JP5799373B2 - 無土壌法面の緑化方法 - Google Patents

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Description

本発明は無土壌法面の緑化方法に係り、詳しくは、岩盤面などの法面に植物を育成させる緑化方法に関するものである。
従来の岩盤面などの無土壌法面を緑化する方法として、客土吹付工法(特許文献1)やネット工法(特許文献2)が知られている。前者は、たとえば金網を法面に張りつけて固定し、その上に有機系植生基盤材を3〜10cmの厚みとなるように吹き付けるものである。金網が傾斜地の転石を固定して表面浸食を抑え、植生基盤を安定化することができる。
後者は、袋体内部に植物生育基盤材と植物とを入れて植栽袋を形成し、植栽袋を斜面に配列し、植栽袋をネット材で覆うことで斜面の緑化構造を形成するものである。
特開2005−273209号公報 特開2008−075443号公報
しかしながら、いずれの工法も、原則的にはある程度の土壌が存在する地山の緑化を目的としている。岩盤が露出している傾斜面は無土壌であり、上記の工法では長期間緑化することができない。いずれの工法においても、無土壌法面において最も問題となる保水性の大幅な改善は期待しがたく、依然として厚層基材の流失や植栽袋の部分的な滑落といったことは避けられない。そこで、切取斜面、緑化の不可能な自然環境の厳しい法面、風化が激しく土壌層の薄い軟岩法面、寒冷地山岳地帯等での凍結の激しい法面、硬質土砂質土から硬岩法面などの無土壌法面においても適用可能で長期間緑化できる方法が強く望まれている。また、これらの工法はいずれも煩雑であり、より簡単な工法が望まれている。
本発明の目的は、無土壌法面の急勾配地における保水性を改善し、比較的簡単な方法により無土壌法面を長期間緑化する方法を提供することである。
本発明者は、上記の課題に鑑み、鋭意研究の結果、植物の育成を阻害せず保水性の大きい特定の吸水性樹脂を含む土壌を岩盤に挿入すれば、長期間散水をしなくても植物を枯らさずに育成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、(1)下記吸水性樹脂、植物育成用担体および水の混合物を入れた筒状容器に植物を植えて養生する工程、
(2)無土壌法面に少なくとも前記筒状容器が入る大きさと深さの単一の円筒状の穴を形成する工程、および
(3)前記穴に前記植物が植えられた筒状容器をそのまま挿入、または植物が植えられた前記混合物を筒状容器から取り出して挿入する工程
からなり、該吸水性樹脂と水の割合が重量比で1:10〜1:1000であることを特徴とする無土壌法面の緑化方法である。
吸水性樹脂:吸水性樹脂1重量部を25℃のイオン交換水100重量部に吸水させた時の含水ゲルの電気伝導率が0〜2.0mS/cmであり、且つ25℃のイオン交換水の吸水倍率が80〜1000倍。
さらに本発明は、無土壌法面の穴の入口に水留部が設けられていることを特徴とする。
さらに本発明は、前記植物育成用担体が、土壌と土壌以外の吸水性のある植物育成用担体の混合物であることを特徴とする
さらに本発明は、前記筒状容器の深さ方向の長さが幅よりも長く、且つ前記穴の内部において穴の入口の面と平行な面における面積が穴の入り口の面の面積よりも大きい箇所があることを特徴とする。
さらに本発明は、上記穴に前記植物が植えられた筒状容器を挿入するにおいて、最初に半分程度上記混合物または植物育成用担体と吸水性樹脂の混合物を入れておいて筒状容器を挿入することを特徴とする。
さらに本発明は、上記無土壌法面が、切取斜面、緑化の不可能な自然環境の厳しい法面、風化が激しく土壌層の薄い軟岩法面、寒冷地山岳地帯等での凍結の激しい法面、硬質土砂質土から硬岩法面のいずれかであることを特徴とする。

本発明によれば、筒状容器に植物を養生する工程、および無土壌法面に穴を穿ける工程、その穴に植物が植えられた筒状容器などを挿入する工程という簡単な方法で無土壌法面を長期間緑化できる。
また、植物の生長を阻害しない保水性の大きい特定の吸水性樹脂を用いるので、無土壌法面に植物の入った筒状容器などを挿入して長期間雨が降らなくても植物の成育が良好である。
また、穴の入口に水留部を設けるので降雨や散水時に、水が穴の中の吸水性樹脂に吸水されるように穴の表面に水を一時留めておくことができ吸水性樹脂を含む混合物に十分保水させることができる。
また、筒状容器に袋を入れ、その中で植物を入れて養生した後、袋ごと取り出して無土壌法面の穴に挿入するので、穴に入れる作業が効率的である。
また、穴の内部における穴の入口の面と平行な面の面積が、穴の入口の面積よりも大きい箇所があるので、穴の内部の水が筒の入口から蒸散しにくくさらに長期間植物を育成できる。
本発明の実施の一形態に係る筒状容器に苗木を植え養生している状態の概念的断面図である。 本発明の実施の一形態に係る無土壌法面に穴をあけた状態を示す概念的断面図である。 本発明の実施の一形態に係る無土壌法面に穴をあけた状態を示す概念的正面図である。 本発明の実施の一形態に係る取り付ける前の水留部の斜視図である。 本発明の実施の一形態に係る水留部を無土壌法面に取り付けた状態を示す概念的断面図である。 本発明の実施の一形態に係る苗木の成長の様子を示す概念的断面図である。
以下、本発明の実施の形態につき、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
本発明において、筒状容器には上記吸水性樹脂、植物育成用担体および水の混合物が入れられる。
本発明に用いられる吸水性樹脂は、吸水性樹脂1重量部を25℃のイオン交換水100重量部に吸水させた時の含水ゲルの電気伝導率が0〜2.0mS/cmであり、且つ25℃のイオン交換水の吸水倍率が80〜1000倍であれば特に限定はない。この吸水性樹脂は、植物の根の生長を阻害しないので、筒状容器で植物を養生してもうまく根付くことができ、さらに法面に移行後長期間雨が降らなくても枯らすことなく植物を成育させる。吸水性樹脂の上記数値範囲は、特開2007−319029号公報の記載に準じている。
吸水性樹脂の電気伝導率としては、通常0〜2.0mS/cm、好ましくは、0〜1.8mS/cmであり、より好ましくは0〜1.6mS/cmである。電気伝導率が2.0mS/cmを超えると植物の根の生長が不良となり、筒状容器で植物を養生してもうまく根付くことができない。
電気伝導率は下記の方法で測定した。
〔電気伝導率の測定法〕
25℃のイオン交換水100重量部に吸水性樹脂1重量部を入れ、25℃で8時間、恒温槽中で放置して、前記吸水性樹脂を膨潤させ含水ゲルを作成する。含水ゲルの温度が25℃であることを温度計で確認し、比伝導度測定装置の電極を含水ゲルに差し込み値を読み取る。なお、吸水性樹脂の吸水倍率が小さい場合には、高吸水性樹脂の含水ゲルとイオン交換水が分離して二相になるので、撹拌して均一にした後、比伝導度測定装置の電極を差し込み値を測定する。撹拌・均一化してもすぐに二相に再び分離する場合は、撹拌下に比伝導度測定装置の電極を差し込み値を測定する。
吸水性樹脂の25℃イオン交換水に対する吸水倍率は、通常80〜1000倍、好ましくは100〜1000倍であり、より好ましくは120〜1000倍である。吸水倍率が80倍未満であると、水の補給が頻繁に必要になり、水の補給が困難な法面の緑化システムには適しない。吸水倍率は大きい方が少量の使用で済むので好ましいが、吸水倍率が1000倍を超える吸水性樹脂は、その製造工程において重合後の含水ゲルの密着性が高くなりすぎ、製造装置内の取り扱いやその後の乾燥が非常に困難であり、製造上の問題点があり現実的でない。
吸水倍率は下記の方法で測定した。
[イオン交換水中の吸水倍率の測定法]
ナイロン製の網袋(250メッシュ)に吸水性樹脂の試料L(g)を入れ、これを袋ごと過剰のイオン交換水に浸した。浸漬60分後に袋ごと空中に引き上げ、静置して15分間水切りした後、質量M(g)を測定して下式より吸水倍率を求めた。
なお網袋のみを用いて上記と同様の操作を行い、この分の質量N(g)をブランクとして差し引いた。 イオン交換水の吸水倍率=(M−N)/L
本発明における吸水性樹脂は、ノニオン性水溶性エチレン性不飽和単量体(A)単独からなる重合体(X)、アニオン性水溶性エチレン性不飽和単量体(C)単独からなる重合体(Y)、およびノニオン性水溶性エチレン性不飽和単量体(A)とアニオン性水溶性エチレン性不飽和単量体(B)を構成単位とする共重合体(Z)からなる。(X)、(Y)、(Z)のみで使用することも可能であり、(X)、(Y)、(Z)を2種類以上混合して使用することも可能である。これらの内、(Y)または(Z)のアニオン性の重合体からなる吸水性樹脂が特に植物の根の生長を阻害しないので、筒状容器内で植物を養生してもうまく根付くことができ、さらに法面に移植して長期間雨が降らなくても植物が枯れることがない。
上記において、重合体(X)の構成単位であるノニオン性水溶性エチレン性不飽和単量体(A)としては、水酸基含有ラジカル重合性水溶性単量体(アルキル基の炭素数が2〜3個のヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートなど)、アミド基含有ラジカル重合性水溶性単量体((メタ)アクリルアミドな、N−ビニルアセトアミドなど)、3級アミノ基含有ラジカル重合性水溶性単量体(ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど)、エポキシ基含有ラジカル重合性水溶性単量体(グリシジル(メタ)アクリレートなど)、およびその他ラジカル重合性水溶性単量体(4−ビニルピリジン、ビニルイミダゾールなど)が挙げられる。これらの内、好ましいものとしては、重合性が良好である(メタ)アクリルアミド及び/又はアルキル基の炭素数が2〜3のヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートである。
アニオン性水溶性エチレン性不飽和単量体(B)としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基を有するラジカル重合性水溶性単量体[(メタ)アクリル酸、ビニルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸など]及び/又はそれらを加水分解することにより水溶性となる単量体(酢酸ビニルなど);またはその塩が挙げられる。特に好ましくはアクリル酸、スルホン酸およびその塩である。
塩としては、上記カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基を含有する水溶性単量体の塩[例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アミン塩もしくはアンモニウム塩等]等が挙げられる。これらの内、好ましいものとしては、重合性が良好である(メタ)アクリル酸(塩)、スルホン酸(塩)を挙げることができる。
アニオン性水溶性エチレン性不飽和単量体(B)が(メタ)アクリル酸(塩)である時、カルボキシル基の中和時に必要なイオンとしては、アルカリ金属イオン、周期律表第2族又は13族に属する多価金属イオン及びアンモニウムイオンが挙げられる。アルカリ金属イオンとしては、Na+、K+が好ましく、周期律表第2族又は13族に属する多価金属イオンとしては、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、B3+、Al3+等が好ましい。
重合体(Y)(Z)中のカルボキシル基の中和時に必要なイオンとしては、アルカリ金属イオン、周期律表第2族又は13族に属する多価金属イオン及びアンモニウムイオンが挙げられる。アルカリ金属イオンとしては、Na+、K+が好ましく、周期律表2族又は13族に属する多価金属イオンとしては、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、B3+、Al3+等が好ましい。
ここでアルカリ金属イオン及びアンモニウムイオンの合計による中和度が10当量%未満では、保水性を向上させる能力が低くなり、多量に使用する必要が生じ、50当量%を超えると電気伝導率が2.0mS/cmを超えるため植物の根の生長を阻害する。周期律表第2族又は13族に属する多価金属イオンによる中和度は、好ましくは、0〜50当量%であり、さらに好ましくは、10〜40当量%である。ここで、第2族又は13族に属する多価金属イオンによる中和度が50当量%を超えると吸水性樹脂の架橋度が高くなりすぎるため製造しにくくなる。
該吸水性樹脂は実質的にノニオン性、アニオン性であり、この性質を阻害しない範囲内でカチオン性重合性単量体(C)(アクリル酸トリメチルアンモニウムエチル・クロライドなど)や他のモノエチレン性不飽和単量体(D)(たとえば、スチレン、アクリル酸n−ブチルなど)を、たとえば(A)と(B)の合計質量に対して10モル%を超えない範囲で共重合してもよい。
吸水前の状態での、吸水性樹脂粒子の平均粒径は、粒状物であれば、特に限定するものではないが、好ましくは20μm〜5mm、より好ましくは100μm〜3.5mm程度である。平均粒径が20μm以上であると、吸水時にママコ(継粉)を形成しにくくなるため保水能力の向上が阻害されない。一方、平均粒径が5mm以下であると、吸水速度が速くなり、粒子中心部まで水が浸透しやすくなるため保水能力、根への給水能力が向上する。吸水前の乾燥状態での、吸水性樹脂の平均粒径は、「レーザー回折散乱法」(例えば、具体的には、日機装社製、商品名:マイクロトラックFRA粒度分析計を使用)や篩い振とう法で測定できる。
上記の高吸水性樹脂の製造方法は、公知の吸水性樹脂の製造法で製造できる。重合体(X)、(Y)、(Z)については、たとえば、特開平8−266895公報、特開平10−191777公報、特開2007−319029号公報に記載されている方法が適用できる。
本発明における植物育成用担体としては、植物体育成に適する物質として一般的に使用されているものでよく、特に制限されない。たとえば、無機物質及び/又は有機物質などの粉末、多孔体、ペレット状、繊維状及び発泡体等の水不溶性の固状のものが使用できる。無機物質としては、無機質粉体(土壌、砂、フライアッシュ、珪藻土、クレー、タルク、カオリン、ベントナイト、ドロマイト、炭酸カルシウム、アルミナなど);無機質繊維(ロックウール、ガラス繊維など);無機質多孔体[フィルトン(多孔質セラミック、くんたん)、バーミキュライト、軽石、火山灰、ゼオライト、シラスバルーンなど];無機質発泡体(パーライトなど)などが挙げられる。
有機物質としては、有機質粉末[ヤシガラ、モミガラ、ピーナッツの殻、ミカンの殻、木くず、木粉、ヤシの実乾燥粉体など];有機質繊維[天然繊維〔セルロース系のもの(木綿、オガクズ、ワラなど)およびその他、草炭、羊毛など〕、人造繊維(レーヨン、アセテート等のセルロース系など)、合成繊維(ポリアミド、アクリルなど)、パルプ〔メカニカルパルプ(丸太からの砕木パルプ、アスプルンド法砕木パルプなど)、ケミカルパルプ(亜硫酸パルプ、ソーダパルプ、硫酸塩パルプ、硝酸パルプ、塩素パルプなど)、セミケミカルパルプ、再生パルプ(たとえばパルプを一旦製紙して作った紙の機械的破砕または粉砕物、または故紙の機械的破砕または粉砕物である再生故紙パルプなど)など〕、その他廃材(紙オムツの製造より出る廃材など)など];有機質多孔体(ヤシ殻活性炭など);有機質発泡体[穀物、合成樹脂又はゴムの発泡体(ポリスチレン発泡体、ポリビニルアセタール系スポンジ、ゴムスポンジ、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ウレタンフォームなど)など];有機質ペレット[ゴム及び合成樹脂のペレットなど]などが挙げられる。上記の植物体育成用担体は、単独で、あるいは必要に応じて2種類以上併用してもよい。これらのうち好ましいものは、吸水性のある無機質粉体、無機質多孔体、無機質発泡体、有機質繊維であり、より好ましいものは土壌である。また、土壌と土壌以外の吸水性のある植物育成用担体を混合して用いるのが特に好ましい。
植物育成用担体と吸水性樹脂と水の混合方法は、これらを筒状容器内で混合してもよいが、別の容器で混合してから入れる方が均一になるので好ましい。また、これらを同時に入れて混合してもよいが、吸水性樹脂と水を混合して含水ゲルを作成した後、植物育成用担体を入れて混合するのが吸水性樹脂が均一に含水ゲルになるので好ましい。混合装置も限定はなく、攪拌棒が備えてあれば容易に混合できる。混合温度は室温でよく、混合時間は好ましくは30分〜2時間である。
また、植物育成用担体と吸水性樹脂を先に混合して、粉体を筒状容器に入れた後、上から水を入れる方法は作業性がよく効率的である。この場合は、筒状容器の長さの7〜8分目程度に粉体を入れておくのがよい。
前記吸水性樹脂は水を吸収して含水ゲルとなる。吸水性樹脂と水の割合は、吸水性樹脂の吸水倍率、植物の種類により異なるが、重量比で好ましくは1:10〜1:1000であり、より好ましくは1:20〜1:500である。1:10〜1:1000であれば、筒状容器内で植物が根付くことができ、植物を岩盤に移植した後も長期間植物が枯れることがない。
植物育成用担体と吸水性樹脂との比率は特に限定はないが、好ましくは植物育成用担体の重量に対して吸水性樹脂が0.5〜10重量%である。0.5重量%以上であると植物の根を枯らさないように水を給水することができ、10重量%以下であると吸水性樹脂が水を多く含んで膨潤し植物を固定しにくくなることがない。特に好ましくは0.2〜5重量%である。この範囲であると植物をさらにしっかりと固定しながら植物に十分給水することができる。
混合物には、肥料、植物生長ホルモン、抗菌剤、微量要素、防カビ剤などの当分野で公知の成分を含有させてもよい。肥料は、天然肥料でも、化学肥料であってもよいし、即効性肥料、遅効性肥料のいずれも使用することができる。
混合物を入れる筒状容器については、その形状は特に限定はないが、製造面から円筒状が好ましい。容器の大きさ(幅)は植物が植えられれば限定はないが、40〜100mmが好ましく、50〜70mmが特に好ましい。40〜100mmであると植物を十分に植えることができ、岩盤に穴を形成しやすい。50〜70mmであると、穴を開けるのに削岩機を用いた場合、削岩機で形成される穴の大きさは75cm程度であるので、穴に入れ易いと共に移植後の植物が固定されやすい。筒状容器の長さは、穴の深さより短く、容器中で植物が根付けばよいが、好ましくは穴の深さの半分程度でよく、たとえば20〜60cmであり、20〜40cmがコンパクトにできるので特に好ましい。
筒状容器を形成する枠は、植物の養生をする1〜2ケ月の期間保形性のあるものなら限定ないが、たとえば塩ビ管などのプラスチック製の成形品がコスト的に好ましい。保形性のある網状のもので筒を形成しその周囲をシートで包んだものでもよい。シートをはずせばそのまま穴に挿入できる。
また、筒状容器はプランターのように底に穴を有してもよいが有していなくてもよい。穴がなくても水による根腐れを起こさないが、水の量が多くなりすぎると吸水性樹脂が膨潤して全体の量が増えて容器の入口からあふれ出ることもあるので、筒状容器の底には孔があるのが好ましい。養生後筒状容器のまま穴に挿入してもよいが、好ましくは筒状容器に布帛、不織布、フィルムなどのシートや網などで形成された袋を入れた後、その中に混合物を入れ植物を養生するのが好ましい。穴に入れる際に、袋ごと取り出せるので作業が効率的になる。袋は有機質繊維などの天然繊維のもので構成されるのが好ましい。天然繊維であると長期間土壌中にあると分解し環境保全の面から好ましい。また、数年後に良質の有機肥料となる。袋が天然繊維で形成されていると、法面に植えられた後、筒状容器に植えられた植物の根が伸長して袋を破り根が岩盤の内部の亀裂に入って岩盤に一体化することができる。袋が網状であると根は外部に出やすいのでより好ましい。
本発明の緑化システムに用いる植物としては特に限定はないが、苗木が好ましい。苗木としては、法面の樹林化に通常用いられている各種の樹木の苗木を特に制限なく用いることができるが、通常、法面の緑化目標に合わせて、その土地の周辺の植生に適合した植物や景観形成に役立つ植物を選択して用いる。たとえば、照葉樹林を目標植生とした場合、スダジイ、ツブラジイ、アラカシ、ウラジロガシ、シラカシ、アカガシ、タブノキ、ヤブニッケイ、シロダモ、ヤブツバキ、モチノキ、ヒサカキ、アオキなどを選択することができる。また、たとえば、落葉広葉樹林を目標植生とした場合、ブナ、ミズナラなどブナ科、ハウチワカエデ、ヤマモミジ、イタヤカエデ、シラカンバ、ダケカンバ、ミヤマザクラ、マユミ、ツリバナ、ケヤキ、ハルニレ、サワグルミ、カツラ、モミ属、ツガ属、マツ属、クロモジ、マンサク、アオキ、ヤブツバキ、ユズリハ、イヌツゲ、ヤマシキミなどを選択することができる。これらの内マツ属などが好適に用いられる。
上記の混合物を筒状容器に入れた後、これらの苗木を植えて養生する。養生期間は植物によって異なるが、好ましくは1週間ないし2ケ月程度であり、より好ましくは1ケ月程度である。養生条件は植物によって異なるが、通常の養生条件が適用できる。
図1に筒状容器内で植物を養生している概念的断面図を示した。筒状容器1の中に袋2を入れ、その中に吸水性樹脂、植物育成用担体および水の混合物3を入れ、植物の苗木4が植えてある。
本発明においては、無土壌法面に植物を入れた筒状容器の入る穴を形成する。穴をあける装置は特に限定ないが、穿孔機、通常削岩機で穿孔するのが、従来の設備が使えて低コストにできる。穴の形状は特に限定はないが、通常円筒状、不定形柱状である。穴の大きさも限定はないが施工作業の面から40mm〜150mmが好ましい。特に60mm〜80mmの大きさが削岩機の設備の観点から好ましい。削岩機を用いると通常約75cmの幅の穴が形成される。
岩盤は通常急勾配であるが、穴は水平方向に対して容器の深さ方向の中心線が30°〜90°になるようにあけるのが好ましい。削岩機であける場合は30°〜60°であるのが作業性がよくより好ましい。
図2に無土壌法面に穴をあけた様子を概念的断面図で示した。無土壌法面5に穴6〜8があけられている。穴6は水平面に対して30°、穴7は45°、穴8は60°にあけられている。
穴の深さは限定ないが施工作業上40cm〜1mが好ましく、特に50〜70cmが削岩機の設備の観点から好ましい。穴は削岩機による穴であれば特に問題はない。
穴の深さと穴の入口の大きさの関係については、穴の入口の面の面積と、穴の内部における入口の面と平行な面の面積は通常同じであるが、内部の該面の面積が穴の入口の面の面積よりも大きい箇所を意図的に設けるのが好ましい。穴の入口の面積が穴の内部の面の面積よりも小さいと、穴の入口からの水の蒸散が少ないので、内部の保水が長期間有効であり、植物への給水が長期間できる。また、穴の大きさと容器の大きさに隔たりが大きいと容器が固定しにくくなるので、筒状容器の大きさを穴の大きさに合わせて決めるのがより好ましい。
通常の削岩機で無土壌法面に穴をあける位置は、無土壌法面の下部、すなわち下から1〜3mぐらいになるが、これにこだわらない。これ以上の高さの位置については削岩機を備えた特殊の装置を用いると可能である。横方向の穴の間隔は植える苗木によって異なるが、たとえばマツなどの場合は2m間隔であけるのが好ましい。穴は1段でもよいが、2段でも3段でもよく、苗木の種類、緑化の目的などによって変えることができる。
図3には、無土壌法面5に穴6をあけた状態の一例の概念的正面図を示した。この場合、穴6は二段で、横方向に一定間隔であけられている。このようにすると苗木が大きくなると無土壌法面5の下側が緑化できるが、場合によっては外観的には無土壌法面5の全体が緑化されているようにもみえる。
穴に筒状容器などを挿入する方法は特に限定ないが、穴に前記植物が植えられた筒状容器をそのまま挿入、または植物が植えられた前記混合物を筒状容器から袋ごと取り出して挿入するのが、効率的で好ましい。最初に半分程度上記の混合物または植物育成用担体と吸水性樹脂の混合物を入れておいて筒状容器を挿入するのが好ましい。挿入された筒状容器の入口がほぼ岩盤の表面と同レベルの位置にくるようにし、その際に空隙があればその空隙をみたすように混合物または前記の植物育成用担体などを入れるのが好ましい。このようにして筒状容器などを穴に固定することができ、保水性の大きい混合物に植えられた苗木が無土壌法面に固定される。
また、上記の筒状容器には水留部を設けておくのが、水が筒状容器の入口に溜るので好ましい。溜まった水は少しずつ筒状容器中の混合物に吸収され、植物に給水することができる。水留部の形状は、筒状容器の入口で水を留めて水を溜める形状のものであれば限定はないが、筒状容器の入口で植物の下側が法面よりも出っ張っている構造のものが好ましい。
図4は、取り付ける前の水留部9の斜視図である。尖った先端部10を穴6の下側になるように取り付ければ水留部9ができる。
図5に水留部を無土壌法面に取り付けた状態を示す概念的断面図を示した。水留部9が穴6に埋められている様子がわかる。水留部は筒状容器に一体化していてもよいし、筒状容器とは別に形成されていてもよい。無土壌法面に筒状容器に取り付けた後、筒状容器の入口に設けるのがコスト的に好ましい。このようにすると植物の種類、大きさや、穴の位置などにより容易に変えることができる。たとえば、これを一枚のシートで円筒を形成した後、斜めにカットすることにより形成される。
このようにして無土壌法面に移植された植物の幹は穴の中心線の角度と同じ角度になっているが、植物の生長と共に幹の方向を水平面に対して垂直な方向に変える。また、植物の根は生長と共に伸び袋を通過し岩の小さい裂け目に食い込んでいくことができる。その裂け目には通常水が流れる場合が多いので、根が裂け目に入れば裂け目の水を吸収して生長することができる。すなわち岩盤に一体化することができる。
図6は、本発明の方法により苗木を移植した後、半年以上経過したときの苗木の成長の様子を示す概念的断面図である。植物の苗木が大きくなり、幹11は垂直方向に向きを変え始め、根12は岩盤の裂け目13に入っている様子を示している。
以下実施例にて本発明を説明するが、これらに限定されない。
(実施例1)
直径60mm、長さ30cmの塩ビ製筒の下側の一方に紙コップを入れて閉じて底を作り、プランターのように水が通過する孔を複数設ける。その中に網状の袋を入れて、その中に培養土:バーミキュライト:スルホン酸塩系吸水性樹脂粉末(含水ゲルの電気伝導率 1.0mS/cm、吸水倍率 300g/g、平均粒子径 370μm)=8:2:0.1 の混合物を筒の長さの7〜8分目まで入れた。そこに松の苗木を植えた後、水150gを入れて吸水させた。同様にしてこれを15本作製した。それを1ケ月間外に置き養生し、1ケ月後いずれも枯れていないことを確認した。この中から比較的苗木の元気がよい11本を選んだ。
一方、無土壌法面である岩盤に削岩機で直径64mm、深さ50mmの穴を、1段目に6本、2段目に5本、2m間隔で計11本あけた。この穴のそれぞれに上記の混合物を半分程度入れ、その上から養生時と同じ割合になるように水を入れた後、筒から松の苗木を袋ごと取出し、穴に挿入した。隙間には上記の混合物と水を入れて固定した。さらに穴の入口に尖った部分が5cm程度ある水留部を形成した。
この状態で2週間後に観察したが枯れていなかった。この2週間の間雨が降っていなかった。さらに6ケ月後に観察したが11本とも枯れることなく大きく成長していた。幹は上方に向きを変えているのが明らかであった。その中の1本を抜き出して根を観察すると根が伸びて岩盤の裂け目に入っていることがわかった。
(実施例2)
実施例1とは別の無土壌法面である岩盤において、スルホン酸塩系吸水性樹脂粉末に替えてカルボン酸型吸水性樹脂(含水ゲルの電気伝導率 2.0mS/cm、吸水倍率 320g/g、平均粒子径 350μm)を用いた以外は実施例1と同様にして実施した。 1ケ月養生後、いずれも枯れていなかった。6ケ月後には11本枯れてはいなかったが、2本元気がなかった。
(比較例1)
実施例1、2とは別の無土壌法面である岩盤において、スルホン酸塩系吸水性樹脂粉末に替えてカルボン酸型吸水性樹脂(含水ゲルの電気伝導率 3.0mS/cm、吸水倍率 350g/g、平均粒子径 38s0μm)を用いた以外は実施例1と同様にして実施した。1ケ月養生後、いずれも元気がなく3本が部分的に枯れていた。6ケ月後には11本とも枯れていた。
1 筒状容器
2 袋
3 混合物
4 苗木
5 無土壌法面
6 7 8 穴
9 水留部
10 先端部
11 植物の幹
12 植物の根
13 岩盤の裂け目

Claims (6)

  1. (1)下記吸水性樹脂、植物育成用担体および水の混合物を入れた筒状容器に植物を植えて養生する工程、
    (2)無土壌法面に少なくとも前記筒状容器が入る大きさと深さの単一の円筒状の穴を形成する工程、および
    (3)前記穴に前記植物が植えられた筒状容器をそのまま挿入、または植物が植えられた前記混合物を筒状容器から取り出して挿入する工程
    からなり、該吸水性樹脂と水の割合が重量比で1:10〜1:1000であることを特徴とする無土壌法面の緑化方法
    吸水性樹脂:吸水性樹脂1重量部を25℃のイオン交換水100重量部に吸水させた時の含水ゲルの電気伝導率が0〜2.0mS/cmであり、且つ25℃のイオン交換水の吸水倍率が80〜1000倍。
  2. 前記無土壌法面の穴の入口に水留部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の無土壌法面の緑化方法
  3. 前記植物育成用担体が、土壌と土壌以外の吸水性のある植物育成用担体の混合物であることを特徴とする請求項1または2記載の無土壌法面の緑化方法。
  4. 前記筒状容器の深さ方向の長さが幅よりも長く、且つ前記穴の内部において穴の入口の面と平行な面における面積が穴の入り口の面の面積よりも大きい箇所があることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無土壌法面の緑化方法
  5. 前記穴に前記植物が植えられた筒状容器を挿入するにおいて、最初に半分程度上記混合物または植物育成用担体と吸水性樹脂の混合物を入れておいて筒状容器を挿入することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の無土壌法面の緑化方法
  6. 前記無土壌法面が、切取斜面、緑化の不可能な自然環境の厳しい法面、風化が激しく土壌層の薄い軟岩法面、寒冷地山岳地帯等での凍結の激しい法面、硬質土砂質土から硬岩法面のいずれかであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の無土壌法面の緑化方法
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