JP5806109B2 - ソフトカプセル型の外用剤の製造法、ソフト化液、およびソフトカプセル型の外用剤 - Google Patents
ソフトカプセル型の外用剤の製造法、ソフト化液、およびソフトカプセル型の外用剤 Download PDFInfo
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本出願人の出願にかかる特開平11−29433号公報(特許文献1、特許第3151169号)には、「アルギン酸塩により球状体に賦形されかつその球状体の表面側または表面側と内部側とに存在するアルギン酸塩の少なくとも一部がバリウム塩を含む多価金属塩の形で存在しているアルギン酸バリウム系カプセルA」が、「pH調整されたカルボキシビニルポリマーの水溶液からなる外液B」中に存在しているカプセル入り化粧料が示されている。外液B中にpH調整されたカルボキシビニルポリマーを存在させる理由は、外液B中のカルボキシビニルポリマーの三次元網目にアルギン酸バリウム系カプセルAを引っ掛かるようにして、カプセルAが沈降または浮遊しないようにするためである(段落0058)。
本出願人の出願にかかる特開平5−92909号公報(特許文献2、特許第2798224号)には、表面部のみが皮膜となった易擦壊性のキャビア状カプセルAを液剤B中に存在させた化粧料が示されている。カプセルAは、アルギン酸ナトリウムやその他の水溶性の水溶液からなる滴下液を水溶性カルシウム塩などの受液中に滴下することにより得ており、そのときの滴下液のアルギン酸ナトリウムの濃度や受液の水溶性カルシウム塩の濃度を適当な濃度に設定することにより、易擦壊性のキャビア状カプセルAが得られるように留意している。そして、そのようにして得られたカプセルAを水、食塩水、乳液、化粧水のような液剤B中に浮遊または沈降させるようにしている(段落0028、0029、0038)。
本出願人の出願にかかる特開平5−228218号公報(特許文献3)にも、上記の特許文献2と同様にして得た易擦壊性のパール状カプセルAを液剤Bにより湿潤する状態で取出機構を備えた容器内に収容したカプセル容器1と、眼の周りを刺激するコンパクトなマッサージ器2とからなるケア用品が示されている。
本出願人の出願にかかる特開平8−175932号公報(特許文献4)には、ファンデーション用粉末材料を有効成分とする組成物からなりかつ表面部のみが皮膜となった易擦壊性のファンデーションカプセル(段落0040においてはアルギン酸ナトリウムを使用している)と、保湿剤を有効成分とする組成物からなりかつ表面部のみが皮膜となった小キャビア状で易擦壊性の保湿剤カプセル(段落0043においてはアルギン酸ナトリウムを使用している)と、ジェル状粘稠液(段落0046においてはカルボキシビニルポリマー、DL−アラニンおよびクエン酸ナトリウムを使用)との混合物を容器内に収容してなるファンデーション化粧品が示されている。
特開平2−117610号公報(特許文献5)には、O/W型エマルションを内包したカプセルを含有する化粧料であって、カプセル膜がカプセル全量に対して0.1〜1.0重量%のアルギン酸カルシウムから成るエマルション内包カプセル含有化粧料が示されている。カプセル膜は、水溶性アルギン酸塩と水溶性カルシウム塩を反応させて水不溶性のアルギン酸カルシウムを生成させることにより形成している。その実施例1には使用後にカプセル膜が残らない旨の記載があり、その実施例2にはカプセルのほかにクエン酸とクエン酸ナトリウムとを配合した化粧液の処方が示されている。
特開2011−74002号公報(特許文献6)には、その請求項1に「スイゼンジノリ多糖類のゲル状金属塩を外皮とすることを特徴とするカプセル」が示されている。請求項2には「水溶性成分の水溶液を内包する請求項1記載のカプセル」が示されており、その請求項2を受けて段落0011には、水溶性成分に関して「アルギニン、アラニン、・・・などのアミノ酸類およびその塩並びに誘導体」につき言及がある。
−1−
特許文献1の発明は、上述の特許文献5や本出願人の出願にかかる上述の特許文献2、3、4の有する限界ないし問題点を解消するためになされたものである。この特許文献1のカプセル入り化粧料の発明においては、「pH調整されたカルボキシビニルポリマーの水溶液からなる外液B」中に「アルギン酸バリウム系カプセルA」を存在させるという特別の工夫を講じているため、アルギン酸バリウム系カプセルAとpH調整されたカルボキシビニルポリマーの水溶液からなる外液Bとの相乗作用または協力作用に基き、カプセルAが外液B中に安定に存在すること、カプセルAを肌に適用したときには皮膜を残すことなく皮膚上に滑らかに展延することができることなどの作用効果が奏されるとの説明がある(この特許文献1の段落0055〜0060の「発明の効果」の欄を参照)。
しかしながら、外液Bとしてカルボキシビニルポリマーを用いた化粧料は、(イ)カルボキシビニルポリマーの増粘性が大きいために系が粘稠となることを免れないので、適用可能な化粧料がエッセンスやローションのようなものに限られること、(ロ)外液B中においてカプセルA自体はソフト化するものの、「外液Bなし」の状態では容器に収容しておいても経時的にカプセルAがハードになって、皮膚への適用に支障を来たす傾向があること、(ハ)カプセルAを肌に適用したときに皮膜を残さないようにするためには、相応の手間をかけて肌に擦り付けなければならないこと、などの限界や煩わしさがあり、さらなる基本的な改良が望まれる。
特許文献6は「スイゼンジノリ多糖類のゲル状金属塩を外皮とすることを特徴とするカプセル」にかかるものであり、本発明や特許文献1〜5の発明とは解決課題、解決手段、技術内容が大きく異なる。
本発明は、このような技術背景下において、外液を実質的に有しないカプセル体(C)のみの構造体であるにもかかわらず、安定に保存することができかつ外用剤としての使用に際して指で擦ったときに皮膜残渣を残すことがないソフトカプセル型の外用剤を製造する方法を提供すること、その製造に用いるソフト化液(L)を提供すること、さらにはそのようなカプセル体(C)からなるソフトカプセル型の外用剤を提供すること、を目的とするものである。
アルギン酸塩系カプセル内の少なくとも外表面側の領域がアルギン酸カルシウム塩の形で存在している原カプセル体(c)を、アルギニンおよびヒスチジンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の塩基性アミノ酸(1)とクエン酸、リンゴ酸およびフィチン酸よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸(2)との双方を含む水性液からなるソフト化液(L)と接触させることにより、前記の原カプセル体(c)内に該ソフト化液(L)を浸透させること、
そして、前記の塩基性アミノ酸(1)と前記の酸(2)との組み合わせが、アルギニン−クエン酸、アルギニン−リンゴ酸、アルギニン−フィチン酸、ヒスチジン−クエン酸、から選ばれたものであること、
これにより、指先で擦ったときに残渣を生ずることなく容易にクリーム状となるアルギン酸カルシウム塩系のカプセル体(C)からなるソフトカプセル型の外用剤を得ること、
を特徴とするものである。
アルギン酸塩系カプセル内の少なくとも外表面側の領域がアルギン酸カルシウム塩の形で存在している原カプセル体(c)をソフト化するためのソフト化液(L)であって、
該ソフト化液が、アルギニンおよびヒスチジンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の塩基性アミノ酸(1)とクエン酸、リンゴ酸およびフィチン酸よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸(2)との双方を含む水性液からなること、
そして、前記の塩基性アミノ酸(1)と前記の酸(2)との組み合わせが、アルギニン−クエン酸、アルギニン−リンゴ酸、アルギニン−フィチン酸、ヒスチジン−クエン酸、から選ばれたものであること、
を特徴とするものである。
アルギン酸カルシウム塩系のカプセル体(C)からなるソフトカプセル型の外用剤であって、
前記のカプセル体(C)の内部の少なくとも外表面側の領域には、アルギニンおよびヒスチジンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の塩基性アミノ酸(1)とクエン酸、リンゴ酸およびフィチン酸よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸(2)との双方が存在しており、
そして、前記の塩基性アミノ酸(1)と前記の酸(2)との組み合わせが、アルギニン−クエン酸、アルギニン−リンゴ酸、アルギニン−フィチン酸、ヒスチジン−クエン酸、から選ばれたものであること、
かつ、前記のカプセル体(C)は、その外表面側の領域を含めた全体が易擦壊性に形成されていると共に、指先で擦ったときに残渣を生ずることなくカプセル体(C)全体が容易にクリーム状となるものであること、
を特徴とするものである。
(原カプセル体(c)の準備)
−1−
本発明のソフトカプセル型の外用剤を製造するにあたっては、まず、アルギン酸塩系カプセル内の少なくとも外表面側の領域がアルギン酸カルシウム塩の形で存在している原カプセル体(c)を製造しておく。このような原カプセル体(c)は、次に述べる第1の方法または第2の方法によって得ることができる。
上記の原カプセル体(c)を得る第1の方法は、アルギン酸の水溶性塩(ナトリウム塩やカリウム塩)の水性液を液滴などの小容量体にした状態で、水溶性カルシウム塩の水性液と接触させる方法である。この第1の方法にあっては、まず「アルギン酸の水溶性塩の水性液の小容量体(液滴など)」の表面にアルギン酸カルシウム塩高分子の皮膜が形成され、温度、時間、濃度、攪拌状態などの条件に応じてその皮膜の厚みを成長(増大)させていくことができる。
上記の原カプセル体(c)を得る第2の方法は、上記とは逆に、水溶性カルシウム塩の水性液を液滴などの小容量体にした状態で、アルギン酸の水溶性塩(ナトリウム塩やカリウム塩)の水溶液と接触させる方法である。この第2の方法にあっては、まず「カルシウム塩の水性液の小容量体(液滴など)」の表面にアルギン酸カルシウム塩高分子の皮膜が形成され、温度、時間、濃度、攪拌状態などの条件に応じてその皮膜の厚みを成長(増大)させていくことができる。
なお、上記の第1の方法および第2の方法における水溶性カルシウム塩としては、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム等の水溶性カルシウム塩;などがあげられる。
上記の第1の方法と第2の方法とを対比すると、第1の方法の方が、原カプセル体(c)の形成が安定して達成できるので、一般的であるということができる。
上記のアルギン酸塩系の原カプセル体(c)(従ってカプセル体(C)も)には、有効成分(薬効成分)を存在させておくことができる。有効成分(薬効成分)としては、保湿剤、ビタミン類、ホルモン類、配糖体、抗ヒスタミン剤、収斂剤、酵素剤、天然動植物からの分離物、オイル類、汚れ吸着剤、顔料、香料、蛋白質、炭水化物、繊維質、色素、イオウをはじめとする種々様々な成分があげられる。有効成分(薬効成分)は、液状であっても粉体状であってもよく、液状の場合はW/O型やO/W型のエマルジョン状であってもよい。有効成分(薬効成分)の変質を防ぐため、適当な紫外線カット剤を含有させることもできる。また、増粘剤、香料、着色剤、フィラー(酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等)をはじめとする種々の添加剤を必要に応じて含有させることもできる。原カプセル体(c)に存在する有効成分(薬効成分)は、最終的なカプセル体(C)内にも含まれることになる。
−1−
上記の第1の方法あるいは第2の方法により、アルギン酸塩系カプセル内の少なくとも外表面側の領域がアルギン酸カルシウム塩の形で存在している原カプセル体(c)が得られるので、次のようにして、目的とするアルギン酸カルシウム塩系のカプセル体(C)を取得する。
すなわち、少なくとも外表面側の領域がアルギン酸カルシウム塩の形で存在している原カプセル体(c)を、
・アルギニンおよびヒスチジンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の塩基性アミノ酸(1)と
・クエン酸、リンゴ酸およびフィチン酸よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸(2)と
の双方を含む水性液からなるソフト化液(L)と接触させることにより、上記の原カプセル体(c)内に該ソフト化液(L)を浸透させる。
原カプセル体(c)内へのソフト化液(L)の浸透は、最初は速やかに進み、しだいに遅くなっていくので(後述の実施例の箇所を参照)、たとえば半日とか1日あるいは数日をかけて行うのが通常である。そして、この浸透操作が終了した時点において、使用したソフト化液(L)の実質的に全てが原カプセル体(c)内に浸透するように、原カプセル体(c)とソフト化液(L)との割合を設定することが望ましい。もしソフト化液(L)が過剰であったときはその過剰分は分離除去するが、ソフト化液(L)が無駄になるので、予め条件を求めておいて過剰分の廃棄をしないで済むようにすることが望ましい。
上記の操作により、指先で擦ったときに残渣を生ずることなく容易にクリーム状となるアルギン酸カルシウム塩系のカプセル体(C)からなるソフトカプセル型の外用剤を得ることができる。
(ソフト化液(L))
ソフト化液(L)は、上述のように、「アルギニンおよびヒスチジンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の塩基性アミノ酸(1)」と「クエン酸、リンゴ酸およびフィチン酸よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸(2)」との双方を含む水性液であり、そのほか、必要に応じ、後述のような種々の成分を含んだものである。
−1−
はじめにアミノ酸について概説する。周知のように蛋白質を構成するアミノ酸は20種類あり、化学構造や等電点または水溶液のpHから、塩基性アミノ酸(ジアミノモノカルボン酸)、中性アミノ酸(モノアミノモノカルボン酸)、酸性アミノ酸(モノアミノジカルボン酸)の3種に分類される。
塩基性アミノ酸としては、アルギニン(等電点:10.76)、ヒスチジン(等電点:7.59)、リシン(等電点:9.75)の3種があげられる。
中性アミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンの15種があげられる。(これらの中性アミノ酸の等電点は、約5.1から約6.3の間にある。)
酸性アミノ酸としては、アスパラギン酸(等電点:2.77)とグルタミン酸(等電点:3.22)とがあげられる。
本発明の目的を達成するためには、ソフト化液(L)として、上述のアミノ酸のうちの塩基性アミノ酸(1)を用いることが必要である。アルギニン(分子量は174)は、Nの数が4でCOOHの数が1の塩基性アミノ酸である。ヒスチジン(分子量は155)は、Nの数が3でCOOHの数が1つの塩基性アミノ酸である。リシン(分子量は146)は、Nの数が2でCOOHの数が1つの塩基性アミノ酸である。
これら3種の塩基性アミノ酸の中では、アルギニンが特に好適であり、ヒスチジンも好適であるので、本発明においては塩基性アミノ酸(1)のうちのアルギニンやヒスチジンを用いる。
本発明においては、上記の塩基性アミノ酸(1)と共に、クエン酸、リンゴ酸およびフィチン酸よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸(2)を併用することが必要である。
ここで、酸(2)のうちクエン酸が本発明の目的にとって最適である。クエン酸は、分子量が192で、3つのCOOH基と1つのOH基を有するオキシカルボン酸である。
酸(2)としては、リンゴ酸(2つのCOOH基と1つのOH基を有するオキシカルボン酸、分子量は134)、フィチン酸(メソイノシットのヘキサリン酸エステル、分子量は714)も比較的好ましいものということができる。
ソフト化液(L)中の塩基性アミノ酸(1)と上記の酸(2)の量的割合は、後述の実験例のようにそれぞれの種類や両者の組み合わせの仕方によって大きく異なるので一概に決めることはできないが、塩基性アミノ酸(1)がアルギニンでかつ上記の酸(2)がクエン酸である場合を例にとると、アルギニン/クエン酸のモル比が1〜20程度の範囲内となるようにするのが適当である。要は、得られるカプセル体(C)が、膨潤過多になって溶解してしまったり、膨潤不足のために硬すぎて易擦壊性が損なわれるようなことがないように留意する。
ソフト化液(L)は、上記の各成分のほか、保湿剤または防腐剤を含んでいてもよい。後述の試験例においては、防腐剤兼用の保湿剤として、1,2−ヘキサンジオール、ブチレングリコールおよびペンチレングリコールの3者を併用して配合した場合を示してある。
原カプセル体(c)とソフト化液(L)との比率は、重量比でたとえば2:8〜7:3の範囲内から選ぶことが多いが、それは目安であり、原カプセル体(c)へのソフト化液(L)の浸透により、最終的なカプセル体(C)の硬度が後述のような適切な範囲にあればよい。
(カプセル体(C)の性状)
上記のようにして、原カプセル体(c)内にソフト化液(L)を浸透させることにより、目的とするアルギン酸カルシウム塩系のカプセル体(C)が製造される。このカプセル体(C)は、その外表面側の領域を含めた全体が易擦壊性に形成されていると共に、指先で擦ったときに残渣を生ずることなくカプセル体(C)全体が容易にクリーム状となるものである。
このカプセル体(C)の硬度(商品として市場に置かれた段階の硬度)は、原カプセル体(c)の硬度よりは小さくかつその形状を保つ範囲に設定される。たとえば、後述のレオメーターによる圧縮強度で500g以下、好ましくは450g以下に設定される。
カプセル体(C)の形状は球形とすることが多いが、必要に応じて型を用いて原カプセル体(c)を形成し、ついでその原カプセル体(c)をソフト液(L)と接触させることにより、涙形、俵形、勾玉形、サイコロ形、星形、文字形、花形、木の実形、果物形、野菜形、動物形をはじめとする種々の非球形の形状を有するカプセル体(C)とすることもできる。
カプセル体(C)の大きさ(上述の原カプセル体(c)に比したとえば体積で1倍強〜30倍程度になる)には特に限定はないが、球形の場合を例にとると、直径で、0.1〜20mm程度、通常は0.5〜10mm程度、殊に1〜8mm程度とすることが多い。
上記のカプセル体(C)からなる本発明のソフトカプセル型の外用剤は、一般化粧料のほか、浴用、健康用、スポーツ用などの化粧料として用いることができ、また医薬部外品、ケア用品などとして用いることもできる。
そして、上記のカプセル体(C)からなる本発明のソフトカプセル型の外用剤は、これをビン、ボトル、チューブなどの適当な容器に収容した状態で市場に供される。容器からの取り出しは、スプーンを用いて行うことが多いが、押し出し式とすることもできる。
(原カプセル体(c)の作製)
アルギン酸ナトリウムの5.0重量%水溶液16重量部中に有効成分の一例としてのエステル油10重量部を配合したものを準備し、撹拌しながらさらに水を加えて全体が100重量部になるようにした。
−1−
まず、「塩基性アミノ酸(1)であるアルギニン」、「中性アミノ酸であるアラニン」、「酸(2)であるクエン酸またはグルタミン酸」を後述の表の濃度になるように精製水に溶解した水溶液を調製した。さらに、この水溶液27.5重量部にジオール系およびトリオール系の保湿剤10.5重量部を溶解して、膨潤液38重量部を調製した。ついで、この膨潤液38重量部をさらに精製水12重量部で希釈して、50重量部のソフト化液(L)を調製した。以下の実験においては、このソフト化液(L)50重量部に原カプセル体(c)を投入して、ソフト化を行った。
後述の表1の実験番号3の処方のソフト液(L)に上記の原カプセル体(c)を投入してから、それぞれ0.25時間、0.5時間、0.75時間、12時間、72時間を経過した段階において取り出したときのカプセル体(C)につき、その硬度(10個の平均値)を測定したところ、下記の結果が得られた。12時間経過後のカプセル体(C)の直径は、原カプセル体(c)の直径の約1.3倍であった。(なお、この状態で容器に入れて蓋をして長期間保存しても、粒子形状は保たれていた。)
0.25時間経過後の硬度 728g
0.5時間経過後の硬度 659g
0.75時間経過後の硬度 627g
12時間経過後の硬度 279g
72時間経過後(3日後)の硬度 187g
なお、硬度の測定は、株式会社サン科学製の「SUN RHEO METER:COMPAC−100II」を用いて、次の手順にて行った。
1:シリンジ(ツベルクリン用、1mL)と滴下用の針を準備する。
2:シリンジのピストンを抜く。
3:シリンジに、その後ろから上記のカプセル体(C)を10個程度詰める。
4:シリンジに針を付け、ピストンを付けてカプセル体(C)を押して針から微量出し、針の中までカプセル体(C)を充填する。
5:シリンジを台に垂直方向にセットし、設定値10mm、測定速度60mm/分にて測定を行う。
この予備的実験の結果から、原カプセル体(c)の外表面側の皮膜のソフト化は、それをソフト液(L)に投入後の最初の数時間においてすみやかに進み、以降は緩慢となって長時間をかけて一定値に近づくことが判明したので、以降においては、種々の処方の実験につき、12時間経過してから取り出したときのカプセル体(C)につき種々の処方の実験を行った。条件と結果を次の表1と表2に示す。
上記の表1、2に示した結果から、次のことがわかる。
・表1の実験番号5のように、ソフト化液(L)が塩基性アミノ酸(1)および酸(2)の双方を欠いているときは、ソフト化ができない。
・表1の実験番号15、4、14においては、塩基性アミノ酸(1)としてアルギニンを用いているものの、カウンターパート(相手方)となる酸(2)を欠いているため、ソフト化の目的が達成できていない。
・表1の実験番号2のように、ソフト化液の成分が酸(2)であるクエン酸のみで、塩基性アミノ酸(1)としてのアルギニンを欠いているときは、ソフト化の目的が達成できない。
・表1の実験番号1、3、13、6、7、8、9、17のように、塩基性アミノ酸(1)としてのアルギニンと酸(2)としてのクエン酸との組み合わせの場合でかつ両者の量の比率が適切である場合には、ソフト化した◎評価のカプセル体(C)が得られている。
・表1の実験番号12においては、アルギニンとクエン酸との組み合わせを採用しているものの、アルギニン/クエン酸のモル比がやや小さいため、○評価となっている。
・表1の実験番号18においては、アルギニンとクエン酸との組み合わせを採用しているものの、アルギニン/クエン酸のモル比が過大の傾向があるため、□評価となっている。
・これに対し、表1の実験番号10および11においては、アルギニンとクエン酸との組み合わせを採用しているものの、アルギニン/クエン酸のモル比が限度を超えて過小であるため、×評価となっている。
・表1の実験番号10、11と表1の実験番号18とを対比すると、アルギニンとクエン酸との関係において、クエン酸の方の量を少なくしている実験番号18は相応のソフト化が進んでいるのに、アルギニンの方の量を少なくしている実験番号10、11はソフト化がほとんど進んでいないという事実から、ソフト化にはクエン酸よりもアルギニンの影響の方が大きいことがわかる。
・表2の実験番号16、19においては、酸(2)として、クエン酸でなくグルタミン酸を用いているが、ソフト化が達成されていない。塩基性アミノ酸(1)であるアルギニンのカウンターパート(相手方)である酸(2)としては、表1のようなクエン酸が適していることがわかる。
実験例1と同様にして原カプセル体(c)を作製し、実験例1と同じ処方のソフト化液(L)を用いて原カプセル体(c)のソフト化を行うことにより、カプセル体(C)を取得した。条件と結果を次の表3、表4、表5に示す。
実験例1と同様にして原カプセル体(c)を作製し、実験例1と同じ処方のソフト化液(L)を用いて原カプセル体(c)のソフト化を行うことにより、カプセル体(C)を取得した。条件と結果を次の表6に示す。
上記の表6に示した結果から、次のことがわかる。
・アルギニンとクエン酸との双方を用いている表3の実験番号20Aや実験番号30と対比すると、そのアルギニンに代替してヒスチジンを用いている表6のヒスチジン−クエン酸の系においては、ヒスチジンの使用量の許容範囲が若干狭いことがわかる。ただし、ヒスチジンの使用量に留意すれば、アルギニン使用の場合と同等の好ましい結果が得られることがわかる。
Claims (3)
- アルギン酸塩系カプセル内の少なくとも外表面側の領域がアルギン酸カルシウム塩の形で存在している原カプセル体(c)を、アルギニンおよびヒスチジンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の塩基性アミノ酸(1)とクエン酸、リンゴ酸およびフィチン酸よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸(2)との双方を含む水性液からなるソフト化液(L)と接触させることにより、前記の原カプセル体(c)内に該ソフト化液(L)を浸透させること、
そして、前記の塩基性アミノ酸(1)と前記の酸(2)との組み合わせが、アルギニン−クエン酸、アルギニン−リンゴ酸、アルギニン−フィチン酸、ヒスチジン−クエン酸、から選ばれたものであること、
これにより、指先で擦ったときに残渣を生ずることなく容易にクリーム状となるアルギン酸カルシウム塩系のカプセル体(C)からなるソフトカプセル型の外用剤を得ること、
を特徴とするソフトカプセル型の外用剤の製造法。 - アルギン酸塩系カプセル内の少なくとも外表面側の領域がアルギン酸カルシウム塩の形で存在している原カプセル体(c)をソフト化するためのソフト化液(L)であって、
該ソフト化液が、アルギニンおよびヒスチジンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の塩基性アミノ酸(1)とクエン酸、リンゴ酸およびフィチン酸よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸(2)との双方を含む水性液からなること、
そして、前記の塩基性アミノ酸(1)と前記の酸(2)との組み合わせが、アルギニン−クエン酸、アルギニン−リンゴ酸、アルギニン−フィチン酸、ヒスチジン−クエン酸、から選ばれたものであること、
を特徴とするソフト化液。 - アルギン酸カルシウム塩系のカプセル体(C)からなるソフトカプセル型の外用剤であって、
前記のカプセル体(C)の内部の少なくとも外表面側の領域には、アルギニンおよびヒスチジンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の塩基性アミノ酸(1)とクエン酸、リンゴ酸およびフィチン酸よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸(2)との双方が存在しており、
そして、前記の塩基性アミノ酸(1)と前記の酸(2)との組み合わせが、アルギニン−クエン酸、アルギニン−リンゴ酸、アルギニン−フィチン酸、ヒスチジン−クエン酸、から選ばれたものであること、
かつ、前記のカプセル体(C)は、その外表面側の領域を含めた全体が易擦壊性に形成されていると共に、指先で擦ったときに残渣を生ずることなくカプセル体(C)全体が容易にクリーム状となるものであること、
を特徴とするソフトカプセル型の外用剤。
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