縮コイルスプリング60及びダイヤフラム56のバネ力により閉弁状態を維持しており、不用意に開弁されることはない。
燃料の給油時には、リッドオープナースイッチ22が操作されると、制御装置32は、リッド20を開放する。さらに制御装置32は、図3に示すように、電磁弁68を開弁する。これにより、ダイヤフラム弁46の背圧室58は、大気開放配管40からキャニスタ34、キャニスタ側ベント配管36C及びキャニスタ側バイパス通路66を通じて大気開放される。すなわち、背圧室58の圧力が低下し大気圧に近づく。
これに対し、主室52も、背圧室58からさらにタンク側バイパス通路62及びタンク側ベント配管36Tを通じて大気開放される。しかし、本実施形態では、タンク側バイパス通路62にオリフィス部88が設けられており、主室52と背圧室58との間の気体の移動に所定の抵抗が生じるため、主室52の圧力が背圧室58の圧力と同程度になるには長い時間を要する。すなわち、背圧室58と主室52との間に圧力差が生じた状態(背圧室58の方が主室52よりも圧力が低い状態)となる。したがって、背圧室58と主室52との間に、このような圧力差が生じない構成と比較して、ダイヤフラム弁46をより小さな開弁圧で開弁させることができる。これにより、背圧室58と主室52と圧力差がダイヤフラム弁46の開弁圧を超えると、図4に示すように、弁部材本体54が背圧室58側(上側)へ移動し、ダイヤフラム弁46が開弁される。
ここで、図6には、比較例の燃料タンクシステム212が部分的に拡大して示されている。比較例の燃料タンクシステム212においても、第1ケース48Aに設けられた第1バイパス構成部62Aと、第2ケース48Bに設けられた第2バイパス構成部62Bとによってタンク側バイパス通路62が構成されている。ただし、比較例に係るタンク側バイパス通路62では、背圧室58からタンク側ベント配管36Tに向かって内径が漸減しており、実質的にオリフィス部88がタンク側ベント配管36Tとの連通部分に設けられている。これ以外は、比較例の燃料タンクシステム212は、第1実施形態の燃料タンクシステム12と同一の構成とされる。
比較例の燃料タンクシステム212では、このようにオリフィス部88がタンク側ベント配管36Tとの連通部分に設けられているので、電磁弁68の開弁による背圧室58の圧力低下時に、タンク側バイパス通路62内の圧力も低下させることになる(実質的にタンク側バイパス通路62内も背圧室58として作用する)。そしてこれにより、背圧室58の圧力低下に長い時間を要する。
これに対し、本実施形態の燃料タンクシステム12では、タンク側バイパス通路62のオリフィス部88が、背圧室58との連通部分に設けられている。電磁弁68を閉弁したときの背圧室58の圧力低下時に、タンク側バイパス通路62の影響が比較例の燃料タンクシステム212よりも小さい(実質的に、タンク側バイパス通路62は背圧室58として作用しない)。このため、電磁弁68の開弁時に背圧室58が圧力低下しやすくなる。そしてこれにより、背圧室58と主室52との圧力差も短時間で大きくなり、ダイヤフラム弁46が短時間で短時間で開弁される。
なお、ダイヤフラム弁46を小さな開弁圧で開弁させるためには、弁部材本体54を小型化することが考えられる。しかし、弁部材本体54は、弁座50を閉塞する部材であるため、弁部材本体54を小型化すると、弁座50、すなわち、キャニスタ側ベント配管36Cの一部の内径も小さくする必要が生じる。したがって、ダイヤフラム弁46の開弁時に、ベント配管36の流量を確保する観点からは、弁座50を大径化することが望まれる。これに伴い、弁部材本体54も大型になるが、このように大型化された弁部材本体54であっても、小さな開弁圧で開弁可能となる。
本実施形態では、ダイヤフラム弁46の弁部材本体54は上記したように大型化できるのに対し、電磁弁68の電磁弁本体76は、ベント配管36(弁座50)を開閉する作用を奏する必要がなく、キャニスタ側バイパス通路66を開閉できればよいため、小型化できる。電磁弁本体76において、燃料タンク14のタンク内圧を受ける面積も小さくなるので、電磁弁68の閉弁に必要な押し付け荷重(図2における矢印S2方向の荷重)も小さくできる。これにより、電磁弁68として小型化及び省電力化を図り、低コストで且つ燃費に優れた燃料タンクシステム12を得ることができる。
特に、本実施形態では、電磁弁68の電磁弁本体76の開弁方向と、背圧室58から電磁弁本体76に正圧が作用する方向とが一致している(図2における矢印S2と反対の方向)。このため、電磁弁本体76を開弁方向に移動させるためのコイル部72からの駆動力も小さくて済み、より省電力化を測ることができる。
なお、本実施形態では、上記したように、弁座50の内径を大きくしても、ダイヤフラム弁46の開弁圧、すなわち弁部材本体54の動作に必要な力は少なくて済む。弁座50すなわちベント配管36の内径を大きくすることで、ベント配管36の通気抵抗を低減することができる。これにより、給油時に燃料タンク14内で発生する蒸発燃料が、ベント配管36を通じてキャニスタ34へ流れやすくなり、給油を行いやすい燃料タンクシステム12となる。
また、給油前には、ダイヤフラム弁46が開弁されることで、燃料タンク14のタンク内圧が低下される。本実施形態では、ベント配管36の通気抵抗を小さくすることで、タンク内圧を低下させるために必要な時間も短縮され、より短時間での給油が可能になる。
車両の走行中は、図1に示すように、タンク内圧センサ30によって燃料タンク14のタンク内圧が検出されている。このタンク内圧が、あらかじめ設定された所定値を超えていない場合は、図2に示すように、制御装置32は電磁弁68を閉弁している。ダイヤフラム弁46も閉弁されているので、燃料タンク14は密閉されている。燃料タンク14内で発生した蒸発燃料がキャニスタ34に移動することはない。
タンク内圧が所定値を超えると、制御装置32は電磁弁68を開閉制御する(ここでいう「開閉制御」には電磁弁68を開弁状態に維持することも含まれる)。電磁弁68の開弁時(図3に示した状態と同様の状態)には、タンク側ベント配管36Tからタンク側バイパス通路62、背圧室58、キャニスタ側バイパス通路66、キャニスタ側ベント配管36Cを経てキャニスタ34へ蒸発燃料が移動可能となる。
そして、たとえば電磁弁68を適切に開閉制御することで、ベント配管36を流れる蒸発燃料の流量とタンク内圧とを制御することが可能になる。この場合、電磁弁68の開閉制御は、電磁弁本体76の矢印S2方向又は反対方向への移動量を調整することで流路の断面積を調整するようにしてもよい。また、デューティー制御(弁部材本体54の開弁位置と閉弁位置とを切り替える時間の制御)で行ってもよい。
電磁弁68が開閉制御されると、背圧室58の圧力が変動するため、背圧室58と主室52との圧力差によっては、ダイヤフラム弁46も開閉される。たとえば、電磁弁68の開弁により背圧室58の圧力が低下し、背圧室58と主室52との圧力差がダイヤフラム弁46の開弁圧を超えると、ダイヤフラム弁46が開弁される。このとき、本実施形態では、タンク側バイパス通路62のオリフィス部88が背圧室58との連通部分に設けられており、実質的に背圧室58として作用する部分が比較例の燃料タンクシステム212より小さいので、(上記した給油時と同様に)背圧室58が圧力低下しやすくなる。これにより、ダイヤフラム弁46が短時間で開弁される。
これとは逆に、電磁弁68の閉弁により背圧室58が大気開放されなくなると、背圧室58に燃料タンク14の圧力が作用する。そして、背圧室58の圧力が上昇し、背圧室58と主室52との圧力差がダイヤフラム弁46の閉弁圧を下回ると、ダイヤフラム弁46が閉弁される。本実施形態では、タンク側バイパス通路62のオリフィス部88が背圧室58との連通部分に設けられて、実質的に背圧室58として作用する部分が比較例の燃料タンクシステム212より小さいことから、背圧室58が圧力上昇しやすくなる。これにより、ダイヤフラム弁46が短時間で閉弁される。このようにして電磁弁68が開閉制御され(ダイヤフラム弁46も開閉され)ることで、いわゆる「圧抜き」が行われ、燃料タンク14内の圧力が所定範囲に維持される(過度な圧力変動が緩和される)。そして、本実施形態の燃料タンクシステム12では、いわゆる「圧抜き」を行う場合の、電磁弁68の開閉制御に伴うダイヤフラム弁46の開閉の応答性が高くなっている。
この「圧抜き」が行われると、燃料タンク14からベント配管36を通じて、燃料タンク14内の蒸発燃料を含む気体が排出される。排出された蒸発燃料は、キャニスタ34の吸着剤で吸着されてもよいが、エンジン26が駆動している場合には、さらにパージ配管38を通じてエンジン26に送り、エンジン26で燃焼させてもよい。
しかも、本実施形態の燃料タンクシステム12では、このように、タンク内圧が所定値を超えたときのベント配管36における流量調整を行う部材を、給油時に背圧室58を大気開放するための電磁弁68が兼ねていることになる。したがって、これらの作用を奏する部材を別々に設けた構成と比較して、低コストで構成できると共に、軽量となる。
車両の駐車中においても、通常は、電磁弁68及びダイヤフラム弁46が閉弁されているので、燃料タンク14は密閉されている。燃料タンク14内で発生した蒸発燃料がキャニスタ34に移動することはない。
車両の駐車中に、燃料タンク14のタンク内圧が正圧(大気圧よりも高い状態)になったときには、タンク内圧は背圧室58を通じて、電磁弁68の電磁弁本体76を開弁する方向(図2に示す矢印S2と反対の方向)に作用する。駐車中は電磁弁68が制御装置32によって開閉制御されない。しかし、タンク内圧が所定の閾値(以下「正圧閾値」という)を超えた場合には、タンク内圧(正圧)を受けた電磁弁本体76が、圧縮コイルスプリング80のバネ力に抗して開弁方向に移動する(図3と同様の状態になる)。すなわち、電磁弁68は、燃料タンク14の正圧を開放する正圧開放弁として動作しており、正圧開放弁をあらたに設ける必要がない。したがって、正圧開放弁を別に設けた構成と比較して、低コストで構成できると共に、軽量となる。
しかも、本実施形態の燃料タンクシステム12における電磁弁68は、上記したように給油時や走行時等にも所定の条件で開閉制御される。換言すれば、タンク内圧が正圧閾値を超えた場合以外にも、電磁弁本体76は開弁位置と閉弁位置との間を移動している。このため、タンク内圧が正圧閾値を超えた場合にのみ開弁される正圧開放弁と比較して、電磁弁本体76が弁座78に不用意に固着する現象が発生しづらくなり、耐固着性が向上する。
車両の駐車中に、燃料タンク14のタンク内圧が負圧(大気圧よりも低い状態)になったときには、タンク内圧(負圧)は、背圧室58を通じて、ダイヤフラム弁46の弁部材本体54を開弁する方向(図2に示す矢印S1と反対の方向)に作用する。タンク内圧が所定の閾値(以下「負圧閾値」という)よりも低くなった場合には、図5に示すように、タンク内圧(負圧)を背圧室58側から受けた弁部材本体54が、圧縮コイルスプリング60及びダイヤフラム56のバネ力に抗して、開弁方向(矢印S1と反対の方向)に移動する。すなわち、ダイヤフラム弁46は、燃料タンク14の負圧を開放する負圧開放弁として動作しており、負圧開放弁をあらたに設ける必要がない。したがって、負圧開放弁を別に設けた構成と比較して、低コストで構成できると共に、軽量となる。
しかも、本実施形態の燃料タンクシステム12におけるダイヤフラム弁46は、上記したように、給油時等においても所定の条件で開閉される。換言すれば、タンク内圧が負圧閾値を下回った場合以外にも、弁部材本体54は開弁位置と閉弁位置との間を移動している。このため、タンク内圧が負圧閾値を下回った場合にのみ開弁される負圧開放弁と比較して、弁部材本体54が弁座50に不用意に固着する現象が発生しづらくなり、耐固着性が向上する。
そして、第1実施形態の燃料タンクシステム12では、タンク側バイパス通路62を、第1ケース48Aに設けた第1バイパス構成部62Aと、第2ケース48Bに設けた第2バイパス構成部62Bとで構成しており、ホース等の他の部材を必要としていない。また、ホースが接続されるポート等も不要となっている。このため、タンク側バイパス通路62を有する燃料タンクシステム12を省スペースで構成することが可能である。また、ホース等が不要であるため、部品点数が少なくて済み、燃料タンクシステム12の低コスト化や軽量化を図ることも可能となる。
しかも、第1実施形態の燃料タンクシステム12では、第1ケース48Aの接合面84Aと、第2ケース48Bの接合面84Bとを接合するだけで、主室52及び背圧室58を備えたダイヤフラム弁46を構成できると共に、タンク側バイパス通路62を構成できる。したがって、ダイヤフラム弁46とタンク側バイパス通路62とを別工程で構成する構造と比較して、作業性が向上している。
また、第1実施形態の燃料タンクシステム12では、電磁弁ハウジング70及びキャニスタ側バイパス通路66についても、第2ケース48Bと一体成形されている。このため、電磁弁ハウジング70やキャニスタ側バイパス通路66の一部を第2ケース48Bと別体の部材を必要とする構成と比較して、部品点数が少なくなる。
さらに、オリフィス部88を、第2バイパス構成部62Bにおいて第2ケース48Bと一体成形している。このため、オリフィス部88(断面積減少部)を第2ケース48Bと別体で形成した構造と比較して、部品点数が少なくなっている。
なお、オリフィス部88を、たとえば、第1バイパス構成部62Aと第2バイパス構成部62Bの境界部分(接合面84A、84B)に設けることも可能である。ただし、この場合、接合面84A、84Bにズレが生じると、オリフィス部88における断面積にも影響が及ぶおそれがある。これに対し、本実施形態では、第2バイパス構成部62Bにオリフィス部88を設けているので、接合面84A、84Bにズレが生じていても、オリフィス部88における断面積に影響を及ぼさない。このため、タンク側バイパス通路62全体の流路構造(流量)にも影響せず、背圧室58における圧力変化のばらつきも抑制できる。
図7には、本発明の第2実施形態の燃料タンクシステム112が、ダイヤフラム弁146及び電磁弁68の近傍で部分的に拡大して示されている。第2実施形態において、燃料タンクシステム112の全体的構成は第1実施形態と同様であるので図示を省略する。また、第2実施形態において、第1実施形態と同一の構成要素、部材等には同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
第2実施形態の燃料タンクシステム112では、ダイヤフラム弁146が、第1ケース48A及び第2ケース48B(図2等参照)を有しておらず、一体成形された有底円筒形状の弁ハウジング148を有している。そして、弁ハウジング148における背圧室58の側壁部分、及び、タンク側ベント配管36Tには、ポート部114A、114Bが設けられている。これらのポート部114A、114Bは、ホース116によって接続されている。そして、ポート部114A、ホース116及びポート部114Bによって、タンク側バイパス通路62が構成されている。
背圧室58側のポート部114Aには、オリフィス部88が設けられている。すなわち、第2実施形態の燃料タンクシステム112も、タンク側バイパス通路62において背圧室58との連通部分にオリフィス部88が位置している。
このような構成とされた第2実施形態の燃料タンクシステム112においても、第1実施形態の燃料タンクシステム12と略同様の作用効果を奏する。オリフィス部88が背圧室58との連通部分に設けられているので、給油時や圧抜き時においてダイヤフラム弁46の応答性が高い。
また、第2実施形態では、タンク側バイパス通路62を、ポート部114A、ホース116及びポート部114Bの3つの部材によって構成している。したがって、タンク側バイパス通路62の形状や位置の自由度が高い。
第2実施形態においても、オリフィス部88は弁ハウジング148と一体成形されているので、オリフィス部88を別体で構成した構造と比較して、部品点数が少ない。
なお、第1実施形態及び第2実施形態において、電磁弁68としては、たとえば、背圧室58に向かって延出されたポート部(筒状の部材)を有する構造の電磁弁もある。このような電磁弁に対し、弁ハウジング48、148(第1実施形態の弁ハウジング48の場合は第2ケース48B)からもポート部を延出し、弁ハウジングのポート部と電磁弁のポート部とをホース等で接続する構造を採ってもよい。この構造では、弁ハウジング48、148のポート部がキャニスタ側バイパス通路66の一部を構成すると共に、弁ハウジング48(第2ケース84B)、148と一体成形されていることになる。さらに、電磁弁68とキャニスタ側ベント配管36Cとの間においても、電磁弁68とキャニスタ側ベント配管36Cにポート部を設け、これらポート部の間をホース等で接続しキャニスタ側バイパス通路66の一部を構成してもよい。
上記では、電磁弁68の電磁弁本体76として、その開弁方向が背圧室58から正圧が作用する方向と一致する向きとされたものを挙げている。しかし、電磁弁本体76の開弁方向はこれに限定されず、図8に示すように、電磁弁本体76の開弁方向が、背圧室58からの正圧の作用方向と反対になっていてもよい。この構成では、電磁弁本体76を閉弁位置に維持するためのコイル部72からの駆動力が小さくて済む。
本発明の弁部材として、上記ではダイヤフラム弁46を挙げているが、弁部材はダイヤフラム弁46に限定されない。たとえば、ダイヤフラム56を無くすと共に、弁部材本体54をその外周が弁ハウジング48の内周に接触するように大径化した構成でもよい。この構成では、弁部材本体54が単独で主室52と背圧室58とを区画すると共に、弁座50に接触することでベント配管36を閉塞する位置と、弁座50から離れることでベント配管36を開放する位置とを移動する。