JP5804738B2 - 窯業系サイディング材用塗料及び窯業系サイディング材 - Google Patents
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これらを防止する手段として窯業系サイディング材の表面や裏面に防湿性塗料を塗装することが一般的に行われている。この防湿性塗料を塗装することは、セメント成分を減らし木質成分などを増やして、軽量化やコストを抑えることが出来るという利点もある。その一方で、木質成分などを増やし過ぎて防火性が低下するという欠点を招くこともある。そのため、この防火性が、更には防湿塗料にまで求められるというのが現状である。
(1)加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、
(2)加熱開始後20分間に貫通亀裂・穴等の変形が試験体になく、
(3)加熱開始後20分間の200kw/m2を超える最高発熱速度が10秒以上継続しない場合には、「不燃材料」と判定される。
(1)加熱開始後10分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、
(2)加熱開始後10分間に貫通亀裂・穴等の変形が試験体になく、
(3)加熱開始後10分間の200kw/m2を超える最高発熱速度が10秒以上継続しない場合には、「準不燃材料」と判定される。
(1)加熱開始後5分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、
(2)加熱開始後5分間に貫通亀裂・穴等の変形が試験体になく、
(3)加熱開始後5分間の200kw/m2を超える最高発熱速度が10秒以上継続しない場合には、「難燃材料」と判定される。
特許文献1には特定の塩化ビニリデン高分子ラテックスに関し、難燃性、耐光変色性に優れることが記載されているが、耐光熱性に対しては十分な性能ではなかった。
光や熱に対する耐変色性に優れる塩化ビニリデン系ラテックスが特許文献2に開示されており、特定の構成モノマーとすることで変色が少ないものであるが、窯業系サイディング材に要求される耐光熱性を満足するものではなかった。
一方、特許文献3には塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスを用いた建材用防湿水性塗料組成物が、また特許文献4には建築用ボード防湿ラテックスが開示されている。これらの塗料組成物は特定の塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスや特定の顔料比率からなり、低コストで良好な防湿性や耐ブロッキング性を示している。しかしながら、この塗料組成物も窯業系サイディング材用としての密着性や防火性が十分でないばかりでなく、光や熱によって黄色く変色するという問題があった。
(1)本発明の第1は、塩化ビニリデン単量体(A)70〜92質量部と、これと共重合可能な1種以上のその他のビニル系単量体(B)8〜30質量部と、からなる塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスを主成分とする窯業系サイディング材用塗料である。
(2)本発明の第2は、上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスの固形分100質量部に対して抗酸化剤を0.05〜2質量部含有する(1)記載の窯業系サイディング材用塗料である。
(3)本発明の第3は、上記その他のビニル系単量体(B)の少なくとも1種がアクリル酸−2−ヒドロキシエチルであって、その量が上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスの固形分100質量部に対して0.5〜3質量部である(1)又は(2)に記載の窯業系サイディング材用塗料である。
(4)本発明の第4は、上記その他のビニル系単量体(B)の少なくとも1種がアクリロニトリル単量体であって、その量が上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスの固形分100質量部に対して1〜10質量部である(1)〜(3)に記載の窯業系サイディング材用塗料である。
(5)本発明の第5は、窯業系サイディング材表面に塗布量として300g/m2塗装して乾燥したボードをISO5660に準拠したコーンカロリーメーターによる燃焼試験で輻射熱50kW/m2において測定した時の最高発熱速度が20kw/m2以下である(1)〜(4)に記載の窯業系サイディング材用塗料である。
(6)本発明の第6は、塩化ビニリデン単量体(A)70〜92質量部と、これと共重合可能な1種以上のその他のビニル系単量体(B)8〜30質量部と、からなる塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスを主成分とする塗料を塗布した窯業系サイディング材である。
(7)本発明の第7は、上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスの固形分100質量部に対し、抗酸化剤を0.05〜2質量部含有する塗料を塗布した(6)記載の窯業系サイディング材である。
(8)本発明の第8は、上記その他のビニル系単量体(B)の少なくとも1種がアクリル酸−2−ヒドロキシエチルであって、その量が上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスの固形分100質量部に対して0.5〜3質量部である塗料を塗布した(6)又は(7)に記載の窯業系サイディング材である。
(9)本発明の第9は、上記その他のビニル系単量体(B)の少なくとも1種がアクリロニトリル単量体であって、その量が上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスの固形分100質量部に対し1〜10質量部である塗料を塗布した(6)〜(8)に記載の窯業系サイディング材である。
(10)本発明の第10は、窯業系サイディング材表面に塗布量として300g/m2塗装して乾燥したボードをISO5660に準拠したコーンカロリーメーターによる燃焼試験で輻射熱50kW/m2において測定した時の最高発熱速度が20kw/m2以下である塗料を塗布した(6)〜(9)に記載の窯業系サイディング材である。
本発明の塩化ビニリデン単量体(A)の量は70〜92質量部であり、好ましくは80〜92質量部である。70質量部以上で防湿性と防火性が向上するばかりでなく、結晶化により塗膜のタック性が残らないため、ライン塗装したあとの窯業系サイディング材を積み重ね時に発生する窯業系サイディング材同士の固着現象、いわゆるブロッキングを防止することができる。一方、92質量部以下にすることで窯業系サイディング材との密着性を発現させ、光や熱による塗膜の変色も少なくすることができる。
また、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基を有する単量体も同様に挙げられる。さらに、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどのエチレン系α,β−不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエチレン系α,β−不飽和カルボン酸エポキシ基含有アルキルエステル、アクリルアミド等のエチレン系α,β−不飽和カルボン酸のアミド化合物、塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル、ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル、酢酸アリル等のアリルエステル、アリルメチルエーテル等のアリルエーテル等が挙げられ、スチレン系化合物も挙げられる。
また、さらには、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸等の不飽和カルボン酸含有ビニル系単量体も挙げられる。
フェノール系酸化防止剤として、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル−フェノール(BHT)、3−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(イルガノックス1076)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(イルガノックス1330)、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート(イルガノックス245)、α、β、γ、δの各種トコフェロール及びその混合物、テトラキス−[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(イルガノックス1010)、2,2'−メチレンビス(6−tert−ブチル−p−クレゾール)(スミライザーMDP−S)、2−tert−ブチル−6−(3−tert−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(スミライザーGM)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン(アデカスタブAO−30)、6,6’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ブチリデンジ−m−クレゾール(アデカスタブAO−40)等を挙げることができる。特に、好ましいものとしてオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを挙げることができる。さらに好ましくは2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノールとオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートの混合割合(重量比)が99/1〜50/50としたものであり、より好ましくは90/10〜70/30(イルガスタブMBS11)である。
コーンカロリーメーター((株)東洋精機製作所製 CONE III)を用いて、窯業系サイディング材表面に塗料をスプレー塗装機にて300g/m2の塗布量で塗装した乾燥ボードを窯業系サイディング材の塗装面がヒーター側になるように保持フレーム上に乗せ、ISO5660に準拠した発熱量試験を行い、輻射熱条件50kW/m2で20分間加熱して最高発熱速度と総発熱量を測定した。
JIS−Z−0208(カップ法)に準拠した方法にて、40℃、90%RHの条件で測定した。
分光式色差計(日本電色工業(株)製Z−300A)を用いて、60℃、1000時間加熱処理を行い、加熱前後の塗膜表面の色調を測定してその色差(ΔE)を測定した。
JIS K 5600−5−6の付着性(クロスカット法)に準拠した方法にて測定した。なお試験結果の分類は以下とした。
0:カットの縁が完全で滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。
1:カットの交差点における塗膜の小さなはがれがある。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を下回る。
2:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが15%を下回る。
3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に15%を超えるが35%を下回る。
4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は数か所の目が部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に35%を超えるが65%を下回る。
5:はがれの程度が分類4を超えている。
10cm角、16mm厚みの窯業系サイディング材表面にスプレー塗装機にて塗布量として300g/m2で塗装し乾燥した。窯業系サイディング材の塗装面どうしを重ねて恒温恒湿槽に入れ、槽内温度40℃、相対湿度90%の環境下、窯業系サイディング材に10kg/cm2荷重を掛けて、30分間放置後の窯業系サイディング材どうしの固着状態を調べた。なお試験結果の分類は以下とした。
◎:固着なし
○:僅かに固着はあるが簡単に剥がれる。
×:完全に固着して剥がそうとしても剥がれない。
塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスを下記の方法により製造した。ガラスライニングを施した耐圧反応器中に水100部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.20部、過硫酸ナトリウム0.1部を仕込み、脱気を行った後、内容物の温度を55℃に保った。別の容器に塩化ビニリデン(VDC)82.0部、塩化ビニル(VC)12.0部、アクリロニトリル(AN)3部、およびアクリル酸ブチル(BA)2.0部、アクリル酸(AA)1.0部を計量混合してモノマー混合物を作成した。該モノマー混合物のうち2部を上記耐圧反応器中に一括添加し、内圧が降下するまで重合した。続いて、単量体混合物98部を12時間にわたって連続的に定量圧入した。並行して、アルキルスルホン酸ソーダ1.0部も10時間にわたって連続的に定量圧入した。この間内容物を55℃に保ち、内圧が十分に降下するまで反応を進行させた。重合収率は99.9%であった。重合収率は、ほぼ100%なので、共重合体の組成は仕込み比にほぼ等しい。かくして得られたラテックスの未反応モノマーをエバポレーターにて除去した後、樹脂固形分を50%に調整した。
<窯業系サイディング材用塗料の調製>
純水40.0部、イルガノックスMBS11(抗酸化剤:BASFジャパン(株)製)1部、BYK−154(分散剤:BYK Chemie Gmbh製)1部、エマルゲンPP−290(分散剤:花王(株)製を30%水溶液に調整)3部、SNデフォーマー5031(消泡剤:サンノプコ(株)製)0.4部を容器に仕込み、VMA GETZMANN GmbH社製 DISPERMAT GMBH−D−51580にて毎分3000回転で20分間攪拌して分散液を調製した。ついでタルクMS(体質顔料:日本タルク(株)製)30部、CR−97(顔料:石原産業(株)社製)18部を上記、分散液容器に仕込み、VMA GETZMANN GmbH社製 DISPERMAT GMBH−D−51580にて毎分10000回転で20分間攪拌して顔料分散液を調製した。さらに上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックス100部、SNシックナー615 10%水溶液(増粘剤:サンノプコ(株)製)5部を仕込みVMA GETZMANN GmbH社製 DISPERMAT GMBH−D−51580にて毎分3000回転で10分間攪拌して窯業系サイディング材用塗料を得た。
窯業系サイディング材用塗料の調製時に抗酸化剤(イルガノックスMBS11:BASFジャパン(株)製)を0.5部配合した以外は実施例1と全く同様とし、評価結果を表−2に示した。
塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックス製造時のモノマー組成と窯業系サイディング材用塗料の調製時の抗酸化剤(イルガノックスMBS11:BASFジャパン(株)製)を表−1に示す通りとした以外は実施例1と全く同様とし、評価結果を表−2に示した。
表中、VDCは塩化ビニリデン、VCは塩化ビニル、ANはアクリロニトリル、BAはアクリル酸ブチル、2HEAはアクリル酸−2−ヒドロキシエチル、AAはアクリル酸を示す。
Claims (10)
- 塩化ビニリデン単量体(A)80〜92質量部と、これと共重合可能な1種以上のその他のビニル系単量体(B)であって、塩化ビニルと、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル及び/又はアクリロニトリルを含む上記単量体(B)8〜20質量部と、からなる塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスを主成分とする窯業系サイディング材用塗料。
- 上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスの固形分100質量部に対して抗酸化剤を0.05〜2質量部含有する請求項1に記載の窯業系サイディング材用塗料。
- 上記その他のビニル系単量体(B)の少なくとも1種がアクリル酸−2−ヒドロキシエチルであって、その量が上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスの固形分100質量部に対して0.5〜3質量部である請求項1又は2に記載の窯業系サイディング材用塗料。
- 上記その他のビニル系単量体(B)の少なくとも1種がアクリロニトリル単量体であって、その量が上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスの固形分100質量部に対して1〜10質量部である請求項1〜3に記載の窯業系サイディング材用塗料。
- 窯業系サイディング材表面に塗布量として300g/m2塗装して乾燥したボードをISO5660に準拠したコーンカロリーメーターによる燃焼試験で輻射熱50kW/m2において測定した時の最高発熱速度が20kw/m2以下である請求項1〜4に記載の窯業系サイディング材用塗料。
- 塩化ビニリデン単量体(A)80〜92質量部と、これと共重合可能な1種以上のその他のビニル系単量体(B)であって、塩化ビニルと、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル及び/又はアクリロニトリルを含む上記単量体(B)8〜20質量部と、からなる塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスを主成分とする塗料を塗布した窯業系サイディング材。
- 上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスの固形分100質量部に対して、抗酸化剤を0.05〜2質量部含有する塗料を塗布した請求項6に記載の窯業系サイディング材。
- 上記その他のビニル系単量体(B)の少なくとも1種がアクリル酸−2−ヒドロキシエチルであって、その量が上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスの固形分100質量部に対して0.5〜3質量部である塗料を塗布した請求項6又は7に記載の窯業系サイディング材。
- 上記その他のビニル系単量体(B)の少なくとも1種がアクリロニトリル単量体であって、その量が上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスの固形分100質量部に対して1〜10質量部である塗料を塗布した請求項6〜8に記載の窯業系サイディング材。
- 窯業系サイディング材表面に塗布量として300g/m2塗装して乾燥したボードを、ISO5660に準拠したコーンカロリーメーターによる燃焼試験で輻射熱50kW/m2において測定した時の最高発熱速度が20kw/m2以下である塗料を塗布した請求項6〜9に記載の窯業系サイディング材。
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