JP5804624B2 - 炭素、鉄及びセリウムを含有する触媒の製造方法 - Google Patents

炭素、鉄及びセリウムを含有する触媒の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、炭素、鉄及びセリウムを含有する触媒の製造方法に関する。
内燃機関から排出される排気ガスを浄化するために、主に白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)等が担体上に担持された三元触媒が使用されている。また、アンモニア、HS、ホルムアルデヒド等の悪臭有害物質やベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン等の揮発性有機化合物(VOC)、環境負荷物質を酸化あるいは還元するために白金触媒が使用されている。しかし、Ptは非常に高価であり、埋蔵量も少なくかつ偏在しているため、長期に亘って安定的な供給がなされない可能性がある。そのため、Ptに代わる安価で長期的に安定供給が可能な高活性触媒が求められている。
例えば、特許文献1には、金属M元素(Fe)と金属X元素(Ce、Zr、Al、Ti、Mg)を含み、還元雰囲気でMとXの複合酸化物を形成することで酸素を放出し、酸化雰囲気で該複合酸化物が酸化されM酸化物とX酸化物を形成することで酸素を吸蔵するOSC能を備えたことを特徴とする金属複合体が開示されている。また、特許文献2には、セリア−ジルコニア複合酸化物、及び前記セリア−ジルコニア複合酸化物中に分散して少なくとも部分的に固溶している酸化鉄、を含む、排ガス浄化触媒が開示されている。特許文献3には、アンモニア、硫化水素、ホルムアルデヒド、トルエン等の複合有害臭気物質を効果的に吸着消臭することができる吸着消臭材に使用する触媒材料として、微粉状の金属酸化物、金属フタロシアニン、酸化チタン、白金、金、または酸化銅が開示されている。特許文献4には、ガス状または蒸気状のVOCを酸化し、かつNOxを選択還元する触媒の製造方法として、担体上に多段結晶化工程により、希土類元素と重金属のコバルト又はマンガンとの触媒活性物質の結晶層を形成する方法が開示されている。特許文献5には、酸化鉄を特定の温度で一酸化炭素と反応させ、高効率で遊離炭素の少ない炭化鉄(FeC)触媒を気相法で生成し、有機合成触媒として利用する方法が開示されている。
特開2004−160433号公報 特開2008−18322号公報 特開2003−70887号公報 特開2008−86987号公報 USP3,885,023号公報
しかしながら、前記特許文献のいずれの触媒とも、触媒活性化温度が高く、触媒作用効率の点で満足できるものではなかった。
本発明の目的は、Ptを用いずとも、CO、HCを酸化し、NOxを還元する排気ガスを浄化することが可能な触媒について、浄化開始温度が低くかつ浄化効率の高い触媒を提供することにある。また、触媒を排気ガスの熱だけで活性発現温度まで加熱するためには時間がかかり、その間浄化できないという問題、及び浄化効率が低下するという問題を解決することである。
また、本発明の他の目的は、たとえばアンモニア、HS、ホルムアルデヒド等の有害物質、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン等のVOC、環境負荷物質の酸化または還元による無害化、あるいは酸、アルコール等の化学薬品の製造に使用できる、酸化触媒及び還元触媒を提供することである。
これらの問題を解決するため、発明者らは、炭素、鉄化合物及びセリウム化合物を含有する組成物を加熱して得られる触媒で、炭素原子、鉄原子、及びセリウム原子の構成質量分率(酸素原子を計算に入れていない率)がそれぞれ、1〜70%、5〜65%、及び5〜90%である触媒が酸化触媒機能、還元触媒機能を有し、排気ガス浄化触媒としても活性が高いことを見出し、特許出願を行った。(特願2010−176617)しかしながら、前記特許出願により得られる触媒は、粉末状あるいはその凝集状態にあり、触媒本来の性能を十分に発揮させるためには、必要に応じて粉砕又は再分散させて平均粒子径を細かくし、比表面積を増大させる等の処理を行った後、触媒担体に担持させる、あるいは触媒粉末をハニカム体に保持し、反応物との接触を十分に行わせる等の処理が必要であった。
上記課題を解決する手段として、鉄とセリウム系触媒の活性向上について鋭意検討した結果、鉄化合物及びセリウム化合物を酸化鉄及び酸化セリウムとした後、一酸化炭素ガスで炭素化することにより、酸化触媒機能、還元触媒機能を有し、排気ガス浄化触媒としても活性の高い触媒を得ることができ、本発明を完成するに至った。本発明の製造方法により得られる触媒の組成は基本的には前記特許出願(特願2010−176617)と同じであるが、本発明の製造方法に従って、本触媒を多孔質担体上に直接生成させることにより、後処理を行うことなく、活性の高い触媒を利便性良く使用することができる。さらに、多孔質担体として、特開2003−144920号公報で開示されているアルミナ担体を使用し通電加熱することにより、短時間で触媒活性を発現させることができる。
本発明者らが到達した発明は、
(1)鉄及びセリウムを含有する組成物を酸化雰囲気下で加熱して酸化物とした後、純度が高い一酸化炭素のみと反応させて製造することを特徴とする、炭素、鉄、セリウムを含有する触媒の製造方法。
(2)炭素原子、鉄原子、及びセリウム原子の構成質量分率(酸素原子を計算に入れていない率)がそれぞれ、1〜70%、5〜65%、及び5〜90%であることを特徴とする前記(1)記載の触媒。
(3)耐熱性触媒担体上に、炭素原子、鉄原子、及びセリウム原子の構成質量分率(酸素原子を計算に入れていない率)がそれぞれ、1〜70%、5〜65%、及び5〜90%である触媒を担持させたことを特徴とする前記(1)及び(2)記載の触媒。
(4)耐熱性触媒担体が、金属表面にアルミニウム層を設けたクラッド材の、前記アルミニウム表面に多孔質アルマイト層を有することを特徴とする前記(1)〜(3)記載の触媒。
(5)耐熱性触媒担体が、通電加熱により、触媒が活性を示す温度に加熱されることを特徴とする前記(1)〜(4)記載の触媒。
(6)耐熱性担体上に鉄及びセリウムを含有する層を設けた後、空気中で加熱して酸化物とし、続いて、純度が高い一酸化炭素のみの雰囲気下で加熱することを特徴とする前記(1)〜(5)記載の触媒の製造方法。


本発明製造方法により得られる触媒は、炭素原子、鉄原子、及びセリウム原子を含有する酸化・還元触媒であり、CO、HCを酸化し、NOxを還元する排気ガスを浄化することが可能でその浄化開始温度が低くかつ浄化効率が高く、しかも、アンモニア、HS、ホルムアルデヒド等の有害物質、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン等のVOC、環境負荷物質の酸化または還元による無害化、あるいは酸、アルコール等の化学薬品の製造に使用でき、酸化触媒、還元触媒、排ガス浄化触媒等として機能する。
本発明の触媒の触媒活性が高くなる理由は定かではないが、鉄原子とセリウム原子が存在する系を500〜600℃に加熱し、COを供給すると、酸化セリウム及び又は酸化セリウム・炭素反応物表面に、炭化鉄(FeC)が結合した構造が形成され、FeCの触媒機能が促進されると考えられる。また、酸化還元反応に伴う電子の授受により、鉄原子は原子価を2価(FeO)と3価(Fe)に、セリウム原子は原子価を3価(Ce)と4価(CeO)に変化させることができるので、酸化雰囲気では高原子価となり、還元雰囲気下では低原子価となることにより酸素を吸脱着し酸化還元反応を促進していると考えられる。そこに鉄及びセリウムよりも触媒活性の低い炭素を添加すると、その3成分触媒は、鉄及びセリウムからなる触媒より活性が高くなることから、炭素原子が、上記、鉄原子、セリウム原子の電子の授受に何らかの相互作用を及ぼしているためと考えられる。
本発明の触媒の製造方法として、酸化鉄及び酸化セリウムの比率を特定比率で含有する組成物を加熱し、一酸化炭素ガスとの反応時間をコントロールすることにより、前記質量分率(酸素原子を計算に入れていない率)の炭素原子、鉄原子、及びセリウム原子からなる触媒を得ることができる。また、この反応を多孔質の触媒担体上で行わせることにより、触媒の利便性を向上させ、さらに、担体として通電加熱可能なアルマイト触媒担体を使用することにより、短時間で触媒活性を示す温度まで加熱することができ、触媒を効率良く使用することができる。
本発明の製造方法により得られる触媒は、酸化触媒又は還元触媒として用いることができ、使用する温度は200℃以上、900℃以下であることが好ましく、200℃以上であると、酸化触媒の活性が向上し、COやHCの酸化能力が格段に向上する。本発明の還元触媒についても、使用する温度は200℃以上、900℃以下であることが好ましく、200℃以上であると、還元触謀の活性が向上し、NOxを還元する能力が格段に優れるようになる。酸化触媒及び還元触媒の使用温度が900℃を超えると、触媒組成の変化によると考えられる触媒機能の低下が見られる。
本発明の触媒(酸化・還元触媒)を排気ガス浄化触媒として使用する場合、エンジン直下型では約800℃に至ることもあるが、床下型でも常時約550℃の温度下に保たれるため、十分その機能を発揮することができる。還元触媒機能を発揮できる組成範囲は、酸化触媒機能を発揮する組成範囲より狭い傾向があるので、排気ガス浄化触媒として使用する場合、還元触媒機能を発揮できる組成範囲の触媒を使用することが望ましい。また、炭素はこのような高温では酸化されるため耐熱性が無いとして使用されることは無かった。しかしながら、炭素、鉄、セリウム、酸素の化合物を形成することにより、驚くべきことに酸化されにくくなり耐熱性が向上し、床下型はもちろん直下型としても十分使用できることが分かった。また、エンジンの始動時は、触媒の温度が低いため、触媒の排気ガス浄化能力は低く、排気ガスの熱だけで触媒の活性温度まで温まるには数分かかる問題があるが、通電加熱型のアルマイト触媒担体上に本触媒を担持させたものは、バッテリーから通電加熱することができるので、十秒前後で触媒活性を発現させることができる(図10参照)。
本発明によれば、炭素、鉄、及びセリウムを特定量含有する化合物は、CO及びHCを酸化し、NOxを還元することができ、しかも多孔質触媒担体上に触媒を生成させれば利便性良く使用でき、さらに通電過熱型アルマイト触媒担体に担持させて使用することにより、短時間で排気ガスを浄化可能となる排気ガス浄化触媒を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態で用いる酸化触媒、還元触媒又は排気ガス浄化触媒を構成する触媒は、鉄化合物、及びセリウム化合物を含有する組成物を空気中で加熱して鉄及びセリウムの酸化物を生成し、該酸化物を一酸化炭素気流中で500℃〜600℃に加熱することにより得られる、炭素原子、鉄原子、セリウム原子の構成質量分率(酸素原子を計算に入れていない率)がそれぞれ、1〜70%、5〜65%、及び5〜90%である組成の触媒である。
本発明に使用できる鉄化合物としては、鉄の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、硝酸塩、亜硝酸塩、炭酸塩、硫化物、硫酸塩、亜硫酸塩、錯体、ギ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、安息香酸塩等の有機酸塩、錯体、炭化鉄、及びフェロシアン化鉄等の鉄錯体、鉄フタロシアンニン等の群の中から選ばれた少なくとも1種類以上の鉄化合物が挙げられる。鉄化合物は、溶媒に溶解して、あるいは微粉末の分散液として多孔質触媒担体に含浸することが望ましい。溶媒は水が取扱い上便利であるが、アルコール系の溶剤を使用すれば表面張力が低いため、多孔質性の高い触媒担体を使用する場合、細孔に浸透しやすいため適している。また、鉄塩を溶解して使用する場合、多孔質体中に必要量の触媒を生成させるためには高濃度で溶媒に溶解させることが望ましい。一般的には0.1〜3mol/lの濃度が望ましく、濃度が高すぎると溶液の粘度が高くなり、多孔質体中に含浸しくなるため、多孔質体から剥離し易くなる問題がある。
微粉末の分散液として使用する場合は、多孔質触媒担体の細孔の内部に入って担持され、触媒活性を発揮するためには表面積を増大させる必要があるため、10μm以下の微粒子に粉砕して使用する必要がある。
また、本発明に使用できる鉄化合物の少なくとも一部を、ニッケル化合物、銅化合物、コバルト化合物の少なくとも1種類の化合物で置換することができる。ニッケル化合物、銅化合物及びコバルト化合物としては、ニッケル、銅及びコバルトのそれぞれの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、硝酸塩、亜硝酸塩、炭酸塩、硫化物、硫酸塩、亜硫酸塩、錯体、ギ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、安息香酸塩等の有機酸塩、炭化物、及びフェロシアン化物等の錯体、フタロシアンニン化合物等の群の中から選ばれた少なくとも1種類以上の化合物を使用することができる。これらのニッケル化合物、銅化合物、コバルト化合物は、鉄化合物の場合と同様にして多孔質触媒担体に含浸させることができる。
本発明で使用できるセリウム化合物としては、セリウムの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、硝酸塩、亜硝酸塩、炭酸塩、硫化物、硫酸塩、亜硫酸塩、錯体、ギ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、安息香酸塩等の有機酸塩等の群の中から選ばれた少なくとも1種類以上のセリウム化合物が挙げられる。セリウム化合物は、鉄化合物と同様にして、多孔質触媒担体に含浸させることができる。
また、本発明で使用できるセリウム化合物の少なくとも一部を、Zr系、ランタン系化合物の少なくとも1種類の化合物で置換することができる。Zr系、ランタン系化合物としては、Zr及びランタンの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、硝酸塩、亜硝酸塩、炭酸塩、硫化物、硫酸塩、亜硫酸塩、錯体、ギ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、安息香酸塩等の有機酸塩等の群の中から選ばれた少なくとも1種類以上のZr系、ランタン系化合物が挙げられる。これらのZr系、ランタン系化合物の少なくとも1種類の化合物は、鉄化合物の場合と同様にして、多孔質触媒担体に含浸させることができる。さらに、本願発明の触媒においては、前記化合物の外に触媒作用を阻害しない範囲で他の化合物を含有させることができる。
本発明に用いることのできる多孔質触媒担体(耐熱性触媒担体)は、耐熱性があり、比表面積の大きなものが望ましいが、特に限定されるものではなく、アルミナ、シリカ、ゼオライト、チタニア等を球状、ペレット状、ハニカム状に固定したものが使用でき、用途に適した形状に加工されたものが望ましい。
また、本発明に用いることのできる多孔質触媒担体として、たとえば特開2003−144920号公報記載のアルミナ担体を使用することができる。即ち、アルミナ担体は金属表面にアルミニウム層を設けたクラッド材の前記アルミニウム表面を陽極酸化し、次いで、酸性水溶液を用いて陽極酸化によって生じた表面細孔を拡大化処理した後、洗浄に換えて、又は洗浄した後、水蒸気若しくは5〜100℃の水を用いて水和処理することにより得ることができ、耐熱性に優れたものである。また、本アルミナ担体は陽極酸化の前に400℃〜600℃で前焼成することが好ましく、特に荷重をかけて焼成することが好ましい。さらに、陽極酸化後、適宜350℃以上で後焼成することが好ましい。
前記クラッド材は、表面にアルミニウム層を設けることの出来る金属表面にアルミニウム層を設けてなる担体である。その形状は、板状、棒状、筒状、リボン状、ハニカム状等の何れの形状であっても良い。前記表面にアルミニウム層を設けることの出来る金属は、Mg、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ti、Zr、V、Cu、Ag、Zn、Bi、Sn、Pb、Sbの中から選択された単体又は合金、若しくはこれらの金属を重合させた金属であるが、本発明においては、耐熱性の観点から、特にステンレス又はニッケルクロム合金が好ましい。
本発明においては、前記表面にアルミニウム層を設けた金属に導線を接続し、通電することにより、表面のアルミニウム層を加熱し、担持された触媒を短時間で活性温度に到達させることができる通電加熱型触媒担体を使用することができる。前記金属としては、耐熱性、導電性の観点からステンレス又はNi−CrあるいはFe−Cr合金が好ましい。ステンレスは、FeとCrからなる合金で、Crの含有量で各種のものがあり,13Crステンレス鋼や18Crステンレス鋼が使用できる。また、耐食性をさらに向上させるためCrを19質量%以上含有するものも使用できる。Ni−Cr合金は、通常、最も一般的に用いられている発熱体で、Niが77質量%以上、Cr19〜21質量%のものもしくは、Ni57質量%以上、Cr16〜18質量%のもので、その他Al,Co,Si,Mn,Feを微量成分として含んでいるものである。一方、Fe−Cr合金は、Cr17〜26質量%、Al2〜6質量%、Co1質量%以下、Si1.5質量%以下、Mn1.0質量%以下、残部がFeよりなるものが使用できる。
次に、本発明の製造方法により、前記多孔質担体上に本発明の炭素、鉄及びセリウムを含有する触媒を担持させる方法について述べる。鉄化合物及びセリウム化合物を多孔質触媒担体に含浸させる場合、鉄化合物及びセリウム化合物をそれぞれ0.1〜3mol/lの濃度溶解する。溶解する溶媒がない場合は、平均粒子径0.1〜10μmの大きさに粉砕し、水に分散したものを使用することができる。まず、前記鉄化合物の溶液又は分散液中に前記多孔質担体を浸し、常圧あるいは必要に応じて加圧して含浸させた後、乾燥させる。乾燥後、ICP質量分析装置(ICPS-7510, Shimadzu Corp.)で鉄原子の担持量を測定することができる。担持量が少ない場合、複数回含浸を繰り返し、目標の担持量を得ることができる。その後、セリウムの化合物の溶液又は分散液を同様に含浸させ、目標のセリウム担持量を得ることができる。鉄化合物の含浸とセリウム化合物の含浸の順序は特に限定されるものではなく、交互に含浸させることも可能である。また、予め鉄化合物とセリウム化合物を同時に溶解又は分散した溶液又は分散液を作成し、該液中に前記多孔質担体を浸し担持させることもできる。
多孔質触媒担体に含浸された鉄化合物及びセリウム化合物は、ガスの流入孔と流出孔を備えた密閉容器に入れ、空気を流入させながら、300〜600℃に加熱することにより、酸化物とすることができる。流入速度は特に限定するものではなく鉄化合物及びセリウム化合物の量に応じて適宜調整することが望ましく、10〜500ml/gで30分〜1時間程度で十分酸化される。酸化物の生成方法は、この方法に限定されるものではなく、空気中にオープンで接触面積を広くして、加熱しても可能である。また、通電加熱可能なアルマイト触媒担体の場合、酸化物生成の目的で通電加熱手段を利用することができる。
酸化が終了後、生成した酸化物の入った前記密閉容器に一酸化炭素ガスを流入させながら500〜600℃に加熱し、鉄とセリウムの酸化物を炭素化することにより、本発明の触媒を生成することができる。通電加熱可能なアルマイト触媒担体の場合、炭素化の目的で通電加熱手段を利用することもできる。流入速度及び時間は特に限定するものではなく鉄とセリウムの酸化物の量に応じて適宜調整することが望ましく、10〜1,000ml/gの流速で2〜15時間反応させることが望ましい。一酸化炭素ガスは純度が高いものが望ましい。炭素化による触媒の原子組成は、XRD(X線回折装置、RAD-II C, Rigaku Corp.)で測定することができる。炭素化の反応を迅速にかつ均一に行うためには、容器内を攪拌するとか回転させて一酸化炭素ガスとの接触を均一にするのが望ましい。このようにして、炭素、鉄、セリウムからなる触媒を生成し、その原子の構成質量分率を特定することができる。
前記担体上に生成された触媒は、炭素原子、鉄原子、及びセリウム原子の構成質量分率(酸素原子を計算に入れていない率)がそれぞれ、1〜70%、5〜65%、及び5〜90%のものが活性が高く望ましい。
炭素原子、鉄原子、及びセリウム原子の構成質量分率がそれぞれの下限値未満の場合、及び上限値を超える場合は、触媒の活性が低下するので、使用時に触媒量を増やす必要があり、好ましくない。本発明の酸化触媒は、酸化雰囲気において、COを酸化しCOにすることができ、酸化する温度が約200℃以上になると活性が向上することによってCOからCOへの転化率が向上し、約250℃以上になるとさらに転化率が向上し、約300℃以上になると転化率はほぼ100%になりほぼ完全にCOを浄化することができる。また、アンモニア、SOx、及びHSもN、硫酸、水等に転化することができる。
また、本発明の酸化触媒は、酸化する温度を約200℃以上にすると、プロパンやブタン等の炭化水素をより効率的に酸化し、水とCOにすることができる。約250℃以上になると水やCOへの転化率が向上する。そして約400℃以上になると、転化率はほぼ100%になりほぼ完全に炭化水素を浄化できる(図4の温度―転嫁率のグラフフ参照)。
本発明の還元触媒は、還元雰囲気において、NOxを還元する。また、酸をアルデヒド及びアルコールに還元する等の工業用還元触媒としても使用することができる。NOxを還元する温度は約300℃以上であることが好ましく、約400℃以上であることがより好ましく、約500℃以上であることがさらに好ましい(図4の温度―転嫁率のグラフフ参照)。
さらに、本実施形態における排気ガス浄化触媒は、COやHCに比べ浄化しにくいNOxを還元する。排気ガス浄化触媒として、上記還元触媒の構成原子質量分率と同じものを使用することにより、排気ガスに含まれるNOx、CO、及びHCを浄化することができる。
NOx、CO、HCを含む排気ガスとしては、例えば自動車からの排気ガスが想定される。自動車排気ガスにおいては、COはCOへ、HCは水とCOに酸化され、NOxは窒素に還元されるが、酸化と還元がバランス良く反応する領域は理論空燃比近傍に制限されている。よって、本触媒を自動車排ガス用の三元触媒として機能させるには、自動車排ガスの組成が理論空燃比近傍に制御されていることが望ましい。
また、上記排気ガス浄化触媒は、排気ガスの温度で加熱され活性を発現する温度に達するが、本発明の通電加熱型触媒担体を使用したものは、例えば自動車のバッテリーを電源として12V,10Aの電流を約15秒間程度流すことにより、触媒及び触媒担体を約300℃〜約500℃の触媒活性発現温度に加熱することができる。
本触媒は自動車排気ガスの浄化用途に限られず、他のガスに含まれるNOxやCO、HCを浄化することもできる。例えば、燃料電池の燃料として、天然ガス等を改質して得た水素に含まれる微量のCOを除去する酸化触媒の用途に適し、燃料電池の燃料極にガスを供給するためのCO除去装置に本酸化触媒を配置し、あるいは本酸化触媒を燃料電池の燃料極触媒と混合して燃料極部分に用いることで、水素中のCOをCOに酸化し、電極触媒の被毒を防止することもできる。
本発明の触媒の性能を評価する目的で、NOx、CO、又は炭化水素が本触媒により酸化又は還元されてCOや窒素等に転化される割合を測定するには、例えば、自動車排気ガスを直接用いることもできるが、含まれるNOxやCO、HCの濃度を制御することが難しいことから、モデルガスを用いることもできる。モデルガスは、例えば、ガソリン車の実排気ガスと類似する組成にすることが好ましい。
図1に、NOxやCOやH、HCとしてCを含むモデルガスの濃度を測定する装置の概略図を示す。また、上記測定装置の一部である反応管の概略図を図2、図3に示す。図1に示すように、標準ガスボンベ1、マスフローコントローラー2、水タンク3、水ポンプ4、蒸発器5、反応管6、冷却器8、ガス分析装置9などで構成される測定装置は、まず、標準ガスボンベ1から各モデルガスを発生させ、マスフローコントローラー2によりガスが混合されて、水ポンプ4から導入された水を蒸発器5で気化されて、蒸発器5で各ガスが合流されて、反応管6へ導入される。そして、モデルガスが入った反応管6が電気加熱炉7により加熱される。各モデルガスは反応管6内の触媒10により酸化または還元される。反応後のガスは、冷却器8において水蒸気が除かれた後、ガス分析装置9で組成が分析される。ガス分析装置9は、例えば、ガスクロマトグラフィーで、O2、CO、NO、CO、HC(C)、H2等の定量分析を行うことができ、NOx、NO、NO、CO、SO等は、例えば、NOx分析計で定量的に分析することができる。
上記測定装置の一部である外部加熱式反応管の概略図を図2に示す。反応管6は石英でできており、排気ガス浄化触媒10はその中心部に充填することが好ましい。そして、モデルガスを触媒のある部分に分布させるために触媒10の両側に石英砂11や石英ウール12を詰めることもできる。
上記測定装置の一部である通電加熱式反応管の概略図を図3に示す。反応管18は石英でできる。プレート状排気ガス浄化触媒19の両端は電源17の電極21とつながる。触媒の表面温度は照射温度計16で測定する。モデルガス中の水蒸気を保温するため、反応管18の両端に低温保温段15を取り付ける。
上記測定装置においては、触媒の浄化性能は以下の算出式により各ガスの転化率として評価することができる。
NOx転化率={(入口のNOモル流量十NOモル流量)−(出口のNOモル流量十NOモル流量)}/(入口のNOモル流量十NOモル流量)×100%
転化率=(入口のCモル流量一出口のCモル流量)/(入口のCモル流量)×100%
CO転化率=(入口のCOモル流量一出口のCOモル流量)/(入口のCOモル流量)×100%
転化率=(入口のHモル流量一出口のHモル流量)/(入口のHモル流量)×100%
上記の転化率は、NOxやCOやH、HCがどの程度、触媒によって酸化又は還元されたかを示しており、転化率は高い方がより酸化又は還元されていることを示し、100%であれば完全にNOxやCO、HCが浄化されたことを示す。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本実施例で使用する酸化還元触媒は、以下のようにして調製した。通電加熱型アルマイト触媒担体として、2cm×5cm×85μm(厚さ)のNi−Cr合金の表面に45μmの厚さのアルミニウム板を熱圧着により貼り付けた。クラッド基板をシュウ酸液中に入れ、65A/mの電流を流し、陽極酸化した後、4wt%シュウ酸液中に25℃で4時間浸漬し細孔径拡大処理を行った後350℃×1時間焼成処理を行った。得られた担体の、BET測定法による比表面積は220m/gであった。
次にセリウム化合物として、酒石酸セリウム(調整法:炭酸ナトリウムと硝酸セリウムを混合して水を入れ、沈殿物の炭酸セリウムをろ過した後、ろ過した炭酸セリウムに純水を入れて、電気伝導度を調製した後に酒石酸を加えて加熱して、最後にアンモニアを加えてpH調製した)の1mol/lの水溶液を作成した。この溶液中に前記アルマイト触媒を含浸させ常温で2時間静置後、空気中で乾燥させ更に500℃で3時間焼成した。更に同様に含浸、乾燥、焼成処理を行った。ICP分析法によるセリウム原子の担持量は8.19mgであった。また、鉄化合物としてクエン酸鉄アンモニウム(メーカー:キシダ化学株式会社)を水に溶解し、2mol/lの溶液を作成した。この溶液中に、前記セリウムを含浸させたアルマイト触媒担体を含浸させ、常温で1時間静置後、空気中で乾燥させ更に350℃で1時間焼成した。この処理を同様に、更に2回繰返し行った。ICP分析法による鉄原子の担持量は10.75mgであった。
酒石酸セリウム及びクエン酸鉄を含浸したアルマイト触媒担体を、加熱装置を備えガスの給排出可能な密閉容器に入れ、空気を300ml/分供給しながら温度を10℃/分で50分間昇温し、525℃とし、酸化セリウム及び酸化鉄とした。さらに空気の代わりに一酸化炭素ガスに切替え、525℃で300ml/分の速度で6時間供給した。得られた触媒の原子組成(酸素原子を計算に入れていない率)は、C/Fe/Ce=7:5:4であった。本実施例において、浄化特性を試験するため、NOx、CO及びHCを含むモデルガスを用いた。表1に、モデルガスの成分と反応条件を示す。反応システムは、理論空燃比雰囲気に制御した(A/F=14.63)
モデルガスの分析は、ガスクロマトグラフィー(製品名:GC−14B、(株)島津製作所製))でH、CO、NO、CO、炭化水素等の定量分析を行った。また、NO、NO、NO、CO、SO等は、NOx分析計(製品名:PG−250、(株)堀場製作所製))で定量分析を行った。
本実施例においては、上記で調製した排気ガス浄化触媒、及びPt系触媒について、200℃から800℃の範囲における100℃間隔の各温度で1時間モデルガスと反応させた後のデータを収集し、NOx、CO、HC(C)、Hの転化率を算出した。
(実施例1)
上記の調製方法で得たC-Fe-Ce酸化還元触媒(炭素原子、鉄原子、及びセリウム原子の構成質量分率がそれぞれ、C/Fe/Ce=7:5:4(6時間処理)5%、17%、及び78%である)を、反応管内に入れ、モデルガスを反応管に導入し、NOx、CO、炭化水素(C)、Hの転化率を測定した。その結果を図4に示す。
図4に示すように、炭素材料からなる触媒の場合、300℃において、COが酸化され、43%の転化率が得られた。そして、500℃において、COは完全に浄化し、Cも約99%の転化率となった。NOxの還元温度は、COとHCより高いが、400℃において約43%のNOxが還元され、600℃において、有害三成分共に還元浄化された。
また、図5に、実施例1の触媒の800度における長時間の試験結果(耐久性)を示す。その結果、NOx、CO、C共に約100%の転化率が60時間維持され、800℃において本触媒が高い耐久性を有することが確認された。
(実施例2)[G1]
実施例1のアルマイト触媒担体のFe-Ni−Cr合金部分にリード線を接続し、実施例1と同様にモデルガスを反応管18に導入すると同時に、リード線から、12V10Aの電流で本担体は約15秒で800度に達した。この場合、300秒後には実施例1と同様な転化率を得ることができた。
(比較例1)
反応管内に、実施例1で使用したアルマイト触媒担体のみを入れ、触媒の存在しない状態で反応ガスを流し、NO、CO、炭化水素(C)、水素の転化率を測定した。その結果を図6に示す。
図6に示す通り、触媒を入れない場合、200〜800℃におけるNOx、COの転化率はほぼゼロであったが、Cは500℃以上になると転化率が徐々に向上した。触媒を入れないとガスが浄化できないことが確認された。
(比較例2)
実施例1において、アルマイト触媒担体に鉄化合物を含浸した後、セリウム化合物を担持させない状態で実施例1と同様に酸化処理、及び一酸化炭素処理を行い、鉄原子と炭素原子の質量構成比率が3:1(FeC)の組成の触媒を得た。得られた触媒担体を反応管入れ、モデルガスを流し、実施例1と同様に測定した。その結果を図7に示す
図7に示す通り、300℃において、有害三成分の転化率はほぼなかった。完全に浄化温度について、NOxは800℃、COは700℃、HCは500℃です。
(比較例3)
実施例1において、アルマイト触媒担体に鉄化合物及びセリウム化合物を含浸した後、実施例1と同様に酸化処理を行っただけで、一酸化炭素処理を行わない触媒を作成した。鉄原子と炭素原子の質量構成比率は5:4であった。得られた触媒担体を反応管入れ、モデルガスを流し、実施例1と同様に測定した。その結果を図8に示す
図8に示すとおり、鉄、セリウムからなる触媒は400以下の温度では、NOxの転化率がほぼゼロであった。そして、温度の上昇につれてNOx転化率が徐々に向上したが、800℃においても77%の転化率しかなかった。Cは300℃から酸化され、400℃において87%の転化率が得られた。COは、300度から酸化され、37%の転化率となり、500℃になるとCOが完全浄化した。
(比較例4)
実施例1で使用したアルマイト触媒担体に市販のPt−酸化セリウム触媒を担持させ、実施例1と同様にモデルガスの転化率を測定した。Ptの担持量は1.0wt%である。結果を図9に示した。
図9に示す通り、Pt系触媒の場合、250℃以下ではNOx、C、COの転化率はほぼゼロであった。300℃においても転化率はかなり低いが、500℃以上においてはNOx、C、COの3成分が転化率約100%とほぼ完全に浄化した。
表2に上記の実施例と比較例の結果を、50%転化率温度(T50)で比較して示した。この表からも実施例の炭素―鉄―セリウム系の触媒が、他の比較例の触媒よりも有害3成分のT50の値が低い温度を示していることが分かり、触媒活性がもっとも優れていると言える。
本発明によれば、Ptを使用しないで、炭素、鉄化合物、セリウム化合物を含有する組成物を加熱して構成された触媒で、CO及びHCを酸化して浄化でき、NOxを還元して浄化できる酸化触媒、還元触媒及び排気ガス浄化触媒を提供することができる。
浄化されるNOxやCO、HCの濃度を測定する装置の概略図である。 図1の装置における外部加熱反応管の概略図である。 図1の装置における通電加熱反応管の概略図である。 実施例1における、NOx、CO、HC(C)、Hの転化率を示す図である。 実施例1における、800℃における長時間の試験結果を示す図である。 比較例1における、NOx、CO、HC(C)、Hの転化率を示す図である。 比較例2における、NOx、CO、HC(C)、Hの転化率を示す図である。 比較例3における、NOx、CO、HC(C)、Hの転化率を示す図である。 比較例4における、NOx、CO、HC(C)、Hの転化率を示す図である。 通電加熱実験を示す図である。
1 標準ガスボンベ
2 マスフローコントローラー
3 水タンク
4 水ポンプ
5 蒸発器
6 反応管
7 電気加熱路
8 冷却器
9 ガス分析装置
10 触媒
11 石英砂
12 石英ウール
13 熱電対
14 通電用反応管の入口
15 低温保温段
16 照射温度計
17 電源
18 通電用反応管
19 プレート触媒
20 通電用反応管の出口
21 電極

Claims (6)

  1. 鉄及びセリウムを含有する組成物を酸化雰囲気下で加熱して酸化物とした後、純度が高い一酸化炭素のみと反応させて製造することを特徴とする、炭素、鉄、セリウムを含有する触媒の製造方法。
  2. 炭素原子、鉄原子、及びセリウム原子の構成質量分率(酸素原子を計算に入れていない率)がそれぞれ、1〜70%、5〜65%、及び5〜90%であることを特徴とする請求項1記載の触媒の製造方法。
  3. 多孔質触媒担体上に、炭素原子、鉄原子、及びセリウム原子の構成質量分率(酸素原子を計算に入れていない率)がそれぞれ、1〜70%、5〜65%、及び5〜90%である触媒を担持させたことを特徴とする請求項1又は2記載の触媒の製造方法。
  4. 多孔質触媒担体が、金属表面にアルミニウム層を設けたクラッド材の、前記アルミニウム表面に多孔質アルマイト層を有することを特徴とする請求項1〜請求項3何れか記載の触媒の製造方法。
  5. 多孔質触媒担体が、通電加熱により、触媒が活性を示す温度に加熱されることを特徴とする請求項1〜請求項4何れか記載の触媒の製造方法。
  6. 多孔質触媒担体上に鉄及びセリウムを含有する層を設けた後、酸化雰囲気下で加熱して酸化物とし、続いて、純度が高い一酸化炭素のみの雰囲気下で加熱することを特徴とする請求項1〜請求項5何れか記載の触媒の製造方法。
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