JP5805285B2 - 筆記具用可逆熱変色性油性インキ組成物及びそれを内蔵した筆記具 - Google Patents
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Description
前記油性インキに用いられるマイクロカプセル顔料は、平均粒子径が1〜10μmと比較的大きなものであるため、カプセル壁膜の膜厚が厚く、溶剤に侵食されることなく使用できるものである。しかしながら、小径ボールを用いたボールペンや空隙率の低い繊維部材を用いたマーキングペンに適用する場合、筆記時のインキ流出をスムースに行うために前記マイクロカプセル顔料の粒子径を小さくする必要がある。その場合、マイクロカプセル顔料の粒子径を小さくすることで壁膜の厚さが薄くなるため、耐溶剤性において弱くなり、経時的に変色特性を阻害する虞がある。
更に、前記熱可塑性樹脂の軟化点が70℃以上200℃以下であること、前記可逆熱変色性マイクロカプセルの完全消色温度が50℃〜150℃の範囲にあること、前記樹脂被覆顔料の平均粒子径が0.3μm以上15μm以下であること、前記可逆熱変色性マイクロカプセルの平均粒子径が0.1μm以上3μm以下であることを要件とする。
更には、前記いずれかに記載の筆記具用可逆熱変色性油性インキ組成物を内蔵してなる筆記具を要件とし、摩擦部材を備えてなること、ボールペンであることを要件とする。
また、本出願人が提案した特公平1−29398号公報に記載した如き、温度変化による色濃度−温度曲線に関し、3℃以下のヒステリシス幅をもつ、高感度の可逆熱変色性組成物が挙げられる。
更に、本出願人が提案した特公平4−17154号公報に記載されている、大きなヒステリシス特性を示して変色する感温変色性色彩記憶性組成物も有効である。
また、加熱発色型の組成物として、消色状態からの加熱により発色する、本出願人の提案による、電子受容性化合物として、炭素数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物を適用した系(特開平11−129623号公報、特開平11−5973号公報)、或いは特定のヒドロキシ安息香酸エステルを適用した系(特開2001−105732号公報)を挙げることができる。更には、没食子酸エステル等を適用した系(特開2003−253149号公報)等を応用できる。
図1において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度t4(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度t3(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度t2(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度t1(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
変色温度領域は前記t1とt4間の温度域であり、加熱又は冷却に応じて発色状態と消色状態の両相が共存でき、色濃度の差の大きい領域であるt2とt3間の温度域が実質変色温度域(二相保持温度域)である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さ〔即ちtG−tH:tG=(t3+t4)/2、tH=(t1+t2)/2〕がヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が小さいと変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。また、前記ΔH値が大きいと変色前後の各状態の保持が容易となる。
変色温度として具体的には、完全発色温度t1を冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち−50〜0℃、好ましくは−40〜−5℃、より好ましくは−30〜−10℃、且つ、完全消色温度t4を加熱具によって得られる温度、即ち50〜150℃、好ましくは60〜150℃、より好ましくは70〜150℃の範囲に特定し、ΔH値を50〜100℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
以下に具体的な化合物を例示する。
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,6−ジフェニルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−フェニル、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等を挙げることができる。
更には、蛍光性の黄色〜赤色の発色を発現させるのに有効なピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を用いることもできる。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等が挙げられる。また、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
以下に具体例を挙げる。
フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン等がある。
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
前記(ハ)成分として好ましくは、色濃度−温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が用いられる。
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n−ペンチルアルコール又はn−ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
更に、前記(ハ)成分としては、下記一般式(1)で示される化合物が好適に用いられる。
前記化合物としては、グルタル酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、ピメリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステルを例示できる。
前記式(2)で示される化合物のうち、R1が水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、更にR1が水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好適である。
尚、式(2)で示される化合物のうち、より好ましくは下記一般式(3)で示される化合物が用いられる。
前記化合物として具体的には、オクタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチルを例示できる。
前記化合物として具体的には、ウンデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1−ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1−ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1−ジフェニルメチルを例示できる。
また、前記マイクロカプセルの形態は円形断面の形態のものの適用を拒まないが、非円形断面の形態が効果的である。
前記マイクロカプセルが非円形断面の形態の場合、粒状体調製過程における圧力や熱の負荷に対して破壊され難く、特に粉砕法によって形成される場合には、粉砕時の圧力が加わった際に弾性変形して応力を緩和できるため、カプセル壁膜の破壊に対して抑制効果を奏し、内包の可逆熱変色性組成物を保護して所期の熱変色機能を保持できる。
被覆樹脂の溶解度を0.2以下とすることで、インキ状態で長期間経時した場合であってもマイクロカプセルを露出することなく樹脂による被覆状態を維持できるため、マイクロカプセルが溶剤で劣化することがなくなり、色調が変化したり変色特性を阻害することなく、安定した筆跡が得られるものとなる。
尚、本発明において、前記熱可塑性樹脂の有機溶剤に対する溶解度とは、インキ組成物に適用される溶剤100gに対して熱可塑性樹脂を溶解できる最大量(g)を示すものである。
特に、前記熱可塑性樹脂は、軟化点が60℃〜220℃、好ましくは70℃〜200℃のものが好適に用いられる。軟化点が60℃未満では輸送時や保管時等に高温に晒されて粒状体間で融着してしまう虞があり、220℃を超えると低温定着性(家庭で可能な熱融着性)を損なうことがある。
尚、前記熱可塑性樹脂は、前述のマイクロカプセルの壁膜で用いるものとは異なる材質が適用される。
前記粉砕には、シュレッダー、ジョークラッシャー、カッターミル、ハンマークラッシャー、ハンマーミル、スタンプミル、ローラーミル、ハンマークラッシャー、ボールミル、ピンミル、スクリーンミル、チューブミル、振動ボールミル、撹拌ミル、遊星ミル、ジェットミル、乳鉢等の機械(器具)を一種または二種以上用いて、所望の粒子径に粉砕される。
前記樹脂被覆顔料の粒子径としては、平均粒子径が0.1μm以上20μm以下、好ましくは0.3μm以上15μm以下であることが好ましい。
粒子径が0.1μm未満では着色状態の色濃度が淡化し易くなり、20μmを超えると筆記具に内蔵した際、筆記時のインキ吐出性を阻害する虞がある。
前記範囲とすることで、マイクロカプセル全体を熱可塑性樹脂で確実に被覆することができると共に、樹脂被覆されたマイクロカプセルの変色状態を外側から視認できる状態を維持できる。
前記紫外線吸収剤は、熱可塑性樹脂に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%の範囲で含有される。
前記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤等の汎用のもののうち、沸点が使用する熱可塑性樹脂の融点より高いものが適用できる。
前記範囲とすることで、インキ状態等で長期静置した場合であっても色別れすることがなく、マイクロカプセル消色時にも高濃度の色調を発現できるものとなる。
前記非熱変色性着色剤としては汎用の着色剤が適用でき、例えば、一般染料や一般顔料の他、天然雲母、合成雲母、偏平ガラス片、酸化珪素、又は薄片状酸化アルミニウムから選ばれる材料を芯物質として金属酸化物で被覆した金属光沢顔料或いはコレステリック液晶型光輝性顔料等の光輝性顔料、蛍光染料や、各種蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料等が使用できる。
前記沸点範囲の有機溶剤としては、例えば、n−オクタン、イソオクタン、n−ヘプタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。
その他、助溶剤として、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコールアルキル(C1〜3)エーテル、エチルベンゼン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、炭酸ジメチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の低沸点溶剤や、エチレングリコールモノフェニルエーテル等の高沸点溶剤を用いることができる。
前記有機溶剤は一種又は二種以上を混合して用いてもよく、インキ組成中40〜90重量%の範囲で用いられる。
具体的には、ケトン樹脂、ケトン−ホルムアルデヒド樹脂、アミド樹脂、アルキッド樹脂、ロジン変性樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルピロリドン、α−及びβ−ピネン・フェノール重縮合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂等を例示できる。
前記添加剤はいわゆる慣用的添加剤と呼ばれるもので、公知の化合物から適宜必要に応じて使用することができる。
酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ノルジヒドロキシトルエン、フラボノイド、ブチルヒドロキシアニソール、アスコルビン酸誘導体、α−トコフェロール、カテキン類等が使用できる。
紫外線吸収剤としては、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル5′−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、p−安息香酸−2−ヒドロキシベンゾフェノン等が使用できる。
消泡剤としては、ジメチルポリシロキサン等が使用できる。
前記剪断減粘性付与剤としては、従来公知の化合物を用いることが可能であり、例えば、架橋型アクリル樹脂、架橋型アクリル樹脂のエマルションタイプ、架橋型N−ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体、非架橋型N−ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体非架橋型N−ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体の水溶液、水添ヒマシ油、脂肪酸アマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス等のワックス類、ステアリン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、オクチル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム等の脂肪酸金属塩、ジベンジリデンソルビトール、デキストリン脂肪酸エステル、N−アシルアミノ酸系化合物、スメクタイト系無機化合物、モンモリロナイト系無機化合物、ベントナイト系無機化合物、ヘクトライト系無機化合物、シリカ等が例示できる。
マーキングペンに充填する場合、マーキングペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップを筆記先端部に装着し、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、筆記先端部にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させる構造、軸筒内部に直接インキを収容して、弁機構により前記筆記先端部に所定量のインキを供給する構造のマーキングペンが挙げられる。
ボールペンに充填する場合、ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、筆記先端部にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させる構造、軸筒内にインキ組成物を充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に装着したチップに連通しており、更にインキの端面には逆流防止用に液栓や固体栓等のインキ追従体が密接している構造のボールペンを例示できる。
また、前記不揮発性液体及び/又は難揮発性液体には、ゲル化剤を添加して好適な粘度まで増粘させることが好ましく、表面を疎水処理したシリカ、表面をメチル化処理した微粒子シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイトやモンモリロナイトなどの粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、脂肪酸アマイド、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、セルロース系化合物を例示できる。
更に、前記液状のインキ逆流防止体組成物と、固体のインキ逆流防止体を併用することもできる。
尚、マイクロカプセルを被覆する熱可塑性樹脂の溶解度とは、各インキ組成に用いられる有機溶剤100gに対して溶解できる最大量(g)を示すものであり、実施例においては、対象となる溶剤100gに、マイクロカプセルを被覆する熱可塑性樹脂の単体を入れて20℃で1時間放置した後、JIS P3801 2種で規定される濾紙を用いて濾過した際、濾紙上に熱可塑性樹脂が残らなくなる量(g)の最大値である。
可逆熱変色性マイクロカプセルAの調製
(イ)成分として2−(2−クロロアミノ)−6−ジブチルアミノフルオラン4.5部、(ロ)成分として2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル50部からなる可逆熱変色性組成物を用い、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー25.0部を用いることでマイクロカプセルAを作製した。
前記マイクロカプセルAの平均粒子径は0.7μm、完全消色温度は63℃であり、完全発色温度は0℃であり、温度変化により黒色から無色に変色する。
前記マイクロカプセルA15部、黄色顔料0.1部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤2部、軟化点が130℃のポリスチレン100部、離型剤として低分子量ポリエチレン3部を混合した後、2軸エクストルーダーにより混練温度180℃にて溶融混練し、冷却固化後にサンプルミル及びジェットミルを用いて粉砕、分級して平均粒径2μmの樹脂被覆顔料1を得た。前記樹脂被覆顔料1はマイクロカプセル2の外周面を熱可塑性樹脂層3で被覆するものであり、内包する可逆熱変色性マイクロカプセル2の粒子径と樹脂被覆顔料1の外径の比率は1:3であった。
(イ)成分として2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル−スピロ[5H−[1]ベンゾピラノ[2,3−g]ピリミジン−5,1′(3′H)−イソベンゾフラン]−3−オン1.5部、(ロ)成分として2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてピメリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル50部からなる可逆熱変色性組成物を用い、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー25.0部を用いることでマイクロカプセルBを作製した。
前記マイクロカプセルBの平均粒子径は1.5μm、完全消色温度は78℃であり、完全発色温度は−11℃であり、温度変化によりピンク色から無色に変色する。
前記マイクロカプセルB15部、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤1部、軟化点が130℃のポリスチレン樹脂100部、離型剤として金属セッケン3部を混合した後、2軸エクストルーダーにより混練温度180℃にて溶融混練し、冷却固化後にサンプルミル及びジェットミルを用いて粉砕、分級して平均粒径3μmの樹脂被覆顔料1を得た。前記樹脂被覆顔料1はマイクロカプセル2の外周面を熱可塑性樹脂層3で被覆するものであり、内包する可逆熱変色性マイクロカプセル2の粒子径と樹脂被覆顔料1の外径の比率は1:2であった。
(イ)成分として3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド1部、(ロ)成分として2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてピメリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル50部からなる可逆熱変色性組成物を用い、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー25.0部を用いることでマイクロカプセルCを作製した。
前記マイクロカプセルCの平均粒子径は2.5μm、完全消色温度は79℃であり、完全発色温度は−10℃であり、温度変化により青色から無色に変色する。
前記マイクロカプセルC15部、ピンク色顔料2部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤5部、軟化点が120℃のポリエチレン樹脂100部、離型剤として低分子量ポリエチレン3部を混合した後、2軸エクストルーダーにより混練温度170℃にて溶融混練し、冷却固化後にサンプルミル及びジェットミルを用いて粉砕、分級して平均粒径7μmの熱溶融型可逆熱変色性粒状体1を得た。前記可逆熱変色性粒状体1はマイクロカプセル2の外周面を熱可塑性樹脂層3で被覆するものであり、内包する可逆熱変色性マイクロカプセル2と樹脂被覆顔料1の外径の比率は1:3であった。
樹脂被覆顔料A作製時にポリスチレン樹脂をポリビニルピロリドン〔BASFジャパン社製、商品名:ルビスコールK−90〕に変えた以外は同様の組成及び方法で調整することで樹脂被覆顔料Dを得た。
樹脂被覆顔料Cに用いたマイクロカプセルCを樹脂被覆することなく着色剤として適用することで平均粒子径2.5μmのマイクロカプセル顔料を得た。
(1)積水化学(株)製、商品名:BL−S(計算分子量23000のポリビニルブチラール)
(2)積水化学(株)製、商品名:BL−1(計算分子量19000のポリビニルブチラール)
(3)日立化成(株)製、商品名:ハイラック110H
(4)第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフAL
(5)日光ケミカルズ(株)製、商品名:PEMULEN TR−1
前記実施例と比較例の組成物において、各成分を混合して、25℃でディスパーにて3時間攪拌することで各インキを調製した。
ポリブテン47部、鉱油47部、脂肪酸デキストリン6部を三本ロールミルにて混練してインキ逆流防止体を得た。
前記実施例1乃至4及び比較例1,2のインキ組成物を、直径0.7mmの超硬ボールを抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたボールペンレフィルに充填し、その後端に前記インキ逆流防止体を配設した後、前記ボールペンレフィルを外軸(キャップ式)に組み込み、試料ボールペンを作製した。尚、前記外軸後端部には摩擦部材としてSEBS樹脂を装着してなる。
前記実施例5及び比較例3のインキ組成物を、軸筒内のインキ吸蔵体に充填し、先端部にインキ吸蔵体と連通するアクリル繊維束を樹脂で結着したチップを設けることで試料用マーキングペンを作製した。尚、前記外軸後端部には摩擦部材としてSEBS樹脂を装着してなる。
筆記試験
各ボールペン及びマーキングペンをペン先上向き状態で保持し、40℃の恒温槽に30日間放置した後、旧JIS P3201筆記用紙Aに手書きで螺旋状の丸を連続筆記した際の筆跡(着色状態)の状況を目視により観察し、初期の筆跡と比較した。更に付属の摩擦体で摩擦した際の筆跡の状態を目視により観察した。
筆記試験
・筆跡
○:顔料が劣化することなく初期と同等の筆跡が得られる。
×:筆跡が淡色化又は白化している。
・摩擦後
○:直ちに消色又は変色する。
×:残色が生じる、又は変色しない。
t2 可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の発色開始温度
t3 可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の消色開始温度
t4 可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の完全消色温度
ΔH ヒステリシス幅
1 樹脂被覆顔料
2 可逆熱変色性マイクロカプセル
3 熱可塑性樹脂層
Claims (8)
- (イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセルが熱可塑性樹脂に被覆されてなる樹脂被覆顔料と、有機溶剤とからなり、前記熱可塑性樹脂の有機溶剤に対する20℃での溶解度が0.2以下であり、前記樹脂被覆顔料が熱可塑性樹脂中に可逆熱変色性マイクロカプセルを混練した後に粉砕することで得られ、前記樹脂被覆顔料は、内包する可逆熱変色性マイクロカプセルの粒子径に対して、可逆熱変色性樹脂被覆顔料の外径が1:1.1〜1:100の範囲である筆記具用可逆熱変色性油性インキ組成物。
- 前記熱可塑性樹脂の軟化点が70℃以上200℃以下である請求項1に記載の筆記具用可逆熱変色性油性インキ組成物。
- 前記可逆熱変色性マイクロカプセルの完全消色温度が50℃〜150℃の範囲にある請求項1又は2に記載の筆記具用可逆熱変色性油性インキ組成物。
- 前記樹脂被覆顔料の平均粒子径が0.3μm以上15μm以下である請求項1乃至3のいずれかに記載の筆記具用可逆熱変色性油性インキ組成物。
- 前記可逆熱変色性マイクロカプセルの平均粒子径が0.1μm以上3μm以下である請求項1乃至4のいずれかに記載の筆記具用可逆熱変色性油性インキ組成物。
- 前記請求項1乃至5のいずれかに記載の筆記具用可逆熱変色性油性インキ組成物を内蔵してなる筆記具。
- 摩擦部材を備えてなる請求項6に記載の筆記具。
- ボールペンである請求項6又は7に記載の筆記具。
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