上記特許文献1に記載の吐水装置では、いわゆるエジェクタ効果によって気泡混入水を生成するものであるため、低流量段階では効果的に細かい気泡を含む気泡混入水を生成し、吐出口からシンクや洗面ボウルに向けて吐出することができる。
ところで、エジェクタ効果によって気泡混入水を生成する際には、減圧板の小孔からの噴流の流速が高まることによる空気の巻き込み効果によって生成するものである。そのため、水量が増え流速が高まっていけば、その高まった流速に応じて、水に対して気泡として空気が混入する量も増える傾向にある。従って、流速の高い高流量段階に移行しても、気泡の混入率の高い気泡混入水が生成され吐出される。
気泡混入水は、低流量段階においては、気泡の混入率を高めることで、吐水先のシンクや洗面ボウルへの着水音を小さくしたり、その際の水跳ねを抑制したりするという基本的な目的を損なわずに、吐水の量感を高めることができ、節水にも寄与することができる。従って、低流量段階において気泡の混入率を極力高めて行く方向に、各部材の配置や形状の工夫がなされるものである。
しかしながら、実際の使用場面では、このような低流量の給水のみならず、高流量の給水を行うことも求められる。例えば、コップや花瓶に水を溜めたりする場合には、早く満水状態にするため、供給する水量を高めることが必要となる場面がある。上記特許文献1に記載の吐水装置では、高流量にすると気泡の混入率も高まるため、結果として、使用者が意図した水量の増分よりも、気泡の混入率が高まることによる総量の増分が影響し、予想した感覚を超えた大流量の気泡混入水が吐出されることになる。特に、上述したように低流量段階における気泡混入率を高める工夫をすればするほど、高流量段階におけるこれらの事象が顕著に現れることになる。
食器を洗ったり手を洗ったりするのであれば、量感があって洗浄力が変わらなければ、低流量の吐水を用いることが実使用上の観点からも節水の観点からも好ましいものであり、使用者もこの低流量の吐水で使用するはずである。しかしながら、コップや花瓶に水を溜める場合には、早く溜めてしまいたいという心理が働くことから、高流量となるように吐水装置を操作するのが使用者にとって自然な動作となる。
このように使用者がその感覚に従って高流量となるように吐水装置を操作した結果、使用者が意図した水量を大きく超えたと感じるような総量(実際の水量及び気泡量に相当する)の気泡混入水が吐出されると、確かに吐水のボリューム感は高まるものの、コップや花瓶に水を溜めようとしても、水の勢いが強いことによる折返し流で溢れかえってしまい、コップの容量の半分程度しか貯めることができないようなことも起こり得る。更に、コップや花瓶に半分程度の水を溜めようと意図しても、実際には気泡分で増量された気泡混入水を注ぐことになるので、使用者が半分程度まで溜まったと認識しても実際にはより少ない水量しか溜まっていないことも起こり得る。また、コップや花瓶に水を溜める場面以外でも、吐水先のシンクや洗面ボウルへの着水音を小さくしたり、その際の水跳ねを抑制したりするという基本的な目的が損なわれるおそれがある。
これらを回避するため、使用者が吐水水量をより微細に調整しなければならないものとすれば、その操作は煩雑で且つ微妙な感覚が必要となってしまうため、使用感が著しく低下するおそれがある。また、空気孔の開度を吐水量の増加に応じて手動で調整させ、低流量の場合に気泡混入率を高める一方で、高流量の場合に気泡混入率を抑制することも考えられるが、それも使用者に煩雑な手間を強いることになり、実使用上は使い勝手が極めて劣悪なものとなる。
そこで、使用者が従来の吐水装置と同じ感覚で流量調整をしても、低流量段階では気泡混入率を高めた気泡混入水を吐出することが可能であり、高流量段階では使用者が意図した水量を大きく超えたと感じるような総量の気泡混入水が吐出しないようにすることが可能な吐水装置を提供する必要性が出てくる。
上記特許文献2に記載の吐水装置は、気泡混入水を吐出することが可能な吐水装置であって、水を吐出するための吐出口と、前記吐出口から吐出する水を給水元から流入させるための流入口と、前記流入口から前記吐出口に至る内部流路と、が形成された本体部と、前記内部流路を遮るように設けられ、前記流入口から流入した水を前記内部流路の下流側に向けて噴射する複数の孔が形成された減圧板と、前記内部流路内に空気を導入する開口部が形成され、この開口部から導入された空気を前記複数の孔から噴射された水に混入して気泡混入水と成し前記吐出口に供給する気泡混入部と、前記気泡混入部において気泡混入水に混入される気泡の混入率を調整する混入率調整部と、を備える。前記気泡混入部は、前記複数の孔から噴射される水によって負圧を発生させ、この負圧の作用によって前記開口部から空気を引き込むように構成されている。前記混入率調整部は、前記流入口から流入する水が所定流量を超えると、前記開口部の開口面積を減少させると共に、前記減圧板よりも下流側に水が至る経路を前記複数の孔を通る主流路以外にバイパス流路として形成することで前記複数の孔から噴射される水の流速増加を抑制し、前記混入率の増加を抑制する複合調整動作を実行するように構成されており、前記混入率調整部は、所定流量以下のときは、前記バイパス流路を通る水が意図しない瞬間的な水圧変動等により、低流量使用時にバイパス流路が形成された場合、バイパス流路を通る水が複数の孔を通る水に干渉してしまうことがあり、空気混入量が低下する恐れがある。
上記特許文献2に記載の吐水装置は、混入率調整部を備えているため、低流量段階では気泡の混入率の高い気泡混入水を供給することができる。従って、低流量段階でも量感のある吐水が可能となって、気泡が混入していない吐水に比較して少ない水量で食器洗いや手洗いをすることができ、節水に寄与できると共に水跳ねを抑制することもできる。
また、吐水への気泡の混入率を確実に制御するために、混入率調整部が複合調整動作を実行するように構成している。具体的には、混入率調整部が、流入口から流入する水が所定流量を超えると、開口部の開口面積を減少させると共に、減圧板よりも下流側に水が至る経路を複数の孔を通る主流路に加えてバイパス流路も通るように形成している。このように構成することで、空気の供給量を制限することに加えて、複数の孔から噴射される水の流速増加を抑制することができ、相乗効果によって混入率の増加を抑制することができる。
混入率調整部は、流入口から流入する水量に応じて、気泡の混入率を維持したり気泡の混入率を低減させたりすることもできる。従って、低流量段階で気泡の混入率を極限まで上げるような設定にしても、そこからの流量の増加に伴って気泡の混入率の増加が抑制され、所定流量を超えた領域においての最適な混入率にすることができる。そのため、使用者がその感覚に従って高流量となるように操作した結果、使用者が意図した水量を大きく超えたと感じるような総量(実際の水量及び気泡量に相当する)の気泡混入水が吐出されることを回避することができる。
更に、上記特許文献2に記載の吐水装置では、混入率調整部として、バイパス流路を用い、バイパス流路を通る水が複数の孔を通る水に干渉するように構成されていることも好ましいとしている。そうすることで、より確実に高流量使用時における気泡の混入率の増加を抑制することができるため、所定流量を超えた領域において、最適な混入率にすることができる。
しかし、そのような吐水装置においては、使用している流量に関わらず、バイパス流路を通る水が複数の孔を通る水に干渉するように構成されているため、効率的な空気混入を行わせたい低流量使用時にも空気混入量が低下する恐れがある。
このように、低流量使用時に空気混入量が低下してしまっては、吐水の量感を高めるために流速を高めることができなくなるので、吐水先のシンクや洗面ボウルへの着水音を小さくしたり、その際の水跳ねを抑制したりするという基本的な目的を損なわずに、吐水の量感を高め、節水にも寄与するという本来の目的を果たせなくなってしまう。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用者が従来の吐水装置と同じ感覚で流量調整をしても、低流量段階では気泡混入率を高めた気泡混入水を吐出することが可能であり、高流量段階では使用者が意図した水量を大きく超えたと感じるような総量の気泡混入水が吐出しないようにすることが可能な吐水装置を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る吐水装置は、気泡混入水を吐出することが可能な吐水装置であって、水を吐出するための吐出口と、前記吐出口から吐出する水を給水元から流入させるための流入口と、前記流入口から前記吐出口に至る内部流路と、が形成された本体部と、前記内部流路を遮るように設けられ、前記流入口から流入した水を前記内部流路の下流側に向けて噴射する複数の孔が形成された減圧板と、前記内部流路内に空気を導入する開口部が形成され、この開口部から導入された空気を前記複数の孔から噴射された水に混入して気泡混入水と成し前記吐出口に供給する気泡混入部と、前記気泡混入部において気泡混入水に混入される気泡の混入率を調整する混入率調整部と、を備え、前記気泡混入部は、前記複数の孔から噴射される水によって負圧を発生させ、この負圧の作用によって前記開口部から空気を引き込むように構成されており、前記混入率調整部は、前記開口部の開口面積を減少させると共に、前記減圧板よりも下流側に水が至る経路を前記複数の孔を通る主流路以外にバイパス流路として形成することで前記複数の孔から噴射される水の流速増加を抑制し、前記混入率の増加を抑制する複合調整動作を実行するように構成されており、前記所定流量を超えると、前記バイパス流路を通る水が前記複数の孔を通る水に干渉するように構成されており、前記所定流量以下のときは、前記所定流量を越える場合よりも前記バイパス流路を通る水が前記複数の孔を通る水へ及ぼす干渉力を弱める干渉力低減手段を設けている。
本発明に係る吐水装置では、気泡混入部において、複数の孔から噴射された水に開口部から導入された空気を混入して気泡混入水と成して吐出口から吐出するので、エジェクタ効果を利用して簡便に気泡混入水を生成することができる。
更に、混入率調整部を備えているので、低流量段階では気泡の混入率の高い気泡混入水を供給することができる。従って、低流量段階でも量感のある吐水が可能となって、気泡が混入していない吐水に比較して少ない水量で食器洗いや手洗いをすることができ、節水に寄与できると共に水跳ねを抑制することもできる。
混入率調整部は、流入口から流入する水量に応じて、気泡の混入率を維持したり気泡の混入率を低減させたりすることもできる。従って、低流量段階で気泡の混入率を極限まで上げるような設定にしても、そこからの流量の増加に伴って気泡の混入率の増加が抑制され、所定流量を超えた領域においての最適な混入率にすることができる。そのため、使用者がその感覚に従って高流量となるように操作した結果、使用者が意図した水量を大きく超えたと感じるような総量(実際の水量及び気泡量に相当する)の気泡混入水が吐出されることを回避することができる。
また、本発明では、吐水への気泡の混入率を確実に抑制するために、混入率調整部が複合調整動作を実行するように構成している。具体的には、混入率調整部が、開口部の開口面積を減少させると共に、減圧板よりも下流側に水が至る経路を複数の孔を通る主流路に加えてバイパス流路も通るように形成している。このように構成することで、空気の供給量を制限することに加えて、複数の孔から噴射される水の流速増加を抑制することができ、相乗効果によって混入率の増加を抑制することができる。
更に本発明では、混入率調整部は、所定流量以下のときには、所定流量を越える場合よりもバイパス流路を通る水が複数の孔を通る水へ及ぼす干渉力を弱める干渉力低減手段を設けている。具体的には、混入率調整部が、流入口から流入する水が所定流量以下のときには、バイパス流路を通る水が複数の孔を通る水へ干渉力を及ぼさないように形成されている。そのため、低流量段階で、意図せずにバイパス流路が形成された場合においても気泡の混入が阻害されることなく、高い泡沫率の気泡混入水を供給することができる。従って、低流量段階でも量感のある吐水が可能となって、気泡が混入していない吐水に比較して少ない水量で食器洗いや手洗いをすることができ、節水に寄与できると共に水跳ねを抑制することができる。
上述したように本発明によれば、使用者が吐水水量をより微細に調整したり、空気の導入量を手動で調整したりすることなく、低流量段階においても高流量段階においても最適な気泡の混入率とした吐水を享受することができる。従って、使用者が従来の吐水装置と同じ感覚で流量調整をしても、低流量段階では気泡混入率を高めた気泡混入水を吐出することが可能であり、高流量段階では使用者が意図した水量を大きく超えたと感じるような総量の気泡混入水が吐出しないようにすることが可能な吐水装置を提供することができる。
また本発明に係る吐水装置では、干渉力低減手段として前記流入口から流入する水が所定流量以下のときに、バイパス流路から吐水される吐水方向を変化させて複数の孔を通る水へ及ぼす干渉力を弱めるものを設けていることも好ましい。
この好ましい態様では、干渉力低減手段は、流入口から流入する水が所定流量以下のときに、バイパス流路から吐水される吐水方向を、複数の孔を通る水への干渉力が小さくなるように規制している。そうすることで、低流量段階で瞬間的にバイパス流路が形成された場合においても、気泡の混入が阻害されることなく、より高い泡沫率の気泡混入水を確実に供給することができる。従って、低流量段階でも量感のある吐水が可能となって、気泡が混入していない吐水に比較して少ない水量で食器洗いや手洗いをすることができ、節水に寄与できると共に水跳ねを抑制することができる。
また本発明に係る吐水装置では、干渉力低減手段として前記流入口から流入する水が所定流量以下のときに、バイパス流路を通る水の流速を、複数の孔から噴射された水に干渉させる前に減速させる手段を設けていることも好ましい。
この好ましい態様では、干渉力低減手段は、流入口から流入する水が所定流量以下のときに、バイパス流路を通る水の流速を、複数の孔から噴射された水に干渉させる前に減速させる手段を設け、バイパス流路を通る水が複数の孔から噴射された水へ及ぼす干渉力を小さくなるようにしている。そうすることで、低流量段階で瞬間的にバイパス流路が形成された場合においても、気泡の混入が阻害されることなく、より高い泡沫率の気泡混入水をより確実に供給することができる。従って、低流量段階でも量感のある吐水が可能となって、気泡が混入していない吐水に比較して少ない水量で食器洗いや手洗いをすることができ、節水に寄与できると共に水跳ねを抑制することができる。
また本発明に係る吐水装置では、干渉力低減手段として流入口から流入する水が所定流量以下のときは、バイパス流路を通る水の流れを遮る手段を設けていることも好ましい。
この好ましい態様では、干渉力低減手段は、流入口から流入する水が所定流量以下のときに、バイパス流路を通る水の流れを遮る手段を設け、バイパス流路を通る水の流速を、複数の孔から噴射された水に干渉させる前に、減速させるように構成されている。そうすることで、バイパス流路を通る水の複数の孔から噴射された水へ及ぼす干渉力が小さくなるようにしている。従って、低流量段階で瞬間的にバイパス流路が形成された場合においても、気泡の混入が阻害されることなく、より高い泡沫率の気泡混入水をより確実に供給することができる。従って、低流量段階でも量感のある吐水が可能となって、気泡が混入していない吐水に比較して少ない水量で食器洗いや手洗いをすることができ、節水に寄与できると共に水跳ねを抑制することができる。
また本発明に係る吐水装置では、干渉力低減手段は、前記所定流量を超えると、作用せず、混入率調整部は、前記所定流量を超えて、バイパス流路を通る水の量が増えるほど、複数の孔を通る水への干渉力が大きくなるように構成されていることも好ましい。
この好ましい態様では、混入率調整部は、流入口から流入する水が所定流量以上のときに、バイパス流路を通る水の量が増えるほど、複数の孔を通る水への干渉力が大きくなるように構成されているので、高流量段階になるほど、気泡の混入が阻害され、必要以上の気泡混入を行わないようにすることができる。従って、高流量段階では使用者が意図した水量を大きく超えたと感じるような総量の気泡混入水が吐出しないようにすることが可能な吐水装置を提供することができる。
本発明によれば、使用者が従来の吐水装置と同じ感覚で流量調整をしても、低流量段階では気泡混入率を高めた気泡混入水を吐出することが可能であり、高流量段階では使用者が意図した水量を大きく超えたと感じるような総量の気泡混入水が吐出しないようにすることが可能な吐水装置を提供することができる。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
本発明の第一実施形態である吐水口キャップ(吐水装置)について図1を参照しながら説明する。図1は、吐水装置としての水栓装置FCを示す斜視図である。水栓装置FCは、洗面器や手洗器やシンク等に取り付けられるものであって、水を溜めたり水を受けたりするためのボウル部に向かって吐水するためのものである。水栓装置FCは、ボウル部の周辺に取り付けられて、水の給水元である水道管と接続される。
水栓装置FCは、立位部B1とスパウト部B2と、吐水ハンドルHLと、吐水口キャップBCとを備えている。立位部B1は、取付面に固定される部分であって、その取付面から垂直若しくは手前側に傾斜した状態で取り付けられて固定される部分である。
立位部B1に繋がるスパウト部B2は、その先端の吐水口から吐水する部分である。スパウト部B2は、立位部B1の上端近傍に略水平方向に沿って突出するように設けられている。
立位部B1の上端には吐水ハンドルHLが設けられている。吐水ハンドルHLを上下に操作することで吐水と止水とを切り替えることができると共に、吐水量も調整可能である。吐水ハンドルHLを左右に操作することで、吐水の温度を変更することも可能である。
続いて、スパウト部B2の吐水口に取り付けられる吐水口キャップBCについて、図2を参照しながら説明する。図2は、図1に示す吐水口キャップBCの中心線CLにおける断面を示す断面図である。図2において、図1に示した中心線CLが沿う方向をy軸方向とし、y軸に直交し紙面に沿った横方向をx軸方向としている。
図2に示されるように、吐水口キャップBCは、第一筒部10(本体部)と、第二筒部20と、減圧部30(減圧板、混入率調整部)と、上絞径部40(圧損手段)と、パッキン50と、バネ60と、下絞径部70と、整流部80とを備えている。
第一筒部10は、略円筒形状の部材であって、その円筒形状の内部に、第二筒部20と、減圧部30と、上絞径部40と、パッキン50と、バネ60とを収める本体部として機能している。第一筒部10の図中上端側(y軸方向における負方向の末端側)には、取付ネジ部103が設けられている。取付ネジ部103は、吐水口キャップBCをスパウト部B2の吐水口に取り付けるための雌ネジである。取付ネジ部103の下方(y軸方向における正方向)には、パッキン50が第一筒部10の内壁に沿うように円環状に設けられている。パッキン50は、吐水口キャップBCをスパウト部B2の吐水口に取り付けた場合の漏水防止用の密接部材である。
第一筒部10の取付ネジ部103を、スパウト部B2の吐水口の雄ネジと螺合させて取り付けると、水栓装置FCから供給される水Waは流入口101から供給される。流入口101から本体部としての第一筒部10に入った水Waは、その内部流路(詳細は後述するが、第二筒部20、減圧部30、上絞径部40、下絞径部70、整流部80を通る流路)を通って気泡混入水又は整流水(実質的に気泡が混入されていない水)となって、吐出口102から外部(ボウル部)へと吐出される水Wbとなる。
上絞径部40は、パッキン50の下流側(吐出口102側、y軸方向における正方向)に配置されている。上絞径部40は、帽子の鍔状に外周を構成する円環状の鍔部401と、鍔部401に囲繞され中央を含む領域に形成される環状凸部402とを備えている。
環状凸部402は、鍔部401から上流側(流入口101側、y軸方向における負方向)に突出するように形成されている。環状凸部402の中央を含む領域には、流入穴403が形成されている。流入口101から入った水は、上絞径部40に当たることで水の圧力変動が減衰され、流入穴403から下流側に流出される。流入穴403から下流側に流出した水は、上絞径部40と減圧部30との間に形成される溜水部404に流入する。
減圧部30は、上絞径部40の下流側に配置されている。減圧部30は、減圧板301と、混入率調整部302とを備えている。
減圧板301は円形板状の部材である。減圧板301には、オリフィスとして機能する複数の噴射孔304が円環状を成すように形成されている。複数の噴射孔304が形成されているのは、溜水部404に相当する位置である。従って、複数の噴射孔304は、上絞径部40の鍔部401によって塞がれないように設けられている。
減圧板301の中央を含む領域には、中央凹部303が設けられている。中央凹部303は、減圧板301の上流側の面に形成されている。従って、上絞径部40の流入穴403から下流側に流出した水は、この中央凹部303によって集約されセンタリングされ、外周方向に広がって、複数の噴射孔304から下流側へと噴射される。
減圧板301の下流側には、混入率調整部302が設けられている。混入率調整部302は、上下動(y軸方向に沿った進退運動)を行うことが可能なように構成されており、その上下動に伴って、後述する空気孔204(開口部)を閉じたり開いたりするように作用する。この作用に着目すれば、混入率調整部302は、内部流路に導入する空気の量を調整し、気泡混入水への気泡の混入率を調整するものとして機能する。
上絞径部40及び減圧部30と、第一筒部10との間には、第二筒部20が設けられている。第二筒部20は、上流側の第一ガイド部201と、下流側の第二ガイド部205とを備えている。
第一ガイド部201の上端(流入口101側の端部、y軸方向における負方向の端部)には、外側突起202が第一筒部10側に向けて突出するように設けられている。外側突起202は、第一筒部10の内側に設けられた係合突起104と係合することで、第一筒部10に対して第二筒部20が所定の位置に位置決めされ保持されるように形成されている。
第一ガイド部201の内側には、混入率調整部302の外周が当接するように配置されている。より具体的には、混入率調整部302の受圧部306が、第一ガイド部201の内側に当接している。混入率調整部302は、受圧部306が第一ガイド部201の内側の壁面に沿って上下方向(y軸に沿った方向)に動くことで、全体として上下方向に動くように構成されている。
第一ガイド部201の下端(吐出口102側の端部、y軸方向における正方向の端部)には、内側突起203が内部流路側に向けて突出するように設けられている。内側突起203は、混入率調整部302の遮蔽壁307の外側面が当接するように配置されている。遮蔽壁307は、内側突起203に当接しながら上下方向(y軸に沿った方向)に動くように構成されている。
第一ガイド部201と第二ガイド部205との間には、内部流路内に空気を導入する空気孔204(開口部)が設けられている。空気孔204は、第一ガイド部201と第二ガイド部205との間において、第二筒部20の全周に渡って散在するように設けられている。空気孔204は、第一ガイド部201の内側突起203の直下に形成されているので、上述した遮蔽壁307の動きによって、閉じたり開かれたりするように構成されている。
第一筒部10と第二筒部20との間には空間が設けられており、空気流路802として形成されている。第一筒部10の下流側端と第二筒部20の下流側端との間は開放されており、空気導入口803として形成されている。空気導入口803から導入された空気は空気流路802を通って空気孔204から内部流路へと導入されている。
第二ガイド部205の内側には、下絞径部70が配置されている。下絞径部70は、縮径テーパー部701と、拡径テーパー部702とを備えた円筒状の部材である。縮径テーパー部701は、拡径テーパー部702よりも上流側に設けられており、上流側から下流側に向けて内部流路を狭めるように形成されている。拡径テーパー部702は、縮径テーパー部701よりも下流側に設けられており、上流側から下流側に向けて内部流路を広げるように形成されている。
縮径テーパー部701の内側側面である傾斜面704は、減圧板301の複数の噴射孔304に対応した位置に形成されている。従って、減圧板301の複数の噴射孔304から噴射された水は、傾斜面704に当たって内側に方向付けられる。
流入口101から水が供給され、減圧板301の複数の噴射孔304から水が噴射されると、下流側から水が溜まって、下絞径部70に相当する位置に気液界面が形成される。この気液界面に、傾斜面704で方向付けられた水流が空気を巻き込みながら突入するので、気泡混入水が生成される。減圧板301の作用によって、減圧板301から下絞径部70の間は負圧になるので、空気孔204から空気が引き込まれ、複数の噴射孔304から噴射される水と共に気液界面に突入する。気液界面への水流の突入によって、気液界面は乱されて、より気泡が混入されやすい状況にもなる。従って、減圧板301から下絞径部70にかけての領域は、気泡混入部703として形成されるものである。
気泡混入部703によって生成された気泡混入水は、第二ガイド部205の下流側に設けられた整流部80の整流格子801によって整流され、吐出口102から外部へと吐出される。
減圧部30と下絞径部70との間には、付勢手段としてのバネ60が配置されている。バネ60は、下絞径部70の縮径テーパー部701の外側を巻回するように配置されると共に、減圧部30の混入率調整部302の内側を巻回するように配置されている。
従って、流入口101から水が供給され、上絞径部40の流入穴403を通って混入率調整部302の受圧部306に水が当たると、混入率調整部302は上流側から下流側に押し下げられる力を受ける。バネ60はこの力に対抗するように配置されているので、遮蔽壁307の動きは、流入口101から所定の流量の水が供給されるまでは動かずに(若しくは動いても空気孔204を遮らない程度に動き)、流入口101から所定の流量を超えた水が供給されると動いて空気孔204を遮蔽するように調整することができる。
また、混入率調整部302の受圧部306は、減圧板301に当接するように構成されている。上述したように、流入口101から水が供給され、上絞径部40の流入穴403を通って混入率調整部302の受圧部306に水が当たると、混入率調整部302は上流側から下流側に押し下げられる力を受ける。従って、受圧部306の動きは、流入口101から所定の流量の水が供給されるまでは動かずに、流入口101から所定の流量を超えた水が供給されると動いて、減圧板301と受圧部306の間にバイパス流路が形成される。
このように受圧部306が動いた状態を図3(a)および(b)に拡大して示す。図3(a)は低流量段階、図3(b)は高流量段階における、図2のA部分近傍の拡大図である。図3(a)および(b)に示すように、流入口101から所定の流量を超えた水が供給されると動いて、減圧板301と受圧部306の間にバイパス流路308が形成される。流入口101から供給された水は、噴射孔304を通る流路に加えて、バイパス流路308も通るようになるので、噴射孔304から噴射される水の速度が減衰される。また、流入口101から所定の流量を超えた水が供給されると、遮蔽壁307が動いて空気孔204を狭めるので、噴射孔304から噴射される水の速度調整を合わせて、気泡混入部703における気泡の混入率を調整することができる。
図3(a)は、低流量段階の水の流れを模式的に表したものである。バイパス流路308において、バイパス流路308を通る水が噴射孔304を通る水に及ぼす干渉力を弱めることができるため、低流量段階では、気泡の混入が阻害されることなく、より高い泡沫率の気泡混入水を供給することができる。従って、低流量段階でも量感のある吐水が可能となって、気泡が混入していない吐水に比較して少ない水量で食器洗いや手洗いをすることができ、節水に寄与できると共に水跳ねを抑制することができる。
また本実施形態では、屈曲凹部301a及び突起部306aによって形成されるバイパス流路308は、入り組んだ形状となる。減圧板301と混入率調整部302とが当接した状態では、突起部306aが屈曲凹部301aの内部に完全に入り込む。従って、図3(a)のように、減圧板301と混入率調整部302との間に微小な隙間が形成されたとしても、バイパス流路308を通る水は、突起部306a及び屈曲凹部301aに方向付けられて、噴射孔304から噴射される水と沿った状態で下流側へ流れる。従って、流入口101から供給される水の量が少ない場合であって、瞬間的な水圧変動などで減圧板301aと混入率調整部302との間に微小な隙間が形成されたとしても、バイパス流路308を通る水が噴射孔304から噴射される水を減速させないように構成することができる。
また、図3(b)は、高流量段階の水の流れを模式的に表したものである。図3(b)のように、流入口101から供給される水の量が多い場合には、バイパス流路308を通る水が複数の噴射孔304を通る水に干渉するように構成されている。このように、バイパス流路308を通る水を複数の噴射孔304を通る水に干渉させることで、複数の噴射孔304を通る水の流速を低減させることができる。従って、バイパス流路308を通る水を有効に活用することができ、バイパス流路308を小さく形成したとしても、確実に複数の噴射孔304を通る水の流速を低減することができる。
上述した吐水口キャップBCを用いて、流入口101に供給される水Waの流量を上げていった場合の気泡混入率と、混入率調整部302が移動しない吐水口キャップを用いた場合の気泡混入率と、バイパス流路308を通る水が噴射孔304を通る水に及ぼす干渉力を弱める手段をもたない場合の気泡混入率を比較した図を図4に示す。図4において実施例1とは、吐水口キャップBCを用いたものである。図4において比較例1とは、吐水口キャップBCの混入率調整部302を動かないように固定したものを用いたものである。図4において比較例2とは、バイパス流路308を通る水が噴射孔304を通る水に及ぼす干渉力を弱める手段をもたないものを用いたものである。尚、本実施形態における気泡混入率とは、気泡混入水中の水の体積に対する気泡混入水中の気泡の体積の総和の比率を示すものである。具体的には、気泡混入水を水と気泡(空気)とに分離し、それぞれの体積を測定して算出するものである。
比較例1においては、供給する水の流量を増やしていくと、その増分に比例して気泡の混入率も増加していっている。また、一方、実施例1および比較例2においては、所定の流量(約4.2L/min)までは混入率調整部302が移動しないように構成されているので、供給する水の流量を増やしていくと、その増分に比例して気泡の混入率も増加していっている。しかしながら、所定の流量(約4.2L/min)を超えると混入率調整部302が下流側に移動し始めるので徐々に気泡の混入率が抑制される。流量が約5L/min付近で遮蔽壁307によって空気孔204が閉塞されるので気泡の混入率は顕著に抑制される。
しかし、比較例2においては、バイパス流路308を通る水が噴射孔304を通る水に及ぼす干渉力を弱める手段がないため、低流量段階(約4.2L/minまで)において、気泡の混入が阻害されてしまう。また、比較例2おいては、高流量段階(約4.2L/min以上)において、バイパス流路308を通る水が複数の噴射孔304を通る水に干渉するように構成されていないため、バイパス流路308を通る水を複数の噴射孔304を通る水に干渉させることができず、複数の噴射孔304を通る水の流速を低減させることができない。
上述したように本実施形態の吐水口キャップBC(吐水装置)は、気泡混入水を吐出することが可能な吐水装置であって、水を吐出するための吐出口102と、吐出口102から吐出する水を給水元から流入させるための流入口101と、流入口101から吐出口102に至る内部流路と、が形成された本体部としての第一筒部10を備える。吐水口キャップBCは更に、内部流路を遮るように設けられ、流入口101から流入した水を内部流路の下流側に向けて噴射する複数の噴射孔304が形成された減圧板301と、内部流路内に空気を導入する空気孔204が形成され、この空気孔204から導入された空気を複数の噴射孔304から噴射された水に混入して気泡混入水と成し吐出口102に供給する気泡混入部703と、気泡混入部703において気泡混入水に混入される気泡の混入率を調整する混入率調整部302と、を備える。
気泡混入部703は、複数の噴射孔304から噴射される水によって負圧を発生させ、この負圧の作用によって空気孔204から空気を引き込むように構成されている。混入率調整部302は、流入口101から流入する水が所定流量を超えると、空気孔204の開口面積を減少させると共に、減圧板301よりも下流側に水が至る経路を複数の噴射孔304を通る主流路以外にバイパス流路308として形成する。このように空気孔204を減少させ、バイパス流路308を形成することで、複数の噴射孔304から噴射される水の流速増加を抑制し、混入率の増加を抑制する複合調整動作を実行するように構成されている。
本実施形態に係る吐水口キャップBCでは、気泡混入部703において、複数の噴射孔304から噴射された水に空気孔204から導入された空気を混入して気泡混入水と成して吐出口102から吐出するので、エジェクタ効果を利用して簡便に気泡混入水を生成することができる。
また本実施形態では、屈曲凹部301a及び突起部306aによって形成されるバイパス流路308は、入り組んだ形状となる。
また本実施形態では、図3(b)のように、流入口101から供給される水の量が多い場合には、前記混入率調整部302は、前記バイパス流路308を通る水の量が増えるほど干渉力が大きくなるように構成されている。このように、バイパス流路308を通る水を複数の噴射孔304を通る水に干渉させることで、複数の噴射孔304を通る水の流速を低減させることができる。従って、バイパス流路308を通る水を有効に活用することができ、バイパス流路308を小さく形成したとしても、確実に複数の噴射孔304を通る水の流速を低減することができため、気泡の混入が阻害され、必要以上の気泡混入を行わないようにすることができる。その結果、高流量段階では使用者が意図した水量を大きく超えたと感じるような総量の気泡混入水が吐出しないようにすることが可能な吐水装置を提供することができる。
また本実施形態では、図3(a)のように、所定流量以下のときは、前記混入率調整部302は、前記バイパス流路308から吐水される吐水のx方向の流れを規制するように構成されている。所定流量以下のときは、減圧板301と混入率調整部302との間に微小な隙間が形成される。バイパス流路308を通る水は、突起部306a及び屈曲凹部301aに方向付けられて、噴射孔304から噴射される水と沿った状態で下流側へ流れる。従って、流入口101から供給される水の量が少ない場合であって、瞬間的な流量変動などで減圧板301aと混入率調整部302との間に微小な隙間が形成されたとしても、バイパス流路308を通る水が噴射孔304から噴射される水を減速させないように構成することができる。そのため、低流量段階でも、気泡の混入が阻害されることなく、より高い泡沫率の気泡混入水を供給することができる。これにより、低流量段階でも量感のある吐水が可能となって、気泡が混入していない吐水に比較して少ない水量で食器洗いや手洗いをすることができ、節水に寄与できると共に水跳ねを抑制することができる。
また本実施形態では、図3(a)のように、前記混入率調整部302は、前記バイパス流路308を通る水の流速を、複数の噴射孔304から噴射された水に干渉させる前に減速させるように構成されている。屈曲凹部301aおよび突起部306aによって形成されるバイパス流路308は、入り組んだ形状となっているため、バイパス流路308を通る水は減速され、突起部306a及び屈曲凹部301aに方向付けられて、噴射孔304から噴射される水と沿った状態で下流側へ流れるため、低流量段階でも、気泡の混入が阻害されることなく、より高い泡沫率の気泡混入水を供給することができる。これにより、低流量段階でも量感のある吐水が可能となって、気泡が混入していない吐水に比較して少ない水量で食器洗いや手洗いをすることができ、節水に寄与できると共に水跳ねを抑制することができる。
また本実施形態では、図3(a)のように、前記混入率調整部302は、流入口101から流入する水が所定流量以下のときは、バイパス流路を通る水の流れを遮るように構成されている。したがって、バイパス流路308を通る水は減速され、突起部306a及び屈曲凹部301aに方向付けられて、噴射孔304から噴射される水と沿った状態で下流側へ流れるため、低流量段階でも、気泡の混入が阻害されることなく、より高い泡沫率の気泡混入水を供給することができる。これにより、低流量段階でも量感のある吐水が可能となって、気泡が混入していない吐水に比較して少ない水量で食器洗いや手洗いをすることができ、節水に寄与できると共に水跳ねを抑制することができる。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。