JP5800325B2 - 直接駆動アブレーションのためのir波長範囲でのインパルス熱蓄積によるレーザ選択的切断 - Google Patents

直接駆動アブレーションのためのir波長範囲でのインパルス熱蓄積によるレーザ選択的切断 Download PDF

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Description

関連する米国特許出願の相互参照
本特許出願は、2004年12月30日に英語で出願された、発明の名称が「アブレーションのためのインパルス熱蓄積プロファイルの分子レベルでの最適化をもたらす、波長および時間同調IRパルスによるレーザ選択的切断」である米国仮出願第60/640,092号に関するものである。
発明の分野
本発明は、パルスレーザを用いる材料除去方法に関する。標的材料の力学的自由度の直接励起(短寿命振動またはフォノン)によるインパルス熱蓄積(IHD)が、周囲材料に対する損傷を最小限にする新規なアブレーション方法を提供する。この付随損傷の少なさは、材料のレーザ除去が周囲の軟もしくは硬生体材料のいずれをも損傷しないように行うことが好ましい医学的および歯科的用途で特に有利である。
発明の背景
理想的な手術道具は、傷口を最小にし、できるだけ最小量の材料を除去することによって可能な限り非侵襲的となるものと考えられる。レーザの発明以降、サブミクロンの正確さで組織を除去または切除できるレーザに基づくメスの使用が検討されてきた。しかしながら、レーザ手術方法での今日までの問題点は、周囲組織に対する有害な付随損傷であり、それが制約となって、機械的手術道具に代わるものとしてのレーザの使用が広がっていない。
材料アブレーションでは、材料に対してレーザによって送出されるエネルギーにより、照射された体積の材料が、その除去を生じるだけの並進エネルギーを獲得することが必要となる。多くの機構が利用されており、「位相爆発」[1,2]および光力学的破砕[1,3,4]などがある。光力学的破砕の場合、蓄積させるエネルギーは蒸発閾値を超えてはならず、また急激な熱膨張による衝撃波が材料の機械的破壊および放出を生じるのに十分なほど迅速に蓄積されなければならない。しかしながら、光力学的破砕は非効率的であることが良く知られており、「...ほとんどの組織について、IRレーザパルスを用いる材料除去をレーザ−誘導破砕機構によって達成することはできない。」[1]ことが認められている。
「位相爆発」の場合、十分なエネルギーを蓄積させて、材料の蒸発温度を超えるまで被照射体積を過熱し、それにより材料の均一核形成および放出を生じさせなければならない。材料に熱を送出するのが迅速であればあるほど、アブレーションプロセスは速くなり、周囲材料への熱移動によって失われるエネルギー量がより少なくなる。従って、付随損傷の度合いは、レーザパルス幅に大きく依存する[1,5]。長レーザパルス(10nsより大きいものとここでは定義する)の場合、周囲材料への顕著な熱移動がある。生体材料の場合、温度が非常に高くなり、材料は実際に燃焼する。この後者のプロセスは、周囲組織に損傷を与えるだけでなく、実際に治癒の妨げにもなる。
この劇的な効果が図1に示してあり、その図では、下記で説明する骨切断について従来のレーザからの長パルスを短パルスアブレーション機構と比較している。長レーザパルスと水冷を組み合わせることで、燃焼に必要な酸素を排除することにより、炭化効果を防止することができる。しかしながら、その材料はなおも、照射体積において切除されるだけの高温とならなければならず、周囲材料に過剰の熱が蓄積すると組織損傷に至る点は同じである。このレベルの過剰加熱もなお、隣接する組織を深刻に傷付けることから、従来の長パルスレーザを医療手術で広く使用する上での妨げとなってきた。
さらに留意すべき点として、熱蓄積の時間スケールは、吸収されるレーザエネルギー(光子)を熱に変換するのに要する時間と入射光のパルス幅との両方によって決まる。格子加熱の速度は、これら2つの効果のコンボリューションである。入射レーザエネルギーが熱に変換されるのに要する時間が長いほど、熱拡散および熱膨張がエネルギーを周囲材料に伝達し、付随損傷を増加させる時間が長くなる。短レーザパルスの場合、アブレーションプロセスよりはるかに早くレーザエネルギーを蓄積することが可能であるが、その実現は、下記で述べる他の有害効果のために困難になる。
アブレーションの閾値は、単位体積当たり蓄積されるエネルギーに大きく依存する。所定量のレーザエネルギーについて、光を吸収する材料の量が少ないほど、照射領域における格子温度の上昇が大きくなり、隣接する材料へ移動させて熱誘導損傷を引き起こし得る総熱量は小さくなる。すなわち、光透過深さが小さいほど、アブレーションのための特定温度に到達するのに必要なエネルギーが小さくなり、材料に移動する総熱量が少なくなる。レーザ切断における付随損傷の最小化における目的は、単位体積または単位質量当たり吸収されるエネルギーを最大化して、アブレーション効率を高めることにある。
全ての材料がUV〜VUV波長範囲(ここでは、ミクロン〜サブミクロンの吸収深さとして定義される)で光を強く吸収することから、吸収深さを小さくするために、エキシマ(UV)レーザを用いることができる。しかしながら、この波長範囲は、UV光化学および材料のイオン化によって放射損傷をもたらす。この光化学は多くの用途で望ましくなく、治癒を促進するためにイオン化効果および付随する光化学を回避しなければならないほとんどの医学的および歯科的用途において特に重大な問題である。
UVレーザの使用に代わるものとしては、フェムト秒(fs)レーザパルスの使用がある。十分短いパルスを用いると、材料が名目上透明である波長であってもレーザ焦点体積内で強い吸収をもたらす多光子吸収プロセスを駆動するだけの十分高いピークパワーを得ることができる。しかしながら、そのピークパワーは、材料の構成原子または分子のイオン化を生じるレベルまで上昇させなければならない。自由電子は、全ての波長で光を吸収し、アバランシェイオン化と称されるプロセスによって、このエネルギーを熱に急速に変換する[6,7]。十分高い密度では、電子と親イオンがプラズマを形成し、それがさらに吸収率を高め、熱蓄積をさらに局在化させる。この短パルス限界でも、急速な熱蓄積がある。しかしながら、このプロセスは非常に反応性の高い中間体を生成する。金属などの固体材料の場合、イオンが急速に放電することから、このイオン化プロセスでは何の結果も生じない。生体材料の場合、イオンの存在によって、高電離性X線照射と同じ効果が生じる。フェムト秒期間のこの短パルス限界で過剰の加熱がない場合であっても、イオン形成の効果によって、治癒の妨げとなる損傷が生じ、それはほとんどの医学的用途に対して許容できないものである。
この問題は、過剰の加熱なしでフェムト秒レーザパルスが切断する場合でも、治癒プロセスが引き起こされなかったことが認められた生動物の対照試験によって確認されている。隣接細胞に対し、それを殺すのには十分であるが正常な治癒機序を誘発するには不十分な損傷があった。シグナル伝達タンパク質を用いて治癒を誘発しなければならなかった。留意すべき点として、多光子吸収からの電離放射線の効果は、他の非生体材料において同様に顕著である可能性がある。半導体、絶縁体、触媒などの感受性材料の場合、イオン誘起性化学によって、表面状態/欠陥の形成などの材料特性における非常に望ましくない変化も生じる。この効果もやはり、あらゆる種類の医学的および歯科的用途において非常に望ましくない。歯科用途の場合、非常に反応性の高いイオンの生成により、極めて有毒な、アマルガム充填材のアブレーション由来の有機水銀化合物が形成される可能性がある。
別の選択肢は、中赤外(mid−IR)波長範囲での振動遷移などの短寿命励起状態へのエネルギー局在を最大化するようにレーザ波長を同調させるものである。ミクロン〜サブミクロンの吸収深さでの強吸収振動モードが、生体材料およびほとんどの他の材料で認められ得る。これらの短寿命励起状態を標的とすることにより、イオン発生および光化学の有害効果を生じることなく、熱エネルギーを小さな照射体積に迅速に移動させすることができる。しかしながら、パルス幅およびエネルギーの両方の選択において、効率的で付随損傷のないアブレーションを達成するように注意を払わなければならない。
発明の概要
本発明は、アブレーションプロセスならびに振動エネルギーの熱へのエネルギー変換のダイナミクスについての新たな理解に基づいた材料のレーザ処理方法を提供する。本明細書で開示の発明は、イオン形成または熱蓄積のいずれかによって付随損傷を最小化しながら効率的に材料アブレーションを行うことができる新たな方法論を提供する。これは、吸収されたエネルギーの大部分が切除材料中に残る、熱駆動型および光力学的駆動型のアブレーション機構の両方を組み合わせた新規な方法である、インパルス熱蓄積(IHD)によって行われる。そのレーザエネルギーは効率よく力学的自由度に直接結び付けられ、それはアブレーションを生じ、かつその際に最適効率でこの作業を行うようにするものであるが、そのことは付随損傷を低減する上で重要である。
本発明の一態様では、材料のレーザ処理であって、
所定体積の材料にパルスレーザビームを照射するステップを含み、前記レーザパルスが、
i)前記レーザ照射される体積において吸収される光が前記レーザ照射体積中に含まれる材料の少なくとも1種類の成分の蒸発点より高い過熱温度を生じるのに十分なエネルギーと、
ii)パルス幅の時間が前記レーザ照射体積からの熱拡散に必要な時間より短く、かつ前記レーザ照射体積の熱駆動膨張に必要な時間より短くなるような、インパルス熱蓄積の要件を満たすパルス幅の時間およびパルス波長と、
を有し、さらに、
iii)前記パルス幅の時間が十分に長く、前記パルスエネルギーが十分に低いことによって、前記レーザパルスのピーク強度が前記材料においてイオン化が起こる閾値を下回るようにすることにより、
前記レーザパルスに含まれるエネルギーの大部分が、レーザ照射体積中の前記材料のアブレーションに変換され、その残留エネルギーは前記レーザ照射体積周囲の材料に実質的に損傷を与えるには十分でないものとなる、前記方法が提供される。
本発明の別の態様では、組織へのレーザ手術方法であって、
所定体積の組織にパルスレーザビームを照射することを含み、前記レーザパルスが、
i)そのレーザ照射される体積の組織において吸収される光が前記レーザ照射体積の組織中に含まれる組織の少なくとも1種類の成分の蒸発点より高い過熱温度を生じるのに十分なエネルギーと、
ii)パルス幅の時間が前記レーザ照射体積の組織からの熱拡散に必要な時間より短く、前記レーザ照射体積の組織の熱駆動膨張に必要な時間より短くなるような、インパルス熱蓄積の要件を満たすパルス幅の時間およびパルス波長と、
を有し、そして
iii)前記パルス幅の時間が十分に長く、前記パルスエネルギーが十分に低いことによって、前記レーザパルスのピーク強度が前記組織においてイオン化が起こる閾値を下回るようにすることにより、
前記レーザパルスに含まれるエネルギーの大部分が、前記レーザ照射体積の組織中の前記組織のアブレーションに変換され、その残留エネルギーは前記レーザ照射体積の組織の周囲の組織に実質的に損傷を与えるには十分でないものとなる、前記方法が提供される。
本発明はさらに、材料をレーザ処理するための装置であって、
約1.5〜約20ミクロンの波長を有するレーザパルスを発生させるためのレーザ光源を含み、前記レーザパルスが
i)そのレーザ照射される体積の材料において吸収される光が前記レーザ照射体積の材料中に含まれる組織の少なくとも1種類の成分の蒸発点より高い過熱温度を生じるのに十分なエネルギーと、
ii)パルス幅の時間が前記レーザ照射体積の材料からの熱拡散に必要な時間より短く、かつ前記レーザ照射体積の材料の熱駆動膨張に必要な時間より短くなるような、インパルス熱蓄積の要件を満たすパルス幅の時間およびパルス波長と、
を有し、そしてよう
iii)前記パルス幅の時間が十分に長く、前記パルスエネルギーが十分に低いことによって、前記レーザパルスのピーク強度が前記材料においてイオン化が起こる閾値を下回るようにすることにより、
前記レーザパルスに含まれるエネルギーの大部分が、レーザ照射体積の組織中の材料のアブレーションに変換され、その残留エネルギーは前記レーザ照射体積の材料の周囲の組織に実質的に損傷を与えるには十分でないものとなる、前記装置をも提供する。
図面の簡単な説明
本発明のレーザ手術方法を、ほんの例として、添付の図面を参照しながら、以下に説明する。(図面の簡単な説明については後述)
図1Aは、パルス幅τ=150nsの持続時間の532nmパルスによるレーザ照射後のマウス大腿骨の顕微鏡写真を示し、これは従来のレーザを用いて生体組織において生じた極度の熱が治癒の遅延や炭化を引き起こすことを示す。図1Bは、λ=775nm 100μJ/パルス、1kHz、τ=200fsでのレーザ照射、頭蓋冠のアルカリホスファターゼ(AP)染色後のマウス切除頭蓋冠の顕微鏡写真を示す。AP(青色)は、アブレーションにすぐ隣接した領域における細胞表面上で活性である。図1Cは、λ=535nm 1mJ/パルス、1kHz、τ=150nsでのレーザ照射後のマウス切除頭蓋冠の顕微鏡写真であり、この顕微鏡写真は創傷周辺部での炭化を明瞭に示しており、APは切除領域から200μmまで変性しており、それは温度が56℃を超えて上昇したことを示している。褐色の円形領域が炭化組織である。図1Dは、約2細胞層厚についての細胞損傷を示す細胞内酵素活性について染色された図1Bに相当する組織のレーザ共焦点像を示す。図1Eは、300μmを超える厚さについての細胞膜損傷を示す図1Cの切断部に相当するものを示す。図1Fは、細胞様形状がまだ識別される1Bの切り口の内側の高倍率共焦点像を示す。これは、炭化組織のためns切断について複製できなかった。 図2A〜Dは、骨を基質とした、フェムト秒レーザパルスおよび短パルスIRアブレーションを用いるレーザアブレーションの直接比較を示す。図2Aは、空間的にガウス形であるレーザパルスを用いる1J/cmフルエンスの120fs、100ミクロジュール(μJ)パルスを用いるフェムト秒レーザアブレーションを示す。図2Bは、1J/cmの集束フルエンスで3400cm−1(2.8μm)での水のOH伸縮の吸収に対して特異的に同調させた100psレーザパルスを用いたレーザアブレーションを示す(左:ヒト象牙質、パルスエネルギー:100mJ、1/eビームスポット径:150μm、空洞直径:45μm、空洞深さ7μm。右:ブタ顎骨、パルスエネルギー:90μJ、1/eビームスポット径:150μm、空洞直径:40μm、空洞深さ5μm)。図2Cは、図2Bと同じ条件を用いて無傷で取り出したコラーゲン繊維束の大きな20μm塊を示す。図2Dは、マウス頭蓋骨を示す(パルスエネルギー)。90μJ、1/eビームスポット径:150μm、無傷の繊維であることを示すさらなる証拠が明瞭に認められる。 図3は、本発明に従って構築されたレーザ手術用の赤外線(IR)パルスレーザ装置の模式的配置を示す。 図4は、パルス整形を組み込んだ図3に示した同調可能サブナノ秒IRパルスレーザ手術装置の出力を示し、照射体積に入射する整形パルスの模式図を示している。 図5は、比較的高い含水率を有する脳組織、軟骨および椎間板の材料についても典型的な、ヒト角膜基質についての2.5〜7μmの波長の関数としての吸収係数を示す(参考文献15から)。 図6は、2.5〜20μmの歯における象牙質およびエナメル質の相対的吸収を示す(参考文献15から)。 図7は、パルスの先端が、水のOH伸縮振動に同調させた波長(3400cm−1)を有し;パルスの(時間的な)後端(黒い領域)が3200cm−1で励起状態吸収に同調されるブリーチング効果を回避するための波長時分割多重化のシンプルな例を示す。そのパルススペクトラムは同時に、1600cm−1でのOH変角モードなどの他の振動に同調させた他の周波数をも含むことができた。 図8は、IR「多段階励起(ladder climbing)」が光吸収を増加させるための手段として示されている、励起状態遷移に至るための時間的パルス整形のプロセスを示す図である。 図9は、励起プロセス時の水のOH伸縮の吸収の非調和シフトの模式図である。 図10は、本文で言及される基準に従って選択されるIR波長を有するが、1つの<1nsパルスに代えて、以前のものと同じ条件を満たす長さTを有する包絡線下にレーザパルスのバーストを有する一連の短IRパルスからなるIRレーザエネルギー束の別の可能な時間的形状を示す。すなわち、それは、患部領域からの熱拡散時間より短く、標的材料において音波が患部の左右面および前後面を横切って進むのに要する時間より短い。 図11Aは、アブレーションの温度閾値が模式的に示されているガウス形パルスの温度プロファイルを示し、ここでは、この温度プロファイル外で吸収する材料は、除去されずに過剰加熱を受けるものと考えられる。また、図11Bは、図11Bのパルスの翼部(wing)での吸収による過剰加熱を回避するのに用いられる平方強度プロファイルまたはフラットトップレーザパルスを示す。
発明の詳細な説明
本発明は、アブレーションプロセスおよび振動エネルギーの熱への変換のダイナミクスに関する新たな理解に基づいた新規なアブレーション手法を記載する。振動(または格子フォノン)を最適に励起し、衝撃によりエネルギーを直接力学的自由度の状態にするための短レーザパルスの使用によって、アブレーションの直接駆動機構が可能となる。そうする際に、この機構によって、中間状態および有害な副次的プロセスを生じる高ピークパワーの必要性を回避できる。エネルギーはアブレーションプロセスに結び付けられた力学的自由度に全て局在する。本明細書に開示の発明は、フェムト秒パルス多光子吸収の場合と同様にアブレーションを駆動する同様の標的過熱状態を得ることができる新たな方法論を提供し、その方法ではイオンの形成がない。その正味の効果は、吸収されたエネルギーの大部分がアブレーション機構に向かう熱駆動型および光力学的駆動型アブレーションプロセスを有することである。
本明細書で開示のインパルス熱蓄積(IHD)の方法を用いると、短寿命振動モードおよび吸収光の強度の局在化の組み合わせにより、エネルギーを直接熱として蓄積することによって、付随損傷を最小化しながらアブレーションプロセスを達成することが可能である。エネルギーを熱に変換することができ、材料の蒸発点より高い過熱格子温度を生成することができれば、エネルギーの大部分がアブレーションに変換されるだろう[12、13]。
急速加熱を用いるアブレーション機構の物理学は、均一核形成プロセスの場合と同様に、材料内での固相もしくは液相から気相への相転移が起こる不安定性を伴う。効率的なことに、過熱材料はその材料中に気相領域または空隙を形成し、それによって応力が生じ、次にそれが熱膨張の応力と結びついて、材料アブレーションに至る。これらの応力に応答して材料内で次に生じるひずみ場の強さは、アブレーションに供給されたエネルギーと関係し、これはひずみ場の二乗の振幅を示し、それはこの構成的干渉効果を非常に顕著なものとする。これらの条件により、蓄積エネルギーのアブレーションへの非常に効率的な移動が起こる。すなわち、このプロセスによって、アブレーションステップ後、周囲材料はできるだけ低温の状態に留められる。フェムト秒レーザパルス励起の場合、多光子吸収ならびに自由電子およびイオン化物の生成によって、電子中に、アブレーションを駆動するエネルギーが蓄積される。
これらの高励起電子は熱を蓄積し、アバランシェ(avalanche)イオン化として知られるプロセスで格子フォノンとの衝突によってさらに多くの高温の電子を生じる[5、7]。そのようなイオンは非常に反応性が高いことから、このイオン化ステップは、多くの用途においてぜひとも回避する必要がある。
これらの光誘導高温イオンは、硬い金属表面のアブレーションでは許容できる場合があるが、生体系や、半導体素子などの高度に官能化された材料では大きな損傷を与える。この影響を図1Dに示しており、そのような影響によって損傷を受けた細胞の層が生じている。熱を他の手段によって蓄積させて、IHDに適した条件を形成することができる。水に関する研究の途中で、本発明者らは、液体の水がエネルギーを振動運動または熱として直接蓄積する極めて短寿命の振動状態[16]を有することを発見した。このプロセスは実際には、フェムト秒レーザパルス駆動電子アバランシェ機構で起こるような電子がエネルギーを格子フォノンまたは熱に供給する時間スケール[17]よりも速く(30〜200fsで)起こる。
特に、このエネルギー緩和は、振動運動自体と同じ時間スケールで起こる。IHDプロセスは、振動の励起またはエネルギーの直接的に熱としての蓄積と同じである。急速な振動エネルギー緩和に関するこれらの知見およびフェムト秒アブレーションに関する基礎研究から、材料を活性化するための新たな機構を導入することにより電離放射線の影響を回避することが可能であることが明らかになった。エネルギーの短寿命の振動励起状態への局在を最大化するようにレーザ波長を同調(tune)させることによって、超短パルス(超短とは、ここでは1ps未満と定義する)を用いた場合に起こるイオン形成もしくはプラズマ形成を伴うことなくIHDを駆動することができる。
他の重要な物理学的情報としては、十分な共振状態では、特定の振動へのIR吸収は極めて強く、それがエネルギーを分子選択的に局在させる適切な手段を提供するということである。具体的には、水の振動モード(OH伸縮、OH変角およびそれらの組み合わせ)が生体材料のレーザ切断に非常に有用である。これら振動の寿命は200fs未満であることから、レーザ蓄積エネルギーは本質的にレーザパルス時間プロファイルをたどる。さらに、その吸収は非常に強いことから、OH振動に同調させたIRの90%が1μm未満で吸収される。しかしながら、他の多くの分子振動が、活性化領域からの熱および音響輸送に関するIHDの条件を満たすのに十分なくらい短寿命である。大部分の材料が、材料における少なくとも一つの振動モードの十分に高値の密度を有し、それによりレーザ蓄積エネルギーの強い局在化が確保される。
十分に短い時間スケールでイオン形成を起こすことなく直接熱に結びつく短寿命振動モードへの光エネルギーの強い局在化は、重要な実現化のための概念である。またこの概念によって、分子選択性の点でも、レーザ波長を標的材料に一致するように同調させることにより、高度の選択性が可能になる。レーザの波長同調によるこの分子選択性は、単一の特定の材料を標的から除去しようとする際に特に有利である。重要な用途としては、特異的スペクトルマーカーを有する腫瘍細胞の除去または良好な歯基質から選択的に虫歯のみを除去することなどがある。これらは2つの重要な例に過ぎない。
本明細書に開示の方法では、レーザ照射領域からの熱拡散時間およびより厳密には、熱駆動膨張の時間の両方よりも短い持続時間のレーザパルスの使用を伴う。熱拡散および熱膨張の時間は、観察の長さスケールの内容で定義しなければならない。熱拡散の場合、重要な特質は、典型的にはレーザのスポット径または断面積である。通常、各レーザ照射が0.1〜1μmの材料(材料および波長によって決まる)のみを除去する方向性で、掘り下げられる。典型的なレーザパラメータでは10〜100μmのレーザスポット径とすることで、励起材料の体積を最小化するが、集光光学系のための妥当な作業距離をなお提供するようにすることを仮定した場合、横方向での熱拡散時間は通常は1マイクロ秒より長い。吸収光の強い局在化が生じる上記条件では、熱拡散は前後方向(表面に対して法線方向)の方が速い。この方向では、光の吸収は理想的には、表面から0.1〜1μm以内で起こる。この場合の熱拡散時間は、材料の熱拡散性に応じて10〜100nsのオーダーでありうる。
しかしながら、熱輸送範囲を超えると、パルスが熱駆動膨張より速くエネルギーを送出するには要件がより厳しいものとなる。このプロセスは、音速で起こり、拡散衝突交換のプロセスによって起こるものではない。そこでこの場合、最も迅速な冷却プロセスは、前後方向での熱膨張である。ミクロンの深さの照射体積の場合、熱駆動音場は、光の吸収深さを横切って伝搬するのに要する音速より少ない時間で最大振幅を得る。この時間が、IHD限界を規定する。大部分の凝縮系に代表的な音速(10〜5×10cm/s)では、この時間スケールは、1μmの加熱領域について200ps〜1nsである。金属などのより高度な吸収を示す材料の場合、光吸収は0.1μmという短い深さに局在し得るし、この時間スケールは20〜100psまで短くなる。理想的には、パルス幅をこの時間より若干短くして、音響移動による吸収エネルギーの周囲材料中への損失を最小化すべきである。IHDの場合、パルス幅は音響拡大時間より短くなければならず、従って大部分の材料において、必要なパルス幅は10ps〜1nsである。
上記の手法は、最適なIHDとする上で必要なパルス幅を決定する方法を説明するものである。この手法は、分子固有/材料固有の振動に同調させたIR光の使用に極めて適している。振動寿命は、ほぼ普遍的に10ps[18、19]より短く、それにより、蓄積されるエネルギーは、効率的に、パルス幅内で熱に直接変換される。
エネルギーが1μm深さに局在し、音速が水における音速(2×10cm/秒)に比較的近い生体材料の場合、100psのオーダーのパルスが最適に近い。パルスが短いほどピークパワーが高いことから、材料のイオン化のための強度閾値によって設定されるパルス幅の下限が存在することは強調する必要がある点である。
図1および2は、フェムト秒ドメインでの超短レーザパルス、1ns以上の従来の長パルスレーザからのアブレーション、および本発明の短IRパルス(短パルスはここでは1ps〜1nsと定義する)によるIHDによるアブレーションの間の劇的な差を示している。これらの差は、直接エネルギー蓄積およびエネルギーの強い局在化に関する指定のパルス幅領域での短IRパルスの利点を明瞭に示すものである。
より詳細には、図1A〜1Eは、骨を基質とする、短パルスおよび長パルスを用いたレーザアブレーションの効果を示している。図1Aには、レーザ照射後のラット大腿骨の顕微鏡写真を示しており、これには治癒遅延や炭化を引き起こす従来のレーザにより生体組織に生じる極度の熱が示されている。生きている骨組織の研究に関して、本発明者らは、図1B〜Fに示したように、その研究をマウス頭蓋冠に広げて行った。これらの図は、医学用途および歯科用途における生体組織のレーザ切断を検討する場合における治癒の重要性を強調するために含めたものである。図1Bは、頭蓋冠のアルカリホスファターゼ(AP)染色を行った、λ=775nm 100μJ/パルス、1kHz、τ=200fsでのレーザ照射後のマウス切除頭蓋冠の顕微鏡写真を示している。AP(青色)は、アブレーションにすぐ隣接する領域における細胞表面上で活性であり、図1Bは、短パルスレーザ切断によって、炭化を起こすことなく非常にクリーンな切断部となることを示している。図1Cは、λ=535nm 1mJ/パルス、1kHz、τ=150nsでのレーザ照射後のマウス切除頭蓋冠の顕微鏡写真であり、この写真は創傷周辺部での炭化を明瞭に示しており、APは切除領域から最大200μmまで変性しており、それは温度が56℃を超えて上昇したことを示している。褐色の円形領域は炭化組織である。熱がレーザ照射領域外の隣接材料に移動するのに十分な時間を要することから、図1Cでの結果は、長パルスによるアブレーションでの問題を示している。かなりの炭化領域が形成されたということは、周囲材料が達した温度が、燃焼するのに十分なほど高かったがアブレーションには不十分であったことを明瞭に示している。この炭化は治癒の妨げとなり、非常に有害である。この問題は、生体材料に特有というだけでなく、高度の官能性を有する材料(例:半導体素子)のいずれにも関するものである。
図1Dは、細胞内酵素活性について染色した図1Bと同じフェムト秒レーザ切断部のレーザ共焦点像を示し、切断部周囲の損傷した2細胞厚の層が明らかになっている。図1E(図1Cと同じ長パルス切断部)は、切断部周囲の厚さ300μmの層における細胞膜損傷を示しており、図1Fは細胞様形状がなお識別される図1Bの切り口の内側の高倍率共焦点像である。これについては、炭化組織のため長パルス切断部を認めることはできなかった。図2は、骨を標的としたフェムト秒レーザパルスおよび短パルスIRアブレーションを用いるIHDを用いたレーザアブレーションの直接比較を示す図である。アブレーション構造における顕著な差は、2つのプロセスに関して非常に異なるアブレーション機構が働いていることを明瞭に示している。図2Aは、1J/cmフルエンスで120fs、100μJパルスを用いるフェムト秒レーザアブレーションを示す。非常に鋭い切り口および滑らかで平坦な輪郭に注目されたい。レーザパルス自体は、空間的にガウス形であるが、一旦プラズマが生成すると、多光子吸収の高い非線形性から鋭い特徴部が生じ、次に吸収が飽和する[20]。
プラズマ生成によって、材料の大量のイオン化、断片化および完全崩壊が生じ、それにより非常に滑らかな表面となる。対照的に、図2Bは、1J/cmの集束フルエンスで3400cm−1(2.95μm)での水のOH伸縮の吸収に対して特異的に同調させた100psレーザパルスを用いたレーザアブレーションを示す。2つの異なる領域が不均一性の効果を示している。注目すべき点として、この図(2B)の右側の走査型電子顕微鏡写真は、フォークによって持ち上げられたスパゲッティそのものに非常に良く似た外観のコラーゲンそのものの大きな断面を示している。アブレーションクレーターの深さは、同じフルエンスについて、フェムト秒の場合の7倍大きく、それは振動モードを用いたIHDにおけるより高い効率を示している。最も重要な所見は、その壁がもはや滑らかではないという点である。図2Cで最も明瞭に示されているように、アブレーションステップで取り出された無傷のコラーゲン繊維は長さが何ミクロンもあり、大きい断面を有する。無傷で取り出されたコラーゲン繊維束の大きな20μm塊が、図2Bに示したものと同じアブレーション条件を用いて図2Cで示されている。
図2Dは、マウス頭蓋骨を示す図であり、無傷の繊維であることを示すさらなる証拠が明瞭に認められる。その後の、周辺部付近のパルスまたは同じ体積の繰り返し励起によって、切断プロセスにおける残存材料が除去される。主要な所見は、フェムト秒切断の場合のような極めて滑らかな表面というよりは、非常に多くの分子および繊維が無傷でアブレーションされているという点である。この非常に大きい差は、最小の損傷を伴うレーザ切断およびその後の切断部の治癒改善の中核をなすものである。
IHDに必要なサブnsのmid−IRパルスの発生に好適なレーザ利得材料がないことから、これまでは、自由電子レーザのみが、必要なエネルギーによりこのパルスレジームに到達することが可能であった。しかしながら、自由電子レーザによって生じるpsパルスは、それが下記で具体的に記載されているように衝撃限界よりかなり長い持続期間を有する「マクロパルス」を形成する時間的に近接した多くのpsパルスのパケットで生成することから、IHDには適さない。パケット中の次のパルスがサンプルに到達する前にアブレーションプロセスが完了せず、従ってパルスパケットの有効な持続期間(幅)は、その長い積算加熱包絡線(envelope)のものであってそのピコ秒パルスの構成要素ではないことから、この自由電子レーザパルスパケットは、蓄積された付随損傷を生じる[20]。非線形パラメトリック周波数ミキシングを用いて従来のレーザ光源からエネルギーをmid−IR波長へ移動することによって、超高速mid−IRスペクトル分析が可能となった。いまや、必要なエネルギーのmid−IRサブnsパルスの発生が、光パラメトリック技術を用いて可能である。この新たなレーザ技術は、IR 自由電子レーザ(FEL)の場合よりも、真のIHDについての短IRパルスの取得を大きく簡素化するものである。IR FELは大きな国際研究設備群であることに留意すべきである。材料のフェムト秒レーザ処理と比較してIHDのより効率の良い機構および緩和されたパルス幅制約を利用し、低コストでコンパクトな固体レーザを用いて、最小の損傷でのレーザ切断を実現することができ、それは本発明の別の有利な特徴である。本発明を実施する上で用いられる好ましいレーザ光源についてのさらに詳細な説明は、本出願人らによる米国特許公開第20050271094号として公開されている2005年5月16日出願の同時係属の米国特許出願第10/129649号、および2005年1月10日出願の米国仮出願第60/642113号およびそれに対応する第20060153254号公報にて公開された通常の米国特許出願に開示されている。
図3には、波長1.5〜12μmについてのサブnsのIRパルスのシンプルかつコンパクトな光源の1つのありうる実施形態を示してある。そのレーザシステムは、ポンプサブシステム用のシードソースレーザ1を具備する。それは、1μm近くの波長λ1を有する低エネルギーパルスを発生する。そのレーザシステムは、シードソース1からのパルスを受け取り、それを増幅し、そのパルスは次にポンプサブシステム増幅器3に向けられる、任意のポンプサブシステム前置増幅器2を具備してもよい。そのシステムは、λ1〜λ3(λ3は、標的とした分子振動遷移の波長である)に同調させた波長λ2を有するファイバー連結レーザダイオード4を具備する。そのシステムにはさらに、光パラメトリック増幅器5を具備し、そこでは波長λ1を有するパルスをポンプとして使用し、波長λ2を有するレーザ照射(連続的にまたはパルスとして)をシードとして用いる。そのシステムは、所望の波長λ3およびパルス幅1ps〜1nsを有するエネルギーパルス6を発生する。本発明者らは、パルスエネルギー>200μJおよび平均パワー>200mWを有するそのようなシステムを示した。そのようなシステムのパルスエネルギーおよび繰返し速度は、当業者が容易に向上させることができる。
パルス整形方法を同調可能なサブナノ秒の赤外線(IR)パルスレーザ手術装置に組み込むことで、時間包絡線τ<1nsを示すパルスまたはパルスバーストの形成が可能となる。これらパルスの時間およびスペクトル形状を、下記で説明するように、多光子イオン化およびブリーチングに伴う問題を解決しつつ、標的での熱蓄積を最大とするために、最適化する。
ある領域の材料に向けたレーザパルスの場合、その照射体積の材料は、レーザビームパラメータおよび材料特性によって決まる空間特性を有する。図4には、照射体積5を模式的に示してある。それは、レーザビームの空間強度の半径によって規定される半径Rを有し、深さdは吸収深さを規定する。IHDが生じる場合、パルス包絡線の長さτは、標的材料において音波が患部領域5の前後および左右の長さを横切って進むのに要する時間より短くなければならない。
τ< d/vsound
τ< 2R/vsound
(式中、dは1/e吸収深さであり、vsoundは標的材料での音速であり、Rはレーザビームの空間強度の半径(FWHM)である。それは、下記前後および左右方向の両方での患部領域からの熱拡散時間より短くなければならない:
τ< d/6D
τ< (2R)/6D
[式中、Dは熱拡散定数である。])生体組織の場合、約10−7/sのDが典型的である。パルスは、繰返し速度に相当する期間Tだけ間隔を空けてレーザ装置から発射される。パルス間の時間は、下記の標的材料の患部体積5からの熱拡散時間より長くなければならない:
T>d/6D
T>(2R)/6D。
この条件を満たすことで、レーザ発射間の残存熱の蓄積ならびに関連する熱損傷の問題が回避される。照射領域の深さdは、有効吸収長さとしてのα−1のオーダーであり、そのαはレーザパルスの波長での材料の吸収率である。有効な熱蓄積を得るためには、この吸収長さは1μmのオーダーでなければならない。患部領域の横径2Rは、実際の適用では通常は10〜100μmのオーダーである。
生体組織の振動吸収スペクトルは通常、水のOH振動モードで強い吸収を示す。図5には、比較的高い含水率を有する脳組織、軟骨および椎間板材料についても典型的な、ヒト角膜基質に対する2.5〜7μmの波長の関数としての吸収係数を示す。水は生体組織の構成要素材料の中で最も高い蒸気圧および最も低い沸点を有することから、本発明は、生体材料について、IHD応答の光力学的誘導性および熱誘導性相変化成分の組み合わせを駆動するのに最小量のエネルギーしか必要としない領域中にエネルギーを蓄積する分子選択的な手段としての、照射体積中の高含水率の微細プールへの選択的熱蓄積を対象とするものである。水領域における密度が相膨張とともに減少するにつれて、相変化が残りの照射体積に音響応答を移動させる。このプロセスは、熱エネルギーを応力に集中させ、それによって不均一な生体材料においてさらに効率的なアブレーションプロセスをもたらす。蓄積されたエネルギーは全て、隣接材料へのエネルギーの移動を最小としながらアブレーションプロセスを駆動するのに必要な力学的自由度にて残存し、それゆえ生じる付随損傷は最小となる。
これらの生体材料の場合、タンパク質のアミドバンドも、IR吸収に大きく寄与し、これを用いてタンパク質リッチな材料を選択的に切断しながら他の領域の切断を避けることができよう。図6には、2.5〜20μmの歯の象牙質およびエナメル質の相対的吸収を示してある。この場合、水遷移がやはり寄与するが、分子組成に応じて歯の異なる部分を選択的に切断するために用いることも可能な他の非常に強い遷移も存在する。
大部分の振動寿命が数ピコ秒〜10psのオーダーであることから、この期間より短いパルスはブリーチングを生じる。この現象は、励起のプロセスにおける受容状態が、非励起材料と同じスペクトル領域ではもはや吸収しない新たな状態へと推進されるなる場合に、生じる。その材料はブリーチ(漂白)されると言われ、それによってより透明となる。吸収光の局在化を最も強くするには、このプロセスを回避しなければならない。エネルギーを送出するためのパルス条件を操作して、ブリーチングを回避する必要がある。
イオン化およびブリーチング効果を起こすことなく、単位体積もしくは単位質量当たり吸収された最大のエネルギーを送出できる最適なパルス幅は、標的の材料特性、特には共鳴吸収によって決まる。パルスエネルギーが、イオン形成や過剰なブリーチングを直接生じることなく熱を発生する必要があることは、強調すべき点である。最大強度限界が多光子吸収によるイオン化閾値によって規定されるものとした場合、最適パルス幅は、より大きい吸収深さに対して直線的な値を示すと考えられる。
さらに、励起したOH伸縮モードは、OH電位エネルギー表面の非調和性のために3200cm−1を中心とする赤方偏移波長で強い吸収を示す[16]。従って、ブリーチング効果を回避する最も簡単な方法は、図7に描かれている時間−波長多重化である。この方法では、波長を3400cm−1での水のOH伸縮振動に同調させるようにパルスの先端を選択し、かつパルスの尾端を励起状態遷移に同調させて、平均吸収を一定に維持し、吸収光エネルギーを可能な最小の体積に局在化させる。そのような時間および波長プロファイルは、公知のレーザパルス整形技術から作ることができる。この同じ手法を、同様に他の振動モードと組み合わせて用いることも可能であった。
パルス整形を用いて、光の吸収を増加させる手段として多くの励起状態遷移を利用することができる。例えば、IR「多段階励起」の効果を図8に模式的に示してある。これは、そのパルスがすでに密集したレベルからの励起状態遷移によって吸収することができる、時間的に遅れて生じる赤方偏移スペクトル成分を含むパルス形状により達成可能である。最適なパルス形状は、離散的ではなくむしろ周波数が赤色へと滑らかに変動する「チャープ」であり、これはこの多段階励起プロセスを動的に駆動して、基底状態のブリーチング効果を最小化する。材料が加熱されるにつれて、モード間の非調和性結合によってスペクトル変化が生じ、また時間−波長多重化を同様に用いてこの効果を補償することにより、光吸収の局在を最大化することができる。
水は最も豊富に存在する物質であり、生体組織における大部分のIRレーザ駆動アブレーションでの主要な標的となる可能性が高い。水では、励起状態周波数シフトは、図9に示したように約200cm−1である。この値は振動および周囲の媒体に応じて決まるので、1例として挙げてあるのみである。基底状態IR遷移に同調させた単一波長でのパルス励起は、基底状態周波数での吸収低下および励起状態吸収における上昇をもたらす[16]。従って、ブリーチングを回避するため、レーザパルスに関するチャープまたは時間−波長プロファイルを、分子モードの特定の非調和性に同調させることが必要であり、それは標準的な技術を用いて独立に求めることができる。
図10には、IRレーザエネルギー束の別の可能な時間的形状を示している。それは、本明細書に開示の基準に従って選択されるIR波長を有する一連の短IRパルスからなるが、一つの<1nsパルスの代わりに前出のものと同じ条件を満たす長さtの包絡線下のレーザパルスのバーストがある。すなわちパルス包絡線は、患部領域からの熱拡散時間、および標的材料において音波が照射領域の左右および前後面を横切って進むのに要する時間の両方よりも短い。パルス間の間隔は、エネルギー蓄積後に基底状態に緩和して戻る励起振動時間を与える主要な吸収体である振動遷移の励起状態の寿命より長くなければならない。このようにして、ブリーチングおよび多光子イオン化による問題が軽減される。上記形状と狭い間隔で並んだパルスとの組み合わせ、ならびに他の強IR遷移に同調させた別の波長および/またはスペクトルシフトの動的補償を用いて、標的領域外でのエネルギーの熱移動を最小化しながら、高効率のIHDアブレーションのために吸収光エネルギーの局在化をさらに強めることができる。
入射レーザの半径方向プロファイルも、エネルギーの熱移動を局在化する上で重要である。図11Aは、材料に入射するガウス形ビームの温度プロファイルを示す。アブレーション閾値はビームの中心部分によって超えるだけであり、この部分外で吸収する材料は熱を吸収することなく蓄積することができる。図11Bに示した平方強度プロファイルまたはフラットトップレーザパルスを用いてこの問題を最小化するが、これは、それが図11Bのパルスの翼部での吸収によって起こる加熱を回避できるためである。
本明細書で開示の本発明の重要な態様は、強い吸収条件の取得するための、1)短寿命(上記で定義した必要なパルス幅より短い)と;2)パルス幅に必要な時間より迅速な無放射緩和および直接熱発生とを示し、さらに3)ピークパワーおよび波長の両方によるレーザ照射の材料特性への選択的同調を伴う励起状態を形成するレーザ波長およびそれらの組み合わせの使用である。この後者の光特性を操作して、分子レベルの制御を行うことができる。
本発明の好ましい実施形態は、処理される材料の振動モードに同調させる短赤外レーザパルスの使用である(上記の短時間についての定義を使用)。レーザ照射は、吸収エネルギーおよびその後の加熱プロセスを100ミクロン未満、好ましくはミクロン〜サブミクロンの範囲内に局在化するのに十分なほど強く吸収を行う特定の振動モードに、同調させる必要がある。この条件は、容易に理解することができる。より大きな範囲にわたってエネルギーが吸収される場合は、同じ加熱速度を得るのに必要なパルスエネルギーを増加させる必要がある。所定のレーザパルス幅に関してエネルギーを増加させると、それに続いて同じ表面積についてのピークパワーが増加する。このピークパワーは、多光子吸収によってイオンが形成される閾値を超えてはならない。この説明は、さらに高輝度のレーザ(TEM00)用の所定のレーザシステムに対してのパルス当たりのエネルギーにおける制限、および可能なパルス当たりの最小エネルギーを吸収して付随損傷を最小化する要件をさらに認識したものである。
概して、ミクロン〜サブミクロンの範囲での吸収の局在化を生じる赤外域において強く許容される振動遷移が認められ得る。これらの振動状態は、過熱およびアブレーションに関する上記で定義したインパルス限界を満たすのに十分なほど速く熱を生じさせることが必要である。例えば、生体組織において、主要成分である水のOH伸縮に同調させることは非常に単純である。
OH振動伸縮の吸収は非常に強いことから、水系環境の場合に吸収は0.75μm以内で起こる。さらに本発明者らは、振動寿命が200fsのオーダーであり[16]、他の周囲の水の低周波数運動と結びつけることにより直接緩和されることを確認している。簡単に言えば、振動エネルギーが直接緩和して熱となった。この緩和機構は実際に、フェムト秒レーザ多光子励起(励起電子はなおも、比較的非効率的な電子−フォノン散乱によって緩和する必要がある)よりも速く、吸収されたレーザ照射光を熱として蓄積するが、イオンが直接生成されないという重要な相違がある。そのエネルギーは、熱または並進的自由度として効率的に直接蓄積される。アブレーションを引き起こすには同じ自由度が必要である。十分に短い時間スケールでのこのエネルギー局在化機構は、レーザエネルギーを、効率的な直接駆動機構のためにアブレーションを駆動するモードに選択的に直結させる。
レーザ照射を他の振動モードに同調させて同じ効果を得ることができる。ほとんど全ての振動モードが、10ps未満の寿命を持ち、同じ時間スケールで熱を発生するプロセスで緩和する。その手順としては、次に、赤外線スペクトル領域でのレーザ照射を、対象の振動モードに一致するように簡単に同調させるというものである。この振動モードは通常は、除去することが意図された材料の主要構成要素に相当する。IR吸収が所望の効果のために十分なほど高くない場合、複数の波長を含めるかまたは熱源として多振動モードによりエネルギー送出を誘発することによって、光を空間的にさらに局在化させ、IHDを補助することができる。
本発明のいくつかの態様および本発明を新規なものとして区別する概念の説明が含まれることに留意すべきである。
本発明は、切断のための侵襲性/損傷性を最小化にする条件をもたらすことができる、最小の体積要素でインパルスアブレーション条件をもたらすための光の最適吸収に基づくものである。
本発明は、レーザ切断による付随損傷の問題を解決するものである。この問題は、過剰加熱、蒸発損失または全体的な材料損傷(破砕、亀裂、応力曲線)を生じるIR〜UV波長を用いた長パルスレーザ用いる場合に明らかである。医学および歯科の分野では、長パルスは、大きな炭化領域を伴う組織の炭化(バーベキュー効果)を引き起こした。この影響は図1に明瞭に示されている。組織の炭化は壊死材料の大きな領域をもたらし、これは治癒が全く望めないか、かなりの瘢痕を生じる非常に悪い結果を生じ、同じ機能用のどのような機械的ツールよりもはるかに悪い結果となる。これらの制限があるに拘わらず、材料の切断にIR波長を使用する特許がある。最も有名なものは、2.9μm波長範囲で長パルスを生じるEr:YAGおよび他のレーザ利得媒体に基づいたものである。米国特許第6,824,541号[14]および米国特許第5,782,822号[10]は、IRレーザを用いる角膜の彫刻方法に関するものである。これらの特許は、2.9μm領域でのEr:YAGおよび他のレーザの使用に関するものであり、それは切断を行うためのパルスエネルギーを100μJより大きいものと具体的に規定しており、本発明によってIHDに最適であるとされるよりもかなり長いパルス幅を用いている。具体的に記載されているエネルギー範囲[14]は、本明細書に記載されている新たな概念を用いるアブレーションに必要な非常に最小エネルギーよりもかなり高く、上記で詳細に述べたIR波長の使用を伴うこれら他の特許[9,10,14]ではIHD機構は利用も検討もされていないことが示される。
主たる相違は、先行技術では作動機構に関する技術的理由および概念上の理由の両方のために、1nsより長い持続時間のレーザパルスまたはレーザパルスのコム(comb)を用いるのに対して、本特許で具体化されている概念は、<1nsのパルスを用いるもの、具体的には上記で定義した直接駆動低温アブレーションプロセスのためにIHDを用いるという点である。この点において、歯科において長パルス(>1ns)を用いるそのようなレーザ法では、燃焼を回避するために材料を冷却するための高圧水ジェットが必要であり、そのような手段を用いた場合でも付随損傷が起こることは注目すべき点である。実際のところ、実際の切断機構は、歯科用途において、歯での直接吸収と比べ、過熱、および加えた冷却水中でのキャビテーション誘発とより多く関係する。水の吸収が非常に大きいために、歯に適用する外部供給源の水は、レーザエネルギーが歯に直接蓄積する前に実質的に全てのレーザエネルギーを吸収することから、この後者の点は明らかである。本明細書に開示の発明は、IRレーザの波長および時間を、材料に最小限のエネルギーを蓄積させて付随損傷を最小化しながら切断を行うための最適条件をもたらすように同調させることについて、説明するものである。冷却のための高流量条件下での水の使用および他の手段は、本発明の方法では必要ない。
歯科におけるEr:YAGレーザについて言及されている最も大きい問題の一つは、作業を行う上で歯科医の視界を遮る高流量の水である。さらに、冷却のための高量の水流の使用により、より大きな作業距離が必要となることから、アブレーションを達成するためにはその対応するより大きなスポットサイズに対してずっと高いパルスエネルギーが必要となる。この問題は本発明によって解決され、本発明により、最小スポットサイズおよび最小量エネルギーを、標的へ、ファイバー送出により直接接触させることも可能となる。大流量水冷却に合わせた長い作業距離の緩和が、本発明の非常に重要な特徴である。また、ファイバーを患部領域に密着させたり、ファイバーを患部領域近くに配置したりできることにより、フラットトップビームプロファイルを確保して、切除領域外の領域に対する付随損傷をさらに最小化することができる。金属化中空ファイバーのファイバー出口での近接場領域では、強度プロファイルが均一であり、IR領域での吸収が非常に強いことにより、この近接場領域での吸収エネルギーの強い局在化が生じる。その特徴により、図11で最適として示した熱分布の空間的に均一な半径方向プロファイルを得るための簡単な手段を得ることが可能になる。この方法は、大きい屈折率差を有する他の光ファイバーおよび導波デバイスまたは近接場でのフラットトップ強度プロファイルへの良好な近似を与える構造化屈折率プロファイルを、フラットトップ強度プロファイルを標的上に送出する簡単な手段として用いて、導入することができる。
本明細書で示したこれらの新しい方法によって、より速い切断速度、付随損傷を、許容される結果を得る上で可能な最低値まで低減すること、そして、集光要素もしくは光ファイバーまたはその他の導波デバイスによるレーザビーム送出システムの標的への直接接触または近接した接続が可能となる。本発明は、材料の侵襲的除去を最小化するための短IRパルスビーム送出の時間的、波長的および空間的態様に関しての最適性能を包含するものである。
本明細書に開示の方法は、象牙質、エナメル組織および歯肉組織などの歯系組織、角膜組織、皮膚、全てのヒト臓器、結合組織、筋肉組織、血管組織、神経、泌尿器組織、腺組織、内分泌組織および骨組織など(これらに限定されるものではない)の組織のレーザ除去のために特に有利である。
全く正反対のレーザパルス幅について、レーザ切断および材料処理を対象とする特許が発行されている[6,7]。これらの特許のいずれにおいても、超短パルスの使用は、フェムト秒〜ピコ秒範囲であると定義されており、エネルギー局在化および/またはプラズマ形成のための多光子吸収に基づく切断機構を利用するものである。いずれの場合も、隣接材料に対して損傷を起こすイオン化効果が生じる。金属の場合、金属における移動電荷によって、イオンは急速にクエンチングされる。しかしながら、半導体は、ドーピングプロファイルに影響を与えるイオンに対してより感受性が高い。
医学用途および歯科用途の場合、アブレーションプロセスにおけるイオン化の発生によって、周囲組織の損傷および生物学的経路の破壊が生じる。本特許出願において提示された新しい概念は、最適なパルス幅が存在し、上記で定義した超短パルスがこれらの条件を必ずしも満たさないことを詳述している。さらに、本明細書で開示の切断機構は、全ての超短パルス特許から明瞭に区別される。超短パルスアブレーション機構は、多光子吸収に依存しており、それによって短寿命励起電子およびイオンを発生させ、それがエネルギーを急速に熱として蓄積させる。一方、本明細書に開示の方法は、励起振動により光エネルギーを力学的自由度(熱)に直接、結びつけることにより、これらの超短パルス多光子プロセスと同等またはそれよりも速く材料に熱を与える方法を教示するものである。1−光子振動共鳴に基づいて定義されるこの新しいレーザ駆動アブレーション手段によって、イオン化を生じる非区別的な多光子吸収機構を用いる可能性がある任意のものよりもはるかに勝った選択的切断のための分子レベル同調が可能となる。分子の振動スペクトルは、その分子の独特の特徴であり、この分子に一致する固有のIR波長を用いることにより熱蓄積とそれに続く切断の分子レベルでの制御が可能となる。
基本的に、本発明以前には、隣接領域に対する過剰の熱損傷や電離放射線損傷の形での重大な付随損傷を回避した切断のための、単一のレーザ処理方法は存在しなかった。その問題は、軟性材料を用い、また熱やイオン化効果に対して非常に感受性が高い化学および組成の微妙なバランスが存在する医学分野および歯科分野への適用において、最も顕著である。本発明は、付随損傷を最小化する切断のための最適なレーザパルスの作製に対して普遍的な解決手段を提供するものである。医学および歯科の用途の場合、本発明は、あらゆる機械的ツール(メスなど)よりかなり高い正確さで切断し、完全に治癒させるための第1のレーザ処理切断方法を提供する。実際、1細胞レベルの精度、可能な限り最小の創傷サイズで切断を行って、最大の治癒速度を可能にするという点で、治癒時間は本質的限界に近づくはずである。従って、本発明の社会的経済的影響は極めて大きい。
医学的用途のために組織を最適に切断するためには、レーザパルスを水吸収線に同調させなければならない。水は、生体組織の化学組成中で最大割合の単一成分である。水の吸収プロセスは、IR、およびVUV付近において最も強い。その2つの波長範囲のうち、UVは標的領域に当たる前に他の材料によって吸収され、有害な光化学を生じることから、IRが好ましい。水における最も強い吸収帯は、OH対称伸縮(3400cm−1)およびOH変角運動(1650cm−1)に関連するものである。その吸収は非常に強く、純水における1/e浸透深さは0.75μmである。そのOH変角は、吸収強度において類似している。この場合のパルス幅は、1ns未満でなければならず、理想的には1〜100psであるべきである。より短いパルスは多光子吸収効果および有害イオン形成を生じる。その格子の温度は、構成材料の蒸発点を上回るまで過熱する必要がある。
組織中の大部分の構成要素が、100℃(水)〜1000℃(生体高分子)で気相となる。1μmの吸収深さでこの温度飛越えを達成するためのエネルギー閾値は、約1J/cmである。1ps以下のパルスの場合、エネルギーの多くがパルス幅より長い励起振動状態のままである。このエネルギー閾値は、吸収体としての多くのIR光子の約2倍に相当し、そのような材料の吸収は効果的にブリーチされ、光透過深さはこのブリーチングプロセスによって拡大して固有の低フルエンス吸収深さよりも深くなる。このブリーチング効果は、アブレーションのレーザエネルギー閾値を上昇させ、過剰な加熱および損傷を生じる。このシナリオでは、最適なレーザパルスは、OH伸縮に対応しOH変角の1/2に対応する波長に同調させたエネルギーの約50%から構成される。そのエネルギーは、所定のレーザビーム焦点について可能な限り最小の体積要素(volume element)に送出される。他の波長を同様に多重化して、ブリーチング効果を最小化することによりエネルギー蓄積を増やすことができる。この最適化プロセスは、エネルギーをスペクトル中に効果的に分散させることにより、レーザエネルギーについて利用可能な許容モードを増やして、所定量のエネルギーを最も強く局在させるものである。
上記と同様に、繊維性材料の割合が大きい生体組織のレーザ切断の場合、原線維(例:コラーゲン)のアミド振動に同調させた追加のレーザエネルギーを与えることによって高分子を軟化させることによりレーザ切断を最適化する。この後者の曝露は、蒸発および蒸気先端駆動アブレーション(vapour front driven ablation)のための温度飛越しをもたらす主要なレーザパルスに先立って行うべきである。この例では、エネルギーの最初の部分を選択的に同調させてコラーゲン(または相転移に関して水より高い温度を有する他の材料)を加熱し、高分子軟化に最適な待機時間を設けて、理想的にはその高分子をガラス温度を上回るまで加熱し、そして主要ブラストでアブレーションを駆動するレーザパルスまたは一連のパルスを伴うものであろう。このシナリオでは、レーザパルスが、最適化パルスを水転移および生体高分子に同調させることができた。最後のレーザアブレーションパルスは、パルス幅に関する上記指針に最適に従うものであった。
隣接領域への拡散もしくは音響伝搬によって熱輸送よりも速い材料アブレーションをもたらす、パルスエネルギーを多重化しパルス時間プロファイルを同調させる波長に対する共鳴1−光子経路の全ての組み合わせを、対象とすべきである。理想的なレーザ光源は、上記閾値パルスエネルギーを送出するのに十分なパワーを有するIRに同調可能である(例:参考文献22)。
まとめると、本発明は、アブレーションプロセスならびに振動エネルギーの熱へのエネルギー変換のダイナミクスについての新たな理解に基づいた材料のレーザ処理方法を提供する。本明細書で開示の発明は、イオン形成または熱蓄積のいずれかによって付随損傷を最小化しながら効率的に材料アブレーションを達成することができる新たな方法論を提供する。これは、吸収されたエネルギーの大部分が切除される材料に残る、熱駆動型および光力学的駆動型のアブレーション機構の両方を組み合わせた新規な方法であるインパルス熱蓄積(IHD)によって達成される。そのレーザエネルギーは、力学的自由度に効率的に直結されてアブレーションを生じ、そうする際に最適な効率でこの作業を実行するが、それは付随損傷を最小化する上で重要である。
熱駆動膨張に必要な時間より大きいパルス幅の場合、アブレーションの機構は「位相爆発」によって支配される[8,9]。熱駆動膨張時間より短いパルス幅および蒸発閾値より低いエネルギー蓄積の場合、光力学的効果が支配的である[3、4、10]。しかしながら、蒸発閾値とプラズマ形成閾値の間のエネルギー蓄積、そして熱駆動膨張時間より短いパルス幅では、インパルス熱蓄積(IHD)が起こり、付随損傷が最小限のアブレーションをもたらす。
パルス幅が熱駆動膨張時間より長い場合、「位相爆発」機構のみがアブレーションに寄与する。格子材料の過熱に加えて、蓄積されたエネルギーも強い音波の発生をもたらし、それはレーザパルス時に照射体積を超えて伝搬し得る。照射領域からの音響伝搬は、アブレーションプロセスに対するエネルギー喪失を示し、アブレーション効率を低下させる。強い音波の伝搬は応力も生じるものであり、本発明での場合のように光力学的効果と位相爆発の両方が発展的に組み合わされてアブレーションプロセスを駆動する場合よりも大きな、隣接材料における関連する損傷も生じる。さらに、熱駆動膨張時間またはインパルス限界より長いパルス幅に関しての照射領域からの音響伝搬は、音響減衰/吸収による周囲材料の過熱をもたらす。
このエネルギー量は、総蓄積エネルギーのかなりの割合でありうる。例えば、線形応答の範囲内で、音響期間が材料にひずみを生じ、それは熱誘導ひずみの場合とほぼ等しい。例えば、材料における熱誘導ひずみおよび応力に対する正確な解を得るために、任意の熱化または加熱速度に関する熱弾性の運動方程式を最初に解析的に解いたゲンベルグ(Genberg)らの報告[11]を参照されたい。強励起および衝撃波形成の限界でレーザ加熱した標的領域からのこの音響エネルギーの伝搬によって、隣接材料に対する付随損傷が生じ得る。閉じ込め応力、または慣性閉じ込め下での過熱および位相変換によって駆動される光力学的機構および熱機構の両方により、加熱領域からの音響伝搬より速いアブレーションが生じるIHDを用いることにより、この予測は回避される。
本明細書で開示のIHDを用い、標的領域内でエネルギーをインパルスで熱として蓄積することにより、「低温アブレーション」プロセスが達成される。このインパルス熱蓄積により、ほぼ一定体積条件またはエネルギーの応力閉じ込め下で大きい応力が生じる。加熱されるときに材料が固体から液体および気体への相転移を迅速に経験することにより、高い格子温度は、空隙形成およびキャビテーション効果のための条件も生じる。空隙スペースおよびキャビテーション応力は、数および大きさが温度に伴って指数関数的に増大する相変化のためのランダムな均一核形成プロセスから生じる[12]。
均一核形成による空隙形成およびキャビテーションと関連する熱膨張および応力の閉じ込めは、強く加熱された表面領域に限定される。その後の材料応答は、最小の自由表面抵抗についての非加熱バルク材料の慣性閉じ込めに対する急速な膨張を経験することである。材料はその接着力を超えており、材料はその表面領域から除去される。IHDによってエネルギーを慣性的に限定することにより、ほとんど全てのエネルギーが位置エネルギーとして保存されるようになり、アブレーションプロセスにおいて並進運動エネルギーに変換される。
この意味においては、アブレーションは低温アブレーションプロセスと称される。そのアブレーションは基本的には、熱駆動閉じ込め応力に由来するものであり、またこの力が自由表面に非常に近いせいで放出されるため、そうする際に周囲材料には熱としてエネルギーはほとんど残らない。アブレーションを駆動する力に関しては、2つのソースタームがあることを理解するのは重要である。一方は、過熱した材料の爆発的熱膨張の際に解放される集団的応力閉じ込めである。このソースタームは、光力学的応力または力と称される。他方のソースは、急速加熱からの空隙形成およびキャビテーションにより材料での追加的な応力を生じる、これらの高圧および高温条件に特有の均一核形成現象に由来するものである。この後者の効果は、インパルス過熱の準安定条件下での材料の相図に関する格子温度の結果である。この力は、熱膨張力に対する直接的な関係と並置した状態変化方程式に関係するものであることから、熱由来機構と称される。これらのソースタームはいずれも、積極的に干渉して、IHD機構でのアブレーションを駆動する。
過熱の速度は、上記のように加熱領域から外への音響伝搬よりも速く相転移を駆動するのに十分なものである必要がある。このようにして、光力学的機構および熱機構からの全ての力が、慣性的に限定され、自由表面の変位によって高度に方向付けされて放出されて、アブレーションを生じる。この機構は、材料の膨張を可能とし、位相爆発と称される相変化時に生じる応力を利用してアブレーションを駆動する、より長い時間スケールでの加熱とは区別される[参考文献13:E. Leveugle, D. S. Ivanov, and L. V. Zhigilei, ″Photomechanical spallation of molecular and metal targets: molecular dynamics study″, Applied Physics A 79,1643-1655 (2004)]。
この後者の機構は、材料の膨張が可能なので、応力閉じ込めを利用しない[レブ−グル(E. Leveugle)ら、13参照]。本明細書で開示のIHD機構の方がはるかに効率的である。簡潔に言えば、IHDによってアブレーションを駆動する際のエネルギーは、冷却および誘導した応力の低減の両方を生じる熱膨張によって失われない。従って、この機構は、アブレーション由来の材料処理のための赤外線レーザの使用を対象とする他の特許とは異なるものである[9、10、14]。
その問題が、望ましくない光化学や多光子イオン化などの有害な副作用、すなわち過剰加熱効果と同等に周囲材料に対して損傷を与える副作用を伴うことなく、IHDのための条件を形成する手段を育成した。高度に理想化されたモデルシステムのレーザ過熱に関与する様々な力を調べる理論上の計算でさえ、モデル計算で電子状態の337nmでのUV励起を用いて、強い吸収を与えた[レブ−グルら、13]。そのような励起電子状態は、このエネルギーを振動へと急速に緩和するものと仮定した(そうでないならば、励起電子状態の寿命は通常は何nsもある)。UV光を用いることで、実際のシステムではインパルス励起条件を得るのに十分短いパルスについても大規模なイオン化および大規模な光化学が生じるが、それは、有害な副作用を起こすことなく光を強く局在させ、IHDを達成する手段が、この研究以前には知られていなかったことをさらに示すものである。本発明は、短寿命振動モードおよび吸収光の強い空間局在化の組み合わせによってこの問題を解決する、IHDを形成する方法を記載するものである。振動モードの使用は、イオン化効果を生じる光化学または多光子吸収をもたらす電子状態を伴うことなく、エネルギーを力学的自由度に直接的に蓄積する機構を提供する。この直接駆動の場合、振動モードに同調させたレーザ照射のパルス幅は、音波が照射体積を横切るのに必要な時間より短い。音波は除去される体積に主として限定されることから、誘導された応力はもはや周囲材料に強い影響を与えず、付随損傷の発生は少ない。全ての蓄積エネルギーが標的領域に残って、アブレーションを駆動する。IHDも、照射体積の内部での衝撃波形成をもたらす。この方法の非常に大きい利点は、照射体積の材料特性に対するこれら光力学的衝撃波の効果によって生じる(特に生体組織などの不均一材料での)アブレーションの効率向上である。生体組織の不均一性は、空隙形成およびキャビテーション応力を招く局所的に顕著に低い気相転移温度を有する構成成分が存在する微小領域を生じる。生体組織における微小な水のプールは、より低い入力エネルギーでアブレーションを駆動する理想的なソースタームを提供する。応力閉じ込めおよびそのような条件下での急速な均一核形成の利用によるIHDの効率向上により、付随損傷が低減され、周囲材料に対する影響に関して効果的に穏やかなアブレーションプロセスとなる。従ってIHDは、熱損傷および音響損傷に対して特に感受性である生体組織などの材料のアブレーションのための優れた機構を提供する。
この新たな切断機構の非常に大きな利点を図2に示してあり、この図では、795nm励起でのフェムト秒レーザパルスを、水中でのO−H伸縮の吸収波長に同調させた短IRパルスと直接比較している。OH伸縮領域に同調させたIR波長を用いるIHDの場合、骨サンプルから繊維全体が無傷で取り出されることがわかる(図2B〜2D)。対照的に、フェムト秒レーザアブレーションは平らな表面をもたらし(図2A)、これは除去材料の完全性が完全に崩壊していることを示している。これらの所見は、フェムト秒アブレーションによって用いられる電子状態への多光子吸収と比較して、IHDの破壊的性質が少ないことを明瞭に示している。
本特許は、分子振動の選択的励起によってエネルギーの熱としての蓄積を具体的に利用する方法論に関するものである。イオン形成を起こすことなく熱に直接結びつく短寿命振動モードへの光エネルギーの強い局在化は、エネルギーを蓄積するための時間経過に関する適切な規定とともに、熱および音響損傷の回避に向けた重要な実現化のための概念である。さらにこの概念によって、レーザ波長を分子選択性の点でも標的材料に適合するように同調させることにより、高度の選択性が実現される。
レーザの波長同調によるこの分子選択性は、標的から単一の特定材料を除去しようとする際には特に有利である。重要な用途には、特異的なスペクトルマーカーを有する腫瘍細胞の除去または良好な歯基質からの虫歯のみの選択的除去などがある。これらは2つの重要例にすぎない。
パルス幅は、多光子吸収を引き起こすピーク強度を防止するのに十分なだけの長さとして、電離放射線の効果を回避する必要がある。これらの条件を満たす最適なパルス範囲は、1ピコ秒(ps)〜1ナノ秒(ns)である。パルスレーザアブレーションに関する以前の特許[6,7,9〜10]では、IHDが付随損傷を最小化するようなこの時間ウィンドウは認識していない。いずれの先行技術でも、アブレーション駆動の主要手段として分子振動に直接結びつかない波長(フェムト秒レーザに基づく方法)およびイオン化材料を用いるか[6,7]、または、レーザ技術に基づく「位相爆発」[9,10,14]を用いIHDドメイン外でアブレーションを駆動するために1nsより大きいパルス幅(例:Er:YAG)に制限されるレーザ技術に基づく「位相爆発」を用いている[9,10,14]。具体的には、アブレーションのためのフェムト秒レーザの使用を対象とする特許[6,7]は、そのような短パルスの高ピークパワーを利用して、材料をイオン化し、自由電子を発生させ、最終的にプラズマを形成させるものである。
その一方の特許[6]には、そのようなパルスの高ピークパワー(>1012W/cm)を用いて、固体をイオン化プラズマに直接変換して、プラズマの流体力学的膨張によってアブレーションを駆動することが記載されている。このドメインにおける他方の特許[7]も、材料のイオン化および高密度の自由電子(>1018電子/cm)の発生を利用して、場からエネルギーを吸収し、アバランシェイオン化を起こしてプラズマを形成し、材料崩壊およびアブレーションを生じるものである。この後者の特許[7]は、アブレーション閾値が平方根依存性からの大きな逸脱を示す10ps以下のパルスレジームも同定しており、それはプラズマ形成の決定的プロセスを示すものである。
本発明は、イオン化プラズマ形成を意図的に回避するために、電子状態の多光子励起およびイオン化ではなく、構成材料の振動を励起して熱を送出し、さらにIHDを用いてアブレーションプロセスを直接駆動するというものである。本発明の背景にある中心的な概念は、イオン化効果を完全に回避するか、またはそれを可能な限り最小化することである。本明細書で提供されるIHD機構は、加熱領域の熱膨張より速く、エネルギーを熱として蓄積することに基づくものである。この時間を下回るが多光子イオン化を生じるよりも長い時間のパルスについては、熱パルスによる音響励起について記載された[上記11のゲンベルグ(Genberg)ら参照]ようにパルスの先端からの音響ひずみ解消の低下に関係する弱いパルス幅依存性のみが存在する。
いずれにしても、本発明の強い1−光子吸収条件下では、第一にパルス幅への平方根依存性がなく、それに対する逸脱が認められ得る。これらの際立った特徴は、フェムト秒レーザに基づくアプローチと直接駆動アブレーションのためにIR波長を用いるIHDとの間のアブレーション機構における重要な基本的相違を浮き上がらせる。材料にエネルギー付与する手段としてIRを用いて振動を励起する他の関連する特許では、1nsより短いパルス幅は明確に除外されていることから[9、10]、それ自体でIHDの条件を満たさない。これらの特許は、もっぱら位相爆発を利用するものであり[9]、IHDの下でのみ実現される慣性閉じ込め条件下では所定量の吸収エネルギーについて顕著に高い応力または力を発生させることは実現できなかった。
1ns未満のパルスの明確な除外は操作ドメインとして与えられた[10]が、これは、慣性閉じ込めは必要ではなく、この操作ドメインにおける短パルスが衝撃波誘導損傷を生じるのであろうと考えられていたためである[4]。衝撃波誘導損傷の概念は、レーザアブレーションの文献[1]全体を貫いており、またそれらの他の特許は、衝撃波形成を回避するにはより遅い加熱速度が必要であるという考え方に合致している。
これらの特許および関連する全ての先行技術では、熱緩和膨張材料の場合のような慣性閉じ込めまたは高圧下で、かつより大きい爆発力により、相変化が等しく良好に生じることは認識できなかった。相転移に関連する体積変化からの応力が、集団的(collective)熱膨張または光力学的力を積極的に増加させる。同様に重要な点として、IHD限界においては、アブレーションは有意な音響伝搬よりも速く起こる。すなわち、エネルギーの大部分がアブレーションに関与し、そのプロセスでは、衝撃波振幅を、より長いパルスによるアブレーションと同等またはそれ以上まで大幅に低減する。
いったんアブレーションの閾値が現れると、IHDにおいて、またはより遅い加熱速度により、プロセス全体が非常に迅速に起こり、衝撃波形成を決定付けるのはこの段階である。付随損傷を最小化するための鍵となるのは、エネルギーを空間的にできるだけ強く局在化して、いかなる変換機構による隣接領域へのエネルギー移動をも防止するということである。IHD機構は、吸収されたレーザエネルギーの全部を完全に閉じ込め、最も効率的にこの貯蔵エネルギーをアブレーションへと導く1つの機構である。技術的理由から言えば、固体レーザ技術が上記のようなIHDアブレーションを達成するために十分短く(<1ns)、かつ十分なエネルギー[21]を有するIRのパルスを発生させることが今や可能な段階まで進歩したのはごく最近のことであるから、これらの特許もIHDを確認できていなかったのである。いずれにしても、より短いIRパルスを用いるという概念は、これらの以前の特許[9、10]では考慮されなかったのだが、それは当該概念が前記のそれらのアブレーション概念の作動機構ではなかったためである。本発明は、IHDを用いて付随損傷を最小化しながら、1〜1000psのパルス幅レジームでIR励起を用いる共鳴または直接駆動アブレーションの最初の実証を具体化しているものであり、それ自体で当該概念を最初に実行したものでもある。
Figure 0005800325
この表は、本文で議論した必要なレーザパラメータを規定するいくつかの代表的な物理的パラメータを提供するために、組み込んだものである。
本明細書で使用される場合、「含む」および「含んでいる」という用語は、包含的なものであってそれに限定されないものと解釈されるべきであり、排他的ではない。具体的には、特許請求の範囲を含め本明細書で使用される場合に、「含む」および「含んでいる」という用語およびそれらの派生語は、その特定した特徴、ステップまたは構成要素が含まれることを意味するものである。これらの用語を、他の特徴、ステップおよび構成要素の存在を排除するものと解釈すべきではない。
本発明の好ましい実施形態についての以上の説明は、本発明の原理を説明するために提示されたものであり、例示している特定の実施形態に本発明を限定するものではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内に包含される全ての実施形態によって定義されることが意図される。
参考文献
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11.L Genberg, Q. Bao, S. Gracewski, and R.J.D. Miller, ″Picosecond Transient Thermal Phase Grating Spectroscopy - A New Approach to the Study of Vibrational-Energy Relaxation Processes in Proteins,″ Chem. Phys., 131 (1989) 81
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21.R.J.D. Miller, K. Franjic, D. Kraemer, M. Piche, ″Method and apparatus for high power optical amplification in the infrared wavelength range (0.7-20 mum)″,米国特許出願公開第20050271094号(2005).

Claims (33)

  1. 人体の生体組織を除く材料のレーザ処理方法であって、所定体積の材料にパルスレーザビームを照射するステップを含み、前記レーザパルスが、
    3400cm −1 および1650cm −1 においてO−H水共鳴を励起するように選択された波長と、
    少なくとも1J/cm のフルエンスであって、前記フルエンスにより、レーザ照射される体積において吸収される光が前記レーザ照射体積中に含まれる材料の少なくとも1種類の成分の蒸発点より高い過熱温度を生じるのに十分なエネルギーを有するようになるフルエンスと、
    パルス幅の時間が1ps以上1ns以下であり、これにより前記パルス幅が、前記レーザ照射体積からの熱拡散に必要な時間より短く、かつ前記レーザ照射体積の熱駆動膨張に必要な時間より短くなるような、インパルス熱蓄積の要件を満たすパルス幅の時間
    を有し、さらに
    前記パルス幅の時間が十分に長く、前記パルスエネルギーが十分に低いことによって、前記レーザパルスのピーク強度が前記材料においてイオン化が起こる閾値を下回るようにすることにより、
    前記レーザパルスに含まれるエネルギーの大部分が、前記レーザ照射体積中の前記材料のアブレーションに変換され、その残留エネルギーは前記レーザ照射体積周囲の材料に実質的に損傷を与えるには十分でないものとなり、
    同じレーザ照射体積に当たるレーザパルス間の時間間隔を1マイクロ秒より長くするように、前記パルスレーザビームをパルス印加し、かつ空間的に走査する、
    前記方法。
  2. 前記パルス幅の時間の要件より短い寿命を有する少なくとも一つの励起状態が前記材料において生じるように、前記パルスレーザビームの波長を選択するステップを有する、請求項記載の方法。
  3. 前記レーザパルスが、マイクロメートルからサブマイクロメートルの吸収深さで吸収されるように、前記パルスレーザビームの波長を選択するステップを有する、請求項1または2に記載の方法。
  4. 1−光子共鳴吸収が、多光子プロセスおよびイオン化を実質的にともなうことなく生じるように、前記パルスレーザビームの波長を選択するステップを有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 同じ吸収帯内で多重の遷移を生じさせるように、前記パルスレーザビームの波長を選択するステップを有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記材料の構成要素の2以上の異なる吸収帯に対応する前記パルスレーザビームの波長を選択するステップを有する、同調させた予め選択された範囲の波長を含む請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記パルス幅が1〜100psである請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記パルス幅が10〜200psである請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 時間および空間ドメインにおいて前記レーザパルスを整形するステップを有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記レーザパルスを整形して、スペクトル的にシフトした成分が前記レーザパルスの後に発生するようにし前記スペクトル的にシフトした成分は、前記レーザパルスによる前記材料の励起状態形成および加熱のせいでダイナミックにシフトする前記材料の吸収帯に時間的に対応する、請求項9に記載の方法。
  11. 前記レーザパルスをサブパルスのバーストに整形し、その際、前記サブパルス間の時間間隔が、前記励起状態の熱緩和時間より大きく、かつ前記サブパルスのバーストの包絡線が、インパルス熱蓄積および前記レーザパルス内に含まれるエネルギーをアブレーションに変換するための前記パルス幅の要件を満たす請求項9または10に記載の方法。
  12. 前記レーザパルスの波長を、前記材料中に存在するいずれかの水吸収線に同調させる請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記レーザパルスの波長を、アミドおよびホスフェート吸収帯に相当する振動吸収線に追加的に同調させる請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記パルスレーザビームにより前記体積の前記材料を照射する前記ステップに先立って、またはそれと同時に、選択された分子もしくは材料選択性を有するレーザパルス前記体積の前記材料を照射するステップを含む請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記材料が、ポリマー、半導体、金属、プラスチックもしくはガラスまたはそれらのいずれかの異種の組み合わせからなる群から選択される請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 実質的にフラットトップである空間プロファイルを有するように前記レーザパルスを整形して均一な空間強度プロファイルを得ことを含む請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
  17. 前記レーザパルスを、導波要素を用いて前記照射体積の材料に送出する請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
  18. 前記導波要素が、中空ファイバー、ホーリーファイバー、光学結晶ファイバーおよび空間プロファイルを有する屈折率の光ファイバーからなる群から選択され、さらに前記導波要素を、前記体積の照射される組織に十分近く配置することによって、前記導波要素から出る前記レーザパルスが、近接場領域においてはほぼフラットトップである強度プロファイルを有し、かつ前記プロファイルが遠方場領域のプロファイル特性に変化する前に前記組織によって吸収される、請求項17に記載の方法。
  19. 材料をレーザ処理する装置であって、
    3400cm −1 および1650cm −1 においてO−H水共鳴を励起するように選択された波長を有するレーザパルスを発生させるためのレーザ光源を含み、前記レーザパルスが
    少なくとも1J/cm のフルエンスであって、前記フルエンスにより、レーザ照射される体積の材料において吸収される光が前記レーザ照射体積の材料中に含まれる材料の少なくとも1種類の成分の蒸発点より高い過熱温度を生じるのに十分なエネルギーを有するようになるフルエンスと、
    パルス幅の時間が1ps以上1ns以下であり、これにより前記パルス幅が、前記レーザ照射体積の材料からの熱拡散に必要な時間より短く、かつ前記レーザ照射体積の材料の熱駆動膨張に必要な時間より短くなるような、インパルス熱蓄積の要件を満たすパルス幅の時間およびパルス波長と、
    を有し、そして
    前記パルス幅の時間が十分に長く、前記パルスエネルギーが十分に低いことによって、前記レーザパルスのピーク強度が前記材料においてイオン化が起こる閾値を下回るようにすることにより、
    前記レーザパルスに含まれるエネルギーの大部分が、前記レーザ照射体積の材料中の材料のアブレーションに変換され、その残留エネルギーは前記レーザ照射体積の材料の周囲の材料に実質的に損傷を与えるには十分でないものとなり、
    前記レーザパルスは、同じレーザ照射体積に当たるレーザパルス間の時間間隔が1マイクロ秒より長くなるような、時間間隔を有する、
    前記装置。
  20. 前記レーザパルスが、1〜100psのパルス幅を有する請求項19に記載の装置。
  21. 前記レーザパルスが、10〜200psのパルス幅を有する請求項20記載の装置。
  22. 非線形光学結晶を含み、前記レーザパルスを前記非線形光学結晶での三光波混合によって発生させる請求項20または21に記載の装置。
  23. 前記照射体積の材料に前記レーザパルスを送出するための導波要素を含む請求項20、21または22に記載の装置。
  24. 前記導波要素が、中空ファイバー、ホーリーファイバー、光学結晶ファイバーおよび空間屈折率プロファイル光ファイバーからなる群から選択され、さらに前記導波要素を、前記体積の照射される材料に十分近く配置することによって、前記導波要素から出る前記レーザパルスが、近接場領域においてはほぼフラットトップである強度プロファイルを有し、かつ前記プロファイルが遠方場領域のプロファイル特性に変化する前に前記組織によって吸収される、請求項23に記載の装置。
  25. ほぼフラットトップである強度プロファイルを得るように前記レーザパルスを整形するためのパルス整形手段を含む請求項20、21または22に記載の装置。
  26. 時間および空間ドメインにおいて前記レーザパルスを整形する手段を備える、請求項20〜25のいずれか1項に記載の装置。
  27. 前記パルス整形手段は、前記レーザパルスが、スペクトル的にシフトした成分を前記レーザパルスの後に発生させるように前記レーザパルスを整形し、
    前記スペクトル的にシフトした成分は、励起状態の生成による前記材料の構成要素の動的シフトする吸収帯および前記レーザパルスによる前記材料の構成要素の加熱と時間的に対応す
    ことを特徴とする請求項26に記載の装置。
  28. 前記パルス整形手段が、前記レーザパルスをサブパルスのバーストに整形するが、その際、前記サブパルス間の時間間隔が、前記励起状態の熱緩和時間より大きく、かつ前記サブパルスのバーストの時間包絡線が、インパルス熱蓄積および前記レーザパルス内に含まれるエネルギーをアブレーションに変換するための前記レーザパルス幅の要件を満たす請求項26または27に記載の装置。
  29. 前記パルス整形手段は、
    前記レーザパルスが、スペクトル的にシフトした成分を前記レーザパルスの後に発生させるように前記レーザパルスを整形し、
    前記スペクトル的にシフトした成分は、前記材料の構成要素における動的シフトする吸収帯と時間的に対応す
    ことを特徴とする請求項27に記載の装置。
  30. 前記レーザパルスの波長を前記材料中に存在する含水構成要素中の水吸収線に同調させるための波長同調手段を含む請求項20から29のいずれか1項に記載の装置。
  31. 前記波長同調手段が、前記レーザパルス波長をアミドおよびホスフェート吸収帯に相当する振動吸収線に同調させる請求項30に記載の装置。
  32. 前記材料が生体組織である請求項20から31のいずれか1項に記載の装置。
  33. 前記組織が、歯の象牙質、エナメル組織および歯肉組織などの歯系組織、角膜組織、皮膚、全てのヒト臓器、結合組織、筋肉組織、血管組織、神経、泌尿器組織、腺組織、内分泌組織および骨組織からなる群から選択される請求項32に記載の装置。
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