JP5799741B2 - ブレーキ制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ポンプアップ液圧とマスターシリンダ液圧によりホイールシリンダ液圧を発生させるブレーキ制御装置に関する。
従来、VDC型回生協調ブレーキ油圧制御システムとしては、ブレーキ操作時に下記の動作を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
・ストロークセンサで目標減速度を決める。
・マスターシリンダピストンがリザーバポートを超えるまでは、マスターシリンダ液圧=0でホイールシリンダ液圧をVDCモータによるポンプアップで得る。その後の制動中においてもポンプアップを継続する。
・差圧弁でホイールシリンダ液圧を調整する。
特開2006−96218号公報
しかしながら、従来のVDC型回生協調ブレーキ油圧制御システムにあっては、ブレーキ踏み上げ操作の際、VDCモータを駆動させることにより油圧回路の低圧リザーバに溜まったブレーキ液を吸い上げ、ポンプアップ液圧を上昇させる構成になっていた。このため、VDCモータにより低圧リザーバ内の液を吸い上げると、マスターシリンダ内のブレーキ液が低圧リザーバに流れ込み、ドライバーの制動要求に対し、ホイールシリンダ液圧の昇圧が遅れ、制動減速度のフィーリングが低下する、という問題があった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、ブレーキ踏み上げ操作の際、ペダルストロークに対するホイールシリンダ液圧特性が段付き特性になるのを抑えることで、制動減速度のフィーリングを向上することができるブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明のブレーキ制御装置は、マスターシリンダと、ポンプアップ液圧発生手段と、ブレーキ踏み上げ操作検知手段と、ポンプアップ液圧制御手段と、を備える。
前記マスターシリンダは、ペダルストローク操作に応じてマスターシリンダ液圧を発生する。
前記ポンプアップ液圧発生手段は、前記マスターシリンダとホイールシリンダを連結する液圧系に配置され、ホイールシリンダ液圧を調整する差圧弁の制御と、低圧リザーバのブレーキ液を吸い込む液圧ポンプの駆動と、によりポンプアップ液圧を発生する。
前記ブレーキ踏み上げ操作検知手段は、ドライバーによるブレーキ踏み上げ操作を検知する。
前記ポンプアップ液圧制御手段は、前記ブレーキ踏み上げ操作の際、少なくともマスターシリンダ内のブレーキ液が前記低圧リザーバに流れ込むストローク位置から、ホイールシリンダ液圧の停滞が終わるストローク位置までを含むストローク領域において、ペダルストロークの上昇に対して滑らかな勾配にて前記ホイールシリンダ液圧が増加するように前記差圧弁を制御する。
よって、ブレーキ踏み上げ操作の際、ポンプアップ液圧制御手段において、ペダルストロークの上昇に対して滑らかな勾配にてホイールシリンダ液圧が増加するように差圧弁が制御される。この差圧弁の制御は、少なくともマスターシリンダ内のブレーキ液が低圧リザーバに流れ込むストローク位置から、ホイールシリンダ液圧の停滞が終わるストローク位置までを含むストローク領域においてなされる。
このように、マスターシリンダ内のブレーキ液が低圧リザーバに流れ込むことによりホイールシリンダ液圧が停滞するストローク領域での差圧弁制御により、ペダルストロークに対するホイールシリンダ液圧特性の段付きが小さく抑えられる。
この結果、ブレーキ踏み上げ操作の際、ペダルストロークに対するホイールシリンダ液圧特性が段付き特性になるのを抑えることで、制動減速度のフィーリングを向上することができる。
実施例1のブレーキ制御装置を適用した前輪駆動によるハイブリッド車の構成を示すブレーキシステム図である。 実施例1のブレーキ制御装置におけるVDCブレーキ液圧ユニットを示すブレーキ液圧回路図である。 実施例1のブレーキ制御装置のブレーキコントローラにて実行されるポンプアップ液圧制御処理の流れを示すフローチャートである。 実施例1のブレーキ制御装置のブレーキコントローラにて実行されるポンプアップ液圧制御で用いられるペダルストロークに対する目標ホイールシリンダ液圧特性を示す液圧特性マップ図である。 ペダルストロークに対するホイールシリンダ液圧(ポンプアップ液圧+マスターシリンダ液圧)の基本分担特性を示すホイールシリンダ液圧特性図である。 ペダル操作速度が速いときペダルストロークに対してマスターシリンダ液圧が発生しにくくなるメカニズムを示すメカニズム説明図である。 マスターシリンダとVDCブレーキ液圧ユニットを備えたブレーキシステムを示す概略図である。 図7に示すブレーキシステムにおいてプライマリピストンで押し出したブレーキ液がポンプアップに吸込み消費されるときの低圧リザーバの動作を示す低圧リザーバ動作説明図である。 比較例での課題を説明するためのペダルストロークに対するポンプアップによる液圧・マスターシリンダ液圧・ホイールシリンダ液圧の各特性を示すタイムチャートである。 実施例1での効果を説明するためのペダルストロークに対するホイールシリンダ液圧(≒制動G)・差圧・差圧弁開度の各特性を示すタイムチャートである。 実施例2のブレーキ制御装置のブレーキコントローラにて実行されるポンプアップ液圧制御処理の流れを示すフローチャートである。 実施例2での効果を説明するためのペダルストロークに対するホイールシリンダ液圧(≒制動G)・差圧・差圧弁開度の各特性を示すタイムチャートである。 実施例3のブレーキ制御装置のブレーキコントローラにて実行されるポンプアップ液圧制御処理の流れを示すフローチャートである。 実施例3での効果を説明するためのペダルストロークに対するホイールシリンダ液圧(≒制動G)・差圧・差圧弁開度の各特性を示すタイムチャートである。
以下、本発明のブレーキ制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1〜実施例3に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
実施例1のブレーキ制御装置の構成を、「全体システム構成」、「VDCブレーキ液圧ユニット構成」、「ポンプアップ液圧制御構成」に分けて説明する。
[全体システム構成]
図1は、実施例1のブレーキ制御装置を適用した前輪駆動によるハイブリッド車の構成を示す。以下、図1に基づき、VDCを利用したブレーキシステムの全体構成を説明する。
前記ブレーキシステムの制動力発生系は、図1に示すように、ブレーキ液圧発生装置1と、VDCブレーキ液圧ユニット2(ポンプアップ液圧発生手段)と、ストロークセンサ3と、左前輪ホイールシリンダ4FLと、右前輪ホイールシリンダ4FRと、左後輪ホイールシリンダ4RLと、右後輪ホイールシリンダ4RRと、走行用電動モータ5と、を備えている。
すなわち、既存のVDCシステム(VDCは、「Vehicle Dynamics Control」の略)を利用したブレーキシステムによる構成としている。なお、VDCシステムとは、高速でのコーナー進入や急激なハンドル操作などによって車両姿勢が乱れた際、横滑りを防ぎ、優れた走行安定性を担保する車両挙動制御(=VDC制御)を行うシステムである。
前記ブレーキ液圧発生装置1は、ドライバーによるブレーキ操作に応じて前後輪の各輪に付与するマスターシリンダ液圧分を発生するマスターシリンダ液圧発生手段である。このブレーキ液圧発生装置1は、図1に示すように、ブレーキペダル11と、負圧ブースタ12と、マスターシリンダ13と、リザーバ14と、を有する。つまり、ブレーキペダル11に加えられたドライバーのブレーキ踏力を、負圧ブースタ12により倍力し、マスターシリンダ13のプライマリピストンとセカンダリピストンによりマスターシリンダ液圧(プライマリ液圧とセカンダリ液圧)を作り出す。
前記VDCブレーキ液圧ユニット2は、ブレーキ液圧発生装置1と各輪のホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRとを連結する液圧系に配置される。このVDCブレーキ液圧ユニット2は、VDCモータ21により駆動する液圧ポンプ22,22を有し、マスターシリンダ液圧の増圧・保持・減圧を制御すると共に、マスターシリンダ液圧に加えるポンプアップ液圧を発生するポンプアップ液圧発生手段である。そして、VDCブレーキ液圧ユニット2とブレーキ液圧発生装置1とは、プライマリ液圧管61とセカンダリ液圧管62により接続されている。VDCブレーキ液圧ユニット2と各輪のホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRとは、左前輪液圧管63と右前輪液圧管64と左後輪液圧管65と右後輪液圧管66により接続されている。つまり、ブレーキ操作時、ブレーキ液圧発生装置1により発生したマスターシリンダ液圧で不足するとき、VDCブレーキ液圧ユニット2により加圧し、各輪のホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRに加えることで液圧制動力を得るようにしている。
前記ストロークセンサ3は、ドライバーによるブレーキペダル操作量をポテンショメータ等により検出する手段である。このストロークセンサ3は、例えば、回生協調ブレーキ制御を行う際に必要情報である目標減速度(=ドライバー要求減速度)を検出する構成として、既存のVDCシステムに対して追加された部品である。
前記各ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRは、前後各輪のブレーキディスクに設定され、VDCブレーキ液圧ユニット2からの液圧が印加される。そして、各ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRへの液圧印加時、ブレーキパッドによりブレーキディスクを挟圧することにより、前後輪に液圧制動力を付与する。
前記走行用電動モータ5は、左右前輪(駆動輪)の走行用駆動源として設けられ、駆動モータ機能と発電ジェネレータ機能を持つ。この走行用電動モータ5は、力行時、バッテリ電力を吸込み消費しながらのモータ駆動により、左右前輪へ駆動力を伝達する。そして、回生時、左右前輪の回転駆動に負荷を与えることで電気エネルギーに変換し、発電分をバッテリへ充電する。つまり、左右前輪の回転駆動に与える負荷が、回生制動力となる。この走行用電動モータ5が設けられる左右前輪(駆動輪)の駆動系には、走行用電動モータ5以外に、走行用駆動源としてエンジン10が設けられ、変速機11を介して左右前輪へ駆動力を伝達する。
前記ブレーキシステムの制動力制御系は、図1に示すように、ブレーキコントローラ7と、モータコントローラ8と、統合コントローラ9と、エンジンコントローラ12と、を備えている。
前記ブレーキコントローラ7は、統合コントローラ9からの指令とVDCブレーキ液圧ユニット2のマスターシリンダ液圧センサ24からの圧力情報を入力する。そして、所定の制御則にしたがって、VDCブレーキ液圧ユニット2のVDCモータ21とソレノイドバルブ類25,26,27,28に対し駆動指令を出力する。
前記モータコントローラ8は、駆動輪である左右前輪に連結された走行用電動モータ5にインバータ13を介して接続される。そして、ブレーキ制御時、統合コントローラ9から回生分指令を入力すると、走行用電動モータ5により発生する回生制動力を入力された回生分指令に応じて制御する。このモータコントローラ8は、走行時、走行状態や車両状態に応じて走行用電動モータ5により発生するモータトルクやモータ回転数を制御する機能も併せ持つ。
前記統合コントローラ9は、回生協調ブレーキ制御時等において、目標減速度を得るようにブレーキコントローラ7とモータコントローラ8を統合して制御する手段である。この統合コントローラ9には、バッテリコントローラ91からのバッテリ充電容量情報、車速センサ92からの車速情報、ブレーキスイッチ93からのブレーキ踏み上げ操作情報、ストロークセンサ3からのペダルストローク情報、マスターシリンダ液圧センサ24からのマスターシリンダ液圧情報、ホイールシリンダ液圧センサ94からのホイールシリンダ液圧情報、等が入力される。なお、車速センサ92としては、極低車速域までの車速検出が可能な車輪速回転数センサが用いられる。そして、車輪速回転数を時間微分演算処理することで、実減速度を求める。
[VDCブレーキ液圧ユニット構成]
図2は、ポンプアップ液圧発生手段の一例であるVDCブレーキ液圧ユニットを示す。以下、図2に基づいて、VDCブレーキ液圧ユニット2の具体的構成を説明する。
前記VDCブレーキ液圧ユニット2は、ブレーキコントローラ7からの指令に基づいて、ポンプアップ液圧を発生する制御を行う。このVDCブレーキ液圧ユニット2は、図2に示すように、VDCモータ21と、VDCモータ21により駆動する液圧ポンプ22,22と、低圧リザーバ23,23と、マスターシリンダ液圧センサ24と、を有する。ソレノイドバルブ類として、第1M/Cカットソレノイドバルブ25と、第2M/Cカットソレノイドバルブ26と、保持ソレノイドバルブ27,27,27,27と、減圧ソレノイドバルブ28,28,28,28と、を有する。
前記第1M/Cカットソレノイドバルブ25と前記第2M/Cカットソレノイドバルブ26は、差圧弁であり、VDCモータ21によるポンプ駆動時、ホイールシリンダ液圧(下流圧)とマスターシリンダ液圧(上流圧)の差圧(=ポンプアップ液圧)を制御する。
つまり、制動力制御時にブレーキコントローラ7からポンプアップ液圧指令が出力されると、VDCモータ21によるポンプアップ昇圧と、第1M/Cカットソレノイドバルブ25と第2M/Cカットソレノイドバルブ26への作動電流値による差圧コントロールと、によりポンプアップ液圧制御を行う。
前記保持ソレノイドバルブ27,27,27,27(IN弁)と減圧ソレノイドバルブ28,28,28,28(OUT弁)は、各ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRへのホイールシリンダ液圧を各輪独立で制御する。そして、VDCブレーキ液圧ユニット2は、上記ポンプアップ液圧制御以外に、VDC制御、TCS制御、ABS制御、回生協調ブレーキ制御、前後輪制動力配分制御、等を行う。
[ポンプアップ液圧制御構成]
図3は、実施例1のブレーキ制御装置におけるブレーキコントローラ7で実行されるポンプアップ液圧制御処理の流れを示す(ポンプアップ液圧制御手段)。以下、ポンプアップ液圧制御構成をあらわす図3の各ステップについて説明する。この処理は、ブレーキ踏み上げ操作の開始をブレーキスイッチ93から入力すると開始される。
なお、このフローチャートで用いるストローク位置S1〜S4(図4)の定義は、下記の通りである。
「ストローク位置S1(WC圧停滞前点)」は、マスターシリンダ13内のブレーキ液が低圧リザーバ23に流れ込む直前のストローク位置であり、予め実験したデータに基づき決める。
「ストローク位置S2(WC圧停滞開始点)」は、マスターシリンダ13内のブレーキ液が低圧リザーバ23に流れ込むストローク位置であり、マスターシリンダ13のリザーバポートの閉鎖位置に到達するペダルストロークに相当する。
「ストローク位置S3(WC圧停滞終了点)」は、ホイールシリンダ液圧の低下が終わるストローク位置であり、昇圧指令によるポンプアップ液圧が所定値に到達し、ポンプアップ液圧を維持する動作に切り替えるペダルストロークに相当する。
「ストローク位置S4(MC圧昇圧点)」は、ホイールシリンダ液圧の低下が終わり要求どおりの昇圧勾配が得られるストローク位置であり、予め実験したデータに基づき決める。
ステップS1では、ストロークセンサ3からのブレーキペダルストロークSが、マスターシリンダ13内のブレーキ液が低圧リザーバ23に流れ込む直前のストローク位置S1から、ホイールシリンダ液圧の低下が終わり要求どおりの昇圧勾配が得られるストローク位置S4までか否かを判断する。YES(S1<S<S4)の場合はステップS2へ進み、NO(S≦S1又はS≧S4)の場合はステップS3へ進む。
ステップS2では、ステップS1でのS1<S<S4であるとの判断に続き、ホイールシリンダ液圧WCpのストロークSに対する傾きdWCp/dS(=ホイールシリンダ液圧勾配)を演算する。同時に、図4に示すマップに基づき、ペダルストロークSによって決まる目標ホイールシリンダ液圧WCp*の昇圧勾配map(S)を演算する。そして、dWCp/dS>map(S)であるか否かを判断する。YES(dWCp/dS>map(S))の場合は、ステップS4へ進み、NO(dWCp/dS≦map(S))の場合は、ステップS3へ進む。
ステップS3では、ステップS1でのS≦S1又はS≧S4であるとの判断、あるいは、ステップS2でのdWCp/dS≦map(S)であるとの判断に続き、差圧弁開度Qを、係数補正を行わない通常開度Qに設定し、エンドへ進む。
ステップS4では、ステップS2でのdWCp/dS>map(S)であるとの判断に続き、差圧弁開度Qを、Q(通常開度)×係数により設定し、エンドへ進む。
ここで、差圧弁開度を補正する係数は、ストローク位置S1でのホイールシリンダ液圧とストローク位置S4でのホイールシリンダ液圧を、一定の増加勾配(≒目標ホイールシリンダ液圧昇圧勾配map(S))による直線で結ぶようにその値を決定する。
次に、作用を説明する。
まず、「比較例のポンプアップ液圧制御における課題」の説明を行う。続いて、実施例1のブレーキ制御装置における作用を、「ポンプアップ液圧制御作用」、「差圧弁によるホイールシリンダ液圧特性制御作用」に分けて説明する。
[比較例のポンプアップ液圧制御における課題]
既存のコンベンショナルVDCによるブレーキシステムにおいて、ブレーキ踏み上げ操作にもかかわらず、通常の差圧弁開度制御によりポンプアップ液圧制御を行うものを比較例とする。
ここで、「通常の差圧弁開度制御」とは、ポンプアップ液圧によりホイールシリンダ液圧を所定値まで増加させる際、図5に示すように、ペダルストロークがリザーバポートを切る位置に達するまで所定勾配にて差圧弁開度を低下させる。その後、所定値に達する差圧弁開度を一定に維持する制御をいう。なお、ペダルストロークがリザーバポートを切る位置とは、ペダルストロークがリザーバポートを閉鎖する位置、あるいは、リザーバポートを塞ぐ位置と同じ意味である(実施例1のストローク位置S2に相当)。
この比較例のポンプアップ液圧制御は、ブレーキ操作速度がゆっくりと行われ、ポンプアップ液圧によりホイールシリンダ液圧を所定値まで増加させたとき、ペダルストロークがリザーバポートを切る位置に達するタイミングと一致するときに成立する。つまり、ブレーキペダル踏み込み速度が遅く、ポンプアップ液圧指令に対する液圧応答速度が追従するときには成立する。
しかしながら、ブレーキペダル踏み込み速度が速く、ポンプアップ指令値に対し液圧応答速度が追いつかない場合、リザーバポートを塞いだ後のペダルストローク域において、プライマリピストンが押し出したブレーキ液がポンプアップ動作により吸込み消費される。このポンプアップ動作によるマスターシリンダ側からのブレーキ液の吸込み消費により、ペダルストロークに対しマスターシリンダ液圧が上昇しにくくなる。以下、このメカニズムを図6〜図8に基づき説明する。
まず、ブレーキペダル踏み込み速度が速いとき、図6(a)に示すように、リザーバポートまでのペダルストローク域において、応答遅れによりポンプアップ指令値とポンプアップ液圧実値が乖離する。そして、ペダルストロークがリザーバポートに到達し、プライマリピストンによりリザーバポートを閉鎖すると、図6(b)に示すように、マスターシリンダのリザーバからブレーキ液を吸えなくなる。そして、ペダルストロークがリザーバポートの閉鎖位置を通過した後は、図6(c)に示すように、リザーバポートまでのペダルストローク域に引き続き、ポンプアップ指令値に対し応答遅れを持ちながらポンプアップ液圧実値が上昇する。このように、ペダルストロークがリザーバポートの閉鎖位置を通過して所定値まで達する間においては、図6(d)に示すように、プライマリピストンで押し出したブレーキ液がポンプアップ動作により吸込み消費され、ペダルストロークに対しマスターシリンダ液圧が上昇しにくくなる。
ここで、プライマリピストンで押し出したブレーキ液がポンプアップ動作により吸込み消費される理由を、低圧リザーバの動作により説明する。
VDCブレーキ液圧ユニットの低圧リザーバは、図7に示すように、ピストンと、ピストンに一体のピストンロッドと、ピストンロッドの端部に接し、バネにより付勢されたチェックボール(チェック弁構造)と、を有する構成となっている。したがって、ポンプアップ動作を行うと、低圧リザーバの液室が狭くなる方向(図8の上方向)にピストンが移動し、ピストンロッドがチェックボールを押し上げる。このため、チェックボールにより塞がれていた液路が少し開き、図8の矢印に示すように、マスターシリンダ側から低圧リザーバへブレーキ液が流れ込む。したがって、液圧ポンプのポンプアップ動作により、プライマリピストンで押し出したブレーキ液が吸込み消費されることになる。
このため、ペダルストロークに対するポンプアップによる液圧特性は、図9(a)の特性を示し、この結果として、下記の課題が生じる。
(1) マスターシリンダ液圧特性をみると、図9(b)に示すように、ペダルストロークに対しマスターシリンダ液圧が小さくなるため、マスターシリンダ液圧によるペダル反力が低下し、ペダルフィールに違和感が発生する。
すなわち、マスターシリンダ液圧特性としては、速踏み時の特性においても、ゆっくり踏み時の特性に沿うような滑らかに上昇する特性を狙っている。しかし、リザーバポート位置からは狙いよりマスターシリンダ液圧が低くなり、ペダル反力が弱くなる。
(2) ホイールシリンダ液圧特性をみると、図9(c)に示すように、ペダルストロークに対しホイールシリンダ液圧が上昇しにくくなり、ホイールシリンダ液圧特性に段付きが発生する。
すなわち、ホイールシリンダ液圧特性としては、速踏み時の特性においても、ゆっくり踏み時の特性に沿うような滑らかに上昇する特性を狙っている。しかし、リザーバポート位置から折れて低下する段付きが発生すると共に、狙いよりもホイールシリンダ液圧が低くなり、制動G(=制動減速度)が減少する。
[ポンプアップ液圧制御作用]
上記比較例の課題に対し、ペダルストロークがリザーバポートの閉鎖位置(ストローク位置S2)を通過した後にマスターシリンダからブレーキ液を吸込むことによるホイールシリンダ液圧特性への影響を抑えることが必要である。以下、これを反映するポンプアップ液圧制御作用を説明する。
ブレーキペダルストロークSがS≦S1又はS≧S4のときは、図3のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS3→エンドへと進む流れが繰り返される。さらに、ブレーキペダルストロークSがS1<S<S4であるが、dWCp/dS≦map(S)であるときには、図3のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→エンドへと進む流れが繰り返される。
したがって、これらの場合、ステップS3において、差圧弁開度Qが、通常開度Qに設定される。
一方、ブレーキペダルストロークSがS1<S<S4であり、かつ、dWCp/dS>map(S)であるときには、図3のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS4→エンドへと進む流れが繰り返される。
したがって、ステップS4では、差圧弁開度Qが、Q(通常開度)×係数により設定される。
このように、マスターシリンダ13内のブレーキ液が低圧リザーバ23に流れ込むことによりホイールシリンダ液圧が低下するストローク領域(S2〜S3)を含むストローク位置S1〜ストローク位置S4の領域で差圧コントロールされる。これにより、ペダルストロークSに対する実ホイールシリンダ液圧特性の段付きが小さく抑えられることになり、特に速踏みによるブレーキ踏み上げ操作の際、ホイールシリンダ液圧に相当する制動Gのフィーリングが向上する。
[差圧弁によるホイールシリンダ液圧特性制御作用]
以下、図10に基づき、実施例1の差圧弁によるホイールシリンダ液圧特性制御作用を説明する。
まず、ペダルストロークに対する差圧特性は、図10(b)に示す実線特性を描くようになる。
すなわち、通常の差圧弁開度制御を行うと、ホイールシリンダ液圧の増加勾配が低下することで段付き特性となるストローク位置S2の前後領域においては、ホイールシリンダ液圧の発生を抑える必要があることから比較例に対しマスターシリンダ液圧との差圧を低くされる。一方、ホイールシリンダ液圧の増加勾配が上昇することで段付き特性となるストローク位置S3の前後領域においては、ホイールシリンダ液圧の低下を抑えてホイールシリンダ液圧の増圧を促す必要があることから比較例に対しマスターシリンダ液圧との差圧を高くする。
この差圧に応じペダルストロークに対する差圧弁開度特性は、図10(c)に示す実線特性を描くようになる。
すなわち、ストローク位置S2の前後領域においては、ホイールシリンダ液圧の増加を抑えるために差圧弁開度を比較例より開き側にする。一方、ストローク位置S3の前後領域においては、ホイールシリンダ液圧の増加を促すために差圧弁開度を比較例より閉じ側にする。この差圧弁開度の制御は、両M/Cカットソレノイドバルブ25,26の差圧弁開度Qを、ストローク位置S1でのホイールシリンダ液圧とストローク位置S4でのホイールシリンダ液圧を、一定の増加勾配による直線で結ぶように決定された係数により補正することで行われる。
したがって、ペダルストロークに対するホイールシリンダ液圧特性は、図10(a)に示す実線特性を描くようになる。
すなわち、マスターシリンダ13内のブレーキ液が低圧リザーバ23に流れ込む直前のストローク位置S1から、ホイールシリンダ液圧の低下が終わり要求どおりの昇圧勾配が得られるストローク位置S4までのストローク領域で、差圧弁開度Qの制御が行われる。この差圧弁開度制御により、ペダルストロークSによって決まる目標ホイールシリンダ液圧WCp*の昇圧勾配map(S)に沿うように、ペダルストロークの上昇に対して滑らかな勾配特性を描いてホイールシリンダ液圧が増加する特性が得られる。
次に、効果を説明する。
実施例1のブレーキ制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) ペダルストローク操作に応じてマスターシリンダ液圧を発生するマスターシリンダ13と、
前記マスターシリンダ4とホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRを連結する液圧系に配置され、ホイールシリンダ液圧を調整する差圧弁(第1M/Cカットソレノイドバルブ25、第2M/Cカットソレノイドバルブ26)の制御と、低圧リザーバ23のブレーキ液を吸い込む液圧ポンプ22の駆動と、によりポンプアップ液圧を発生するポンプアップ液圧発生手段(VDCブレーキ液圧ユニット2)と、
ドライバーによるブレーキ踏み上げ操作を検知するブレーキ踏み上げ操作検知手段(ブレーキスイッチ93)と、
前記ブレーキ踏み上げ操作の際、少なくともマスターシリンダ13内のブレーキ液が前記低圧リザーバ23に流れ込むストローク位置S2から、ホイールシリンダ液圧の低下が終わるストローク位置S3までを含むストローク領域において、ペダルストロークの上昇に対して滑らかな勾配にて前記ホイールシリンダ液圧が増加するように前記差圧弁(第1M/Cカットソレノイドバルブ25、第2M/Cカットソレノイドバルブ26)を制御するポンプアップ液圧制御手段(図3)と、
を備える。
このため、ブレーキ踏み上げ操作の際、ペダルストロークSに対するホイールシリンダ液圧特性が段付き特性になるのを抑えることで、制動減速度のフィーリングを向上することができる。
(2) 前記ポンプアップ液圧制御手段(図3)は、前記ブレーキ踏み上げ操作の際、マスターシリンダ13内のブレーキ液が前記低圧リザーバ23に流れ込む直前のストローク位置S1から、ホイールシリンダ液圧の低下が終わり要求どおりの昇圧勾配が得られるストローク位置S4までの間において、ペダルストロークに対するホイールシリンダ液圧の増加勾配を滑らかな勾配にするように前記差圧弁(第1M/Cカットソレノイドバルブ25、第2M/Cカットソレノイドバルブ26)の開度を制御する。
このため、(1)の効果に加え、ブレーキ踏み上げ操作の際、ストローク位置S1からストローク位置S4までの広いストローク領域において、ホイールシリンダ液圧が増加しないということが防止され、ペダルストロークに対するホイールシリンダ液圧特性として滑らか増加する特性を得ることができる。
実施例2は、ストローク位置S2からストローク位置S4までのストローク領域において差圧弁開度の閉じ制御を行う例である。
まず、構成を説明する。
[VDCブレーキ液圧ユニット構成]
図11は、実施例2のブレーキ制御装置におけるブレーキコントローラ7で実行されるポンプアップ液圧制御処理の流れを示す(ポンプアップ液圧制御手段)。以下、ポンプアップ液圧制御構成をあらわす図11の各ステップについて説明する。この処理は、ブレーキ踏み上げ操作の開始をブレーキスイッチ93から入力すると開始される。
ステップS21では、ストロークセンサ3からのブレーキペダルストロークSが、マスターシリンダ13内のブレーキ液が低圧リザーバ23に流れ込むストローク位置S2から、ホイールシリンダ液圧の低下が終わり要求どおりの昇圧勾配が得られるストローク位置S4までか否かを判断する。YES(S2<S<S4)の場合はステップS22へ進み、NO(S≦S2又はS≧S4)の場合はステップS24へ進む。
ステップS22では、ステップS21でのS2<S<S4であるとの判断に続き、ホイールシリンダ液圧勾配dWCp/dSと、目標ホイールシリンダ液圧昇圧勾配map(S)を演算する。そして、dWCp/dS<map(S)であるか否かを判断する。YES(dWCp/dS<map(S))の場合は、ステップS23へ進み、NO(dWCp/dS≧map(S))の場合は、ステップS24へ進む。
ステップS23では、ステップS22でのdWCp/dS<map(S)であるとの判断に続き、ストロークセンサ3からのブレーキペダルストロークSの時間微分演算処理によりストローク速度dS/dtを求める。そして、ストローク速度dS/dtが規定値Sを超えているか否かを判断する。YES(dS/dt>S)の場合はステップS25へ進み、NO(dS/dt≦S)の場合はステップS24へ進む。
ここで、ストローク速度dS/dtの規定値Sは、リザーバポートを塞いだ後のペダルストローク域において、ブレーキ液の吸込みによりホイールシリンダ液圧が低下するストローク速度を実験により求めて設定する。
ステップS24では、ステップS21でのS≦S2又はS≧S4であるとの判断、あるいは、ステップS22でのdWCp/dS≧map(S)であるとの判断、あるいは、ステップS23でのdS/dt≦Sであるとの判断に続き、差圧弁開度Qを、係数補正を行わない通常開度Qに設定し、エンドへ進む。
ステップS25では、ステップS23でのdS/dt>Sであるとの判断に続き、差圧弁開度Qを、Q(通常開度)×係数により設定し、エンドへ進む。
ここで、差圧弁開度を補正する係数は、ストローク位置S2でのホイールシリンダ液圧と、ストローク位置S4でのホイールシリンダ液圧と、を一定の増加勾配による直線で結ぶようにその値を決定する。
なお、[全体システム構成]、[VDCブレーキ液圧ユニット構成]の構成は、実施例1の図1及び図2と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
次に、作用を説明する。
[ポンプアップ液圧制御作用]
実施例2のポンプアップ液圧制御作用を説明する。
ブレーキペダルストロークSがS≦S2またはS≧S4のときは、図11のフローチャートにおいて、ステップS21→ステップS24→エンドへと進む流れが繰り返される。また、ブレーキペダルストロークSがS2<S<S4であり、dWCp/dS≧map(S)であるときには、図11のフローチャートにおいて、ステップS21→ステップS22→ステップS24→エンドへと進む流れが繰り返される。さらに、ブレーキペダルストロークSがS2<S<S4であり、dWCp/dS<map(S)であるが、dS/dt≦Sのときには、図11のフローチャートにおいて、ステップS21→ステップS22→ステップS23→ステップS24→エンドへと進む流れが繰り返される。
したがって、これらの場合、ステップS24において、差圧弁開度Qが、通常開度Qに設定される。
一方、ブレーキペダルストロークSがS2<S<S4であり、かつ、dWCp/dS<map(S)であり、かつ、dS/dt>Sのときには、図11のフローチャートにおいて、ステップS21→ステップS22→ステップS23→ステップS25→エンドへと進む流れが繰り返される。
したがって、ステップS25では、差圧弁開度Qが、Q(通常開度)×係数により弁開度を閉じ側に設定され、低下しているホイールシリンダ液圧が増圧される。
このように、マスターシリンダ13内のブレーキ液が低圧リザーバ23に流れ込むことによりホイールシリンダ液圧が低下するストローク領域(S2〜S3)を含むストローク位置S2〜ストローク位置S4の領域で増圧する差圧コントロールが行われる。これにより、速踏みによるブレーキ踏み上げ操作の際、ペダルストロークSに対する実ホイールシリンダ液圧特性の段付きが小さく抑えられることになり、ホイールシリンダ液圧に相当する制動Gのフィーリングが向上する。
[差圧弁によるホイールシリンダ液圧特性制御作用]
以下、図12に基づき、実施例2の差圧弁によるホイールシリンダ液圧特性制御作用を説明する。
まず、ペダルストロークに対する差圧特性は、図12(b)に示す実線特性を描くようになる。
すなわち、通常の差圧弁開度制御を行うと、ホイールシリンダ液圧の増加勾配が低下することで段付き特性となるストローク位置S2からストローク位置S4のストローク領域において、ホイールシリンダ液圧の低下を抑えてホイールシリンダ液圧の増圧を促す必要があることから比較例に対しマスターシリンダ液圧との差圧を高くする。
この差圧に応じペダルストロークに対する差圧弁開度特性は、図12(c)に示す実線特性を描くようになる。
すなわち、ストローク位置S2からストローク位置S4のストローク領域において、ホイールシリンダ液圧の増加を促すために差圧弁開度を比較例より閉じ側にする。この差圧弁開度の制御は、両M/Cカットソレノイドバルブ25,26の差圧弁開度Qを、ストローク位置S2でのホイールシリンダ液圧とストローク位置S4でのホイールシリンダ液圧を、一定の増加勾配による直線で結ぶように決定された係数により補正することで行われる。
したがって、ペダルストロークに対するホイールシリンダ液圧特性は、図12(a)に示す実線特性を描くようになる。
すなわち、マスターシリンダ13内のブレーキ液が低圧リザーバ23に流れ込むストローク位置S2から、ホイールシリンダ液圧の低下が終わり要求どおりの昇圧勾配が得られるストローク位置S4までのストローク領域で、差圧弁開度Qの制御が行われる。この差圧弁開度制御により、ペダルストロークSによって決まる目標ホイールシリンダ液圧WCp*の昇圧勾配map(S)に沿うように、ペダルストロークの上昇に対して滑らかな勾配特性を描いてホイールシリンダ液圧が増加する特性が得られる。
なお、他の作用は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
次に、効果を説明する。
実施例2のブレーキ制御装置にあっては、下記の効果を得ることができる。
(3) 前記ポンプアップ液圧制御手段(図11)は、前記ブレーキ踏み上げ操作の際、マスターシリンダ13内のブレーキ液が前記低圧リザーバ23に流れ込むストローク位置S2から、ホイールシリンダ液圧の低下が終わり要求どおりの昇圧勾配が得られるストローク位置S4までの間において、ペダルストロークに対するホイールシリンダ液圧の増加勾配を滑らかな勾配にするように前記差圧弁(第1M/Cカットソレノイドバルブ25、第2M/Cカットソレノイドバルブ26)の開度を閉じ制御する。
このため、実施例1の(1)の効果に加え、ブレーキ踏み上げ操作の際、ストローク位置S2からストローク位置S4までのストローク領域において、ホイールシリンダ液圧を増圧することで、ペダルストロークに対するホイールシリンダ液圧特性として上昇勾配を保ちながら滑らかに増加する特性を得ることができる。
なお、差圧弁開度の閉じ制御を、ストローク速度dS/dtがdS/dt>Sのとき行うことで、速踏み時、ストローク位置S2からストローク位置S4までのストローク領域におけるホイールシリンダ液圧の過度な減圧を抑えることができる。
実施例3は、ストローク位置S1からストローク位置S3までのストローク領域において差圧弁開度の開き制御を行う例である。
まず、構成を説明する。
[VDCブレーキ液圧ユニット構成]
図13は、実施例3のブレーキ制御装置におけるブレーキコントローラ7で実行されるポンプアップ液圧制御処理の流れを示す(ポンプアップ液圧制御手段)。以下、ポンプアップ液圧制御構成をあらわす図13の各ステップについて説明する。この処理は、ブレーキ踏み上げ操作の開始をブレーキスイッチ93から入力すると開始される。
ステップS31では、ストロークセンサ3からのブレーキペダルストロークSが、マスターシリンダ13内のブレーキ液が低圧リザーバ23に流れ込む直前のストローク位置S1から、ホイールシリンダ液圧の低下が終わるストローク位置S3までか否かを判断する。YES(S1<S<S3)の場合はステップS32へ進み、NO(S≦S1又はS≧S3)の場合はステップS34へ進む。
ステップS32では、ステップS21でのS1<S<S3であるとの判断に続き、ホイールシリンダ液圧勾配dWCp/dSと、目標ホイールシリンダ液圧昇圧勾配map(S)を演算する。そして、dWCp/dS<map(S)であるか否かを判断する。YES(dWCp/dS<map(S))の場合は、ステップS33へ進み、NO(dWCp/dS≧map(S))の場合は、ステップS34へ進む。
ステップS33では、ステップS32でのdWCp/dS<map(S)であるとの判断に続き、ストロークセンサ3からのブレーキペダルストロークSの時間微分演算処理によりストローク速度dS/dtを求める。そして、ストローク速度dS/dtが規定値S未満であるか否かを判断する。YES(dS/dt<S)の場合はステップS35へ進み、NO(dS/dt≧S)の場合はステップS34へ進む。
ここで、ストローク速度dS/dtの規定値Sは、リザーバポートを塞いだ後のペダルストローク域において、ブレーキ液の吸込みによりホイールシリンダ液圧が低下するストローク速度を実験により求めて設定する。
ステップS34では、ステップS31でのS≦S1又はS≧S3であるとの判断、あるいは、ステップS32でのdWCp/dS≧map(S)であるとの判断、あるいは、ステップS33でのdS/dt≧Sであるとの判断に続き、差圧弁開度Qを、係数補正を行わない通常開度Qに設定し、エンドへ進む。
ステップS35では、ステップS33でのdS/dt<Sであるとの判断に続き、差圧弁開度Qを、Q(通常開度)×係数により設定し、エンドへ進む。
ここで、差圧弁開度を補正する係数は、ストローク位置S1でのホイールシリンダ液圧と、ストローク位置S3でのホイールシリンダ液圧と、を一定の増加勾配による直線で結ぶようにその値を決定する。
なお、[全体システム構成]、[VDCブレーキ液圧ユニット構成]の構成は、実施例1の図1及び図2と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
次に、作用を説明する。
[ポンプアップ液圧制御作用]
実施例3のポンプアップ液圧制御作用を説明する。
ブレーキペダルストロークSがS≦S1またはS≧S3のときは、図13のフローチャートにおいて、ステップS31→ステップS34→エンドへと進む流れが繰り返される。また、ブレーキペダルストロークSがS1<S<S3であり、dWCp/dS≧map(S)であるときには、図13のフローチャートにおいて、ステップS31→ステップS32→ステップS34→エンドへと進む流れが繰り返される。さらに、ブレーキペダルストロークSがS1<S<S3であり、dWCp/dS<map(S)であるが、dS/dt≧Sのときには、図13のフローチャートにおいて、ステップS31→ステップS32→ステップS33→ステップS34→エンドへと進む流れが繰り返される。
したがって、これらの場合、ステップS34において、差圧弁開度Qが、通常開度Qに設定される。
一方、ブレーキペダルストロークSがS1<S<S3であり、かつ、dWCp/dS<map(S)であり、かつ、dS/dt<Sのときには、図13のフローチャートにおいて、ステップS31→ステップS32→ステップS33→ステップS35→エンドへと進む流れが繰り返される。
したがって、ステップS35では、差圧弁開度Qが、Q(通常開度)×係数により弁開度を開き側に設定され、増加しているホイールシリンダ液圧が低減される。
このように、マスターシリンダ13内のブレーキ液が低圧リザーバ23に流れ込むことによりホイールシリンダ液圧が低下するストローク領域(S2〜S3)を含むストローク位置S1〜ストローク位置S3の領域で減圧する差圧コントロールが行われる。これにより、速くない踏み込みによるブレーキ踏み上げ操作の際、ペダルストロークSに対する実ホイールシリンダ液圧特性の段付きが小さく抑えられることになり、ホイールシリンダ液圧に相当する制動Gのフィーリングが向上する。
[差圧弁によるホイールシリンダ液圧特性制御作用]
以下、図14に基づき、実施例3の差圧弁によるホイールシリンダ液圧特性制御作用を説明する。
まず、ペダルストロークに対する差圧特性は、図14(b)に示す実線特性を描くようになる。
すなわち、通常の差圧弁開度制御を行うと、ホイールシリンダ液圧の増加勾配が突出することで段付き特性となるストローク位置S1からストローク位置S3のストローク領域において、ホイールシリンダ液圧の増加を抑える必要があることから比較例に対しマスターシリンダ液圧との差圧を低くする。
この差圧に応じペダルストロークに対する差圧弁開度特性は、図14(c)に示す実線特性を描くようになる。
すなわち、ストローク位置S1からストローク位置S3のストローク領域において、ホイールシリンダ液圧の抑制を促すために差圧弁開度を比較例より開き側にする。この差圧弁開度の制御は、両M/Cカットソレノイドバルブ25,26の差圧弁開度Qを、ストローク位置S1でのホイールシリンダ液圧とストローク位置S3でのホイールシリンダ液圧を、一定の増加勾配による直線で結ぶように決定された係数により補正することで行われる。
したがって、ペダルストロークに対するホイールシリンダ液圧特性は、図14(a)に示す実線特性を描くようになる。
すなわち、マスターシリンダ13内のブレーキ液が低圧リザーバ23に流れ込む直前のストローク位置S1から、ホイールシリンダ液圧の低下が終わるストローク位置S3までのストローク領域で、差圧弁開度Qの制御が行われる。この差圧弁開度制御により、ペダルストロークの上昇に対して緩やかで滑らかな勾配特性を描いてホイールシリンダ液圧が増加する特性が得られる。
なお、他の作用は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
次に、効果を説明する。
実施例3のブレーキ制御装置にあっては、下記の効果を得ることができる。
(4) 前記ポンプアップ液圧制御手段(図13)は、前記ブレーキ踏み上げ操作の際、マスターシリンダ13内のブレーキ液が前記低圧リザーバ23に流れ込む直前のストローク位置S1から、ホイールシリンダ液圧の低下が終わるストローク位置S3までの間において、ペダルストロークに対するホイールシリンダ液圧の増加勾配を滑らかな勾配にするように前記差圧弁(第1M/Cカットソレノイドバルブ25、第2M/Cカットソレノイドバルブ26)の開度を開き制御する。
このため、実施例1の(1)の効果に加え、ブレーキ踏み上げ操作の際、ストローク位置S1からストローク位置S3までのストローク領域において、ホイールシリンダ液圧を減圧することで、ペダルストロークに対するホイールシリンダ液圧特性として上昇勾配を緩やかにしながら滑らかに増加する特性を得ることができる。
なお、差圧弁開度の開き制御を、ストローク速度dS/dtがdS/dt<Sのとき行うことで、速くない踏み込み操作時、ストローク位置S1からストローク位置S3までのストローク領域におけるホイールシリンダ液圧の過度な増圧を抑えることができる。
以上、本発明のブレーキ制御装置を実施例1〜実施例3に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、ポンプアップ液圧制御手段として、ストローク位置S1〜S4にて差圧弁の開度制御を行う例を示した。実施例2では、ポンプアップ液圧制御手段として、ストローク位置S2〜S4にて差圧弁の開度制御を行う例を示した。実施例3では、ポンプアップ液圧制御手段として、ストローク位置S1〜S3にて差圧弁の開度制御を行う例を示した。しかし、ポンプアップ液圧制御手段としては、少なくともマスターシリンダ内のブレーキ液が低圧リザーバに流れ込むストローク位置S2から、ホイールシリンダ液圧の低下が終わるストローク位置S3までのストローク領域において、差圧弁の開度制御を行うものであれば良い。
実施例1では、ポンプアップ液圧制御手段として、ストローク速度dS/dtに関係なく、差圧弁開度の開き/閉じ組み合わせ制御を行う例を示した。実施例2では、ポンプアップ液圧制御手段として、ストローク速度dS/dtが規定値Sを超えるとき、差圧弁開度の閉じ制御を行う例を示した。実施例3では、ポンプアップ液圧制御手段として、ストローク速度dS/dtが規定値S未満のとき、差圧弁開度の開き制御を行う例を示した。しかし、ポンプアップ液圧制御手段としては、ブレーキストローク量、ストローク速度、車速のいずれか1つ、若しくは、何れか2つ以上の条件によって差圧弁の開度制御を行うようにしても良い。
実施例1〜3では、ポンプアップ液圧発生手段として、VDCブレーキ液圧ユニット2を用いる例を示した。しかしながら、ポンプアップ液圧発生手段としては、マスターシリンダとホイールシリンダを連結する液圧系に配置され、差圧弁と液圧ポンプによりポンプアップ液圧を発生する手段であれば、実施例1に示したVDCブレーキ液圧ユニット2に限られない。
実施例1〜3では、ブレーキ踏み上げ操作検知手段として、ブレーキスイッチ93を用いる例を示した。しかし、ブレーキ踏み上げ操作検知手段としては、マスターシリンダ液圧センサ24やストロークセンサ3の微分値を使用する例であっても良いし、他にブレーキ踏み上げ操作を直接的或いは間接的に検知するものであっても良い。
実施例1〜3では、本発明のブレーキ制御装置を、前輪駆動のハイブリッド車へ適用した例を示した。しかし、ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車、等の電動車両に限らず、エンジン車へ本発明のブレーキ制御装置を適用することもできる。
1 ブレーキ液圧発生装置
13 マスターシリンダ
2 VDCブレーキ液圧ユニット(ポンプアップ液圧発生手段)
21 VDCモータ
22 液圧ポンプ
23 低圧リザーバ
24 マスターシリンダ液圧センサ
25 第1M/Cカットソレノイドバルブ(差圧弁)
26 第2M/Cカットソレノイドバルブ(差圧弁)
3 ストロークセンサ
4FL 左前輪ホイールシリンダ
4FR 右前輪ホイールシリンダ
4RL 左後輪ホイールシリンダ
4RR 右後輪ホイールシリンダ
5 走行用電動モータ
61 プライマリ液圧管
62 セカンダリ液圧管
63 左前輪液圧管
64 右前輪液圧管
65 左後輪液圧管
66 右後輪液圧管
7 ブレーキコントローラ
8 モータコントローラ
9 統合コントローラ
91 バッテリコントローラ
92 車速センサ
93 ブレーキスイッチ(ブレーキ踏み上げ操作検知手段)
94 ホイールシリンダ液圧センサ

Claims (4)

  1. ペダルストローク操作に応じてマスターシリンダ液圧を発生するマスターシリンダと、
    前記マスターシリンダとホイールシリンダを連結する液圧系に配置され、ホイールシリンダ液圧を調整する差圧弁の制御と、低圧リザーバのブレーキ液を吸い込む液圧ポンプの駆動と、によりポンプアップ液圧を発生するポンプアップ液圧発生手段と、
    ドライバーによるブレーキ踏み上げ操作を検知するブレーキ踏み上げ操作検知手段と、
    前記ブレーキ踏み上げ操作の際、少なくともマスターシリンダ内のブレーキ液が前記低圧リザーバに流れ込むストローク位置から、ホイールシリンダ液圧の停滞が終わるストローク位置までを含むストローク領域において、ペダルストロークの上昇に対して滑らかな勾配にて前記ホイールシリンダ液圧が増加するように前記差圧弁を制御するポンプアップ液圧制御手段と、
    を備えることを特徴とするブレーキ制御装置。
  2. 請求項1に記載されたブレーキ制御装置において、
    前記ポンプアップ液圧制御手段は、前記ブレーキ踏み上げ操作の際、マスターシリンダ内のブレーキ液が前記低圧リザーバに流れ込む直前のストローク位置から、ホイールシリンダ液圧の停滞が終わり要求どおりの昇圧勾配が得られるストローク位置までの間において、ペダルストロークに対するホイールシリンダ液圧の増加勾配を滑らかな勾配にするように前記差圧弁の開度を制御する
    ことを特徴とするブレーキ制御装置。
  3. 請求項1に記載されたブレーキ制御装置において、
    前記ポンプアップ液圧制御手段は、前記ブレーキ踏み上げ操作の際、マスターシリンダ内のブレーキ液が前記低圧リザーバに流れ込むストローク位置から、ホイールシリンダ液圧の停滞が終わり要求どおりの昇圧勾配が得られるストローク位置までの間において、ペダルストロークに対するホイールシリンダ液圧の増加勾配を滑らかな勾配にするように前記差圧弁の開度を閉じ制御する
    ことを特徴とするブレーキ制御装置。
  4. 請求項1に記載されたブレーキ制御装置において、
    前記ポンプアップ液圧制御手段は、前記ブレーキ踏み上げ操作の際、マスターシリンダ内のブレーキ液が前記低圧リザーバに流れ込む直前のストローク位置から、ホイールシリンダ液圧の停滞が終わるストローク位置までの間において、ペダルストロークに対するホイールシリンダ液圧の増加勾配を滑らかな勾配にするように前記差圧弁の開度を開き制御する
    ことを特徴とするブレーキ制御装置。
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