JP5798793B2 - 金属酸化物の還元処理方法 - Google Patents
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Description
特許文献1では、回転炉床炉に原料を送るとともに、搬送経路のうち上流側の加熱燃焼領域で原料の加熱を行い、下流側の還元燃焼領域で還元処理を行う。還元燃焼領域においては、還元処理による排ガスが発生する。この排ガスは加熱燃焼領域へ戻されたうえ、排気ダクト等へと排出される。
しかし、このような特許文献1の対策に拘わらず、原料の亜鉛含有率が高い場合、金属亜鉛の酸化が炉内で十分に行われず、排気ダクト内面に金属亜鉛と酸化亜鉛との混合物が溶融状態で付着・成長するという問題があった。
前記還元炉内で揮発する金属亜鉛を完全に酸化させるのに十分な余剰酸素を前記還元炉内へ供給するとともに、
前記排ガス中の酸素のモル数が、前記揮発する金属亜鉛のモル数の3.95倍以上となるように、前記余剰酸素の供給量を調節することを特徴とする。
本発明において、排ガス中の酸素のモル数が、揮発する金属亜鉛のモル数の2倍以上であれば有効であるが、さらに排ガス中の酸素のモル数が、揮発する金属亜鉛のモル数の3.95倍以上つまり約4倍以上であることが好ましい。
本発明において、前記還元炉として回転炉床炉を用いることができる。前記還元炉としては、直線的に配置された移動炉床炉を用いるとしてもよい。
本発明で用いる還元炉では、排気ダクトから原料出口までの区間の前半つまり排気ダクト寄りの部分において、主に原料の加熱が行われ、同区間の後半において、原料の還元および原料からの金属亜鉛の揮発が行われる。従って、同区間の後半に余剰酸素を吹き込むと原料を酸化することになり、原料の還元を抑止することになる。これに対し、同区間の前半で余剰酸素を吹き込むことで、後半における原料の還元を抑止することがなく、かつ後半で揮発して前半を経て排気ダクトへと戻る排ガスに余剰酸素が吹き込まれることになり、排ガス中の金属亜鉛を酸化させるのに好適である。
具体的には、加熱装置として、原料搬送経路に沿ってバーナーを配置し、このうち上流側の加熱領域では原料の加熱を十分に行うために、空燃比1.0以上にて燃焼ガスを燃焼させるとともに、下流側の還元領域では原料の還元を促進させるために、空燃比1.0以下で燃焼ガスを燃焼させる。更に、上流側のバーナーのみ余剰酸素を含むように吹き込みガス濃度の調整を行うことで、バーナーと余剰酸素の吹き込みノズルとを兼用できるようにする。
このような本発明では、バーナーと余剰酸素の吹き込みノズルとを兼用できるため、装置構成を簡略化できる。
本実施形態では還元炉として、図1に示す回転炉床炉1を用いる。図2は、環状の回転炉床炉1の基準位置ACから一回転分の処理領域CSを模式的に展開して示す。
図1および図2において、回転炉床炉1は、ドーナツ状の炉体2を有し、炉体2の内部には基準位置ACから炉体2を一巡して基準位置ACへ戻る略環状の回転炉床3が設置されている。
原料9は、電気炉等から排出される金属酸化物を還元剤であるコークス粉等と混合したうえでペレット状に成型したものである。
前述した回転炉床3のうち、原料入口4Aから原料出口5Aに至る領域(原料入口位置AMから原料出口位置AEまでの区間)が原料搬送領域MSとされ、この領域の回転炉床3により原料搬送経路3Aが構成されている。
バーナー7には、ガス配管71および空気配管72が接続され、各々からの燃料ガスおよび燃焼空気をバーナー7で混合して燃焼させ、炉体2内に高温の吹き込みガスGiを供給する。ガス配管71および空気配管72には、それぞれガス流量調整弁73および空気流量調整弁74が設置され、各々の流量を調整することで燃焼状態ないしは炉体2内への吹き込みガスGi等の状態を調整することができる。
原料搬送経路3Aを送られる原料9は、炉体2内に供給された高温の吹き込みガスGiにより加熱され、高温になった原料9中の金属酸化物が還元剤中の炭素で還元される。
前述した複数のバーナー7のうち、原料還元領域DSにある加熱手段7Bに属するものからは吹き込みガスGiだけが供給されるが、原料加熱領域NSにある加熱手段7Aに属するものは、本発明の吹き込みノズルを兼用するものとされ、前述した吹き込みガスGiに余剰酸素Gaを追加したガスが供給される。
制御装置8は、制御信号線8Bを介して前述した加熱手段7A,7Bのガス流量調整弁73および空気流量調整弁74の開度を調整するものであり、原料還元領域DSに設置された加熱手段7Bのバーナー7については吹き込みガスGiの供給量を調整するとともに、原料加熱領域NSに設置された加熱手段7Aのバーナー7については吹き込みガスGiの供給量および余剰酸素Gaの供給量を調整する。
とくに、原料加熱領域NSに設置された加熱手段7Aのバーナー7では、本発明に基づいて余剰酸素Gaの供給量を制御するために、制御装置8には、排気ダクト6を通る排ガスGe中の酸素濃度を検出する酸素分析計8Aが接続されている。
これにより、搬送される原料は、原料加熱領域NSにおいてバーナー7から供給される高温の吹き込みガスGiにより、原料9は原料還元領域DSに至るまでに十分な温度まで加熱され、原料還元領域DSにおいては原料9中の金属成分の還元処理が行われる。
原料還元領域DSでは、還元処理に伴って原料9から金属亜鉛が揮発するため、この領域で発生する排ガスGeは燃焼に伴う二酸化炭素と、酸素が十分でないときに発生する一酸化炭素と、揮発した金属亜鉛成分と、を含んだものとなる。
具体的には、排ガスGe中の酸素のモル数が、原料9から揮発する金属亜鉛のモル数の約4倍以上(3.95倍以上)となるように、余剰酸素Gaの供給量を調節し、これにより炉体2内で揮発する金属亜鉛を完全に酸化させるのに十分な余剰酸素Gaを炉体2内へ供給する。
このような本実施形態の構成により、排気ダクト6に排出される排ガスGeに含まれる金属亜鉛を酸化させ、排気ダクト6内に付着物が生成されるのを防止することができる。
前記実施形態では、加熱手段7Aのバーナー7を余剰酸素Gaの吹き込みノズルとして兼用したが、加熱手段7Aとは別に専用の吹き込みノズルを設置してもよい。しかし、前記実施形態のように兼用することで、装置構成の簡略化が図れる。
一方、前半(原料加熱領域NS)というのは完全な2分の1である必要はなく、同区間の後半の部分(原料還元領域DS)のバーナー7のうち前半に続く領域の一部が含まれていてもよい。但し、ガス発生領域GSの後半つまり原料還元領域DSへの余剰酸素Gaが増すと、原料9の還元が十分でなくなるので、余剰酸素Gaの吹き込みは原料加熱領域NSで行うことが望ましい。
操業の際の諸条件および結果は下記表1の通りである。このうち、比較例1〜3は余剰酸素Gaが少なく、実施例1は余剰酸素Gaが十分に供給されたものである。
前述した原料9の亜鉛含有率(%)および原料処理量(t/h)から、原料出口5Aから得られる還元処理済の原料9の亜鉛除去率(%)を調べることで、排ガスGe中に揮発する亜鉛発生量(kg/h)および排ガスGe中の亜鉛モル数(kmol/h)が算出される。
得られた酸素モル数(kmol/h)を、先に算出した亜鉛モル数(kmol/h)で割ることで、酸素/亜鉛モル比が算出される。
その結果、排ガス中酸素量が増加し、前述した酸素/亜鉛モル比がそれぞれ1.42(比較例1)から3.95(実施例1)と変化した。
しかし、実施例1においては、金属亜鉛の付着がなく、中断なしに連続操業が継続できる状態であった。
図4は、比較例1で操業を行った後の排気ダクト6に成長した付着物の電子顕微鏡写真である。比較的粒径の小さい酸化亜鉛(六角柱状の結晶)に対して、比較的粒径が大きな金属亜鉛が成長していることが解る。このような金属亜鉛の成長が、排気ダクト6の内部を塞ぐほどの付着物を生成していると考えられる。
図6は、実施例1で操業を行った後の排気ダクト6の内面に付着した付着物の電子顕微鏡写真である。比較的粒径の小さい酸化亜鉛(六角柱状の結晶)が専らであり、金属亜鉛のような粒径の大きいものはなく、このために排気ダクト6の内部を塞ぐほどの付着物が生成するに至らないと考えられる。
2…炉体
3…回転炉床
3A…原料搬送経路
4…原料供給装置
4A…原料入口
5…原料排出装置
5A…原料出口
6…排気ダクト
7…バーナー
7A,7B…加熱手段
8…制御装置
8A…酸素分析計
8B…制御信号線
9…原料
AC…基準位置
AE…原料出口位置
AG…ガス排出位置
AH…中間位置
AM…原料入口位置
CS…処理領域
DS…原料還元領域
Ga…余剰酸素
Ge…排ガス
Gi…吹き込みガス
GS…ガス発生領域
NS…原料加熱領域
MS…原料搬送領域
Claims (1)
- 金属酸化物と還元剤とを含む原料を還元炉内で加熱して還元し、前記原料から揮発した金属成分を含む排ガスを前記還元炉外へと排出する金属酸化物の還元処理方法であって、
前記還元炉内で揮発する金属亜鉛を完全に酸化させるために、余剰酸素を前記還元炉内へ供給するとともに、
前記排ガス中の酸素のモル数が、前記揮発する金属亜鉛のモル数の3.95倍以上となるように、前記余剰酸素の供給量を調節することを特徴とする金属酸化物の還元処理方法。
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