JP5798829B2 - 鉄道車両の先頭衝撃吸収構造 - Google Patents

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Description

本発明は、障害物が鉄道車両の台枠より上部でオフセット正面衝突した時の衝突エネルギーを吸収する鉄道車両の先頭衝撃吸収構造に関する。
従来、障害物に衝突した時に鉄道車両に掛かる衝突エネルギーを吸収する様々な方法が提案されている(例えば、特許文献1、2、3参照)。具体的には、特許文献1は、鉄道車両の床下に設置される衝撃吸収装置を開示している。同衝撃吸収装置は、衝突時に衝撃吸収部材の移動を停止且つ固定させることによって、衝突エネルギーを衝撃吸収部材で吸収している。特許文献2は、壊れ易く且つ衝撃エネルギー吸収量の多い構造を組み込んだ鉄道車両用衝撃吸収台枠構造を開示している。
図9に示すように、特許文献3は、車両のクラッシャブルゾーン11(図9(b))に、車両の長手方向に延在する衝撃吸収部材である骨部材17(図9(b))を、強度部材15、16の間に、上下方向に離散して設けている。骨部材17は、2枚のフランジ17c、17dと、同フランジを接続するウエブ17bとからなり、U字状断面を有する。ウエブ17b側が外板18(図9(b))に隅肉溶接されている。
骨部材17の長手方向の中間の位置のフランジ端部に開口を有する切り欠き21が設けられている。さらに、ウエブ17bの両端近傍には、開口22、23が設けられている。衝突荷重がかかると、切り欠き21部が外板18とは反対側に折れ曲がることにより、骨部材17が座屈しても外板18を巻き込まずに、衝突荷重を吸収して、クラッシャブルゾーンの外、例えば窓Wまで衝撃が及ぶことの防止を図っている。
特開2010−241305号公報 特開2000−52984号公報 特開2008−62817号公報
先ず、図10を参照して、本発明にかかる先頭衝撃吸収構造が衝撃軽減を図っている、鉄道車両のオフセット正面衝突について説明する。図10(a)に、先頭の鉄道車両Vc(以降、「車両Vc」)の先頭部(以降、「先頭車両先頭部Vcf」)を横から見た内部の様子を模式的に示す。本発明においては、先頭車両先頭部Vcfは、車両Vcにおいて運客仕切部Pによって、客室(不図示)と仕切られた運転手室を対象としている。
オフセット正面衝突とは、車両Vcの台枠Fuより上の先頭車両先頭部Vcfに、トラック等の障害物Ocが正面衝突することをいう。オフセット正面衝突の場合、障害物Ocが、車両Vcの前面Wfに衝突すると衝撃力Fiが発生する。図10(b)に、車両Vcにおける、衝撃力Fiに対する反力Frを縦軸に、経過時間tを横軸にとり、図10(a)と共に、オフセット正面衝突時の先頭車両先頭部Vcfの状態について説明する。
時刻t0に、障害物Ocが車両Vcにオフセット正面衝突すると、次の瞬間である時刻t1において反力Frは最大Fr1になる。この時点で、衝撃力Fiによる先頭車両先頭部Vcf(壁、天井、前面Wf)の変形や崩壊が開始する。変形や崩壊された前面Wfを被破壊前面Wfbと呼ぶ。変形や崩壊は時刻t2迄継続する。この間、図10(a)で二点鎖線で示すように、衝撃力Fiは減衰しつつ、側壁や天井を破壊しながら被破壊前面Wfbを客室に向かって押し下げていく。そして、時刻t2で、被破壊前面Wfbは運客仕切部Pに受け止められる。この時刻t1から時刻t2迄の期間を、衝突による「崩壊・変形期間Pd」と呼ぶ。
崩壊・変形期間Pdにおいて、被破壊前面Wfbの移動によって、被破壊前面Wfbと運転手Oとの間にある運転台Doなどの機材を運転手Oに衝撃的に押し当てたり、運転手Oを運客仕切部Pに押しつけたりして死傷させてしまう可能性がある。このように、崩壊・変形期間Pdで衝撃力Fiのエネルギーのかなりの部分が消費・吸収され、残った衝撃エネルギーは、運客仕切部Pや側壁や天井及び台枠などの車両Vcの構体を経て伝播・吸収される。つまり、台枠より上でのオフセット正面衝突に関しては、崩壊・変形期間Pdでエネルギーを十分に減少させることがポイントである。これは、図10(b)において、崩壊・変形期間Pdでの反力Frの積分値を大きくすることを意味する。
上述のような、オフセット正面衝突において、特許文献1に開示の衝撃吸収装置は、床(台枠)下に設置されて、台枠の下でのオフセット正面衝突エネルギーは吸収できる。しかし、台枠の上でのオフセット正面衝突エネルギーは吸収できない。特許文献2は鉄道車両用衝撃吸収台枠構造を開示しており、オフセット正面衝突エネルギー吸収に不適であることは言うまでも無い。つまり、特許文献1及び特許文献2のいずれの開示においても、上述の崩壊・変形期間Pdでのエネルギーを十分に減少できないことは明らかである。
一方、特許文献3に開示の骨部材17は車両のクラッシャブルゾーン11に設けられており、本発明と同様に、台枠より上でのオフセット正面衝突を対象としている。しかしながら、衝撃吸収部材である骨部材17はU字状断面の開口部を外板18と反対側に向けた状態で、車両Vcの進行方向(オフセット正面衝突の衝撃力Fiの伝播方向)に離間する2つの強度部材15、16との間に設けられている。つまり、先頭車両先頭部に加えられた衝撃力は、強度部材15を介して、骨部材17に対して垂直に伝えられる。この衝撃力により、骨部材17が切り欠き21で内部に向かって折れることにより衝撃エネルギーの吸収を図っている。
しかしながら、骨部材17は、U字状断面という立体構造で、衝撃力Fiの伝播方向に一部材で延在しているため、本来は延在方向に加えられる力に抗する能力が高く、エネルギー吸収の観点からは不利である。そのために、開口部に切り欠き21を設けて、衝撃力Fiが加わった時に、切り欠き21から折れやすくしている。そのために、一本の骨部材17は切り欠き21で急激に折れる。つまり、骨部材17の全長(強度部材15、16の間)で一度だけ折れる。言い換えれば、骨部材17は一度折れたらそれ以上、衝撃エネルギーを吸収できない。
これは、骨部材17は、クラッシャブルゾーン11で衝撃エネルギーを瞬間的に一度だけ吸収すると、後は衝撃エネルギーを吸収できない。つまり、クラッシャブルゾーン11は急激に変形・破壊することを意味する。つまり、クラッシャブルゾーン11は、連続的にではなく断続的に変形・破壊する。そのため、衝撃もなめらかに吸収できずに、ショックと共に断続的に吸収するので、乗員への衝撃を抑えることができない。
なお、1本の骨部材17に切り欠き21を複数設けることにより、骨部材17を多段に折ることが考えられる。しかし、骨部材17は立体的(U字状断面)構造のために、複数の切り欠き21を有しても、1つの切り欠き21で折れれば、その部分の変形が進行して、残りの切り欠き21が折れたとしても、エネルギー吸収に対する寄与は小さい。
また、車両Vcの台枠上の高さ方向に、数本(図9(b)の例では5本)の骨部材17が離間して設けられている。つまり、クラッシャブルゾーン11のスペースの一部のみが衝撃力Fiの吸収に利用されているに過ぎない。なお、車両Vcにオフセット正面衝突した障害物Ocは、強度部材15によって受け止められて、衝撃力Fiは離間した数本の骨部材17に分散して伝えられるようにみえる。しかしながら、強度部材15は剛体ではないので、やはり障害物Ocが実際に当たっている部分に近い骨部材17に、衝撃力Fiは集中して伝えられる。
そのため、数本の骨部材17の内の一本が折れても残りの骨部材17は折れないことがある。この場合、折れた骨部材17の周囲部分が極度に破壊されるが他の部分は破壊されない。つまり、数本の骨部材17の全てを衝撃エネルギー吸収に使用できない。これは、骨部材17を離間させないで、互いに隣接させてクラッシャブルゾーン11の全域に配しても、全ての骨部材17を有効的に使用できないことを意味している。つまり、クラッシュブルゾーン11で吸収できる衝撃力は極めて低いことを意味している。
よって、上述の問題に鑑みて、本発明は、障害物が鉄道車両の台枠より上部でオフセット正面衝突した時の衝突エネルギーを吸収する鉄道車両の先頭衝撃吸収構造を提供することを目的とする。
上記の課題を解決する為に、本発明は、鉄道車両の乗務員室部分が台枠より上の部分で障害物とオフセット正面衝突した時の衝撃を吸収する先頭衝撃吸収構造であって、
前記乗務員室部分の側壁の、天井より高い位置から前記台枠まで延在する外板と、
前記外板の内面に対して、概ね垂直に車両幅方向に所定の長さだけ延在すると共に車両高さ方向に延在し、車両長手方向に所定の距離だけ離間して、互いに平行に配設される複数の補強板とからなり、当該側壁の変形を促進すると共に破断を防止する面外変形促進手段を備える。
本発明は、障害物が鉄道車両の台枠より上部でのオフセット正面衝突したときの衝突エネルギーを効率良くかつなめらかに吸収できる。
本発明の実施の形態に係る先頭衝撃吸収構造が組み込まれた鉄道車両の構体を前から見た正面図である。 図1の鉄道車両の乗務員室の構体を上から見た平面図である。 図1の鉄道車両の乗務員室の側面図である。 図3において、直線IV−IVで切った、乗務員室の断面図である。 図1において、直線V−Vで切った、乗務員室の上部の断面図である。 本発明の実施の形態に係る乗務員室部分における先頭衝撃吸収構造を模式的に示す図である。 図6に示す乗務員室部分における、オフセット正面衝突時の衝撃吸収を説明する図である。 図6に示したステージ毎のオフセット正面衝突時の乗務員室部分の状態を示す図である。 従来の鉄道車両のクラッシャブルゾーン及び当該クラッシャブルゾーンに設けられた衝撃吸収部材を示す図である。 オフセット正面衝突時の、鉄道車両の先頭車両先頭部の状態を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。先ず、図1、図2、図3、図4、及び図5を参照して、本発明の実施の形態に係る先頭衝撃吸収構造について説明する。図1は、本発明の先頭衝撃吸収構造が組み込まれた鉄道車両Vp(以降、「車両Vp」)の先頭部である乗務員室部分Vpfの構体を正面から見た状態を示す。図2は、図1の乗務員室部分Vpfの構体を上からみた状態を示す。同図において、左半分はアーチ桁139及びアーチ桁140で支えられている屋根の外板102(以降、「屋根外板102」)で覆われている状態を表し、右半分は屋根外板102が無い状態を表している。図3は、図1において、運転士側の乗務員室部分Vpfの側面を見た状態を示している。図4は、図3において、直線IV−IVで乗務員室部分Vpfの構体を切った断面を示す。図5は、図1において、直線V−Vで切ったアーチ桁139及びアーチ桁140と、カモイ114との間の部分、つまり図2の右衝撃吸収部材175Rの部分を右から見た状態を示す。
図1に示すように、車両Vp(乗務員室部分Vpf)の前面中央には、天井より高い位置から台枠の中まで貫通して延在するH字状に構成された貫通路柱Ptが配設されている。貫通路柱Ptは、同図において向かって右側(車両Vpの内部から見て左側)に示す左貫通路柱ユニットULと、左側(車両Vpの内部から見て右側)に示す右貫通路柱ユニットURと、カモイ114とを含む。なお、車両Vpの正面から見て、左貫通路柱ユニットULより右側が運転士側であり、右貫通路柱ユニットURより左側が助士側である。左右の側壁の外板101(以降、「側外板101」)の内側にはそれぞれ、複数の補強板134L及び134Rが設けられている。
図2に示すように、左貫通路柱ユニットULは、車両Vpの長手(進行)方向Dlに関して、前方(車両Vpの正面)に位置する左前方ユニット112Lと後方に位置する左後方ユニット113Lとで、内側と外側のそれぞれに段差を有する(図2)ように一体的に構成されている。同様に、右貫通路柱ユニットURは、前方に位置する右前方ユニット112Rと後方に位置する右後方ユニット113Rとで、内側と外側のそれぞれに段差を有するように一体的に構成されている。この内側の段差に、カモイ114の両端が当接して、右貫通路柱ユニットURと左貫通路柱ユニットULは一体的に連結(図1参照)されている。さらに、外側の段差に、脇骨124Lと124Rの端部がそれぞれ当接して、側外板101に連結(図1参照)されている。
左貫通路柱ユニットUL及び右貫通路柱ユニットURは、長手方向Dlに運客仕切部Pに向かって延在している。左貫通路柱ユニットUL及び右貫通路柱ユニットURのこの延在端部と運客仕切部Pとの間に、それぞれ左衝撃吸収部材175L及び右衝撃吸収部材175Rが連結されている。なお、前述の複数(本例では、それぞれ4枚)の補強板134L及び補強板134Rが、側外板101の正面からアーチ桁139までの領域に設けられている。
図3に示すように、乗務員室部分Vpfの左側壁には、車両の先頭正面からアーチ桁139までの領域には補強板134Lが設けられ、アーチ桁139からアーチ桁140までの領域には、出入口Dが開口されている。図4に示すように、複数(本例では、4枚)の補強板134Lが、側外板101に対して、ほぼ垂直(車両幅方向Dwと平行)に突出して、車両高さ方向Dv方向に延在している。結果、隣接する補強板134Lと側外板101によって、台枠から天井にかけて延在するコの字状の空間Svが形成される。この空間Svは、配管や配線などの収容に利用できる。
図3に戻って、出入口Dの上部を、左衝撃吸収部材175Lがカモイ114と運客仕切部Pとに連結されているのが見て取れる。なお、乗務員室部分Vpfの右側壁にも同様に、補強板134Rが側外板101に対してほぼ垂直(車両幅方向Dwと平行)に突出して、車両高さ方向Dv方向に延在している。そして、隣接する補強板134Rと側外板101によって、台枠から天井にかけて延在するコの字状の空間Svが形成される。この空間Svは、配管や配線などの収容に利用できる。そして、出入口Dの上部を、右衝撃吸収部材175Rがカモイ114の後端部と運客仕切部Pとに連結されている。
図5を参照して、右衝撃吸収部材175Rの構成について説明する。本例においては、右衝撃吸収部材175Rは、カモイ114と横ハリ151とに接続されるものと、横ハリ151と横ハリ152とに接続されるものとの二体物として構成されている。この理由については後述するが、右衝撃吸収部材175Rが変形或いは崩壊することによって、オフセット正面衝突時の衝撃エネルギーを吸収する。そのためには、衝撃力Fiを受けた時に大きく変形あるいは移動すると引き続き衝撃力Fiを受けることができなくなるので、基本的な位置を保つために2以上の別体物として、それぞれを横ハリなどのしっかりした反力受で保持している。
つまり、衝撃力Fiに対して右衝撃吸収部材175Rが逃げてしまわないようにするために、複数の部材に分割してそれぞれを、衝撃力Fiの伝播進路上に保持している。よって、右衝撃吸収部材175Rの個数は2に限らず適宜決められるものである。なお、左衝撃吸収部材175Lについても同様である。衝撃吸収部材175(右衝撃吸収部材175R及び左衝撃吸収部材175Lを総称)は、通常の荷重に耐える強度を有しながら、衝突荷重に対しては座屈変形しやすい部材である必要がある。衝撃吸収部材175の具体例として、金属製の角型のパイプや、複数個の穴を形成した金属製のチューブ状の部材が挙げられる。衝撃吸収部材175の素材は、アルミニウム合金材や鋼材等である。
次に、図6、図7、及び図8を参照して、本発明の実施の形態に係る先頭衝撃吸収構造による、オフセット正面衝突時の衝撃吸収について以下に説明する。図6に、乗務員室部分Vpfにおける先頭衝撃吸収構造を模式的に示す。同図において、運客仕切部Pより左側が乗務員室部分Vpfであり、右側が客室部分Vppである。本発明に係る先頭衝撃吸収構造は、貫通路柱Ptの端部が台枠Fuに貫入されている構造(以降、「貫通路柱台枠固定構造Spf」)と、複数(本例では、3つ)の衝撃吸収部材175が貫通路柱Ptのカモイ114と運客仕切部Pとの間で保持されている構造(以降「天井部衝撃吸収構造Spc」」)と、複数(本例では、4枚)の補強板134が側外板101に対して垂直に且つ台枠から天井に向かって延在している構造(以降、「側壁衝撃吸収構造Sps」)とを含んでいる。
次に、図7を参照して、図6に示した乗務員室部分Vpfがオフセット正面衝突した時の貫通路柱台枠固定構造Spfと天井部衝撃吸収構造Spcとによる衝撃吸収について、ステージS1〜S5の5段階に分けて説明する。
ステージS1では、障害物Oc(たとえば、25トントラック)が時速60kmの速度で車両Vpの貫通路柱Ptに衝突する。
ステージS2では、貫通路柱Ptが倒れる。本発明においては、貫通路柱台枠固定構造Spfによって、貫通路柱Ptの下端が台枠Fuに貫通されて固定されているので、貫通路柱Ptは従来の前面Wfのように被破壊前面Wfbとなって、運転手Oに向かって平行移動することはない。貫通路柱Ptは、貫通路柱台枠固定構造Spfの部分を支点として、回転しながら運客仕切部Pに近づく。貫通路柱Ptの回転により、台枠Fuは先頭から第2端バリまでまくれ上がる。この時に、衝突エネルギーが吸収される。これを、衝突エネルギーの一次吸収Aec1と呼ぶ。
ステージS3では、貫通路柱Ptが天井部衝撃吸収構造Spcの衝撃吸収部材175ごと、乗務員室部分Vpfの屋根部と側部を押しつぶす。このとき、ステージS2で吸収されなかった衝突エネルギーが衝撃吸収部材175によって吸収(以降、「二次吸収Aec2」)されると共に乗務員室部分Vpfの屋根部と側部によって吸収(以降、「三次吸収Aec3」)される。
ステージS4では、貫通路柱Pt(及び、押しつぶされた衝撃吸収部材175)が運客仕切部Pで受け止められて、ステージS3で吸収されなかったエネルギーは、運客仕切部Pから客室部分Vppに伝播される。
ステージS5では、崩壊・変形が終息し、伝播されたエネルギーが後方の構造で緩やかに低減される。この状態では障害物と列車の速度はほぼ等しくなっているが、障害物を引きずる抵抗があるために、反力Frは0とならない。
図8に、図10と対比して、ステージS1〜ステージS5までの車両Vpにおけるオフセット正面衝突時の乗務員室部分Vpfの状態について説明する。同図において、二点鎖線Lcは、図10に示した車両Vcにおける反力Fr−時刻tの関係を示す。実線Lpは本発明の実施の形態に係る貫通路柱台枠固定構造Spf及び天井部衝撃吸収構造Spcを組み込んだ車両Vp(乗務員室部分Vpf)における反力Fr−時刻tの関係を示す。なお、対比のために、崩壊・変形期間Pdの開始時刻t1及び終了時刻t2は同じとして表示しているが、実際にそれぞれ乗務員室部分Vpfや貫通路柱台枠固定構造Spf及び天井部衝撃吸収構造Spcによって異なることは言うまでもない。
図8に示すように、本発明に係る先頭衝撃吸収構造を用いることにより、衝撃力のピーク値がFr1からFrpに下がると共に、特にステージS3においては、直線Lpの傾きが、直線Lcの傾きに比して小さくなっているため、効果的にエネルギーが吸収されていることが見て取れる。このように、衝撃力ピークつまり、Frp(Fr1)は時間の短いステージS1にある。エネルギー吸収の効果の観点からは、衝撃力ピークを大きくすることも有効であるが、加速度が増すために乗員が被る損傷が大きくなる傾向がある。また、崩壊時間Pdを長くすることもエネルギー吸収を増大させる。
しかしながら、時間に比例した変形量を伴うので、乗員を保護する空間が減少する。これらに基づき、乗員の保護の観点から言えば、クラッシャブルゾーンを設ける構造は、エネルギー吸収要素と許容変形量を組み合わせることで、ステージS3の部分を反力の高い位置で長い時間保持するものである。
図7及び図8を参照して、貫通路柱台枠固定構造Spfと天井部衝撃吸収構造Spcとの組み合わせにおける衝撃エネルギー吸収について説明した。天井部衝撃吸収構造Spcと側壁衝撃吸収構造Spsは、その構造が異なるため、厳密に言えば、衝撃吸収パターンは天井部衝撃吸収構造Spcとは異なる。
つまり、側壁衝撃吸収構造Spsの補強板134は側外板101の内面上に設けられているので、衝突時に外板が側壁衝撃吸収構造Sps(側外板101或いは補強板134)に当たることはない。つまり、障害物Ocが貫通路柱Ptに当たった後に、側壁衝撃吸収構造Spsに当たる。以降の動作は、基本的に貫通路柱Ptと天井部衝撃吸収構造Spcとの動作と同様である。
但し、長手方向Dlに、複数枚の補強板134が平行に配されているので、障害物Ocによって側外板101が面外変形すると、対応する補強板134は長手方向Dl方向に移動して、変形した側外板101と共に次の補強板134に当接する。衝撃の伝播及び吸収と、側外板101の変形とが進行するにつれて、当接する補強板134の枚数が増える。これにより、最初の補強板134に加えられた衝撃力Fiは、補強板134の枚数が増えるごとに吸収されると共に、より分散される。
つまり、側壁衝撃吸収構造Spsにおいては、補強板134が側外板101の破断や破壊を抑えることによって、側外板101が変形することにより、衝撃エネルギーを吸収することを促進する、これにより、側壁衝撃吸収構造Spsが設けられている側外板101の面外変形をエネルギー吸収に利用することができる。さらに、衝撃が補強板134ごとに分散されるので、衝撃エネルギーをよりなめらかに低減できる。上述のように、縦骨や横骨の骨材と外板とから成る骨皮構造においては、皮に相当する外板を破断させずに変形させることが、衝突時の車両の衝撃エネルギー吸収の観点から望ましい。
また、側壁衝撃吸収構造Spsは、乗務員室部分Vpfの側壁の全幅にではなく、正面からアーチ桁139までの長さを幅とする領域に設けられている。よって、乗務員室部分Vpfがオフセット正面衝突した際にも、乗務員室部分Vpfの側壁の変形は側外板101の面外変形のみに抑えられて、側壁衝撃吸収構造Spsの後端から運客仕切部Pまでの側壁は変形・崩壊を免れる。結果、運客仕切部Pから側壁衝撃吸収構造Spsまでの空間が乗務員のために確保できる。なお、側壁衝撃吸収構造Spsは運客仕切部Pに接続する必要がないので、路面電車など運客仕切部Pを有しない車両にも適用できる。
このように、衝撃エネルギーの吸収の仕方は異なるものの、側壁衝撃吸収構造Spsは、基本的には天井部衝撃吸収構造Spcと類似の衝撃吸収性能を有している。よって、本発明においては、貫通路柱台枠固定構造Spfと天井部衝撃吸収構造Spcとの組み合わせ、貫通路柱台枠固定構造Spfと側壁衝撃吸収構造Spsとの組み合わせ、さらに貫通路柱台枠固定構造Spfと天井部衝撃吸収構造Spcと側壁衝撃吸収構造Spsとを組み合わせて実施することができる。天井部衝撃吸収構造Spcと側壁衝撃吸収構造Spsを同時に実施すれば、ステージS1〜S5のタイミングは両者で異なり得るもののその衝撃吸収能力は足し算されるので、効果的に貫通路柱台枠固定構造Spfの衝撃的な破壊を防止し、乗務員の安全を図ることができる。
本発明は、鉄道車両の構体に利用することができる。
Vp、Vc 鉄道車両
Vpf 乗務員室部分
Vpp 客室部分
P 運客仕切部
Fu 台枠
Dw 車両幅方向
Dv 車両高さ方向
Dl 車両長手(進行)方向
Spf 貫通路柱台枠固定構造
Spc 天井部衝撃吸収構造
Sps 側壁衝撃吸収構造
Oc 障害物
Fi 衝撃力
Pt 貫通路柱
UL 左貫通路柱ユニット
UR 右貫通路柱ユニット
114 カモイ
101 側外板
134、134L、134R 補強板
124L、124R 脇骨
102 屋根外板
139、140 アーチ桁
151、152 横ハリ
175、175L、175R 衝撃吸収部材
Vcf 先頭車両先頭部
Wf 前面
Wfb 被破壊前面

Claims (1)

  1. 鉄道車両の乗務員室部分が台枠より上の部分で障害物とオフセット正面衝突した時の衝撃を吸収する先頭衝撃吸収構造であって、
    前記乗務員室部分の側壁の、天井より高い位置から前記台枠まで延在する外板と、
    前記外板の内面に対して、概ね垂直に車両幅方向に所定の長さだけ延在すると共に車両高さ方向に延在し、車両長手方向に所定の距離だけ離間して、互いに平行に配設される複数の補強板とからなり、
    当該側壁の変形を促進すると共に破断を防止する面外変形促進手段を備える、先頭衝撃吸収構造。
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