光ファイバ通信においては、光を符号変調する外部変調器としてマッハツェンダ(Mach-Zehnder;MZ)型の光変調器が用いられている。従来から、光導波路にニオブ酸リチウムを用いたマッハツェンダ変調器が用いられていたが、近年、光導波路に半導体材料を用いたマッハツェンダ変調器の利用が検討されている。半導体マッハツェンダ変調器は、ニオブ酸リチウムを用いた変調器に比べて小型であるという特長を有しており、光送信装置の小型化を実現するために有望な技術である。非特許文献1、非特許文献2といった構成により実現されている。
半導体マッハツェンダ変調器を用いた従来の光強度変調装置について特許文献1を参照しながら説明する。
図1は、半導体マッハツェンダ変調器を用いた従来の光強度変調装置の模式図であり、特許文献1の図3を書き直した図である。まずは、半導体マッハツェンダ変調器10について、その構成を説明する。マッハツェンダ型光変調器の干渉計を構成する2つの光導波路のうち、第1のアーム1を構成する光導波路には、変調電極バイアス電圧をバイアスされた高速データ信号電圧が印加される変調電極11を備え、第2のアーム2を構成する光導波路には干渉計の位相差を調整するために、位相差調整電圧を印加される位相差調整電極12を備えている。
半導体マッハツェンダ変調器は、マッハツェンダ型光変調器の干渉計の光の位相差が電極に印加される電圧に対して非線形に増加する特性を有している。そこで、この特性に起因する半導体マッハツェンダ変調器特有の特性を説明する。
図2は、半導体マッハツェンダ変調器のアーム上の電極の電圧(半導体マッハツェンダ変調器では電圧を印加するために半導体PN接合に対して逆バイアス電圧を印加する。光導波路を構成する半導体のPN接合の向きによって負電圧を印加することもあるが、電圧の大小について混乱を招くので、本発明の説明では電圧の絶対値を用いて、統一的に説明することにする)に対する各アーム間を伝搬する光の位相差(アーム間位相差)の特性図である。ここで、横軸は、第1のアーム1の変調電極の電圧あるいは第2のアーム2の位相差調整電極の電圧、縦軸は第1のアーム1を伝搬する光と第2のアーム2を伝搬する光との位相差である。
図1の半導体マッハツェンダ変調器の2つの電極の電圧が0の場合、第1のアーム1と第2のアーム2が等しく構成されているとすれば、第1のアーム1を伝搬する光は、第2のアーム2を伝搬する光と同じ位相の光であり、位相差は0である。ここで、第1のアーム1の電圧を0から大きくしていくと、第1のアーム1を伝搬する光の屈折率が変化していく。これにより、第1のアーム1を伝搬する光は、第2のアーム2を伝搬する光に対して位相差を持つようになる。第1のアーム1の電圧を大きくするにしたがって、位相差は大きくなる。図2はこの様子を示している。
このときの出力光強度の変化を図3で示す。半導体マッハツェンダ変調器のアーム上の電極の電圧と光出力の関係を示した特性図である。消光特性と呼ばれる。横軸は第1のアーム1の変調電極の電圧あるいは第2のアーム2の位相差調整電極の電圧、縦軸はマッハツェンダ型光干渉計を構成する光変調器の出力光強度である。半導体マッハツェンダ変調器の2つの電極の電圧が0の場合、位相差が0であるため、この両者がマッハツェンダ型光干渉計の出力端で合波されると、入力光と同じ強度の変調光が再生され、出力光強度は最大となり、光変調動作を行なった場合の出力光のオンレベルが出力される。
第1のアーム1の電圧を0から大きくしていくと出力光強度が減少し、ある入力電圧で、第1のアーム1を伝搬する光と第2のアーム2を伝搬する光との位相差がちょうどπとなり、この両者がマッハツェンダ型光干渉計の出力端で合波されると、お互いに打ち消しあって消光される。このようにして、出力光のオフレベルが出力される。ここで、出力光がオンレベルになる電圧と出力光がオフレベルになる電圧の差を半波長電圧Vπと呼ぶ。
さらに電圧を大きくすると位相差がπより増加して出力光強度が増加し、位相差がちょうど2πになるときに、出力光強度がふたたび最大となり、オンレベルが出力される。図3はこの様子も示している。このようにして、入力電圧の値に応じて出力光強度が変化するので、マッハツェンダ型変調器は、入力電圧(入力電気信号)を変化させることにより、出力光強度を変化(変調)することができる。
第2のアーム2に対しても同様に電圧を変えることにより、出力光強度を変化させることができる。第1のアーム1と第2のアーム2に同時に電圧を印加することもできる。第1のアーム1に電圧を印加して位相差がある状態で、第2のアーム2の電圧を0から大きくして第1のアーム1の電圧に近づけると位相差が小さくなることに注意する必要が有る。
光導波路をニオブ酸リチウムで構成したマッハツェンダ変調器は、ポッケルス効果による光学効果を利用しているため、入力電圧に対して位相差が線形に変化し、電圧と位相差の関係が直線で表される。しかし、半導体マッハツェンダ変調器においては、図2に示すように、各アーム間を伝搬する光の位相差は入力電圧に対して非線形に増加していき、また、その傾きは入力電圧が大きくなるほど大きくなる。すなわち、下に凸で単調増加する曲線で表される。
この非線形な特性は、例えば、光導波路のコア層を半導体バルク材料で構成し、そのバンドキャップ波長を信号波長よりやや短波長側に設定した光導波路において生じるフランツケルディッシュ効果による電気光学効果、あるいは、光導波路のコア層を多重量子井戸層(MQW)で構成した光導波路において生じる量子閉じ込めシュタルク効果による電気光学効果を利用する場合に現れる。半導体マッハツェンダ変調器は、電圧印加により屈折率の変化を引き起こす電気光学効果の起因として、ポッケルス効果に加えて、フランツケルディッシュ効果や量子閉じ込めシュタルク効果を利用しているため、非線形な特性が生じる。入力電圧に対する非線形な特性に起因して、図3の消光カーブにおいて、山と谷との間隔がだんだん詰まっているように示されている。また、この非線形な位相差特性により入力電圧を大きくするにしたがって半波長電圧Vπは小さくなる。
さらに、図2で入力光の波長を1530nmから1560nmまで変化させたときの特性からわかるように、入力光波長依存性があり、入力光の波長が短波から長波になるにしたがって、傾きが緩やかになっている。また、図3で入力光の波長を1530nmから1560nmまで変化させたときの特性からわかるように、入力光の波長が短波から長波になるにしたがって、山と谷との間隔が広くなっていく。すなわち、入力光の波長が短波から長波になるにしたがって、半波長電圧Vπは大きくなる。
一方、ニオブ酸リチウムを用いたマッハツェンダ変調器では、入力電圧に対して位相差が線形に変化するため、半波長電圧Vπは電圧に依存しない。また、半波長電圧Vπの波長依存性もない。
以上のように、半導体マッハツェンダ変調器においては、ニオブ酸リチウムを用いたマッハツェンダ変調器には無い電圧依存性や入力光波長依存性が存在する。
半導体マッハツェンダ変調器を用いて高速データ信号による光のON/OFF変調をおこなう原理を、図4を用いて説明する。図左下に消光特性を示す。順バイアスに印加することを避けるため高速データ信号の振幅の半分より大きなバイアス電圧Vbを変調電極に印加し、半波長電圧Vπに等しい振幅の高速データ信号を重畳した状態で、高速データ信号のローレベルが光出力のオフに、ハイレベルが光出力のオンになるように、位相差調整電極の電圧Vaを設定する。すなわち、変調電極のバイアス電圧をVbにし、高速データ信号を重畳しない状態(非変調時)で、消光特性において出力光強度がオンになる電圧とオフになる電圧の中央になるように位相差調整電極の電圧Vaを調整する。このように位相差調整電極圧Vaを制御すると、変調電極のバイアス電圧を中心に高速データ信号電圧が変化し、消光特性の関係から、高速データ信号電圧のハイレベル/ローレベルに対応して光出力がON/OFFする。この非変調時の位置を中心に光強度が変化するため、この点を動作点と呼ぶ。特にON/OFF変調を行う場合の動作点をQUAD点と呼ぶ。
このようにして、高速データ信号による光のON/OFF変調が実現される。NRZ(Non Return To Zero)変調とも呼ばれる。
一般に光変調器は、定められた振幅の光信号を出力できることが要望されている。しかし、半波長電圧Vπが高速データ信号電圧よりも大きくなったり、小さくなったりした場合、前述した図4に示す原理により、変調されて出力される光信号の振幅が所定値からずれるといった問題が生じる。
以上説明したように、ON/OFF変調を行なうには、高速データ信号の振幅を半波長電圧Vπに等しくする必要がある。
しかし、前述したように半導体変調器では、入力波長が変わると半波長電圧Vπが変わってしまう。また、バイアス電圧Vbを消光特性のQUAD点に設定する必要があるが、入力波長が変わると位相差が変わり、QUAD点となる電圧も変化する。そのため、入力波長が変わると、高速データ信号のハイレベル・ローレベルの電圧がそれぞれオン電圧・オフ電圧の位置からずれてしまう。以上の理由により、入力波長が変わると、同じ駆動条件(同じバイアス電圧、同じ変調振幅)では、出力光信号波形が変化してしまう。
この課題に対して、特許文献1では、入力光の波長に応じて変調電極バイアス電圧Vbおよび位相差調整電圧Vaを変更して設定することにより課題を解決し、波長によらず同じ変調振幅で同じ出力信号波形が得られるようにしている。
具体的には、特許文献1において、光強度変調装置は、図1に示すように、光変調器に入力される入力光の波長に応じて直流電源から供給する変調電極バイアス電圧Vbを制御するバイアス電圧制御回路(第1アーム制御回路)20と、入力光の波長に応じて直流電源から供給する位相差調整電圧Vaを制御する位相差調整電圧制御回路(第2アーム制御回路)30を備えて構成されている。
バイアス電圧制御回路(第1アーム制御回路)20内でバイアス電圧制御部23は、入力光の波長とバイアス電圧Vbとの対応テーブル23aを含む参照テーブルを参照して、入力光の波長に対応して予め定められた最適なバイアス電圧Vbを読み出して、読み出したバイアス電圧になるように直流電源22を制御する。また、位相差調整電圧制御回路(第2アーム制御回路)30内で位相差調整電圧制御部32は、入力光の波長と位相差調整電圧Vaとの対応テーブル32aを含む参照テーブルを参照して、予め定められた最適な位相差調整電圧Vaを読み出して、読み出した位相差調整電圧になるように直流電源31を制御する。
しかしながら、この方法では、入力光として使用する全波長に対してあらかじめテーブルを作成しておく必要があるという課題がある。
また、特許文献1においては、予め定められた法則の演算を行う電子回路を設けて、この電子回路により入力光の波長に基づいて前述した値を算出してもよいとしている。この場合は全波長にわたるテーブルの作成の必要は無いが、その演算規則のもととなるパラメータを予め測定しておく必要があるという別の課題がある。このデータを得るために、予め測定が必要であることには変わりがない。
さらに、特許文献1の方法では、動作時に何らかの手段により入力光の波長を知る必要が有る。波長がわからなければ、どの電圧に設定すればよいかわからない。
さらには、半導体マッハツェンダ変調器の位相差や半波長電圧Vπは、入力波長だけでなく、入力光パワーや素子温度によって変化するから、動作状態と同一条件でテーブルを作成しておく必要あり、入力光パワーや素子温度等の動作状態が変更になれば、テーブルを取り直さなければならない。
また、数年の長期にわたる動作は、半導体デバイスや駆動回路において、直列抵抗の増加や漏れ電流の増大などの経時変化を引き起こすことがある。経時変化により半波長電圧Vπが変化した場合や、経時変化により駆動回路の駆動振幅が変化した場合には、駆動振幅が過不足を生じる。したがって、変調特性が劣化することになる。
また、一般に高速データ信号電圧は直流電圧に比べて損失が大きいため、変調器に印加する高速データ信号を直流特性から求めた電圧に等しい振幅で発生させると、接続ケーブル、接続RF導波路、接続ワイヤー等の高周波損失により、実際に素子に印加される電圧は発生電圧より不足してしまう。そこで、その損失を測定し、あるいは推定し、高速データ信号の振幅は直流特性より求めた半波長電圧Vπより大きめにする必要があるが、必ずしも正確に損失が補償できるわけではないため、高周波の高速データ信号の振幅が実際の素子において所望の電圧で印加されているかどうかはわからない。すなわち、直流の消光特性測定値から高速データ信号の振幅を設定するのは難しい。
非特許文献3では、位相差特性が電圧の2次式で表されると仮定して消光特性をフィッティングすることにより近似式を得ている。また、高周波損失分が1/3であると見積もって、変調時のバイアス電圧を演算している。これにより全波長領域にわたって、人手による調整を必要としない変調動作を実現している。この方法では、演算方法が具体的に示されており、蓄積すべきパラメータは少なくなっているが、演算式を得るためにあらかじめ使用条件で消光特性を測定しておく必要があるという同じ課題を持っている。
特許文献2には、ニオブ酸リチウムを用いたマッハツェンダ変調器を想定して、動作点をQUAD点に自動制御する装置および方法が示されている。この方法を用いれば、波長だけでなくその他の影響による動作点の変動は補正し制御できる。しかし、波長による半波長電圧Vπの変化は補正できないため、上記のようなテーブルや関係式を用いて、変調電極バイアス電圧を設定する必要がある。また、温度変化や経時劣化など、テーブルや関係式で表されない半波長電圧Vπの変化には適応できず、変調特性が劣化することになる。
特許文献3には、半波長電圧Vπが変化した場合に高速データ信号の振幅と等しくなるように高速データ信号の振幅を制御する装置が示されている。しかしながら、この方法によれば、制御信号によって高速データ信号の駆動振幅を変化させることができる駆動装置を用いる必要があり、そのような駆動装置を作製することは、高コスト化、回路の複雑化を招くことになる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
図5は本発明の第1の実施形態である光強度変調装置のブロック図である。
マッハツェンダ型光干渉計を構成する光導波路3の2つの光導波路の位相差が光導波路への印加電圧に対して非線形に変化する特性を持つマッハツェンダ変調器10を用いてON/OFF変調を行う光強度変調装置であって、半波長電圧Vπを自動的に制御する自動半波長電圧制御回路50を備える光強度変調装置の動作原理を説明するための構成である。
最初に、マッハツェンダ変調器10を用いてON/OFF変調を行う構成について説明する。
マッハツェンダ変調器10は、基板上に第1のアーム1と第2のアーム2とでマッハツェンダ型光干渉計を構成する光導波路3が形成され、マッハツェンダ変調器10を構成している。マッハツェンダ変調器10の入力端へ入力された入力光が、マッハツェンダ型光干渉計を構成する光導波路3内で2つに分岐して、第1のアーム1を構成する光導波路および第2のアーム2を構成する光導波路を伝搬し、これらの分岐光が合波されてマッハツェンダ変調器10の出力端から出力光として出力される。第1のアーム1を構成する光導波路および第2のアーム2を構成する光導波路には、光導波路上面に電圧を印加するための複数の電極が形成されている。光導波路底面あるいは基板が接地電極に接続されており、上面電極と基板との間に電圧を印加する。それにより上面電極と基板に挟まれた光導波路に電界が印加され、電気光学効果により位相差が発生する。発生した位相差に応じてマッハツェンダ変調器10より出力される光強度が変化し、光変調動作が実現される。第1のアーム1と第2のアーム2の光導波路の構造は等しく、また、本マッハツェンダ変調器は発生した位相差が印加電圧に対して非線形に変化する特性を持っているものとする。
高速データ信号によりON/OFF変調を行うために、高速データ信号源41から発生し、広帯域増幅器42により一定振幅に増幅された高速データ信号は、バイアスT回路43のRF端子に入力され、変調電極バイアス電圧をバイアスされて出力端子から出力され、第1のアーム1に形成された変調電極11に印加される。最適な変調を行うためには、高速データ信号の振幅が半波長電圧Vπに等しくなる必要がある。ここでは図示していないが、変調電極11に印加される信号は変調器の内部で、あるいは出力端子を介して外部で終端されていることが望ましい。
第1のアーム1あるいは第2のアーム2のいずれかあるいは両方に形成された第1の位相差調整電極12−1、第2の位相差調整電極12−2には、動作点をQUAD点に制御するために干渉計の位相差を調整するため、高速データ信号の駆動振幅の中心において、光振幅の中心になるように動作点が調整されるように動作点制御回路60により位相差調整電極電圧を印加されている。
2つの光導波路に各々位相差調整電極を備える場合は、そのどちらかあるいは両方を制御する。即ち、片側の位相差調整電極は接地し、一方の位相差調整電極のみ制御する構成でも良いし、両方を制御することとすれば、各位相差調整電極の最大調整範囲は半分で済む。図5は2つの光導波路の両方に位相差調整電極を備え、その両方の位相差調整電極を制御する場合の構成を示している。
以上のように構成することにより、高速データ信号によるON/OFF変調を実現する。
次に、本発明の特徴である自動半波長電圧制御回路50について説明する。自動半波長電圧制御回路50は高速データ信号の振幅と半波長電圧Vπが等しくなるように半波長電圧Vπを制御するものである。自動半波長電圧制御回路50はディザ信号(発振信号、微小変調信号)検出回路51、変調電極バイアス電圧制御回路52、ディザ信号重畳回路53および加算回路54により構成されている。
変調電極バイアス電圧制御回路52から発生した変調電極バイアス電圧に、ディザ信号重畳回路53から発生したディザ信号が、加算回路54により重畳され、バイアスT回路43のDC端子に入力され、出力端子から出力されて、変調電極11に印加されている。ここでは、ディザ信号は変調電極11に重畳したが、マッハツェンダ型光干渉計を構成する光導波路3の2つのアームのうちいずれか一方のアームであれば、いずれに重畳しても良く、第1の位相差調整電極12−1、第2の位相差調整電極12−2等に重畳しても良い。
ディザ信号が重畳された光出力信号は、マッハツェンダ変調器10の出力端と光学的に結合された光分岐回路14により一部を分岐され、ディザ信号検出回路51に入力される。ディザ信号検出回路51は光検出器51−1(これはフォトダイオードと増幅器から構成されている)および位相比較回路51−2(同期検波回路ともいう)(これは乗算回路とローパスフィルタから構成されている)で構成されている。光信号はディザ信号検出回路51の光検出器51−1に内蔵されたフォトダイオードにより検出され、内蔵された増幅器によりディザ信号が増幅される。増幅されたディザ信号は、位相比較回路51−2に内蔵された乗算回路により、ディザ信号重畳回路53より発生したディザ信号と乗算され、位相比較回路51−2に内蔵されたローパスフィルタにより高周波成分を取り除かれて、両ディザ信号の位相差に対応した電圧に変換されて出力され、位相比較が実現される。その位相比較結果にもとづく位相比較回路51−2の出力信号が最小になるように変調電極バイアス電圧制御回路52で変調電極11のバイアス電圧を制御する。こうして、ディザ信号重畳回路53、光変調器10、光分岐回路14、ディザ信号検出回路51、変調電極バイアス電圧制御回路52によるフイードバック回路を構成し、これらにより半波長電圧制御が実現されている。
なお、図5では、変調電極11への変調電極バイアス電圧の増減によって、動作点がずれないように、第2のアーム2に備えられた電極13にも変調電極バイアス電圧と同一の電圧を印加している。
従来例で説明したように、変調時に高速データ信号の駆動振幅が半波長電圧Vπに満たないと消光比(オンオフ比)が不足し、駆動振幅が半波長電圧Vπを超えると信号波形が折りかえって消光比の劣化が起こる。したがって、駆動振幅を調整するか、半波長電圧Vπを変化させるかして、駆動振幅が半波長電圧Vπに等しくなるように制御する必要があるが、本発明は、駆動振幅を常に一定にし、半波長電圧Vπを自動制御することが特徴である。
図6に自動半波長電圧制御の原理を説明する図を示す。図6(a)に半波長電圧Vπがデータ信号振幅に等しい場合、図6(b)に半波長電圧Vπがデータ信号振幅より大きい場合、図6(c)に半波長電圧Vπがデータ信号振幅より小さい場合を示している。別途、前述の方法等により高速データ信号の駆動振幅の中心が、光振幅の中心になるように動作点を常にQUAD点に制御しているものとする。動作点を●で示している。
高速データ信号がマッハツェンダ変調器に印加され、光出力には変調信号光を発生する。さらにディザ信号(微小変調信号)重畳回路53より電極の一つ(図5では変調電極11)に印加されたディザ信号によりマッハツェンダ変調器の消光特性が変化する。図6では、ディザ信号による消光特性の変化を電圧−出力光強度の関係として3本の消光特性として示しており、それぞれ、ディザ信号が負への最大振幅、ゼロ、正の最大振幅の場合を模式的に示している。これにより、マッハツェンダ変調器の光出力では変調信号にディザ信号が重畳されることになる。そこで、光出力の一部を分岐し、フォトダイオード等を用いて電気信号に変換し、ディザ信号を検出する。ここでディザ信号の変調周波数をf0とおいている。
高速データ信号の駆動振幅が最適で、半波長電圧Vπに等しい場合、図6(a)のように光出力にf0成分は生じない。駆動振幅が小さすぎる場合、図6(b)のように光出力にはディザ信号と逆相のf0成分が生じる。逆に駆動振幅が大きすぎる場合、図6(c)のように光信号にはディザ信号と同相のf0成分が生じる。したがって、ディザ信号重畳回路からの周波数f0のディザ信号と光出力ディザ信号を位相比較(同期検波)することにより、駆動振幅の大小に応じた電圧が生じるので、その出力結果に応じて、変調電極バイアス制御回路において、同期検波出力電圧が負の場合には、半波長電圧Vπが小さくなるように制御し、正の場合は、半波長電圧Vπが大きくなるように制御すれば、半波長電圧Vπが最適な場合に同期検波出力がゼロになり、高速データ信号の駆動振幅と半波長電圧Vπが等しくなるので、そのように制御すればよい。より具体的には、後述する変調電極バイアス電圧と半波長電圧Vπの関係を利用し、同期検波出力電圧が負の場合には、半波長電圧Vπが小さくなるように変調電極バイアス電圧が大きくなるように制御し、正の場合は、半波長電圧Vπが大きくなるように変調電極バイアス電圧が小さくなるように制御する。
ここでは、図6において逆バイアス電圧が増加すると透過光が増加する透過特性(図では右上がりの特性)で説明したが、逆バイアス電圧が増加すると透過光が減少する透過特性(右下がりの特性)では、検出したディザ信号の向き(正負)が逆になり、この場合、制御する方向が逆になるが、同期検波出力成分をゼロになるように制御することに変わりはない。
また、この説明ではディザ信号を変調信号と同じアームに重畳したが、反対側のアームに重畳しても良く、その場合は検出したディザ信号の向き(正負)が逆になるが、同期検波出力成分をゼロになるように制御することに変わりはない。
半波長電圧Vπを変化させる原理について説明する。例えば、InP半導体マッハツェンダ変調器は、光導波路はInP系の半導体光導波路により構成され、光導波路のコア層がそのバンドギャップ波長が入力光の波長より短波長側である半導体を用いたフランツケルディッシュ効果により引き起こされた屈折率変化にもとづく位相変調、あるいは、光導波路のコア層に多重量子井戸を用いた量子閉じ込めシュタルク効果により引き起こされた屈折率変化にもとづく位相変調を利用している。そのため、光の位相差が印加電圧に対して非線形に、近似的には印加電圧に線形な項と二乗に比例する項の和で増加する。これにより半導体マッハツェンダ変調器の半波長電圧Vπはバイアス電圧に依存し、変調用電極のバイアス電圧を制御することにより半波長電圧Vπを変化させることができる。
図7に半波長電圧Vπのバイアス依存性を模式的に示す。信号波長をパラメータとして図を描いている。図2に示したアーム間の光の位相差の特性図をもとに表した図である。図からわかるように、半波長電圧Vπは電圧に対して単調に減少するから、半波長電圧Vπを小さくするためには変調電極11のバイアス電圧を大きくし、半波長電圧Vπを大きくするためには変調電極11のバイアス電圧を小さくすればよい。このようにして、同期検波出力に応じて、バイアス電圧を制御することにより、半波長電圧Vπを変化させて、高速データ信号振幅と半波長電圧Vπを等しくすることができる。
本発明の本質は、位相差が印加電圧に対して非線形に変化する特性を持つため、結果として変調電極バイアス電圧を変化させることにより半波長電圧Vπを変化させることができる点にある。図7には、波長をパラメータとして特性図を示したが、波長によって電圧と位相差の関係が変わる必要は無く、波長によって半波長電圧Vπが変わらなくとも本発明は実施できる。
光導波路が電圧印加による位相変化が非線形に変化する成分を含む材料で光導波路を構成していれば、半波長電圧Vπの制御が必要になり、また、逆に考えると、印加電圧を制御することにより半波長電圧Vπを最適値にすることができる点に注目する必要がある。位相変化は屈折率変化に比例するから、位相変化が非線形に変化する成分を含む材料とは、例えば、屈折率変化が印加電界の2乗に比例する成分を含む材料や、飽和により位相変化が印加電圧の平方根に比例する成分を含む材料などである。このように、電圧印加による位相変化が非線形に変化する材料では、半波長電圧Vπが電圧に依存して変化するから、バイアス電圧を制御することにより、高速データ信号振幅と半波長電圧Vπを等しくなるように制御することができる。
以上の動作原理から、マッハツェンダ型光干渉計を構成する光導波路3の2つの光導波路の位相差が印加電圧に対して非線形に変化する特性を持つマッハツェンダ変調器10を用いてON/OFF変調を行う光強度変調装置であって、マッハツェンダ変調器の前述の2つの光導波路の片方あるいは両方に、変調電極バイアス電圧をバイアスされた高速データ信号が印加される変調電極11を備える光変調であれば、本発明の特徴である自動半波長電圧制御回路50を用いて変調電極バイアス電圧を制御することにより高速データ信号振幅と半波長電圧Vπを等しくなるように制御することができることがわかる。
動作点制御回路について補足する。図5では、変調電極11の変調電極バイアス電圧の増減によって、動作点がずれないように、第2のアーム2に備えられ位相差を補正するための電極13にも同一の電圧を印加している。
この構成を用いない場合には、変調電極電圧を変えると動作点がずれてしまうので、特許文献2のような自動動作点制御回路を用いて常に動作点を制御する。半波長電圧制御と動作点制御を異なったディザ変調周波数を用いて同時に行うことにより、半波長電圧制御と動作点制御を実現できる。
あるいは半波長電圧制御と動作点制御を交互に行うことにより、半波長電圧制御と動作点制御を実現できる。さらには、同じディザ周波数を用いて半波長電圧制御と動作点制御を交互に行うこととすれば、ディザ周波数発生器およびディザ信号検出回路を共用でき、部品点数とコストを削減できる。
位相差調整電極について補足する。ここでは、位相差調整電極は逆バイアスにバイアスし、その電圧を制御することにより干渉計の位相差を調整する方法を示しているが、非特許文献2のように位相差調整電極が電流注入により位相差を調整する場合には、電圧印加を電流注入に変えるだけで、構成および動作は同様にして実現できる。
位相差調整電極を順バイアスにバイアスし、位相差調整電極に電流を注入することにより、その電流を制御し、電流注入によるプラズマ効果による屈折率変化を制御し、マッハツェンダ型光干渉計の位相差を調整する。順バイアスにバイアスし、位相差調整電極に電流を注入する場合は、変調効率が高いため、位相差調整電極の電極長を短くできるという利点がある。したがって、位相差調整電極を制御するとは、位相差調整電極を逆バイアスにして電圧を制御する場合と順バイアスにして注入電流を制御する場合の両方を含む。
両アームに位相差調整電極を備える場合について補足する。2つの光導波路の両方に位相差調整電極を備え、その両方を制御する場合であって、位相差調整電極は逆バイアスにバイアスし、その電圧を制御することにより干渉計の位相差を調整する場合は、第1の位相差調整電極の電圧の絶対値を小さくする方向に制御することと第2の位相差調整電極の電圧の絶対値を大きくする方向に制御することと等価である。したがって、例えば、第1の位相差調整電極の電圧の絶対値を小さくする方向に制御しているときに、0Vを超える方向に制御しなければならない場合は、第2の位相差調整電極の電圧の絶対値を大きくする方向に制御すれば良い。同様に、2つの光導波路の両方に位相差調整電極を備え、その両方を制御する場合であって、位相差調整電極は順バイアスにバイアスし、位相差調整電極に電流を注入することにより、その電流を制御し、電流注入によるプラズマ効果による屈折率変化を制御し、マッハツェンダ型光干渉計の位相差を調整する場合は、第1の位相差調整電極の電流を小さくする方向に制御することと第2の位相差調整電極の電流を大きくする方向に制御することと等価である。たがって、例えば、第1の位相差調整電極の電流を小さくする方向に制御しているときに、0mAを超える方向に制御しなければならない場合は、第2の位相差調整電極の電流を大きくする方向に制御すれば良い。
フォトダイオードについて補足する。フォトダイオードはマッハツェンダ変調器とは別に構成するように図示しているが、半導体基板上に一体集積しても良い。半導体基板上に一体集積する場合は、出力導波路自体が出力光の一部を吸収してフォトダイオードとしても動作する構成にすることができる。
マッハツェンダ型光干渉計を構成する出力側の合波器として、上記では2x1の構成の合波器で構成されているとして説明したが、2x2の構成の合波器で構成しても良い。その場合は出力される側のポートの一部を分岐しても良いし、出力されない側のポートの全部あるいは一部を分岐して、ディザ信号検出に用いても良い。また、出力される側のポートで検出される信号と出力されない側のポートで検出される信号との比をディザ信号検出に用いても良い。
以上説明したように、高速データ信号の振幅と半波長電圧Vπが一致するように制御することができる。
図8は本発明の第2の実施形態である光変調器制御装置のブロック図である。
マッハツェンダ変調器の片側のアームの変調電極11に高速データ信号を印加してON/OFF変調し、もう一方のアームの電極を位相差調整電極12として動作点を制御する構成である。マッハツェンダ型光干渉計を構成する光導波路3の2つの光導波路の位相差が光導波路への印加電圧に対して非線形に変化する特性を持っており、変調電極11の電圧を調整して、半波長電圧Vπを自動的に制御する。
最初に、マッハツェンダ変調器10−2を用いてON/OFF変調を行う構成について説明する。
マッハツェンダ変調器10−2は、基板上に第1のアーム1と第2のアーム2とでマッハツェンダ型光干渉計を構成する光導波路3が形成され、マッハツェンダ変調器10−2を構成している。マッハツェンダ変調器10−2の入力端へ入力された入力光が、光導波路内で2つに分岐して、第1のアーム1を構成する光導波路および第2のアーム2を構成する光導波路を伝搬し、これらの分岐光が合波されてマッハツェンダ変調器10−2の出力端から出力光として出力される。第1のアーム1を構成する光導波路の上面には高速データ信号が印加される変調電極11が形成され、第2のアーム2を構成する光導波路の上面には位相差調整電極12が形成されている。光導波路底面あるいは基板が接地電極に接続されており、上面電極と基板との間に電圧を印加する。それにより上面電極と基板に挟まれた光導波路に電界が印加され、電気光学効果により位相差が発生する。発生した位相差に応じてマッハツェンダ変調器10−2より出力される光強度が変化し、光変調動作が実現される。ここで、本マッハツェンダ変調器は発生した位相差が印加電圧に対して非線形に変化する特性を持っているものとする。
高速データ信号によりON/OFF変調を行うために、高速データ信号源41から発生し、広帯域増幅器42により一定振幅に増幅された高速データ信号に、バイアスT回路43のRF端子に入力され、変調電極バイアス電圧をバイアスされて、バイアスT回路43の出力端子から出力され、変調電極11に印加される。最適な変調を行うためには、高速データ信号の振幅が半波長電圧Vπに等しくなる必要がある。ここでは図示していないが、高速データ信号は変調器の内部で、あるいは出力端子を介して外部で終端されていることが望ましい。
また、第2のアーム2には、動作点をQUAD点に制御するために干渉計の位相差を調整するための位相差調整電極12が形成され、高速データ信号の駆動振幅の中心において、光振幅の中心になるように、自動動作点制御回路61により位相差調整電極電圧を印加されている。これは、例えば特許文献2のような自動動作点制御回路を用いる。特許文献2の方法を用いて自動動作点制御を行うためには、自動動作点制御回路61により、高速データ信号の振幅を微小変調する必要がある。また、光出力からディザ信号を検出する必要があるため、図8においては、自動半波長電圧制御回路50の光検出器51−1からディザ信号を取り出して自動動作点制御回路61に入力している。また、自動動作点制御回路61を用いず、手動であるいはテーブルを用いて、高速データ信号の駆動振幅の中心において、光振幅の中心になるように動作点を制御する動作点制御回路60を用いても良い。
以上のように構成することにより、高速データ信号によるON/OFF変調を実現する。
次に、本発明の特徴である自動半波長電圧制御回路50については、第1の実施例と同じ構成で、半波長電圧制御が実現される。したがって、その構成および動作の説明は省略する。図8では、変調電極11にディザ信号重畳回路53を用いてディザ信号が印加されている。ここでは、ディザ信号は変調電極11に重畳したが、マッハツェンダ型光干渉計を構成する光導波路3の2つのアームのうちいずれか一方のアームであれば、いずれに重畳しても良く、位相差調整電極12に重畳しても良い。
以上説明したように、本構成のマッハツェンダ変調器10−2において、高速データ信号の振幅と半波長電圧Vπが一致するように制御することができる。
図9に本発明の第3の実施形態である光強度変調装置のブロック図を示す。
マッハツェンダ変調器10−3の両方のアームにそれぞれに変調電極を備え、それらに差動の高速データ信号の各々を印加して、光をON/OFF変調する構成(差動駆動プッシュプル構成あるいはデュアル駆動プッシュプル構成と呼ばれる)である。さらに、変調電極の他に別途、動作点を制御する位相差調整電極を備えている。マッハツェンダ型光干渉計を構成する光導波路3の2つの光導波路の位相差が光導波路への印加電圧に対して非線形に変化する特性を持っており、変調電極の電圧を調整して、半波長電圧Vπを自動的に制御する構成である。
最初に、マッハツェンダ変調器10−3を用いてON/OFF変調を行う構成について説明する。マッハツェンダ変調器10−3は、基板上に第1のアーム1と第2のアーム2とでマッハツェンダ型光干渉計を構成する光導波路3が形成され、マッハツェンダ変調器10−3を構成している。マッハツェンダ変調器10−3の入力端へ入力された入力光が、光導波路内で2つに分岐して、第1のアーム1を構成する光導波路および第2のアーム2を構成する光導波路を伝搬し、これらの分岐光が合波されてマッハツェンダ変調器10−3の出力端から出力光として出力される。第1のアーム1を構成する光導波路には、光導波路に電圧を印加するための第1の変調電極11−1および第1の位相差調整電極12−1、第2のアーム2を構成する光導波路には、光導波路に電圧を印加するための第2の変調電極11−2および第2の位相差調整電極12−2が上面に形成されている。光導波路底面あるいは基板が接地電極と接続されており、上面電極と基板との間に電圧を印加する。それにより上面電極と基板に挟まれた光導波路に電界が印加され、電気光学効果により位相差が発生する。発生した位相差に応じてマッハツェンダ変調器10−3より出力される光強度が変化し、光変調動作が実現される。第1のアーム1と第2のアーム2の光導波路の構造は等しく、第1の変調電極11−1と第2の変調電極11−2の長さは等しく構成されているものとする。また、本マッハツェンダ変調器は発生した位相差が印加電圧に対して非線形に変化する特性を持っているものとする。
高速データ信号によりON/OFF変調を行うために、高速データ信号源41から発生した高速データ信号を差動出力広帯域増幅器42−2により増幅し、差動出力広帯域増幅器42−2の出力の第1の高速データ出力信号は、第1のバイアスT回路43−1のRF端子に入力され、変調電極バイアス電圧をバイアスされて、第1のバイアスT回路43−1の出力端子から出力され、マッハツェンダ変調器の第1の変調電極11−1に印加され、差動出力広帯域増幅器42−2のもう一方の逆相出力の第2の高速データ出力信号は、第2のバイアスT回路43−2のRF端子に入力され、変調電極バイアス電圧をバイアスされて、第2のバイアスT回路43−2の出力端子から出力され、マッハツェンダ変調器の第2の変調電極11−2に印加される。
第1の変調電極バイアス電圧と第2の変調電極バイアス電圧が等しいことに注目する必要がある。これにより第1の変調電極の半波長電圧Vπと第2の変調電極の半波長電圧Vπが等しくなる。また、第1の高速データ信号の振幅と第2の高速データ信号の振幅は等しく設定している。このように、第1、第2のデータ信号が逆相で振幅が等しく、かつ、第1、第2の変調電極の半波長電圧Vπが等しくなるように設定しているので、半導体マッハツェンダ変調器から出力される信号波形のチャープがキャンセルされてゼロになる。最適な変調を行うためには、高速データ信号の振幅の和が半波長電圧Vπに等しくなる必要があるので、この設定では、第1および第2の高速データ信号の振幅は半波長電圧Vπの半分に等しくなる。
また、第1のアーム1あるいは第2のアーム2のいずれかあるいは両方の上面には干渉計の位相差を調整する第1の位相差調整電極12−1あるいは第2の位相差調整電極12−2が形成されている。第1の位相差調整電極12−1、第2の位相差調整電極12−2には、高速データ信号の駆動振幅の中心において、光振幅の中心になるように動作点が調整されるように、動作点制御回路60により位相差調整電極電圧を印加されている。特許文献2のような自動動作点制御回路61を用いて常に動作点を制御する構成としても良い。
以上のように構成することにより、高速データ信号によるON/OFF変調を実現する。
次に、本発明の特徴である自動半波長電圧制御回路50は、第1の実施例と同じ構成で、半波長電圧制御が実現される。したがって、その構成および動作の説明は省略する。第1の変調電極バイアス電圧と第2の変調電極バイアス電圧を等しく制御することが本実施形態の特徴である。第1の変調電極11−1にディザ信号重畳回路53を用いて、ディザ信号が印加されている。ここでは、ディザ信号は第1の変調電極11−1に重畳したが、マッハツェンダ型光干渉計を構成する光導波路3の2つのアームのうちいずれか一方のアームであれば、いずれに重畳しても良く、位相差調整電極に重畳しても良い。
以上説明したように、本構成のマッハツェンダ変調器10−3において、高速データ信号の振幅と半波長電圧Vπが一致するように制御することができる。
図10に本発明の第4の実施形態である光強度変調装置のブロック図を示す。
マッハツェンダ変調器の2つのアームの片側のアームに変調電極11をもう一方のアームに接地電極15を備え、それらの間に高速データ信号を印加して、光をON/OFF変調する構成(シングルドライブプッシュプル構成)である。基板(より詳しくは光導波路に共通の底面)に電圧を印加することにより変調電極11にバイアスを印加するために、光導波路に共通の底面あるいは基板と接続された変調電極バイアス電圧印加電極16を備えている。さらに、変調電極11の他に、別途、動作点を制御する第1の位相差調整電極12−1、第2の位相差調整電極12−2を備える。マッハツェンダ型光干渉計を構成する光導波路3の2つの光導波路の位相差が光導波路への印加電圧に対して非線形に変化する特性を持っており、変調電極11の電圧を調整して、半波長電圧Vπを自動的に制御する構成である。
最初に、マッハツェンダ変調器10−4を用いてON/OFF変調を行う構成について説明する。
マッハツェンダ変調器10−4は、基板上に第1のアーム1と第2のアーム2とでマッハツェンダ型光干渉計を構成する光導波路3が形成され、マッハツェンダ変調器10−4を構成している。マッハツェンダ変調器10−4の入力端へ入力された入力光が、光導波路内で2つに分岐して、第1のアーム1を構成する光導波路および第2のアーム2を構成する光導波路を伝搬し、これらの分岐光が合波されてマッハツェンダ変調器10−4の出力端から出力光として出力される。第1のアーム1を構成する光導波路上面には、変調電極11と第1の位相差調整電極12−1が、第2のアーム2を構成する光導波路上面には、接地電極15と第2の位相差調整電極12−2が形成されている。基板は接地しておらず、高速データ信号は変調電極11と接地電極15との間に電圧を印加する。光導波路底面(基板)は、変調電極11にバイアスを印加するための変調電極バイアス電圧印加電極16と接続している。自動動作点制御回路50の出力が、インダクタ45を介して変調電極バイアス電圧印加電極16に印加される。上面電極と基板に挟まれた光導波路に電界が印加され、電気光学効果により位相差が発生する。高速データ信号印加時には、変調電極11と基板、接地電極15と基板の間に逆方向で大きさの等しい電界が印加されるシングルドライブプッシュプル構成になっている。発生した位相差に応じてマッハツェンダ変調器10−4より出力される光強度が変化し、光変調動作が実現される。第1のアーム1と第2のアーム2の光導波路の構造は等しく、変調電極11と接地電極15の長さは等しく構成されているものとする。また、本マッハツェンダ変調器は発生した位相差が印加電圧に対して非線形に変化する特性を持っているものとする。
高速データ信号によりON/OFF変調を行うために、高速データ信号源41から発生し、広帯域増幅器42により一定振幅に増幅された高速データ信号が、変調電極11に印加される。最適な変調を行うためには、高速データ信号の振幅が半波長電圧Vπに等しくなる必要がある。ここでは図示していないが、高速データ信号は変調電極11と接地との間で、変調器の内部で、あるいは出力端子を介して外部で終端されていることが望ましい。
また、第1のアーム1あるいは第2のアーム2のいずれかあるいは両方には、動作点をQUAD点に制御するために干渉計の位相差を調整する第1の位相差調整電極12−1あるいは第2の位相差調整電極12−2が形成されている。ここでは高速データ信号の駆動振幅の中心において、光振幅の中心になるように動作点制御されるように、第1の位相差調整電極12−1に、自動動作点制御回路61により位相差調整電極電圧を印加されている。これは、例えば特許文献2のような自動動作点制御回路を用いる。特許文献2の自動動作点制御を実現するためには、自動動作点制御回路61により、高速データ信号の振幅を微小変調する必要がある。また、光出力からディザ信号を検出する必要があるため、図10においては、光検出器51−1からディザ信号を取り出して自動動作点制御回路61に入力している。また、自動動作点制御回路61を用いず、手動であるいはテーブルを用いて、高速データ信号の駆動振幅の中心において、光振幅の中心になるように動作点を制御する動作点制御回路60を用いても良い。
以上のように構成することにより、高速データ信号によるON/OFF変調を実現する。
本発明の特徴である自動半波長電圧制御回路50については、第2の実施例と同様にして、半波長電圧制御が実現される。第2の位相差調整電極12−2にディザ信号重畳回路53を用いて、ディザ信号が印加されている。ここでは、ディザ信号は第2の位相差調整電極12−2に重畳したが、マッハツェンダ型光干渉計を構成する光導波路3の2つのアームのうちいずれか一方のアームであれば、接地電極15以外のいずれに重畳しても良く、変調電極に重畳しても良い。
以上説明したように、本構成のマッハツェンダ変調器10−4において、高速データ信号の振幅と半波長電圧Vπが一致するように制御することができる。
図11は本発明の第5の実施形態である光変調器制御装置のブロック図である。自動半波長電圧制御回路を備えた光強度変調装置であって、さらに、自動動作点制御回路70を備えた光強度変調装置であり、その実施形態の1つである。
マッハツェンダ変調器10−3、高速データ信号によりON/OFF変調を行うための回路および自動半波長電圧制御回路50は実施例3と同様な構成、動作であるので、構成および動作の説明は省略する。これらにより自動半波長電圧制御が実現されている。
自動動作点制御回路70の構成と動作について説明する。
自動動作点制御回路70は、高速データ信号の駆動振幅の中心において、光振幅の中心になるように動作点を自動制御するものである。自動動作点制御回路70は第2の位相比較回路71、位相差調整電極電圧制御回路72、第2のディザ信号重畳回路73、第2の加算回路74により構成されている。
第2のディザ信号重畳回路73により発生したディザ信号が、第2の加算回路74により、変調電極バイアス電圧制御回路52により発生した変調電極バイアス電圧に重畳され、さらにディザ信号重畳回路53により発生したディザ信号が加算回路54により重畳され、第1のバイアスT回路43−1のDC端子に入力されて、第1のバイアスT回路43−1の出力端子から出力され、第1の変調電極11−1に印加される。第2の加算回路74の出力は、第2のバイアスT回路43−2のDC端子に入力され、第2のバイアスT回路43−2の出力端子から出力されて、第2の変調電極11−2に印加される。第2のディザ信号重畳回路73により発生したディザ信号によって動作点をずらすことがないように、第1の変調電極11−1、第2の変調電極11−2に重畳される第2のディザ信号重畳回路73により発生したディザ信号の振幅は等しい。これにより、光出力信号に自動動作点制御回路のディザ信号が重畳される。
自動動作点制御回路のディザ信号が重畳された光出力信号は、マッハツェンダ変調器10−3の出力端と光学的に結合された光分岐回路14により一部を分岐され、自動半波長電圧制御回路50のディザ信号検出回路51の光検出器51−1に内蔵されたフォトダイオードにより検出され、内蔵された増幅器によりディザ信号が増幅される。本実施例では光検出器51−1は、自動半波長電圧制御回路用および自動動作点制御回路用に兼用されている。増幅されたディザ信号は、第2の位相比較回路71に内蔵された乗算回路により、第2のディザ信号重畳回路73より発生したディザ信号と乗算され、第2の位相比較回路71に内蔵されたローパスフィルタにより高周波成分を取り除かれて、両ディザ信号の位相差に対応した電圧に変換されて出力され、位相比較が実現される。その位相比較結果にもとづいた第2の位相比較回路71の出力信号が最小になるように、位相差調整電極電圧制御回路72で第1の位相差調整電極12−1の印加電圧を制御する。代わりに第2の位相差調整電極12−2の印加電圧を、あるいは両方を制御しても良い。こうして、第2のディザ信号重畳回路73、光変調器10、光分岐回路14、光検出器51−1、第2の位相比較回路71、位相差調整電極電圧制御回路72によるフイードバック回路を構成し、これらにより自動動作点制御が実現されている。
自動半波長電圧制御と自動動作点制御を異なったディザ変調周波数を用いて同時に行うことにより、自動半波長電圧制御と自動動作点制御を同時に実現できる。
また、自動半波長電圧制御と自動動作点制御のディザ変調周波数が同じであっても、半波長電圧制御と動作点制御を交互に行うことにより、半波長電圧制御と動作点制御を実現できる。
図12は本発明の第6の実施形態である光変調器制御装置のブロック図である。
自動半波長電圧制御回路と自動動作点制御回路の、ディザ信号検出回路およびディザ信号重畳回路を共用し、自動半波長電圧制御と自動動作点制御を交互に行うこととすれば、部品点数とコストを削減することができる。本実施例は自動半波長電圧制御回路と自動動作点制御回路の一部を共用し、自動半波長電圧制御と自動動作点制御を実現できる自動半波長電圧・動作点制御回路80を備えた光強度変調装置である。
マッハツェンダ変調器10−3、高速データ信号によりON/OFF変調を行うための回路は実施例5と同様の構成、動作であるので、構成および動作の説明は省略する。
自動半波長電圧・動作点制御回路80は、ディザ信号検出回路81、変調電極バイアス電圧制御回路82−1、位相差調整電極電圧制御回路82−2、ディザ信号重畳回路83、加算回路84、出力切替回路85、入力切替回路86で構成されている。また、ディザ信号検出回路81は、光検出器81−1(これはフォトダイオードと増幅器から構成されている)および位相比較回路81−2(これは乗算回路とローパスフィルタから構成されている)で構成されている。
まず、自動半波長電圧・動作点制御回路80が自動半波長電圧制御として機能する場合の構成と動作について説明する。出力切替回路85の出力が変調電極バイアス電圧制御回路82−1に入力され、入力切替回路86の入力が変調電極バイアス電圧制御回路82−1の出力の場合である。実施例5における自動半波長電圧制御回路50と同様の構成および動作であり、高速データ信号の振幅と半波長電圧Vπが等しくなるように半波長電圧Vπを制御するものである。
ディザ信号重畳回路83により発生したディザ信号が、加算回路84により、変調電極バイアス電圧制御回路82−1により発生した変調電極バイアス電圧に重畳され、第1のバイアスT回路43−1のDC端子に入力されて、第1のバイアスT回路43−1の出力端子から出力され、第1の変調電極11−1に印加される。変調電極バイアス電圧制御回路82−1により発生した変調電極バイアス電圧は、第2のバイアスT回路43−2のDC端子に入力され、第2のバイアスT回路43−2の出力端子から出力されて、第2の変調電極11−2に印加される。したがって、第1の変調電極11−1、第2の変調電極11−2には等しい変調電極バイアス電圧が印加され、第1の変調電極11−1にのみディザ信号が重畳される。これにより、光出力信号に自動半波長電圧制御のためのディザ信号が重畳される。
ディザ信号が重畳された光出力信号は、マッハツェンダ変調器10−3の出力端と光学的に結合された光分岐回路14により一部を分岐され、ディザ信号検出回路81の光検出器81−1に内蔵されたフォトダイオードにより検出され、内蔵された増幅器によりディザ信号が増幅される。増幅されたディザ信号は、位相比較回路81−2に内蔵された乗算回路により、ディザ信号重畳回路83より発生したディザ信号と乗算され、位相比較回路81−2に内蔵されたローパスフィルタにより高周波成分を取り除かれて、両ディザ信号の位相差に対応した電圧に変換されて、出力切替回路85の入力へ出力され、位相比較が実現される。
その位相比較結果にもとづく位相比較回路81−2の出力信号は、出力切替回路85により、変調電極バイアス電圧制御回路82−1に入力され、この信号が最小になるように変調電極バイアス電圧制御回路82−1で第1の変調電極11−1および第2の変調電極11−2の等しい変調電極バイアス電圧を制御する。こうして、ディザ信号重畳回路83、マッハツェンダ光変調器10−3、光分岐回路14、ディザ信号検出回路81、変調電極バイアス電圧制御回路82−1によるフイードバック回路を構成し、これらにより自動半波長電圧制御が実現されている。
次に、自動半波長電圧・動作点制御回路80が自動動作点制御として機能する場合の構成と動作について説明する。出力切替回路85の出力が位相差調整電極電圧制御回路82−2に入力され、入力切替回路86の入力が加算回路84の出力の場合である。実施例5における自動動作点制御回路70と同様の構成および動作であり、高速データ信号の駆動振幅の中心において、光振幅の中心になるように動作点を制御するものである。
ディザ信号重畳回路83により発生したディザ信号が、加算回路84により、変調電極バイアス電圧制御回路82−1により発生した変調電極バイアス電圧に重畳され、第1のバイアスT回路43−1のDC端子に入力されて、第1のバイアスT回路43−1の出力端子から出力され、第1の変調電極11−1に印加される。入力切替回路86の入力が加算回路84の出力に接続された端子に切替えられているので、ディザ信号重畳回路83により発生したディザ信号が、加算回路84により、変調電極バイアス電圧制御回路82−1により発生した変調電極バイアス電圧に重畳され、第2のバイアスT回路43−2のDC端子に入力され、第2のバイアスT回路43−2の出力端子から出力されて、第2の変調電極11−2に印加される。したがって、第1の変調電極11−1、第2の変調電極11−2には等しいディザ信号が重畳された等しい変調電極バイアス電圧が印加されている。これにより、光出力信号に自動動作点制御のためのディザ信号が重畳される。
ディザ信号が重畳された光出力信号により位相比較が実現されるまでの構成および動作は自動半波長電圧制御として働く場合と同じであるので説明は省略する。その位相比較結果にもとづく位相比較回路81−2の出力信号は、出力切替回路85により、位相差調整電極電圧制御回路82−2に入力され、この信号が最小になるように位相差調整電極電圧制御回路82−2で第1の位相差調整電極12−1の印加電圧を制御する。代わりに第2の位相差調整電極12−2の印加電圧を、あるいは両方を制御しても良い。こうして、ディザ信号重畳回路83、マッハツェンダ光変調器10−3、光分岐回路14、ディザ信号検出回路81、位相差調整電極電圧制御回路82−2によるフイードバック回路を構成し、これらにより自動動作点制御が実現されている。
したがって、こうした構成をとることにより、出力切替回路85および入力切替回路86を連動して切り替え、自動半波長電圧制御と自動動作点制御を交互に行うことにより、自動半波長電圧制御と自動動作点制御のためのディザ変調周波数が同じであっても、自動半波長電圧制御と自動動作点制御を実現できる。
「実施例5」「実施例6」は半導体マッハツェンダ変調器10−3に対して実施したが、他の形態の半導体マッハツェンダ変調器、例えば図10の半導体マッハツェンダ変調器10−4に対しても同様にして実施できる。