JP5801041B2 - 防振装置 - Google Patents

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本発明は、振動を発生する部材からの振動の伝達を防止する流体封入式の防振装置に係り、特に、自動車のエンジンマウント等に好適に用いられる防振装置に関する。
例えば、乗用車等の車両では、振動発生部となるエンジンと振動受け部となる車体との間にエンジンマウントとしての防振装置が配設される。この防振装置は、エンジンから発生する振動によって、内筒と外筒とが軸方向に相対移動すると、両者を連結する弾性体が弾性変形し、第1主液室と副液室との間を液体が移動することによって、振動が減衰されるようになっている。また、特許文献1に記載の防振装置では、上記の構造に加えて、軸方向と直交する方向(軸直方向)にも2つの主液室(第2主液室)を配置すると共に、これらの第2主液室を副液室と連通させ、軸直方向の振動を複数の液室間の液体移動によって減衰させるようになっている。
ところで、このように軸直方向での振動減衰が可能な構造の防振装置では、複数の第2主液室間を仕切る仕切隔壁が形成されている。この仕切隔壁には、軸方向に圧縮、引張りの力の作用により、応力が集中しやすく、耐久性の向上が求められている。
そこで、特許文献2に記載の防振装置では、弾性体と仕切隔壁とを別体として2部材を構成し、この2部材を組み付けることにより、仕切隔壁の耐久性を向上させている。しかしながら、2部材とした場合、各々の部材を別々に製造しなければならず、製造コストが高くなってしまう。
特開2002−310219号 特開2007−278399号
本発明は上記事実を考慮し、軸方向だけでなく、この軸方向と直交する軸直方向でも振動減衰する防振装置において、仕切隔壁の耐久性を向上させることを課題とする。
請求項1に記載の発明は、振動発生部及び振動受部の一方に連結された内側取付部材と、振動発生部及び振動受部の他方に連結され、主振動入力方向からみて前記内側取付部材の外周を囲むように配置された上外周部材及び下外周部材と、筒状とされ、前記上外周部材と前記下外周部材を筒内に保持する保持部材と、前記内側取付部材と、前記上外周部材及び前記下外周部材のそれぞれとを弾性的に連結する弾性体と、前記弾性体と、前記弾性体の前記主振動入力方向外側に設けられた仕切部材との間に形成され、液体が充填された第1主液室と、前記仕切部材と前記仕切部材の前記主振動入力方向外側に設けられたダイヤフラムとの間に形成されると共に液体が充填され、前記ダイヤフラムにより液圧変化に応じて内容積が拡縮可能とされた副液室と、前記第1主液室と前記副液室とを互いに連通させて液体を流通可能とする第1制限通路と、前記弾性体の、前記内側取付部材と前記上外周部材とを連結する部分と、前記内側取付部材と前記下外周部材とを連結する部分と前記保持部材との間に構成され、前記第1主液室との間が前記弾性体で区画されて液体が充填された液室と、前記弾性体の一部に形成され、前記内側取付部材から径方向外側に向かって軸直方向に延出し、前記液室を周方向に複数の第2主液室に区画する仕切隔壁と、前記仕切隔壁に設けられた前記保持部材側から前記内側取付部材へ向かうように形成され、前記保持部材に前記上外周部材と前記下外周部材とを組み付けた状態で界面同士が圧着されたスリットと、複数の前記第2主液室同士の間、又は第2主液室のそれぞれと前記副液室との間での液体の移動を可能とする第2制限通路と、を備えている。
請求項1の防振装置では、内側取付部材、外周部材の何れか一方に振動発生部側から振動が入力すると、この入力振動により内側取付部材と外周部材の間に配置された弾性体が弾性変形し、この弾性体の内部摩擦等に基づく吸振作用によって振動が吸収され、振動受け部側へ伝達される振動が低減される。このとき、入力振動が主振動方向の振動であっても、この主振動と略直交する方向の振動であっても弾性体の吸振作用により、その一部が吸収される。
また、主振動方向に振動が入力すると、弾性体の弾性変形により第1主液室が拡縮して第1制限通路を通じて第1主液室と副液室との間で液体が相互に流通する。そして、第1制限通路内での液柱共振等により、制振機能が発揮される。
一方、主振動方向と略直交する方向の振動が入力すると、内側取付部材と外周部材の相対移動により、これらの間に構成されている第2主液室が拡縮し、第2主液室と副液室とが連通されている場合には、これらの液室の間で液体が相互に流通する。また、仕切隔壁によって仕切られた複数の第2主液室同士の間が連通されている場合には、これらの液室の間で液体が相互に流通する。この液体流通による液柱共振等により、制振機能が発揮される。
本実施形態では、仕切隔壁は、弾性体と一体的に構成されると共に、主振動入力方向からみて保持部材側の外面から内側取付部材へ向かうスリットが形成されている。また、内側取付部材の外周を囲むように上外周部材及び下外周部材が構成されている。保持部材は、仕切隔壁のスリットの界面同士が圧着されるように主振動入力方向に仕切隔壁を圧縮しつつ、上外周部材及び前記下外周部材を筒内に保持する。
上記構成によれば、 上外周部材下外周部材の距離を近づけて、仕切隔壁を圧縮変形させ、仕切隔壁のスリットの界面同士を圧着させ、第2主液室を密閉することができる。そして、仕切隔壁は、スリットを挟んで上外周部材下外周部材に外周側が分割されているので、振動入力時に分割された上下の部分は、別々に振動可能であるため、振動入力時における歪みを抑制でき、耐久性を向上させることができる。
本発明の請求項2に記載の防振装置は、前記保持部材の内周に沿って前記上外周部材と前記下外周部材との間に配置され、前記上外周部材と前記下外周部材とが互いに近づく方向へ移動することを阻止して前記主振動入力方向の位置決めを行う位置決め部材を備えている。
このように、位置決め部材を用いて、容易に上外周部材下外周部材の主振動入力方向における位置決めをすることができる。
本発明の請求項3に記載の防振装置は、前記位置決め部材は環状部材であり、前記保持部材の周方向に複数に分割して配置されている。
このように、位置決め部材を周方向に複数に分割することにより、容易に組み付けを行うことができる。
本発明の請求項4に記載の防振装置は、前記位置決め部材は、前記主振動入力方向の両端面が前記上外周部材及び前記下外周部材に各々当接して前記上外周部材と前記下外周部材とが互いに近づく方向へ移動することを阻止していること、を特徴とする。
このように、位置決め部材を上外周部材及び下外周部材の端面に当接させることにより、簡易な構成で位置決めを行うことができる。
本発明の請求項5に記載の防振装置は、前記位置決め部材は径方向内側に向かって突出する凸部を備え、前記上外周部材及び前記下外周部材の少なくとも一方が、前記凸部に当接して位置決めされていること、を特徴とする。
このように、上外周部材または下外周部材上外周部材及び下外周部材の両方を、位置決め部材の内周側に配置することにより、位置決め部材へ上外周部材及び下外周部材の少なくとも一方を、簡易に組み付けることができる。
本発明の請求項6に記載の防振装置は、前記第2制限通路が、前記凸部と前記保持部材との間に構成されていること、を特徴とする。
位置決め部材で第2主液室の外周壁を構成する場合には、この位置決め部材を用いて保持部材との間に、第2主液室を容易に構成することができる。
本発明の請求項7に記載の防振装置は、前記位置決め部材が、前記上外周部材及び前記下外周部材の少なくとも一方が、前記上外周部材及び前記下外周部材の他方へ向かって延出される延出部を有し、前記延出部が前記上外周部材及び前記下外周部材の他方と当接されて前記上外周部材と前記下外周部材との間の位置決めが行われること、を特徴とする。
このように、上外周部材または下外周部材、又は、上外周部材及び下外周部材の両方に延出部を形成することにより、別部材を用いることなく、上外周部材下外周部材との間の位置決めを行うことができる。
本発明の請求項8に記載の防振装置は、前記第2制限通路は、前記保持部材と前記下外周部材との間に構成されていること、を特徴とする。
このように、第2制限通路を、保持部材と下外周部材との間に構成することができる。
本発明の請求項9に記載の防振装置は、前記第1制限通路は、前記仕切部材に構成されていること、を特徴とする。
このように、仕切部材を用いて第1第主液室と副液室とを区画することにより、第1制限通路を仕切部材に構成することができ、第1制限通路の路長や断面などを、比較的高い自由度をもって設計することができる。
本発明は上記の構成としたので、軸方向だけでなく、この軸方向と直交する軸直方向でも振動減衰する防振装置において、仕切隔壁の耐久性を向上させることができる。
本発明の第1実施形態に係る防振装置の構成を示す軸方向の断面図である。 本発明の第1実施形態に係る防振装置の図1とは異なる位置での軸方向の断面図である。 本発明の第1実施形態に係る防振装置の本体部の構成を示す軸方向の断面図である。 本発明の第1実施形態に係る防振装置の本体部の図3とは異なる位置での軸方向の断面図である。 本発明の第2実施形態に係る防振装置の軸直方向の断面図である。 本発明の第2実施形態に係る防振装置の構成を示す軸方向の断面図である。 本発明の第2実施形態に係る防振装置の図1とは異なる位置での軸方向の断面図である。 本発明の第2実施形態に係る防振装置の本体部の構成を示す軸方向の断面図である。 本発明の第2実施形態に係る防振装置の本体部の図3とは異なる位置での軸方向の断面図である。 本発明の第2実施形態に係る防振装置の軸直方向の断面図である。 本発明の第3実施形態に係る防振装置の構成を示す軸方向の断面図である。 本発明の第3実施形態に係る防振装置の図11とは異なる位置での軸方向の断面図である。 本発明の第3実施形態に係る防振装置の構成を軸方向に沿って部分的に破断して示す斜視図である。 本発明の第3実施形態に係る防振装置の本体部の軸心方向における位置決めを行う前の構成を示す軸方向の断面図である。 本発明の第3実施形態に係る防振装置の軸直方向の断面図である。
[第1実施形態]
図1〜5には本発明の第1実施形態の防振装置12が示されている。この防振装置12は、例えば、自動車におけるエンジンマウントとして用いられるものであり、振動受け部である車体上において、振動発生部となるエンジンを支持する。なお、図面において符号Sは防振装置12の軸心を示しており、この軸心Sに沿った方向を防振装置12の軸方向、軸心Sに直交する方向(軸直方向)を防振装置12の径方向とする。防振装置12は、軸心Sに沿った方向が主振動入力方向となるように配置される。
図2〜図5にも示すように、防振装置12は、保持部材14、内側取付部材22、外周部材24、及び、ゴム弾性体30を有している。
保持部材14は、略円筒状に形成され、筒軸方向中央よりも下方の位置には、段部14Dを経て縮径された縮径部14Sが形成されている。保持部材14は、筒軸方向が軸心Sと一致するように配置されている。また、保持部材14の内周面の略全体に渡って、略円筒状の被覆ゴム16が加硫接着され被覆されている。被覆ゴム16の下端近傍からは、ダイヤフラム18が径方向内側へ向かって一体的に延出されている。
ダイヤフラム18は、その中央部が上方に向かって凸となるように湾曲された膜状の部材であり、後述する仕切部材50との間に副液室46を構成している。そして、ダイヤフラム18が変形することで副液室46が拡縮され、その容積が変化するようになっている。
保持部材14は、図示しないブラケット部材を介して、車体に取り付けられている。ブラケット部材としては、例えば、筒状体に複数本の脚部が径方向外側に延出されたものを用いることができ、脚部の先端のボルト挿通孔にボルトを挿通することで、防振装置12を車体に取り付けることができる。
内側取付部材22は、略円柱形状とされており、円柱軸方向が軸心Sと一致するように配置されている。内側取付部材22には、軸心Sに沿って保持部材14から突出される側の端面に開口を有する雌ネジ部22Mが形成されている。この雌ネジ部22Mに、たとえばエンジンに連結される部材のボルト等が捩じ込まれて、エンジンが防振装置12に支持される。なお、本実施形態の防振装置12では、軸直方向の振動を減衰させる効果も奏するものであるが、振動が入力していない状態では、内側取付部材22の軸心は保持部材14の筒軸と一致している。
外周部材24は、リング状とされ、軸方向で上外周部材26と下外周部材28に分割されている。上外周部材26及び下外周部材28は、断面がL字形状とされ、L字の開放側が径方向外側下向きになるように配置されている。外周部材24は、軸心S方向からみて、内側取付部材22の外周を囲むように配置されている。上外周部材26と下外周部材28は、軸心S方向に互いに離間して配置されている。軸心S方向において、上外周部材26は内側取付部材22の中間部分に配置され、下外周部材28は内側取付部材22の端部よりも外側に配置されている。
内側取付部材22と外周部材24の間には、ゴム弾性体30が配置されており、内側取付部材22と外周部材24とが、ゴム弾性体30によって連結されている。ゴム弾性体30は、内側取付部材22の下側部分(雌ネジ部22Mの開口が形成されていない側の部分)から下外周部材28に向かって延在されつつ次第に拡径された略円錐台状のゴム本体部32を有している。ゴム本体部32をこのような形状とすることで、その体積を大きくとることができ、弾性変形時の防振効果を高く発揮させると共に、耐久性が向上されている。
また、ゴム弾性体30は、内側取付部材22のゴム本体部32よりも上方から、上外周部材26に向かって延在されつつ、次第に拡径された蓋部34を有している。ゴム本体部32と蓋部34との間には、径方向外側に開口する凹部30Aが構成されている。この凹部30Aが後述する位置決め部材40に閉鎖されて液室42が構成される。
図2及び図5に示されるように、ゴム本体部32と蓋部34の間には、凹部30Aを内側取付部材22から径方向外側に向かって軸直方向に横切る2枚の仕切隔壁36が形成されている。仕切隔壁36は軸心Sを中心として対称な形状とされ、蓋部34からゴム本体部32まで一体的に連続している。仕切隔壁36、ゴム本体部32、及び、蓋部34は、一体的に加硫形成されている。
仕切隔壁36には、スリット38が形成されている。スリット38は、図2に示されるように、上外周部材26と下外周部材28の間で、外周面から内側取付部材22へ向かって形成されている。スリット38は、仕切隔壁36を上外周部材26側と下外周部材28側に分割するように周方向に延びると共に、仕切隔壁36の外周面から径方向内側へ向かって切り込まれている。スリット38は、仕切隔壁36の径方向の長さの1/3以上の長さで形成されることが好ましい。
内側取付部材22、外周部材24、ゴム弾性体30、及び、仕切隔壁36は、保持部材14の筒内に組み付けられている。
外周部材24は、下外周部材28が縮径部14Sに近い側に配置され、上外周部材26及び下外周部材28が共に保持部材14の内周に沿って配置されている。内側取付部材22は、雌ネジ部22Mの開口形成側が軸心S方向で保持部材14から突出されている。
外周部材24の上外周部材26と下外周部材28の間には、位置決め部材40が配置されている。位置決め部材40は、円筒形状で周方向に2分割とされている。位置決め部材40の外径は、保持部材14の内側の被覆ゴム16に密着可能となるように設定されている。位置決め部材40は、保持部材14の内壁に沿って配置され、仕切隔壁36の外周部分で突き合わされている。
位置決め部材40は、軸心S方向の両端面40Aが上外周部材26及び下外周部材28と当接されている。位置決め部材40の軸心S方向の長さは、上外周部材26及び下外周部材28が当接されると、仕切隔壁36が軸心S方向に圧縮されてスリット38の上下の界面38P同士が密着されるように軸心S方向の長さが設定されている。位置決め部材40により、上外周部材26と下外周部材28の軸心S方向の位置決めが行われている。
上外周部材26は、L字の一辺が径方向外側に突出され、保持部材14の上端との間でカシメ固定され、カシメ部14Aが構成されている。下外周部材28は、L字の一辺の先端面が被覆ゴム16に突き当てられ、L字の他辺は被覆ゴム16と離間して略平行に配置されている。この離間部分に、後述する第2制限流路62が構成される。
また、上記の組み付けにより、仕切隔壁36は、図4に示されるような、スリット38が開いた状態から、図2に示されるように、軸心S方向に圧縮され、スリット38の界面38Pが互いに密着された状態となる。仕切隔壁36の外周面は、位置決め部材40の内周面に密着され、図1及び図5に示されるように、液室42が仕切隔壁36により2つの第2主液室42A、42Bに区画される。
保持部材14の筒内で下外周部材28と縮径部14Sの間には、仕切部材50が配置されている。仕切部材50は、ダイヤフラム18とゴム本体部32の間の空間を、2つに区画している。仕切部材50とゴム本体部32の間には、第1主液室44が構成される。第1主液室44には、エチレングリコール、シリコンオイル等の液体が満たされている。仕切部材50とダイヤフラム18との間には、副液室46が構成されている。副液室46にも第1主液室44と同様に、エチレングリコール、シリコンオイル等の液体が満たされている。副液室46の一部はダイヤフラム18で構成されているので、ダイヤフラム18の変形により副液室46を大気圧に近い内圧状態とする(そのように流体の流入及び流出を生じさせる)ことが可能である。
仕切部材50は、厚みの厚い略円板状とされ、軸方向に2分割された上下ピースが接合されて構成されている。仕切部材50の中央部には、中央通路51が構成されている。中央通路51は、厚み方向に貫通する開口穴52に円板状の可動板56を配置し、開口穴52の両端を一対の蓋板部54で覆って構成されている。蓋板部54には複数の連通穴54Aが構成され、可動板56は、一対の蓋板部54間で振動可能とされている。中央通路51は、特定の周波数範囲の振動(たとえばアイドル振動)に対応して径や連通穴54Aの位置等が設定されている。
開口穴52の径方向外側には、周方向に延びる第1制限通路60が構成されている。第1制限通路60は、一端が第1主液室44と連通され、他端が副液室46に連通されており、第1主液室44と副液室46との間での液体の移動を許容する流路となっている。第1制限通路60の路長及び断面積は、特定の周波数範囲の振動(たとえばシェイク振動)に対応して設定されている。すなわち、特定の周波数範囲の振動時における第1主液室44と副液室46との間の液体移動による第1制限通路60内での液柱共振により、防振効果を発揮できるように調整されている。
第1制限通路60の径方向外側には、周方向に延びる第2制限通路62A、62Bが構成されている。第2制限通路62Aは、一端が副液室46と連通し、他端が下外周部材28と被覆ゴム16の間を経由して第2主液室42Aと連通し、第2主液室42Aと副液室46との間での液体の移動を許容する流路となっている。また、第2制限通路62Bは、一端が副液室46と連通し、他端が下外周部材28と被覆ゴム16の間を経由して第2主液室42Bと連通し、第2主液室42Bと副液室46との間での液体の移動を許容する流路となっている。第2制限通路62A、62Bの路長及び断面積は、特定の周波数範囲の振動(例えば、シェイク振動よりも若干低い周波数)に対応して設定されている。すなわち、特定の周波数範囲の振動時における第2主液室42Aと副液室46、第2主液室42Bと副液室46との間の液体移動による第2制限通路62内での液柱共振により、防振効果を発揮できるように調整されている。
次に、防振装置12の製造方法について説明する。
まず、内側取付部材22、及び、外周部材24(上外周部材26、下外周部材28)を金型内にセットし、金型内に未加硫ゴムを注入し、加硫処理を行って、ゴム本体部32、蓋部34、仕切隔壁36を一体的に形成する。このようにして形成された部材を、本体部11とする(図3、4参照)。また、保持部材14を金型にセットし、金型内に未加硫ゴムを注入し、加硫処理を行って、被覆ゴム16、ダイヤフラム18を一体的に形成する。また、仕切部材50に可動板56をセットして、分割された上下ピースを接合する。
次に、保持部材14内へ、可動板56の組み込まれた仕切部材50を挿入し、段部14Dへ外周部を当接させて位置決めを行う。
次に、本体部11の上外周部材26と下外周部材28の間に位置決め部材40を組み付けて、本体部11を下外周部材28側から保持部材14内へ圧入し、下外周部材28を仕切部材50に当接させる。そして、上外周部材26の下端面を位置決め部材40の端面40Aに当接させると共に、上外周部材26の径方向外側へ突出した部分の下面を保持部材14のフランジ部14Fへ当接させ、フランジ部14Fの先端を上外周部材26の先端を覆うように径方向内側へ折り曲げて、カシメ固定する。このとき、仕切隔壁36は、軸心S方向に圧縮され、全体的に予圧縮が付与される。また、スリット38は、完全に隙間がなくなるように界面38P同士が密着される。
なお、この組み込み作業は、内部に充填する液体を用意し、この液体中で行う。これにより、第1主液室44、第2主液室42、副液室46、第1制限通路60、第2制限通路62に、液体を充填することができる。
上記のようにして、防振装置12を製造することができる。
次に、上記のように構成された本実施形態に係る防振装置12の作用を説明する。防振装置12では、内側取付部材22に連結されたエンジンが作動すると、エンジンからの振動が内側取付部材22を介してゴム本体部32に伝達される。このとき、ゴム本体部32は吸振主体として作用し、ゴム本体部32の変形に伴った内部摩擦等による吸振作用により入力振動が吸収される。
このとき、エンジンから入力する主要な振動としては、例えば、エンジン内のピストンがシリンダ内で往復移動することにより発生する振動(主振動)と、エンジン内のクランクシャフトの回転速度が変化することにより生じる振動(副振動)とが挙げられる。エンジンが直列型の場合には、前記主振動は、その振幅方向(主振幅方向)が車両の上下方向と略一致するものとなり、また前記副振動は、その振幅方向(副振幅方向)が主振動の振幅方向とは直交する車両の前後方向(エンジンが横置き)又は左右方向(エンジンが縦置き)と略一致するものになる。ここで、ゴム本体部32は、入力振動が主振幅方向に沿った主振動であっても、副振幅方向に沿った副振動であっても、これらの振動の一部を吸振作用により吸収可能である。
また、防振装置12では、第1主液室44と副液室46が、第1制限通路60を通して連通している。したがって、防振装置12に主振幅方向に沿った主振動が入力すると、ゴム本体部32が軸心S方向に沿って弾性変形し、第1主液室44の内容積を拡縮させ、第1制限通路60を通して第1主液室44と副液室46との間を、液体が相互に流通する。
このとき、第1制限通路60における路長及び断面積、すなわち液体の流通抵抗が、特定の周波数範囲(例えばシェイク振動の周波数)に適合するように設定(チューニング)されているので、入力する主振動が当該特定の周波数範囲である場合には、第1制限通路60を通して第1主液室44と副液室46との間をシェイク振動に同期して相互に流通する液体に共振現象(液柱共振)が生じ、効果的に防振効果を発揮することができる。
また、防振装置12では、第2主液室42A、42Bが、各々、第2制限通路62A、62Bを通して副液室46に連通している。したがって、防振装置12に軸直方向に沿った振動が入力すると、仕切隔壁36及びゴム本体部32が軸直方向に沿って弾性変形し、第2主液室42A、42Bの内容積を拡縮させ、第2制限通路62A、62Bを通して第2主液室42A、42Bと副液室46との間を、液体が相互に流通する。
このとき、第2制限通路62A、62B路長及び断面積、すなわち液体の流通抵抗が、特定の周波数範囲(シェイク振動より若干低い周波数)に適合するように設定(チューニング)されているので、入力する副振動が当該範囲内の周波数振動である場合には、第2制限通路62A、62Bを通して第2主液室42A、42Bと副液室46との間を入力する副振動に同期して相互に流通する液体に共振現象(液柱共振)が生じ、効果的に防振効果を発揮することができる。
本実施形態の防振装置12は、仕切隔壁36にスリット38が形成されている。したがって、防振装置12に振動が入力された際に、仕切隔壁36のスリット38よりも上側部分と下側部分とは、互いに引っ張り合うことがなく相手の影響を受けにくい。したがって、仕切隔壁36が比較的自由に変形し、応力の集中が緩和され、仕切隔壁36の耐久性を向上させることができる。また、仕切隔壁36は、ゴム本体部32と一体的に形成されているので、仕切隔壁をゴム本体部と別々の部品とした場合と比較して、簡易な構成とすることができ、製造コストを抑えることができる。
なお、本実施形態では、上外周部材26と下外周部材28の間に位置決め部材40を配置して上外周部材26と下外周部材28の位置決めを行ったが、位置決め部材40は必ずしも必要ではない。例えば、上外周部材26の位置決めは、保持部材14のフランジ部14FにL字の一辺を当接させることによって行うことができ、下外周部材28の位置決めは、保持部材14に径方向内側に凸となる絞り溝を形成することによって行うことができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付して図示し(図6〜図10)、詳細な説明は省略する。
本実施形態の防振装置70は、図6〜9に示されるように、第1実施形態の外周部材24の下外周部材28が断面L字ではなく、断面I字、即ち、直線形状のリングとされている(下外周部材29)。また、第1実施形態の位置決め部材40に代えて、位置決め流路部材41が用いられている。さらに、仕切隔壁36に、後述する凹溝41Mに対応した溝36Mが構成されている。
位置決め流路部材41は、略円筒形状とされ、周方向に2分割されている。位置決め流路部材41の外径は、保持部材14の内側の被覆ゴム16に密着可能となるように設定されている。位置決め流路部材41は、保持部材14の内壁に沿って配置され、仕切隔壁36の外周部分で突き合わされ、凹溝41Mが溝36Mに嵌め込まれている。また、位置決め流路部材41の外周には、周方向に沿って凹溝41Mが形成されている。凹溝41Mによって径方向内側へ入り込んだ部分の下側には、段部41Dが形成されている。下外周部材29は、位置決め部材41の凹溝41Mよりも下側の内周に配置され、上端面が段部41Dに当接されている。また、上外周部材26の下端面は、位置決め流路部材41の上端面41Aに当接されている。位置決め流路部材41の軸心S方向の長さは、上外周部材26及び下外周部材29が上記のように組み付けられると、仕切隔壁36が軸心S方向に圧縮されてスリット38の上下の界面38P同士が密着されるように軸心S方向の長さが設定されている。位置決め流路部材41により、上外周部材26と下外周部材29の軸心S方向の位置決めが行われている。
図10にも示されるように、本実施形態では、第1実施形態の第2制限通路62A、62Bに代えて、第2制限通路64が形成されている。第2制限通路64は、凹溝41Mと被覆ゴム16との間に構成され、一端が連通口41Aで第2主液室42Aに連通され、他端が連通口41Bで第2主液室42Bに連通されていて、第2主液室42Aと第2主液室42Bとの間での液体の移動を許容する流路となっている。第2制限通路64の路長及び断面積は、特定の周波数範囲の振動(例えば、シェイク振動よりも若干低い周波数)に対応して設定されている。すなわち、特定の周波数範囲の振動時における第2主液室42A、42B間の液体移動による第2制限通路64内での液柱共振により、防振効果を発揮できるように調整されている。
本実施形態の防振装置70においても、仕切隔壁36にスリット38が形成されている。したがって、防振装置70に振動が入力された際に、仕切隔壁36のスリット38よりも上側部分と下側部分とは、互いに引っ張り合うことがなく相手の影響を受けにくい。したがって、仕切隔壁36が比較的自由に変形し、応力の集中が緩和され、仕切隔壁36の耐久性を向上させることができる。
なお、本実施形態の防振装置70では、第2主液室42A、42B同士が第2制限通路64で連通されているので、副振動の入力時においては、主に第2主液室42A、42B間で液体の流通により、防振効果を得ることができる。
また、第1実施形態の防振装置12では、第2主液室42A、42Bと、副液室46とを連通させる構成としているが、第2主液室42A、42B同士を連通させてもよいし、第2主液室42A、42Bと、副液室46とを連通させ、且つ、第2主液室42A、42B同士も連通させる構成にしてもよい。
また、本実施形態では、下外周部材29のみ位置決め流路部材41の内側に配置しているが、上外周部材26も位置決め流路部材41の内側に配置してもよい。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、第1、第2実施形態と同様の部分には同一の符号を付して図示(図11〜15)し、詳細な説明は省略する。
本実施形態の防振装置72は、図11、12に示されるように、第1実施形態の外周部材24の下外周部材28に代えて、L字の屈曲部分が面取りされてテーパー形状とされた、下外周部材27を備えている。下外周部材27の外側には、ゴム材33により溝部33Mが構成され、被覆ゴム16との間に第2制限通路62A、62Bが構成されている。ゴム材33は、ゴム本体部32と一体的に形成されている。
また、防振装置72は、第1実施形態の位置決め部材40を備えておらず、上外周部材26に延出部74が形成されており、延出部74が位置決め部材として機能する。延出部74は、軸心S方向からみて、上外周部材26の第2主液室42A、42Bに対応する中間部分から、軸心Sに沿って下外周部材27へ向かって延出されている。延出部74は、上外周部材26と一体的に形成され、全面がゴム膜74Aにより覆われている。延出部74は、外周部材24が保持部材14に組み付けられていない状態で、先端部74が下外周部材27と距離Sだけ離間されており、保持部材14に組み付けられた状態で、先端部74が下外周部材27へ当接される。距離Sは、仕切隔壁36が軸心S方向に圧縮されてスリット38の上下の界面38P同士が密着されるように設定されている。延出部74により、上外周部材26と下外周部材27の軸心S方向の位置決めが行われている。延出部74の先端部74Sが下外周部材27へ当接されることにより、距離S分だけ仕切隔壁36が圧縮され、スリット38の界面38P同士が密着し、第2主液室42A、42Bが区画される。
また、本実施形態の蓋部34は、図14に示されるように、保持部材14へ組み付ける前には、外面が軸直方向に沿って延びる形状とされ、保持部材14へ組み付けられると、図11に示されるように、径方向外側(上外周部材26側)が下がるように傾斜する形状となっている。
第2制限通路62Aは、連通穴62C(図13参照)を介して一端が副液室46と連通されており、第2主液室42Aと副液室46との間は、第2制限通路62Aを介して連通されている。第2制限通路62Bは、連通穴62Dを(図13参照)を介して一端が副液室46と連通されており、第2主液室42Bと副液室46との間は、第2制限通路62Bを介して連通されている。第1制限通路60は、連通部60Cで第1主液室44と連通されており、第1主液室44と副液室46との間は、第1制限通路60を介して連通されている。
次に、防振装置72の製造方法について説明する。
まず、内側取付部材22、及び、外周部材24(上外周部材26、下外周部材27)を金型内にセットし、金型内に未加硫ゴムを注入し、加硫処理を行って、ゴム本体部32、蓋部34、仕切隔壁36を一体的に形成する。このようにして形成された部材を、本体部10とする(図13参照)。また、第1実施形態と同様にして、保持部材14に被覆ゴム16、ダイヤフラム18を一体的に加硫形成し、仕切部材50に可動板56をセットして上下ピースを接合する。
次に、保持部材14内へ、可動板56の組み込まれた仕切部材50を挿入し、段部14Dへ外周部を当接させて位置決めを行う。
次に、本体部10を下外周部材27側から保持部材14内へ圧入し、下外周部材27を仕切部材50に当接させる(図14参照)。そして、上外周部材26から延びる延出部74の先端部74Sを下外周部材27に当接させる。そして、保持部材14のフランジ部14Fの先端を上外周部材26の先端を覆うように径方向内側へ折り曲げて、カシメ固定する。このとき、仕切隔壁36は、軸心S方向に圧縮され、全体的に予圧縮が付与される。また、スリット38は、完全に隙間がなくなるように界面38P同士が密着される。この組み込み作業は、第1実施形態と同様に、この液体中で行う。このようにして、防振装置72を製造することができる。
本実施形態では、上外周部材26と下外周部材27の軸心S方向の位置決めを、延出部74により行っている。延出部74は、上外周部材26と一体的に形成されているので、別部材を組み付けて位置決めする必要がなく、簡易に製造を行うことができる。
なお、本実施形態では、延出部74を上外周部材26と一体的に形成したが、下外周部材27と延出部74を一体的に形成することもでき、上外周部材26と下外周部材27の両方に延出部74を構成することもできる。
12 防振装置
14 保持部材
18 ダイヤフラム
22 内側取付部材
24 外周部材
26 上外周部材
27、28、29 下外周部材
30 ゴム弾性体
32 ゴム本体部
34 蓋部
36 仕切隔壁
38 スリット
38P 界面
40 位置決め部材
41 流路
41 位置決め流路部材
42 液
2A 第2主液室
42B 第2主液室
44 第1主液室
46 副液室
50 仕切部材
60 第1制限通路
62A 第2制限通路
62B 第2制限通路
64 第2制限通路
70 防振装置
72 防振装置
74 延出部
S 軸心

Claims (9)

  1. 振動発生部及び振動受部の一方に連結された内側取付部材と、
    振動発生部及び振動受部の他方に連結され、主振動入力方向からみて前記内側取付部材の外周を囲むように配置された上外周部材及び下外周部材と、
    筒状とされ、前記上外周部材と前記下外周部材を筒内に保持する保持部材と、
    前記内側取付部材と、前記上外周部材及び前記下外周部材のそれぞれとを弾性的に連結する弾性体と、
    前記弾性体と、前記弾性体の前記主振動入力方向外側に設けられた仕切部材との間に形成され、液体が充填された第1主液室と、
    前記仕切部材と前記仕切部材の前記主振動入力方向外側に設けられたダイヤフラムとの間に形成されると共に液体が充填され、前記ダイヤフラムにより液圧変化に応じて内容積が拡縮可能とされた副液室と、
    前記第1主液室と前記副液室とを互いに連通させて液体を流通可能とする第1制限通路と、
    前記弾性体の、前記内側取付部材と前記上外周部材とを連結する部分と、前記内側取付部材と前記下外周部材とを連結する部分と前記保持部材との間に構成され、前記第1主液室との間が前記弾性体で区画されて液体が充填された液室と、
    前記弾性体の一部に形成され、前記内側取付部材から径方向外側に向かって軸直方向に延出し、前記液室を周方向に複数の第2主液室に区画する仕切隔壁と、
    前記仕切隔壁に設けられた前記保持部材側から前記内側取付部材へ向かうように形成され、前記保持部材に前記上外周部材と前記下外周部材とを組み付けた状態で界面同士が圧着されたスリットと、
    複数の前記第2主液室同士の間、又は第2主液室のそれぞれと前記副液室との間での液体の移動を可能とする第2制限通路と、
    を備えた防振装置。
  2. 前記保持部材の内周に沿って前記上外周部材と前記下外周部材との間に配置され、前記上外周部材と前記下外周部材とが互いに近づく方向へ移動することを阻止して前記主振動入力方向の位置決めを行う位置決め部材を備えた、請求項1に記載の防振装置。
  3. 前記位置決め部材は環状部材であり、前記保持部材の周方向に複数に分割して配置されていること、を特徴とする請求項2に記載の防振装置。
  4. 前記位置決め部材は、前記主振動入力方向の両端面が前記上外周部材及び前記下外周部材に各々当接して前記上外周部材と前記下外周部材とが互いに近づく方向へ移動することを阻止していること、を特徴とする請求項2または請求項3に記載の防振装置。
  5. 前記位置決め部材は径方向内側に向かって突出する凸部を備え、前記上外周部材及び前記下外周部材の少なくとも一方が、前記凸部に当接して位置決めされていること、を特徴とする請求項2または請求項3に記載の防振装置。
  6. 前記第2制限通路は、前記凸部と前記保持部材との間に構成されていること、を特徴とする請求項5に記載の防振装置。
  7. 前記位置決め部材は、前記上外周部材及び前記下外周部材の少なくとも一方が、前記上外周部材及び前記下外周部材の他方へ向かって延出される延出部を有し、前記延出部が前記上外周部材及び前記下外周部材の他方と当接されて前記上外周部材と前記下外周部材との間の位置決めが行われること、を特徴とする請求項1に記載の防振装置。
  8. 前記第2制限通路は、前記保持部材と前記下外周部材との間に構成されていること、を特徴とする請求項1に記載の防振装置。
  9. 前記第1制限通路は、前記仕切部材に構成されていること、を特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の防振装置。
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