[第1実施形態]
第1実施形態による検査装置及び検査方法について図1乃至図11を用いて説明する。図1は、本実施形態による検査装置を示すブロック図である。
本実施形態による検査装置は、通常の欠陥検査装置が有している機能と同様の機能を有し、更に、欠陥検査を効率的に行い得るようになっているものである。通常の欠陥検査装置の機能を実現するための構成については、説明の便宜上、適宜省略している。
検査対象であるレチクル(フォトマスク)10は、図示しない支持部により支持されるようになっている。支持部としては、例えばX−Yステージ等が用いられる。
レチクル10には、光源12から光が照射されるようになっている。光源12としては、例えばレーザ光源が用いられる。かかるレーザ光源12としては、例えばArレーザ、He−Cdレーザ等を用いることができる。
レチクル10を透過した透過光は、受光部(受光素子)14により受光されるようになっている。受光部14は、受光した光の強度に応じた信号を出力するものである。
レチクル10と光源12との相対的な位置を変化させながら、光源12によりレチクル10に光を照射し、レチクル10を透過した光を受光部14により検出することにより、レチクル10の走査(スキャン)が行われる。
こうして、光源12と支持部(図示せず)と受光部14とを含み、レチクル10の走査を行う測定部15が形成されている。
測定部15の受光部14からの出力信号は、処理部16に入力されるようになっている。処理部16は、本実施形態による検査装置全体の制御を司るととともに、所定の処理を行うものである。処理部16には、図示しないCPU(Central Processing Unit)が内蔵されている。処理部16は、光源12からレチクル10に光を照射した際の位置座標のデータと透過光の強度のデータとを関連付けて順次取得する。これにより、レチクル10の各箇所(各位置座標)における透過光の強度を示す測定データ(光強度データ)f(x,y)が取得される。かかる測定データf(x,y)は、レチクル10の検出画像(測定画像)を示す画像データである。
処理部16には、記憶部18が接続されている。記憶部18としては、RAM(Random Access Memory)やHDD(Hard Disc Drive)等が用いられる。取得された測定データf(x,y)は、例えば、記憶部18内に設けられる測定データメモリ(光強度データメモリ)(図示せず)に記憶される。
図2は、欠陥が存在していないレチクルを模式的に示した平面図である。
図2に示すように、レチクル10の透明基板20上には、クロム膜等の遮光膜により形成されたパターン(遮光パターン)22が形成されている。
図3は、欠陥が存在しているレチクルを模式的に示した平面図である。
図3における星印24a〜24dは、欠陥を模式的に示している。欠陥24aは、遮光パターン22の一部に生じた透過性の欠陥を示している。このような欠陥24aは、遮光パターン22の一部が剥離等することにより生じ得る。欠陥24bは、遮光パターン22が形成されない箇所に生じた透過性の欠陥を示している。欠陥24cは、遮光パターン22上に付着した遮光性の異物等による欠陥を示している。欠陥24dは、遮光パターン22が形成されない箇所に付着した遮光性の異物等による欠陥を示している。
なお、実際には、このような4つの態様の欠陥24a〜24dが図3のように直線上に等間隔で配列されるのは稀であるが、ここでは、説明の便宜上、4つの態様の欠陥24a〜24dが直線上に等間隔で生じた場合を例に説明する。
図4は、測定データの例を模式的に示したグラフである。図4における横軸は、レチクル10を走査した際の位置を示しており、図4における縦軸は、透過光の強度を示している。図4は、図3の破線に沿ってレチクル10の走査を行った場合に対応している。
図4において、透過光の強度が周囲と異なっている箇所は、図3に示す欠陥24a〜24dの箇所にそれぞれ対応している。
遮光パターン22の一部に形成された透過性の欠陥24aの場合には、当該欠陥24aに対応する第1のデータD1(x,y)の値が、当該欠陥24aの周囲における第1のデータD1(x,y)の値よりも大きくなる。
遮光パターン22が形成されない箇所に形成された透過性の欠陥24bの場合には、当該欠陥24bに対応する第1のデータD1(x,y)の値が、当該欠陥24bの周囲における第1のデータD1(x,y)の値よりも小さくなる。
遮光パターン22上に付着した遮光性の異物等による欠陥24cの場合には、当該欠陥24cに対応する第1のデータD1(x,y)の値は、当該欠陥24cの周囲における第1のデータD1(x,y)の値よりも小さくなる。
遮光パターン22が形成されない箇所に付着した遮光性の異物等による欠陥24dの場合には、当該欠陥24dに対応する第1のデータD1(x,y)の値は、当該欠陥24dの周囲における第1のデータD1(x,y)の値よりも小さくなる。
図5は、参照データの一部を模式的に示したグラフである。参照データg(x,y)は、レチクル10に欠陥が存在しない場合に得られる測定データに対応するものであり、上述した測定データf(x,y)に対しての基準となるものである。図5における横軸は、レチクル10を走査した際の位置を示しており、図5における縦軸は、レチクル10に欠陥が存在しない場合の透過光の強度を示している。図5は、図2の破線に沿ってレチクル10の走査を行った場合に対応する。なお、図2の破線と図3の破線とは位置的に対応している。
参照データg(x,y)は、例えば、レチクル10の設計データ等に基づいて形成することが可能である。参照データg(x,y)は、例えば、記憶部18内に設けられる参照データメモリ(図示せず)に記憶される。
処理部16は、レチクル10の各箇所についての測定データf(x,y)と、レチクル10の各箇所についての参照データg(x,y)とを用いた減算処理を行うことにより、第1のデータD1(x,y)を生成する。具体的には、レチクル10の各箇所についての参照データg(x,y)を、レチクル10の各箇所についての測定データf(x,y)から減算することにより、第1のデータD1(x,y)を生成する。第1のデータD1(x,y)は、以下のような式(1)により表される。
D1(x,y) = f(x,y)−g(x,y) ・・・(1)
第1のデータD1(x,y)は、測定データf(x,y)により示される測定画像と参照データg(x,y)により示される参照画像との差画像に対応する。
図6は、第1のデータの例を示すグラフである。図6における横軸は、位置を示しており、図6における縦軸は、第1のデータD1(x,y)を示している。
測定データf(x,y)の値と参照データg(x,y)の値とが比較的大きく乖離している場合、即ち、第1のデータD1(x,y)の大きさが比較的大きい場合には、当該箇所に欠陥が存在していると考えることができる。
一方、第1のデータD1(x,y)の大きさが比較的小さい場合には、当該箇所には欠陥が存在していない、又は、当該箇所の欠陥は無視し得る程度のものであると考えることができる。
従って、処理部16は、第1のデータD1(x,y)の絶対値と、所定の閾値(所定値)aとを対比し、第1のデータD1(x,y)の絶対値が閾値a以上の場合には、当該箇所に欠陥が存在していると判断する。即ち、以下のような式(2)を満たす場合には、処理部16は、当該箇所に欠陥が存在していると判断する。
|D1(x,y)| ≧ a ・・・(2)
図7は、第1のデータの絶対値と閾値aとの関係の例を示すグラフである。図7における横軸は、位置を示しており、図7における縦軸は、第1のデータD1(x,y)の絶対値を示している。
図7に示すように、欠陥24a〜24dが存在している箇所においては、第1のデータD1(x,y)の絶対値が閾値a以上となる。
第1のデータD1(x,y)の絶対値が所定の閾値aより小さい場合には、処理部16は、当該箇所には欠陥が存在していない、又は、当該箇所の欠陥は無視し得る程度のものであると判断する。
処理部16は、欠陥が存在していると判断した箇所の位置座標(x,y)を、例えば、記憶部18内に設けられる欠陥座標メモリ(図示せず)に記憶する。
遮光パターン22の一部に生じた透過性の欠陥24aの場合には、当該欠陥24aに対応する第1のデータD1(x,y)の値は、図6に示すように、正となる。
遮光パターン22が形成されない箇所に生じた透過性の欠陥24bの場合には、当該欠陥24bに対応する第1のデータD1(x,y)の値は、図6に示すように、負となる。
遮光パターン22上に付着した遮光性の異物等による欠陥24cの場合には、当該欠陥24cに対応する第1のデータD1(x,y)の値は、図6に示すように、負となる。
遮光パターン22が形成されない箇所に付着した遮光性の異物等による欠陥24dの場合には、当該欠陥24dに対応する第1のデータD1(x,y)の値は、図6に示すように、負となる。
遮光パターン22上に付着した遮光性の異物等による欠陥24cの場合には、レチクル10のパターンを転写する際に悪影響を及ぼさないため、敢えて欠陥として検出する必要がない。従って、本実施形態では、以下のようにして、遮光パターン22上に付着した遮光性の異物等による欠陥24cを、欠陥として検出しないようにする。
欠陥24cが、遮光パターン22が形成される箇所に位置するか、それとも、遮光パターン22が形成されない箇所に位置するかは、参照データg(x,y)に基づいて判断することが可能である。
即ち、参照データg(x,y)の値が比較的大きい箇所は、遮光パターン22が形成されない箇所である。
一方、参照データg(x,y)の値が比較的小さい箇所は、遮光パターン22が形成される箇所である。
従って、処理部16は、レチクル10の各箇所についての参照データg(x,y)と所定の閾値(所定値)bとを用いた減算処理を行う。具体的には、レチクル10の各箇所についての参照データg(x,y)から、閾値bを減算する。閾値bは、例えば、参照データg(x,y)の最大値gmaxと参照データg(x,y)の最小値gminとの平均値を用いることができる。この場合、閾値bは、例えば、以下のような式(3)で表される。
b = (gmax+gmin)÷2 ・・・(3)
図8は、参照データと閾値bとの関係を示すグラフである。図8における横軸は、位置を示しており、図8における縦軸は、参照データg(x,y)を示している。
なお、閾値bは、参照データg(x,y)の最大値gmaxと参照データg(x,y)の最小値gminとの平均値に限定されるものではない。参照データg(x,y)の最大値gmaxより小さく、参照データg(x,y)の最小値gminより大きい値を、閾値bとして用いることができる。
こうして、レチクル10の各箇所についての参照データg(x,y)と閾値bとを用いた減算処理を行うことにより、レチクル10の各箇所についての第2のデータD2(x,y)を生成する。第2のデータD2(x,y)は、以下のような式(4)で表される。
D2(x,y) = g(x,y)−b ・・・(4)
図9は、第2のデータの例を示すグラフである。図9における横軸は、位置を示しており、図9における縦軸は、第2のデータD2(x,y)を示している。
図2及び図9から分かるように、第2のデータD2(x,y)の値が正の箇所は、遮光パターン22が形成されない箇所に対応する。
一方、第2のデータD2(x,y)の値が負の箇所は、遮光パターン22が形成される箇所に対応する。
処理部16は、第1のデータD1(x,y)と第2のデータD2(x,y)とを用いて乗算処理することにより、第3のデータD3(x,y)を生成する。そして、検出すべき欠陥24a、24b、24dと検出する必要がない欠陥24cとを、以下のように区別する。
第3のデータD3(x,y)は、以下のような式(5)で表される。
D3(x,y) = D1(x,y)×D2(x,y) ・・・(5)
上述したように、遮光パターン22の一部に生じた透過性の欠陥24aの場合には、当該欠陥24aに対応する第1のデータD1(x,y)の値は、図6に示すように、正となる。
また、上述したように、遮光パターン22が形成される箇所においては、当該箇所における第2のデータD2(x,y)の値は、図9に示すように、負となる。
従って、遮光パターン22の一部に生じた透過性の欠陥24aの場合には、第1のデータD1(x,y)と第2のデータD2(x,y)との積である第3のデータD3(x,y)の値は、負となる。
図10は、第3のデータの例を示すグラフである。図10における横軸は、位置を示しており、図10における縦軸は、第3のデータD3(x,y)を示している。
図10に示すように、欠陥24aに対応する第3のデータD3(x,y)の値は、負となる。
また、上述したように、遮光パターン22が形成されない箇所に生じた透過性の欠陥24bの場合には、当該欠陥24bに対応する第1のデータD1(x,y)の値は、図6に示すように、負となる。
また、上述したように、遮光パターン22が形成されない箇所においては、当該箇所における第2のデータD2(x,y)の値は、図9に示すように、正となる。
従って、遮光パターン22が形成されない箇所に生じた透過性の欠陥24bの場合には、第1のデータD1(x,y)と第2のデータD2(x,y)との積である第3のデータD3(x,y)の値は、図10に示すように、負となる。
また、上述したように、遮光パターン22上に付着した遮光性の異物等による欠陥24cの場合には、当該欠陥24cに対応する第1のデータD1(x,y)の値は、図6に示すように、負となる。
また、上述したように、遮光パターン22が形成される箇所においては、当該箇所における第2のデータD2(x,y)の値は、図9に示すように、負となる。
従って、遮光パターン22上に付着した遮光性の異物等による欠陥24cの場合には、第1のデータD1(x,y)と第2のデータD2(x,y)との積である第3のデータD3(x,y)の値は、図10に示すように、正となる。
また、上述したように、遮光パターン22が形成されない箇所に付着した遮光性の異物等による欠陥24dの場合には、当該箇所24dに対応する第1のデータD1(x,y)の値は、図6に示すように、負となる。
また、上述したように、遮光パターン22が形成されない箇所においては、当該箇所における第2のデータD2(x,y)の値は、図9に示すように、正となる。
従って、遮光パターン22が形成されない箇所に付着した遮光性の異物等による欠陥24dの場合には、第1のデータD1(x,y)と第2のデータD2(x,y)との積である第3のデータD3(x,y)の値は、図10に示すように、負となる。
このように、遮光パターン22上に付着した遮光性の異物等による欠陥24cの場合には、第3のデータD3(x,y)の値が正となるのに対して、他の欠陥24a,24b,24d場合には、第3のデータD3(x,y)の値が負となる。このため、遮光パターン22上に付着した遮光性の異物等による欠陥24cの場合と、その他の欠陥24a,24b,24dの場合とを、第3のデータD3(x,y)に基づいて区別することが可能である。
ところで、第3のデータD3(x,y)の値が負であったとしても、第3のデータD3(x,y)の値が十分に小さい場合には、無視し得る程度の欠陥、又は、測定誤差等によるものと考えることが可能である。
従って、処理部16は、レチクル10の各箇所についての第3のデータD3(x,y)と所定の閾値(所定値)cとを対比することにより、検出すべき欠陥か否かを判断する。
具体的には、以下のような式(6)を満たす場合には、処理部16は、当該箇所の欠陥を検出すべき欠陥であると判断する。
D3(x,y)≦c ・・・(6)
一方、D3(x,y)が閾値cより大きい場合には、処理部16は、当該箇所の欠陥は、検出すべき欠陥ではないと判断する。
処理部16は、検出すべき欠陥の座標(x,y)を、例えば、記憶部18内に設けられる検出必要欠陥座標メモリ(図示せず)に記憶する。
こうして、検出する必要のない欠陥24cが除外され、検出すべき欠陥24a,24b,24dが抽出される。
こうして、本実施形態による検査装置が形成されている。
このように本実施形態によれば、測定データf(x,y)と参照データg(x,y)とを用いた減算処理を行うことにより、第1のデータD1(x,y)を生成する。また、参照データg(x,y)と閾値bとを用いた減算処理を行うことにより、第2のデータD2(x,y)を生成する。そして、第1のデータD1(x,y)と第2のデータD2(x,y)とを用いた乗算処理を行うことにより、第3のデータD3(x,y)を生成する。そして、第3のデータD3(x,y)を閾値cと対比することにより、レチクル10の検出すべき欠陥を抽出する。本実施形態によれば、検出する必要のない欠陥を除外することができるため、レチクル10の欠陥検査を効率的に行うことができる。
次に、本実施形態による検査方法について図11を用いて説明する。図11は、本実施形態による検査方法を示すフローチャートである。
まず、レチクル10を走査することにより、レチクル10の各箇所についての測定データf(x,y)を取得する(ステップS1)。
次に、レチクル10の各箇所についての測定データf(x,y)とレチクル10の各箇所についての参照データg(x,y)とを用いた減算処理を行うことにより、レチクル10の各箇所についての第1のデータD1(x,y)を生成する(ステップS2)。より具体的には、レチクル10の各箇所についての参照データg(x,y)を、レチクル10の各箇所についての測定データf(x,y)から減算することにより、レチクル10の各箇所についての第1のデータD1(x,y)を求める(式(1)参照)。換言すれば、測定データf(x,y)により示される測定画像と参照データg(x,y)により示される参照画像との差画像のデータD1(x,y)を求める。
次に、第1のデータD1(x,y)の絶対値と所定の閾値(所定値)aとを対比することにより、欠陥を検出する(ステップS3)。換言すれば、差画像のデータD1(x,y)に基づいて、欠陥を検出する。第1のデータD1(x,y)の絶対値が閾値a以上の場合には、当該箇所に欠陥が存在していると判断する(式(2)参照)。一方、第1のデータD1(x,y)の絶対値が閾値aより小さい場合には、当該箇所には欠陥が存在していない、又は、当該箇所の欠陥は無視し得る程度のものであると判断する。処理部16は、欠陥が存在していると判断した箇所の座標(x,y)を、記憶部18内に設けられる欠陥座標メモリ(図示せず)に記憶する。
次に、レチクル10の各箇所についての参照データg(x,y)と所定の閾値(所定値)bとを用いた減算処理を行うことにより、レチクル10の各箇所についての第2のデータD2(x,y)を生成する(ステップS4)。より具体的には、レチクル10の各箇所についての参照データg(x,y)から閾値bを減算することにより、レチクル10の各箇所についての第2のデータD2(x,y)を求める(式(4)参照)。
次に、レチクル10の各箇所についての第1のデータD1(x,y)と第2のデータD2(x,y)とを用いた乗算処理を行うことにより、レチクル10の各箇所についての第3のデータD3(x,y)を生成する(式(5)参照)(ステップS5)。
次に、レチクル10の各箇所についての第3のデータD3(x,y)と所定の閾値(所定値)cとを対比することにより、レチクル10の検出すべき欠陥を抽出する(式(6)参照)(ステップS6)。
こうして、検出する必要のない欠陥(検出不要欠陥)が除外され、検出すべき欠陥(検出必要欠陥)が抽出される。
次に、検出すべき欠陥、即ち、レビューや補修(修正)等を行うことが必要な欠陥に対して、レビューを行う(ステップS7)。レビューは、レビューSEM等を用いて、人(測定者、検査員)がレチクル10の欠陥を観察するものである。
これにより、検出する必要のない欠陥が除外され、検出すべき欠陥についてだけレビューが行われるため、レチクル10の欠陥検査を効率的に行うことができる。
そして、レビューの結果に応じて、レチクル10の修復等が適宜行われる。
このように、本実施形態では、レチクル10の各箇所についての測定データf(x,y)とレチクル10の各箇所についての参照データg(x,y)とを用いた減算処理を行うことにより、レチクル10の各箇所についての第1のデータD1(x,y)を生成する。また、レチクル10の各箇所についての参照データg(x,y)と閾値bとを用いた減算処理を行うことにより、レチクル10の各箇所についての第2のデータD2(x,y)を生成する。そして、レチクル10の各箇所についての第1のデータD1(x,y)とレチクル10の各箇所についての第2のデータD2(x,y)とを用いた乗算処理を行うことにより、レチクル10の各箇所についての第3のデータD3(x,y)を生成する。そして、レチクル10の各箇所についての第3のデータD3(x,y)と閾値cとを対比することにより、レチクル10の検出すべき欠陥を抽出する。本実施形態によれば、検出する必要の無い欠陥を除外することができるため、レチクル10の欠陥検査を効率的に行うことができる。
[第2実施形態]
第2実施形態による検査装置及び検査方法について図12乃至図 を用いて説明する。図1乃至図11に示す第1実施形態による検査装置及び検査方法と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔にする。
本実施形態による検査装置及び検査方法は、ビアを形成するための開口パターン23が形成されたレチクル10aを検査するものである。
図12は、欠陥が存在していないレチクルを模式的に示した平面図である。
図12に示すように、レチクル10aの透明基板20上には、クロム膜等により形成された遮光膜(遮光パターン)22aが形成されている。遮光膜22aには、ビアを形成するための開口パターン23が形成されている。
図13は、欠陥が存在しているレチクルを模式的に示した平面図である。
図13における星印24e〜24hは、欠陥を模式的に示している。欠陥24eは、遮光パターン22aの一部に生じた透過性の欠陥を示している。このような欠陥24eは、遮光パターン22aの一部が剥離等することにより生じ得る。欠陥24fは、遮光パターン22aが形成されない箇所、即ち、開口パターン23の箇所に生じた透過性の欠陥を示している。欠陥24gは、遮光パターン22a上に付着した遮光性の異物等による欠陥を示している。欠陥24hは、遮光パターン22aが形成されない箇所、即ち、開口パターン23の箇所に付着した遮光性の異物等による欠陥を示している。
なお、実際には、このような4つの態様の欠陥24e〜24hが図13のように直線上に等間隔で配列されるのは稀であるが、ここでは、説明の便宜上、4つの態様の欠陥24e〜24hが直線上に等間隔で生じた場合を例に説明する。
図14は、測定データの例を模式的に示したグラフである。図14における横軸は、レチクル10を走査した際の位置を示しており、図14における縦軸は、透過光の強度を示している。図14は、図13の破線に沿ってレチクル10aの走査を行った場合に対応している。
図14において、透過光の強度が周囲と異なっている箇所は、図13に示す欠陥24e〜24hの箇所にそれぞれ対応している。
遮光パターン22aの一部に形成された透過性の欠陥24eの場合には、当該欠陥24eに対応する第1のデータD1(x,y)の値が、当該欠陥24eの周囲における第1のデータD1(x,y)の値よりも大きくなる。
遮光パターン22aが形成されない箇所、即ち、開口パターン23に形成された透過性の欠陥24fの場合には、当該欠陥24fに対応する第1のデータD1(x,y)の値が、当該欠陥24fの周囲における第1のデータD1(x,y)の値よりも小さくなる。
遮光パターン22a上に付着した遮光性の異物等による欠陥24gの場合には、当該欠陥24gに対応する第1のデータD1(x,y)の値は、当該欠陥24gの周囲における第1のデータD1(x,y)の値よりも小さくなる。
遮光パターン22aが形成されない箇所に付着した遮光性の異物等による欠陥24hの場合には、当該欠陥24hに対応する第1のデータD1(x,y)の値は、当該欠陥24hの周囲における第1のデータD1(x,y)の値よりも小さくなる。
図15は、参照データの一部を模式的に示したグラフである。参照データg(x,y)は、レチクル10aに欠陥が存在しない場合に得られる測定データに対応するものであり、上述した測定データf(x,y)に対しての基準となるものである。図15における横軸は、レチクル10aを走査した際の位置を示しており、図15における縦軸は、レチクル10aに欠陥が存在しない場合の透過光の強度を示している。図15は、図12の破線に沿ってレチクル10aの走査を行った場合に対応する。なお、図12の破線と図13の破線とは位置的に対応している。
参照データg(x,y)は、例えば、レチクル10aの設計データ等に基づいて形成することが可能である。参照データg(x,y)は、例えば、記憶部18内に設けられる参照データメモリ(図示せず)に記憶される。
処理部16は、第1実施形態において上述したように、レチクル10aの各箇所についての測定データf(x,y)と、レチクル10aの各箇所についての参照データg(x,y)とを用いた減算処理を行うことにより、第1のデータD1(x,y)を生成する。具体的には、レチクル10aの各箇所についての参照データg(x,y)を、レチクル10aの各箇所についての測定データf(x,y)から減算することにより、第1のデータD1(x,y)を生成する。
図16は、第1のデータの例を示すグラフである。図16における横軸は、位置を示しており、図16における縦軸は、第1のデータD1(x,y)を示している。
図17は、第1のデータの絶対値と閾値aとの関係の例を示すグラフである。図7における横軸は、位置を示しており、図7における縦軸は、第1のデータD1(x,y)の絶対値を示している。
図17に示すように、欠陥24e〜24hが存在している箇所においては、第1のデータD1(x,y)の絶対値が閾値a以上となる。
遮光パターン22aの一部に生じた透過性の欠陥24eの場合には、当該欠陥24eに対応する第1のデータD1(x,y)の値は、図16に示すように、正となる。
遮光パターン22aが形成されない箇所に生じた透過性の欠陥24fの場合には、当該欠陥24fに対応する第1のデータD1(x,y)の値は、図16に示すように、負となる。
遮光パターン22a上に付着した遮光性の異物等による欠陥24gの場合には、当該欠陥24gに対応する第1のデータD1(x,y)の値は、図16に示すように、負となる。
遮光パターン22が形成されない箇所に付着した遮光性の異物等による欠陥24hの場合には、当該欠陥24hに対応する第1のデータD1(x,y)の値は、図16に示すように、負となる。
遮光パターン22a上に付着した遮光性の異物等による欠陥24gの場合には、レチクル10aのパターンを転写する際に悪影響を及ぼさないため、敢えて欠陥として検出する必要がない。従って、本実施形態では、以下のようにして、遮光パターン22a上に付着した遮光性の異物等による欠陥24gを、欠陥として検出しないようにする。
欠陥24gが、遮光パターン22aが形成される箇所に位置するか、それとも、遮光パターン22aが形成されない箇所に位置するかは、第1実施形態において上述したように、参照データg(x,y)に基づいて判断することが可能である。
即ち、参照データg(x,y)の値が比較的大きい箇所は、遮光パターン22aが形成されない箇所である。
一方、参照データg(x,y)の値が比較的小さい箇所は、遮光パターン22aが形成される箇所である。
従って、第1実施形態において上述したように、処理部16は、レチクル10aの各箇所についての参照データg(x,y)と閾値bとを用いた減算処理を行う。具体的には、レチクル10aの各箇所についての参照データg(x,y)から、閾値bを減算する。
図18は、参照データと閾値bとの関係を示すグラフである。図18における横軸は、位置を示しており、図18における縦軸は、参照データg(x,y)を示している。
こうして、レチクル10aの各箇所についての参照データg(x,y)と閾値bとを用いた減算処理を行うことにより、レチクル10aの各箇所についての第2のデータD2(x,y)を生成する。
図19は、第2のデータの例を示すグラフである。図19における横軸は、位置を示しており、図19における縦軸は、第2のデータD2(x,y)を示している。
図12及び図19から分かるように、第2のデータD2(x,y)の値が正の箇所は、遮光パターン22aが形成されない箇所、即ち、開口パターン23の箇所に対応する。
一方、第2のデータD2(x,y)の値が負の箇所は、遮光パターン22aが形成される箇所に対応する。
処理部16は、第1のデータD1(x,y)と第2のデータD2(x,y)とを用いて乗算処理することにより、第3のデータD3(x,y)を生成する。そして、検出すべき欠陥24e、24f、24hと検出する必要がない欠陥24gとを、以下のように区別する。
上述したように、遮光パターン22aの一部に生じた透過性の欠陥24eの場合には、当該欠陥24eに対応する第1のデータD1(x,y)の値は、図16に示すように、正となる。
また、上述したように、遮光パターン22aが形成される箇所においては、当該箇所における第2のデータD2(x,y)の値は、図19に示すように、負となる。
従って、遮光パターン22aの一部に生じた透過性の欠陥24eの場合には、第1のデータD1(x,y)と第2のデータD2(x,y)との積である第3のデータD3(x,y)の値は、負となる。
図20は、第3のデータの例を示すグラフである。図20における横軸は、位置を示しており、図20における縦軸は、第3のデータD3(x,y)を示している。
図20に示すように、欠陥24eに対応する第3のデータD3(x,y)の値は、負となる。
また、上述したように、遮光パターン22aが形成されない箇所、即ち、開口パターン23の箇所に生じた透過性の欠陥24fの場合には、当該欠陥24fに対応する第1のデータD1(x,y)の値は、図16に示すように、負となる。
また、上述したように、遮光パターン22aが形成されない箇所、即ち、開口パターン23の箇所においては、当該箇所における第2のデータD2(x,y)の値は、図19に示すように、正となる。
従って、遮光パターン22aが形成されない箇所、即ち、開口パターン23の箇所に生じた透過性の欠陥24fの場合には、第1のデータD1(x,y)と第2のデータD2(x,y)との積である第3のデータD3(x,y)の値は、図20に示すように、負となる。
また、上述したように、遮光パターン22a上に付着した遮光性の異物等による欠陥24gの場合には、当該欠陥24gに対応する第1のデータD1(x,y)の値は、図16に示すように、負となる。
また、上述したように、遮光パターン22aが形成される箇所においては、当該箇所における第2のデータD2(x,y)の値は、図19に示すように、負となる。
従って、遮光パターン22a上に付着した遮光性の異物等による欠陥24gの場合には、第1のデータD1(x,y)と第2のデータD2(x,y)との積である第3のデータD3(x,y)の値は、図20に示すように、正となる。
また、上述したように、遮光パターン22aが形成されない箇所に付着した遮光性の異物等による欠陥24hの場合には、当該箇所24hに対応する第1のデータD1(x,y)の値は、図16に示すように、負となる。
また、上述したように、遮光パターン22aが形成されない箇所においては、当該箇所における第2のデータD2(x,y)の値は、図19に示すように、正となる。
従って、遮光パターン22aが形成されない箇所、即ち、開口パターン23の箇所に付着した遮光性の異物等による欠陥24hの場合には、第3のデータD3(x,y)の値は、図20に示すように、負となる。
このように、遮光パターン22a上に付着した遮光性の異物等による欠陥24gの場合には、第3のデータD3(x,y)の値が正となるのに対して、他の欠陥24e,24f,24h場合には、第3のデータD3(x,y)の値が負となる。このため、遮光パターン22a上に付着した遮光性の異物等による欠陥24gの場合と、その他の欠陥24e,24f,24hの場合とを、第3のデータD3(x,y)に基づいて区別することが可能である。
ところで、第1実施形態において上述したように、第3のデータD3(x,y)の値が負であったとしても、第3のデータD3(x,y)の値が十分に小さい場合には、無視し得る程度の欠陥、又は、測定誤差等によるものと考えることが可能である。
従って、処理部16は、レチクル10aの各箇所についての第3のデータD3(x,y)と所定の閾値cとを対比することにより、検出すべき欠陥か否かを判断する。即ち、D3(x,y)が閾値c以下の場合には、処理部16は、当該箇所の欠陥を検出すべき欠陥であると判断する。一方、D3(x,y)が閾値cより大きい場合には、処理部16は、当該箇所の欠陥は、検出すべき欠陥ではないと判断する。
処理部16は、検出すべき欠陥の座標(x,y)を、例えば、記憶部18内に設けられる検出必要欠陥座標メモリ(図示せず)に記憶する。
こうして、検出する必要のない欠陥24gが除外され、検出すべき欠陥24e,24f,24hが抽出される。
こうして、本実施形態による検査装置が形成されている。
本実施形態による検査方法は、第1実施形態による検査方法と同様であるため、説明を省略する。
ビアを形成するための開口パターン23が形成されたレチクル10aでは、遮光パターン22aの面積比率が高い。このため、遮光性の異物等による欠陥24gと遮光パターン22aとが重なり合う頻度が高い。一方、遮光パターン22a上に付着した遮光性の異物等による欠陥24gは、パターンを転写する際に悪影響を及ぼさないため、検出する必要のない欠陥である。このように、ビアを形成するためのレチクル10aの欠陥を検査する場合に、本実施形態による検査装置及び検査方法は特に有用である。
[変形実施形態]
上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、第1のデータD1(x,y)を生成した後に、第2のデータD2(x、y)を生成する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。第2のデータD2(x、y)を予め生成しておくことも可能である。
また、上記実施形態では、参照データg(x,y)を測定データf(x,y)から減算することにより、第1のデータD1(x,y)を生成する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、測定データf(x,y)から参照データg(x,y)を減算することにより、第1のデータD1(x,y)を生成してもよい。この場合には、第1のデータD1(x,y)の正負が、上記実施形態の場合とは反転することとなる。
また、上記実施形態では、参照データg(x,y)から閾値bを減算することにより第2のデータD2(x,y)を生成する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、閾値bから参照データg(x,y)を減算することにより第2のデータD2(x,y)を生成してもよい。この場合には、第2のデータD2(x,y)の正負が、上記実施形態の場合とは反転することとなる。
正負が反転した第1のデータD1(x,y)と正負が反転した第2のデータD2(x,y)とを乗算した場合には、上記実施形態と同様の第3のデータD3(x,y)が生成されることとなる。
正負が反転した第1のデータD1(x,y)と正負が反転していない第2のデータD2(x,y)とを乗算した場合には、第3のデータD3(x,y)の正負が上記実施形態とは反転することとなる。また、正負が反転していない第1のデータD1(x,y)と正負が反転した第2のデータD2(x,y)とを乗算した場合にも、第3のデータD3(x,y)の正負が上記実施形態とは反転することとなる。この場合には、閾値cの値を正の値に設定すればよい。
上記実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
レチクルを走査することにより、前記レチクルの各箇所における透過光の強度を示す測定データを取得するステップと、
前記測定データに対して基準となる前記レチクルの各箇所についての参照データと、前記レチクルの各箇所についての前記測定データとを用いた減算処理を行うことにより、前記レチクルの各箇所についての第1のデータを生成するステップと、
前記参照データの最大値より小さく、前記参照データの最小値より大きい所定値と、前記レチクルの各箇所についての前記参照データとを用いた減算処理を行うことにより得られた前記レチクルの各箇所についての第2のデータと、前記レチクルの各箇所についての前記第1のデータとを乗算することにより、前記レチクルの各箇所についての第3のデータを生成するステップと、
前記レチクルの各箇所についての前記第3のデータに基づいて、前記レチクルの検出すべき欠陥を抽出するステップと
を有することを特徴とする検査方法。
(付記2)
付記1記載の検査方法において、
前記参照データは、前記レチクルの設計データに基づいて生成される
ことを特徴とする検査方法。
(付記3)
付記1又は2記載の検査方法において、
前記所定値は、前記参照データの前記最大値と前記参照データの前記最小値との平均値である
ことを特徴とする検査方法。
(付記4)
付記1乃至3のいずれかに記載の検査方法において、
前記レチクルは、ビアを形成するためのパターンが形成されたレチクルである
ことを特徴とする検査方法。
(付記5)
レチクルを走査することにより、前記レチクルの各箇所における透過光の強度を示す測定データを取得する測定部と、
前記測定データに対して基準となる前記レチクルの各箇所についての参照データと、前記レチクルの各箇所についての前記測定データとを用いた減算処理を行うことにより、前記レチクルの各箇所についての第1のデータを生成し、前記参照データの最大値より小さく、前記参照データの最小値より大きい所定値と、前記レチクルの各箇所についての前記参照データとを用いた減算処理を行うことにより得られた前記レチクルの各箇所についての第2のデータと、前記レチクルの各箇所についての前記第1のデータとを乗算することにより、前記レチクルの各箇所についての第3のデータを生成し、前記レチクルの各箇所についての前記第3のデータに基づいて前記レチクルの検出すべき欠陥を抽出する処理部と
を有することを特徴とする検査装置。
(付記6)
付記5記載の検査装置において、
前記参照データは、前記レチクルの設計データに基づいて生成される
ことを特徴とする検査装置。
(付記7)
付記5又は6記載の検査装置において、
前記所定値は、前記参照データの前記最大値と前記参照データの前記最小値との平均値である
ことを特徴とする検査装置。
(付記8)
付記5乃至7のいずれかに記載の検査装置において、
前記レチクルは、ビアを形成するためのパターンが形成されたレチクルである
ことを特徴とする検査装置。