JP5803843B2 - 高炭素鋼材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高炭素鋼材の製造段階において、製品特性を大きく悪化させ得る粗大なAlクラスターの生成を抑制し、生成されるクラスターの個数を大幅に低減させることができる、クラスターの少ない高炭素鋼材の製造方法に関する。
現在最も一般的な鋼の脱酸方法であるAl脱酸では、不可避的にAl系酸化物が生成する。Al系酸化物は非常に硬質であることに加え、クラスターを形成して粗大化するため鋼の製品特性を著しく低下させる。例えば、軸受鋼に代表される高清浄鋼では、Al系酸化物が破壊の起点となり、転動疲労寿命が大きく低下することが知られている。また、タイヤコード等に用いられている高炭素鋼線材は、熱間圧延で線材にした後、冷間引抜き(伸線加工)を行うことで製造されるが、鋼中に高硬度の非金属介在物が混入していると、加工途中での断線の原因となる。したがって、Al系酸化物、特にAlクラスターの生成を抑制することは極めて重要である。
Al系酸化物の生成抑制方法として、酸化物組成をAl単相から低融点かつ軟質の複合系へ制御することが挙げられる。例えば特許文献1には、溶鋼中に金属Mgを添加して、鋼中に存在するアルミナ系介在物をAl−MgO系介在物に形態制御し鋼中に微細分散させることを特徴とする、クラスターに起因する製品欠陥および鋳造時のノズル閉塞を防止する鋼中介在物の無害化方法が開示されている。
しかし、この方法によりAlクラスターの生成は抑制されるものの、かわりに高融点かつ硬質のMgO−Alスピネル酸化物が大量に生成され、これらが新たな欠陥を発生させるおそれがある。また、Mgを新たな脱酸元素として添加しているため、酸化物の総量が増加してしまう。
特許文献2には、0.005質量%以上を含有するAlキルド鋼を製造するにあたり、溶鋼中にCa,Mg,REMのうちから選ばれる2種以上とAlの複合脱酸により、生成する介在物中のAlを30〜85質量%の範囲内に調整することを特徴とするクラスターのないAlキルド鋼の製造方法が開示されている。この技術は、Alよりも脱酸力の強いCa,MgおよびREMを加えることでAlを還元し、酸化物中Al濃度を低下させることでクラスターの生成を抑制するものである。
しかしながら、Ca,Mg,REMは高価であることに加えて歩留まりが極めて悪く、製造コストが大幅に増加してしまう。また、特許文献1により開示された方法と同様に、新たな脱酸元素を添加しているため、酸化物総量が増加してしまう。
特許文献3には、はじめにAlによる脱酸を行った後にTiによる脱酸を行い、生成したAl,TiOを凝集合体させることで低融点のTiO−Al複合脱酸生成物とする高清浄鋼の製造方法が開示されている。この技術により、酸化物組成がAlクラスターよりも凝集合体し易いTiO−Al複合脱酸生成物となるため、酸化物を短時間で系外に分離することができる。
しかしながら、目標の酸化物を得るための初期の添加Al量が細かく決まっており、その制御は非常に困難である。また、ここではAlの代替としてTiを添加しているが、酸化物の総量はAl単独での脱酸と大きくは変化せず、清浄度に関しては不安が残る。
特許第2887535号明細書 特許第3626278号明細書 特許第3679511号明細書
上記したような従来の手法では、酸化物の組成制御に基づくAlクラスターの生成抑制と鋼の高清浄化とをともに達成することは困難であった。
そこで、本発明は、酸化物の組成制御に基づくAlクラスターの生成抑制を、鋼の清浄性を損なうことなく達成できる手法を提供することを目的とする。すなわち、本発明は、新たな脱酸元素を添加することなく、酸化物の組成制御を行うことができる手法を提供することを目的とする。
本発明者らは、下記(4)式により示される脱炭反応に由来するC脱酸を利用することで、上記課題を解決可能であると考えた。本発明は、C脱酸が顕著に生じる還流型脱ガス装置を用いた減圧精錬下において、下記(5)式により示されるAlの還元が生じる領域でC脱酸を発生させ、酸化物中のAl濃度を低減させることによりクラスターの生成を抑制するものである。すなわち、C以外の新たな脱酸元素を添加することなくAlクラスターの生成を抑制できる。加えて、C脱酸時に生成されるCOガスは系外に排出されるため,溶鋼中に脱酸生成物が残存せず、かつ懸濁したAlがC脱酸により還元されていくため、介在物量はむしろ低減していくことになる。
C+O=CO(g) ・・・(4)
Al(s)=2Al+3O ・・・(5)
また、(4),(5)式で決定される平衡酸素濃度は、各反応における平衡関係式からそれぞれ下記(6),(7)式で表される。(6),(7)式における[%O]Alおよび[%O]は、それぞれ(4)式および(5)式の平衡関係式より導出される式であり、各反応が生じ得るOの下限を示している。すなわち、溶存酸素濃度が[%O]Al以下であり、かつ[%O]以上の条件では、熱力学的にはAlが生成せず、C脱酸のみが生じる条件となる。したがって、本発明者らは、C脱酸によりAlを還元させるためには、(6)式で決まる酸素濃度を、(7)式で決まる酸素濃度より低くし、かつ溶存酸素濃度を(8)式を満たす条件とする必要があることを見出した。ただし、本発明の条件では全ての条件において[%O]<[%O]Alを満たしているため、[%O]<[%O]Alを満たせばC脱酸によりAlを還元できる条件となる。
[%O]=C(定数)×PCO/[%C] ・・・(6)
[%O]Al=(C(定数)/[%Al]2/3 ・・・(7)
[%O]<[%O]<[%O]Al ・・・(8)
ここで、[%O]Al:Alの酸化反応から求まる溶鋼中O濃度、[%O]:Cの酸化反応から求まる溶鋼中O濃度、C:定数、[%Al]:sol.Al濃度、C:定数、PCO:CO分圧、%C:C濃度、[%O]:溶存酸素濃度である。
本発明は、上記の考えを踏まえ、C脱酸によりAlを還元可能となる溶鋼組成および真空槽内圧力を明らかとすることでなされたものであり、以下に記載の通りである。
(1)溶鋼還流型脱ガス装置を用いて高炭素鋼を製造する方法であって、
溶鋼成分を、質量濃度で、C:0.7〜1.2%、Si:0.03〜1.2%、Mn:0.05〜1.8%、sol.Al:0.002〜0.03%、O(溶存酸素):0.003%以下であるとともに、O(溶存酸素)とsol.Alの関係が(1)式を満足するように調整し、かつ、
該溶鋼上のスラグ成分を、質量濃度で、CaOとAlとの合計が80%以上、SiO:3.0%以下、T.Fe+MnO:1.0%以下、CaO/Al=1.5〜4.0になるように調整した後に、
溶鋼還流脱ガス装置の真空槽内圧力を1.0(kPa)未満に保ちつつ、(2)式を満たす時間還流処理を施すこと
を特徴とする、高炭素鋼材の製造方法。
[%O]<0.0001×[%Al]-2/3 ・・・(1)
10×W/Q≦tc≦30×W/Q ・・・(2)
ここで、溶鋼還流量:Q(ton/min)は、下記(3)式で計算される値であり、[%O]:溶存酸素濃度(質量%)、[%Al]:sol.Al濃度(質量%)、tc:還流処理時間(min)、W:前記溶鋼の質量(ton)、G:還流ガス流量(NL/min)、D:浸漬管径(m)、P:吹き込み位置での静圧(kPa)、Pvac:真空槽内圧力(kPa)である。
Q=11.4×G1/3×D4/3×{ln(P/Pvac)}1/3・・・(3)
本発明によれば、還流型脱ガス装置を用いて、鋼の清浄性を維持しつつC脱酸のみで介在物の組成制御を行い、Alクラスターの少ない高炭素鋼材を製造することができる。また、本発明は新たな脱酸元素を必要としないため、製造コストを大幅に削減可能であり、本発明の工業的価値は非常に大きい。
図1は、還流処理前のsol.Al、O濃度の関係、およびsol.Al濃度から求めた請求項1における(1)式が示す範囲を示すグラフである。
以下に本発明について詳細に説明する。
1.本発明における用語の定義
「還流型脱ガス装置」とは、一般的にRHと呼称される真空槽を要する溶鋼処理装置である。「還流処理」とは、溶鋼成分とスラグ成分とを所定の範囲に調整した後、還流型脱ガス装置の真空槽内圧力を1.0(kPa)未満に保ちつつ、還流処理時間tc(min)以上の時間還流させる処理のことを指す。
2.本発明に係る還流処理を開始する前の溶鋼組成
[C:0.7〜1.2質量%]
Cは、鋼の強度を決める重要元素である。本発明はAlキルド鋼のようなAl濃度の高い鋼種への適用も想定しており、低C濃度では効率よくC脱酸を活用できない可能性があるため、C濃度の下限を0.7質量%とする。また、C濃度が高いほどC脱酸の効果は大きくなるが、C濃度が1.2質量%を超えると母材の硬度が固くなり過ぎるため、加工性が著しく低下してしまう。また、Cを、1.2質量%を超えて含有させてしまうと還流処理後に脱炭処理を行う必要性が生じるため、本発明でのC濃度の上限は1.2質量%とする必要がある。
[Si:0.03〜1.2質量%]
Siは、鋼材の焼き入れ性および強度を高める重要な元素であるため、還流処理前に予め0.03質量%は含有させる必要がある。しかし、Si濃度が1.2質量%を上回るとSi脱酸がAl脱酸より優勢となり、SiO系酸化物が大量に生成し、かつ本発明におけるC脱酸によるAlの還元反応を阻害する可能性があるため、1.2質量%を上限とする。
[Mn:0.05〜1.8質量%]
MnもSiと同様に、鋼材の強度を高める重要な元素であるため、還流処理前に予め0.05質量%は含有させる必要がある。しかし、Mn濃度が高過ぎると、Siと同様にMnO系酸化物が大量に生成する可能性があるため、1.8質量%を上限とする。
[O(溶存酸素)とsol.Alの関係:[%O]<0.0001×[%Al]-2/3
C脱酸によりAlを還元させるためには、Oとsol.Alの関係が上式を必ず満たしている必要がある。したがって、還流処理前のsol.Al濃度に応じて、還流処理前における溶存酸素濃度を、上式を満たす水準まで低減する必要がある。
[sol.Al:0.002〜0.03質量%]
sol.Al濃度が0.002質量%未満の溶鋼において、Alクラスターは殆ど生成しないと考えられ、クラスターの生成は問題とならないと考えられるため、sol.Al濃度を0.002質量%以上とした。一方、sol.Al濃度が高過ぎるとC脱酸によりAlを還元できなくなるため、Al濃度は0.03質量%以下である必要がある。ただし、C脱酸によるAlの還元効果はAl濃度が低いほど高くなるため、望ましくは0.02質量%以下とするのがよい。
[O(溶存酸素):0.003質量%以下]
Oが高過ぎると溶鋼中の酸化物個数が大きく増大し、清浄性が著しく悪化するため、仮に(1)式を満たしている条件であっても減圧処理前のOを0.003質量%以下とする必要がある。したがって、操業において、Oが0.003質量%以下であることを、固体電解質による酸素濃淡電池を測定原理とする酸素プローブを用いて確認する必要がある。
3.鋼材の機械特性の観点から鋼中に含有することが許容される成分濃度範囲
本発明で溶製するクラスターの少ない鋼には、対象となる溶鋼に製品に必要な機能を付加する目的で、合金元素を含有させることも原理的に許容される。具体的には、Feの一部に加えて、Cr:1.7質量%以下、Mo:1.0質量%以下、V:0.3質量%以下、Ni:2.0質量%以下を含有させてもよい。また、不可避的不純物としてP:0.03質量%以下、S:0.03質量%以下、Mg:0.002質量%以下、Ca:0.002質量%以下、N:0.02質量%以下を含有させていてもよい。
4.本発明に係る還流処理を開始する前のスラグ組成
[CaO+Al:80質量%以上]かつ[CaO/Al=1.5〜4.0]
本発明では、繊細な脱酸コントロールを必要とするために、還流処理を開始する前のスラグ組成を適切にコントロールしなければならない。スラグを構成する基本的な成分をCaOとAlとし、CaOとAlとの合計質量がスラグ全質量中の80%以上を占め、かつCaOとAlとの比(CaO/Al)が1.5〜4.0の範囲になるよう調整することで、他のスラグ中の低級酸化物であるSiO、T.Fe、MnO濃度を厳しく制限することと併せて、本発明に係る繊細な脱酸コントロールが可能になる。
スラグ中のCaOは、酸化物中にCaOを含有させ、酸化物を複合系とするために必要となる。しかし、比(CaO/Al)が低過ぎると、スラグから溶鋼へAlが溶出してしまうため、下限を1.5とする必要がある。一方、比(CaO/Al)が高いとスラグのAl吸収能が高くなるが、高過ぎるとスラグの融点が高くなり、溶鋼との反応性が低下するため、上限を4.0とする必要がある。
[SiO;3.0質量%以下]
本発明では、繊細な脱酸コントロールを必要とするために、スラグ中の低級酸化物であるSiO、T.Fe、MnO濃度を厳しく制限する必要がある。低級酸化物であるSiO濃度が高いと、溶鋼中Alを再酸化してしまうため、溶鋼中のAl量が増加してしまう。そのため、溶鋼再酸化によるAlの生成を抑制するためにSiOの上限を3.0質量%以下とする必要がある。
[T.Fe+MnO;1.0質量%以下]
SiOと同様に、T.FeおよびMnO濃度が高いと溶鋼中Alを再酸化してしまうため、溶鋼中のAl量が増加してしまう。したがって、溶鋼再酸化によるAlの生成を抑制することを目的として、T.FeおよびMnO濃度の合計を1.0質量%以下とした。
本発明で使用するスラグには、上記以外に、スラグに必要な機能を付加する目的で、MgO:5.0質量%以下、F:10質量%以下、TiO:5質量%以下を含有させてもよい。また、不可避的不純物としてP:1質量%以下、S:5質量%以下程度が許容される。
5.処理条件
本発明において、溶鋼は還流型脱ガス装置にて還流処理される。転炉等の精錬容器から取鍋に出鋼され、還流型脱ガス装置まで搬送されて還流処理を行う前に、上記の溶鋼成分範囲に調整する目的で、合金等の添加、あるいは取鍋精錬等の前工程を行うことが望ましい。具体的には、取鍋精錬工程等で脱酸,脱硫および合金添加を実施することによって溶鋼を所定の組成に調整することである。
Alキルド鋼のような高Al濃度溶鋼中では、Alの脱酸力が極めて大きく、C脱酸によりAlを効率的に還元するためには、上記(6)式で決まる平衡酸素濃度を極めて低い水準まで低下させる必要がある。また、[%O]と[%O]Alの差が大きいほどC脱酸によるAlの還元効果が強くなるため、還流処理中において、真空槽内を1.0kPa未満の低圧力下とする必要がある。
本還流処理は、前出の酸素プローブを用いて、還流処理前工程の時点で溶存酸素濃度が請求項1に記載の酸素条件を満たしていることを確認してから、還流型脱ガス装置で所定の条件下で行う。具体的には、取鍋精錬等の前工程の時間延長もしくはスラグ成分調整により、請求項1に記載の酸素条件を満たしていることを確認してから溶鋼を還流型脱ガス装置まで搬送するとか、或いは還流型脱ガス装置で還流処理を開始する直前に溶存酸素濃度が所定の水準まで低減されていないと分かった場合には、還流型脱ガス装置で溶存酸素濃度を所定の水準まで低減する等の対策を施すことにより、本発明に係る所定の還流処理を開始する前に、溶存酸素濃度が請求項1に記載の酸素条件を満たしているよう調整しておけばよい。
C脱酸は、真空槽内の溶鋼上面で生じる反応であり、槽内を減圧したことによる効果が溶鋼に現れ始めるまでにはある程度の時間を要する。加えて、溶鋼中の酸化物中Al濃度を低減させるまでに至るには、更なる時間が必要になると考えられるため、還流処理時において十分に溶鋼を還流させ、反応を効率的に生じさせる必要がある。したがって、本発明の効果を得るためには、還流処理中において溶鋼を少なくとも10回以上還流させる、すなわち還流処理時間tc(min)が(2)式を満たす必要がある。なお、溶鋼量Wを(3)式で示される還流量Qで割った値は、質量Wの溶鋼を1回循環させるために必要な時間を示している。また、溶鋼を30還流以上させても効果が飽和していると考えられるため、還流回数を30回以下とすることが望ましい。
6.効果の確認方法
本発明の効果を確認するため、後述するように、還流処理前に酸素プローブを用いて溶存酸素濃度を測定した後、還流処理直前、還流処理直後において溶鋼サンプルを採取した。採取した溶鋼のボンブサンプルを切断し、樹脂埋め、研磨した後に切断面を光学顕微鏡で観察し、検鏡範囲内(=200mm)におけるAl系酸化物の個数を計測した。本解析において、光学顕微鏡で得られた画像に対して、画像処理ソフトを用いて、二値化処理を施すことで酸化物の個数、大きさ、および位置データを得た。
また、本解析では酸化物円相当径が4.0μm以上のものを解析対象とした。次に、光学顕微鏡により得られた画像に対して、画像解析ハンドブック(2004/09発行、高木幹雄著、東京大学出版会出版)等に記載のクラスター分析を適用することで、観察範囲内に存在するクラスターの個数を計測した。クラスター分析とは、複数の固体からなる集合体において、個体の属性(性質)が似通っているかどうかによって分類していくことにより、データ解析を行う手法である。また、介在物の類似性を評価する方法として最短距離法を適用し、Al系酸化物が3個以上で構成され、かつ酸化物間の最近接距離が20μm以内であるものをクラスターと定義した。さらに、EDS付属の走査型電子顕微鏡を用いて、サンプル断面に存在する酸化物から任意に10個選択し、それぞれの酸化物組成を測定した。Al系酸化物とは、EDS付属の走査型電子顕微鏡で測定した結果、全ての測定元素のうちAl,Si,Mn,Ca、MgおよびOの占める質量の割合が90質量%以上であり、かつAlを50質量%以上含有する酸化物を指す。
転炉から出鋼後の溶鋼に対してVAD処理を施し、表1に示す組成の溶鋼を得た。
Figure 0005803843
次に、表1に示す組成の溶鋼とスラグを共存させ、RH真空脱ガス装置にて表1に記載の時間(溶鋼還流回数)還流処理を行った。なお、発明例、比較例とも全て、溶鋼量Wは80ton規模で溶鋼還流量Qは約80ton/min、スラグ量は1ton規模でCaOとAlの合計質量濃度は80〜90%であった。
還流処理開始前には、酸素プローブを用いて溶存酸素濃度を測定した。さらに、還流処理直前および直後には溶鋼サンプルを採取し、採取したサンプルから検鏡用のミクロサンプルを切り出した。切り出したミクロサンプルに対し、検鏡法にてクラスターの個数を計測した後、EDS付属の走査型電子顕微鏡にて酸化物組成を測定した。本試験において、還流処理前の溶鋼温度は1550〜1580℃であり、還流処理後では1510〜1540℃であった。RH真空脱ガス装置で処理した後は、連続鋳造法によってブルームあるいはスラブといった半製品を得た。
各試験における還流処理前および処理後の酸化物中平均Al濃度(n=10)および還流処理後のクラスター個数密度を表2に示す。
Figure 0005803843
また、図1に、還流処理前のsol.Al、O濃度の関係、およびsol.Al濃度から求めた請求項1中の(1)式が示す範囲をグラフで示す。図1のグラフの横軸は還流処理前のsol.Al濃度、縦軸は還流処理前のO濃度である。本発明において、還流処理後のサンプルにおいて、酸化物中Al濃度の低減が認められ、検鏡範囲内にクラスターが観察されず、かつ酸化物個数密度が10個/mm未満であったものを、発明の効果が顕著に見られたと判断した。
図1のグラフにおいて、○印は、還流処理後のサンプルにおいて酸化物中Al濃度の低減が認められ、検鏡範囲内にクラスターが観察されず、かつ酸化物個数密度が10未満であったものを示しており、すべて(1)式を満たす条件であった。したがって、本発明によりクラスターの生成抑制効果を得るには、(1)式を満たす必要があることが分かる。
図1のグラフ中の△印は、溶鋼中Al,O条件が(1)式を満たしているにもかかわらず、発明の効果が見られなかったものであり、試験番号9〜18がこれに該当する。
試験番号9について、還流処理時間tが本発明の範囲に足りなかったため、C脱酸によりAlを効率的に還元出来ていなかったと考えられる。このため、還流処理時間は(2)式を満たす必要がある。
試験番号10について、クラスター個数密度は低値であったが、RH処理前のSi,Mn濃度が本発明の範囲を超える条件であったため、酸化物個数密度は極めて高値であった。これは、溶鋼がSi,Mnによって強脱酸されたことからSiO,MnO系酸化物が大量に生成したためだと考えられ、Si濃度は1.2質量%以下、Mn濃度は1.8質量%以下に抑える必要がある。
試験番号11について、sol.Al濃度が本発明範囲を超えて存在していたため、C脱酸により効率的にAlを還元できなかったと考えられる。したがって、sol.Al濃度は0.03質量%以下である必要がある。
試験番号12では、スラグ中T.Fe+MnO濃度が高く、試験番号13ではスラグ中SiO濃度が高い条件であったため、溶鋼再酸化により新たにAlが生成し、これらがクラスターに成長したためと考えられる。よって、スラグ中のT.Fe+MnOおよびSiOの濃度をそれぞれ1.0質量%以下、および3.0質量%以下まで低減させる必要がある。
試験番号14では、スラグの比(CaO/Al)が非常に高く、試験番号15では比(CaO/Al)が非常に小さい条件であり、いずれも本発明の範囲から大きく外れていた。比(CaO/Al)が高いとスラグ融点が高くなるため溶鋼との反応性が低下し、低いとスラグから溶鋼にAlが溶出し易くなるため、これらの条件ではクラスターを低減できなかったと考えられる。したがって、本発明によるクラスター低減効果をより効率的に得るためには、スラグの比(CaO/Al)を1.5〜4.0の範囲に制御することが望ましい。
試験番号16について、クラスターの生成は抑制できたが、溶存酸素濃度が0.003質量%を超えていたため、酸化物個数密度が非常に高い結果となった。したがって、溶存酸素条件が(1)式を満たしている条件であっても、溶存酸素を0.003質量%以下まで低減させる必要がある。
試験番号17、18について、還流処理中の圧力が本発明の範囲を超えていたため、C脱酸が効率的に生じていなかったと考えられる。したがって、還流処理中の真空槽内圧力は1.0kPa未満とする必要がある。
図1のグラフ中の×印は、還流処理後のサンプルにおいて酸化物中Al濃度の低減が認められず、検鏡範囲内にクラスターが散見され、かつ酸化物個数密度が10を超えていたものを示している。試験番号19〜26がこれに該当する。試験番号19〜26については、溶鋼中Al,O条件が(1)式を満たしていなかったため、クラスター低減効果が得られなかったと考えられる。

Claims (1)

  1. 溶鋼還流型脱ガス装置を用いて高炭素鋼を製造する方法であって、
    溶鋼成分を、質量濃度で、C:0.7〜1.2%、Si:0.03〜1.2%、Mn:0.05〜1.8%、sol.Al:0.002〜0.03%、O(溶存酸素):0.003%以下であるとともに、O(溶存酸素)とsol.Alの関係が下記(1)式を満足するように調整し、かつ、
    該溶鋼上のスラグ成分を、質量濃度で、CaOとAlとの合計が80%以上、SiO:3.0%以下、T.Fe+MnO:1.0%以下、CaO/Al=1.5〜4.0になるように調整した後に、
    溶鋼還流脱ガス装置の真空槽内圧力を1.0(kPa)未満に保ちつつ、下記(2)式を満たす時間還流処理を施すこと
    を特徴とする、高炭素鋼材の製造方法。
    [%O]<0.0001×[%Al]-2/3 ・・・(1)
    10×W/Q≦tc≦30×W/Q ・・・(2)
    ここで、溶鋼還流量:Q(ton/min)は、下記(3)式で計算される値であり、[%O]:溶存酸素濃度(質量%)、[%Al]:sol.Al濃度(質量%)、tc:還流処理時間(min)、W:前記溶鋼の質量(ton)、G:還流ガス流量(NL/min)、D:浸漬管径(m)、P:吹き込み位置での静圧(kPa)、Pvac:真空槽内圧力(kPa)である。
    Q=11.4×G1/3×D4/3×{ln(P/Pvac)}1/3・・・(3)
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