以下、本発明の実施形態をトラクタに適用した場合の図面に基づき説明する。図1〜図4に示す如く、図中符号10はトラクタを示す。トラクタ10は、走行機体11と、走行機体11の前部を支持する左右一対の前車輪12と、前記走行機体11の後部を支持する左右一対の後クローラ走行装置13とを備えている。前記走行機体11には、エンジン8を搭載すると共に、操縦座席9を設けている。
図1〜図4に示す如く、走行機体11の後部にミッションケース40を搭載する。ミッションケース40の左右両側に左右の後車軸ケース14を設けている。走行機体11に後車軸ケース14を介して後クローラ走行装置13を着脱可能に取付ける。後車軸ケース14内に後車軸15の一端側を軸支し、その後車軸15の一端側に減速用ファイナルギヤ(図示省略)を軸支する。後車軸ケース14から後車軸15の他端側を突出させ、その後車軸15の他端側に駆動輪体16を取付けている。一方、前記後車軸ケース14よりも下方に、前後方向に延設したトラックフレーム17を配設する。前記後車軸ケース14にフランジ部材18を着脱可能に締結固定する。前記後車軸15よりも前側に配設する前リンク部材19と、前記後車軸15よりも後側に配設する後リンク部材20とを備える。フランジ部材18に各リンク部材19,20を介してトラックフレーム17を前後揺動可能に連結している。すなわち、フランジ部材18(走行機体11とも言える)、前後一対のリンク部材19,20及びトラックフレーム17とは、四節リンク構造をなしている。
図1〜図4に示す如く、前記トラックフレーム17の前端側にテンション調節機構22を介して前従動輪体21を取付ける。トラックフレーム17の後端側に後従動輪体23を支持軸24にて取付ける。前記駆動輪体16と、前記前従動輪体21と、前記後従動輪体23との三者には、履帯としての合成ゴム製の走行クローラ25を、略三角形状に巻掛けしている。前記駆動輪体16(後車軸15)を適宜速度で正回転又は逆回転させて、走行クローラ25を正回転又は逆回転駆動することによって、走行機体11が前進走行又は後退走行するように構成している。
なお、複数の転動輪26及びクローラガイド体41を備える。前記トラックフレーム17に前記複数の転動輪26を回転自在に設けている。実施形態の転動輪26は、前後に三つ並べて配置されている。クローラガイド体41は、走行クローラ25の左右方向への外れ防止、及び、走行クローラ25に等間隔に埋設された複数の芯金体(図示省略)を押さえるためのものであり、トラックフレーム17に締結固定されている。走行クローラ25の内周面のうち前従動輪体21と後従動輪体23との間の内周面(走行クローラ25の接地側の内周面)に、複数の転動輪26及びクローラガイド体41を接触させる。クローラガイド体41は側面視逆T字状の舟形に形成されている。複数の転動輪26及びクローラガイド体41によって、走行クローラ25の接地側を着地支持するように構成している。
図3及び図4に示す如く、前記フランジ部材18に前後の上端枢着軸27,28を設ける。前記後車軸15と平行に前後の上端枢着軸27,28を延設する。前後の上端枢着軸27,28に、前リンク部材19及び後リンク部材20の上端側ボス部を回転自在に軸支する。前記トラックフレーム17に前後の下端枢着軸30,31を設ける。前リンク部材19は、その下端が前記トラックフレーム17に前下端枢着軸30にて回転自在に連結されている。この場合、トラックフレーム17の上部前端側に立設された前支柱171の上端側ボス部に、前下端枢着軸30のうち前リンク部材19の下端側から外向きに突出した部分が回動可能に軸支されている。すなわち、前リンク部材19の下端側ボス部と前支柱171の上端側ボス部とが、前下端枢着軸30を介して回動可能に連結されている。前上端枢着軸27よりも前下端枢着軸30を前側に位置させ、前リンク部材19を前向きに傾斜させて支持している。
また、図3及び図4に示す如く、後リンク部材20は、その下端が前記トラックフレーム17に後下端枢着軸31にて回転自在に連結されている。この場合、トラックフレーム17の上部後端側に立設された後支柱172の上端側ボス部に、後下端枢着軸31のうち後リンク部材20の下端側から外向きに突出した部分が回動可能に軸支されている。すなわち、後リンク部材20の下端側ボス部と後支柱172の上端側ボス部とが、後下端枢着軸31を介して回動可能に連結されている。後上端枢着軸28よりも後下端枢着軸31を後側に位置させ、後リンク部材20を後ろ向きに傾斜させて支持している。これにより、前後のリンク部材19,20は、前記トラクタ10における側面視(図3、図4)において、互いに下広がりのハ字状の配設になっている。
図3及び図4に示す如く、前後の下端枢着軸30,31は、トラクタ10の側面視において、走行クローラ25の内周側で且つ駆動輪体16の外周側の領域に位置している。なお、走行クローラ25は、前記トラクタ10における側面視(図3及び図4)において、前記後車軸15を通る鉛直線から前従動輪体21までの距離Dfが、前記鉛直線から後従動輪体23までの距離Dbよりも大きい略三角形状に張設される。
前後の下端枢着軸30,31を、トラクタ10の側面視において、走行クローラ25の内周側で且つ駆動輪体16の外周側の領域に位置させている。このため、トラクタ10の進行方向前後から見て、前後の従動輪体21,23や複数の転動輪26の左右方向中心付近(厚み方向中心付近)に、前後の下端枢着軸30,31を接近させて配置することが可能になる。従って、前後の従動輪体21,23や複数の転動輪26に加わる荷重(走行クローラ25の押し上げ圧力)に対して、前後の下端枢着軸30,31の左右方向のオフセット量を少なくでき、前後の下端枢着軸30,31の支持強度を簡単に向上できるという利点がある。
上記の構成により、トラクタ10を前進走行させた場合、走行クローラ25が地面から前進反力を受けることによって、走行機体11に対してトラックフレーム17が前方向に移動し、走行クローラ25が前上がり姿勢に傾斜する。即ち、前記トラックフレーム17が、前記走行機体11に対して前方向に移動するとき、前上端枢着軸27を支点として水平面からの傾斜角度が小さくなるように、前リンク部材19が倒れる方向に回動する。また、後上端枢着軸28を支点として水平面からの傾斜角度が大きくなるように、後リンク部材20が起立する方向に回動する。その結果、走行クローラ25が前上がりに傾斜して、前進移動する。
一方、トラクタ10を後進走行させた場合、地面から後進反力を受けることによって、走行機体11に対してトラックフレーム17が後ろ方向に移動し、走行クローラ25が前下がり姿勢に傾斜する。即ち、前記トラックフレーム17が、前記走行機体11に対して後方向に移動するとき、前上端枢着軸27を支点として水平面からの傾斜角度が大きくなるように、前リンク部材19が起立する方向に回動する。また、後上端枢着軸28を支点として水平面からの傾斜角度が小さくなるように、後リンク部材20が倒れる方向に回動する。その結果、走行クローラ25が前下がりに傾斜して、後進移動する。
なお、旋回内側の走行クローラ25の駆動を中断して、左方向または右方向に旋回移動する場合、前進走行の際には旋回内側の走行クローラ25が前下がりに傾斜し、後進走行の際には旋回内側の走行クローラ25が前上がりに傾斜する。
前記走行機体11の前部が下がるようにピッチング(前傾動作)した場合、前リンク部材19は、前下端枢着軸30を支点として水平面からの傾斜角度が小さくなるように倒れる方向に回動する。後リンク部材20は、前記トラックフレーム17に対して、後下端枢着軸31を支点として水平面からの傾斜角度が大きくなるように起立する方向に回動する。これにより、走行機体11に対して、走行クローラ25が前上がり姿勢に支持される。
また、前記走行機体11の前部が上がるようにピッチング(後傾動作)した場合、前リンク部材19は、前下端枢着軸30を支点として水平面からの傾斜角度が大きくなるように起立する方向に回動する。一方、後リンク部材20は、後下端枢着軸31を支点として水平面からの傾斜角度が小さくなるように倒れる方向に回動する。これにより、走行機体11に対して、走行クローラ25が前下がり姿勢に支持される。
ところで、フランジ部材18、前後一対のリンク部材19,20及びトラックフレーム17によって構成される四節リンク構造において、その一つの節である前記トラックフレーム17がその長手方向に運動するときにおける「瞬間中心」は、前リンク部材19の延長線と、後リンク部材20の延長線とが互いに交わる交点に位置している。前記トラックフレーム17は、この「瞬間中心」を中心としてその長手方向に運動する。
この場合、前記前後のリンク部材19,20は、下広がりのハ字状に配設されていることにより、前記瞬間中心は、前記走行機体11が前下がりにピッチングしたときには、機体後方側に移動し、前記走行機体11が前上がりにピッチングしたときには、機体前方側に移動することになり、前記後車軸15の高さに近似した高さの位置に前記瞬間中心を保持することができる。これにより、前記走行機体11がピッチングする際に、トラックフレーム17に対して走行機体11が前後移動する距離を、先行技術の前後移動距離に比べ、大幅に縮小できる。
さらに、図1、図2に示す如く、ロータリ耕耘爪2を有するロータリ耕耘作業機1を備える。前記走行機体11の後部から後方側にロワーリンク3及びトップリンク4(三点リンク機構)を突出し、ロワーリンク3及びトップリンク4にロータリ耕耘作業機1を装着する。前記走行機体11の後部(ミッションケース40上部)に油圧リフト機構5を設ける。油圧リフト機構5のリフトアーム6にリフトロッド7を介してロワーリンク3の前後中間部を連結する。油圧リフト機構5の操作にてロータリ耕耘作業機1を昇降動させる一方、ロータリ耕耘爪2にて圃場の耕土を耕耘するように構成している。なお、ロータリ耕耘作業機1に代えて、各種作業機をトラクタ10に装着できることは云うまでもない。
図1及び図3に示す如く、エンジン8を搭載する走行機体11と、走行機体11の前部下側に設ける左右の前車輪12と、走行機体11の後部下側に設けるトラックフレーム17と、トラックフレーム17に装着する左右の走行クローラ25とを備え、走行クローラ25に回転力を伝達する後車軸15と、走行機体11にトラックフレーム17を揺動可能に支持する揺動支点軸としての前後の上端枢着軸27,28とを、離間させて設ける作業車両10において、後車軸15が軸支されるアクスルケースとしての後車軸ケース14の直下に前後の上端枢着軸27,28を配置し、前後の上端枢着軸27,28に設ける前リンク部材19及び後リンク部材20を介して、後車軸ケース14にトラックフレーム17を連結している。従って、例えば前進移動時、または後進移動時、圃場の畔などの凸部を乗越える場合、前後の上端枢着軸27,28を中心として走行クローラ25が前上り又は前下りに傾斜しても、走行クローラ25の接地面の前後傾斜角度が従来よりも小さくなる。即ち、走行機体11の対地高さが従来よりも変化しにくく、操縦座席9に搭乗したオペレータの乗り心地を良好な状態に維持できる。
図3に示す如く、前後の上端枢着軸27,28と前後の下端枢着軸30,31とによって揺動支点軸を形成し、後車軸ケース14に前後の上端枢着軸27,28を設け、トラックフレーム17に前後の下端枢着軸30,31を設け、前記各枢着軸27,28,30,31に前後のリンク部材20,21の上下端部をそれぞれ連結している。したがって、トラックフレーム17の走行機体11への支持荷重が大きくても、前後の上端枢着軸27,28及び前後の下端枢着軸30,31のそれぞれの支持荷重を低減でき、作業車両10の大型化を簡単に達成できる。また、前記各枢着軸27,28,30,31部の変形等による作動不良の発生などを低減でき、耐荷重または耐久性なども向上できる。
図1及び図3に示す如く、エンジン8を搭載する走行機体11と、走行機体11の前部下側に設ける左右の前車輪12と、走行機体11の後部下側に設けるトラックフレーム17と、トラックフレーム17に装着する左右の走行クローラ25と、走行クローラ25に回転力を伝達する後車軸15と、トラックフレーム17に設ける複数の転動輪26とを備え、複数の転動輪26を介して走行クローラ25の接地側を支持する作業車両10において、後車軸15の直下に設ける2本の上の枢着軸としての前上端枢着軸27及び後上端枢着軸28と、トラックフレーム17に設ける2本の下の枢着軸としての前下端枢着軸30及び後下端枢着軸31の間に2本のリンク部材19,20を連結し、後車軸15の前方と後方に2本の上の前上端枢着軸27及び後上端枢着軸28を振分けて配置し、トラックフレーム17上面側のうち複数の転動輪26の間の上面側に2本の下の前下端枢着軸30及び後下端枢着軸31の一方を配置している。従って、複数の転動輪26の間に設ける前下端枢着軸30の支持高さを低くできる。上下の前上端枢着軸27及び前下端枢着軸30の軸受構造を低コスト化または軽量化できるものでありながら、走行クローラ25の接地反力に対して、前下端枢着軸30の軸受構造を強度的に有利に構成できる。また、リンク部材19のボス体長さを簡単に確保でき、汎用性の高いブッシュを使用して、前下端枢着軸30に前リンク部材19のボス体を軸支できる。
図3に示す如く、トラックフレーム17に後従動輪体23を介して走行クローラ25の後部接地側を支持する構造であって、後従動輪体23に隣接する転動輪26と後従動輪体23の間で、トラックフレーム17上面側に2本の前下端枢着軸30及び後下端枢着軸31の他方を配置している。従って、後従動輪体23に隣接する転動輪26と後従動輪体23の間に設ける後下端枢着軸31の支持高さを低くできる。走行クローラ25の接地反力に対して、後下端枢着軸31の軸受構造を強度的に有利に構成できる。また、リンク部材19,20のボス体長さを簡単に確保でき、汎用性の高いブッシュを使用して、後下端枢着軸31に後リンク部材20のボス体を軸支できる。
図3に示す如く、前記2本のリンク部材19,20を機体側面視でハの字状に配置し、2本のリンク部材19,20の上端側の間隔よりも、2本のリンク部材19,20の下端側の間隔が大きくなるように構成している。したがって、従来の単一支点構造に比べ、走行クローラ25から走行機体11側に向けて突出させる前記2本のリンク部材19,20の出代を少なくすることができ、前記2本のリンク19,20部材が揺動するときに、2本のリンク部材19,20に付着した泥土が周辺の構成部品に干渉する等の不具合の発生を容易に低減できる。
図3に示す如く、エンジン8を搭載する走行機体11と、前記走行機体11の下部に設けられ且つ走行クローラ25を巻回支持するトラックフレーム17とを備えており、前記走行機体11にリンク機構を介して前記トラックフレーム17を前後揺動可能に取り付けている作業車両10であって、前記リンク機構を前後一対のリンク部材19,20にて構成し、前記走行機体11、前記前後一対のリンク部材19,20及び前記トラックフレーム17が四節リンク構造をなしているから、当該四節リンク構造の存在によって、例えばトラクタ10の畝跨ぎ作業における畝又は背の高い作物から離間させて前記走行機体11を支持することが可能になり、畝又は背の高い作物等に対して十分なスペースを確保できる。しかも、畝又は背の高い作物等に対して十分なスペースを確保できる構造でありながら、前記四節リンク構造の平行リンク近似動作によって、前記走行クローラ25の前後傾斜姿勢が大きく変化するのを防止できる。また、前記走行クローラ25の接地抵抗の大幅な変動等を防止でき、圃場の乱れや蛇行走行等のおそれを低減できる利点もある。
次に、図4を参照しながら、前後のリンク部材19,20取付け構造の第1例について説明する。以下に示す取付け構造の各例では、前後のリンク部材19,20のうち少なくとも一方において、上下の枢着軸27,28,30,31(揺動支点軸)の一方が位置変更可能に構成されている。その中でも第1例は、前後両方のリンク部材19,20においてそれぞれの上端枢着軸27,28を位置変更可能に構成した場合である。
詳細な図示は省略するが、フランジ部材18は、複数のブラケット体等を組み合わせてブロック状に形成されたものであり、後車軸ケース14の底面側に着脱可能に固定されている。第1例では、フランジ部材18を構成する左右一対のブラケット体の前部側に、前下端枢着軸30を中心とする円弧方向に沿って飛び飛びに並ぶ複数の前部軸支穴177が形成されている。前リンク部材19の上端側ボス部に前上端枢着軸27を貫通させた状態で、左右方向で対応する任意の前部軸支穴177に前上端枢着軸27の両端部を挿通させ、前記左右両ブラケット体に前上端枢着軸27を両持ち梁状に取り付ける。このようにして、前上端枢着軸27の取付け位置は前部軸支穴177の位置に応じて段階的に変更可能になっている。
また、前記左右両ブラケット体の後部側には、後下端枢着軸29を中心とする円弧方向に沿って飛び飛びに並ぶ複数の後部軸支穴178が形成されている。後リンク部材20の上端側ボス部に後上端枢着軸28を貫通させた状態で、左右方向で対応する任意の後部軸支穴178に後上端枢着軸28の両端部を挿通させ、前記左右両ブラケット体に後上端枢着軸28を両持ち梁状に取り付ける。このようにして、後上端枢着軸28の取付け位置は後部軸支穴178の位置に応じて段階的に変更可能になっている。
上記のように構成すると、例えば後リンク部材20における後上端枢着軸28の取付け位置(支点位置)を変更すれば、トラクタ10前進時における後リンク部材20の揺動挙動が変更される。また、前リンク部材19における前上端枢着軸27の取付け位置を変更すれば、トラクタ10後進時における前リンク部材19の揺動挙動が変更されることになる。従って、トラクタ10の作業内容や圃場状態に対して適切な前後のリンク部材19,20の揺動挙動を簡単に得られるという効果を奏する。
特に第1例では、位置変更不能な前後の下端枢着軸30,31を中心とする円弧方向に沿う複数の軸支穴177,178をフランジ部材18に形成することによって、前後の上端枢着軸27,28の取付け位置を変更可能であるから、走行クローラ25の形状(周長)を殆ど変えることなく、前後のリンク部材19,20における前後の上端枢着軸27,28の取付け位置を変更できる。従って、前後の上端枢着軸27,28の取付け位置変更に起因して、走行クローラ25の張り具合(テンション)を大きく変更するような作業をする必要がない。なお、第1例は、前後両リンク部材19,20の前後の上端枢着軸27,28を位置変更させる構成であったが、これに限らず、前後の下端枢着軸30,31を位置変更させる構成を採用してもよいことは言うまでもない。
次に、図5を参照しながら、前後のリンク部材19,20取付け構造の第2例について説明する。第2例は、後リンク部材20の後上端枢着軸28のみを位置変更可能に構成した場合である。第2例では、前上端枢着軸27を支点とした前リンク部材19の前後回動を規制する揺動規制ストッパとしての前後の規制ピン179,180がフランジ部材18に設けられている。フランジ部材18を構成する左右両ブラケット体の間のうち前上端枢着軸27よりも前方に、前規制ピン179が両持ち梁状に固定され、前上端枢着軸27よりも後方に、後規制ピン180が両持ち梁状に固定されている。前上端枢着軸27を支点として前リンク部材19の下端側が前方回動する範囲は前規制ピン179にて規定され、同じく前上端枢着軸27を支点として前リンク部材19の下端側が後方回動する範囲は後規制ピン180にて規定されている。走行機体11に対する走行クローラ25の前後移動は、前後の規制ピン179,180の存在によって制限されることになる。
上記のように構成すると、前上端枢着軸27の取付け位置(支点位置)を変更しない前リンク部材19の前後揺動範囲(ひいては後リンク部材20の前後揺動範囲も)を簡単に設定でき、前後のリンク部材19,20の前後揺動の規制を簡単な構造で実現できるという効果を奏する。なお、前後の規制ピン179,180の配置及び構造は、第2例の場合に限らず、後リンク部材20の後上端枢着軸28に適用してもよいし、前後のリンク部材19,20の下端枢着軸30,31に適用してもよい。
次に、図6を参照しながら、前後のリンク部材19,20取付け構造の第3例について説明する。第3例は、第1例と同様に、前後両方のリンク部材19,20においてそれぞれの上端枢着軸27,28を位置変更可能に構成した場合である。第3例では、フランジ部材18の前部側に、前下端枢着軸30を中心とする円弧方向に沿って延びる前部長溝穴181が形成されている。前リンク部材19の上端側ボス部を貫通した前上端枢着軸27の外向き先端側を前部長溝穴181に挿通させている。前上端枢着軸27のうち前部長溝穴181から更に左右外向きに突出した部位には、上向きに延びる前上部長ねじボルト182と、下向きに延びる前下部長ねじボルト183とが固着されている。
フランジ部材18のうち前部長溝穴181の上方に着脱可能に装着された前上部板片184には、前上部長ねじボルト182を貫通させ、前上部長ねじボルト182のうち前上部板片184を挟んだ両側にナット185がねじ込まれている。フランジ部材18のうち前部長溝穴181の下方に着脱可能に装着された前下部板片186には、前下部長ねじボルト183を貫通させ、前下部長ねじボルト183のうち前下部板片186を挟んだ両側にナット187がねじ込まれている。なお、各板片184,186において長ねじボルト182,183の貫通する穴は遊嵌穴になっている。
各板片184,186を挟んだナット185,187を緩めた状態で、前上端枢着軸27の取付け位置を前部長溝穴181に沿って調節した後、各ナット185,187を締め付けることによって、前上端枢着軸27の取付け位置が前部長溝穴181に沿って無段階的に変更されることになる。
図6に示すように、フランジ部材18の後部側に、後下端枢着軸31を中心とする円弧方向に沿って延びる後部長溝穴191が形成されている。後リンク部材20の上端側ボス部を貫通した後上端枢着軸28の外向き先端側を後部長溝穴191に挿通させている。後上端枢着軸28のうち後部長溝穴191から更に左右外向きに突出した部位には、上向きに延びる後上部長ねじボルト192と、下向きに延びる後下部長ねじボルト193とが固着されている。
フランジ部材18のうち後部長溝穴191の上方に着脱可能に装着された後上部板片194には、後上部長ねじボルト192を貫通させ、後上部長ねじボルト192のうち後上部板片194を挟んだ両側にナット195がねじ込まれている。フランジ部材18のうち後部長溝穴191の下方に着脱可能に装着された後下部板片196には、後下部長ねじボルト193を貫通させ、後下部長ねじボルト193のうち後下部板片196を挟んだ両側にナット197がねじ込まれている。なお、各板片194,196において長ねじボルト192,193の貫通する穴は遊嵌穴になっている。
各板片194,196を挟んだナット195,197を緩めた状態で、後上端枢着軸28の取付け位置を後部長溝穴191に沿って調節した後、各ナット195,197を締め付けることによって、後上端枢着軸28の取付け位置が後部長溝穴191に沿って無段階的に変更されることになる。
上記のように構成した場合も、第1例と同様に、トラクタ10の作業内容や圃場状態に対して適切な前後のリンク部材19,20の揺動挙動を簡単に得られるという効果を奏する。また、各上端枢着軸27,28がそれぞれ対応する長溝穴181,191に沿って位置変更されるから、この点でも、第1例と同様に、走行クローラ25の形状(周長)を殆ど変えることなく、前後のリンク部材19,20における前後の上端枢着軸27,28の取付け位置を変更でき、前後の上端枢着軸27,28の取付け位置変更に起因して、走行クローラ25の張り具合(テンション)を大きく変更するような作業をする必要がない。なお、第3例においても、前後の下端枢着軸30,31を位置変更させる構成を採用して差し支えない。前後のリンク部材19,20のうち少なくとも一方において、上下の枢着軸27,28,30,31の一方が位置変更可能に構成されていればよいのである。
次に、図7を参照しながら、前後のリンク部材19,20取付け構造の第4例について説明する。第4例は、第1例及び第4例と同様に、前後両方のリンク部材19,20においてそれぞれの上端枢着軸27,28を位置変更可能に構成した場合である。第4例は第3例の変形例といえる構成であり、フランジ部材18に形成された長溝穴181,191に、リンク部材19,20の上端側ボス部を貫通した前後の上端枢着軸27,28の外向き先端側を挿通させている。前後の上端枢着軸27,28のうち長溝穴181,191から更に左右外向きに突出した部位は、フランジ部材18に固定されたアクチュエータとしての前部油圧シリンダ201又は後部油圧シリンダ202のピストンロッドに連結されている。各油圧シリンダ201,202におけるピストンロッドの伸縮動作によって、前後の上端枢着軸27,28の取付け位置が長溝穴181,191に沿って調節されることになる。
上記の構成によると、各油圧シリンダ201,202に対する手動又は自動バルブ制御によって、前後のリンク部材19,20における前後の上端枢着軸27,28の取付け位置(支点位置)を簡単に変更することが可能になる。例えば作業途中等において前後の上端枢着軸27,28の取付け位置を変更したい場合にも、オペレータの簡単な操作によって手軽に取付け位置変更を実現できる。また、牽引負荷変化等に対応して前後の上端枢着軸27,28の取付け位置を自動的に変更することも可能になる。なお、第4例においても、前後の下端枢着軸30,31をアクチュエータにて位置変更させる構成を採用して差し支えない。