JP5800734B2 - 硬質発泡成形品の製造方法及びこれに用いる袋状体付き発泡型 - Google Patents
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そして、フィルム工法に派生する問題を解消すべく、その後、いくつか改良発明が提案されている(例えば特許文献1,2)。
さらに、発泡成形過程で、余剰の発泡ガスをうまく抜かなければならなかった。特許文献2は「相手型1の型割面においてキャビティと外部を連通する型構11を設け、相手型用樹脂シート10には裏面側に突出した型溝11に嵌合する凸部12を設ける」対策を講じるが、余剰発泡ガスのためだけに、型構造,樹脂シートにそれぞれ型構11,凸部12を形成しなければならず、型構造等が複雑化するなど高コストになる傾向にあった。さらにいえば、発泡成形で発泡ガスが抜け難くい箇所は、ショートし、製品に欠肉ができる問題があり、特に製品角部等で、取付け座としてのインサート部品が設置されるとなると、その周囲で発泡成形時に発泡ガスが完全に抜け出ない事態に遭遇し、特許文献1,2では十分に応えられない虞があった。
請求項4に記載の発明の要旨は、少なくとも一方の分割型(2)に、硬質発泡成形品(6)のキャビティ用凹部(20)が形成され、さらに該凹部(20)の側壁面(21a)に掘られたスリット溝(24)が、型割面(25)から凹部(20)の底面(21b)へ向けて形成される発泡型(1)と、該凹部(20)にフィットする袋状の袋主部(41)が設けられると共に、前記スリット溝(24)に対応させて該袋主部(41)から外方へ屈折してひだ状に突出する折畳み部(45)が、横断面V字状の二つ折り部分(46)を形成して、前記袋主部(41)の開口縁(41a)から袋主部(41)の底部分(42)へ向かう側壁部分(43)に設けられるフィルム製袋状体(4)と、を具備し、且つ、前記凹部(20)への該袋状体(4)のセットで、前記スリット溝(24)に挿入した該折畳み部(45)に係る二つ折り部分(46)の対向面(46a)間に隙間(ε)が設けられることを特徴とする硬質発泡成形品の製造用袋状体付き発泡型にある。
請求項2,4の発明のごとく、凹部(20)への袋状体(4)のセットで、スリット溝(24)に挿入された折畳み部(45)に係る二つ折り部分(46)の対向面間に隙間(ε)が設けられると、発泡成形過程で余剰発泡ガスのガス抜きは、該隙間から型割面同士の間隙を通って型外へスムーズに抜け出るので、効果的なガス抜きを行うことができる。さらに、スリット溝(24)に挿入された折畳み部(45)に隙間(ε)が設けられると、スリット溝(24)への折畳み部(45)の挿入が円滑に進む。
請求項3の発明のごとく、硬質発泡成形品(6)の角部(67)又は角部(67)寄りに対応する発泡型(1)の部位で、型割面(25)から凹部底面(21b)へ向けてスリット溝(24)が形成され、さらにスリット溝(24)に対応する袋状体(4)の部位に折畳み部(45)が形成されると、フィルムシートから真空成形等の予備成形で、シワ等が発生しない立体形状の袋状体を作製し易くなる。また、袋状体の脱形工程で、袋状体付き硬質発泡成形品の角部又は角部寄りに折畳み部(45)が在ると、該折畳み部を開くことによって袋状体の袋口が大きく開くので、最終製品たる硬質発泡成形品からフィルム製袋状体を一層剥がし易くなる。
(1)実施形態1
図1〜図12は本発明の硬質発泡成形品の製造方法及びこれに用いる袋状体付き発泡型の一形態で、図1は発泡成形品の製法に用いる発泡型の概略図、図2は図1の発泡型に袋状体をセットした説明図、図3は凹型の斜視図、図4は図3の角部周りの平面図、図5は図4の凹型に袋状体をセットした平面図、図6は袋状体の説明斜視図、図7は図5のVII-VII線矢視図、図8は袋状体のセット後、凹型に発泡原料を注入すると共に型閉じする説明図、図9は硬質発泡成形品を発泡成形する説明図、図10は脱型で取り出した袋状体付き硬質発泡成形品の斜視図、図11は図10から袋状体を剥がし取った硬質発泡成形品の斜視図、図12は本製法の概略フロー説明図である。尚、各図はスリット溝,袋状体を判り易くするため、溝幅,袋状体の厚みを大きく描く。
硬質発泡成形品の製造用袋状体付き発泡型は、一対の分割型2,3とフィルム製袋状体4とを具備する(図1〜図3)。ここでは、図11のような硬質発泡成形品6の製造用発泡型1とするが、図1,図2,図8,図9では発泡型1を簡略図示する。図1は図3のI-I線矢視図に相当する。
そして、下型2の側壁面21aには、型割面25から凹部20の底面21bへ向けて鉛直方向に、細長く掘ったスリット溝24の窪みが複数形成される(図3)。スリット溝24は側壁面21aに対し垂直に型本体内へ掘り込まれる溝である。スリット溝24の形成により型割面25と側壁面21aに細長いすき間が現れる。側壁面21aに掘られたスリット溝24の溝深さLは、図1,図3のごとく型割面25で最も大きな溝深さLmaxとなる。スリット溝24の高さhは、型割面25から凹部20の底面21bへと向かい、それらの多くが凹部20の底面21b若しくは底面21b近くにまで達する高さになっている。溝深さLは、型割面25から凹部底面21bへ進むにつれ、徐々に短くなる。見方を変えれば、スリット溝24はその溝底が凹部底面21b側の下端地点242(溝深さがゼロの地点)から型割面25の上方に向け、次第に外方傾斜し深くなっている。図1の正面視で見るスリット溝24の形状は、側壁面21a及び型割面25に現れるスリット溝24の溝長をそれぞれ短辺とし、凹部底面21b側の溝底に係る下端地点242から型割面25に現れたスリット溝24の溝底243までの長さを斜辺とする三角形になっている。
スリット溝24は、また、硬質発泡成形品6の角部67又は角部67寄りに対応する発泡型1の部位で、型割面25から凹部底面21bへ向けて形成される。硬質発泡成形品6の裏面視で、角部67のアールを形成するアール止まり地点671若しくはこの近くで、硬質発泡成形品6の裏面61に対し垂直方向VR(図11参照)に折畳み部45が配されるよう、スリット溝24が下型2の型割面25から凹部底面21bへ向けて鉛直方向に形成される(図3)。このように、硬質発泡成形品6の角部67又は角部67寄りに対応する下型側壁面21aの部位(対応角部27)で、スリット溝24を型割面25から凹部底面21bの方向に設けるのが好ましい。該スリット溝24の位置に、袋状体4の折畳み部45を形成することになり、シート状フィルムから袋状体4を造る予備成形で、硬質発泡成形品6を造る袋主部41の立体形状がより造り易くなるからである。
図3中、符号28はインサート部品7の受座、符号29は硬質発泡成形品6の台座部分68を形成する隆起部、符号8はインサート用係止具を示す。
W[mm]=t[mm]×2+0.2〜0.5[mm]
スリット溝24に折畳み部45を挿入しても0.2mm〜0.5mmの隙間εがあることで、余剰発泡ガスgの逃し隙間εに役立つだけでなく、折畳み部45のスリット溝24への挿入,セットも容易になる。本実施形態は、フィルム厚tを0.5mmとし、横幅Wを1.5mmに設定する。
硬質発泡成形品の製造方法は、前記袋状体4付き発泡型1を用いて、例えば図11ごとくの硬質発泡成形品6を以下のように製造する。
製造に先立ち、前記下型2と上型3からなる発泡型1と共に前記袋状体4を準備する(図1,図2)。硬質発泡成形品6のキャビティ用凹部20を形成し、凹部20の側壁面21aに掘られたスリット溝24を、型割面25から凹部底面21bへ向けて形成する下型2が用意される。また、フィルムシートから真空成形等の予備成形で造られる袋状体4が用意される。凹部開口20aに袋口40を合わせて、袋状の袋主部41がフィットすると共に、スリット溝24に対応する部位で、袋主部41から外方へひだ状に突出する折畳み部45が、袋主部41の開口縁41aから袋主部41の底部分42へ向かう側壁部分43に設けられるフィルム製袋状体4を準備する。
このとき、スリット溝24に挿入した折畳み部45では、二つ折り部分46の二枚分厚みよりもスリット溝24の溝幅Wを大きくしており、スリット溝24への折畳み部45の挿入が円滑に進む。スリット溝24に折畳み部45が挿着された図5,図7の状態下、二つ折り部分46の対向面46a間には隙間εができる。
その後、ヒンジ軸2e1を支点に上型3を回動させ(図8の鎖線矢印)、該上型3を下型2に被せて型閉じする(型閉じ工程)。
かくして、折畳み部45に設けられた隙間εの逃し路から余剰発泡ガスgのガス抜きが支障なく行われ、図11の硬質ウレタン発泡成形品6が発泡成形される。
袋状体の脱形工程では、折畳み部45が設けられているので、その口46e,46fを開いて、袋状体4付き発泡成形品6から袋状体4を難なく剥がすことができる。袋状体の脱形工程で剥がし取った袋状体4は、その形状戻しを経て、袋状体のセット工程用として再使用される。一方、製品脱型工程後の発泡型1は型開状態のまま、袋状体のセット工程に入る。その後、前記手順を繰り返し、硬質発泡成形品6を次々と製造していくこととなる。
このように構成した発泡成形品の製造方法及びこれに用いる袋状体付き発泡型1は、発泡型1と袋状体4を備えて、袋主部41の袋内に発泡原料5を注入し発泡成形するので、離型剤塗布を要しない。ウレタン原料等の接着性発泡原料5であっても、ポリプロピレン樹脂等の非極性樹脂フィルムを使って予備成形された袋状体4が介在し、型に発泡原料5が直接接することがないので、型内面21に離型剤を塗布しなくても済む。
凹部20への袋状体4のセット工程では、スリット溝24,折畳み部45の形成によって、アシストプラグ等の押さえる力を借りなくても、従来発生し易かったシワをなくすことができる。さらに、凹部20の型内面21を袋主部41で覆うようにして、スリット溝24に折畳み部45を挿入し袋状体4をセットするのであるが、スリット溝24に挿入する折畳み部45が、凹部20に沿って配される袋主部41の保形維持に貢献する。スリットに挿入した折畳み部45が凹部20にセットした袋主部41の安定保持に役立つ。
加えて、硬質発泡成形品6の角部67又は角部67寄りに対応する発泡型1の部位にスリット溝24が形成され、さらにスリット溝24に対応する袋状体4の部位に折畳み部45が形成されると、袋状体4の剥がしが一層楽になる。袋状体の脱形工程時、袋状体4付き硬質発泡成形品6の角部67又は角部67寄りに折畳み部45が在り、該折畳み部45を開くことによって袋状体4の袋口40が大きく開くので、最終製品たる硬質発泡成形品6が複雑形状であっても、フィルム製袋状体4を剥がす作業が非常にスムーズに行えるようになる。
さらに、スリット溝24に挿入した折畳み部45に隙間εが設けられると、該隙間εが余裕代になって、スリット溝24に折畳み部45を簡単に挿入でき、発泡型1への袋状体4のセットが容易で、作業性向上にも貢献するなど、数々の優れた効果を発揮する。
20 凹部
21 型内面
21a 側壁面
21b 底面
24 スリット溝
25 型割面
4 袋状体
40 袋口
41 袋主部
42 底部分
43 側壁部分
45 折畳み部
46 二つ折り部分
6 硬質発泡成形品
67 角部
ε 隙間
Claims (4)
- 発泡型(1)の一方の分割型(2)に、硬質発泡成形品(6)のキャビティ用凹部(20)を形成し、さらに該凹部(20)の側壁面(21a)に掘られたスリット溝(24)を、型割面(25)から凹部(20)の底面(21b)へ向けて形成する一方、該凹部(20)の開口(20a)に袋口(40)を合わせて、袋状の袋主部(41)がフィットすると共に、前記スリット溝(24)に対応する部位で、該袋主部(41)から外方へ屈折してひだ状に突出する折畳み部(45)が、前記袋主部(41)の開口縁(41a)から袋主部(41)の底部分(42)へ向かう側壁部分(43)に設けられるフィルム製袋状体(4)を、予備成形で準備した後、
型開状態で、前記スリット溝(24)に折畳み部(45)を挿入し且つ前記凹部(20)の型内面(21)を前記袋主部(41)で覆うようにして、前記袋状体(4)をセットした後、該袋主部(41)の袋内に発泡原料(5)を注入すると共に、型閉じして、硬質発泡成形品(6)を成形することを特徴とする硬質発泡成形品の製造方法。 - 前記折畳み部(45)が横断面V字状に折り畳まれた二つ折り部分(46)で形成され、且つ前記凹部(20)への前記袋状体(4)のセットで、前記スリット溝(24)に挿入された前記折畳み部(45)に係る二つ折り部分(46)の対向面(46a)間に隙間(ε)が設けられる請求項1記載の硬質発泡成形品の製造方法。
- 硬質発泡成形品(6)の角部(67)又は角部(67)寄りに対応する発泡型(1)の部位で、型割面(25)から凹部底面(21b)へ向けて、前記スリット溝(24)が形成され、さらに該スリット溝(24)に対応する前記袋状体(4)の部位に折畳み部(45)が形成される請求項1又は2に記載の硬質発泡成形品の製造方法。
- 少なくとも一方の分割型(2)に、硬質発泡成形品(6)のキャビティ用凹部(20)が形成され、さらに該凹部(20)の側壁面(21a)に掘られたスリット溝(24)が、型割面(25)から凹部(20)の底面(21b)へ向けて形成される発泡型(1)と、
該凹部(20)にフィットする袋状の袋主部(41)が設けられると共に、前記スリット溝(24)に対応させて該袋主部(41)から外方へ屈折してひだ状に突出する折畳み部(45)が、横断面V字状の二つ折り部分(46)を形成して、前記袋主部(41)の開口縁(41a)から袋主部(41)の底部分(42)へ向かう側壁部分(43)に設けられるフィルム製袋状体(4)と、を具備し、
且つ、前記凹部(20)への該袋状体(4)のセットで、前記スリット溝(24)に挿入した該折畳み部(45)に係る二つ折り部分(46)の対向面(46a)間に隙間(ε)が設けられることを特徴とする硬質発泡成形品の製造用袋状体付き発泡型。
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